「ZE」と一致するもの

Bim One Production - ele-king

 Bim One Productionが久しぶりの新作を出す(https://project.bim-one.net/)。ブリストルのグライム/ヒップホップMC、RIder Shafiqueをフィーチャーした10インチのアナログ盤、プレオーダーは本日(23日)から開始、デジタル/ストリーミングでも聴くことができる。スコーンと抜けたリズムにストイックな空間および瞑想的な言葉が格好いい曲で、映像(by 鷹野大/Tabbycat)があるのでまずはどうぞ。

 RIder Shafiqueは過去、BSOのために何度か来日しており、Bim One Productionとはかねてより親交あり。このコラボは2作目になり、映像には下北沢Disc Shop Zeroの店内がばりばりに写っている。曲の最後のほうには亡き飯島直樹さんも登場、じつはこの映像は飯島さんがまだ生きていたときに本人も確認しているという話で、Bim One ProductionとしてはZEROの27周年にあたる4月27日のリリースを前もって考えていた。
 新型コロナの影響で現在店舗は開けられず、無念のリリースとなったが、彼らのソウルが籠もったこのシングルは、たくさんの人に飯島さんのDIY精神をうながすことだろう。チェックよろしくです。
 

Bim One Production - Guidance feat. Rider Shafique
カタログ番号:BIMP003
デジタル配信:Bandcamp / Spotify / Apple Music / Amazon / ReggaeRecord Downloads 他 *4/24配信開始
レコードフォーマット:10inch Vinyl / スタンピング、ナンバリング付き 
限定100枚 *4/24プレオーダー開始 4/27発売
配信サイトまとめ: https://kud.li/bimp0003 (4/24公開)

DJ KRUSH - ele-king

 いまから15年以上前のことだが、渋谷のとあるクラブで、DJ KRUSH にこう言われたことがある。「そのままでいてくれ」と。彼のサングラス越しの目線に、実際のところどんな真意が秘められていたかは分からない。だがそれは、自身のグループでの活動を始めて数年間、デモテープや12インチを祈るように彼に手渡していた筆者にとっては、とてつもない褒め言葉に聞こえた。「このままでいいのか!」「信じる道を突き進めばいいのか!」というわけだ。
 だからいま、DJ KRUSH の新譜を前にして、自然と次の疑問が浮かんだ。果たして DJ KRUSH は、「そのままでいる」のだろうか。
 結論から言えば、1994年のファースト・アルバム『KRUSH』から、2020年の本作まで、DJ KRUSH は、「そのまま」だ。とはいえ、懐古趣味に引き摺られ、今作の中にいつまでも『Strictly Turntablized』(1995)や『Meiso』(1995)のような初期サウンドの面影を探そうというわけではない。なにしろ、26年の歳月がもたらしたテクノロジーの変化に伴い、機材や制作方法、そしてなによりもそのアウトプットとしてのサウンドは、とてつもなく変化してきたのだ。
 では何が変わらず、「そのままでいる」というのか。それは、DJ KRUSH がその興隆の一端を担った「アブストラクト」という方法論に対する「構え」のようなものだ。
 とはいえ、サウンド面の変化は大きい。前々作『軌跡 -Kiseki-』(2017)はラップ・アルバムだったし、前作『Cosmic Yard』(2018)は近藤等則らの楽器奏者とのコラボレーションを含んでいたが、今作は全12曲、ノーゲスト、DJ KRUSH ひとりだけで向き合った作品だ。
 初期作品から近作にかけての一番大きなサウンド面の変化は、AKAI のサンプラーを使ったレコードからのサンプリング・ミュージックから、Ableton Live 中心で制作されたDTMへの移行ということになるだろう。近作でもサンプリングCDや、あるいは楽器奏者や自分で演奏したフレーズからのサンプリングという手法は継続されている。だが、サンプリングという側面で考えれば、今作は、これまでにないほど、サンプリング感の少ないアルバムと言えるだろう。
 その分、複雑な音色のモダンなシンセやノイズの打ち込み色が濃厚な今作は、あえてジャンルの名を挙げれば、インダストリアルやダブステップ、そしてLAビートと共鳴し合う、ビート・ミュージックだ。その執拗なまでに重ねられたレイヤー状のサウンドの塊の密度は、これまでないほどに、高い。そして4小節ごとに訪れる展開の慌ただしい豊かさ、キメの数々もかつてなく丁寧に構築されている。つまり縦(トラック数)にも横(経過時間)にも増えたり減ったりを繰り返し、変化し続ける楽曲群。今作にはひとりで制作に対峙する DJ KRUSH の意気込みが、いたるところに見え隠れしている。
 どういうことか。今作の流れを追いながら、聞こえるものを言語化してみたい。

 オープニングの “Incarnation” は、アブストラクトな件の場所への、不穏な案内状だ。甲高いスネアがノックする、普段とは別の聴覚のドア。今作の一曲一曲は、毎月一曲ずつ配信リリースするという試みのもと、制作されてきた音源だ。だがアルバム用にミックスが施された同曲は、キックとスネアが一気に前景に踊り出て、何よりも「DJ KRUSH の音楽を聞いているのだ!」と知らされる。不穏でも幽玄でもあるSEとキックが、4小節ごとに小爆発を繰り返す。裏拍の太鼓のような打楽器やサイドチェーンの効いた風の音色が教えてくれるのは、DJ KRUSH が背負ってきた「和」の鳴らし方。全体を通して鳴っている死者たちの高らかな笑い声のような音色は、タイトル通り「受肉したビート」を指し示しているようだ。
 続く “Doomsayer” では、DJ KRUSH の音楽的な顔が覗く。3連ベースで刻むリズムが運ぶのは、和風でもありオリエンタルでもあるようなメインのホーンの旋律の力強さと、対照的なオルゴールのアルペジオの内省的な調べ。それが指し示す叙情は、どこか Boss The MC との名曲 “Candle Chant” のパッセージを想起させる。2小節毎の2種類の和音で聞かせてくれるループが、少ない音数で熱くなり過ぎないエモーションを捉える。ほぼ4小節ごとにいくつものサウンド群が入れ替わり立ち替わり現れて交響曲のように展開する本曲は、アルバム随一「物語」を感じさせる曲かもしれない。
 3曲目 “Onomatop” では、細かく刻まれるサブベースとハイピッチのスネアがドライヴするバンガー。注目すべきは、順番に重ねられる、ハットの代わりにリズムを刻む3種類の音色たちだ。中央で鳴る吐息を加工したようなハットのようなサウンドは、人が息を吐く際の音色が口の形で変わるように、ハイハットのオープンとクローズを代弁している。中央と左右にパンされ絡み合う粘着性のスタブ音も、どこか生物の立てる音を想起させる。さらにはアトモスフェリックのSE然としたうねるノイズが中央の後ろを飾るが、これもまた人や獣の唸り声を加工したようなサウンドだ。「オノマトペ」というタイトル通り、これらは人の声を入力の一部に使っているような音色たちなのだ。今作では、このようなオノマトペ・サウンドが積極的に用いられ、有機的なサウンド作りに一役買っている。
 4曲目 “Regeneration” で披露されるズバりフライング・ロータスを想起させるトライバルな打楽器とクラップから成るヨレたビートとコズミックなシンセのアルペジオは、DJ KRUSH・meets・LAビートと呼びたくなるようなサウンドだ。だが人間の歌声ベースのスピリチュアルな調べが、このビートが紛れもない DJ KRUSH 製であることを強調する。若き時分に DJ KRUSH を聞いてインストゥルメンタルのアルバム表現の可能性に気づいたフライング・ロータスとの、インスピレーションの往復運動。
 後半に突入し、8曲目 “Infinite Fragment” で耳に飛び込んでくるのは、徹底的にドライなキックとスネアだ。そしてそれとは真逆の地底の奥底から響くような残響音を伴ったSEの数々。それらが表象するのは、地底から吹き付ける風やマグマの唸りであり、自然が本来持つ不穏さであり、冷たい雨であり、人為を焼き尽くそうとする炎である。隙間を縫うように聞こえるのは、縦横無尽に飛び回る微生物のような跳躍音。だがこのようにいくら言葉を尽くそうとも、ここには本来言葉で形容できそうなサウンドは何もない。だから、DJ KRUSH の音楽は「アブストラクト」と呼ばれる。彼のDJプレイで、フロアの真ん中で突然、いまいる場所を忘れ、人間や生物の生と死、自然や何か大きなものと対峙するような感覚に陥ったことがあるなら、それは「アブストラクト」であることが呼び水になっているからに違いない。オノマトペといい、自然の環境音を想起させるシンセ音といい、マシナリーとオーガニックのあわいを音で表現することこそ、DJ KRUSH が「そのまま」で探求を続けている試みのひとつだろう。
 叩きつけるようなキックとスネアが駆動する “Cell Invasion” と “C-Rays” を経てたどり着く12曲目の “Signs of Recovery” は、BPMがスローダウンする一方で、32分ベースで刻まれるハットとシンセのスタブによって、逆にスピード感が強調される構造をしている。あえて言うなら、これは DJ KRUSH 流のトラップだ。後半にかけて徐々に盛り上がる展開がフロアの興奮を想像させるが、前半の残響の深い汽笛のような笛の音色がもたらす陶酔は、トラップの代名詞である酩酊感と符合する。
 ビートメイカーにとって、最初はDJであることが前提条件でなくなって久しいが、DJ KRUSH は何よりもまず「DJ」であり続けている。例えば YouTube にアップされている2019年にバルセロナで開催されたSonarフェスティヴァルの彼のDJセットを聞けば、現在進行形のバキバキのブロステップなどクラブバンガーを矢継ぎ早に繰り出し、クラウドを湧かせている。だからそのDJプレイの中に自身の曲を入れたときに、最新モードの楽曲群にもマウントを取りにいける音圧とリズムが必要だ。どんなにビートの種類が変わっても、DJ KRUSH の音楽が、聴衆に眩暈を起こさせるダンス・ミュージックであることは、決して変わらない。
 アルバムのラストを飾る “Bluezone” は、金属を打ち鳴らし、深さを競い合うようなインダストリアルなSEサウンドから始まる。今作で何度も存在感を誇示してきたサブベースとタッグを組むキック、そしてドライなスネアが、ゆっくりと感情を押し殺しながら醒めたビートを立ち上げる。するといくつものシンバルや打楽器の音色で狂ったように跳ね回る32分音符のリズムが、徐々に明滅し始める。シンセのリフが導く後半から、どこまでも音数を増やしながら重なりゆくリズムのシンフォニーは、やがて絶頂を迎え、弾けて消える。その残響音の余韻は、そのまま1曲目の “Incarnation” のイントロに輪廻するだろう。

