「Dom」と一致するもの

Dum Dum Party 2012 - ele-king

 7月1日、〈河口湖ステラシアター〉で開かれた「Dum Dum Party 2012」は、ビッグ・フェスティヴァルが当たり前のこのご時世で、原点回帰をうながすような内容だった。

 Dum Dum Llpがヴァセリンズを呼んだ理由は、好きだからだ。2009年に設立されたこのイヴェント会社の名前は、ヴァセリンズの代表曲"Dum Dum"から取られている。「当初からいくつかバンドを呼びたいと思っていたけれど、まさかこんなに早く彼らを呼べると思っていなくて、早い段階で最終地点に着いてしまったような感じがしているね(笑)」と、今回の招聘について、Dum Dum Llp代表の富樫陸氏は話してくれた。
 今回のイヴェントのプロモーターでもあるOffice Glasgowの安永和俊氏はこう語る。「もちろん商業的に成功しなくてはいけない部分もあるけれど、まず企画する側が好きなバンドを呼んで、バンドを好きな人たちが会場に集まる。そして日本のことが好きなアーティストがライヴをする。ハッピーでしかないからね。当たり前のようだけど、それがいちばんでしょ」
 Corneliusの小山田圭吾氏は今回のイヴェントについて、富樫氏に向かいこう言ったそうだ。「これ、完全に富樫君のイヴェントだよね(笑)」

 日本の大きなイヴェント(フェスティヴァルなど)は、このようなシンプルなモチヴェーションを失ってはいないだろうか。ミュージック・フェスティヴァルとはそれを好きな人たちが好きな文化のためにはじめたもので、その主役は"音楽"と"リスナー"だったはずだ。
 僕も自分でイヴェントを開催したことがある。現在もいくつかのイヴェントのお手伝いをする機会があるので、企画する側の苦労などは(その規模によってかなり違うが)、ある程度は理解はしているつもりだ。自分が思っているようにアーティストは集まらないし、集客などはとても不安だった。経済的なリスクがつねにある。
 しかし、「イヴェントをなぜ企画するのか」というもっとも大切な命題にぶつかったとき、意外と答えは簡単に見つかる。好きだからやる。イヴェントは、その音楽を輝かせる手段、ルーティーンでは決して味わえない自由な空間を創造することなんだと僕は思う。
 ここ5年くらい、僕も毎年のようにいろいろなフェスティヴァルに出かけている。近年はそのイヴェントに「参加している/共有している」というよりも、「普段見れないアーティストを見に行っている」という感覚のほうがどうしても強い。いわゆるショーケースとして受け止めている。そういう意味で7月1日の「Dum Dum Party 2012」は、自分も忘れていたフェス的なものへの初期衝動を喚起させてくれたのだった。

 当日は、ヴァセリンズの"Dum Dum"と相対性理論の"Qkmac"が収録された、限定のスプリット 7インチ・シングルが発売されていた(もちろん即ゲット)。そうそう、この日出演者はスティーヴィー・ジャクソン、ヴァセリンズ、相対性理論、ゲストに小山田圭吾。流行やビッグネームに頼らない、企画側の愛情がわかる、面白い組み合わせだったと思う。だいたい平日の月曜を翌日に控えた日曜日の夕方から山中湖でやるイヴェントには、本気で好きな人しか来ないだろう(笑)。

 スティーヴィー・ジャクソンはベル・アンド・セバスチャンよりも内省的で、もの哀しくも、やさしく包み込むような歌声が良かった。山地特有の天候が独特の雰囲気を醸し出し、ちょっとグラスゴーの風景を空想してしまった。

 スティーヴィー・ジャクソンがリード・ギターとして入ったヴァセリンズは、フランシス・マーキーのチャーミングな赤いスカートが華々しかった。ところ"Oliver Twisted"で演奏がはじまると、そんな可愛い印象は一転。ファズのかかった挑発的なギター・サウンド、ユージン・ケリーとフランシス・マーキーによる男女ツイン・ヴォーカルに乗せられながら、ステージは矢継ぎ早に展開。"Molly's Lips"では小山田圭吾と安永和俊が登場、ホーンを演奏した。"Son of A Gun"あたりから座っていたリスナーも立ち上がり、踊りはじめた。"Dum Dum"を演奏する前のMCで、Dum Dum Llp関係者などに感謝の言葉を述べた。会場は拍手に包まれ、"Dying For It"がはじまった。

 相対性理論は、リヴァーヴのなかで溶け合うふたつのドラムが躍動的だった。ボサノヴァ風のアレンジや、やくしまるえつこのヴォーカリゼーションは魅惑的だった。小山田圭吾をギターに迎えたその日最後の曲、"ムーンライト銀河"は白眉だった。甘いノイズ・ギターは、どこまでも遠くへ続くようだった......。それは企画側の愛情のこもった気持ちの良いフェスティヴァルに相応しい幕引きだった......。

MOVEMENTS Oneness Camp 2012"縄文と再生" - ele-king

 いや~、暑いっす。おまけにオリンピックのおかげで寝不足です。

 さて、DVD作品『Beyond』によって、彼なりの哲学で原発問題や沖縄の基地問題に切り込んだDJ/プロデューサーのムーチーが、8月の終わりに野外フェスティヴァルを主催する。題して......MOVEMENTS Oneness Camp 2012"縄文と再生"。
 出演者に関しては彼らのサイトをチェックしてもらういましょう。ムーチーの考えを租借すれば、取り返しがつかないほど混乱した日本の再生のヒントのひとつとして、そして共感できる自分たちの国の文化のひとつとしての「縄文」というもので、これはUKのアナーコ・パンクがストーンヘンジを抵抗のシンボルにしたり、あるいはUKのロックやテクノが何かとケルト文化を持ち出したりすることの日本ヴァージョンとも言える。8月末、FREE DOMMUNEが終わったら、君も縄文へのトリップを準備しようじゃないか!




長野、縄文、キャンプイン!
満月の夜からはじまる2泊3日の音楽フェスティヴァル!


日 程 2012月8月31日(金)満月 / 9月1日(土) / 9月2日(日)
開 場 8月31日(金) 11:00
閉 場 9月2日(日) 17:00
会 場 長門牧場(特設広場) 長野県小県郡長和町大門 3539-2

【チケット】
通し券 前売り 7,000 円 / 当日 8,000 円
*18歳未満入場無料(要保護者同伴 / 年齢のわかるものをご持参ください)
グループ券 前売りのみ 30,000 円 (5 名分の通し券 / イープラス限定)
一日券 当日のみ 5,000 円
テント券 前売り 1,000 円 / 当日 2,000 円
ファミリーキャンプ券 オートキャンプ券
*6歳未満のお子様連れの方のみ購入可能。限定枚数にて販売予定。
駐車券 当日 1,000 円 *出入り自由
*駐車場はありますが、数に限りがあります。乗り合いでのご来場をお願いします。

https://onenesscamp.org

 「ハウス・オブ・ヴァンズ」というイヴェント・スペースがグリーンポイントにある。
去る7月21日、ウィリアムスバーグの、いちばん川側のフランクリン通りを北に歩いて行くとグリーンポイントになるのだが、そこに近づくにつれて、音が大きくなってくる。ヴァイタミン・ウォーターのトラックが停まっていたり、人が群がっていたり、一目瞭然。セキュリティを軽々通り抜けると、広い場所が目の前に広がる。手前にテーブルが並び、Tシャツやカスタム・ヴァンズが置いている。「これ売ってるの?」と尋ねると、すべてフリー。サイズを聞かれ、ハイ、とTシャツとヴァンズを手渡される。Tシャツは、今回のイヴェント「クラシック&ブルックリン」のロゴ入りで、ヴァンズはヤーヤーヤーズの衣装でもお馴染みのクリスチャン・ジョイのカスタムデザインだ。

隣のブースには女の子たちが群がっている。ヴァンズ・クラシックのデザインのネール・シート(ミンクス提供)がフリーで配られていて、女の子はせっせとネイルシートをつけている。4種類あって、同じ柄のオリジナルのヴァンズがガラス・ケースのなかに仰々しく飾られている。
その日の出演者、ウィドウスピークはすでに終わっていて、ダム・ダム・ガールズを見ようとステージに近づくと、後方には写真撮影場所があり、スケートボードが出来るエリアがある。もっと奥にいくと、アウトサイドエリアまである。そこにはフリー・ドリンク(ヴァイタミン・ウォーター他アルコールも)やフード・トラック(フィルズ・ステーキコム・シ・コム・サ)などがあり、小学校の運動場みたいに、ゆうに1000人は収容出できるスペースだった。
実は行くまでは、どうせぎゅうぎゅうに混んでいて、ライヴもろくに見れないんだろうと思っていたが、大きな間違いだった。さすが老舗のパーティ・ブランド!

 個人的な印象では、こういうイヴェントは、人が来すぎてドリンクも気軽に買えないし、ライヴも人が多くて、見れないことが多い。が、このイヴェントの良いところは、人が集中しないように、さまざまなアトラクションをスペースのあちらこちらに設置し、人がばらけるように仕向けているところ。もちろんこの広さが大きなポイントだが、ライヴ中でも、ネイルに夢中な女の子がたくさんいたし(たぶんボーイフレンドについてきて、バンドには興味がない)、外でハング・アウトしたり、スケー・ボード・エリアで気持ち良さそうに寝転んで、上からライヴを見ている輩もいて、それぞれの楽しみ方ができる、空間の作りがいいのだろう。そう言えば、コンヴァースはウィリアムスバーグに音楽スタジオを作り、ブルックリンの若手ミュージシャン、バンドのレコーディングをフリーで開放している。コンヴァースといえば大企業で、大企業といえば、たいていは人気スターや有名人のサポートを好むものだが、このようなかたちでまだ若い才能をサポートしていることは、正直、感心させられる。

 さて、久しぶりのダム・ダム・ガールズだったが、ディディが金髪になっていて、他の3人のメンバーも相変わらずブリブリに健在。みんな黒のコスチュームなのでディディの金髪がより際立っていた。新曲、古い曲をミックスしたセットで、MCは少ないが、ところどころで「今日は来ていないのだけど、これは私の旦那について書いた曲です」など、はっとするプライヴェートな言及があり(聞いたことがなかったので新曲?)、相変わらずの客に媚びないパフォーマンスであった。

 イヴェントは、ロスアンジェルスのアイ・アム・サウンドがプレゼンターで、ロスアンジェルス、ブルックリン、ポートランドで開かれている。ブルックリンでは、6月20日にはラプチャー、タンラインのショーも行われた。ブルックリンのラインナップは以下の通り。7/26:キングカーン&シャリンズ、エブリマン 8/2:ワッシュド・アウト、チェアリフト、レモネード 8/16:カーシヴ、ティタス・アンドリニカス、ラブ・アズ・ラフター 8/29:ターボネグロ、バロネス、ドゥーム・ライダー、ナイトバード。ココを参照→
企業がサポートしているフリー・イヴェントも千差万別だが、今回は感じの良いものだった。是非、日本の企業も見習っていただきたい(笑)。

 「ソウルは人に訴える。シンプルだが、特別なインパクトがある。人間の裸の心が発する声だ。楽しいだけじゃない。がっちりとタマを掴んで、高みへ引き上げてくれる」
映画『ザ・コミットメンツ』より


奇妙礼太郎トラベルスイング楽団
桜富士山

Pヴァイン

Amazon iTunes

 羽目を外すときが来た。夕方の5時前だが、けっこう良い感じに酔っている。取材のテーブルの上には空き缶、ワイン、お菓子......トラベルスイング楽団 のメンバーのうち8人が並んでいる。取材どころではない。宴会だ。
 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団にはそうした飲み会的な寛容さがある(笑)。いまどき珍しい酒臭いソウル・ミュージック......ないしは歌謡PUBロックである。この時代に11人とか600人とか、時代に逆行するかのような、大人数のバンド編成も、良い。こうしたバンドのあり方自体がひとつの態度表明になっている。
 アラン・パーカーの映画『ザ・コミットメンツ』を思い出す。どんな人間もやっかいで、クセがあり、短所があり、弱さがあり、他人との齟齬を生む......が、ソウル・ミュージックによってそれを乗り越える(あの映画の「アイルランド人はヨーロッパのなかの黒人だ。だから胸を張って俺たちは黒人だと言え」は名言)。奇妙礼太郎トラベルスイング楽団の魅力もそれに尽きる。飾り気のない、人生に要領を得ない人たちが集まって、ステージに上がっているときだけは、ビシッと素晴らしい演奏を聞かせる。多くの人は、ビールを片手に踊りたくなるだろう。80年代の松田聖子のメロドラマでさえも、彼らにかかるとソウルフルな光沢を発するのである。
 いずれにしても、夜を奪われた大阪から実に賑やかなバンドがやって来た。彼らのセカンド・アルバム『桜富士山』は、これからはじまるロマンティックな夏の宴の音楽である。

名乗ってました! 出だしから。ナイアガラ礼太郎と......。世界一デカいとされている滝で。どうせ滝になるならナイアガラになりたいと。おばあちゃんの遺言で。

まずは自己紹介を......。

奇妙礼太郎(以下奇妙):こんばんは、奇妙礼太郎です! イエーイ!

