「IO」と一致するもの

Terrace Martin - ele-king

 先月の小川さんのコラムでも最新作が紹介されていたテラス・マーティン。ジャズとヒップホップを横断するこのLAのプロデューサーによるデビュー・スタジオ・アルバム『3ChordFold』(2013)が、LPでリリースされることになった。ケンドリック・ラマー、スヌープ・ドッグ、アブ・ソウル、ウィズ・カリファと、ゲスト陣もかなり豪華な1作だ。
 また、このタイミングで来日公演も決定している。9月11~15日、詳しくは下記をご確認ください。

赤痢 - ele-king

文:水越真紀

 久しぶりに赤痢を聴いて思うのは、なんと楽しいバンドなのかということだ。ドラムとベースの、乗るものを決してうらぎらないおもったい確かさの上で好きなように不機嫌になり、照れ、言葉を駆使し、頭を痺れさせる赤痢の楽しさったらない。赤痢が何度も何度も発売され続けるのは、このリズム隊の心地よさと歌詞の古びなさのためだろう。
 ユーモアと切なさに満ちた歌詞はほとんど1分から2分という短い一曲でも同じフレーズの繰り返しが多い。つまり言葉を尽くして、言葉を駆使してストーリーや心情を語ったり、描写をするのではなく、ときには、あるいは多くは、メロディやサウンドに呼び覚まされたたとえば「死体こぼれ死体こぼれ」(“ベリー・グウ”)のような唐突な、「音」優先のフレーズは、それでも何かのイメージを映しながら、身体と心を揺さぶる。
 「うまいよこれほら食べてみて 愛してやまない理由がある 笑えない口で、はい、どーぞ 生きてりゃなんでも欲しくなる サバ、サバ、サバビアーン」(“サバビアン”)、「ひとつ食べたらばら色 ふたつ食べたらばば色 希望なんてないんだって チョッコレートブルース 欲望だけがあるんだって チョッコレートブルース」(“チョコレートブルース”)などが日常の些細なできごとのつぶやきなら、「にぎる万札 もらう給料 おきゅうりよ カツカツの生活にボーナスもらって夢見たことはお金返してすぐまた借りて まーた借りて」(“かつかつROCK”)も「ラリって吸ってラリって吸う もいちど教えてもいちど教えて はあほうらナッシングを抱く」(“デスマッチ”)、「頭をぶらぶら手足をぶら 体をスウィング 寄せては返すあなたの波 信じこむバカ」(“エンドレス”)もそうで、「ゆるんだネジをぐるぐる回して いやな時代ももうすぐ終わる」(“青春”)といった年齢に似合わないような、いや10代だからこそのニヒリズムも青春の日常のひとこまだ。と30年来のデフレ経済を生きてきた現代人は思うだろう。しかしこれが作られたのはデフレ世代が「夢見る」バブル経済期のことだと思い出せば、感じることは変わってくるのではないか。

 改めて「赤痢」というバンド名さえ新鮮に思える。たとえば赤痢が結成された時代とはスターリンがいて、アレルギーがいた日本だったと同時に、というより、ロンドンにザ・スリッツがいて、ベルリンにマラリア!がいた世界だった。「赤痢」が “夢見るオマンコ” を歌ってなんの不思議があったろうか。むしろ自然な流れではないか、ということが体験としてわかるコロナ禍後の世界だ。
 振り返られるときは赤痢結成前、つまり40年以上前ということになるが1981年辺り。西ベルリンのポスト・パンク・シーンではマラリア!という女性だけのポスト・パンク・バンドが活動していた。電子楽器を使ったサウンドは、初期衝動で発する新人バンドとは違っても、ふたつのバンドの野太く気だるい女性ヴォーカルを重ねてみたくなる。マラリアと赤痢──感染症の名前をバンド名につけることの不謹慎さと禍々しさ、それから細菌やウィルスという、我と世界の境界線で生き死にに関わる生命体、感染者への差別的視線などの数多くのイメージが、コロナ・パンデミックを過ごした直後の私たちには喚起される。そのマラリア!の少し前、ロンドン・パンク・シーンで女性性のモチーフを使い尽くしたバンド、ザ・スリッツも同時に思い出している。もちろん、赤痢のメンバーが高校時代にリリースしたデビュー・シングルに収録された “夢見るオマンコ” からのつながりでだ。
 かつてなら、その存在自体が悲劇性を帯びた憂い顔の女性歌手に、性的に際どい歌詞を歌わせて、そこに男にとっての夢のような寛容さや包容力を想定し、〈菩薩〉と崇めるやり方があった。ポスト・パンクの80年前後以降の、日本もまだ含まれていたはずだった「世界の変化」は、女性表現者が社会の男性性による有言無言有償無償の要請からいかに離れて、コントロールの主体を奪うことだった(たとえば1980年の山口百恵の結婚への、当時の同世代の女たちの失望感は、阿木耀子との共作で山口百恵がそれを成しうるかと思った矢先の、なんだか元の木阿弥のような決断に対してだった)。
 80年代といえばまだ「菩薩」的女性像や「女は子宮で考える」といった非科学的なファンタジーを男性中心のメディアが無邪気に広めていた頃で、京都のバンド赤痢が “夢見るオマンコ” をリリースした翌年、やはり京都の女子短大助教授だった上野千鶴子が『女遊び』(学陽書房)の巻頭に「おまんこがいっぱい」というエッセイを収録したことには、いまとなっては時代の曲がり角が見える気もする。が、当時実際には高校生バンドのデビュー・シングルとフェミニズムの第一人者となる学者のエッセイは無関係に、対象も意味も少し違うところに放たれた。
 20世紀の女性解放運動の後、ウーマンリブ(フェミニズム)が主流男性社会から疎んじられ、女性たち自身にさえ距離を取られてしばらく経った頃、上野千鶴子が『女遊び』の中でまだ衝撃を持って取り上げていたAV女優黒木香の脇毛を見せた演技など、露悪的で挑発的で爆発的な「女自身による」と限りなく思える程度の、女性身体の相対化が試みられていた。女の身体または身体性を売るとすれば、それはあくまでも女性自身であり、その表現が誰の期待に応えていなくても、というか、応えていなければいないほど、それは観客ともなる女性自身も含めた社会の要請に応えているということにもなった。これもひとつのマーケティングだとしても、そのことをもう現代の経済システムでは逃れられなくても、ひとりの人生を超えて、ずいぶんマシなことだと思う。しかしその試みは歴史を振り返れば、それほどうまく進まなかったように思う。特に日本社会での女性性や女性身体の表層にまつわる問題は、ただ「表現の自由」といったリバタリアニズムに乗っ取られているように思えるからだ。