 かつて DJ KRUSH が、どのレコードのどの楽器のサウンドやフレーズを引っ張ってきたのか特定できない「抽象的な」音をサンプリングしたり、スクラッチして組み立てたビートは、「アブストラクト」という名にふさわしい発明だった。だが今作にいたって「アブストラクト」を提示する方法は、極めて大きな変化を遂げた。彼が辿り着いた方法は、うねりながら咆哮する無数のシンセやSEサウンドをレイヤー状に織り上げることによって、複雑に変化し続け、かつ全体の輪郭すら把握できないほど巨大なゆえに「アブストラクト」である音塊を産み落とすことだった。
 しかし方法は変われど、DJ KRUSH が「アブストラクト」な音像を用いて接近しようとしている境地は変わらない。フロアの真ん中で身体を揺らす、あるいはヘッドフォンを装着して自室にこもる僕たちに、DJ KRUSH が見せてくれる景色=眩暈は、ずっと「そのまま」なのだ。

Akira Inoue - ele-king

 世界の和モノ・ディガーたちによって発掘され、再評価されているアルバムがまたリイシューされる。井上鑑による1984年の問題作にして隠れ名盤、モダンクラシカル・ダンス・アンビエントとでも言えばいいのか、カテゴライズしようのない美しき作品『カルサヴィーナ』、奇跡の再発。清水靖晃の『Kakashi』、Mariahの『うたかたの日々』、高田みどりの『鑑の向こう側』、ムクワジュの『Mkwaju』、吉村弘の『Green』、芦川聡の『Still Way』なんかと並列されるべく80年代の日本の音楽シーンから生まれた素晴らしきアヴァン・ミュージックのひとつである。『和レアリック・ディスクガイド』でも大推薦盤として掲載されておりますよー。
 『カルサヴィーナ』は、細野晴臣『花に水』(名作!)や高橋悠治の水牛楽団など、いまとなっては入手困難な作品が居並ぶ冬樹社のカセットブック・シリーズ、その一角を占めた作品で、もちろん今回は世界初の再発&CD化となる。ちなみに井上鑑には、すでに和モノ・ファンのあいだではマストな1枚となっている『Prophetic Dream = 予言者の夢』という、メロウAORフュージョンの名作もあり、近年リイシューされたところでいえば山口美央子もあり、日本のポップ・シーンで数多くの楽曲を手がけてきた作編曲家にして鍵盤奏者である。『カルサヴィーナ』は、そんな井上鑑の当時としてはもっとも尖った部分が出ている野心作/実験作だが、しかしいま聴くと耳障りは驚くほど良く、むしろ現代の音楽としての最高の陶酔が広がっている。
 今回のCDには本人による回想録も封入されるとのことで、資料性の高い1枚になっている模様(解説は『和レアリック・ディスクガイド』監修の松本章太郎)。これはなくなる前にゲットしておきたい1枚です。

日本を代表する作曲家、アレンジャー、キーボード奏者である井上鑑が1984年にカセット・ブックのみで発表した幻想の音世界『カルサヴィーナ』が世界初CD化!

20世紀初頭の伝説的バレエダンサー “ニジンスキー” をテーマに取り上げ、クラシックかつエレクトロニックなスタイルでアンビエント〜ミニマル〜エスノ〜フュージョンとを織り交ぜたまさに時空を超えたインストゥルメンタル・ミュージック!

タイトル:カルサヴィーナ / Karsavina
アーティスト:井上鑑 / Akira Inoue
【CD】
発売日:2020.4.29
定価:¥2,600+税
PCD-26076
解説:松本章太郎

【収録曲】
01. プロローグ
02. アントルシャ・ディス
03. ア・キ・エス・パスポート
04. INNOVATIONS
05. ワスラフのいちご狩り
06. 第二幕のはじまり
07. 湖のピアノ
08. オンディーヌ
09. ア・キ・エス・パスポート (Version 2020) *
* Bonus track

細野晴臣『花に水』、矢口博康『観光地楽団』、ムーンライダーズ『マニア・マニエラ』、南佳孝『昨日のつづき』といった一連の作品とともに冬樹社 “カセットブックシリーズ SEED” として1984年に発表された井上鑑『カルサヴィーナ』。1st アルバム『予言者の夢』(1982年)以降、ソロ名義で自身の音楽性をさらに追求すべく試行錯誤が繰り返されるなか制作された本作は、20世紀初頭の伝説的バレエダンサー “ニジンスキー” をテーマにテクノロジーとともに飛躍的な進化を遂げた電子楽器&機材と稀有なプレイヤーたちによる生演奏とを精密に重ね合わせた先鋭的なサウンドで、「当時だからこそ可能であった」と本人も語るように長時間に及ぶレコーディングやスタジオワークから生み出され楽曲はそれぞれアンビエント、ミニマル、エスノ、フュージョンといった側面を持ちながらも全編通してはカテゴライズ不可能なまさに幻想の音世界! 今回の再発にあたりオリジナルのカセットテープに最新デジタル・リマスタリングを施し新たなマスターを作成、さらに井上鑑本人とエンジニアとして参加していた藤田厚生による当時の回想録もブックレットに掲載し本作の成り立ちからどのように制作されたのかまで詳細に記された80年代の音楽シーンが垣間見ることもできる資料的にも価値のある歴史的作品です!

【Musicians】
井上鑑(Compose / Arrange / Piano forte / Synthesizer and more)
山木秀夫(Drums / Percussions)
川村昌子(筝 / 十七絃筝)
銅銀久弥(V. Cello)
カクラバ・ロビ(ベラフォン / Percussion) on M8
高水健司(E.Bass) on M4, M6, M8
今剛(Guitar) on M8
浦田恵司(Synthesizer Manipulate / Sound Design)
野坂惠璃(二十五絃箏) on M9

【井上鑑】
1953年9月8日、東京生まれ、作編曲家、作詞家、ピアノ、キーボード奏者。チェリスト・井上頼豊の長男であり桐朋学園大学作曲科にて三善晃氏に師事。桐朋入学前後より故・大森昭男氏との出会いによりCM音楽作曲、スタジオワークを始め、現在に至るまで寺尾聰 “ルビーの指環” 大滝詠一、福山雅治、他膨大な数のヒット曲、話題作を生み出す。1981年 single 「Gravitations」、Album 『予言者の夢』で〈東芝EMI〉よりソロ・デビュー、以降先鋭的サウンドとメッセージに満ちた言葉を駆使した通算17枚のソロ・アルバムを発表。初期作品も再発売が相次ぎ、新世代DJたちの熱い支持を得ている。創作活動はジャンルを超え、箏や津軽三味線などの邦楽器やチェロを始めとする弦楽器と真摯に向き合った作品は独特の変拍子感覚と近現代的書法、優美なメロディーとハーモニーを併せ持つものである。2011年、書籍『僕の音、僕の庭』発表、2013年より「連歌・鳥の歌」プロジェクト主宰、現地カザルス財団のサポートを得て2016年カタルーニャ、ウクライナにて公演。同時期よりソロリサイタルを年1回シリーズで開催。Bela Bartok、Peter Gabriel を敬愛し David Rhodes、Tchad Blake など英国アーティストとの作品作りを80年代より続けている一方、盟友である今剛、山木秀夫などと商業ベースを超えた音楽作り+ライブを精力的に展開。

Jay Electronica - ele-king

 Just Blaze が手がけるトラックのインパクトも含めて、2009年を代表するクラシック・チューンとなった “Exhibit C” から、なんと10年以上の時を経てようやくリリースされた Jay Electronica のファースト・アルバム『A Written Testimony』。彼自身が完璧主義すぎるがゆえに、これほどリリースが遅くなったというのもなんとも皮肉な話であるが、ファン以上にここまで待った所属レーベル、〈Roc Nation〉の社長である Jay-Z の忍耐力もなかなかのものである。そんな鬱憤を晴らすかのように……というわけではないだろうが、なんと本作にはフィーチャリング・アーティストとしての表記など一切ないにもかかわらず、Jay-Z がほとんどの曲に参加しており、Jay Electronica 名義のアルバムでありながらも、まるでふたりのデュオ作かのような構成になっている。したがって、Jay Electronica にとってのデビュー・アルバムとは素直に言いにくいのだが、非常にレベルの高いヒップホップ作品であるのは間違いない。

 信心深いイスラム教徒としても知られる Jay Electronica であるが(ジャケットのカバーデザインにもアラビア語が用いられている)、オープニングを飾るイントロ曲 “The Overwhelming Event” では、ネーション・オブ・イスラムの最高指導者であり過激な言動で知られる活動家の Louis Farrakhan (ルイス・ファラカン)による演説の一部がそのまま収録されており、「アメリカの黒人こそが本当のイスラエルの子供である」というスピーチが展開されている。前出の “Exhibit C” でも一部でアラビア語のラインを織り交ぜて、イスラム教徒としてのスタンスを明確に示していた Jay Electronica であるが、本作ではその姿勢がより強固なものとなり、アルバムの中のひとつの大きなテーマとなっていることも、このイントロ曲から伝わってくる。そして、その勢いのまま、2曲目の “Ghost of Soulja Slim” もまた、より過激なファラカン師のスピーチでスタートするのだが、そこからの Jay-Z、Jay Electronica と続くマイクリレーが凄まじく格好良い。この曲はタイトルの通り、Jay Electronica とも同郷(ニューオリンズ出身)であり、2003年に銃殺されたラッパーの Soulja Slim をテーマにしているのだが、Jay Electronica 自らがプロデュースするサンプリングを駆使したトラックとふたりのラップの相性も完璧で、この曲での張り詰めたテンションの高さはアルバムを通して見事に貫かれている。

