「S」と一致するもの

Arthur Russell - ele-king

 なんども繰り返すが、アーサー・ラッセルほど没後再評価著しいアーティストもそういない。再評価どころのさわぎじゃないな。エレクトロニック・ミュージックにおいては、若い世代にただいなる影響を与えている。ジェイムス・ブレイクにもその痕跡が見えるし、もちろんティルザにもあるが、アーサー・ラッセルはミニマル・ミュージックからディスコ、ポップ・ミュージックからカントリーまでと、節操なくいろんな音楽をやっていたので、その影響もまたいち様ではない。
 
 アーサー・ラッセルには2008年に制作されたドキュメンタリー映画がある。日本でもいちど、渋谷・宇田川町のアップリンクで上映されているその作品、『ワイルド・コンビネーション:アーサー・ラッセルの肖像』(原題:WILD COMBINATION: a Portrait of Arthur Russell)がこのたび日本版DVDとして発売されることになった。
 これを記念してアップリンクにていち夜限りの再上映会(11/5(月))も決定。会場では11/7のDVD全国発売に先駆けてDVDを購入できるほか、スペシャルTシャツの販売なども予定している。
 アーサー・ラッセルの生涯とその功績をとてもよくまとめた映画で、実験音楽の現場からディスコを往復したラッセルの類い稀な活動がさまざまなアングルから見渡せる。永遠のイノヴェイターの世界をぜひご覧いただきたい。


■DVD紹介
ニューヨーク・ダウンタウンの伝説、アーサー・ラッセル。
その純粋にして深遠な、生涯の真実。


1980年代、音楽に関する実験と革新の拠点ニューヨーク・ダウンタウンを住処としたアーサー・ラッセル (Arthur Russell、1952 - 1992)。彼は、アコースティック/エレクトリックを横断しながらジャズやクラシック、ミニマルの手法を使用し、現代音楽や、フォーク、ニュー・ウェイヴ、ディスコ/ダンスなどのアヴァン&エクスペリメンタル・ポップ・ミュージックを作曲・演奏、シーンからシーンへといくつもの異なる音楽の間を渡り歩き、あるいはそれらを繋いだ(モダン・ラヴァーズを前衛シーンに紹介したのは他ならぬアーサーだ)。ウォルター・ギボンズ、フランソワ・K、そしてラリー・レヴァンらと共に生み出した一連の重要な12インチ・シングルによってダンス/クラブ・ミュージックの歴史を推し進め、また黎明期のハウスやヒップホップにも大きな影響を与えたスリーピング・バッグ・レコーズを共同設立。彼の伝記を執筆したティム・ローレンスいわく“当時のダウンタウン音楽シーンの途方もない複雑さの水先案内人として比類なき適任者”であり、その功績は今日のアンダーグラウンド・ミュージックにおける最大の礎のひとつと言って過言ではない。

この映画は、関係者へのインタヴューをベースに、アーサー・ラッセルの音楽的偉業を全編にわたって振り返りつつ、ゲイであった彼のパーソナリティに光を当てる。アイオワ州の片田舎に育ち、チェロと出会い、ニューヨーク・ダウンタウンを駆け抜け、そして1992年にエイズの合併症で亡くなるまでを丁寧に綴ったドキュメンタリーであり、全く謎めいたアーサーの人生を捉えるにあたって最善のイントロダクションとなるだろう。


タイトル:『ワイルド・コンビネーション:アーサー・ラッセルの肖像』(DVD)
(原題 WILD COMBINATION:a Portrait of Arthur Russell)
監督:マット・ウルフ(Matt Wolf)
発売:2018年 11月 7日(予定)
価格:税込 4,320円(本体4,000円+税)
品番:TANGD011
仕様:カラー/片面2層/MPEG-2/英語(ドルビーデジタルステレオ)/16:9/日本語字幕/リージョン・オール
特典映像等:
・マット・ウルフ監督によるオーディオ・コメンタリー
・アーサー・ラッセルによるパフォーマンス映像(フッテージ)
・アーサー・ラッセルの葬儀でのアレン・ギンズバーグによるマントラ詠唱映像
・アーサー・ラッセルが両親へ宛てたテープ・レター
・アーサーズ・ランディングによるカバー・パフォーマンス映像
封入特典:スペシャル・ポストカード(予定)
出版・販売:TANG DENG 株式会社
流通協力:ULTRA-VIVE,INC.


■上映会詳細

『ワイルド コンビネーション:アーサーラッセルの肖像』
★OPEN FACTORY企画(主催・企画:TANG DENG, Normal Screen)
日時: 11月5日(月)
【1回目】18:30開場/19:00上映開始
【2回目】20:20開場/20:50上映開始
料金: 各回ともに一律¥1,800(1ドリンク付き)
会場: UPLINK FACTORY(1F)
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1-2F
tel. 03-6825-5503
備考: DVDを先行販売いたします。またスペシャルTシャツの販売も予定しております。


■予約ページ
https://www.uplink.co.jp/event/2018/52473

■リンク
(TANG DENG Co. INSTAGRAM) https://www.instagram.com/tangdeng_co/
(Normal Screen) https://normalscreen.org
(アップリンク) https://www.uplink.co.jp/event/2018/52473

Spiral Deluxe - ele-king

 デトロイト・テクノとジャズの結びつきは古くからあり、カール・クレイグのインナーゾーン・オーケストラやマッド・マイクのギャラクシー・トゥー・ギャラクシーなどが成功例として知られる。こうした背景には、そもそもデトロイトがジャズやソウルの町として発展してきた経緯があり、テクノ・アーティストたちの中にもDNAとしてそうした音楽が刻み込まれている部分がある。そして、ギャラクシー・トゥー・ギャラクシーの“ハイテック・ジャズ”に顕著だが、アフリカ系たちのアフロフューチャリズムとゲットー感覚が、ブラック・ミュージックのシンボルとしてのジャズと、未来的なコズミック志向のテクノを結び付けているのである。テクノ・アーティストの中でもジャズを志向する者は、カール・クレイグにしろマッド・マイクにしろ、テクノの枠にとらわれない多様な音楽性を持つことが特徴だ。ジェフ・ミルズもそうしたひとりで、マッド・マイク、ロバート・フッドとアンダーグラウンド・レジスタンスを結成する以前、もともとヒップホップDJとしてキャリアをスタートしており、映画音楽からアンビエント、ポスト・クラシカルにも通じる幅広い音楽性を有している。ジェフ・ミルズとジャズの結びつきはデビュー前にさかのぼり、高校時代にジャズ・バンドのドラマーをやっていたそうである。2000年ごろにやっていたミルザートというプロジェクトは、ギャラクシー・トゥー・ギャラクシー同様にジャズやアフロとテクノやアンビエントなどエレクトロニック・ミュージックを結び付けたものと言える。近年はパリに移住してトニー・アレンと共演をし、改めてジャズに対するアプローチを見せている。そのコラボ作品『トゥモロー・カムズ・ザ・ハーヴェスト』が話題となった同時期、スパイラル・デラックスというバンド・プロジェクトのミニ・アルバム『ヴードゥー・マジック』もリリースされた。