 ところで私が赤痢を知ったのはファースト・アルバム『私を赤痢に連れてって』がリリースされた後だった(当アルバムは当時だけで5000枚以上の大ヒットになったという)。まず、あっけにとられたのは、アルバム・タイトルの大胆さとデザインのかわいらしさだった。これがいかに “でたらめさ感” (野蛮さ、大胆さ、不敵さといってもいい)を醸し出していたかについては、40年後のいまでは伝わりにくいものになっているかもしれない。言わずと知れた87年公開の日本映画『私をスキーに連れてって』のあまりにもシンプルなもじりを、公開数ヶ月後というこの速度でここまでベタにペーストした、そのあっけらかんとしたセンスにはいきなりクラクラした。当該映画はまさにバブル・カルチャー最盛期の、“映画” というよりCMに近く、すでにマーケティング重視で楽曲を作っていると公言していた松任谷由実による主題歌・挿入歌を含めて、完全なる広告代理店製のトレンディ・デート・ムーヴィーだった。その後、広告代理店文化がサブカルチャーの行き場をせっせと掠め取り、「作る部分」ではなく「売る部分」だけを国策化して中間マージン・ビジネスを確立してゆくハシリとなった。
 赤痢はそういう作品(言葉)を、逆張りや奇を衒ったふうでもなく、(おしゃれでもパンクでもない)素朴で可愛らしいデザインとともに世に出した。まるで本家の、スマートでポジティヴで快楽的で資本主義的な、大人や男といったすでにより権力を持っている人たちが引いた社会デザインそのものを、上空から見下ろすような視点が最高にサイコーだ。しかも、彼女たちが見下ろしていたのはそれだけではなくて、女性性や女性の身体性が当事者から切り離されて金儲けシステムの棚に載せられてしまうことと、同じシステムが最もコストパフォーマンスがいいと判断した若さや姿形、軽妙さやコミュニケーション手法が同じようにジャッジされ、「プロデュース」されるという社会システム上の同じ問題をも眼下の視野に入れていたことは、これを40年後のいまに持ってきてもなお刺激的だ。

 ともかく、高校生の赤痢のデビュー・シングルはそういう時代にリリースされた。「夢見るオマンコ」という単語の組み合わせのなんと愛らしいことか。ティーンエイジャーの性や性行為への距離感の、リアリティのある幸福さが現れている。しかし親しみやすくポップなメロディに乗せられた実際のこの歌の歌詞はさらにリアルだ。「恋した彼氏がおもしろくないから 一発やらして 一発孕んで 一発産み落とす あんなに夢見たオマンコも どうしてこんなにつまらない」「恋した彼氏があきらめられないから 一発おとして 一緒にホテルで 連発やりまくる」(“夢見るオマンコ”)と、これは恋するときの幸福をよく描いている。この「夢見る(オマンコ=性交)」と男たちの「菩薩女」へのファンタジーは同じように上野千鶴子が先のエッセイで指摘した「中産階級の子女の性的無知は、絵に描いたような近代のブルジョア性道徳の体現である」と指摘してみる。けれども同時に当時の私だって十分にその体現者だった。そりゃあもう、どんな強いこと言っても、その辺についてはブルジョアな道徳の体現者以外のものではなかった。思い出したのは高校生の頃に読んだ女性運動の本だ。「手鏡で自分の性器を見る」ことについて読み、「なるほど、“今度” やってみよう」と、私は本を閉じたことがあった。赤痢がデビューしたのは、じっさいそんな時代のすぐ先だった。私に何をえらそうなことが言えよう。妹たちのような年齢の彼女たちに、私は2、3枚の鱗を目から剥がしてもらったわけだった。

 そのことが楽しい。いつだってそのドラムは裏切らない。私の体のあちこちを硬くしている、なんとまあ半世紀かけても落ちていない鱗を何度もはがし、それでいて残酷に床に叩き落としたりしないという意味でだ。轟くビートは私の重くなっていく足を、また跳ばせてくれる。
(8月10日記す)

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文:清家咲乃

「こんなのって、つまらない」と感じながら日々を過ごしている人は、一体どれくらいいるのだろう。きっとほとんどが心の中でそう唱えながら生きているんじゃないだろうか。充実して見える人たちも、つまらない状態に陥らないために自転車操業的に輝きを補充してるんじゃあないか。反対に、完全な諦めの境地に浸かるのもまた難しい。あと一歩で悟りを開けるところまで来てしまっていることになるし。そう考えれば、つまらなさの打開へ至る破壊的衝動というものは何時の誰にでもリンク可能である。80年代に生まれていなくても、女性でなくても、それはとくに関係ない。

 赤痢は80年代前半から90年代中盤にかけて活動していたパンク・バンドである。細かな活動経歴や実状、ソニック・ユースのサーストン・ムーアがファンであることを公言していたとか、彼女たちの出身地である京都にてリアル病(やまい)の赤痢が一時物理的に流行ったことに由来するバンド名らしいとか、そうしたことは当時を知る世代の方が既に記しているはずなので、そちらに任せたい。いや、本レヴューを書くにあたってざっと調べたところネット上では思いのほか情報が少なかったので、改めて語っていただけるなら是非にそうしてほしい。