 アルバムの核になっている曲を幾つかあげるとすれば、まずは Travis Scott をフィーチャした “The Blinding” がその筆頭に挙がるだろう。Swizz Beatz、Hit-Boy、AraabMuzik という、3人の名だたるプロデューサーがクレジットされているこの曲は、曲の前後半でトラックが全く別のものになるという変則的な構成で、Travis Scott によるコーラスを挟みながら、Jay-Z と Jay Electronica の掛け合いが非常にスリリングに展開し、複雑に絡み合うリリックの中にふたりのタイトな関係さえも伺える。この “The Blinding” の曲中では、本作がたった40日間で作られたことにも触れられているが、おそらく数少ない例外であるのが、2010年にインターネット上にて初めて発表されていたという “Shiny Suit” だ。Pete Rock & C.L. Smooth の名曲 “I Got A Love” と全く同じサンプリングネタ(The Ambassadors “Ain’t Got The Love Of One Girl (On My Mind)”)を大胆に使用し、自らのルーツである90sヒップホップのフレイヴァを放ちながら、すでに10年前には Jay-Z と Jay Electronica のコンビネーションができ上がっていることがよくわかる。No I.D. がプロデュースを手がけ、スペイン語も交えながら、いま現在も続くアメリカという国の問題について言及する、本作中、唯一の Jay Electronica のソロ曲である “Fruits Of The Spirit” を経て、後半のピークとも言えるのが、The-Dream をフィーチャした “Ezekiel’s Wheel” だ。旧約聖書から引用された “Ezekiel's Wheel” というワードはUFOを表しているとも言われているのだが、Brian Eno と King Crimson の Robert Fripp によるアンビエント作品からのサンプリングがこの曲名とも絶妙にマッチし、プロデュースを手がけた Jay Electronica 自身のセンスの高さにも驚かされる。

 Jay-Z とのコンビネーションの良さにケチをつける気は毛頭ないが、次はぜひプロデューサーとしての Jay Electronica のバリューも最大限に活かした上で、本当の意味での彼のソロ・アルバムもぜひ聞いてみたいと思う。

KURANAKA & 秋本 “HEAVY” 武士 × O.N.O - ele-king

 今年でなんと25周年(!)を迎える KURANAKA a.k.a 1945 主催のパーティ《Zettai-Mu》が、4月25日(土)にストリーミングにてライヴ配信を敢行する。題して「Zettai-At-Ho-Mu」。もともと24日に開催される予定だった NOON でのパーティに代わって開催されるもので、秋本 “HEAVY” 武士 と O.N.O によるスペシャル・セッションもあり。これはすばらしい一夜になること間違いなしでしょう。なお視聴は無料の予定とのことだが、投げ銭のような仕組みも試験的に導入されるそうなので、アーティストや運営・製作に携わる人たちをサポートしよう。

[4月23日追記]
 上記の「Zettai-At-Ho-Mu」ですが、開催が5月23日(土)に延期となりました。詳しくはこちらをご確認ください。

Guided By Voices - ele-king

 ガイデッド・バイ・ヴォイシズはもうアルバムを作らなくなっている。というか、少なくとも一般的な意味での「アルバム」は作らない。だが、ガイデッド・バイ・ヴォイシズはそもそも通念的な「ロック・バンド」ではないわけで、したがってそうなっても不思議はないのかもしれない。
 いつ頃からこの状態になったかははっきりと特定しにくい。1980年代のオハイオ州デイトンで、中心人物にして全活動期間通して参加している唯一のメンバーであるロバート・ポラード宅の地下室にふらりとやって来たほとんど雑多と言っていい顔ぶれからはじまった彼らは、ある意味普通に言うところの「バンド」だったためしはなかったのだから。そこから彼らの生み出したボロくくたびれたローファイな傑作群は、USインディ界のオリジン・ストーリーのひとつに型破りでときに困惑させられもする奇妙な背景をもたらしていった。それでも、バンド初期にあたる80年代からもっとも長い散開期に入った2004年までの間に彼らの放出した作品の多くは、ユニークかつしばしば特筆に値する内容を誇る一連の作品群として熱く聴きこめる。これらのアルバムは、ひっきりなしに変化を潜っていたこのバンドがそのときそのときの状況に応じて発した反応をくっきり刻んだものとして理解し消化できると思う。

 そうなった理由として、レコード・レーベル側のプロモーションおよび作品流通スケジュールという縛りは部分的に影響していたかもしれない。ゆえにガイデッド・ヴォイシズというブランド名が発する作品は1年か2年に1作程度に絞られることになり、ポラードは氾濫する膨大なソングライティングの流れをソロ作や数多のサイド・プロジェクトへと向けることになった。実際、2004年に起こったガイデッド・バイ・ヴォイシズの「終結」以来(註1)、ポラードは自らのレーベルを通じ、復活したガイデッド・バイ・ヴォイシズのふた通りのラインナップも含む多種多様な自己プロジェクトで実に50枚以上(数えてみてほしい!)のアルバムを発表してきた。折りに触れてでたらめにすごい勢いで時間の裂け目から流れ出し現在に漂着する、忘れられていたガレージ・パンクの古いヒットやレア曲の尽きることのない泉か何かのように。
 では2020年のいま、ガイデッド・バイ・ヴォイシズのようなバンドをどうとらえればいいのだろう?
 1994年に丁寧に歌の形で提示してくれたように(註2)、ロバート・ポラードにはじつは4つの異なる顔がある。まず彼は、作品を通じて自らを検証し理解するという意味で科学者だ。また彼はロック・ヒストリーに対する意識が非常に強く、ゆえに彼の音楽はよくロックの伝統やインディ音楽ファンのライフスタイルに対する一種の間接的な解説になってもいて、その意味では記者ということになる。自分自身のために音楽を作っているだけではなく、それが聴き手のくそったれな日常への癒しを処方薬のように振り出すことになってもいる意味で、彼は薬剤師でもある。そして彼は迷える魂でもある――彼に自由をもたらす唯一の径路を約束してくれるものの、やればやるほど彼をつまはじきにしていく、このインディ・ミュージック界というものにますます深くはまって自らを窮地に陥れているという意味で。もっと平たく言えば、ポラードの音楽は常に内省とポップ感覚とのバランスをとってきたし、かつそのオタクな起源に対する自覚とひたむきな傾倒とのつり合いも見事に保ってきた、ということだ。
 さまざまな要素が複雑に絡まったこれと同様のバランスは、ガイデッド・バイ・ヴォイシズのファン連中がなかば皮肉混じりに、しかし同時に心底からの思いで彼らを「現代最高のロック・バンド」だのそれに近い表現で賞賛する様にも表れている。そうした形容は、バンドの誇る否定しようのないパフォーマンスおよび作曲技巧の熟練ぶりを褒め称えるとともに、じつにマニアックでニッチな居場所におさまって満足している何かに対してそれこそスタジアム・ロック・バンドを祭り上げるような大袈裟なフレーズを投げかけている、彼らファン自身を自ら笑い飛ばすものでもある。その意味で、ガイデッド・バイ・ヴォイシズはオルタナティヴとインディの気風に内在する、直観に反するあまのじゃくな核を代表するバンドと言える。パワフルな共有体験で人びとをひとつにしようとする一方で、彼らはまたメインストリーム側に定義された「普遍的な体験」なる概念をあえて覆そうとしてもいるのだから。
 というわけで、『Surrender Your Poppy Field』に話を移そう。ローファイな地下室レコーディングの美学とプログレのスケール感、崇高なポップ錬金術とガタついたポスト・パンクの無秩序とが楽しげにぶつかり合うこの作品は、それらすべてをドクドク鼓動するロックンロールのハートに備わった救済のパワーに対する真摯で子供のように純真な、衰え知らずの情熱的な信頼でもって演奏している。
 ここでまた、ガイデッド・バイ・ヴォイシズから滔々と流れ出す音楽を果たして「アルバム」のように不連続なフォーマットで区切ることはこれ以上可能なのだろうか? という本稿冒頭の疑問が頭をもたげてくる。現行ラインナップになってからわずか3年の間に、彼らは既にアルバムを7枚発表し(うち2作は2枚組)、3枚は2019年に登場している。読者の皆さんがこのレヴューを読む機会に行き当たる前に、また別の作品を発表してしまっている可能性だって大いにあり得る。そうした意味でこの最新作のことは、彼らにとっておなじみのさまざまな影響群・テーマ・創作アプローチの数々をミックスしたものを再び掘り下げ調合し直す、その休みなくえんえんと続くプロセスのもっかの到達点として理解した方がいいだろう。いずれにせよ、本作は見事な名人芸を聴かせてくれる。『Zeppelin Over China』(2019)での威勢のいいガレージ・ロック、『Warp and Woof』(2019)の抑制されたローファイな実験性および脱線ぶり、『Sweating the Plague』(2019)でのプログレへの野心を組み合わせた上で、それらすべてが1枚の誇らしく、タイトに洗練されたレコードとしてまとまっている。1990年代および2000年代初期の〈マタドール・レコーズ〉在籍時以来、ガイデッド・バイ・ヴォイシズの最良作かもしれない。