(拍手起こる)

PEPE安田(以下安田):ベースの安田です。よろしくでーす。

まいこ:サックスのまいこです。

手島幸治:僕ドラムの手島です。

キツネうどん:パーカッションのハマダです。

塩見哲夫:ギターのシオミです。

田中ゆうじ:サックスの田中です。

山藤卓実:トランペットの山藤(サントウ)です。

じゃ、ビールでも。ぷしゅ。お疲れ様でしたー。

奇妙:ぷしゅ。よろしくお願いしまーす。

(乾杯)

いつもこんなノリなんですか?

奇妙:はい。

田中:ライヴ前後とかはこんなノリです。

あのね、奇妙さん。

奇妙:はい。

本日いらしてるのは8人ですよね。で、11人以上いるとのことですが、正式な人数っていうのは何人ですか?

奇妙:600人ぐらいですかねえ......。

一同:はははは!

じゃあ中心になってるのは(笑)?

奇妙:まあ中心ぐらいになってるのは......まあこのひとですかねえ。

手島:僕だけってことすか!?

キツネうどん:まあ12、3人はいるんじゃないですか。ローテーションで。

奇妙:マジメか!

基本的に、メンバーを集めたのは奇妙さん?

キツネうどん:安田さん。

安田:はい。

奇妙:僕が目を閉じていたら......こういう感じで。

安田:集まってきたんや? 指触ったやつがメンバーになったような。

奇妙:すごいここにね、月の光がこう......。

一同:だははは(笑)。

手島:スイッチが入っているんで、比較的に無視していただいて大丈夫なんで。

いやいや(笑)。じゃあ安田さん、そもそもバンドはどういう風にはじまったか、基本的な質問で申し訳ないんですけど教えてください。

安田:それ奇妙くん言ってみて。

奇妙:まいこが安田くんを産んだときの話をしないと。

安田:まあそういうことですね。

ああー、まいこさんから安田さんが産まれて。

安田:はい、産まれて。

奇妙:ビートがはじまって。ト、ト、ト、ト......。

安田:ト、ト、ト、ト......。

手島:それ木魚っすよね(笑)? 死んだときっすよね?

ははははは。安田さん、最初はまいこさんから産まれたとして――。

奇妙:途中ギバちゃんになって。90年代前半にギバちゃんになってー。

手島:はははは!

安田:なってからの?

これだけ人数が多いから、居酒屋入るのも大変じゃないですか?

奇妙:それはマジ大変です。

席ないでしょ、だって。

奇妙:席基本5、5で分かれて、休んでるやつの悪口言うっていう。休んでるやつのプレイに対して悪口を言うっていう。

(一同笑)

安田:ドキドキしかせーへんな。

奇妙:まあ俺がいちばんドキドキしてる。

とにかく、安田さんと奇妙さんの出会いがはじまりなんですね。

奇妙:あれ? なんでわかったん!?

一同:はははははは!

奇妙:出会い系サイトで。

安田:最終的にはね。

そのときから奇妙礼太郎を名乗ってたんですか?

奇妙:名乗ってました! 出だしから。

なぜそんな名前を?

奇妙:ナイアガラ礼太郎と......。

安田:デカいのいきましたね。

奇妙:世界一デカいとされている滝で。どうせ滝になるならナイアガラになりたいと。おばあちゃんの遺言で。

塩見:でも名前の由来言ってたじゃないすか。ほら。

奇妙:あれ、コンペイトウついてますけど。

塩見:タトゥーですよ。

奇妙:タトゥー!!

(一同笑)

田中:すいません、続けましょう。

いやいや、いいですよ。逆にこれもひとつのプロモーションになる......かもしれない。じゃあ、トラベルスイング楽団は大阪だから生まれたバンドだと思います?

奇妙:ああ、まあそうっすねえ。

大阪っぽいなって自分たちで思います?

安田:そんな思ってない。

そんなに思ってない、そこは?

奇妙:まあ生粋の大阪人のまいこちゃんが。

まいこ:ぜんぜん違うやん。

安田:コテコテやでー。

奇妙:もうかりまっかー。

安田:ボチボチでんなー。

奇妙:奄美大島出身で。

松村正人と同じですね。

奇妙:完全に外人や(笑)。

(一同笑)

奇妙:お前登戸住んでるやん。いろいろおかしいやん。

えっ登戸住んでるんですか!? 俺わりと近くですよ、じゃあ。

田中:登戸ですね。近いですね。

奇妙:これ飲みナカナ発見じゃないんで。飲みナカナって言ってもーた(笑)。

じゃあバンドのためにわざわざ。

塩見:急に来よったんです。

急に来たんだ?

田中:そうなんです。

奇妙:もういっこ田中がやってるLa Turboっていうバンドのヴォーカルのひとがすごいべっぴんさんで僕好きやったんですけど。東京に引っ越すっていうんで、「お前もちろん来るやんな?」って言われて。

田中:元々大阪のバンドなんです。いまは東京に。

安田:なんでそこは本当のこと言うん?

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みんなに楽しんでもらいたいって気持ちの方が全然大きかったです。で、みんなに楽しんでもらいたいっていうことは、「俺こんなん好きやねん」ってことをプレゼンするっていうことじゃないですか。

なるほどね。じゃあ安田さんがリーダーなんだよね、たぶん。

安田:そうです。

......これ仕切るの大変ですね。

安田:いや、もう全然。みんな実はめっちゃマジメなんで。(メンバーに向かって)ありがとうございます、ほんま。

奇妙:もう日本の将来のことしか考えてないですからね、僕ら。

(一同笑)

安田:たまに居眠りしてしまったりしますけどね。

歌謡曲とか、レトロ・スタイルにこだわる理由っていうのは何なんですか?

手島:好きなだけっすよね、これが。

奇妙:こだわるっていうとそうかな、って思いますし。みんなそれぞれけっこう忙しいんで、あんまり集まれないんですけど。ライヴはけっこうしてるんですけど。みんな知ってる曲のほうがライヴしやすいんです。あとは自分が好きやっていうのがいちばん大きいですけど。まあなんか、何でもいいんですよね。人前でやるっていうと......なんかシーンとしてない? だいじょぶ?

まいこ:いちばん盛り上がってたよ、だいじょぶ。

安田:いまいちばん盛り上がってたよ。

奇妙:何でもいいんですけど。

芸人道みたいなものをすごく感じました。

安田:ありがとうございます!

奇妙:そう思ってたときがほんまにあるんですよね、ライヴのとき。

エンターテイナーというか、芸人に徹するっていうか。

奇妙:それがほんまに凄いことやなって思ってました。でもそれはほんまに凄いことすぎて。僕、今年の最初ぐらいまで芸人さんみたいなものに憧れてたのもあるんですよ。
 ここ1ヶ月ぐらいは全部取っ払って、舞台に出て人前にばっと出たときに自分はどうするんかみたいなんを整理せな他のこと何もできへんと思って。まあそういう感じっすね。全力で30分とか1時間とかを絶対やるっていう。3日連続ライヴあるとしたら、3日間を30%ずつで割るんじゃなくて、初日100%でやって――。なんて言うんですかね、気持ちは全部100%なんですけど、声の調子とか、どんどんやっぱ減っていくんですよ。それはすごい悔しいんですけど、しょうがないなとも思うんですよ。あれ、何が言いたかったんか......。

まあ、芸人ですよ。

奇妙:明日のことを考えて今日は60%ぐらいでライヴしたとして、みんながそれで幸せってなったとしても、今日死んだら自分はやっぱそれは悔しいんですよね。お客さんが「めっちゃ良かった」って言ってくれて、バンド・メンバーが「今日いいライヴしたね」って言って、自分でも「いいライヴしたね」ってなっても、やっぱイヤなんですよね。もうそれ以降一生ライヴせーへんとしたら。それやったら、絶対全力でやりたいなと思って。で、全力でやった次の日が声出なくなって、次の次の日もっと声出なくなって、「あ、あ、あ」みたいな声なるんですけど。それはほんまに悔しいです、なんか。「別にお金払ってくれんでいいし」って思うし。でもそれも全力で絶対やるんですけど。まあやっぱ悔しいです。だから最近は、申し訳ないな、と思ってます。

(一同笑)

はははは、なるほど。でも何て言うんだろう、ある種のプロ根性みたいなことだと思うんですけど。やってる音楽っていうのがポップスっていうか、原点回帰ってことをすごく意識していらっしゃる。

奇妙:そうですね。アルバムなんかはそれを意識してる。

その原点回帰みたいなものっていうのは最初からあったんですか? 最初から昭和の歌謡曲みたいなものが好きだったんでしょうか? それとも、やってくなかで自分たちでいまのスタイルが定型になった?

奇妙:ほんまに最近までみんなに楽しんでもらいたいって気持ちの方が全然大きかったです。で、みんなに楽しんでもらいたいっていうことは、自分の好きなもの、「俺こんなん好きやねん」ってことをプレゼンするっていうことじゃないですか。別にバンドしてる・してないに関わらず。なんかそういうことやと思います。「こういうバンドおるから一緒に観に行こや」とか。

エンターテインメントってことは強く意識していらっしゃいますよね。

奇妙:それは最終的にはやっぱ考えてますね。

それがすごくいいなと思うんですよ。いまお酒でベロベロですけど(笑)。なんで自分たちが原点回帰みたいな方向性になったんだと思います?

奇妙:自分たちがそれを好きやってことやと思います。

それは、いまの音楽にはなくて、それこそ美空ひばりとか加山雄三とかみたいなものにはあったものを発見したわけですよ。

奇妙:それはありますね。

それは何だと思いますか?

奇妙:それはまず、難しい言葉は使わないということです。僕が好きな友だちの曲とかもそうです。サンデーカミデさんの曲を僕はすごく歌うんですけども、そのひとの曲も小学生でもわかる単語しかないんですけど。

ああ、大阪で活動されてる。

奇妙:そうです。なんかびっくりするんですよ。言葉はわかりやすいのに、テキトーに「みんなで仲良くしていこうや」みたいな曲じゃなく。

簡単な言葉で深いことを言ってくれるっていう?

奇妙:うーん......そうです。

はははは(笑)。

奇妙:なんかやっぱり、根本的に、根本的に......根本的に。

はははは(笑)。あとさ、ラヴ・ソングを追求してるでしょう?

奇妙:どうすかね、全部ラヴ・ソングですけど。

なにゆえラヴ・ソングなんですか? 

奇妙:わかんないです。不安なんじゃないですかね。ラヴ・ソングをいっぱいやったほうが、みんなこっちを向いてくれるんじゃないかみたいな、バンドをやる人間の最初の不安があるんじゃないですかね。だからこんなにしょうもない曲が世界中に......。

(一同笑)

奇妙:でもしょうもない曲って結局ないと思うけどね。「うわ、ほんまにあいつクソやったな」みたいな対バンのひとの曲とかも、真剣に聴いたわけじゃないし。でもま、クソみたいなんやけど。でも心底嫌いかって言われたら、まあそんなことないなって思うんですけど。でもなんか、そいつが解決せなあかん問題がそこに含まれすぎてて、そんなん聴くわけないやんっていう。

(一同笑)

奇妙:でもサンデー(カミデ)の曲はそういうのが一切なくて。僕がどこ行ったときでも、全身全霊で歌った後も、その曲をやってくれて。これは自分にとって悔しいことなんですけど、ひととしての凄さがあるなって。自分でもわかりますし。

なるほど。僕はもういいオッサンで、中学校のときにパンクがやって来た世代なんですよね。ちょうど中1のときにセックス・ピストルズがデビュー・アルバムを出したばかりの頃で。

奇妙:いちばん羨ましいけどな。

ちょうどその頃RCサクセションっていうバンドも日本で人気が出てきたんですよね。で、僕はそのときRCサクセションっていうのは、みんなすでに年取ってるしね、パンクの真似してるけど全然パンクじゃないし、「こんなの誰が聴くかよ」みたいな感じでいたんですよ。でも友だちがすごく好きで、静岡に来たときに「一緒に行くやついないから一緒に行こうよ」って無理矢理誘われて。

奇妙:(笑)めっちゃ羨ましいけど!