 スパイラル・デラックスはジェフ・ミルズ(ドラム・マシン、パーカッション、ドラムス)のほか、アンダーグラウンド・レジスタンスやギャラクシー・トゥー・ギャラクシーのメンバーでもあるジェラルド・ミッチェル(キーボード)、エスクペリメンタル・ロック・バンドのバッファロー・ドーターのメンバーとして知られる大野由美子(ムーグ・シンセ)、ジャズ・トランペッターの日野皓正の息子で自身はジノ・ジャムというバンドを率いる日野賢二(ベース)からなるカルテット。ミルズは2014年にパリのルーヴル美術館オーディトリアムでレジデンシーを任され、そのときに一夜限りのバンドを結成。それをきっかけに、いろいろな分野で素晴らしいスキルを持つミュージシャンを集めたスーパー・グループを作りたいという構想が生まれ、2015年9月に東京と神戸で開催されたアート・フェス「TodaysArt JP」に現メンバーが集まり、パフォーマンスを披露したことが活動の発端となっている。そのライヴの模様はEP「神戸セッション」にも収められ、その後2016年にワールド・ツアーを行い、10月のヨーロッパ公演の録音はEP「タタータ(サンスクリット語で真理の意味)」としてリリースされている。この2枚のライヴ録音を経て、今回はスタジオ録音盤としてリリースするのが『ヴードゥー・マジック』で、改めてジャズ・カルテットとして打ち出したデビュー・アルバムとなる。録音はパリのフェルベール・スタジオで2日間に渡って行われ、“レット・イット・ゴー”にはニューヨークで活動するシンガーのタニヤ・ミシェルをフィーチャーし、またデトロイトの重鎮DJであるテレンス・パーカーがリミックスを手掛けている。

 初のスタジオ録音盤ではあるが、アルバムのほとんどはワンテイクで録音され、メンバーそれぞれのインプロヴィゼイションに委ねるという方向を打ち出している。ジェフは基本的にドラム・マシンを扱っているので、ビート面ではどうしてもプログラミングによる四つ打ちパートが多く、純粋なジャズと比較するとリズムの面白さや即興性に欠けるところがあるかもしれない。“E=MC²”は1990年ごろに流行ったジャズ・ハウス風で、ある意味でレトロな味わいがする。インプロヴィゼイションのスリルを求めるにはやや肩透かしを食らうが、基本的に演奏の主軸となるのはジェラルド・ミッチェルのピアノと日野賢二のフェンダー・ベースで、大野由美子のムーグ・シンセがアクセントを加えていくという構成。BPM 120くらいの四つ打ちから途中で4ビートのモダン・ジャズへと移行したり、ピアノが次第にスイング風のメロディを奏でたりという面もあり、そのあたりはライヴ感覚を生かしたものとなっている。表題曲の“ヴードゥー・マジック”はジャコ・パストリアスばりのベース・ソロに始まり、それにドラム・マシンが呼応しながらビートを刻むという形となっている。ドラム・マシンの「楽器」としてのインタープレイを楽しむなら、この曲が一番かもしれない。ジェフがパーカッションを演奏する“ザ・パリス・ルーレット”はファンクとフュージョンの中間的な演奏で、ディーゴやカイディ・テイタムなどのブロークンビーツあたりに通じるナンバーとなっている。“レット・イット・ゴー”のオリジナル・ミックスは、曲調としてはソウルフルなムードのディープ・ハウスで、アルバム中で唯一ジェフがドラムを演奏している。もともとドラム・マシンだった部分をドラムで録音し直したもので、彼のドラム演奏音源のリリースは今回が初めてだそうだ。全体を通してスパイラル・デラックスのポイントは、マシン・ビートを土台とした上で、ピアノとベースがどれだけ自由度の高い演奏をできるかだろう。革新性や新鮮さについては正直なところ薄いが、基本的にはギャラクシー・トゥー・ギャラクシーなどと同じように、エレクトロニック・ミュージックとジャズのエッセンスの融合を目指したユニットと言える。

Kiki Kudo - ele-king

 あれからどれくらいのときが経ったのだろう。僕(小林)が初めてその名を知ったのは『STUDIO VOICE』だったか、それとも『remix』だったか。その後『NO!!WAR』に勇気づけられ、あるいは会田誠や Chim↑Pom らを論じた『post no future』にも大いに啓発された(アートについてだけでなく、たとえば「なんておもしろい小林秀雄の読み方をするんだ」と感心した覚えがある)。
 これまでライターやキュレイターとして活躍してきた工藤キキが、なんと、ミュージシャンとしてデビューする。昨年音楽制作をはじめたという彼女は、今年に入ってイリシア・クランプトンやツーシン、ピュース・マリー、エンバシらに混じってコンピ『Physically Sick 2』に楽曲“Freakey Ke Ke”を提供したり、カセットテープ『Mineral Sequences』を発表したりしていたが、来る11月9日、初のEP「Splashing」をリリースすることが決定。しかも、アンソニー・ネイプルスとデザイナーのジェイムス・スラッタリーが主宰するニューヨークの〈Incienso〉からである。レーベルによれば、「ナノテク・ポップ、シンセ・ジャム、キッチン・ウェイヴ、リスニング・テクノ」に仕上がっているとのこと。現在、収録曲の“City Neo Neon”が先行公開されている。彼女の新たな船出に大きな拍手を贈りたい。

Kiki Kudo
Splashing

Incienso
12" / Digital
2018/11/09

[Tracklist]
A1. The Secret Bedside Track
A2. U ARE AWAKE
A3. Gadget & Co.
B1. Interactive Gee
B2. City Neo Neon