 “Physician”やアルバム1曲目“Year of the Hard Hitter”のような曲はまったく脈絡のなさそうな別の曲の断片の合間をきまぐれかつスリリングに行き来するが、そのどれもにロックなリフの生々しい調子がみなぎっている。この点に関しては、1997年から2004年までの間(この時期のハイライトとして『Mag Earwhig!』、『Isolation Drills』、『Speak Kindly of Your Volunteer Fire Department』、『Half Smiles of the Decomposed』がある)ポラードとともにバンドを牽引した後、現在の新体制ガイデッド・バイ・ヴォイシズに返り咲いたギタリストのダグ・ギラードの貢献が大きいのはまず間違いないだろう。彼が顔を出すと必ずと言っていいほどキャッチーでヘヴィなハード・ロック/グラム・ロック調のギター・リフが前面に出てくるし、ここでそのリフはポラードのもっとも喜びに満ちて楽しげな、ゴングやジェネシスが残響したかと思えばXTCやワイアーを彷彿させることも、という具合に敏捷に変化するソングライティングとの対比を生んでいる。
 ガイデッド・バイ・ヴォイシズのベストな作品がどれもそうであるように、バンドがロックの伝統相手に繰り広げる支離滅裂かつアナーキックなおもちゃの兵隊ごっこの全編を通じて、このアルバムにもアンセミックで思わずこぶしを突き上げたくなるロックな歓喜のピュアなハートが脈打っている。それがもっとも顕著なのは途方もなくビッグな2曲目“Volcano”であり、ガレージ・ロックの金塊(ナゲッツ)を凝縮したような一聴カジュアルな響きの“Cul-De-Sac Kids”や“Always Gone”、“Queen Parking Lot”にも繰り返し浮上する。聴いていると、1990年代に極まった、ガイデッド・バイ・ヴォイシズのローファイな壮麗さという混沌の中に混じっていた“My Son Cool”や“Gold Star for Robot Boy”といった名曲を発見した際の思いがけない喜びが再燃する。
 ガイデッド・バイ・ヴォイシズのようなバンドの体現する、途切れなく続く爆発的なクリエイティヴィティから受け取るめまいのするほどの歓喜。それをその果てしない作品の流れを感知していない人間相手に伝えようとすると、どうしたって狂信的なファンのように思われてしまうのは仕方がない。とはいえ結局のところ、いちばんのアドヴァイスとしては、ピッチフォークのアルバム評がやるような理性派もどきで冷静なアート・ギャラリー型の言葉(とレヴューに科学的/客観的な気取りを添えている例の採点システム)で新しい音楽を考えようとしてしまうあぶなっかしい思考回路の一部を、まずいったん振り捨ててもらうことだろう。そうしたところでこの変化し続け、つねに歩調がずれている、いつ果てるとも知れない恍惚に満ちたカオスに悔いなく身を投じてみてもらいたい。あなたの内に潜んでいるマニアックな面を受け入れよう。僕らの仲間に加わろうじゃないか。

訳註1――ガイデッド・バイ・ヴォイシズは2004年にいったん解散したことがあり、同年正式に「さよならツアー」もおこなった。
訳註2――以下に続く「Scientist/Journalist/Pharmacist/Lost soul」は“I Am a Scientist”の歌詞の引用。同曲はガイデッド・バイ・ヴォイシズのもっとも有名なアルバム『Bee Thousand』(1994)収録。

Ian F.Martin


Guided By Voices don’t really make albums anymore. At least not in a conventional sense. But then Guided By Voices aren’t really a rock band in a conventional sense either, so maybe that’s to be expected.
Since when this has been the case isn’t entirely clear. In a sense, they’ve never been a normal band, with their roots as an almost random collection of people drifting through the band’s central figure and sole consistent member Robert Pollard’s Dayton, Ohio basement in the 1980s, creating ragged lo-fi masterpieces that formed an offbeat and sometimes bewildering background to the origin tale of indie rock in the United States. Still, much of their output, from their early days in the ‘80s through to their most extended split in 2004, can be absorbed as a series of unique and often striking works — albums that can be understood and processed as distinctive responses to their own unique circumstances at a rapidly changing time for the band.
Partly, this might be down to the restraining influence of record label promotion and distribution schedules, limiting the Guided By Voices brand to one release every year or two, with Pollard directing his songwriting overflow into solo releases and side projects. Indeed, since the 2004 “end” of Guided By Voices, Pollard has used his own labels to release more than 50 (count them!) albums from various of his projects, including two resurrected Guided By Voices lineups, like an endless stream of lost garage-punk hits and oddities flowing through cracks in time and landing in haphazard, explosive bursts in the here and now.

So how do we make sense of a band like Guided By Voices in 2020?
As he helpfully laid out for us in song form back in 1994, Robert Pollard is four different things at heart. He is a scientist, in the sense that he uses his work to examine and understand himself. He is a journalist in the sense that he is extremely conscious of rock history, and his music often forms a sort of oblique commentary on rock’s own traditions and the indie music fan lifestyle. He is a pharmacist, not only making music for himself but also packaging out morsels of comfort to ease his listeners’ fucked up lives. And he is a lost soul: digging himself ever deeper into this indie rock world that only isolates him ever further, even as it promises his only route to freedom. Put more simply, Pollard’s music has always balanced introspection and pop sensibility, as well as self-awareness of and deep dedication to its geeky provenance.
The same interrelated balance of elements is expressed in a way by Guided By Voices fans’ half- ironic yet at the same time deeply sincere celebration of them as “the greatest rock band of the modern era” and similar praise — lines that celebrate the band’s undeniable mastery of performance and song-craft at the same time that they laugh at themselves for piling such stadium rock superlatives on something so comfortable in its maniac niche. In that sense, Guided By Voices represent the counterintuitive core of the alternative and indie ethos: they seek to bring people together in a powerful shared experience, while at the same time deliberately seeking to undermine the notion of a universal experience as defined by the mainstream.
Which brings us to Surrender Your Poppy Field: a joyous collision of lo-fi basement recording aesthetics and prog rock grandeur, sublime pop alchemy and fractured post-punk anarchy, all delivered with the earnest, wide-eyed and ever-passionate belief in the power for salvation that lies in the beating heart of rock’n’roll.
It also brings us back to the question of whether it is even possible to divide the flow of music that comes out of Guided By Voices into something as discrete as an album anymore. The current lineup of the band has only been together for three years and has already released seven albums (including two double-albums), with three of them coming out in 2019. It’s entirely possible that the band will have released another before you even get a chance to read this review. In that sense, this latest is better understood as a progress marker in a process of constant re- exploration and re-formulation of the band's familiar cocktail of influences, themes and creative approaches. Either way, it’s a masterful one, combining the garage rock swagger of Zeppelin Over China (2019), the pared-down lo-fi experimentations and excursions of Warp and Woof (2019) and the progressive rock ambition of Sweating the Plague (2019) in a way that melds them all into one glorious, tightly-refined record — possibly Guided By Voices’ finest since their Matador Records days back in the ‘90s and early 2000s.

Songs like Physician and the opening Year of the Hard Hitter ricochet capriciously and thrillingly between what feel like fragments of entirely different songs, all equally rich in raw veins of rock riffage. For this, a lot of credit must surely go to guitarist Doug Gillard, returned to this new GBV fold after co-navigating with Pollard the years 1997-2004 (highlights include Mag Earwhig, Isolation Drills, Speak Kindly of Your Volunteer Fire Department and Half Smiles of the Decomposed). Gillard’s presence always flags up the presence of catchy, heavy, hard rock/glam riffs, which here are set against Pollard’s songwriting at its most joyously playful, skating between echoes of Gong and Genesis just as easily as it recalls XTC and Wire.
Like all Guided By Voices at their best, there is a pure heart of anthemic, fist-pumping rock elation running through the whole scrappy, anarchic game of toy soldiers with rock traditions that the band are playing. Most obviously on display in the monumental second track Volcano, it also surfaces again and again in casual-seeming miniature garage-rock nuggets like Cul-De-Sac Kids, Always Gone and Queen Parking Lot, in a way that rekindles some of the unexpected joy of discovering tracks like My Son Cool or Gold Star for Robot Boy bursting out of the chaos of Guided By Voices’ at the peak of their 1990s lo-fi pomp.
Communicating the dizzy joy of the constant, explosive creativity a band like Guided By Voices embody to anyone not plugged into the endless stream without coming across as insane is always a challenge. In the end, though, the best advice is to throw off that treacherous part of your mind that thinks of new music in the faux-rational art gallery terms of a Pitchfork album review (complete with the scientific affections of a numerical grade) and cast yourself into the ever-evolving, always out-of-step, never-ending ecstatic chaos without regrets. Embrace your inner maniac. Join us.

Mura Masa - ele-king

 いつの時代を語るにも、その時代を象徴するアーティストの存在は欠かせないものだ。クラシック界の巨匠、誰もが憧れるロックスター、カリスマ的歌姫、伝説のラッパー……と、様々なアーティストたちの功績が時代とともに語り継がれている。そんな彼らの存在はかつての時代だけでなく、来るべき時代にも多くの影響を与えていった。そして2020年という新時代を迎えたいま、これからの時代を象徴するアーティストになりゆく存在のひとりとして挙げたい人物が Mura Masa だ。

 自身の名を冠したデビュー・アルバム『MURA MASA』で、新進気鋭の若手トラックメイカーからトップ・アーティストとしての地位を確立した Mura Masa。イギリス海峡の孤島出身ながらも、多彩なかつキャッチーなサウンドで世界中を魅了し、確固たる人気を獲得した。わずか3年ものあいだに一躍有名となった彼が、2020年の幕開けとともに発表したセカンド・アルバム『R.Y.C』はリリースから約2か月経ったいまでも記憶に新しく、鮮烈な印象を放ち続けている。

 ポップでトロピカルなエレクトロニック・サウンドが詰まった前作とは一転、本作にはノイジーで歪んだギター・サウンドが取り込まれている。まるでぼんやりと世界中を覆っている混沌のようなグレーカラーの塗りつぶしに、タイトルを模したオレンジのスマイルマークと前作とは対照的なデザインのアートワークも印象的だ。本作の布石としてシングル・リリースされた収録曲 “I Don’t Think I Can Do This Again” では、VSCO ガールのアイコンとしても人気を誇るベッドルーム・ポップ・アーティスト Clairo のフィーチャリングと作風の変化で話題を呼んだ。