それで行ったんですよ。で、そのときに彼らの歌う"ラプソディー"とかにむちゃむちゃ感動して。生まれて初めてヴ・ソングというものが好きなれたことをいまでもよく覚えています。

奇妙:それがたぶん、人生でいちばん贅沢なことですよね。

まあある意味ではね。

奇妙:絶対そうですよ。もうそれ以上のことないんちゃうかと思うぐらい贅沢な。

いやいや、でもそれを目指してるでしょ? やっぱみんなも。

奇妙:わかんないですけどね。

でもそのときは童貞だったし、色恋なんてわからないわけじゃない。でも彼らが歌うラヴ・ソングの世界に引き込まれて。パンクにはそういうのはなかったから。

奇妙:ふふ、すごいね。

まいこ:すごいね。

(一同笑)

ラヴ・ソングっていうものを取り戻そうとしてるでしょ? ポップスの中心の歌として。

奇妙:実は、してます。

全員:ははははははは!

そういう歌詞を書くときっていうのはどうなんですか?

奇妙:歌詞とか書かないですか、逆に?

あ、僕!? 歌詞? 

奇妙:絶対書いたらいいのにと思う。書いてほしいもんね。

急に振らないでください(笑)。歌詞は実体験なんですか、それともフィクションとして書きます?

奇妙:僕は基本的に完全フィクションです。まあそうなっちゃうかな、みたいな。内容自体にどうでもいいと思ってるとこがありますね。ま、フィクションというか、そのときに腹立ったこととかもたぶん入ってるとは思うんですけども。それが伝わるようには書いてないですね、全然。自分しかわからないと思います、たぶん。

ラヴ・ソングもフィクション?

奇妙:ラヴ・ソングはノンフィクション......いや、フィクションですね。

いや、ノンフィクションでしょう。安田さんがたぶんいちばんわかってる(笑)。

奇妙:安田くんは知らないですよ(笑)。

安田:ははははは(笑)。

奇妙:あんまりないですね、別に。そういう歌詞が好きなんですよね。「誰かのことが忘れられへん」とか、だいたいそういう歌詞じゃないですか。ああいうのを聴いてたら、別に悲しいことなかったのに悲しいことあったみたいな気してくるし。でもそれでいいんや、と。山ですれ違ったら「こんにちは」って言う、みたいな。

安田:山にポテトチップスを運ぶひとやろ。

まいこ:そんな仕事あるんや?

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「テンプラ、ゲイシャー」って聞こえてきたら、「何やねん、これ!」っていう(笑)。その「何やねん!」みたいなんが多いほうが、面白いね。人生もそんなん一個多いほうがいいわけやし。そういう縁起物みたいな感じですね。

曲にもあるんですけど、アルバム・タイトルを『桜富士山(sakura fujiyama)』にしたのは何でなんですか?

安田:これ奇妙くんが考えたんやんね。

奇妙:ただ単純にめでたい感じがするから。2000円とか2500円するわけやし――。

あと歌詞も、「お寿司」とかさ。「天ぷら」とか。

奇妙:なんか、めでたい感じ。せめてめでたい感じ。

日本のひとが海外のひとに誇れるものが何だろうってときに、寿司とか天ぷらとか、そういうことなのかなと思って(笑)。

奇妙:いや、もっとありますけど(笑)!

はははは。

手島:ぱっと出てくる日本語ってことですよね。

奇妙:全然桂離宮のほうが凄いけど(笑)。

じゃあそういう意味じゃないんですね。

奇妙:いやまあ、でもそういう意味です。外国のひとから見た日本の感じが面白いな、と思って。面白いかな。

そうか、おめでたい感じにしたかった?

奇妙:もし車運転してて、自分がバンドとかしてなくて、それが流れてきたら「何やねん!」て思う歌詞。「愛してるー」みたいなん聞こえてきても、「ああ、そうなんですか」と思うけど、外人の声で「テンプラ、ゲイシャー」って聞こえてきたら、「何やねん、これ!」っていう(笑)。その「何やねん!」みたいなんが多いほうが、面白いね。人生もそんなん一個多いほうがいいわけやし。そういう縁起物みたいな感じですね。

ああー。

(ここで唐突にケツメイシの話で盛り上がるメンバー)

仲いいっすね(笑)。結成は2008年って書いてあるでしょ? それはほんとにそうなんですか?

安田:それはね、ほんとです。

それ以前に何かやってたってことはないですか?

奇妙:やってましたやってました。

手島:それは個々それぞれ。

同じようなことをやってたんですか?

奇妙:ま、ジョン・レノンとバンドやってましたけど(吹き出す)。

ほほぉ、練習スタジオ押さえるのも大変ですよね。

安田:そういったリアルな話はまた後ほど。

後ほど(笑)。でも、芸人道っていうか、エンターテイナーとしての気概を感じますね。こうやって酒飲みながらも、ストイックな部分も俺は感じますよ。ライヴ前は飲んだりするの?

田中:ライヴ前は、飲むひとと飲まないひとと分かれますね。

手島:飲まないっすね、最近はね。

奇妙:ライヴあかんかったときに、辛くなるから。お酒飲まんかったらあかんなるのが自分でめんどくさいから。別にテッシーとかが飲むんは別にええよ。

手島:ははははは(笑)!

奇妙:そのほうが調子が出るんやったら。

あと新しい音楽とかって聴かないんですか? DJ YOGURTがリミックスしてたじゃないですか? あれは誰のアイディアなんですか?

手島:あれはヨグさんから連絡が来て、ヨグさんに......。

奇妙:ミック・ジャガーがやってるスーパーヘヴィってバンドめっちゃ気になる。それが新しい音楽なんかって聞かれたら違うかもしれんけど。でもめっちゃラップとか入ってるし。あのひとやっぱ、尋常じゃない元気さがめっちゃカッコいい。

はははは。ヨーグルトさんを仕掛けたのは安田さん?

安田:いや、ヨグさん本人。

あ、本人がやりたいって言ったんだ!

安田:そこからヨグさんとはよく話してる。

へえー。何でそこでヨーグルトなんですか?

安田:それはヨグさんのことが好きっていうことですね、僕が。

クラブ・ミュージックは聴きます?

奇妙:僕は全然知らないですね。

手島:僕は好きですけどね。

奇妙:テッシーは好きやんな。

じゃあ、ヨーグルトのリミックスの出来はどうでした?

安田:それは予想外でしたけど、それはそれで面白いなと思いました。全然違う形になってて。ひとり入っただけでこんなにちゃうんや? と思って。でもその前にヨグさんが好きっていう。

なかなかヨーグルトとって想像つかないよね。すごく意外だった。でも最初は意外じゃなかったんですよ、僕。実は。最初のアルバム聴かせていただいたときに、すごくグルーヴィーな音だし、いわゆるノれる音楽だから。

安田:そうなんですね。でも僕めっちゃ聞かれました、いろんなひとに。「どういう接点なん?」みたいなことをめっちゃ言われましたけど、それは僕はヨグさんにも聞いたことありますけどね。「どこで知ったんですか?」みたいなことを。

ね、すごいよね。

安田:でもやっぱりね、最初は電話だけやけど、「おもろいな、このひとは」っていうとこからはじまって、全部丸投げですよ。

なるほどね。でも、奇妙さんの反応はどうだったんですか?

安田:奇妙くんの反応は......奇妙くん、どうなんヨグさん?

奇妙:ヨグさん大好きです。

ははははは。

安田:そういうことですね(笑)。めっちゃ踊ったよな、りんご音楽祭で。

まいこ:ああー、そうだそうだ。

キツネうどん:3日間筋肉痛で死にそうになった。

まいこ:そんなに!? でも楽しかったね。

手島:先週ヨグさん自分のブログで、「なんで安田さんに僕が電話をかけたか」っていうのを。

安田:それは聞きたい!

手島:いや、それすごい長かったから半分ぐらいしか読んでないねんけど。

安田:それはりんご音楽祭のときに、「書いていいですか?」って言われたから「それは全然任せます」と。

何を書いていいって?

安田:生い立ちです。

誰の生い立ち?

安田:僕らのバンドとヨグさんの出会いの、です。歴史です

ああ、歴史をね。いやーしかし、ほんと破天荒なバンドですね、ほんとね。

安田:いやー、でも根はマジメですよ。

いやわかりますよ。雰囲気で。いや実はさ、担当さんから朝5時から飲んでるって聞いてたんで。

安田:はいはいはい、朝5時から飲んでましたね。

奇妙:ノラ・ジョーンズさんが行ったという築地の店で海鮮丼を食ってましたね。

キツネうどん:ぽっと小さい灯りがともるような。

安田:どういうこと(笑)?

手島:中島らもみたいな表現しますね(笑)。

ちなみにメンバーは、やっぱりタイガースなんですか? それともガンバ大阪なんですか、セレッソ大阪なんですか?

一同:ああー。

奇妙:僕スポーツ全部なくなれと思ってます。

はははは!

安田:いやそこまでは思ってないけど、あんまり知らないです。

奇妙:ラグビー以外のスポーツなくなれと思ってます。

手島:僕ら近鉄ライナーズのファンです。

はははは!

奇妙:ラグビーと将棋以外の真剣勝負はなくなれと思ってます。

何で!?

奇妙:ひとが飛んできた球を打とうが打てなかろうが、知らん! っていう。ひとがネットに球入れようが入れまいが。俺が球入れたいわ。球を球に(笑)。

手島:ははははは!

安田:どういうこと(笑)?

大阪人に対するステレオタイプの偏見がありまして。大阪の人間はみんな阪神タイガースが好きで。

手島:まったく興味ないですもんね。

奇妙&安田:いや、全然あるで。

はははは!!

手島:これなんすよねー。

(一同笑)

キツネうどん:たまに高校野球のほうが面白いときがある。

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「誰かのことが忘れられへん」とか、そういう歌詞じゃないですか。ああいうのを聴いてたら、別に悲しいことなかったのに悲しいことあったみたいな気してくるし。でもそれでいいんや、と。山ですれ違ったら「こんにちは」って言う、みたいな。

ちなみに大阪でいちばんウマいと思うラーメン屋って何だと思う?

安田:ラーメン屋? 

やっぱほら、金龍とか?

手島:金久右衛門(きんぐえもん)とかどうですか。

安田:金久右衛門ね! 金久右衛門、おいしいですね。

金久右衛門? こってり系なの?

キツネうどん:いやあっさりです。醤油。

醤油なんだ? 神座(かむくら)よりもウマい?

安田:あ、ちょっと違う。種類が違う。

キツネうどん:神座はたぶん、大阪のひと以外に人気がある。

安田:いや僕味の素好きなんでねー、意外と好きっすよ。案外ね。

わかりました。バンドとして目指しているところっていうのは何なんですか?

安田:それは、みんなのとこ行きたいですよね。ニューヨークやしイギリスです。

え、何が(笑)? 何がニューヨーク?

安田:いやこのひとお母さんニューヨークやし、別のメンバーがお父さんイギリスやし。だからニューヨーク行ってイギリス行って、まあ奄美は行ったし。で、八尾行って。

キツネうどん:めっちゃローカルやん(笑)。八尾市っていうところがあるんです。

安田:泉北行って、で、東大阪でやりたいですね。

ああー。それが目標ですか?

安田:はい。

やっぱいろんなところでライヴやるっていうのが?

安田:そっか目標か。

バンドとしての目指すところは? まあちょっと大きな話ですけど。

安田:まあ、イギリス、アメリカ......、八尾、泉北です。で、東大阪。

で、ライヴをやると? なんでイギリスとアメリカ?

一同:いや、メンバーの......。

あ、それぞれの実家でやりたいっていう。

安田:いや、実家ではやりたくないですけど。実家ではないですね。

出身地というか。

安田:でも、それをやるだけのものは欲しいですもんね。普通に行ってはできることなんで。やっぱりそれは満員にしたいじゃないですか。

キツネうどん:どこを?

安田:いやどこでも! イギリスでも、アメリカでも。泉北でも。っていうのはありますね。

奇妙:まあとりあえずエレベーター満員にしよ(笑)。

手島:大体バンド・メンバーで満員ですからね。

あ、ステージが?