Bandcamp

Demdike Stare - ele-king

 2014年に野田努に同行して、代官山ユニットの楽屋でデムダイク・ステアのマイルズ・ウィテカーとショーン・キャンティ、それからアンディ・ストットにインタヴューをしたことがある。ウィテカーとストットによるユニット、ミリー・アンド・アンドレアがアルバム『Drop The Vowel』を〈Modern Love〉から出した直後のことだ。地元のマンチェスター近郊に住む寡黙なストットと日本の文系青年に似た雰囲気のキャンティ(同世代の近郷出身者にはジェイムズ・リーランド・カービーとサム・シャックルトンがいる。若手世代にはシンクロ、インディゴ、エイカーなど)、当時ベルリンに居を構えていた快活なウィテカーと過ごしたあの時間をいまもたまに思い出す(このインタヴューは「ele-king vol.14 」に収録)。ウィテカーはあの頃、ニーチェ『善悪の彼岸』に頭を悩ませていて、インタヴュー後(ファンだというDJノブがデムダイクのふたりに会いに来ていた)、ステージ脇ではイタリアの現代音楽家エギスト・マッチ(1928-1992)について熱く語ってくれた。
 あれから四年過ぎ、デムダイクのふたりは実に多くのことに挑戦してきた。2013年から2015年までに続けていた12インチの「Testpressing」シリーズでは、ジャングルからUKガラージ、さらにはグライムにいたるUKダンス史を俯瞰し、これまでのデムダイク・ステアのイメージを覆すような楽曲フォームを発表してきた。
 ここには機材における大きな変化もある。それまでハードウェア+エイブルトン+ロジックで進めていた作業環境から、エレクトロン社製のサンプラー、オクタトラックをメインに据えたセットに切り替えたのだ。2014年のライヴでも「これ、使うの難しいんだよね」と言いながら(この発言は謙遜ではなく、オクタトラックは操作を覚えるのが本当に難しい機材である。サンプラーというよりも、オシレーター(音を発生させる機能)が搭載されていないエイブルトンのようなDAWのハードウェア版、くらいに捉えてもらってよい。マニュアルも難しい!)、ウィテカーはステージ上でオクタトラックを手に、キャンティがセレクトするレコードをサンプリングし、華麗にさばいていた。
 これは非常に重要な転回である。シーケンサーを動かしながら(つまり、楽曲を止めることなく)リアルタイムでサンプリング/加工ができるこの機材から実に多くのフレーズが生まれている。ジャングルはリピートを極小細分化し(“Null Results”)、ソウルⅡソウルは裁断機にかけられガラージになり(“Rathe”)、象の嘶きがグライム空間から突発してくる(“Procrastination”)。
 もちろん彼らは以前にも『Voices of Dust』(2010)で“Hashshashin Chant”という最高のトライバル・チューンを生み出している。しかしオクタトラック導入後の「Testpressing」以前以後では律動的直感性の強度は異なるものになっている。彼らが愛すジャズ・ミュージシャンたちが、猛練習と苦楽を重ねて新たな音を獲得していくように、デムダイク・ステアのマシン・ミュージックは自身のOSを書き換えていったのだ。
 この変化への欲求が結実したのが2016年の大傑作『Wonderland』である。この年の9月、僕はロンドンへ渡った。その翌月の7日、ショーディッチのクラブ、ヴィレッジ・アンダーグラウンドで、彼らの〈DDS〉レーベルのパーティが開かれ、迷わず現場に向かった(DJのリル・モフォも来ていた)。ジョン・K、ステファン・オマリー、ミカチュー、イキイノックス、そしてデムダイク・ステア。そうそうたるメンツである。この年、同レーベルからは、2018年に『Devotion』を生み出したティルザがフィーチャーされたミカチューのEP「Taz And May Vids」が、そしてなんといっても10年代の名盤であるイキイノックスのアルバム『Bird Sound Power』がリリースされている。
 「最近はジャズ、とくにマル・ウォルドロン、それからイキイノックスの影響でダンスホールを聴いてるよ」、とフロアにいたウィテカーは教えてくれた。この時点で彼は長年拠点にしていたベルリンを離れ、故郷のマンチェスターに戻っていた(この時のウィテカーの読書リストはドゥルーズ『スピノザ:実践の哲学』と、アントニオ・ダマシオ『感じる脳:情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ(原題:Looking for Spinoza)』である)。
 『Wonderland』の主軸にもキャンティとの2台のオクタトラックのセッションがあり、それがイキイノックスを経由したダンスホールの影響下で、なんとも形容しがたい奇妙なビートを醸成した。昨年、英国のNTSラジオに出演した坂本龍一が同アルバムからセレクトした“Animal Style”が好例である(坂本はストットの“Tell Me Anything”もかけていた)。揺らぎつつ、芯のあるポリリズム。怯えながらもトラップをすり抜ける小鹿のように、どこまでも逃げていく華麗なシンセ。どこか笑える、頭をかち割るリムショット。
 筒井康隆はかつて山下洋輔のボレロを「脱臼したボレロ」と形容したが、その言葉がここにもしっくりくる。正常ではなく、不良な異常さを。停滞ではなくダイナミックな恒常性を。そして、シリアスさもいいけど、常に一握りのユーモアを。『Wonderland』のマシン・ミュージックは、多くのしがらみにまみれたジャンルの道徳をフォローするのではなく、それを脱臼し、前例のない自らの倫理の構築を呼びかけてくる(これは先のドゥルーズのスピノザ理解と重なる点でもある)。
 2017年にはフランスの音楽研究グループであるIna Grmの要請によって実現した、同団体が所有するアーカイヴ音源と音響システム、アクースモニウムを用いたライヴ・レコーディング盤『Cosmogony』を、さらに2018年に入ってからはローマの伝説的即興音楽集団「Gruppo di Imorivvisazione Nuova Cosonanza」(同グループにはかつて前述のエギスト・マッチが参加していた。伏線はあのステージ脇にもあった!)とのコラボレーション作『The Feed-Back Loop』をカセットで発表。「Testpressing」/『Wonderland』のセットアップで、即興/ミュージック・コンクレートを追求していく力作だ。
 そして2018年10月25日に〈Modern Love〉から届いたのが、9曲入りの新作『Passion』である(紹介媒体によってアルバムかEPで分類が異なっているが、ここではアルバムとして扱う)。この段階で僕が最後にデムダイクのふたりに会ったのは、2018年6月15日、イースト・ロンドンにあるクラブ、オヴァル・スペースで行われた、デムダイク・ステア、アイコニカ、リー・ギャンブル、アンディ・ストットらがブッキングされたイベント時である。この日、〈DDS〉からシンイチ・アトべの新作『Heat』が出ることをウィテカーからチラッと教えてもらっていたのだが、デムダイクのリリースについては何も言っていなかったので、今回のリリースは驚きだった(この時、ウィテカーはマーク・フィッシャー『資本主義リアリズム』、ダン・ハンコックス『インナー・シティ・プレッシャー:グライムの物語』を読んでいた。最近興味が社会学系にシフトした、そうである)。
 このライヴは『Passion』の布石だった。ライヴのヴィジュアルを担当したデザイナー/ヴィジュアル・アーティストのマイケル・イングランドが今作のジャケットのデザインを担当している(彼のクライアントはBBCからソニー、ミュージシャンにはオーテカやボーラなどがいる)。濃い紅色に塗られた女性がこちらを睨んでいる。現代におけるソフトウェアの使用方法を探求し問い直すという手法から、今回のヴィジュアルは生まれたという。
 現実にポッカリ空いた非現実の落とし穴を拡大することを、イングランドは得意とする。あの日のライヴのヴィジュアルに現れたイメージたち:カナダのナイアガラの滝で自撮りをするレズビアンのカップル、蝋人形館、ニューヨークのヴォーグ・ダンス、ジャパニーズ・ホラーな白衣を纏った女性の暗黒舞踏的身体移動etc。これまでは、映画好きであるキャンティが選んだホラー映画などからの抜粋がライヴで使われていたが、今回、彼らの視覚を司るのはフィクションとノン・フィクションの境界を揺らぐ何かであり、異様な人間性たちである。それがこのジャケットや、リリース時に公開された以下の本作のトレーラーにも表れている(この映像はライヴでも使われていたと思う)。