 その後、“Deal Wiv It” “No Hope Generation” などアルバム収録曲の一部先行リリースが続いた。A$AP RockyCharli XCXDemon Albarn など前作でも燦燦たる顔ぶれのアーティストが客演に参加したが、今回は前述の Clairo をはじめ、slowthai、Wolf Alice の Ellie Rowsell など話題のアーティストを起用。期待値をじわじわと高めたのち、2020年1月17日に待望のフル・アルバムをリリース。アルバムのタイトルと同名の楽曲 “Raw Youth Collage” から順々と、すでに先行リリースで注目を集めた楽曲が前半に並び、“Vicarious Living Anthem” で興奮はピークを迎える。そして後半の “In My Mind” “Today” ではだんだんノスタルジーを醸し出し、“Teenage Headache Dreams” では、清々しいフィナーレのような高揚感とどこかザラついた切なさを彷彿させる。これまでのイメージを覆した『R.Y.C』は、最高潮まで高まったリスナーの期待を裏切ることなく、彼の多面性を提示する一作となった。

 現在23歳の Mura Masa は、希望のない時代を歩んできた若者だ。彼と同じ1996年生まれはわりと悲惨な世代である。物心がつく前にミレニアムを迎え、少しずつ世界を捉えられるようになった頃に 9.11 が勃発。小学校に通い社会は何たるかを学び始めた矢先にリーマンショックが起き、将来に希望を抱くことは無意味であると悟った。日本ではこの世代を「さとり世代」と揶揄し、バブル時代の恩恵を受けたテレビのコメンテーターが「もっとしっかりしろ、車を買え、年金を払え、俺らを敬って社会の発展に貢献しろ」と皮肉った。高校入学前には東日本大震が発生、成人するタイミングで選挙権の年齢引き下げが施行。ひとりの人間として社会に羽ばたきはじめると同時に増税を喰らい、若者の未来はますます暗くなった。そして現在、新型ウイルスのパンデミック対策により世界は分断され、ついに人びとは踊ることすら許されなくなってきている。

 世界中から希望が薄れていくなかリリースされたこのアルバムは、ただの悲惨な若者が世を憂いているだけの作品ではない。“No Hope Generation” では「I need help (助けが必要)」と繰り返し、「Everybody do the no hope generation (誰もが希望のない時代を生きている)」と歌っているが、決して希望を持つことを諦めたわけではないのだ。同作品のMVに出演する人々は目が死んでいるものの、全員が色鮮やかなハイテクウェアに身を包み、踊ることを諦めない。軽快でありながらもメッセージ性の強いリリックからは、混乱に陥った世を糾弾するわけでも冷笑するわけでもなく、若者のみならずいまの時代を生きるすべての人が直面している問題と未来に向き合っていく意志を表しているように感じられる。

 昨年末、来日公演の直前インタヴューで Mura Masa は「ツァイトガイスト(Zeitgeist、ドイツ語で時代精神)」を本作で表現していると語っている。時代精神とは、ある時代を特徴づける共通理念や意識のことだ。これらはその時代の普遍的な意識のみを表すだけでなく、過去の文脈と新たに生まれた要素が混ざり合って形成される。その発言通り、かつての時代の懐古に浸るだけでなく、憂いがちな現在から未来をどう見据えていくかという姿勢を、ノスタルジックながらもクロスオーバーしていく昨今のシーンを混ぜ込んだサウンドに映しだした。まさに2020年を代表する時代精神のひとつとしてリリースされたこのアルバムは、Mura Masa が時代を象徴するアーティストになりゆく道への一歩と言えるであろう。

KANDYTOWN - ele-king

 昨秋セカンド『ADVISORY』を発表し、クルーとして大きな成長を遂げたキャンディタウンが、2020年初となる新曲 “PROGRESS” をリリースしている。ナイキの AIR MAX 2090 から着想を得た楽曲とのことで、Gottz、MUD、KEIJU、Dony Joint の4MC が参加。ティザー映像は各方面でひっぱりだこの山田健人が手がけている。彼らの次なる一歩を見逃すな!

KANDYTOWN
NIKE AIRMAX2090 にインスパイアされた新曲 “PROGRESS” をリリース。

昨年2ndアルバム『ADVISORY』をリリースし東阪での Zepp TOUR を成功させるなど、様々な話題を振りまいた国内屈指の HIP HOP CREW:KANDYTOWN が2020年第一弾となる新曲 “PROGRESS” を3月26日にリリースすることが発表された。

この楽曲は同日に発売となる AIR MAX 2090 の制作コンセプトにインスパイアされた楽曲で、Neetz が手掛けたトラックに Gottz, MUD, KEIJU, Dony Joint の4MCが参加している。また、リリース情報とともに同作品のアートワークと MUSIC VIDEO のティザー映像が公開となっている。

ティザー映像では AIR MAX 2090 DUCK CAMO をはじめとする様々なモデルを着用したメンバーの姿が映し出されており、こちらの映像作品は山田健人がディレクションを担当している。

なお、早くも2020年第一弾となるリリースを迎えた KANDYTOWN は5月24日(日)に横浜赤レンガ倉庫野外特設会場にて行われる「GREENROOM FESTIVAL’20」への出演も決まっているのでそちらもお見逃しなく。

【KANDYTOWN「PROGRESS」】
Rap:Gottz, MUD, KEIJU, Dony Joint
Music:Neetz
DL/ST URL: https://kandytown.lnk.to/prog
Teaser URL: https://youtu.be/uVTAaGO2Njs
MUSIC VIDEO Director: 山田健人

【KANDYTOWN PROFILE】
東京出身の総勢16名のヒップホップ・クルー。
2014年 free mixtape 『KOLD TAPE』
2015年 street album 『BLAKK MOTEL』『Kruise』
2016年 major 1st full album 『KANDYTOWN』
2017年 digital single 『Few Colors』
2018年 digital single 『1TIME4EVER』
2019年 e.p. 『LOCAL SERVICE』, major 2nd full album『ADVISORY』

【開催概要】
名称:GREENROOM FESTIVAL’20
場所:横浜赤レンガ倉庫野外特設会場
出演日:2020年5月24日(日)
オフィシャルサイト: https://greenroom.jp

【事務局一般先行チケット】
事務局一般先行チケット販売中!
[1日券] 価格 ¥12,000
[2日通し券] 価格 ¥19,000
https://greenroom.jp/tickets/

【NIKE AIR MAX 2090 “進化を恐れない姿勢” SHORT MOVIE MUD(KANDYTOWN) Direction by atmos】
https://www.atmos-tokyo.com/lp/air-max-day-2020-duck-camo

Playlists During This Crisis - ele-king

家聴き用のプレイリストです。いろんな方々にお願いしました。来た順番にアップしていきます。楽しんで下さい。

Ian F. Martin/イアン・F・マーティン

This is a multi-purpose playlist for people stuck at home during a crisis. The first 5 songs should be heard lying down, absorbed in the music’s pure, transcendent beauty. The last 5 songs should be heard dancing around your room in a really stupid way.

Brian Eno / By This River
Nick Drake / Road
Life Without Buildings / The Leanover
Young Marble Giants / Brand - New - Life
Broadcast / Poem Of Dead Song
Holger Czukay / Cool In The Pool
Yazoo / Bad Connection
Lio / Fallait Pas Commencer
Der Plan / Gummitwist
Electric Light Orchestra / Shine A Little Love

野田努

週末だ。ビールだ。癒しと皮肉と願い(冗談、怒り、恐怖も少々)を込めて選曲。少しでも楽しんでもらえたら。問題はこれから先の2〜3週間、たぶんいろんなことが起きると思う。できる限り落ち着いて、とにかく感染に気をつけて。お金がある人は音楽を買おう(たとえば bandcamp は収益をアーティストに還元している)。そして本を読んで賢くなろう。いまのお薦めはナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』。

Ultravox / Just For A Moment
フィッシュマンズ / Weather Report
Talking Heads / Air
Funkadelic / You Can’t Miss What You Can't Measure
New Age Steppers / Fade Away
RCサクセション / うわの空
Horace Andy / Rain From the Sky
Sun Ra / We Travel the Spaceways
Rhythim is Rhythim / Beyond the Dance
Kraftwerk / Tour De France

小林拓音

考えることはいっぱいあるけど、暗くなってしまいそうなのでちょっとだけ。被害は万人に平等には訪れない。割を食うのはいつだって……。問題の根幹は昔からなにも変わってないんだと思う。そこだけ把握しといて、あとは明るく過ごそうじゃないか。

Skip James / Hard Time Killing Floor Blues
The Beatles / Money
Public Enemy / Gotta Give the Peeps What They Need
Drexciya / Living on the Edge
Milanese vs Virus Syndicate / Dead Man Walking V.I.P.
Mark Pritchard / Circle of Fear
Erik Truffaz & Murcof / Chaos
Ata Ebtekar and the Iranian Orchestra for New Music / Broken Silence Cmpd
Psyche / Crackdown
Autechre / Flutter

河村祐介

怒るべきことにはちゃんと怒りましょう。僕らの生活と文化を守るために。そして、リラックスと快楽の自由も。

The Specials / Ghost Twon
Bob Marley / So Much Trouble In the World
Tommy McCook / Midnight Dub
Nightmares on Wax / Mores
7FO / Waver Vapour
石野卓球 / TRIP-O-MATIC
Nehoki / Morgentrack
Kodama And The Dubstation Band / かすかな きぼう
思い出野郎Aチーム / 灯りを分けあおう
Janelle Monáe / Smile

Neil Ollivierra/ニール・オリヴィエラ(The Detroit Escalator Co.)(LA在住)

Absorbing Songs for Armchair Traveling

Robin Guthrie, Harold Budd / How Close Your Soul
Thore Pfeiffer / Alles Wird Gut
Cortex / Troupeau bleu
Milton Nascimento / Tudo O Que Você Podia Ser
The Heliocentrics / A World of Masks
Kodo / Shake - Isuka Mata
Miles Davis / Indigo
Gordon Beck / Going Up
Funkadelic / Maggot Brain
Simply Red / I’m Gonna Lose You

Matthew Chozick/マシュー・チョジック

自己隔離生活にぴったりの癒し曲を集めてみました。コロナ野郎のせいで新しいレコード発表は激減、そんなときこそ古いアルバムを聴き直してみよう。家でパジャマパーティでも開きながら、僕のプレイリストをエンジョイしてくれたら嬉しいな。目に見えないもの同士、ウィルスとの戦いには心を癒す良薬で対抗だ!