まいこ:エレベーターが。

あ、エレベーターがね。地元でのお客さんのノリはどうなんですか?

安田:それはもうね、サントウさんがいちばん知ってますよ。

山藤:ええええ?(笑)

ウケてますか? じゅうぶん人気者になってる?

山藤:みんな......愛してくれてます。

おおー! 

安田:ああー、すごい、すごいいい表現ですね。

奇妙:サントウさんがしゃべるのがいちばんいいな。

安田:うん。何か安心する。

奇妙:逆ですいません、最近出たライヴDVDなかで「これめっちゃ最高に面白かった」っていうのんありますか? だって買いに行きたいやん。ストーンズのスコセッシのやつあるじゃないですか。あれめちゃくちゃおもろいじゃないですか。あれの真似してるもん、最近。

(一同笑)

奇妙:あれの真似を俺と塩見くんでこっそりするっていう(笑)。

塩見:そうなんすよ(笑)。

奇妙:あれ以上のあります?「バーン!」っていう。あれ凄くないですか?

スコセッシは本人がホント、ロックが好きだしね。

奇妙:スコセッシはほんま、ただのオカマのおっちゃんかと思ってたけど(笑)、あれはほんまに素晴らしいですね。そういうオススメのん教えてほしいです。買いに行きたい。

じゃあ、みんなのなかで、レコード3枚選ぶとしたら何になる?

一同:うわー......

奇妙:僕でも、『ぼちぼちいこか』と、『この熱い魂を伝えたいんや』と、『フォーティ・リックス』です。

『ぼちぼちいこか』っていうのは誰の?

奇妙:上田正樹と有山淳司の。

あ、やっぱり大阪ってことで?

奇妙:あ、ヤバいサム・クック入ってへん。じゃあ、『ぼちぼちいこか』と......。

塩見:これ一晩かかりますよ(笑)。

ふふふふ(笑)。

安田:これはやめときましょ(笑)。

キリがない(笑)? でもやっぱ上田正樹さんに対するリスペクトはあるんですね?

奇妙:僕はでもめっちゃ好き。大好きですね。

それは大阪っていうのが大きいですか?

奇妙:何かたまたま家にカセットテープがあって、10代前半のときにそれが好きで聴いてたんですよね。誰か分からんと聴いてて。「分かるかー!? 分かるかー!?」っていう。「上田正樹とー! 有山淳司!」 めちゃくちゃカッコいい!

みんなやっぱ聴かされるんですか、それを?

塩見:いやそれはない(笑)。

奇妙:そういうのはないです、別に。でもそれが超カッコいいですね。

なるほどね。ちなみに――。

奇妙:いかにそのひとがズルかろうと、それは関係ない。チャック・ベリーなんかヒドいもんね。まあインターネット情報ですけど。チャック・ベリーが女とホテルのロビー歩いてるときに、バッて来たキース・リチャーズに「おー!おー!」って言われて、キース・リチャーズを思い切りどついたっていう(笑)。「何声かけてんねん、白人の子どもが」みたいな。白人に並々ならぬ恨みがあるという。金を巻き上げられた、みたいな。

自分たちと同じくらいの世代のひとたちで好きなのっています?

奇妙:友だちのバンドとかみんな好きです。

安田:みんな好きやんね。

奇妙:何で好きになったかって言ったら、カッコいいから好きになったっていう。って思ったらそっちの話が先になる。だっておもんなかったら好きになれへんもん。

塩見:8月東京でも......。

安田:あ、〈love sofa〉?

奇妙:アラブ・ソファに聞こえた(笑)。

安田:大阪で11年ぐらいやってね。サンデーカミデの歌詞がいいって言ってるひとが10年同じイヴェントをしてて。それを東京でやるんです。

ああー。それいつですか?

安田:8月18日です。

それは楽しみですね。あれでしょ、クラブのことを歌ってるやつでしょ?("93年の歌")

安田:そうそうそうそう!

あれめちゃくちゃいい曲だよね。

安田:それそれそれ。(ワンダフルボーイズと)CDを同じ日に出すんですよ。

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友だちのバンドとかみんな好きです。何で好きになったかって言ったら、カッコいいから好きになったっていう。って思ったらそっちの話が先になる。だっておもんなかったら好きになれへんもん。

なるほど。みんなを見てると大阪の音楽シーンってほんとに元気があるんじゃないかと思えてくるんだけど、ここだけなのかな?

安田:うーん......広そうで狭そうで広いですよねえ。

それとも自分たちは大阪のなかのアウトサイダーなの?

奇妙:それはもちろんアウトサイダーですよ。

安田:どれがどうなんか分からへんけど。

奇妙:でもメインストリームのひとをカッコいいと思ったことないもん。あ、ある! エゴ・ラッピンとかやっぱカッコいい。

エゴ・ラッピンはカッコいいね。

塩見:でもそれ10年前ぐらいやん。

安田:そうねえ。

まあエゴ・ラッピンもメインストリームとはあまり言えないけどね。

奇妙:ええー!? じゃあ、もうどうしようってことやね(笑)。

塩見:じゃあ誰やろ? 円(まどか)ひろしとか?

手島:円って古ないすか?(笑)

いまはもう洋楽自体がメインストリームではないですよ。

一同:へえー。

レディ・ガガとかアデルとか、いち部だけだよ。

奇妙:はあー、そうなんや。すげーなあ。

安田:いま誰なんやろ、じゃあ? ね?

塩見:安田ちゃう? もう安田の時代が来たんちゃう?

奇妙:ギバちゃんじゃないやろ。

(一同笑)

安田:ギバちゃんやで。

奇妙:ネバー・キブアップ、ギバちゃんじゃないで。

安田:いやどういうこと?(笑)

手島:そのネタしましたっけ?(笑)

じゃあそろそろ最後の質問にしようかなと思ってるんですけど(笑)。好きな女性のタイプと好きな男性のタイプは?

一同:ぎゃははは!(笑)

奇妙:バンドとかに興味ないひとですね。

安田:ああーー。なるほどな。たしかに。

え、何で!? それ矛盾してるじゃないですか、だって。

奇妙:矛盾はつねにしておきたいですね。

安田:ははは、カッコええ!(笑) ここで締めよ!(笑) 終わったー!!

(拍手)

お疲れ様でーす!(笑)

安田:すごいいい終わり方した!(笑)

いやそうだよ、最後女性ひとりに聞かないと。代表して(笑)、好きな男性のタイプを聞いてそれで締めよう。お願いします!

まいこ:ええー、やだ!

(メンバーから個人名が挙がる)

安田:はははは!(笑) 個人名はやめて! 個人名は!(笑)

個人名はやめようよ!(笑)

奇妙:ウンコを食べろって言わんひとやろ。消しゴムより顔おっきいひとやろ。

じゃあどうもありがとうございました!

奇妙:終わった(笑)。

interview with Dirty Projecters - ele-king

 『スウィング・ロー・マゼラン』がすばらしい。ダーティ・プロジェクターズがキャリアの峠を越えたと勝手に合点している人は2度振り向くことになる。とはいえ筆者自身も漫然と期待していたひとりだった。はや6枚にもなるフル・アルバムのリリース、前前作はシーンに驚きをもたらし、前作は各メディアから絶賛を受けた2000年代の名盤として不動の地位を得ているうえ、昨年はビョークとのコラボEPという破格の課外活動もパッケージ化。このうえ度胆をぬくような作品など、そうそうできるものだろうか?

E王
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 この10年ほどのインディ・ミュージック・シーンにおいて、ブルックリンという土地名にわれわれが連想するのは、アーティで奔放な実験主義者たちの姿である。多文化混淆的なムードもそこにつけ加えられるだろうか。イェーセイヤーやTVオン・ザ・レディオらの名にならんで、ダーティ・プロジェクターズもまたその列をかざる存在である。だが今作にはそうした高い方法意識から解放されたようなところがある。どことなくこのバンドのキャラクターを形成していた学生気質な青さやかたさがすっと抜け、とても素直にエモーションが流れだしていて、それがため息がでるほどすばらしいのだ。さまざまな文化を参照したフォークロアは、今作ではただ彼ら自身のフォークへと姿をかえ、ダイレクトに心を打ってくる。ラフな作風になったのではない。彼と彼らの構築的な音楽性は、より緻密に、より洗練されることで目につきにくくなったという感じだ。"スウィング・ロー・マゼラン"など、ほんとにささやかな曲なのである。だが、そこにはあふれるようにエモーションがたくしこまれているし、"ダンス・フォー・ユー"のストレートな歌心や情愛にみちたストリングスにはふるえがくる。なんということだろうか。筆者はデイヴ・ロングストレスという人の、創作に対する深い深いモチヴェーションに完全にうたれてしまった。『ビッテ・オルカ』(2009年)までで、やることをやったという自信があったからこそ、彼は力強くつぎへと踏み出すことができたのだろう。箸やすめの1枚ではない。音楽をやるというのは本来このようなことだということを思い知らされずにはいられない、気にみちた作品である。

 インタヴューは音源を聴いた翌日であったから、筆者の興奮が勝りすぎていることがよくわかるだろう。プロモーションのためにひとり来日したソング・ライター、デイヴ・ロングストレスは、なかなかクセのある人物ではあった。夕闇がせまるなかでわざわざサングラスを取り出す彼を奇人と呼ぶのは狭量だろうか? だが死生観からチルウェイヴ論議まで、その理知的な語り口はじゅうぶんに彼の人となりをつたえている。時間切れでオキュパイについて聞けなかったことが心残りだ。

いろいろなものを愛してしまうということと、いつだって死んでしまいたくなるということとの間には、ほんとにせまい、細くてうすい境界線があるだけで、僕はいつもその間を行ったり来たりしている。

あなたのなかにある民俗的なモチーフ、たとえばエストニアや東欧のフォークロアを思わせるハーモニーや、アフリカの民族音楽からインスパイアされたようなヴォーカリゼーション、また中東的な雰囲気など、いろんなエスニシティが圧縮されたようなモチーフはどこからくるものなのでしょう? あなた自身、それらに関係した強烈な音楽体験があったのですか?

DL:多くの人がコーラス・ワークとか強烈なヴォーカル・ラインとかにブルガリアの音楽を感じたり、テレキャスターとかで弾いてるギターの音が西アフリカを彷彿させたりするって言うし、言ってることはわかるんだけど、いまこの時代、それらはグローバルなこの世界においてじゅうぶんアクセス可能な音楽であって、もはや未知の音楽ではけっしてない。ガレージ・ロックをやっていたりする人にはこういうものは必要じゃないかもしれないけど、僕のやってる音楽はただそういうヴォキャブラリーを持っているってだけだよ。

今作も非常にエキサイティングでした。きっとよく指摘されていると思うのですが、"スウィング・ロー・マゼラン""インプレグナブル・クエスチョン"などとてもシンプルでフォーキーな曲にも驚かされました。あなたのなかのフォークというテーマが一周して自国のフォークと向かい合うようになったのではないかと思ったのですが、どうですか?

DL:まあ、そのとおりかな。これまでの作品が80年代のハードコア・ミュージックだったりブルガリアの声楽だったりっていう世界中の音楽からの影響を受けたものであるのに対して、今回はすごくシンプルでダイレクトでパーソナルなものにしたかった。ほかの国の音楽のある特定の要素を集めることにこだわった作品ではないんだ。だからほかのジャンルとは関係ないっていう部分で、必然的にドメスティックな、アメリカのフォーク・ミュージックに近くなっていくのかなって思うよ。

いい意味でとても力が抜けていて、しかしとてもタイトなつくりの曲が多かったと思いました。かつ保守的になったわけでもない。聴くのがとても気持ちいいという感じと、音楽としてとても立体的でエキサイティングだという感じが両方満たされていて、本当にすばらしいと思いました。

DL:今回いちばん気にしたことは、けっして完成されたものをつくりたいわけではない、ということなんだ。未完の部分が残ったものをつくりたかった。この時間、この瞬間を切り取って記録することにフォーカスしたかったんだ。もちろん演奏を適当にする、とかそういう意味ではない。

"インプレグナブル・クエスチョン"などはあなたのなかの「コンポーザー」というよりは、「シンガー・ソングライター」というキャラクターが表にあらわれてきたもののように感じました。あなたはとてもエッジのたった音楽を追求するとともにキャロル・キングとかトッド・ラングレン、あるいはジョン・レノンなど、すぐれたシンガー・ソングライターたちが立っているような地平に立ったのではないでしょうか。

DL:ああ、なるほどね! はははっ。僕自身のパーソナルな表現だからね。

その意味では『ザ・グラッド・ファクト』を10年越しに完成させたものだっていう感じもしますね。

DL:そうそう、それはたしかにあるね! 原点回帰って意味じゃないけど、ファーストのころに戻った感じ。シンプルにしていった方向性っていうのはたしかに似ているかもしれない。

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この曲が歌っているのはニューヨークのオキュパイ・ムーヴメントをプロテストする内容なんだ。ヴォーカルにはギリギリな感じ、警告するような響きが出ている。だからいちばんこのアルバムを象徴しているかなって思った。

今回はあなた自身のプロダクションとミックスで完成されたということですが、プロダクションやミックスのうえで心がけたこと、考えていたことはどのようなことですか? とてもぬくもりある、あらいざらした木綿のような気取らなさ、親しみやすさがあると感じました。

DL:木綿。まさにね。僕はきらきらした、そうだな、ポリエステルのようなものはめざしてないね。

"ダンス・フォー・ユー""イレスポンシブル・チューン"などもとても素直に歌心が流れだしています。あなた自身はどのような人なのでしょう? あなたのすごい量のエモーションっていうのは何から生まれてくるのでしょう?