 現在の耳で聴きつつ過去をたぐり寄せていくなかで不思議なほどすんなり入ってきたのは、赤痢がデビュー作以降〈アルケミーレコード〉に在籍していたという部分だった。非常階段の中心人物・JOJO広重が主宰するレーベルだ。私が彼を知ったきっかけはおそらく高校時代にBiS階段を聴いたことだったっけと思い返して、ピンときたのだろう。アイドル界のタブーを破り尽くすBiSというグループと、言わずと知れたアンダーグラウンドの主による異色のタッグ。リアルタイム世代が綴る赤痢の第一印象と、赤痢の活動停止以降に生を受けたわれわれ世代がBiSにおぼえた高揚とも嫌悪感ともつかぬ衝撃が重なった気がした。痛いところをかばっているように不安定な演奏/歌唱。若い女性が忌避して然るべき(と思われている)猥語をためらいなくうたい叫ぶことによる威嚇。なりふり構わないパフォーマンスをしたかと思えば、自室に貼ってあるポスターを見られてしまった思春期の少女のような照れが顔を出すこともある。同じく非常階段が過去にコラボレーションを果たしたアイドル・グループ、ゆるめるモ!にも上記の特徴はかなりの割合で共通していると気づく。そしてもうひとつ。赤痢にもBiSにもゆるめるモ!にも、女性ファンは多くついている。赤痢は「ガールズ・パンクの先駆け」と評されていることからして、当時の客層は元々シーンにいた男性が主なのかと思いきや、『LIVE and VACATION』収録のライヴ映像に映るオーディエンスはほとんどがメンバーと同年代の女性だ。2010年代にヴィレッジヴァンガードに出入りしていたサブカルチャーを嗜む女の子たちが、尖った地下アイドルをロールモデルに選んだ現象に近いものが80年代にも起きていたのだと考えれば合点がいく。したがって、インターネット登場前夜、デジタル録音普及前の音楽が有している──そしていまとなっては完全に失われた──アウラとでも言うべきなにかを抜きにすれば、赤痢に隔世の感を感ずることはあまりない。これが表示されているデバイスと地続きである。

 前段では女性を軸に語ってしまったが、冒頭で述べたとおり、そこは特段焦点をあてるべき部分ではない。つまらねえのを如何にかしたい気持ちはみな同じなのだ、と知らしめることにこそ彼女たちの目的があると思う。“夢見るオマンコ” を筆頭に女性性を開陳する楽曲が多い赤痢だが、それは自らが聖域化されないための破壊活動だ。こわれものだと目されてきた領域を内側から足蹴にしてみせる。みなさまがいやに丁重に扱っているこれは、真実この程度のものなんだ、というように。少女に夢見ていたのはどちらだったのか。わたしに夢見る他者が、わたしが夢を見るように仕向けていたのではないか。

 作品を重ねるにしたがって不可抗力的に向上した演奏技術は赤痢をよりフラットに、いちバンドとして見せるための添え木となって補強されていく。『PUSH PUSH BABY』ではクシャクシャとブリキのおもちゃのように跳ねていて、いかにもガレージ・バンドというギリギリのバランスでまとまりを保っていたのが、1stアルバム『私を赤痢に連れてって』までのわずかな時間でグッと強度を増している。各楽器の鍔迫りあいだったものがアンサンブルと呼べる形になり、本筋以外の音をSE的に盛り込んだ “カメレオン” からはメンバーが遊び心を具現化する方法を仕入れたことがうかがえる。各所で指摘されている「気だるさ」が前面に出てきたのもここからだ。続く『LOVE STAR』で今度はメロディ・ラインが魅力を増し、旋回しながら攪乱するような演奏とのバランスで不可思議なポップネスを提示。もはや「10代の少女がショッキングな楽曲を演っているバンド」のみでは説明不足になるほど音楽的な面白みがあらわれており、万人のための退屈破壊装置としての機能を獲得している。

 スリッパで踏みならす家の床もカーテンの向こう側もどうしようもなくつまらなく感じるとき、そういうときがきたらこの作品を手に取ってみてほしい。そろそろ春も終わるが、それでも「いやな時代ももうすぐ変わる」と信じながら。
(5月25日記す)

Jessy Lanza - ele-king

 家から一歩でも外に出ると、ふらふらと倒れそうになる。熱線そのものである日差しがあまりにも暑く、熱く、痛い。
 2023年、日本の7月は、観測史上最高の暑さになったという。昨日、東京のある巨大ターミナル駅に仕事で行ったとき、エスカレーター付近でスーツ姿の初老の男性が気を失って倒れており、警察官などがその人を囲っていた。「気候変動の被害者だ……」と思ってしまった。
 とはいえ、「酷暑」という言葉以上にふさわしい表現が見当たらない今夏においても、この夏の暑さを音楽とともに楽しもうじゃないか、と誘ってくるレコードがある。享楽的なダンス・トラックも、涼やかで内向きなチルアウトも収められているジェシー・ランザの4作め、3年ぶりのニュー・アルバム『Love Hallucination』だ。特に今回は、あまりにもオプティミスティックな椰子の木のカヴァー・アートが物語るとおりの楽しいレコードである。ジェシーが移り住んだLAは、東京よりは過ごしやすいのだろうか。

 クラブにはあまり行かない、クラブ・カルチャーがルーツというわけではない、メロディのあるダンス・ミュージックが好き、とはこのアルバムについて本誌のインタヴューで語っていたこと。個人的にすごく共感してしまったのだけれど、それはともかくとして、彼女のそういう個性は、『Love Hallucination』の雑食性と、あくまでもレフトフィールドには振り切れないポジティヴなポップ・ヴァイブに表れている。
 ジェシーの雑食性については、いまに始まったことではないものの、1曲めの “Don’t Leave Me Now” がハウスで、次の “Midnight Ontario” がUKガラージ/2ステップ調で……という取り留めのなさに明らかだ。『Love Hallucination』と同時期に制作していたという『DJ-Kicks: Jessy Lanza』(2021年)にしたって、自作のフットワークである “Guess What” から、ちょっとスピリチュアルなムードでスタートする。ジェシーのパレットは常にカラフルかつ賑やかで、彼女はそこからお気に入りのビートやテクスチャーを選び取り、それを煌びやかなダンス・ポップに仕立て上げてみせるのだ。野田努編集長は以前、これについて「ポストモダン的感性」と評していたが(https://www.ele-king.net/interviews/007776/)、つまりはなんでもありなのである。
 とはいえ、その手つきは、『Pull My Hair Back』(2013年)や『Oh No』(2015年)など、かなりローファイでベッドルーム的だった初期の作品に比べると、ずいぶん洗練されている。前作の『All the Time』(2020年)と比較してみても、特にアルバムの心躍る前半部はもっとダンス・オリエンティドで、なおかつ朗らかでわかりやすいメロディ志向になった。たとえば、同時期にリリースされたジョージアの『Euphoric』やカーリー・レイ・ジェプセンの『The Loveliest Time』といった優れたダンス・ポップ・アルバムと並べて聴いてみても、『Love Hallucination』の華やかな力強さが感じられるだろう。