Demdike Stare - Passion / Trailer by Michael England

 ここでアルバムを再生する。鋭く青光りするシンセが鈍いディストーションの渦巻きへと降下する “New Fakes”から、さらに粒の細かい歪みが覆ったメランコリアが徐々に出現し、強いトレモロ・エフェクトを経由しビートが緩やかにはじまる“At It Again”へと流れる冒頭。極小のキックの上に、制御不能気味に響くジャングルのビートが、速度の低下と上昇を経て次第に開花する。複雑性と単純性の両方が相互を包摂していき、その両方がノイズの海へと沈む。
 “Spitting Brass”では、時にウォブルする緩やかな周波数グラフを描くシンセが、幽霊のごとき声と重なり低速ガラージを奏でる。続く“Caps Have Gone”でビート・パターンはよりプリミティヴになり、FMシンセの流星が降り注ぎつつもダンスホールのビートが前進を続ける。
 ここでレコードが2枚目へと移行する。1曲目、“Know Where to Start”はBPM142、グライムである。「どこからはじめるか知っている」とタイトルが語るこの3分33秒から、初期のワイリーとディジー・ラスカルが想起され、タワーブロックから送信される海賊ラジオのトランスミッションのようにパーカッションは断片的に連打される。「Testpressing」でのUKダンス・ミュージックの地図を書き換える旅は、ここでも新たな作図方を展開していく(タイトルを「Nowhere to Start/スタート地点などない」と言葉遊び的に読みかえれば、何かの起源/パイオニアを特権化しない姿勢も読み取れる?)。
 C面2曲目、「お前ら人間はファックだ」(“You People Are Fucked”)という挑発のもと、人間は何か別の存在に中指を立てられる。ふたつの冷徹なヴォイスが右と左のチャンネルで相互に会話のやり取りをし、異様なポジティヴさを放つウォンキーなベースラインが、BPM120代中頃の相対的低速感でユーモラスに響く。続く“Pile Up”は同様のタイム・スピードながらも、「間」を強調し、2017年のミュージック・コンクレート修行で養ったサウンド・マテリア構築センスが惜しみなく披露されている。
 レコードは裏面へ。タイトルは“Cracked”(「ひび割れた」の意)。針が飛んだかと思わせるオープン・ハットの機能不全ビートに、深いリヴァーヴ(おそらくクナスのエクダール・モイスチャライザー〔Ekdahl Moisturizer〕を使用。バネを使ったナチュナルにエグい効果を生む。ウィテカーが長年愛用)が優雅にマシン・ヴォイスを包む。そして入り込む低音。このベースラインは間違いなく、ガラージの暗黒面におけるクラシック、ダブル99 の“Rip Groove”(04年)に由来するものである。書道のようにフォームを崩されたそれが、一服の絵画のようにトラックを貫き、モノクロームを基本色に、ドットのようなシンセの突出が細部から全体を書き換える。ビートが消えると、広大な花畑のごときドローン・ビートがこれまでの展開がジョークだったかのように広がり(曲名“Dilation”は「拡張」の意)、今作は幕を閉じる。
 ここで見てきたように、そしてプレス・リリースが語るように、『Passion』はUKダンス・スタイルをなぞった「アヴァンギャルドと、重低音のためにデザインされ洗練された、機能的なクラブ兵器の奇妙な構成物」である。たしかに前作『Wonderland』でイキイノックスのダンスホールを経由し到着した不思議の国から、上記のカセットのリリースで研ぎ澄まされた前衛センスを武器に、「Testpressing」シリーズで試みたUKダンス史へと再潜入していくのが今作である(だからこのレヴューは、ここ数年の出来事を詳述しなければならなかった)。
 だが、同時にそれ以上の何かがここにあるような気がしてならない———。去る3月、僕はマンチェスターのクラブ、スープ・キッチンで毎年開かれている、デムダイク・ステアのオールナイトDJセットを聞きに行った。そこで流れていたのは、ミュータント・ダンスホールであり、レヴォン・ヴィンセントの“Double Jointed Sex Freak”(09年)だった。彼らは新旧ジャンル問わずにしっかりと丁寧にレコードを聴き、映画を見て、本を読む勉強家&リスナー・タイプの作り手であり続けていた。
 いわゆる「型にはまらない系」の人々は、自身のスタイルを「オンリー・ワン」の名の下に特権化しがちだが、デムダイク・ステアにはそれがなく、偉そうに見えない。彼らは謙虚なリスナーであることと、過激な作り手であることを自由に行き来する。そこには主体性を保ちながら、対象と並列に寄り添う姿勢がある(DJセットでは影響元である対象をセレクトし、フロアから聴かれることによって、自身も対象と同化している)。自身の曲中でありながら、“Rip Groove”が見え隠れするように、デムダイク・ステアの奇妙なリアリズムは、常に何か別のものに開らきつつ生成する……(この感覚は、清水高志が『実在への殺到』(水声社、2017年)で論じているミシェル・セールの概念「準-客体」に近いものがあるかもしれない)。
 かつて阿木譲は放射性物質がバラまかれた「3.11以後の我々の生きる時代意識が最もリアルに反映されたもの」としてデムダイク・ステアのホラーに満ちた音楽を論じた。同意である。今回、僕は違った角度からそこに新たな意味を加えたい。政治的にも、文化的にも、あるいは環境的にも何かを特権化してしまいがちなダークエイジの価値観に、デムダイク・ステアの音楽はノーを突きつける。だから僕は彼らに吸い寄せられてしまう。スピノザもニーチェもフィッシャーも、似たようなことを書いてきた。
 『Passion』は作品単体として聴いても素晴らしいが、上記で述べたように、前作たちとの関連でも面白みを増す。なので、単体でベスト・ランキングの上位に入る大傑作、というわけではないかもしれない。だが、UKダンス系にフォーカスをした初のアルバムという意味では初の挑戦であるし、何よりビートと音質が文句なしにかっこいい(今回から彼らは24ビット・リリース、つまりハイレゾにも挑戦している)。そして、ここに表出している奇妙な姿勢は、絶妙な彼ら「らしさ」である。ダークな内容に対して、少し皮肉っぽく響く「情熱」というタイトルも面白い。
 次にウィテカーは何を読んでいるのか考えながら(ミシェル・セールだったら面白い)、僕はしばらくこの「情熱」に耳を傾けようと思う。きっと今作は年末のフロアでも最高に鳴る1枚になるだろう。

Ground - ele-king

 「大阪で生まれた人の名字はみなオオサカなのヨ」とは大坂なおみのジョークだけれど、大阪のDJグラウンドの本名もオオサカなんだろうか(なんて)。Gr◯un土 a.k.a. Ground名義のファースト・アルバム『Sunizm』の1曲めは“Osaka Native”というタイトルが付けられ、なぜか“ソーラン節”がサンプリングされているので、ちょっと混乱もするけれど、べっとりと地を這うようなトライバル・ドラムを軸にズイズイと進んでいく曲調はちょっと癖になる。大阪というよりジャングルをふざけて匍匐前進しているような気分に近い(それとも大阪というのはそういう街なんだろうか?)。続いてシングル・カットされた“Logos”もやはりパーカッションがメインの曲ながら全体に跳ねるというよりは地に足が吸い付くようなノリで、随所に散りばめられている日本のエスニシティよりも、そうしたリズム感の重心の低さだったり、もしかすると摺り足で踊れてしまうようなところが日本を感じさせるアルバムといえる。汎アジア的な曲調の“Follow Me”や、なんとなくインドネシアあたりが思い浮かんでしまう“Lady Plants”も同じくで、なんとかして日本風を装おうとするのではなく、適当にアジアっぽいムードをごちゃ混ぜにしながら、それでいてとっ散らかったような印象を与えることもなく、じわじわと身体感覚に訴えかけてくるところが『Sunizm』はいい。スガイ・ケンや食品まつりもそうだけれど、日本的な記号を導入しながらも、それをクラブ・ミュージックとしてまとめるときに絶妙の距離感をもってミックスしているので、それこそ、去年、紙エレキングでコムアイに取材した際、無理に日本的なことをやろうとしなくても、日本的なものがサウンドに「滲み出ればいいかな」と話していた通り、グラウンドもトヨムも「滲み出させる」スキルが高いのだと思う(シャフィック・チェノフとジョイント・アルバムをリリースしたカツノリ・サワやエナはまるっきりガイジンだけど)。僕の覚えている限り、80年代以降、日本のエスニシティをポップ・ミュージックに融合させようとして、もうひとつポップ・ミュージックとしての完成度を損なってしまった先達たちとはどこかが違う。上々颱風とかね。

 DJ Gr◯un土のキャリアは長く、15年ではきかないみたいだけれど、僕は紙エレ20号でモリ・ラーの記事を書いているときにその存在を初めて知ることになった。和物のエディットで注目を集めたモリ・ラーと御山△Editというユニットを組んでいるということを知り、なんだろうと思ったのが最初。活動の範囲は広いようで、地元・大阪でDJ喫茶、ChillMountainHutteをプロデュースし、4年間営業を続け、どういう経緯なのか、南米のミュージシャンとも交流が深いらしい。デビュー・アルバムとなる『Vodunizm』は自ら主催する〈チル・マウンテン・レック〉から2015年にリリース。アフリカやアジアを溶け合わせたサウンド・スタイルはすでに確立され、これがリンスFMで大きく取り上げられたり、以後は海外活動も増えていったようである。ジェイ・グラス・ダブスやダッピー・ガン・プロダクションズといった眩しいリリースが続くブリストルの〈ボーク・ヴァージョンズ〉からリリースされたカセット『MIZUNOKUNI』では生真面目なアンビエント・ダブを聴かせ、このところのミュジーク・コンクレートやアカデミック・リヴァイヴァルではなく、しっかりとクラブ・ミュージックのサイドに立っていることを印象付ける。これに関しては新しさはないかもしれないけれど、完成度は高い。シーカーズ・インターナショナルとレーベル・メイトというだけで、そこはOKというか。ちなみに〈チル・マウンテン・レック〉からは2013年の時点で新人を中心に和泉希洋志や7FOを加えた全19組による2枚組CD『ChillMountainClassics』もドカンとリリースされている(未聴)。