DL:(爆笑)いやあ......はっはっは! そうだな......。僕は、あらゆる存在、この世に存在しているあらゆるものに極端な好奇心を持っている。そのディテールにすごくとらわれてしまうし、とらわれたくなる。そういう性質だ。人生というのは一筋縄ではいかない、混沌としたものだけど、いろいろなものを愛してしまうということと、いつだって死んでしまいたくなるということとの間には、ほんとにせまい、細くてうすい境界線があるだけで、僕はいつもその間を行ったり来たりしている。その間を縫って生きてるんだ。そういうことかな。

そこで現実逃避したいっていう気持ちはないんですか? たとえばいまチルウェイヴと呼ばれているような音楽は現実逃避的だとして批判されることが多いですが、非常に影響力がありますね。あなたの場合逃げるという選択肢はないのですか?

DL:音楽における現実逃避というのは、何種類かあると思ってる。たとえばまず、さっき言ってたジョン・レノンとプラスティック・オノ・バンドとか60年代後半から70年代前半のジョン・コルトレーンとか。彼らの音楽もユートピアをめざすという意味では現実逃避的で、ただそこには道筋や文脈がはっきりあって、説明的ですらある。それとはべつにレッド・ツェッペリンとかブラック・サバスとかがあって、これは完全にファンタジーの世界のものだ。現実的ではまったくない。そういう世界に浸るための音楽だね。そしてグランジなんかは完全に薬物がからむ。薬物で現実と対するし、現実とはかようにつらいものだという認識からはじまって、自分をどれだけ甘やかすか、目をそむけるためにどのような手段を使うのか、そういう地平の音楽だ。だいたいこの3種類くらいが逃避の音楽として思い浮かぶね。けれどチルウェイヴだけはそれらとちょっと違う。チルウェイヴと呼ばれるものを聴いていると、まずまちがいなく薬物って感じはしない。そして思い描くイメージは夕暮れの海岸のポラロイド写真みたいな感じしかない。それ以上の幅の広がりを感じないね。そういう意味ではある種、特殊な音楽かもしれない。

音楽やアートや文化一般において、エスケーピズムは重要な役割をはたしてきたと思うんですが、チルウェイヴはそうではないかもしれない、という......?

DL:だから、自分たちの音楽をなにかしらの言葉でカテゴライズするのは好きではないけど、そういうチルウェイヴやなんかの音楽にくらべると、もっとオプティミスティックというか、まだまだ未来を感じて、どんどん努力もする、もっと深いところまで突きつめる、すごく前進的な音楽だと思うよ。それはこれまでのすべてのアルバムについて言えることだね。そういう空気、そういう密度がすべての作品にあると思うよ。

先ほど言われてたことは、そのポジティヴさのようなものと「死」というものとが、あなたのなかでは隣りあわせだということですか?

DL:われわれはいずれみんな死ぬ。これから死のうとしている。だから現実逃避的な部分は誰しもが持つものかもしれない。そうだね、ふたつはとても近いところにあるものかもしれない。まあ、「死」をより近くに感じるのはたいていがツアー中だけどね。ははっ。ツアーに出る人はみんなそう思うんじゃないかな。

"About To Die"などはとてもフィジカルなビート感覚があります。一見「死」という言葉に結びつかないような力づよさがありますね?

DL:この曲にはたしかに指摘されたような力づよさ......ポジティヴさがあるね。

ところで、『スウィング・ロー・マゼラン』をタイトルにしたのはなぜですか? 曲自体はとてもささやかな、しかし情感豊かな小曲です。その直前"ガン・ハズ・ノー・トリガー"までのアッパーでスリリングな展開をこれまでのダーティ・プロジェクターズの延長と考えるならば、"スウィング・ロー・マゼラン"はそこからぐっと舵をきって、"インプレグナブル・クエスチョン"などの方向へ踏み出していくきっかけとなる位置に置かれていると思いました。

DL:日本でもそうだと思うんだけど、野球の選手の打順だよ。ホームランを打ってくれるのがこの"スウィング・ロー・マゼラン"なんだ。だから4番なのさ。たしかに2分だし、シンプルな曲ではある。けど、これが4番だね。

今回はすごくたくさん(約70曲)録音して、そこから曲をしぼっていったということなんですが、あなたにとって、バンドはひとつのツールのようなものですか? それともたとえばファミリーストーンのように結合的な関係性を持ったなにかなのでしょうか?

DL:いまのメンバー、とくにアンバーはもう5年もいっしょに住んでる仲間だし、世界中でもいちばんの親友と呼べる仲間たちだよ。けれど、さっき言ってもらった70年代のシンガー・ソングライターのように、オーケストラの必要な曲をやりたくなれば必要な人びとをあつめてくるし、そのときに応じて流動性は生まれてくることもあるかもしれない。現在はともかくもこのメンバーのため、仲間のために曲を書いてるって感じだね。

"ガン・ハズ・ノー・トリガー"は、音楽性からみても、ヒップホップ的ですらあるビートを用いながら、これまでのダーティ・プロジェクターズのイメージからは踏み出た曲ですね。これをシングルとしてリリースした理由を教えてください。

DL:オールドスクールなヒップホップとか、たしかに音楽面でいえばそうしたものの影響はあるね。ヴォーカルについて言えばバッハ的でもあるんだけど。そこ気づいてくれてうれしいよ。まあ、アルバムの中からひとつ象徴的なものを取り出すっていうのはむずかしいんだけど、たとえばこの曲が歌っているのはニューヨークのオキュパイ・ムーヴメントをプロテストする内容なんだ。ヴォーカルにはギリギリな感じ、警告するような響きが出ている。だからいちばんこのアルバムを象徴しているかなって思った。それが理由かな。

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 太陽と海、そして米軍基地を内包し、本土とは異なる独自の歴史と文化が広がる沖縄は、その昔から独自のディスコ・カルチャーが育まれてきた地としても知られている。それは沖縄を代表するDJ、クリエイターであるTAKUJI a.k.a. GEETEKが作品で展開している「沖縄のバレアリック・フィール」と評される独特な折衷性からも意識させられることではあるし、DJ HIKARUやFRAN-KEYといったDJが移住したことで近年の沖縄シーンそのものもますますユニークなものになっているように感じられる。
 そんな2000年代後半の沖縄から、イギリスやドイツ発の作品リリースを通じて、急速にその名前が知られるようになったのがIORIだ。テクノやダブ、アンビエント、ドローンを溶かし込んだディープでストイックなトラックを繊細なタッチで空間的に鳴らすその作風は〈フューチャー・テラー〉を率いるDJ NOBUを虜にし、そのデビュー・アルバム『ネクサス』は彼が新たに立ち上げたレーベル、〈ビッタ〉の第1弾としてリリースされたばかり。そして、というか、やはりというか、沖縄の深海を思わせる音楽世界のさらに奥底には、彼がたどってきた驚くべき音楽遍歴が隠されていたのだった。

ニューヨーク滞在中に「ここで得たものを持ち帰って、沖縄でやりたい」っていう気持ちが芽生えて、帰国してからいままでずっと沖縄なんです。DJとしては、渡米前から火の玉ホールの第4火曜日に当時の沖縄で唯一のディープ・ハウス・パーティを8年間続けて......。

個人的に、IORIくんのことを知ったのは2008年にロンドンのサイト、ディープフリークエンシーではじまった不定期オンエアの番組「イオリ・ギャラクシー」がきっかけだったりするんですけど、最初はロンドン在住の方だと思っていたんです。

IORI:ははは。沖縄在住なんですけどね。でも、ロンドンやニューヨークとの絡みもあったりするから、わかりにくいといえば、わかりにくいですよね(笑)。

そのあたりのことを整理しつつ、お話をうかがいたいんですけど、沖縄に生まれ育ってたIORIくんがDJをはじめたのは2000年なんですね?

IORI:そうです。高校1年生のとき、那覇の国際通りにとある女の人がやってるアクセサリー・ショップがあって、学校帰りに友だちと買い物がてらたむろすようになって。そのお店にはターンテーブルやレコードが置いてあって、いつも面白い音楽がかかっていたので、その女の人といろいろ話すようになって、ハウスからアシュラみたいなジャーマン・ロックまで色々教えてもらったり、連れていってもらったパーティでいろんな沖縄のDJを紹介してもらったんです。

16歳で? それはかなりの早熟ですねー。

IORI:それで、雑誌『リミックス』の別冊で、ラリー(・レヴァン)が表紙の『ハウス・レジェンド』を貸してもらって、そのディスク・ガイドを参考に、レコードを集めるようになったんです。あと、僕には10歳上の姉がいるんですけど、音楽好きで、DJと付き合ったりしていたので、家にミックステープがたくさんあって、ヒップホップにハウスが混ざってるやつとか、フランキー・ナックルズのDJミックスとか、そういうテープから受けた影響も大きかったですし、そういう音楽体験があったからこそ、最初から特定のジャンルに限定せず音楽を聴くことができたんです。

当時の沖縄のクラブ・シーンはどういう状況だったんですか?

IORI:当時、那覇のクラブといったら、アンダーグラウンドな曲がかかる火の玉ホールがメインで、自分もよく遊びに行ってたので、レコード買ったり、遊んでいるのも知ってた店のオーナーから「学校を卒業したら、DJやれば?」って。だから、2000年、19歳の時に火の玉ホールで初めてDJをやらせてもらったんです。でも、沖縄って、地域によって色が違うんですね。那覇と、そこからちょっと上にいった沖縄市コザでも音楽性が違うし、92年に来沖したフランソワ(・ケヴォーキアン)とラリーの「ハーモニー・ツアー」もパーティをやったのもコザだったんですね。

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本格的にやりはじめたのはここ3年くらいですよ。それ以前、20歳くらいの頃にMPC2000とシンセを買って、MPCで作ったビートにシンセを被せたチープなハウス・トラックを作ってみたこともあるんですけど、機材の使い方が難しくて、のめり込めなかったんですね。

そして、2000年にDJをはじめて、その3年後に早くもニューヨークへ渡ったんですよね。

IORI:そうですね。まず、17歳の時にデヴィッド(・マンキューソ)が初めて沖縄でプレイしたんですけど、そのパーティへ遊びに行ったら、自分が聴いてるレコードの音が格段に違う鳴りだったことに最初の1曲めからぶっ飛んだというか、それ以前の夜遊びでは味わったことのない、ものすごい衝撃を受けたんです。で、その2年後にまたデヴィッドが来たとき、そのパーティをスタッフとして手伝っていたので、いっしょにご飯を食べたとき、「ニューヨークに行きたいんです」って話をしたら、「いつでもおいで」って。だから、その翌年、まずは旅行でニューヨークに行ったんですけど、行く前に当時彼のマネージャーだったタケシさんっていう日本人を通じてメールで連絡したら、スムーズに2週間泊めてくれたんです。で、その翌年の2003年に今度は向こうの大学に行く勢いで、長期滞在するためにニューヨークへ行ったんですけど、その時、「家が見つかるまで泊まっていいよ」っていう話から「部屋が空いてるから、ここに住めばいいんじゃない?」ってことになったんです。

そうやって気軽に出かけていくIORIくんの行動力もスゴいですけど、IORIくんを「住んでいいよ」って気軽に受け入れるデヴィッドも懐の広さもまたなんともはや。そして、もちろん、彼といっしょに生活しながら、色んなことを教えてもらった、と。

IORI:そうですね。もちろん、音楽が好きで来たことはデヴィッドも知っていたので、彼がパーティをやるときに手伝うようになったり、いっしょに生活するなかで、いろんな部分で影響されましたよね。ただ、彼は自分の家に機材を全部置いているわけでもなければ、僕が彼といっしょに住むまで、オーディオもつながれていなかったし、普段は一日じゅうラジオを聴きながら、パソコンで世界中の人とやりとりをしている人でした。そんななか、特に印象に残っているのは、レコードのコンディションに対する神経質なくらいの気の使い方であったり、サウンドシステムに対するきめ細かさ。僕は彼と同じレコード、同じサウンドシステムを扱っているわけではないんですけど、彼から学んだそうした心構えで、自分なりに音楽と接しているつもりです。

デヴィッドのレコードの扱い方というのは?