 アルバムからのファースト・シングルだった “Don’t Leave Me Now” は、楽天的なムードに貫かれた、アッパーなハウスだ。プロダクションはシンプルではなく、練りこまれている。速いテンポで打ちこまれるキック、聴き手を急き立てるようなパーカッションとドラム・マシーンのビートにのせて、ジェシーは狂おしいR&Bヴォーカルを披露し、ファルセットで天上へと突き抜けていく。
 続く “Midnight Ontario” は、世界を席巻中の NewJeans から、密かに盛り上がっているNYCガラージまで、UKガラージ/2ステップがちょっとしたリヴァイヴァルを起こしていることとの共振を感じさせる。この曲をジェシーとともに手がけているのはジャック・グリーンで、〈LuckyMe〉を拠点に〈Night Slugs〉や〈UNO〉からも作品を発表した経験がありつつ、R&Bヴォーカルの扱いにも長けている彼の手腕が発揮されていると言えるだろう。ピアソン・サウンド=デイヴィッド・ケネディが要所要所に参加していることもあって、『Love Hallucination』は、米国と英国の地下を繋げて歌ったダンス・ポップ・レコードだと言うこともできそうだ。
 LPからのラスト・シングルになった、テンスネイクことマルコ・ニメルスキーとの “Limbo” は、初期ヒップホップを思わせるエレクトロ・ファンク。と、ここまでジェシーは、あっちに行ったりこっちに行ったりと、忙しない。

 一方、ジャム・シティを思わせるUKベース的な “Big Pink Rose” やデトロイト・テクノっぽいムードを纏った “Drive” などが構成する中盤からは、踊りやすさやメロディを志向するというよりは実験に寄っていき、耳への刺激は驚きが心地よさを上回る。ここではヴォーカルも、トラックを織りなす素材の一部のような扱われかたである。細野晴臣風のエキゾティシズムが横溢した浮遊感たっぷりの “I Hate Myself”(ジェシーはYMOのファンでもある)は、リリックとの落差もあって、なかなかユニークだ。
 ダニー・ブラウンやオボンジェイアーなどとのコラボレーションでも知られるポール・ホワイトと初めて制作した “Marathon” は、「クリスタル」と形容したい80年代的な雰囲気が濃厚である。サックス・ソロやシンセサイザーの音色は、手前の “Gossamer” と次のクローザー “Double Time” と結びついて、多分にニューエイジ風で瞑想的。このあたりからはLAの風土や文化が薫ってくる気がするし、それはジェシーの初期のレコードや彼女が好むR&Bとの接続が立ち上がってくる面でもある。

 『Love Hallucination』の印象を決定づけ、新鮮なイメージを聴き手に植えつけるのは、見事なシングルを立て続けに叩きつける冒頭の鮮烈な3曲である。「このアルバムで『信頼』と『脆弱さ』というテーマを描いてみた」とジェシーが語っていることを踏まえると、ポップで踊れる挑戦的な前半部は彼女から他者(新たに手を組んだプロデューサーたち)への「信頼」を、次第に実験的かつ内省的になっていく中盤以降は彼女自身の「脆弱さ」を表しているのではないだろうか。
 このアルバムは、エアコンが効いた部屋で聴いてもいいし、手元のデヴァイスにダウンロードして外で聴いてもいい。ただ、「外で」とはいっても、人命が危機にさらされそうな8月の日本の日中よりは、シングルの “Don’t Leave Me Now” のカヴァー・アートのような、涼しくなってきた夕方に水分を補給しつつ、適度に涼みながら、という条件つきではあるものの……。

黄金期NYヒップホップの神髄 - ele-king

 『The Science』。このアルバム名が初めて世に出たのは1992年のこと。同年に出た『Breaking Atoms』以後初となるメイン・ソース待望の新曲 “Fakin' The Funk”、その12インチ・シングルのジャケットに貼られたステッカーに、「Look for the MAIN SOURCE album "THE SCIENCE"」の文字が踊っていたのだ。メイン・イングリーディエント “Magic Shoes” のコーラスを用いた華やかな冒頭から一気に惹き込まれる “Fakin' The Funk” の素晴らしさもあって、『The Science』への期待はこのとき、最高潮に膨れ上がっていたのだが、しかし……。

 メイン・ソースは1989年に結成された。カナダはトロント出身で、子どものときに家族皆でニューヨークはクイーンズに移住してきたK・カット、サー・スクラッチのマッケンジー兄弟。ニューヨークはハーレム生まれでクイーンズに育ったラージ・プロフェッサー。偶然か必然か、K・カットとラージはクイーンズのハイスクールで出会い、意気投合。K・カットの弟も交えてグループを組んだ。
 マッケンジー家は音楽一家だった。ジャマイカ系の祖父はミュージシャンで、彼のレゲエ・レコードのコレクションが、後にメイン・ソースの曲づくりに活かされた。血縁者にはなんと、80年代にカリビアン・テイストのダンス・ミュージックで一斉を風靡したエディ・グラント、そして、90 - 00年代にビート・メイカーとして名を馳せたラシャド・スミスがいる。
 なので、音楽ビジネスもよく知るマッケンジー兄弟の母親、サンドラがマネジメントを担った。彼女はすぐに、クイーンズの名物レコーディング・スタジオ、1212へメンバー3人を連れていくのだが、そこでポール・Cに出会えたことが、メイン・ソースの成功を決定づけた。