 『Sunizm』の後半はスピリチュアル度がアップしていく。ベースで包まれていくような感覚が増大し、食品まつりの『EZ Minzoku』とは対照的に、エスニシティを記号として捉えるのではなく、良くも悪くもそのような音を出すことに内面も伴わせたいという欲求が強く働くのだろう。ラジオ・ノイズを使った“Koot Works”ではキューバ音楽のようなものがループされ、いわゆる南洋気分が全開で、スピリチュアルとの距離感とも相まって、どうしても細野晴臣の陰がちらつくものの、細野サウンドとは何かが決定的に違う。同じものを目指したとしてもバックボーンから何かがあまりにも違うということなのだろう。むしろ最後を飾るタイトル曲は(そのように感じる人はあまりいないかもしれないけれど)ボアダムズを完全に脱力させたような響きがあり、なるほど“Osaka Native”ではじまる意味はそこにあるのかもしれない。関西ゼロ年代は続いていたというか。

収穫の秋にジャー・シャカ祭り - ele-king

 UKサウンドシステム文化の生きる伝説、ブラック・アトランティックそのもの、ベース・カルチャーの体現者、生きているうちにいちどは体験したいジャー・シャカが今年もやって来ます。南は奄美大島から北は札幌まで、全国6箇所をツアー。毎度お決まりの科白を繰り返そう。ぜひ、体験して欲しい!!!

■JAH SHAKA Japan Tour 2018

—The Music Message!!!—
 激動する2018年!  今年も日本にJAH SHAKA降臨。年に一度のシャカ祭り開催!
 JAH SHAKAの半世紀に渡る伝道的な活動により、世界各地にサウンドシステム・カルチャーが伝播し、レゲエ/ルーツミュージックの発展に貢献してきた。
 ポジティヴなメッセージとスピリチュアルなダブサウンドの真髄を伝え続けている。
 奇跡の初来日から21年、 シャカのライヴ体験は日本でもジャンルの壁を乗り越えて支持を拡張し続けている。
 今年は東京、福岡、名古屋、大阪に加え、熱烈なアプローチを受け奄美大島に初上陸、そして17年振りとなる札幌プレシャスホールの6都市をツアーする。

【JAH SHAKA Japan Tour 2018】

▼11.16(金)奄美大島@ASIVI
SubVibes 5th Anniversary“JAH SHAKA in AMAMI”
OPEN 20:00 / START 21:00
 adv.3,500 yen (1Drink Order) / door.4,000 yen (1Drink Order)
TICKET
INFO : ASIVI (0997-53-2223)
https://www.a-mp.co.jp/index.html

▼11.18(日)福岡 @Stand-Bop
 RED I SOUND PRESENTS “JAH GUIDANCE IN FUKUOKA”
 OPEN / START 22:00~
 3,000yen +1Drink Order
 
▼11.22(木)札幌@Precious Hall
exrail×JAH SHAKA JAPAN TOUR support MAWASHI RECORD
 OPEN / START 23:00~
Special adv.3,500yen adv.4,000yen w/f 4,500yen door.5,000yen

▼11.23(金)東京@UNIT
JAH SHAKA DUB SOUND SYSTEM SESSIONS
 OPEN / START 23:30~
 adv.3,300yen door 3,800yen
TICKET
PIA (0570-02-9999/P-code: 130-029)、LAWSON (L-code: 70793)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
RA

▼11.24(土)名古屋@JB'S
JAH SHAKA JAPAN TOUR 2018
 OPEN / START 22:00~
 adv.3,800yen
TICKET:https://l-tike.com/

▼11.25(日)大阪@Creative Center OSAKA
JAH SHAKA OPEN TO LAST
 OPEN 15:00 / START 16:00 Close 21:00
 adv.3,000yen door.3500yen *共に別途1ドリンク代金600円必要
TICKET
ローソンチケット : Lコード 56812
チケットぴあ : Pコード 132316
イープラス
PeaTiXチケット

Total Info : JAH-SHAKA-JAPAN

★JAH SHAKA
 ジャマイカに生まれ、8才で両親とUKに移住。'60年代後半、ラスタファリのスピリチュアルとマーチン・ルーサー・キング、アンジェラ・ディヴィス等、米国の公民権運動のコンシャスに影響を受け、サウンド・システムを開始、各地を巡回する。ズールー王、シャカの名を冠し独自のサウンド・システムを創造、'70年代後半にはCOXSON、FATMANと共にUKの3大サウンド・システムとなる。'80年に自己のジャー・シャカ・レーベルを設立以来『COMMANDMENTS OF DUB』シリーズを始め、数多くのダブ/ルーツ・レゲエ作品を発表、超越的なスタジオ・ワークを継続する。
 30年以上の歴史に培われた独自のサウンドシステムは、大音響で胸を直撃する重低音と聴覚を刺激する高音、更にはサイレンやシンドラムを駆使した音の洪水 !! スピリチュアルな儀式とでも呼ぶべきジャー・シャカ・サウンドシステムは生きる伝説となり、あらゆる音楽ファンからワールドワイドに、熱狂的支持を集めている。heavyweight、dubwise、 steppersなシャカ・サウンドのソースはエクスクルーシヴなダブ・プレート。セレクター/DJ/MC等、サウンド・システムが分業化する中、シャカはオールマイティーに、ひたすら孤高を貫いている。まさに"A WAY OF LIFE "!

Jah Shaka 参考映像:
Jah Shaka - Deliverance & Kingdom Dub (Dub Siren Dance Style)
https://www.youtube.com/watch?v=iKJkblJIaVA

Jah Shaka japan LIVE
https://www.youtube.com/watch?v=CEikFjOcklI

Jah Shaka (RBMA Tokyo 2014 Lecture)
https://www.youtube.com/watch?v=3QNWpnwWgc4

【東京公演】
11/23(金・祝日)代官山UNITでの東京公演は、都内でも有数のクオリティを誇るUNITのシステムに加え、Jah-Lightサウンドシステムを導入、オリジナルスピーカーと楽曲を武器に活動するJah-Lightはセレクターとしても参戦!パワーアップしたJah-Light Sound System+UNIT SOUND SYSTEMでジャー・シャカが理想とするフロアーが音に包まれる空間が創造される。
Roots Rock Reggae, Dubwise!
"LET JAH MUSIC PLAY"

King of Dub
JAH SHAKA
DUB SOUND SYSTEM SESSIONS
- An all night session thru the inspiration of H.I.M.HAILE SELASSIE I -

2018.11.23 (FRI) @ UNIT
feat. JAH SHAKA

Selector: Jah-Light

Jah-Light Sound System +UNIT Sound System

JAH SHAKA SHOP by DUBING!!
Food:ぽんいぺあん

open/start: 23:30 adv.3,300yen door 3,800yen
info.03.5459.8630 UNIT
https://www.unit-tokyo.com

ticket outlets:NOW ON SALE
PIA (0570-02-9999/P-code: 130-029)、LAWSON (L-code: 70793)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
RA

渋谷/Coco-isle (3770-1909)
代官山/UNIT (5459-8630)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、
新宿/Dub Store Record Mart (3364-5251)、ORANGE STREET (3365-2027)