Björk / Virus
The Knife / Afraid of You
The Velvet Underground / After Hours
John Lennon / Isolation
Harold Melvin & The Blue Notes / I Miss You
Grouper / Living Room
Beat Happening / Indian Summer
ゆらゆら帝国 / おはようまだやろう
Nico / Afraid
高橋幸宏 / コネクション

細田成嗣

つねにすでにオリジナルなものとしてある声は、しかしながら変幻自在のヴォーカリゼーションや声そのものの音響的革新、あるいは声をもとにしたエクストリームな表現の追求によって、より一層独自の性格を獲得する。見えない脅威に襲われる未曾有の事態に直面しているからこそ、わたしたちは「ひとつの声」を求めるのではなく、さまざまな声を聴き分け、受け入れる耳を養う必要に迫られているのではないだろうか。

Luciano Berio, Cathy Berberian / Sequenza III for voice
Demetrio Stratos / Investigazioni (Diplofonie e triplofonie)
David Moss / Ghosts
Meredith Monk, Katie Geissinger / Volcano Songs: Duets: Lost Wind
Sainkho Namchylak, Jarrod Cagwin / Dance of an Old Spirit
Fredy Studer, Ami Yoshida / Kaiten
Alice Hui Sheng Chang / There She Is, Standing And Walking On Her Own
Senyawa / Pada Siang Hari
Amirtha Kidambi, Elder Ones / Decolonize the Mind
Hiroshi Hasegawa, Kazehito Seki / Tamaki -環- part I

沢井陽子(NY在住)

非常事態が発生し、仕事もない、やることもない、家から出られないときには元気が出る曲を聴きたいけれど、いつもと変わらないヴァイヴをキープしたいものです。

Deerhunter / Nothing Ever Happened
Unknown Mortal Orchestra / Necessary Evil
Thin Lizzy / Showdown
Janko Nilovic / Roses and Revolvers
Courtney Barnett / Can’t Do Much
Big Thief / Masterpiece
Brittany Howard / Stay High
Kaytranada, Badbadnotgood / Weight Off
St Vincent / Cruel
Gal Costa / Lost in the Paradise

デンシノオト

少しでもアートという人の営みに触れることで希望を忘れないために、2018年から2020年までにリリースされた現代音楽、モダンなドローン、アンビエント、電子音響などをまとめた最新型のエクスペリメンタル・ミュージック・プレイリストにしてみました。

James Tenney, Alison Bjorkedal, Ellie Choate, Elizabeth Huston, Catherine Litaker, Amy Shulman, Ruriko Terada, Nicholas Deyoe / 64 Studies for 6 Harps: Study #1
Golem Mecanique / Face A
Werner Dafeldecker / Parallel Darks Part One
Yann Novak / Scalar Field (yellow, blue, yellow, 1.1)
3RENSA (Nyatora, Merzbow, Duenn) / Deep Mix
Beatriz Ferreyra / Echos
Anastassis Philippakopoulos, Melaine Dalibert / piano piece (2018a)
Jasmine Guffond / Degradation Loops #1
Dino Spiluttini / Drugs in Heaven
Ernest Hood / At The Store

Paolo Parisi/パオロ・パリージ(ローマ在住)

Bauhaus / Dark Entries
Sonic Youth / The End of the End of the Ugly
Mission of Burma / That’s How I Escaped My Certain Fate
Wipers / Return of the Rat
Pylon / Feast on my Heart
Gun Club / Sex Beat
The Jim Carroll Band / It’s Too Late
Television / Friction
Patti Smith / Kimberly
The Modern Lovers / Hospital

末次亘(C.E)

CS + Kreme / Saint
Kashif, Meli’sa Morgan / Love Changes (with Meli’sa Morgan)
Tenor Saw / Run From Progress
Phil Pratt All Stars / Evilest Thing Version
坂本龍一 / PARADISE LOST
Beatrice Dillon / Workaround Three
Joy Orbison, Mansur Brown / YI She’s Away
Burnt Friedman, Jaki Liebezeit / Mikrokasper
Aleksi Perälä / UK74R1721478
Steve Reich, Pat Metheny / Electric Counterpoint: II. Slow

木津毅

If I could see all my friends tonight (Live Recordings)

ライヴハウスがスケープゴートにされて、保障の確約もないまま「自粛」を求められるいま、オーディエンスの喜びに満ちたライヴが恋しいです。というわけで、ライヴ音源からセレクトしました。来日公演は軒並みキャンセルになりましたが、また、素晴らしい音楽が分かち合われるライヴに集まれることを願って。

Bon Iver / Woods - Live from Pitchfork Paris Presented by La Blogothèque, Nov 3 2018
James Blake / Wilhelm Scream - Live At Pitchfork, France / 2012
Sufjan Stevens / Fourth of July - Live
Iron & Wine / Sodom, South Georgia
Wilco / Jesus, Etc.
The National / Slow Show (Live in Brussels)
Jaga Jazzist / Oslo Skyline - Live
The Streets / Weak Become Heroes - One Live in Nottingham, 31-10-02
LCD Soundsystem / All My Friends - live at madison square garden
Bruce Springsteen / We Shall Overcome - Live at the Point Theatre, Dublin, Ireland - November 2006

髙橋勇人(ロンドン在住)

3月25日、Spotify は「COVID-19 MUSIC RELIEF」という、ストリーミング・サービスのユーザーに特定の音楽団体への募金を募るキャンペーンを始めている。

スポティファイ・テクノロジー社から直接ドネーションするわけじゃないんかーい、という感じもするのが正直なところだし、その募金が渡る団体が欧米のものにいまのとこは限定されているのも、日本側にはイマイチに映るだろう。現在、同社はアーティストがファンから直接ドネーションを募れるシステムなどを構築しているらしいので、大手ストリーミング・サービスの一挙手一投足に注目、というか、ちゃんとインディペンデントでも活動しているアーティストにも支援がいくように我々は監視しなければいけない。

最近、Bandcamp では、いくつかのレーベルが売り上げを直接アーティストに送ることを発表している。そういう動きもあるので、この企画の話をいただいたとき(24日)、スポティファイが具体的な動きを見せていないので、やっぱり Bandcamp ともリンクさせなければと思った。ここに載せたアーティストは、比較的インディペンデントな活動を行なっている者たちである。このプレイリストを入り口に、気に入ったものは実際にデータで買ってみたり、その活動をチェックしてみてほしい。

ちなみに、「こんなときに聴きたい」という点もちゃんと意識している。僕はロックダウンにあるロンドンの部屋でこれを書いている。これらの楽曲は人生に色彩があることを思い出させてくれる楽曲たちだ。さっきこれを聴きながら走ってきたけど(友達に誘われたらNOだが、最低限の運動のための外出はOKだと総理大臣閣下も言っていたしな)、最高に気持ちよかった。

object blue / FUCK THE STASIS
Prettybwoy / Second Highball
Dan-Ce / Heyvalva Heyvalva Hey
Yamaneko / Fall Control
Tasho Ishii / Satoshi Nakamoto
Dayzero / Saruin Stage
Chino Amobi / The Floating World Pt.1
Brother May / Can Do It
Elvin Brandhi / Reap Solace
Loraine James / Sensual

松村正人

MirageRadioMix

音楽がつくりだした別天地が現実の世界に浸食されるも、楽曲が抵抗するというようなヴィジョンです。Spotify 限定で10曲というのはたいへんでしたが、マジメに選びました。いいたいことはいっぱいありますがひとまず。

忌野清志郎 / ウィルス
Björk / Virus
Oneohtrix Point Never / Warning
憂歌団 / 胸が痛い
The Residents / The Ultimate Disaster
The Doors / People Are Strange
キリンジ / 善人の反省
坂本慎太郎 / 死にませんが?
Can / Future Days - Edit
相対性理論 / わたしは人類(Live)

三田格

こんなときは Alva Noto + Ryuichi Sakamoto 『Virus Series Collectors Box』(全36曲!)を聴くのがいいんじゃないでしょうか。ローレル・ヘイローのデビュー・アルバム『Quarantine(=伝染病予防のための隔離施設)』(12)とかね。つーか、普段からあんまり人に会わないし、外食もしないし、外から帰ったら洗顔やうがいをしないと気持ち悪い性格なので、とくに変わりないというか、なんというかコロナ素通りです。だから、いつも通り新曲を聴いているだけなので、最近、気に入ってるものから上位10曲を(A-Reece の “Selfish Exp 2” がめっちゃ気に入ってるんだけど Spotify にはないみたいなので→https://soundcloud.com/user-868526411/a-reece-selfish-exp-2-mp3-1)。

Girl Ray / Takes Time (feat. PSwuave)
Natz Efx Msaki / Urban Child (Enoo Nepa Remix)
DJ Tears PLK / West Africa
Afrourbanplugg / General Ra (feat. Prettyboy)
SassyBlack / I Can’t Wait (feat. Casey Benjamin)
Najwa / Más Arriba
Owami Umsindo / eMandulo
Cristian Vogel & Elektro Guzzi / Plenkei
Oval / Pushhh
D.Smoke / Season Pass

AbuQadim Haqq/アブカディム・ハック(デトロイト在住)

These are some of my favorite songs of all time! Reflections of life of an artist from Detroit.
Thanks for letting me share my favorite music with you! Stay safe and healthy in these troubling times!

