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Ground

ExperimentalGlobal BeatHouseTechno

Ground

Sunizm

ESP Institute

ESP Institute Lighthouse Jetset 三田格   Oct 29,2018 UP

E王

 「大阪で生まれた人の名字はみなオオサカなのヨ」とは大坂なおみのジョークだけれど、大阪のDJグラウンドの本名もオオサカなんだろうか(なんて)。Gr◯un土 a.k.a. Ground名義のファースト・アルバム『Sunizm』の1曲めは“Osaka Native”というタイトルが付けられ、なぜか“ソーラン節”がサンプリングされているので、ちょっと混乱もするけれど、べっとりと地を這うようなトライバル・ドラムを軸にズイズイと進んでいく曲調はちょっと癖になる。大阪というよりジャングルをふざけて匍匐前進しているような気分に近い(それとも大阪というのはそういう街なんだろうか?)。続いてシングル・カットされた“Logos”もやはりパーカッションがメインの曲ながら全体に跳ねるというよりは地に足が吸い付くようなノリで、随所に散りばめられている日本のエスニシティよりも、そうしたリズム感の重心の低さだったり、もしかすると摺り足で踊れてしまうようなところが日本を感じさせるアルバムといえる。汎アジア的な曲調の“Follow Me”や、なんとなくインドネシアあたりが思い浮かんでしまう“Lady Plants”も同じくで、なんとかして日本風を装おうとするのではなく、適当にアジアっぽいムードをごちゃ混ぜにしながら、それでいてとっ散らかったような印象を与えることもなく、じわじわと身体感覚に訴えかけてくるところが『Sunizm』はいい。スガイ・ケンや食品まつりもそうだけれど、日本的な記号を導入しながらも、それをクラブ・ミュージックとしてまとめるときに絶妙の距離感をもってミックスしているので、それこそ、去年、紙エレキングでコムアイに取材した際、無理に日本的なことをやろうとしなくても、日本的なものがサウンドに「滲み出ればいいかな」と話していた通り、グラウンドもトヨムも「滲み出させる」スキルが高いのだと思う(シャフィック・チェノフとジョイント・アルバムをリリースしたカツノリ・サワやエナはまるっきりガイジンだけど)。僕の覚えている限り、80年代以降、日本のエスニシティをポップ・ミュージックに融合させようとして、もうひとつポップ・ミュージックとしての完成度を損なってしまった先達たちとはどこかが違う。上々颱風とかね。

 DJ Gr◯un土のキャリアは長く、15年ではきかないみたいだけれど、僕は紙エレ20号でモリ・ラーの記事を書いているときにその存在を初めて知ることになった。和物のエディットで注目を集めたモリ・ラーと御山△Editというユニットを組んでいるということを知り、なんだろうと思ったのが最初。活動の範囲は広いようで、地元・大阪でDJ喫茶、ChillMountainHutteをプロデュースし、4年間営業を続け、どういう経緯なのか、南米のミュージシャンとも交流が深いらしい。デビュー・アルバムとなる『Vodunizm』は自ら主催する〈チル・マウンテン・レック〉から2015年にリリース。アフリカやアジアを溶け合わせたサウンド・スタイルはすでに確立され、これがリンスFMで大きく取り上げられたり、以後は海外活動も増えていったようである。ジェイ・グラス・ダブスやダッピー・ガン・プロダクションズといった眩しいリリースが続くブリストルの〈ボーク・ヴァージョンズ〉からリリースされたカセット『MIZUNOKUNI』では生真面目なアンビエント・ダブを聴かせ、このところのミュジーク・コンクレートやアカデミック・リヴァイヴァルではなく、しっかりとクラブ・ミュージックのサイドに立っていることを印象付ける。これに関しては新しさはないかもしれないけれど、完成度は高い。シーカーズ・インターナショナルとレーベル・メイトというだけで、そこはOKというか。ちなみに〈チル・マウンテン・レック〉からは2013年の時点で新人を中心に和泉希洋志や7FOを加えた全19組による2枚組CD『ChillMountainClassics』もドカンとリリースされている(未聴)。

 『Sunizm』の後半はスピリチュアル度がアップしていく。ベースで包まれていくような感覚が増大し、食品まつりの『EZ Minzoku』とは対照的に、エスニシティを記号として捉えるのではなく、良くも悪くもそのような音を出すことに内面も伴わせたいという欲求が強く働くのだろう。ラジオ・ノイズを使った“Koot Works”ではキューバ音楽のようなものがループされ、いわゆる南洋気分が全開で、スピリチュアルとの距離感とも相まって、どうしても細野晴臣の陰がちらつくものの、細野サウンドとは何かが決定的に違う。同じものを目指したとしてもバックボーンから何かがあまりにも違うということなのだろう。むしろ最後を飾るタイトル曲は(そのように感じる人はあまりいないかもしれないけれど)ボアダムズを完全に脱力させたような響きがあり、なるほど“Osaka Native”ではじまる意味はそこにあるのかもしれない。関西ゼロ年代は続いていたというか。

三田格