……………………………………………………………
info.
▼UNIT
info. 03.5459.8630
UNIT >>> www.unit-tokyo.com
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO

※再入場不可/No re-entry
※20歳未満入場不可。要写真付身分証/Must be 20 or over with Photo ID to enter.
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

★Jah-Light
2002年、自身のスピーカーシステム構築を決意。
そこから約2年半の製作期間を経て、2004年"Real Roots Sound"をテーマに
"Jah-Light Sound System"をスタート。都内を中心に各地にて活動中。
2007年、自身のレーベル"LIGHTNING STUDIO REC."を立ち上げ、
1st Singleとなる"Independent Steppers (12")"をリリース。
2012年、新レーベル"DUB RECORDS"からリリースされた1st 10"singleでは、
A.Mighty Massa / Warriors March、B.Jah-Light / Diffusion "といった
コンビネーションプレスで純国産ルーツを世界に向けて発信。
2014年7月、10周年を迎えるにあたりサウンドシステムの増築と共に、
ニューシングル"Jah-Light / The Wisdom 12" (JL-02)"をリリース。
2015年、"DUB RECORDS"からの2nd 12"single "Indica Stepper(DR-002)"をリリース。
サウンド活動も14年目に突入し、オリジナルスピーカーと楽曲を武器に
"絶対に現場でしか体感できない空間"を目標にさらなる新境地に向けて進行中!

twitter:@jahlightss
FB:@jahlight.s.s
=====================================================================

▼Total info.
https://www.facebook.com/JAH-SHAKA-JAPAN-116346262420022/


R.I.P. 阿木譲 - ele-king

追悼・阿木譲

 4年前、前に飼っていたネコの最後を看取ってくれた獣医さんから生後3日の子ネコが4匹いるから見にこないかという連絡があり、さっそく見に行った。気に入ったネコがいたら1匹もらおうかなと軽く考えていた僕は、その子ネコたちが視野に入った瞬間、思わず「2匹下さい」と言っていた。気にいるとか気に入らないという振り幅は一瞬で吹き飛んでいた。僕は即座に黒く見えた子ネコを選び、彼女は少し考えてから白い子ネコに決めた。高校生の頃、『ロック・マガジン』の編集部に押しかけたところ、編集部には10匹近くの黒猫がいて、それまでイヌ好きだった僕は、憧れの存在だった阿木譲が黒猫たちと暮らしていると知り、自分もネコ好きに変わろうと決めたのである。それ以来、犬を嫌うようになり、ネコを飼うなら黒猫がいいと思い続けていた。その願いが叶ったのである。白にはクリン、黒く見えた子ネコにはクランと名付け、半年であっという間に大きくなると、黒猫だと思っていたクランはドット模様が密集しているだけで、実際には黒猫ではないことがわかってきた。黒猫じゃなかった……。クランの模様を見るたび、僕は「阿木譲は遠い存在だな」と思わずにはいられない。そして、10月21日、本当に阿木さんは遠いところへ行ってしまった。実は少し予感があったので、驚いてはいない。最後にお会いしてからは30年近くが経っている。遠い記憶。誰とも重ならない思い出。いつから僕は阿木譲を見失っていたのだろう。

 『ロック・マガジン』は1976年に創刊されている。僕が読みはじめたのはその翌年で、パンクの記事が目当てだった。ほかにパンクのことを載せていた雑誌は『詩の世界』ぐらいしかなく、ブライアン・イーノやデヴィッド・アレンといったパンク以前の人たちに興味を持ったのも『ロック・マガジン』が彼らのインタヴューを載せていたからだった。合田佐和子が描いたジャン・ジャック・バーネルやリチャード・ヘルなど表紙のデザインも圧倒的に洒落ていて、高校生の僕には寺山修司の「地下演劇」とともにすぐにもハイブローな背伸びアイテムになっていった。下北沢の五番街というファッションビルにレコード・ショップがあり、そこでバックナンバーを買うこともできたので、ジャーマン・ロック特集なども読み耽った。そして、大阪で行われている『ロック・マガジン』のイベントが修学旅行と重なっていることを知った僕は修学旅行の最終日に「父親が危篤なので東京に帰ります」とウソをついて京都から大阪に向かい、学生服のまま心斎橋で行われていた『ロック・マガジン』のイべントに潜り込んだ。そして阿木さんの話を聞いたり、アシュ・ラ・テンペルのレコードを聴いているうちに夜中になり、東京へ帰る新幹線がなくなっていることには気がつかなかった。時すでに遅かった。阿木さんはイベントが終了してから「東京から来てくれたのは君か」と声をかけてくれ、「今夜は編集部に泊まって行けばいい」と言ってくれた。しかも、その日はアーント・サリーのライヴがあるからそれも見ていけという。そう言いながら、阿木さんは出口に向かっている女の子にひと言声をかけ、何を言ったのか聞こえなかった僕に「あれだけで彼女は理解したね」と言った。どうやらナンパしたらしいのだ。素早いなんてもんじゃなかった。

 ニュー・ウェイヴの時代になっても『ロック・マガジン』はぶっちぎりだった。チャート・ミュージックもアンダーグラウンドも区別せず、毎号、魅力的なレコードが山のように紹介されていた。その後、ネオアコという名称に落ち着く音楽はウォーター・ミュージックとして取り上げられていた。視点の中心にあるのはモダンかどうかで、シャーマニズムとモダンをどのように折り合わせていくかということが阿木譲の問いであり、世界観のすべてといってよかった。僕は完全にそれに染まってしまった。僕が最も悩んだのはザ・ポップ・グループだった。いまでもよく覚えているけれど、『ロック・マガジン』で大きく取り上げられていた『Y』をシスコの御茶ノ水店で見つけた僕は、さすがにあのジャケットを見て躊躇してしまい、『Y』を抱えたまま1時間も店内をうろうろし続けた。どうしても踏ん切りがつけられず、本当にこのレコードにモダンの要素があるのかと疑い続けた。クラフトワークのそれとはまるで様相が違うし、僕にはまだ表面的なモダンしか見えていなかったのである。しかし、最終的には阿木譲に対する信頼が僕をレジへと向かわせた。スロッビン・グリッスルしかり、リエゾン・ダンジュオーズしかりである。『ロック・マガジン』がなければその種の音楽が日本にここまで浸透したかどうかは実に怪しい。ジョイ・ディヴィジョンやザ・フォール、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレやボディ・ミュージック。阿木譲になかったのはブラック・ミュージックの要素だけで、それもある種の美学として徹底的に排除していたように見えたし、そこには時代の要請もあれば、そこまで偏向しなければ辿り着けなかった境地もあっただろうから、ひとりの表現者がとった態度としてはある種の必然だったのだろうと思う。僕はだんだん鵜呑みにはできなくなってしまったので、おそらくはアシッド・ハウスの解釈を巡って進む道も異なってしまったのだとは思うけれど、モダンとシャーマニズムを拮抗させた音楽に対する愛着はいまでも充分に受け継いでいると思う。