Rhythim is Rhythim / Icon
Underground Resistance / Analog Assassin
Public Enemy / Night of the Living Baseheads
Orlando Voorn / Treshold
Drexciya / Hydrocubes
Oddisee / Strength & Weakness
Iron Maiden / Run To The Hills
The Martian / Skypainter
Gustav Holst / Mars: Bringer of War
Rick Wade / First Darkness

Sk8thing aka DJ Spitfi_(C.E)

10_Spotify's_for_Social _Distancies_!!!!List by Sk8thing aka DJ DJ Spitfi

Francis Seyrig / The Dansant
Brian Eno / Slow Water
The Sorrow / Darkness
Owen Pallett / The Great Elsewhere
DRAB MAJESTY / 39 By Design
Our Girl / In My Head
Subway / Thick Pigeon
Einstürzende Neubauten / Youme & Meyou
Fat White Family / I Believe In Something Better
New Order / ICB

矢野利裕

人と会えず、話もできず、みんなで食事をすることもできず……という日々はつらく寂しいものです。落ち着きのない僕はなにをしたらいいでしょうか。うんざりするような毎日を前向きに乗り越えていくために、少なくとも僕には音楽が大事かもしれません。現実からの逃避でもなく現実の反映でもない、次なる現実を呼び寄せるものとしての音楽。そのいちばん先鋭的な部分は、笑いのともなう新奇な音楽(ノヴェルティソング)によって担われてきました。志村けんのシャウトが次なる現実を呼び寄せる。元気でやってるのかい!?

ザ・ドリフターズ / ドリフのバイのバイのバイ
雪村いずみ / チャチャチャはいかが
ザ・クールス / ラストダンスはCha・Chaで
セニョール・ココナッツ・アンド・ヒズ・オーケストラ / YELLOW MAGIC (Tong-Poo)
Negicco / カリプソ娘に花束を
スチャダラパー / レッツロックオン
4×4=16 / TOKISOBA Breakbeats
イルリメ / 元気でやってるのかい?
マキタスポーツ / Oh, ジーザス
水中、それは苦しい / マジで恋する五億年前

Sinta(Double Clapperz)

大変な時ですが、少しでも肩の力抜けたらいいなと思い選曲しました。

徳利 / きらめく
gummyboy / HONE [Mony Horse remix]
Burna Boy / Odogwu
Stormzy / Own It [Toddla T Remix feat. Burna Boy & Stylo G]
J Hus / Repeat (feat. Koffee)
LV / Walk It / Face of God
Free Nationals, Chronixx / Eternal Light
Pa Salieu / Frontline
Frenetik / La matrice
Fory Five / PE$O

Midori Aoyama

タイトルに色々かけようと思ったんですがなんかしっくりこなかったので、下記10曲選びました。よく僕のDJを聴いてくれている人はわかるかも? Party の最後でよくかける「蛍の光」的なセレクション。1曲目以外は特にメッセージはないです。単純にいい曲だと思うので、テレワークのお供に。
ちなみに最近仕事しながら聴いているのは、吉直堂の「雨の音」。宇宙飛行士は閉鎖されたスペースシャトルの中で自然の音を聴くらしい。地球に住めないのであればやっぱり宇宙に行くしかないのだろうか。

Marvin Gaye / What’s Going On
The Elder Statesman / Montreux Sunrise
12 Senses / Movement
Culross Close / Requiem + Reflections
Children Of Zeus / Hard Work
Neue Grafik Ensemble feat. Allysha Joy / Hotel Laplace
Aldorande / Sous La Lune
Michael Wycoff / Looking Up To You
Stevie Wonder / Ribbon In The Sky
Djavan / Samurai

高島鈴

コロナ禍のもとで生じている問題はひとつではないから、「こういう音楽を聞くといい」と一律に提言するのはすごく難しい。危機を真面目に受け止めながらどうにか生存をやっていくこと、危機を拡大させている政治家の振る舞いにきちんと怒ること、今私が意識できるのはこれぐらいである。みなさん、どうぞご無事で。

Kamui / Aida
Moment Joon / TENO HIRA
Garoad / Every Day Is Night
Awich / 洗脳 feat. DOGMA & 鎮座DOPENESS
Jvcki Wai / Anarchy
田島ハルコ / holy♡computer
Rinbjö / 戒厳令 feat. 菊地一谷
田我流 / Broiler
ASIAN KUNG-FU GENERATION / 夜を越えて
NORIKIYO / 神様ダイヤル

Mars89

一曲目はゾンビ映画サンプリングの僕の曲で “Run to Mall” って曲だけど、今は Don’t Run to Mall です。
それ以外は僕がお気に入りでずっと聞いてる曲たちです。部屋で悶々と行き場のない感情を抱えながら精神世界と自室の間を綱渡りで行き来するような感じの曲を選んでみました。

Mars89 / Run to Mall
Tim Hecker / Step away from Konoyo
Burial / Nightmarket
Raime / Passed over Trail
KWC 92 / Night Drive
Phew / Antenna
The Space Lady / Domae, Libra Nos / Showdown
Tropic of Cancer / Be Brave
Throbbing Gristle / Spirits Flying
Paysage D’Hiver / Welt Australia Eis

大前至

桜が満開な中、大雪が降りしきる、何とも不思議な天気の日曜日に、改めて自分が好きな音楽というものに向き合いながら選曲。今自分がいる東京もギリギリの状態ですが、昔住んでいたLAはすでにかなり深刻な状態で、そんな現状を憂いながら、LA関連のアーティスト限定でリラックス&少しでも気分が上がるような曲でプレイリストを組んでみました。

Illa J / Timeless
Sa-Ra Creative Partners / Rosebuds
NxWorries / Get Bigger / Do U Luv
Blu & Exile / Simply Amazin’ (steel blazin’)
Oh No / I Can’t Help Myself (feat. Stacy Epps)
Visionaries / If You Can’t Say Love
Dudley Perkins / Flowers
Jurassic 5 / Hey
Quasimoto / Jazz Cats Pt. 1
Dâm-Funk / 4 My Homies (feat. Steve Arrington)

天野龍太郎

「ウイルスは生物でもなく、非生物とも言い切れない。両方の性質を持っている特殊なものだ。人間はウイルスに対して、とても弱い。あと、『悪性新生物』とも呼ばれる癌は、生物に寄生して、防ぎようがない方法で増殖や転移をしていく。今は人間がこの地球の支配者かもしれないけれど、数百年後の未来では、ウイルスと癌細胞が支配しているかもね」。
氷が解けていく音が聞こえていた2019年。まったく異なる危機が一瞬でこの世界を覆った2020年。危機によってあきらかになるのは、システム、社会、政治における綻びや破綻、そこにぽっかりと大きく口を開いた穴だ。為政者の間抜けさも、本当によくわかる。危機はテストケースであり、愚かさとあやまちへの劇的な特効薬でもありうる。
ソーシャル・ディスタンシング・レイヴ。クラブ・クウォランティン。逃避的な音楽と共に、ステイ・ホーム、ステイ・セイフ・アンド・ステイ・ウォーク。

Kelly Lee Owens / Melt!
Beatrice Dillon / Clouds Strum
Four Tet / Baby
Caribou / Never Come Back
Octo Octa / Can You See Me?
tofubeats / SOMEBODY TORE MY P
Against All Logic / Deeeeeeefers
JPEGMAFIA / COVERED IN MONEY!
MIYACHI / MASK ON
Mura Masa & Clairo / I Don’t Think I Can Do This Again

James Hadfield/ジェイムズ・ハッドフィールド

Splendid Isolation

皆どんどん独りぼっちになりつつある事態で、ただ独りで創作された曲、孤立して生まれた曲を選曲してみました。

Alvin Lucier / I Am Sitting in a Room
Phew / Just a Familiar Face
Massimo Toniutti / Canti a forbice
Ruedi Häusermann / Vier Brüder Auf Der Bank
Wacław Zimpel / Lines
Kevin Drumm / Shut In - Part One
Mark Hollis / Inside Looking Out
Magical Power Mako / Look Up The Sky
Arthur Russell / Answers Me
Mike Oldfield / Hergest Ridge Part Two

小川充

都市封鎖や医療崩壊へと繋がりかねない今の危機的な状況下で、果たして音楽がどれほどの力を持つのか。正常な生活や仕事はもちろん、命や健康が損なわれる人もいる中で、今までのように音楽を聴いたり楽しむ余裕があるのか、などいろいろ考えます。かつての3・11のときもそうでしたが、まず音楽ができることを過信することなくストレートに考え、微力ながらも明日を生きる希望を繋ぐことに貢献できればと思い選曲しました。

McCoy Tyner / For Tomorrow
Pharoah Sanders / Love Is Everywhere
The Diddys feat. Paige Douglas / Intergalactic Love Song
The Isley Brothers / Work To Do
Kamasi Washington / Testify
Philip Bailey feat. Bilal / We’re Winner
Brief Encounter / Human
Boz Scaggs / Love Me Tomorrow
Al Green / Let’s Stay Together
Robert Wyatt / At Last I Am Free

野田努(2回目)

飲食店を営む家と歓楽街で生まれ育った人間として、いまの状況はいたたまれない。働いている人たちの胸中を察するには余りある。自分がただひとりの庶民でしかない、とあらためて思う。なんも特別な人間でもない、ただひとりの庶民でいたい。居酒屋が大好きだし、行きつけの飲食店に行って、がんばろうぜと意味も根拠もなく言ってあげたい。ここ数日は、『ポバティー・サファリ』に書かれていたことを思い返しています。

Blondie / Dreaming
タイマーズ / 偽善者
Sleaford Mods / Air Conditioning
The Specials / Do Nothing
The Clash / Should I Stay or Should I Go
Penetration / Life’s A Gamble
Joy Division / Transmission
Television / Elevation
Patti Simth / Free Money
Sham 69 / If the Kids Are United

Jazzと喫茶 はやし(下北沢)

コロナが生んだ問題が山積して心が病みそうになる。が、時間はある。
音楽と知恵と工夫で心を豊かに、この難局を乗り切りましょう!(4/6)

Ray Brayant / Gotta Travel On
Gil Scott Heron / Winter In America
Robert Hood / Minus
Choice / Acid Eiffel
Armando / Land Of Confusion
Jay Dee / Fuck The Police
Liquid Liquid / Rubbermiro
Count Ossie & The Mystic Revelation Of Rastafari / So Long
Bengt Berger, Don Cherry / Funerral Dance
民謡クルセイダーズ / 炭坑節

中村義響

No winter lasts forever; no spring skips it’s turn.

