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Equiknoxx

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三田格   Oct 11,2016 UP

 〈ソウル・ジャズ・レコ-ズ〉が5年前にコンパイルした『インヴェイジョン・オブ・ザ・ミステロン・キラー・サウンズ(Invasion of the Mysteron Killer Sounds)』はザ・バグことケヴィン・マーティンとレーベル・ボスのスチュワート・ベイカーが当時のシーンからディジタル・ダンスホールと呼べる曲を掻き集めてきたコンピレイションで、伝統にも鑑みつつ、意外性にも富んだ内容となっていた。世の中があまりにも真面目すぎて気が狂いそうになる時はこれを聴くしかないというか。マンガちっくなアートワークも素晴らしく、いまだに文句のつけようがない。ただ、何がきっかけでこの企画が成立したのか、それだけはよくわからない。ディジタル・ダンスホールのピークはメタルとダンスホールが交錯した2001年を最後にリリース量は減るばかり。2011年に『インヴェイジョン~』がリリースされた後も、回復の兆しはどこにも見えず、カーン&ニークやゾンビーの試みも散発的な印象にとどまった。あるいはEDMと結びついたムーンバートン(というジャンル)が少しは目新しかったというか。すでにそれなりの知名度は得ていたディプロやウォード21をフィーチャーしていた『インヴェイジョン~』から、ほかに誰かルーキーが飛び出し、少しでもシーンを活性化させたかというと、そういうこともなく、そういう意味ではノジンジャ(Nozinja)しかアルバムを出さなかったシャンガーン・エレクトロや、実態はファベーラ・ファンクのミュージシャンが名前を変えて作品を提供していただけのバイレ・ファンキのコンピレイションと同じくで、「コンピレイションが出た時点で終わり」みたいなものではあった。それで内容はいいんだから大した編集力だとは言えるけれど(同作にこだわらなければもちろん一定の存在感を示したプロデューサーやMCはいる。MCスームT(MC Soom-T)やトドラ・T(Toddla T)、ミスター・ウイリアムズやスパイス、テリー・リン(Terry Lynn)、エンドゲーム(EndgamE)……ケロ・ケロ・ボニートやビヨンセ、サム・ビンガやジェイミー・XXもアルバムには取り入れていた)。

 要するにダンスホールというジャンルにはもう発展性は望めないのかなと思っていたのである。しかも、ギャビン・ブレア(Gavin Blair)とタイム・カウ(Time Cow)によるイキノックスは、最初はダンスホールを下敷きにしているとは思えないほどトランスフォーメイションが進行し、ダンスホールといえば陽気でハイテンションという枠組みからも逸脱していたために何が起きているのか僕にはわかっていなかった。ワールド・ミュージックは表現する感情が変わってきていると、それは自分でも書いてきたことになのに、先入観というのは恐ろしいもので、そのことに気づくまでに2カ月もかかってしまった。確か最初に「ア・ラビット・スポーク・トゥ・ミー・ウェン・アイ・ウォーク・アップ(A Rabbit Spoke To Me When I Woke Up)」を聴いた時はDブリッジ&スケプティカル「ムーヴ・ウェイ」のパクリかなと思ってしまったほど彼らの音楽はダンスホールと結びつかなかったのである(「ムーヴ・ウェイ」がダンスホールを取り入れてただけなんですけどね)。

「ああ、そうか」と思うと後はなんでもない。ダンスホールである。確かにダンスホールの要素がここかしこに見つかる。つーか、ダンスホールにしか聴こえない。それもそのはず、ギャビン・ブレアはビーニーマンを始め、スパイスやT.O.K.、あるいはダニエル“チーノ”マクレガーやティファなどジャイマイカのシーンに長いことかかわってきたプロデューサーで、いままでそれしかやってこなかった人物なのである。タイム・カウはケミカル(Kemikal)の名義で比較的最近デビューしたMCらしく、もしかして若いのかなと思って写真を眺めてみるけれど、とくに歳の差があるようには見えない。ふたりの役割分担もよくわからないし、レコード盤(限定でゴールド盤もあるらしい)には作曲のクレジットもない。録音は、古くは2009年に遡るそうで、ミスター・スクラフのジャケットなどを手掛けてきたグラフィック・デザイナーのジョン・クラウスがコンパイルしたものをデムダイク・ステアのレーベルが世に出している(ショーン・キャンティとマイルズ・ウィットテイカーもコンパイル作業にはかかわっていると記してある)。そして、それだけのことはあるというのか、やはり異質であることには変わりなく、「ポーリッジ・シュッド・ビー・ブラウン・ノット・グリーン(Porridge Should Be Brown Not Green)」になると何を聴いていたのか途中でわからなくなり、スネアの連打から始まる「サムワン・フラッグド・イット・アップ!(Someone Flagged It Up!!)」に至っては背景にダブ・テクノがそれとなく織り込まれ、ベーシック・チャンネルへのジャマイカからのアンサーといえるような面も出てくる(マーク・エルネスタスも気に入っているらしい)。

 アルバム・タイトルにも入っている「Bird」というのは、実際に鳥の声を模したような音作りにも反映はされているだけでなく、どうも彼らの音楽はダンスホールだけではなく、ソカにも大きく影響されているということを表しているようで、実際にアフリカン・ドラムとレイヴ・シンセイザーが絡む「リザード・オブ・オズ(Lizaed of OZ)」も耳慣れないサウンド・センスに仕上がっている。

 ここからまたダンスホールが……なんて。

三田格