 新しい雑誌の名前を一緒に考えてくれと言われたり、アメリカ村にオープンしたレコード・ショップに遊びに行った際は、こんなものが見つかったと言って演歌歌手時代に出演した『てなもんや三度笠』のヴィデオを本人の解説付きで見せてもらったりと、阿木さんとの思い出は少なくはない。復刊した『ロック・マガジン』を何冊か手渡され、これを東京で有効に使ってくれと言われたり、借金取りからかかってきた電話に「ないものは返しようがない」と、むしろ阿木さんの方が高圧的にやり返していた場面に出くわしたこともある。その中でも阿木さんが東京にきた時、ピカソに行こうということになったはいいけれど、ファッション・コードなのかなんなのか誰も中に入れてもらえず、仕方がないので、六本木の路上に座り込んで雑談に花を咲かせ、「阿木さんはじゃあ、どんな曲で踊りたいんですか?」と訊いたところ、即答で「コイルだね」と返されたことはとくに印象深い。ニュー・ウェイヴが下火になり、バブル直前のディスコといえばどこもブラコンばかりで、つまんねーなーと思っていた矢先に、この人はなんてカッコいいことを言うんだろうと思い、いまから思えば、その数年後にはまるでブラコン全盛に反旗を翻すようにしてイギリスではセカンド・サマー・オブ・ラヴが勃発したのである。阿木譲はこの動きを受けてすぐにも大阪でマセマティック・モダンをオープンし、僕と野田努、そして、石野卓球がロクにできもしないのにDJをしに行ったこともある(初対面だった阿木さんと石野卓球はまるで親子が再会でもしたかのような盛り上がり方だった)。そして、阿木さんが最初にかけた曲は忘れもしないエース・ザ・スペース“9 Is A Classic”だった。ブラック・ミュージックを避けてレイヴ・カルチャーを推進させるなら、そこしかないという選択である。あの意志の強さには舌を巻いた。

 阿木譲がどんな晩年を過ごしたのか僕は何も知らない。10代の時に受けた影響があまりに大きく、そしてそれは良いところだけでなく、悪いところも受け継いでいる気はするので、そのことをもって阿木譲は自分のなかで生き続けているとイージーに思うことにしたい。阿木さんに対しては常に両義的な気持ちが渦巻いてしまうので、自分としては「合掌」などと書いてきれいにまとめてしまうこともどこか嘘くさいとは思うけれど、洋楽を扱った日本のメディアであれだけの仕事をしてきた人にはやはりご苦労様でしたというのが適切だし、その功績は褒め称えられてしかるべきだろう。
 阿木さん、お疲れさまでした。どうぞ安らかにお眠りください。

空間現代 × 坂本龍一 - ele-king

 布石はあった。空間現代と坂本龍一。昨年末に発売された『async』のリミックス盤『ASYNC - REMODELS』、そこにおいて両者はすでに出会っている。あるいは今年の6月。空間現代は、ロンドンでおこなわれた坂本のキュレイトによるイベント《MODE 2018》に出演してもいる。そんな彼らが、初めてのコラボレーションLPとなる『ZURERU』を11月3日にリリースする。
 Aサイドには『ASYNC - REMODELS』所収のトラック“ZURE - KUKANGENDAI REMODEL”を再構成した共作曲“ZURERU”が、Bサイドには空間現代のライヴでお馴染みの“SUUJI”と、それを坂本龍一がリミックスした“SUUJI REMODEL”が収録される。
 日本の音楽シーンにおいてひときわ尖った試みを続ける両者の邂逅――この機を逃すなかれ。

坂本龍一と空間現代の初コラボレーションLP『ZURERU』発売

来年に、〈Editions Mego〉傘下の、Sunn O))) の Stephen O'Malley が主宰するレーベル〈Ideologic Organ〉よりニュー・アルバムの発表も予定している「空間現代」と、Yellow Magic Orchestra や数々の実験音楽・映画音楽などで知られる日本の伝説的音楽家「坂本龍一」の初コラボレーション作品がアナログ・レコードで発売となります。

坂本氏が2017年に発表したアルバム『async』を、Oneohtrix Point Never や ARCA、コーネリアスなど国内外の様々なアーティストがリミックスした作品『ASYNC - REMODELS』の日本版ボーナストラックに空間現代が抜擢され、その際に制作され収録された「ZURE - KUKANGENDAI REMODEL」が、そこから更に、坂本龍一のピアノの内部奏法と空間現代の生演奏によって再構成・録音されたものが本作の「ZURERU」です。

本作には、この二組の共演曲“ZURERU”に加え、空間現代のライブ盤『LIVE』の冒頭や Moe and ghosts とのコラボ作品『RAP PHENOMENON』にもラップ入りで収録され、空間現代のライブではお馴染みの楽曲“数字|SUUJI”が、単曲としては初めて音盤化。そして、坂本龍一が“SUUJI”をリミックスし、7分に及ぶ荘厳なドローンに変換した“SUUJI REMODEL”を作品の最後に収録しています。

録音・ミックスは、サイデラCEO、オノセイゲン。マスタリングは、ビョークのミックスも手掛け The Mars Volta や Lightning Bolt、Gang Gang Dance など数々のマスタリングを手掛けるNYのエンジニア、ヘバ・カドリーが担当。

空間現代 × 坂本龍一
『ZURERU』

Format: LP
Label: KUKANGENDAI LLC.
Cat no: KKG-1
発売日: 2018年11月3日
価格: 2300円+税

A-1 空間現代 × 坂本龍一
「ZURERU」
B-1 空間現代
「SUUJI」
B-2 坂本龍一
「SUUJI REMODEL」

https://kukangendai.stores.jp/items/5bd017662a28623e2100039e

TREKKIE TRAX CREW - ele-king

レーベル6周年イベントに向けた10曲

TREKKIE TRAX 6th Anniversary

2018年10月26日(金)23:00~5:00
Glad & Lounge Neo

【価格】
前売り 3,000円(1D別)/当日 3,500円(1D別)

【出演者】

■Glad
813 (From Russia)
TENG GANG STARR
Amps
Carpainter (Live)
Cola Splash
gu2
iivvyy
Masayoshi Iimori
Ryuki Miyamoto
TREKKIE TRAX CREW

■LOUNGE NEO
Elevation (From USA)
Hojo b2b Persona (From Taiwan)
EGL
has
isagen
HAKA GANG
Native Rapper
Maru feat. Onjuicy
Miyabi

■Lounge: TREKKIE TRAX : Branch
Allen Mock
FIREMJ.
fuishoo
Herbalistek
kai shibata
niafrasco
Oyubi
UTAKICHI
Zepto

VJ : mika / Rio / hyahho
Photo : Toshimura
Food : 新宿ドゥースラー

【プロフィール】
TREKKIE TRAX CREW

TREKKIE TRAXは2012年に日本の若手DJが中心となり発足したインディーレーベルである。
これまでのテンプレートに囚われない様々な音楽を世界に向けて発信することを指針とし、全国各地で活動しているトラックメーカーとともに楽曲リリースを行っている。

レーベル発足よりこれまで50作品を超えるリリースをリリースし、その楽曲のクォリティの高さは日本だけでなく、世界中から賞賛を受けている。
これまでSkrillex, Diplo, Major Lazer, Porter Robinson, Mija, RL Grime, Djemba Djemba, Carnage, Wave Racerなど名だたるDJ達からサポートを受けており、2015年に開催されたULTRA JAPAN 2015ではメインフロアにて多くの楽曲がプレイされるだけでなく、レーベルから2名のアーティストが出演した。

またレーベルの総決算としてリリースされた「TREKKIE TRAX THE BEST 2012-2015 (CD)」が世界最大の音楽メディア「Pitchfork」へレビュー掲載されスコア【7.2】を獲得するほか、Skrillexが主宰する「NEST HQ」での特集記事やMini Mixのリリース、LuckyMe Recordsがホストを務めるRinse.fmのプログラムでのレーベルが特集ほか、「BBC Radio 1Xtra」や「Triple J Mix Up」でも楽曲がプレイされるなど各国のメディアに大きく取り上げている。