Ducktails / Olympic Air
Johnny Martian / Punchbowl
Later Nader / Mellow Mario
April March / Garden Of April
Vampire Weekend / Spring Snow
Brigt / Tenderly
W.A.L.A / Sacrum Test (feat. Salami Rose Joe Louis)
Standing On The Corner / Vomets
Babybird / Lemonade Baby
Blossom Dearie / They Say It’s Spring

野田努(3回目)

Jリーグのない週末になれつつある。夕暮れどきの、窓の外を眺めながら悦にいる感覚のシューゲイズ半分のプレイリスト。

Mazzy Star / Blue Light
The Jesus & Mary Chain / These Days
Animal Collective / The Softest Voice
Tiny Vipers / Eyes Like Ours
Beach House / Walk In The Park
Hope Sandoval & The Warm Inventions / On The Low
Devendra Banhart / Now That I Know
Scritti Politti / Skank Bloc Bologna
Yves Tumor / Limerence
Lou Reed / Coney Island Baby

ALEX FROM TOKYO(Tokyo Black Star, world famous)

この不安定な時代に、ラジオ番組のように Spotify で楽しめる、「今を生きる」気持ち良い、元気付けられる&考えさてくれるポジティヴでメッセージも響いてくる温かいオールジャンル選曲プレイリストになります。自分たちを見つめ直す時期です。海外から見た日本の状況がやはりとても心配になります。みなさんの健康と安全を願ってます。そしてこれからも一緒に好きな音楽と良い音を楽しみ続けましょう。Rest In Peace Manu Dibango & Bill Withers!(4/7)

Susumu Yokota / Saku
Manu Dibango / Tek Time
Final Frontier / The warning
Itadi / Watch your life
Rhythim Is Rhythim / Strings of Life
Howlin’ Wolf / Smokestack Lightin’
Massive Attack / Protection
Depeche Mode / Enjoy the Silence
Tokyo Black Star / Blade Dancer
Bill Withers / Lean on me (Live from Carnegie Hall)

Kevin Martin(The Bug)

(4/9)

The Necks / Sex
Rhythm & Sound / Roll Off
Miles Davis / In A Silent Way / It’s About That Time
William Basinski / DLP3
Thomas Koner / Daikan
Talk Talk / Myrrhman
Nick Cave + Bad Seeds / Avalanche
Jacob Miller / Ghetto on fire
Marvin Gaye / Inner City Blues
Erykah Badu / The Healer


増村和彦

最近は、「音楽やサウンドに呼吸をさせて、ゆがみや欠陥の余地を残して流していくんだ」というローレル・ヘイローの言葉が妙に響いて、その意味を考えるともなく考えながら音楽を聴いている。いまは、できるだけ雑食で、できるだけ聴いたことがなくて、直感で信頼できる音楽を欲しているのかもしれない。人に会わないことに慣れているはずのぼくのような人間でも、あんまり会わないと卑屈になってくるので、冷静にしてくれる音楽を聴きたくなります。(5/15)

Laurel Halo / Raw Silk Uncut Wood
Alex Albrecht pres.Melquiades / Lanterns Pt1 & Pt2
Minwhee Lee / Borrowed Tongue
Moritz von Oswald & Ordo Sakhna / Draught
Grouper / Cleaning
Moons / Dreaming Fully Awake
"Blue" Gene Tyranny / Next Time Might Be Your Time
Sun Ra / Nuclear War
Tony Allen With Africa 70’ / Jealousy
Tom Zé / Hein?

Zebra Katz - ele-king

 マイケル・フランティとロノ・ツェによるザ・ビートニグスやジーザス&メリー・チェイン“Sidewalking”など、1988年はインダストリアル・ヒップホップが生まれた年だった。アフリカ・バンバータとジョン・ライドンのタイムゾーン“World Destruction”が最初だという人もいるけれど、あれはどう考えてもインダストリアル・エレクトロ。クロームやキャバレー・ヴォルテール、あるいはDAFやスロッビン・グリッスルによるストイックでファナティックなインダストリアル・エレクトロを陽気な世界に解き放ったという意味で“World Destruction”は大きな分岐点をなすけれど、ここでは割愛。ジーザス&メリー・チェイン“Sidewalking”はラヴ&ピースに湧くレイヴ・カルチャーにダンス・ノイズ・テラーというカウンター・パートを促し、エイドリアン・シャーウッド率いるタックヘッドがその中核的存在だった。アルバム1枚で解散してしまったザ・ビートニグスはいわゆる発展的解消を遂げてディスポーザブル・ヒーローズ・オブ・ヒポプリジーとして少し路線を変え、92年にニューヨークで観たライヴはちょっと物足りなかったことも覚えている。ザ・ビートニグスに対して膨れ上がった虚像はその後もミート・ビート・マニフェストー、レニゲイド・サウンドウェイヴ、アレク・エムパイア、ココ・ブライス、ヴェッセル、クリッピングアレキサンドル・フランシスコ・ディアフラと続き、いまだに僕はインダストリアル・ヒップホップから逃れられない。黒人と白人の価値観が極端な形でクラッシュしている状態に強く惹かれてしまうからだろうか。ナイン・インチ・ネイルズもファーストは好きだし。

 そして、まさかこの流れにジブラ・キャッツが加わるとは思わなかった。ジブラ・キャッツことオージェイ・モーガンは2012年にディプロの〈ジェフリーズ〉から“Ima Read”でデビューしたダンスホールMC。この曲は当時、ファッション・ショーなどにも使われ、彼自身もグレース・ジョーンズをリスペクトするなどとてもファッショナブルな存在なので、そのまま一気にメジャーな存在になるのかと思ったら、その後の活動がどうもヘンだった。ジャマイカ系アメリカ人の彼はアメリカで大きく出るよりはイギリスの音楽に心惹かれるものがあったようで、グライムやベース・ミュージックを好むようになり、リリースもどんどんアンダーグラウンド化していく。かなりナゾのレーベルだったフィンランドの〈シグナル・ライフ〉から(フランスではその手の草分けとなった)フレンチ・フライとのカップリング・シングルまでリリースし、暗く沈み込むような“Sex Sellz”(13)はあまりに異様な曲だったので“Ima Read”の路線に戻ってくれ~とさえ思ったほど。この曲はちなみにレーベル・オーナーのティース(Twwth)によるリミックスがなかなか良いです。2014年からはディプロの〈マッド・ディセント〉に戻ってエルヴェやレイラとジョイント・シングルをリリースし、それきり姿を見ないと思ったら彼はゴリラズのツアー・メンバーに加わっていたという。ぜんぜん知らなかった。


 “Ima Read”から8年後となったデビュー・アルバムが、そう、驚いたことにインダストリアル・ヒップホップに様変わりしていたのである。冒頭からズガガガとノイジーにインダストリアル・パーカッションが打ち鳴らされ、まるでスロッビン・グリッスルかザ・ビートニグスのようで、“Sex Sellz”でも最低限度は保たれていたオシャレのラインは軽く踏み越えられている。ラップというよりはぶつぶつと語りかけるようにつぶやくのが最初から彼のスタイルで、それが不穏なサウンドトラックを得ることでこれまでになかった迫力を帯びている。歌詞の内容はダンスやセックスに関することが多いらしく、「赤面(Blush)」とかクンニリングスを思わせる曲名(Lick It N Split)が並ぶので、もしかするととても官能的な効果を高めているのかもしれない。“Monitor”ではダークなシンセ~ポップ、“Zad Drumz”ではジャングルやなども取り混ぜつつ、“Necklace”ではいきなりアシッド・フォークが来て、シンプルなトライバル・ドラムだけでドライヴさせる”In In In”や“Sleepn”が個人的には好み。”Moor”はそれこそレニゲイド・サウンドウェイヴを思わせる。そう、アルバム・タイトルの『Less is Moor』とは何だろうか。「Less is More」ならミニマリズムが流行っている現在、より少ないことが豊かさにつながるという意味だし、それに引っ掛けていることは明白だけれど、「More」ではなく「Moor」である。ムーア人のことであれば、北アフリカのブラック・ムスリムを表し、レイラとのシングルも「Nu Renegade EP」というタイトルだったので「レニゲイド=(キリスト教から)イスラム教への改宗者」という意味もあるから、より少ないことで二グロになれる」とか、そんな感じなのかなと。

 ……と、思い悩んでいたら、坂本麻里子さんからインタヴュー・マガジン(Interview Magazine)でムーア・マザーがジブラ・キャッツのインタヴューをしているよという情報が。それでピンと来た。『Less is Moor』をリリースしているのはムーア・マザーのセカンド・アルバム『The Motionless Present』をリリースしていた〈ヴァイナル・ファクトリー〉である。彼女の名前と掛けていたのである。インタヴューというよりはかなり雑談に近い2人のやり取りを読んでいると、それはますます確信に変わった。ムーア・マザーもジブラ・キャッツの作風が変わってしまったことに触れ、「ファック・ユー」度が少し増したと指摘している。アルバム・タイトルの真相はゴリラズのツアーに参加したことで、ジブラ・キャッツを取り巻く環境がかなり変化し、彼は自分もスタッフを増やして大掛かりな組織を組まなければやっていけないと感じたことに由来し、それを前提に様々な仕事のオファーが来るようなになったものの、それでも自分は最小限の機材や人数でやっているんだということを示したものだという。オープニングは“Intro To Less”、そして、充実した音楽を楽しんだリスナーはエンディングで”Exit To Void”へ投げ出される、という構成。なかなかの自信ではないだろうか。ムーア・マザーも「2曲ほどリミックスしたい曲がある」と告げるなどアルバムへの共感を様々に示している。また、同じインタヴューでジブラ・キャッツの作品が大きく変貌を遂げた裏にはシーガ・ボディーガ(Sega Bodega)というプロデューサーの存在が大きいと彼が話していたので、ほぼ同時にリリースされた『Salvador』(Nuxxe)というアルバムも聴いてみたところ、これもまた奇妙な内容のものであった。“Lick It N Split”にフィーチャーされているシャイガールも去年から気になっていたファッション系のラッパーで、おー、こんなところでつながるのかーという感じ。

 インダストリアル・ヒップホップ・ネヴァー・ダイズ!ということで。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151