 ポール・Cは、E-mu社のSP-1200=サンプラーを用いたヒップホップのビート制作法を確立し発展させたパイオニアのひとり、偉人中の偉人だ。レコード・コレクションもすごかった彼はレアなネタ使いでも、この時代のヒップホップ・ビートを急速に進化させた。1987 - 1989年に彼がプロデュース、プログラミング、ミックスなどを担った、マイキー・D&ザ・LA・ポッセ、スーパー・ラヴァー・シー&カサノヴァ・ラド、ブラック・ロック&ロン、ケヴ・E・ケヴ&AK-B、スティーゾらの諸作は全て名作、聴きものだらけ。詳細なクレジットなしでも、聴けばポール・C仕事だとわかるウルトラマグネティック・MCズ『Critical Beatdown』、エリック・B.&ラキム『Let The Rhythm Hit 'Em』といった名盤中の数曲も語り草だ。そして、オーガナイズド・コンフュージョンもポール・C門下生なのだが、彼の最後の弟子となったのがメイン・ソースの3人だった(ちなみに、ラージ・プロフェッサーからもSP-1200の扱いを学んだピート・ロックは、マーリー・マールとポール・C、パイオニアふたりの技を受け継ぐサラブレッドだ)。

 メイン・ソースのデビュー・シングル「Think c/w Atom」は、サンドラが息子たちのために設立したアクチュアル・レコーズから1989年中にリリースされた。おそらくは、メンバーがベーシックとなるネタのレコードを持ち込み、それをポール・Cがプログラミング、ミックスなどした2曲は、ポール・C印のサウンド、ノリと、最初から光るものがあったメンバーのネタ選びの相性の良さが感じられる、いきなりの名作だった。
 ポール・Cはしかし、1989年7月17日、何者かに殺害され24歳で急逝してしまう。それでも、「ポール・Cの教えの通りにつくろうと思った」というK・カット、そして、後には「Paul Sea Productions」なるクレジットを入れるほど師匠を愛したラージにより、ポール・Cの教えは忠実に受け継がれる。そうして出来上がったのが1991年の、メイン・ソースの1st『Breaking Atoms』だった。

 『Breaking Atoms』は、この時代のニューヨーク・ヒップホップを代表する傑作のひとつ、という評価が世界中で定まっている名盤だ。こちらも師匠の技を受け継いだエンジニア、アントン・パクシャンスカイの働きもあり、ポール・C印のビート・メイクが見事に継承され、他にはない特別な音像が聴く者を魅了する。マッケンジー兄弟の見せ場となるスクラッチ・ワークに、本作でレコード・デビューを果たしたナズやアキネリとのマイク・リレーも含めて、ラージの無骨なラップを活かす様もウマい。そして何より、ネタ選びのウマさ、おもしろさだ。曲の印象を決定づける、これぞ!というネタを用いたワン・ループづくりがとにかく抜群だった。
 DJというよりもターンテーブリストで、ソロ・ワークの少ないサー・スクラッチはいざ知らず。少なくないK・カットのソロ・ワークを聴けば、『Breaking Atoms』がラージひとりではつくり得なかった、グループの集合知が生んだ傑作であることがすぐにわかる。

 マエストロ・フレッシュ・ウェスのアルバム『The Black Tie Affair』、クッキー・クルー “Secrets (Of Success) (Live At The Bar-B-Que Mix)”、クイーン・ラティファ “That's The Way We Flow”、フー・シュニッケンズ “La Schmoove (Remix)”、MC・ライト “What's My Name Yo” などなど、91 - 93年のK・カット・ワークスは必聴だ。『Breaking Atoms』が広くウケた理由であるカラフルな、人懐っこいサンプリング・ワークはK・カットに負うところ大なのでは? ラージのストレートなつくりのソロ・ワークと聴き比べていくと、自ずとそのような結論にいたる。

 いまは、多くの才能が集い1曲を仕上げる「コライト」が海外ではあたりまえになった。楽器を演奏するわけではない、打ち込みでつくる音楽はいわばアイディア(そしてエンジニアリング)勝負だ。ひとりでつくるより、複数でアイディアを出し合いつくる方がより良いものが生まれる確率は高い。チームのアイディアの結晶である『Breaking Atoms』はだから特別な1枚になり得たわけで、ラージの脱退により “オリジナル” メイン・ソースが終わってしまったのは本当に悲しかった。
 マネージャーのサンドラが息子ふたりを優遇、ギャラの取り分を巡りモメた挙句のラージ脱退だったようだが……。以前はLA・ポッセと組んでいたマイキー・Dを迎えて制作された新生メイン・ソースの『Fuck What You Think』も、ラージのソロ・アルバム数枚も、『Breaking Atoms』の続きを聴かせてくれるものではなかった。だからこそ今回、オクラ入りとなっていた『The Science』がおよそ30年の時を経てリリースされたのが、とにかく嬉しい。

 なんらかの形で既に聴くことが出来た曲も多い。が、各曲が当時の流行りだったインタールードで繋がれ、きちんとしたアルバムの形にまとめられた『The Science』は聴きごたえがもう全く違う。ヒップホップが日進月歩で進化していた時代らしく、例えるならア・トライブ・コールド・クエストが1stから2nd『The Low End Theory』で見せたような、持ち味はキープしつつもタイトでハードな作風への成長に胸躍る。そしてとにかく音像がやはりスペシャル。『Breaking Atoms』と『The Science』でしか聴けない、ヒップホップ史上でも最良のひとつと言えるサウンドは永遠の宝だ。低音を効かせて、とにかくデカい音で聴けば、この時代のニューヨーク・ヒップホップの神髄を感じられるだろう。

audiot909 - ele-king

 日本でひたすらアマピアノを追求する人物として名高い、DJ/プロデューサーのaudiot909。彼が新しいシングルをリリースする。その新曲“4U ”には、SIMI LABの元リーダーのQNのラップがフィーチャー。昨年は“RAT-TAT-TAT”あっこゴリラをフィーチャーしたaudiot909がまたもやってくれました。
 この夏の都会の香気を漂わせながら、QNのメロウなラップが交錯するこの曲をぜひチェックしてください。

audiot909
4U (feat. QN)

https://linkco.re/7CUzuCg9
Japanese Amapiano Recordings​


​audiot909
元々ハウスのDJだったが2020年から南アフリカのダンスミュージックAmapiano制作に着手。 2022年にリリースされたラッパーのあっこゴリラをフィーチャーしたシングル「RAT-TAT-TAT」はSpotifyの公式プレイリスト+81 Connectなど数多く取り上げられ、世界に広がるAmapianoを取り上げたドキュメンタリー映像にピックアップされるなど自主リリースながら異例のヒットを飛ばす。 並行してSound & Recording Magazine誌での連載や対談、現地のプロデューサーへのインタビュー、ラジオ出演など様々なメディアにてAmapianoの魅力を発信し続けている。​