2016年にはレーベルのコアアーティストと共に3都市6公演のアメリカツアーを成功させるほか、Porter Robinson & Madeon - Shelter Live Tourのアフターパーティーにも出演を果たした。
他にもアメリカ・テキサス州で開催された「South by Southwest 2016」への出演やPC Music、Lido、DJ Paypal、Muchinedrum、Addison Groove、DJ Sliinkなどその他多くのアクトの海外公演のサポートを務めるほか、アメリカ・中国・韓国などでもツアーを行い多くの世界中のファンを熱狂させている。

日本国内ではm-floのTaku Takahashiが局長を務める日本最大のクラブミュージックインターネットラジオ「Block.fm」にてクルーのandrew, Carpianter, Seimeiによる「Rewind!!!」のホストを務める。
またHyperdub Label Showcaseへの出演を筆頭とする来日アクトのサポートや、Nina Las Vegas、Lucky Me Records所属のJoseph MarinettiやDeon Customのアジアツアーの主催、自身のレーベルの全国ツアーなど積極的に自主企画を行うほか、アパレルブランド「THE TEST」のコラボなどその精力的な活躍は今後の日本のユースシーンを牽引する今最も注目すべきレーベル、DJ集団と言える。

https://soundcloud.com/trekkie-trax
https://twitter.com/trekkietrax
https://www.trekkie-trax.com/

Anthony Joseph - ele-king

 ポエトリー・リーディングとジャズやファンクを結び付けたアーティストの元祖と言えば、ギル・スコット・ヘロンやラスト・ポエッツが思い浮かぶが、その系譜を今に受け継ぐのがアンソニー・ジョセフである。アンソニー・ジョセフの生まれは西インド諸島のトリニダードだが、1989年にロンドンへ移住している。2000年代半ばより音楽活動を始め、最初はスパズム・バンドというアフロ・ビート・スタイルのバンドを率いて、アルバムも数枚リリースしている。声質やヴォーカル・スタイルが近いところから、当時よりギル・スコット・ヘロンと比較されることも多かった。オランダの〈キンドレッド・スピリッツ〉、フランスの〈ナイーヴ〉や〈ヘヴンリー・スウィートネス〉からアルバムをリリースしていることからわかるように、活動範囲はイギリスだけでなくヨーロッパ全土に渡る。セカンド・アルバムの『バード・ヘッド・ソン』(2009年)ではキザイア・ジョーンズと共演し、3枚目の『ラバー・オーケストラ』(2011年)ではジェリー・ダマーズとマルコム・カトゥーをプロデューサーに迎えていたが、単なるアフロ・ビートというよりもスピリチュアル・ジャズ、サイケ・ロック、辺境音楽なども含めたミクスチャー度の高いバンドであった。

 そんなアンソニー・ジョセフだが、2013年よりソロ活動に転じ、『タイム』というアルバムを発表する。ミシェル・ンデゲオチェロがプロデュース、作曲、アレンジ、ベース演奏、ヴォーカルと全面参加したこのアルバムは、それまでのアフロ・サウンドのエッセンスを引き継ぐところはありつつも、モダンでコンテンポラリーなジャズ・スタイルを融合し、アンソニーのヴォーカルはより洗練された印象を与えるものだった。ミシェル・ンデゲオチェロが深く関わったこともあり、ロックやファンクの要素もミックスさせ、アルバムとしては非常に完成度の高いものであった。曲によってはスパズム・バンド時代のような呪術的でミステリアスな雰囲気もあり、アフロ・スピリチュアル、ゴスペル、ブルース、フォークなどのルーツ色を打ち出す場面もあった。彼の歌詞には自身のルーツである西インド諸島やアフリカに紐づけられるものもあり、それは2016年の『カリビアン・ルーツ』で前面に表れている。このアルバムはシャバカ・ハッチングス、ジェイソン・ヤード、エディ・ヒックなどロンドンのミュージシャンから、フローリアン・ペリッシエール、ロジャー・ラスパイユなどフランス勢、ベテランのスティールパン奏者であるアンディ・ナレルなどが参加しており、『タイム』に比べてずっと土着的な匂いの強いものとなっている。アフリカ音楽やラテン音楽など民族色豊かなものだが、中でもアルバム・タイトルとなっているカリブ色が濃厚で、アンディ・ナレルのスティールパンが効果的に用いられている。シャバカ・ハッチングスやジェイソン・ヤードはトゥモローズ・ウィリアーズに学び、シャバカはバルバドス出身。いわゆる南ロンドンのディアスポラなミュージシャンたちと言えるのだが、そうした者たちのルーツ・ミュージックへの志向と、アンソニー・ジョセフのカリブの血が結びついたアルバムと言えるだろう。

 2年ぶりとなる新作『ピープル・オブ・ザ・サン』も、基本的に『カリビアン・ルーツ』の世界を継承したものである。今回もジェイソン・ヤードなど前作から引き継いで参加するミュージシャンもいるが、録音はツアーの合間のトリニダードで行われており、1970年代から活動するレノックス・シャープ(ブージー名義で『フェイズ2』などのアルバムを出している)ほか、エラ・アンダール、ブラザー・レジスタンス、スリー・カナルなど現地のミュージシャンが多く参加。同じ西インド諸島のセントクリストファー・ネイビス出身のジョン・フランシスも加わるほか、アンソニーの娘であるミーナ・ジョセフもフィーチャーされている。こうした面々の参加により、『ピープル・オブ・ザ・サン』以上にカリブ・テイストが強いアルバムとなっている。エラ・アンダールの歌声をフィーチャーした“ミリガン・ジ・オーシャン”はヨルバ民謡のエッセンスを感じさせ、ダイメ・アロセナの曲に近いスピリチュアルな雰囲気を持つ。レノックス・シャープのスティールパンがフィーチャーされる“サン・スーシ“は、彼のブージー時代の作品に近いカリビアン・ディスコ・スタイル。ジョン・フランシスをフィーチャーしたタイトル曲“ピープル・オブ・ザ・サン”も同系のフュージョン・ファンクだが、こちらのビートはブロークンビーツ的。“ディグ・アウト・ユア・アイズ”はブロークンビーツとレゲエを取り入れたリズム・アレンジを施し、ジェイソン・ヤードのサックス・ソロも印象的なアフロ・ジャズへと導いている。

 “オン・ザ・ムーヴ”と“バンディット・スクール”はアルバムの中でひときわファンキーな楽曲。“オン・ザ・ムーヴ”はラスト・ポエッツのやっていたジャズ・ファンクに通じるような楽曲で、一方“バンディット・スクール”はPファンクのカリブ版と言えるかもしれない。“ジャングル”でのミーナ・ジョセフの歌はインド音楽風で、楽曲そのものからもピースフルな雰囲気があふれ出ている。スティールパンに象徴されるカリビアン・ミュージック最大の魅力は、このピースフルなムードと言えるかもしれない。一方、“サファーリング”における哀愁も西インド諸島特有のもの。この曲は“ディス・サヴェージ・ワーク”という副題が示すように、アフリカから西インド諸島に奴隷として連れてこられた祖先についての歌。アンソニー・ジョセフの歌もラップ、ポエトリー・リーディング、レゲエのトースティング、オペラをミックスしたような自在なスタイルを見せている。ダブ・ポエット風のブラザー・レジスタンスをフィーチャーした“ディーリングス”は、レゲエ、ファンク、アフロ・ビートなどがミックスされた雑食性の高い楽曲。『ピープル・オブ・ザ・サン』はカリビアンを軸に、その周辺や関係の深いルーツ音楽をいろいろとミックスしたアルバムと言えるが、それを象徴するような楽曲である。シャバカ・ハッチングスやモーゼス・ボイドなど、南ロンドンのミュージシャンの多くにディアスポラの意識が流れているが、アンソニー・ジョセフの本作もまたそうした意識に基づく一枚と言えるだろう。

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