IORI:そんなに手入れはしてないんですよ。ただ、彼はすごいレコード針を使っているので、レコードのスクラッチ・ノイズを異常に嫌っていて、ちょっとでもスクラッチ・ノイズがあったらダメって感じなんですよ。だから、盤面には絶対に指紋をつけないというところからはじまって、レコードのインナースリーヴをすぐに取り出せる状態にはせず、ほこりが入らないようにしておくとか。彼にならって、僕もそうしていますし、彼からレコードを教えてもらったことはないんですけど、レコード棚を端から端まで見させてもらったり、彼はパーティでかけるレコードのだいたいの順番をあらかじめ決めるので、その曲順を書いた紙を「はい」って渡されて、僕がレコードをその順番に並べて箱に詰めたり。

でも、ニューヨークでのロフト体験やデヴィッドとの共同生活もありつつ、そのまま滞在せず、1年後には沖縄に帰られたんですよね?

IORI:そうなんですよ。ニューヨーク滞在中に「ここで得たものを持ち帰って、沖縄でやりたい」っていう気持ちが芽生えて、帰国してからいままでずっと沖縄なんです。DJとしては、渡米前から火の玉ホールの第4火曜日に当時の沖縄で唯一のディープ・ハウス・パーティを8年間続けて、平日でもコンスタントに5、60人入るような状況だったんですけど、火の玉ホールの移転を機にそのパーティも終わって。2008年から「ギャラクシー」っていうパーティをはじめて、今は桜坂にある"g"っていう小さいバーでやってるんですけど、そのパーティも今年で4年目になるのかな。

そして、2008年にロンドンのサイト、ディープフリークエンシーでそのパーティ名とも通ずる「イオリ・ギャラクシー」というネット・ラジオをはじめることになるわけですけど、沖縄にいながらにして、どういう経緯で番組を持つことになったんですか?

IORI:ニューヨークのロフトのパーティで知り合ったフランス人がロンドンに住んでいて、彼を訪ねてロンドンへ遊びに行ったんですよ。

あ、こないだ来日したDJのセドリック・ウーですか?

IORI:そうそう。その時、すでにセドリックもディープフリークエンシーで自分の枠を持っていて、ロンドン滞在中にゲストでDJさせてもらったんですよ。そうしたら、サイトのスタッフが気に入ってくれて、その翌月からレギュラーでやることになったんです。それまでオンライン・ラジオがどんなものなのかも知らなければ、もちろん、やったこともなくて、そのサイトも日本に帰って初めて見たっていうくらいだったんですけど、2時間の番組用の音源データを送って、最初の2年は月イチ、今は不定期でやってますね。

セドリックは要するにデヴィッドがロフトでパーティする時のスタッフというか、ロンドンのロフト・ファミリーですよね。

IORI:そう。ディープフリークエンシーをやってる同じフランス人のギヨームもロフト・クルーですし、同じくロフト・ファミリーでいまはイギリスに住んでるDJコスモもディープフリークエンシーで番組を持ってるんです。

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晴れてる日は外へ遊びに行きたくなって曲作りはできないんですよね。だから、雨や曇りの日なんかにこういうトラックのムードを自分のなかで作り出して、そこに没入しながら作ることが多かったですし、最初のコンセプトとして、作る音楽にあまり沖縄的なものを入れたくないとも思っていました。

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なるほど。世界がつながるロフト・コネクションがあるんですね。ちなみにIORIくんが音楽制作をはじめたのはいつからなんですか?

IORI:実は遅くて、本格的にやりはじめたのはここ3年くらいですよ。それ以前、20歳くらいの頃にMPC2000とシンセを買って、MPCで作ったビートにシンセを被せたチープなハウス・トラックを作ってみたこともあるんですけど、機材の使い方が難しくて、のめり込めなかったんですね。で、2008年にAbleton Liveっていうソフトを買って、そこからようやくですね。

でも、最初のシングル「ギャラクシーEP」がリリースされたのが2009年ですよね。作りはじめて1年くらいで作品リリース。しかもレーベルは、イギリスのレコード・ショップ、フォニカ主宰の〈フォニカ・ホワイト〉からっていうのも、これまたびっくりするような話ですよね。

IORI:そうなんですよ。音楽を作りはじめて、「これいいんじゃないか」って初めて思った曲をマイスペースにアップしたら、フォニカのスタッフがそれを聴いてくれてリリースにいたったという。で、その後の(ドイツのレーベル)〈プロローグ〉からのリリースもマイスペースがきっかけなんです。〈プロローグ〉もフォニカが出したいと言ってくれた曲をいいって言ってくれたんですけど、「もうフォニカからのリリースが決まってる」って答えたら、「じゃあ、デモ送って」って。

5月にリリースされたIORIくんのファースト・アルバム『ネクサス』に収録されている"ギャラクシー"の完成度の高さを思えば、そのエピソードも納得できるんですが、まさかマイスペースがきっかけとは驚きました。でも、お話をうかがってきたように、IORIくんのルーツはハウスやディスコ、ロフトだったりするはずなのに、その後のシングルやそれらトラックを収録した『ネクサス』を聴くと、テクノだったり、ドローン、アンビエントだったりするところが頭のなかでぱっとは結びつかないんですが。

IORI:でも、実はそういう音楽も昔から聴いていたんですよ。例えば、ベーシック・チャンネルだったり、アンビエントやマニエル・ゲッチングみたいなものまで、そういう陶酔して聴ける音楽も昔から大好きでしたし、ちょうど、"ギャラクシー"を作りはじめる前の2008年くらいから、テクノっておもしろいなって思うようになって、ベルグハインの存在を知ったのもその時期だし、自分が好きで買ってたレコードをチャートに挙げていたNOBUさんに気持ちが近づいていったのも全部同じ時期なんですよね。そして、「ギャラクシー」ってパーティにしてもいままでのソウルフルな部分ではなく、ストイックなテクノを主体とした内容を考えてはじめましたし、制作する音楽も自然とそういうものになっていって。

NOBUくんと実際に会ったのは?

IORI:沖縄のビー・グリーという箱と光さんがNOBUさんを招いてパーティをしたときなので、2年くらい前ですね。それ以前にも違う人が呼んで沖縄に来てるんですけど、その時のNOBUさんはまったく違うスタイルでディスコとかかけていたし、面識もなかったんですけど、2年前にいっしょにDJをやったり、話したりして意気投合して、去年、千葉のフューチャー・テラーにも呼んでもらったんですけど、フューチャー・テラーは......最高でしたね(笑)。うん、ひとつの遊びとして、ホントおもしろかった。僕はつねにおもしろい方向に向かっていきたいですから、自分のなかにはぜんぜん壁がないし、そういう壁を取っ払っていくのが僕たちの役目の一部でもあると思うので、そこは意識もしつつ、自然にやっていることだったりもしつつ。

そして、この3年でリリースしたのが17曲のオリジナルと2曲のリミックス。非常にハイペースで音楽制作に取り組まれていて、『ネクサス』はそのうちの7曲とオリジナル3曲をまとめた作品集になっています。

IORI:音楽制作は正解がない世界なので、いまも模索中というか、道のりは深いというか長いというか。そのなかでもがきながら作ったものを発表している感じですね。

沖縄という土地が音楽制作に与えている影響はご自分でどう思われます?

IORI:沖縄での音楽制作はいちばんフラットな気持ちで向かうことができるのかなって。それから沖縄での遊びは都会のそれとは全然違うので、ハングリーな気持ちも生まれるんだと思いますし、同時に沖縄ならではのレイドバック感もあるし。

これは個人の短絡的な意見ですけど、開放的な沖縄の環境を考えると、IORIくんのストイックでディープなトラックは異質なもののように感じるんですね。

IORI:それ、よく言われます(笑)。さすがに晴れてる日は外へ遊びに行きたくなって曲作りはできないんですよね。だから、雨や曇りの日なんかにこういうトラックのムードを自分のなかで作り出して、そこに没入しながら作ることが多かったですし、最初のコンセプトとして、作る音楽にあまり沖縄的なものを入れたくないとも思っていました。でも、そうかと思えば、まだ発表してない曲のなかにゆるいものもたくさんありますし、太陽があう曲もあったりして。

それは聴いてみたいですね。

IORI:じつは、この『ネクサス』の沖縄っぽくないジャケット写真には秘密があって、これは曇りの日にモノクロで木の表面を表と裏から撮ったものなんですけど、その木というのはCDのトレイ下にレイアウトしてあるヤシの木なんですよ。音楽それ自体には沖縄っぽさを入れなくないとは思っていたんですけど、このアルバムは南からの一発っていうことでもあるので、こういうアート・ワークにしたんです。でも、実は今年、沖縄を出て、ベルリンに行こうと思っているんです。これまで作品をリリースしてきたのも全部ヨーロッパのレーベルですし、ここから先のさらなる挑戦をベルリンの地でしてみたいなって。

最後に余談になりますけど、IORIって名前はぱっと見て、性別がわからないじゃないですか。ディープフリークエンシーでIORIくんのことを知った自分は、「もしかすると、IORIっていうのは、イギリス人が使ってる日本語の名前なのかな」って思ったんですよ。で、そういえば、IORIって漢字で書くと「家」とか「小屋」を意味する「庵」じゃないですか。だから、もしかすると、これ、「ハウス」って意味なのかなとへんに深読みしてみたりして(笑)。

IORI:ははは。それは完全な深読みでしたね。あ、でも、あるとき、デヴィッドと話してて、「漢字って意味があるんだろ? お前の名前はどういう意味なんだ? 」って訊かれて、「ハウスだよ」って答えて、その場が盛り上がったなんてこともありましたね。僕の漢字は「伊織」なんですが(笑)。