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QN
神奈川県相模原市出身。 ​
SIMI LABのリーダーとしてシーンに頭角を表す。 ビートメイカー兼ラッパーとして、ヒップホップ・レーベル〈summit〉から出した3枚目のアルバム『New Country』はジャパニーズ・ヒップホップの名作として語り継がれている。 現在は菊地成孔とのユニットQ/N/Kてしてフジロック・フェスティバルの出演やアルバムのリリースを行う。 また、ヒップホップ・コレクティヴMUSASHI VILLAGEの主要メンバーとして参加し、アブストラクトから王道のヒップホップまで幅広くシーンにアプローチをかけている。

Gilles Peterson - ele-king

 ジャズとクラブといえばこの人、イギリスを代表するDJ、ジャイルス・ピーターソン。その選曲の素晴らしさもさることながら、自身のレーベル〈Brownswood〉においてはUKジャズからアフリカ、グローバルまでと幅広く質の高い作品のリリースを続けている、多くのミュージック・ラヴァーたちから信頼のリジェンドが4年ぶりに来日する。東京はO-EAST/AZUMAYAにてオールナイトで開催。これは行くしかない。日本でジャズとクラブを盛り上げてきた功労者にして盟友の松浦俊夫、ファッション界を中心に活躍するDAISUKE G.、Fraser Cookeといった日英の音楽愛好家が参加する。なお、本イベントにはファッション・ブランド、sacaiのサポートが決定している。

2023年9月9日土曜日
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Contact presents Gilles Peterson
-Still Searching for The Perfect Beat-

supported by sacai
at Spotify O-EAST / AZUMAYA

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Lineup:
GILLES PETERSON (Brownswood Recordings / BBC / Worldwide FM I UK)
TOSHIO MATSUURA
DAISUKE G.
FRASER COOKE

Lighting:
MACHIDA

Laser & Visual Effect:
REALROCKDESIGN

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Open 11PM
¥5000 Door
¥4000 Advance
¥3000 Early Bird Ticket (Limited to 100)
¥2000 Under 23
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Gilles Peterson (ジャイルス・ピーターソン)
1980年代よりクラブ・シーンのキーパーソンとしてジャズを中心にしながらも、ジャンルという音楽の境界線を砕き、多くのアーティストと点で結ばれながら世界中のDJとアーティストに大きな影響を与え続け、またリスナーに愛されてきたイギリスを代表するDJ。ラジオ・プレゼンター、クラブDJ、アーティストのプロデュース、フェスティバル主催・キュレーションなど、40年近く第一線で音楽トレンドを発信し続けるテイスト・メイカー。英国営放送局BBC Radio 6 Musicにて週末の看板番組を担当。また2016年、自らオンライン・ラジオ・プラットフォーム「Worldwide FM」を立ち上げた。ロンドンで開催されるWorldwide Awards、フランスのセットで開催されるWorldwide Festivalのホストを務め、2019年にはイギリスで新しいフェスティバルWe Out Hereを立ち上げた。またレーベル・オーナーとして新世代のアーティストを紹介する為に「Brownswood Recordings」を主宰し、次々と新しい才能を発掘し、世に送り出している。自身の作品としては2021年にインコグニートのブルーイとのプロジェクトSTR4TAをスタート。これまでに2枚のアルバムをリリース。また最近は初の著書「Lockdown FM - Broadcasting In A Pandemic」を上梓した。
http://www.gillespetersonworldwide.com


松浦 俊夫 TOSHIO MATSUURA
1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。5作のフル・アルバムを世界32ヶ国で発表し高い評価を得る。2002年のソロ転向後も国内外のクラブやフェスティバルでDJとして活躍。またイベントのプロデュースやホテル、インターナショナル・ブランド、星付き飲食店など、高感度なライフスタイル・スポットの音楽監修を手掛ける。2013年、現在進行形のジャズを発信するプロジェクトHEXを始動させ、Blue Note Recordsからアルバム『HEX』をワールドワイド・リリース。2018年、イギリスの若手ミュージシャンらをフィーチャーした新プロジェクト、TOSHIO MATSUURA GROUPのアルバムをワールドワイド・リリース。「TOKYO MOON」(interfm 金曜 23:00) 好評オンエア中。
http://www.toshiomatsuura.com


Daisuke G.
1975年生まれ、2007年。源馬大輔事務所を設立。クリエイティヴ・ディレクター/DJ。ファッション、音楽を取り巻く様々なものをプロデュース。店舗内装、イベントと空間プロデュースなども手掛ける。現在のクライアントにはsacai、香港Joyce、Lane Crawford Consultantなども手がける。人気DJとしても大活躍中。
https://www.mixcloud.com/daisuke-gemma/


Fraser Cooke.
(Nike | Mild Bunch)

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【開催日時】
2023年9月9日(土) 23時~5時

【会場】
Spotify O-East
東京都渋谷区道玄坂2丁目14-8
https://shibuya-o.com/east/

【料金】
当日 ¥5000
前売り ¥4000 *8/11(金)13時よりzaiko / e+にて取り扱い
早割り ¥3000 *8/4(金)12時よりzaiko / e+にて100枚限定取り扱い
23歳以下 ¥2000 *要写真付き身分証明書

【前売取扱】
zaiko: https://contacttokyo.zaiko.io/e/Gilles-Peterson-20230909
イープラス:https://eplus.jp/sf/detail/3931120001-P0030001

*20歳未満の方はご入場できません
*写真付き身分証明書をお持ちください

ジャイルス・ピーターソン・ツアー・インフォ

GILLES PETERSON JAPAPN TOUR 2023
-STILL SEARCHING FOR THE PERFECT BEAT-

9月9日(土) 横浜 Local Green Festival
9月9日(土) 東京 Spotify O-EAST / AZUMAYA
Contact presents GILLES PETERSON
-STILL SEARCHING FOR THE PERFECT BEAT-
supported by sacai
9月15日(金) 京都 CLUB METRO
9月16日(土) 大阪 CIRCUS Osaka
9月17日(日) 福岡 THEATER 010

Theo Parrish Japan Tour 2023 - ele-king

 Rainbow Disco Club、秋のオールナイト公演「Sound Horizon」。今年はセオ・パリッシュの登場です。9月22日(金)23時~、会場は2021年にオープンしたGARDEN新木場FACTORY。演出はREALROCKDESIGNが担当します。チケットは3カテゴリー用意されていましたが、すでに「1」と「2」の枠は完売、9,000円の「カテゴリー3」のみ販売中です。『Wuddaji』(20)に『DJ-Kick』(22)に『Free Myself』(23)にと、近年精力的に活動をつづけているセオ・パリッシュ。その最新型を目撃しましょう。

https://rainbowdiscoclub.zaiko.io/e/soundhorizon0922

 そして追加情報です。上述のモーリサ・ローズとのコラボ作がフィジカルでもリリースされることになりました。3LP、ディジパックCD、カセットの3形態です。9月下旬ころに入荷とのこと。こちらもお見逃しなく。

https://diskunion.net/clubt/ct/news/article/0/116023?utm_source=mailmagazine&utm_medium=email&utm_campaign=20230726vegyn

 さらに追加情報(8/20)です。大阪公演も決定しました。
2023.9.23(土) 大阪 @ Club Joule
- Theo Parrish Japan Tour in Osaka -

DJ: Theo Parrish, YAMA (Newtone Records), SHUN145 (tide and time / Jazzy Sport Kyoto)
PA: Kabamix
Coffee: edénico
Open 22:00
Advance 4,000yen Ticket Link e+ https://eplus.jp/sf/detail/3923880001-P0030001
Door 5,000yen
U-23 3,000yen

Info: CLUB JOULE www.club-joule.com
大阪市中央区西心斎橋2-11-7南炭屋町ビル2F TEL06-6214-1223

C.E presents Low Jack, Rezzett & Tzusing - ele-king

 ファッション・ブランドC.Eによる最新パーティが9月8日(金)に開催される。ヴェニューはVENT。パリからロウ・ジャック、ロンドンからレゼット、上海/台北からツーシンとなかなかに強力な面子で、これは楽しい一夜になること間違いなしだ。詳細は下記よりご確認を。

[9月4日追記]
 当日、会場限定のTシャツが販売されるとのことです。これは行くしかない!


すべてはナムコからはじまった
『パックマン』『ギャラクシアン』『ニューラリーX』『ゼビウス』『マッピー』

いまや世界中で親しまれているゲーム音楽、その出生の秘密を探る

「今となっては信じられないことだが、初期の時代のビデオゲームにはゲーム音楽が存在しなかった。〔……〕では、いったいどのようにしてゲーム音楽が誕生し、やがて世界に類を見ない、日本独自のゲーム音楽市場が形成されるに至ったのか? 今までほとんど顧みられることがなかった、ゲーム音楽誕生から今日まで至る過程の歴史を紐解くにあたり、とりわけ絶対に避けて通れないのが、ナムコの黎明期の作品である」(まえがきより)

効果音から音楽へ──
多くの取材・証言から浮かびあがる、先駆者たちの試行錯誤と草創期の真実

四六判並製/256頁

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刊行記念トーク&サイン会開催
ゲーム音楽家インタヴュー集
『ナムコはいかにして世界を変えたのか』
2023年10月9日(月・祝)12:00~14:00(予定)
@秋葉原 書泉ブックタワー 9Fイベントスペース
https://www.shosen.co.jp/event/12953/

目次

まえがき

第1章 「ゲーム音楽」前史
第2章 伝説のメーカー、ナムコの参入
第3章 「ゲーム音楽の父」大野木宣幸
第4章 ゲーム音楽専門コンポーザーの誕生
第5章 「ゲーム音楽」市場の形成

あとがき
参考文献・サイト

【著者プロフィール】
鴫原盛之(しぎはら・もりひろ)
1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、近年では文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などに参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は『ファミダス ファミコン裏技編』『ゲーム職人 第1集』(共にマイクロマガジン社)、共著では『デジタルゲームの教科書』(SBクリエイティブ)『ビジネスを変える「ゲームニクス」』(日経BP)などがある。2014年より日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表を務める。

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K-Lone - ele-king

 K-ローンの新作がこれまたシンプルなんだけどすばらしいテクノ・アルバムで、というのをこの手の音楽が好きそうな人に最近会うたびに言っている、この数週間。このくそ暑いなか、そのリフをクーラーの効いた部屋で、鼻歌まじりで歌いたくもなるメロディアスで涼やかなアルバム。

 その名前を意識したのは2018年のパリスの運営する〈Soundman Chronicles〉からのシングル「In The Dust EP」と自身のレーベル〈Wych〉からの「BB-8 / Barbarossa」。聴きようによってはベーシック・チャンネルのダウンテンポ・ヴァージョンとも言えなくもない “Old Fashioned” にひかれて買ったら、併録の軽やかなチル・エレクトロ “In The Dust Of This Planet” にハマってしまった前者。かたや後者のウェイトレスなグライムに、チップ・チューン的サウンドの鼻歌交じりなメロディにも引っかかってしまい……どちらにしろ、ベース・ミュージック・シーンにおける、そのライトさというか、かわいげというか、とにかくあまり当時他では聴けない「軽やかさ」で気になる存在となりました。前述のパリスとのかかわりに加え、〈Idle Hands〉から出していたり、レーベル〈Wisdom Teeth〉を共同運営する相棒のファクタ(Facta)はホッジ(Hodge)とのコラボ・シングルを出していたり、さらに同年の2018年にはファクタが〈Livity Sound〉から「Dumb Hummer / All the Time」を出していたりと、この人たちはブリストルの……というフォルダに勝手に頭のなかで整理してたんですが、いろいろ調べたらロンドンの人たちなのかと。ちょうどその頃ぐらいからふたりの作り出すサウンドは、どこかラウンジーなライトさをメインに出してきていて、ポスト・ダブステップがひとまわりした2010年代末に、完全に復権したイケイケのUKガラージの傍ら、ベース・ミュージック・シーンのなかでUKガラージも内包しながら、鮮やかな差し色のような音楽性で気になる存在となりました。いま思えばDJパイソンの『Dulce Compañia』も2017年にあってという。いまこうして見ると、いまに続く、わりかしライトでチル・アウトなムードのメロディアスなダンス・トラック、そのサイクルはこのあたりに突端があるんじゃないかなと。結果論ですが。