CAN - ele-king

 カンは消えたはずのにくすぶりつづける燃えさしみたいなもので、五輪の聖火さながらに人知れず誰かにリレーされた熾火は忘れたころにどこかから狼煙をあげる。煙い。が、その煙たさは直裁にスモーカー的なそれというより、ジャマイカの音楽のセオリーを無視した野趣に通じる、常識の顔を曇らせる煙たさであり、表面的な部分でなく構造が問題になっているので、古びない上にちょっと寓話的だと思います。
 クラウトロックらしい喰えなさ、90年代に宇田川町のレコ屋のポップでよくみかけた「いなたさ」のようなものが、ホルガー・チューカイ、ヤキ・リーベツァイト、イルミン・シュミット、ミヒャエル・カローリのアンサンブルには脈打っていて、そこに黒人のマルコム・ムーニーやら日本人のダモ鈴木やらが絡みつくバンドの構成も独特だった。そしてそれはコスモポリタンの進歩主義ともグローバリズムの不可逆性ともちがう、牛や馬と人間が同等の、つまり寓話的な磁場をもつ世界だった。私は無論、差別しているわけでもないし博愛でもない。うまくいえないがある種のアナーキーズム、白石美雪さんの書いたジョン・ケージの本の副題「混沌ではなくアナーキー」と同じニュアンスを、あくまでロック・バンドの体をなしながら音楽における他者性を体現したバンドはカンを置いてほかにない。
 『ザ・ロスト・テープス』を聴いて、あらためてそう考えた。
 『ザ・ロスト・テープス』はその名の通り、カンの1968年から77年までのオリジナル作品に収録していないスタジオのボツ音源やサントラ用の曲、ライヴ音源など、未発表曲を集めた3枚組のハコもの。私は試聴盤がディスク1だけだったので全部は聴いていないが、とはいっても、これまでなぜ正式にリリースされなかったのか、首を捻るばかりのツブぞろいの楽曲が目白押しだ。冒頭の"Millionenspiel"はいかにもタランティーノが好きそうなB級スパイ映画のタイトルバックにぴったりのサーフィン~ガレージ系のスピード・チューンだが、これはじっさいドイツのテレビ映画に使われていたのだった。イルミン・シュミットが音楽を担当した縁での起用だったようだが、結成当時(68年)のカンを「音楽教育を受けたパンク・バンド」と述懐したチューカイの面目躍如たる、方法論を知悉しながら枠組みから逸れていく実験性をはやくもかいまみせている。カローリのギターの奇妙な歪み、チューカイの呪術的なベースライン、全体を鼓舞するヤキのドラムスに色をつけるイルミン、技術的に革新的なわけでもなく、むしろありふれたものであるかもしれないのに、カンが誰もマネできないところにいつづけられたのは、カンが発端には即興を最終的には編集を彼らのカギとしていたからだろう。そこでは、マルコム・ムーニー、ダモ鈴木たちノン・ミュージシャンは「音楽教育」の外の広大な非音楽の沃野に直結したバイパスの役割を担った。あるいは、カンというバンドをデフォルメないしキャラクタライズしたというべきか、ともあれ、カンのフロントマンは彼らでしかありえなかったのは、『モンスター・ムーヴィー』(69年)から『フューチャー・デイズ』(74年)まで、傑作が彼らの在籍時に集中していることからもわかる。もちろんカンのどれが傑作かは、みなさんいろいろ意見があって、語り合えば明日の朝までかえるのは目に見えているが、さいわいなことにこのハコには『アウト・オブ・リーチ』(78年)でミソがつくまでのカンの未発表音源がくまなく入っている。キマりきった吉幾三のような、ほとんど恐山仕込みにさえ聞こえるマルコムのヴォーカルが不穏な"Waiting For The Streetcar"、ドアーズの"Touch Me"を思わせるイルミンの鍵盤リフなど、ストレートなロック・モチーフとチューカイお得意の短波ラジオの音源をめまぐるしくカットアップした"Graublau"、20世紀実験音楽の典型ともいえる具体音や非楽音の使い方の牧歌的でありながらじつに骨太な感触、イルミン・シュミットが資料に寄せた通り、このハコのおもしろさはまずはカンの正規盤とはちがう、創作の課程を伝えるところにある。逆にいえば、20世紀でもっとも自律的な音楽的運動体のひとつだったカンというロック・バンドの生成変化の中身をみせるものともいえる。

 本作は30時間以上におよぶテープが元になっているという。以前イルミン・シュミットにインタヴューしたとき、彼はカンはスタジオでテープをまわしっぱなしにしてた、とにこやかに語っていたが、このハコをそれを裏づけるだけでなく、さらに膨大な未発表音源が眠っている可能性をも示唆している。全部出てきたら明日の朝といわず、三日三晩、寝ずに語り合わないといけない。

interview with Hot Chip - ele-king

 僕が欲しかったのは君だった
 さあ、僕らの最後の選択の時だ
 僕たち、どうやって嘘をついたり後知恵で批判したりするだろうか?
HOT CHIP "Don't Deny Your Heart"(2012)

 え~、またなの~? 親愛なる読者、どうかそう思わないで欲しい。来日ライヴはまるでパンクのコンサートのように、下手したらトリのブロック・パーティを食ってしまうほどの縦のりの大騒ぎだったホット・チップ。以下、バンドのフロントをつとめるふたり、アレクシス・テイラー(Alexis Taylor)とアル・ドイル(Al Doyle)といっしょに、実験的な取材を試みた......。


うん、髭のある女性は好きだな。とっても無愛想で......脅迫的で......暴力的で......男っぽくて......毛だらけで......髭が生えてる女性かな。








Hot Chip

In Our Heads


Domino/ホステス


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野田:いいですか? 今回はひとつルールを決めたいと思います。「絶対に、本当のこと、真実を言ってはいけない」というルールです。

どうでしょう?


アレクシス:(即答)了解。いいよ。


アル:りょ、了解......難しいね(笑)!


野田:それでは「ホットチップくん」、よろしくお願いします。


オッケー。えー、まず最初に、Welcome to Japan! ということで、日本の好きなところはどこでしょう?


アル:(即答)何にも好きじゃない。嫌い。


(一同爆笑)


アル:こんな感じで行きますよー、みんな(笑)!


アレクシス:この視点で、ちょっと考え方を変えてみよう。なんで僕が日本を好きか。食べ物がシンプルで、ここで食べれる料理はひとつだけ。


アル:そうだね......(笑)!


アレクシス:ハンバーガーしかないから。まあ、いいんだけど。あと、住んでる人が......もっと愛想があったらいいのになと思う。


アル:ふふふふ......(笑)!


アレクシス:献身的じゃないし、秩序もないし、何事にも雑だから。いや、これ難しいね。こんな嘘をついてると、僕が無礼に聞こえない?


(一同爆笑)


アレクシス:でも嘘をつき続けなきゃいけないんだよね。もっと上手く答えていこうか。


好きな女の子のタイプは?


アル:アレクシス、これはマジでちょっと......(笑)!


アレクシス:これも嘘じゃないといけないんだよね? 了解。(しばし沈黙)......とっても無愛想で......脅迫的で......暴力的で......男っぽくて......毛だらけで......髭が生えてる女性かな。


アル:うん、髭のある女性は好きだな。うん、髭か......気にしないけどね。


アレクシス:ほんと、こんなこと考えたことなかったよ。ねえ、やっぱり、ほら、すごく無礼に聞こえるよね?


アル:無礼になるのは愉しいよ! 日本では無礼な感じでいこう。ははは(笑)。


アレクシス:女性全員を不快にしてしまいそうだね。


心配しないで!「Don't Worry. There is nothing left to....」


アル:そうだね(笑)。


(註:アレクシスの別バンドであるアバウト・グループ≪About Group≫の曲"Don't Worry"の歌詞)


得意な楽器はなんですか?


アレクシス:僕はギターの才能が輝いてるよ。


(一同笑)


アレクシス:ギターに関してはハッキリと言える。それに、たぶん僕は世界一のギタリストだよ。惑星一だ。あとは、吹奏楽器ならなんでも得意。なんでもこいって感じだよ。


アル:僕も吹奏楽器は得意だな。


ほう。2010年のツアーでは"I Feel Better"のイントロでフリューゲル・ホルンをプレイしてましたね。


アル:そうそう。とても得意だよ......って、嘘つくのも大変だ!


アレクシス:これって僕らが嘘をついてることは読者に伝えてくれるの?


野田:もちろん、もちろん!


もちろん、もちろん! オフコース!


アレクシス:了解。いいよ。......でも、それも嘘かもしれないじゃない?


いやいやいや......なにもなにも......(笑)。


アル:ぷははははは! 了解(笑)。


このインタヴューはスペシャル・ゴージャス・ボーナス・トラックです!


アレクシス:了解。


アル:ははは、了解。気にしないで(笑)。


そう、そのロイヤル・トラックス(Royal Trux)みたいな感じです。


アレクシス&アル:ふふふふ......。


(註:『In Our Heads』のボーナス・トラック"Doctor"にはロイヤル・トラックスのニール・マイケル・ハガティ≪Neil Michael Hagerty≫がギターで参加しており、ロイヤル・トラックスのアルバム『Accelerator』のTシャツをインタヴュー時のアレクシスが着ていた)


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ひとつ問題があって、記者たちは僕たちの最初の指令を読み違ってしまった。「Greek」(「ギリシャ人」)という語から「r」を忘れてしまったんだよ。僕らはギリシャ人なんだけどもね。記者たちは僕らが「Geek」(オタク/奇人/ダサい男)という言葉を発信したがってると思ってしまったんだ。

自分の好きなところはどこですか?

アレクシス:うーん......。僕は背が高くて......。

ふふふ......(笑)。

野田:うう(笑っていいのか気遣う)。

アレクシス:だから、見晴らしがいいところ。......僕の体型も好き。で......。

アル:僕は彼の体型きらいだけどね。ははははは!

野田:ははははは!(遂に笑う)

ふふふ(笑)。

アレクシス:......視覚が優れてること。で......、聴覚が素晴らしくて......、強い意志の力があるところも好き。......あらゆる悪に抵抗できることも。......それで......決断力もあるところ。

なるほど。あなたはアバウト・グループのリーダーですもんね。

アレクシス:いや、違うよ。

本当ですか、えっと、では。

アレクシス:17名いるメンバーのうちの1人でしかないよ。

17名?

アル:ふふふ(笑)。

ふふふ(笑)。了解しました。好きなダブステップのアーティストはいますか?

アル:(即答)スクリレックス(Skrillex)!

野田:ははははははは(爆笑)!

やっぱり(笑)!

アル:明らかでしょ!

アレクシス:僕は世に出ているダブステップに関するあらゆるものが好きで、ずっとずっと後世まで残ればいいなと思ってる。僕にとっては、もっともオリジナルでもっとも高尚な音楽のフォーマットかな。

はははは......!

アル:ふふふ(笑)。

レディオヘッドについてはどう思いますか?

(沈黙、5秒)

アレクシス:表現豊かで、......思慮があって、......とても音楽が美しい。とくに歌手の声がね。彼にしか触れられない心の琴線というのものに届くいてくるし......。

アル:ふふふ(笑)。

ふふふ(笑)。

アレクシス:で、......彼ら全員がレディング(Reading)出身というのに感心します。

アル:レディングという町にとても貢献してるよね。

(註:レディオヘッドはオックスフォード(Oxford)出身。ちなみに、ホット・チップのうちジョー・ゴッダード(Joe Goddard)はオックスフォード大学出身)

チャールズ・ヘイワードやロバート・ワイアットのようなポリティカルなミュージシャンとの共演についてはどのような感想をもっていますか?

アル:(即答)やったことない。

アレクシス:ないね。

(一同爆笑)

おおおお、了解、了解しました(笑)! では、とくにポリティカルなロバート・ワイアットのような人と共演したいと思いますか?

アレクシス:うーん、政治には興味がない。2012年以前に作られたどんな音楽にも興味がない。どれにもね。

アル:古臭いよね。

アレクシス:古くて霧のかかった音楽だよ。

アル:彼らには「黙れ、ジジイ」と言いたい。「黙ってればいいから。音楽やらなくていいから」と思うな。

(註:元ディス・ヒート≪This Hear≫として名高いチャールズ・ヘイワードは、ホット・チップの『One Life Stand』と『In Our Heads』にも参加しており、アバウト・グループのメンバーでもある。元ソフト・マシーン≪Soft Machine≫のロバート・ワイアットはホット・チップのリミックスEP『Made In The Dark』にヴォーカルで参加しており、ベルトラン・ブルガラ≪Bertrand Burgalat≫との曲"This Summer Night"をホット・チップがリミックスしている)

おふたりは、自分たちのことをプロフェッショナルだと思いますか?

アレクシス:んー......。

(しばしの沈黙)

アル:あー...、超難しい! 脳みそが燃えてる(笑)!

アレクシス:うーん、僕たちは......見た感じ、いまだにとってもアマチュアっぽく見えると思う、やることなにもかもにおいてね。僕たち自身が僕たちは音楽で生計を立てていると思っていたとしても、ね。たぶん、......僕たちをプロフェッショナルだと思っているのは、世界で僕たち自身だけだよ。

アル:ほう。ふふふ(笑)。

なるほど。

野田:ふふふ......(笑)。

アル:ふふふ......(笑)。

アレクシス:ふふふ......!(堪えきれず声を抑えて笑う)

野田:自分たちの音楽でいちばん伝えたくないことはなんですか?

アル:僕たちの感情とか、それと、欲望とか、うーん...。

アレクシス:楽しすぎる音楽は好きじゃないな。表現豊かな音楽も。

アル:そうだね......、退屈で現実に則していない音楽が好きかな、それと、うーん......。(笑)

アレクシス:僕はいつどんなときも、ダニエル・スパイサー(Daniel Spicer)という人がどんな音楽を作るかについて考えるんだ。彼は『Wire』誌のとても素敵な記者で......。

アル:はははははは(笑)!

アレクシス:彼は自分のバンドをもっていて、<Linkedin>というサイトに彼と記者として仕事をする機会を人びとに宣伝しているんだ。僕は、彼は世界でもっとも知的な人だと思うし......