 2020年4月、コロナ禍での世界的なロックダウンとほぼ時を同じくして、〈Wisdom Teeth〉からK-ローンはファースト・アルバム『Cape Cira』をリリースします。キュートな作品というか、ニューエイジなモードとも、いわゆるUKの叙情的・内省的なテクノとも違った、チルでトロピカルな、どこかイージー・リスニングな空気が漂うこのアルバムが、それこそ初期のロックダウン中に最も聴いたアルバムになったという人も多いのではないでしょうか。2020年といえば、多くのDJたちがロックダウン中にアンビエント/リスニング・テクノの作品を作り、2021年前後にはそうした作品が大量にリリースされるわけですが、それより少し早い、しかもロックダウンが本格的になる4月にリリースされたことを考えれば、制作はその前にあたるわけで、ある種のコンセプチャルなサウンドに思えてきます。2021年には同じく〈Wisdom Teeth〉からは、その『Cape Cira』の軽やかな空気感、パイソン『Dulce Compañia』のトロピカルなリズム感を足して、さらにアンビエント・タッチで骨抜きに溶かし込んだようなファクタのアルバム『Blush』もリリース。さらには先日来日も果たしたトリスタン・アープの、やはり『Cape Cira』を発展させたようなアルバム『Tristan Arp』もリリース。〈Wisdom Teeth〉のサウンド、とりわけレーベルのアルバム単位での路線がこの設立者ふたり+他人で、明確になった印象もありました。でもシングルでは、これまた先日来日したイタリアのピエゾなど外部のアーティストを起用しつつ、主宰の両名もUKガラージやハウスを援用しながら、こうしたアルバムでのライトな音楽性の路線とダンスフロアとの接点を模索していくわけです。また2021年には、もう少しダンス寄りながら、同じようなポップな軽やかさを内包したアルバム『Soaked In Indigo Moonlight』を朋友パリスがリリースして外部から援護射撃したような感覚もありました。

〈Wisdom Teeth〉といえば、2022年、多くの新人とともに、BPM100という、いままでジャンルのフォーマットとして「空き」となっていながらも、実はDJたちにとっては意外となじみ深いBPM(このコンピ以前に、彼らの周辺とは離れたところ、例えば日本にもそうしたコンセプトのパーティやミックスはわりと昔から散見されていた記憶はある)をコンセプトにしたコンピ『To Illustrate』をリリースします。ある種のハウスやテクノの定石であるBPM120~130の、どうしても身体が動いてしまう性急なその “強い” グルーヴィーさを持ったBPMと、それ以下のロウでドープな感覚やチル過ぎるスローでどうしてもグルーヴ感が “弱い” BPMの間。これをレーベルが標榜してきた「軽やかさ」をグルーヴとともに追求するために選んだひとつのコンセプトと考えると、いろいろつながるようにも思えてきます。

 そしてこうした活動の後に、このタイミングでリリースされた本作が、実はわりとオーソドックスなハウスやテクノのBPMの楽曲が多いというのもなかなか興味深いですね。「膨張」と名付けられた本アルバムはゆっくりと空間をカラフルに染め上げていくメロディアスで軽やかなサウンドが続きます。ヴォイス・サンプルとオールド・スクールなビデオ・ゲームのポップな色調のオープニング画面を想起させる “Saws” ではじまり、軽やかなエレクトロ・ハウス “Love Me A Little” でアルバムは走り出します。アルバム中盤の “Oddball”~“Shimmer” は、90年代中頃の〈クリア〉や、ラウンジ・リヴァイヴァル期のエイフェックス・ツインμ-Ziqのコラボ=マイク&リッチを思い起こすようなイージー・リスニングなメロディのエレクトロを展開。ダウンテンポ “With U” のけだるいヴォーカルは、最近のUKガラージのイケイケっぷりを象徴するヒット曲 “B.O.T.A. (Baddest Of Them All)” で知られるエリザ・ローズ。
 そして後半、アルバムのBPMは、ハウスへとシフト・アップしていきます。テクノ的な堅さと、フュージョン的なメロディを併せ持つ、ある意味で正調UKディープ・ハウスとも言えそうな2曲 “Gel” “Love Is”。そしてアルバムはUKのリスニング・テクノのクールな伝統をなぞるようなテクノ・トラック “Volcane” で幕を閉めます。全編、ここ数年、彼が追求してきた「軽やかさ」とメロディアスなイージー・リスニングのような感覚というのが、ダンサブルなテクノやハウスの実はオーソドックスなフォーマットにしっかりと練り込まれたアルバムではないかと。こうしたサウンドが今後、どのようにダンスフロアへと波及していくのかが興味深いポイントで、先日のアンソニー・ネイプルズのアルバムもそうですが、DJカルチャー出身のアーティストがこうしたリスニングにおいてもエポックメイキングな作品を出すのはもまたおもしろいですね。

 彼らの影響もあると思いますが、ここ数年、わりとテクノやベース・ミュージック周辺で、メロディやこうした「軽やかさ」が復権している感じもあって、それはある種のR&Bやソウル、もしくは初期のUKやオランダのデトロイト・テクノ・フォロアー的な叙情性や内省的なメロディ、またはプログレッシヴ・ハウスやトランスの壮大な感じの感覚とも違っていて、このあたりの感覚をふと先日どこかで聴いたな……と思い出したんですが、やっぱり2014年のエイフェックス・ツインの復活作『Syro』なんですよね。特に先行で公開された冒頭の “Minipops 67 (Source Field Mix)”。ひさびさの作品ということで件の曲を聴いて「ああ、こういうのありだよな」というのが実はあって、なんとなくこれがゲーム・チェンジャーになったのではないかという妄想も浮かんだりします。もちろんK-ローンがそこを目指していたかはわかりませんが、サウンドの空気感としては同じモノを感じてしまいます。とはいえ、10年前ですから、いまの音に結びつけるのはちょっと無理筋すか?

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