ぷっははははは(笑)。

アレクシス:狭量なんてことはまったくないし、自分勝手に人を非難しないし、出身で人を判断することをしないし、音楽を聴くことに本当に集中していて、とても公平で、僕はいつも......発言するときには彼のことを考えてるんだ。

アル:なにかを決断するときも考えてるよ。音楽だけでなくて、生き方そのものについて、彼に教わっているね。

アレクシス:彼の口髭は全然好きじゃないんだけどね。

(註:ダニエル・スパイサーによるアバウト・グループの1stアルバムのレヴュー
 「ドラムがすべて(all about the drums)」で、他は取るに足らないといった旨である)

(註:また、アレクシスは『Wire』誌に直接メールを送ったようで、「ダニエル・スパイサーに、嫌いな人をレヴューでイラつかせるのをやめるようアドヴァイスしてくれないか。彼はなによりもまず最初に、僕のかけている眼鏡の種類にイチャモンをつけた。ジョン・コクソン≪同じアバウト・グループのJohn Coxon≫が同じフレームの眼鏡を『Wire』でかけていても攻撃しないのにね。どんなに度を超して幼稚な雑誌なんだろうと思った」という言葉が『Wire』誌に掲載されている。
https://www.exacteditions.com/read/the-wire/october-2011-9409/6/3/>

雑誌やウェブで、ホット・チップは「nerd」(ナード)や「wonk」(ウォンク)という語で「オタク」と形容されがちですが。

アル:うん。

その上で、"Night And Day"のようセクシュアルなことを歌うことについてはどう思っていますか。

アル:ははははは!

ちょっとセクシュアルですよね。

アレクシス:どう思っているか......。セックスについて書くことは本当に居心地が悪いし、いつだって避けようとしてるよ。それに......。

アル:それに、「オタク」という形容についても、僕たちはそういう期待に応えてきて......、そのイメージでキャリアを積んできたんだ。「オタク」のイメージも僕らから発信し出して、それから記者もそう書き出して......、それで......僕らが考えてたのは、パラダイムというか......。

アレクシス:実際のところ、僕たちがたくさんの記者を雇ったんだ。デビューするにあたって、言葉を広めて。

アル:イメージを作るためにね。

アレクシス:ただ、ひとつ問題があって、記者たちは僕たちの最初の指令を読み違ってしまった。「Greek」(グリーク。ギリシャ人)という語から「r」を忘れてしまったんだよ。僕らはギリシャ人なんだけどもね。記者たちは僕らが「Geek」(ギーク。オタク/奇人/ダサい男)という言葉を発信したがってると思ってしまったんだ。それがマイナスにも働いてしまって、遂には僕らが5人の「Geek」によるバンドだと嘘をつかなくてはならなくなって......、つまりさ、今日、実際、大変な時期を過ごしてるんだよ。

アル:うん、そのとおり。次のアルバムはギリシャの経済状況について書くよ。書くべきだよね。

野田:はははは......笑えないんだけど!

「Me and Ulysses」?

アル:そう、そういうこと(笑)!

アレクシス:ふふふふ......(笑)。

(註:ホット・チップがまだアレクシスとジョーのデュオだったデビュー・アルバム『Coming On Strong』では、ふたりのクレジットは「Ulysses and Sophocles」という古代ギリシャ人名の表記になっており、収録曲"Keep Fallin'"ではそのことを強調して歌っていた。)

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まずインターネットの性質として、絶対に間違いがないということ。インターネットに表示されるあらゆることはすべて真実であるということ。つまり、今日、僕たちに与えられている答えというのは......


ご存知のとおり。昨年に僕がロンドンに行っておふたりに会う前には、日本では地震がありました。


アル:はい。


地震と津波によって原子力発電所がとても危険な状態になって、現在でも日本に住んでいて安全なのかどうかが実際にはわかりません。イギリスは最初に原発事故を経験している国ですよね。そこで、おふたりの原子力についての見解を教えてください。


アル:これで本当の意見を言えないのは大変なことになるよ!


野田:俺もそう思う。


アレクシス:ある性質があって......。


アル:了解、大丈夫だよ。


アレクシス:僕が思うにはね、まずインターネットの性質として、絶対に間違いがないということ。インターネットに表示されるあらゆることはすべて真実であるということ。つまり、今日、僕たちに与えられている答えというのは......、エラーが起こる余地はなくて、現に僕たちもこうやってインタヴューで完全に真実を答えていることからも、それがわかるでしょう。


野田:ははははは。


アレクシス:インターネットは情報を発信していくのに最適な場所だから、なんのリスクもない。つまり言えることとしては......、僕たちは、原子力についての見解もインターネットの皆さんに任せます。


野田:そうきたか、なるほどねえ。


アル:ふふふふ......(苦笑)。


アレクシス:政治家っぽいでしょ。


アル&野田:だははははは。


野田:でも、ここはルールを解除して続けましょう。


オッケー。嘘ではなくて本当のことを。


アレクシス:でも僕たちがそのルールに則っているかってどうやってわかるの?


野田:逆襲されたね。


アレクシス:真実かどうか推測しなくちゃならないよ。


了解しました。


アル:日本ではすべての原発は止めたのだっけ?


残念なことに再稼動されようとしています(註:取材は6月22日)。


アル:ジェームス・ラヴロック(James Lovelock)という科学者(環境学者)がいて、彼は『ガイア理論(Gaia Theory)』を提唱して、書物を発表してるんだ。そこには、事故が起きた際の怖さや危険性があるのは承知しつつも、必要とされている電気を供給するには、他に代替エネルギーがない限りは基本的に原子力を利用しなければならないとある。イギリスだけでなくヨーロッパでも原子力利用に反対するムーヴメントはあるんだけど、まだ誰も十分な代替案を伴ってはいないんだよね。

 もちろん、原子力利用だけが答えじゃないよ。エネルギー使用を抑えるということもできると思う。この問題はもっと議論を深めないとならないことだよね。たとえば、チェルノブイリにしても、人間には大変な悪影響を及ぼしたけども、事故現場の周りでは自然の生態系は問題なく生きていた。そこでジェームス・ラヴロックが面白い提案をしていて、放射性廃棄物をアマゾンの奥地に移せばいいと言ってたんだ。そこに住む生物は構わないだろうし、ジャングルにも全体的に影響はない。人間はそこには絶対行かないしね。これもひとつの意見だよね......とはいえど、こういった話はミュージシャンが発言していいとは思わないけど......。


(註:ジェームス・ラヴロックは、コーンウォール在住のイギリスの環境学者で、地球をひとつの生命体という視点からエコロジーを論じた1979年の『地球生命圏 ガイアの科学』は日本でも話題となった。彼の理論に対しては批判もあり、温暖化に関する諸説には本人も過ちを認めている)


ふむ。


野田:原発に関して言えば、日本には地震があるうえに、民間マターでダメだったのに行政も良いほうに機能してないし、電気料は根上がるし......深刻な状況にあるんです。でも、いまのような意見は日本ではなかなか言えないことのひとつだよね。


アル:たしかに僕がこういうことを言うのは簡単なことであって、日本では困難だと思うんだ。事故の記憶はまだ鮮明だから。ひとまず事故の記憶から距離を置けるようになってから判断をしていくべきかもしれない。何が起きているのかを明らかにしなければいけないし、政治家が結論を下すのも、事故からいくらか年数を経る必要があると思うんだ。


ふむ。


野田:政府もこの数年でどんどん酷い事態になっているし......。


アレクシス:大きい規模の話のなかで意味があるかわからないけども......、あ、これは嘘じゃないよ、僕たちは津波の被災者のためのチャリティーに参加しているんだ。


ふむ。


アレクシス:映像作家のグレゴリー・ルード(Gregory Rood)が明確な態度をもっているバンドを集めたミュージック・ヴィデオのシリーズがあって、そのうち一組がホット・チップなんだ。僕たちの曲"Look At Where We Are"のヴィデオを日本のアニメ監督に作ってもらって、ヴァースの部分でマヘル・シャラル・ハシュ・バズ(Maher Shalal Hash Baz)という日本のバンドをフューチャリングしたものを、今年の後半に出せればいいなと思ってる。レコーディングは済んでいるのだけれども、詳細がどうなっているかは分からない。この活動が、基金であったり、被災者にとって何らかの意味のあるものとして機能してほしいなと思っています。


なるほど。Thank you!


アル:いいよ!(日本語で)「どういたしまして」。


どうしよう、何か聞きたいことあったのにな......忘れちゃったな......。


アル:ふふふふ(笑)。


これも嘘でなくて結構です。アレクシスはギターが上手いと答えてくれました。アレクシスはライヴのステージ上でギターを弾く時に"Hold On"でエフェクトを深くかけて弦をかきむしりノイズのような音を出したり、動きの小さいフレーズのみを弾いたりしていますね。ギターに対してコンプレックスがあるのかなと以前から感じていました。新曲の"Flutes"では「I put a prucked string today(今日は、弦楽器をひとつ乗せよう)/Beside a note you taught me play(きみが教えてくれた音色に合わせて)/A wooden box breathes away(木の箱が大きく息づいている)/Never again...Never again...(二度とない......二度とない......)」という歌詞がありますが、これはどういう意味なのでしょうか。実際のギターに関する体験なのですか?


アレクシス:これはギターに関して歌っているわけではないんだ。"Flutes"で僕が考えていたのは、僕の大好きなザ・ビーチ・ボーイズの音楽への認識についてで、あ、これも嘘じゃないよ。


アル:あはははは(笑)!


アレクシス:『ペット・サウンズ』は、音楽に何個も新しいタンブラーを導入して新しいテクスチャーを導入したアルバムだと思うんだ。ブライアン・ウィルソンは、普通だったらポップ・ソングでは同時に鳴らさないような楽器を重ねて、それぞれに同じラインを演奏させて、レイヤーを作ったからね。そこで僕がさっきの歌詞で考えていたのは、reed instrument(簧楽器)の隣でバンジョーみたいな「prucked string」(撥弦楽器)を鳴らすことで......。僕の音楽部屋にはペダルの付いたハーモニウムを持っていて、それが「A wooden box breathes away(木の箱が大きく息づいている)」の意味なんだ。だから僕が歌っていたのは、ブライアン・ウィルソンが僕の隣で演奏を聴いていて、アレンジを教えてくれている画なんだ。「wooden box」(ハーモニウム)を「prucked string」(撥弦楽器)の隣で鳴らすんだ、みたいにね。


なるほど。


アレクシス:でも、なんで「Never again...Never again...(二度とない......二度とない...)」と歌ったのかはまったく憶えていないな。この曲の歌詞はジョーが新しい音楽を送ってくれることにとても関係してて......、だからたぶん、こんなに音楽的にエキサイティングな瞬間は二度とないかもしれないということを言っていたんだと思う。提供者であるジョーからこの曲を受けとって、唯一無二なクリエイションの時間に興奮しすぎてたんだね。


ふふふふ。


アレクシス:そして、ギターに関して......ギターを弾くのは本当にとても好きだよ。いいサウンドは作れると思うんだけど、演奏に自信がない楽器は他にもあるんだ。アルはとてもいいギタリストだし、ロブ(Rob Smoughton。ホット・チップに初期から関わっており、現在もライヴやレコーディングに参加している。ソロ・プロジェクトはGrovesnor)もいいよね。ただ、オーウェン(Owen Clarke)も僕と同じで、あらかじめ決められた演奏はできるけど、ナチュラルにギターを弾くということができないんだ。でも、アルはスティール・パンとかフリューゲル・ホルンもここ数年で練習をはじめだしてステージでも演奏しているし、自信があって得意な楽器だけでなく、熟知してなくて自信がないような楽器にも挑戦していくことがいいと思っているよ。


アル:そうだね。


なるほど。ありがとうございます。


アル:ありがとう。


もう終わりの時間ですね。では、最後にひとつ嘘をついてくれますか?


アル&アレクシス:いいよ!


(アレクシス、声を抑えて笑う)


いままでの人生で、嘘をついたことはありますか?


アル:ハハ、ハハハハハハハー......!


(沈黙、10秒)


(野田、耐え切れず声を抑えて笑う)


アレクシス:僕は嘘ばかりついて生きてきた。真実を話したのは、6月22日の12:20(註:インタヴュー開始時間)からだけで、それまでの32年間は嘘まみれの人生だった。


アル:ははは......そうだね(笑)。


野田:ふふふふふ(満足そうに笑う)!


アレクシス:付け加えておくと、僕はジャーナリストに真実を語ったことはないよ。


野田:うまい。Thank you very much for nice answers!


ありがとうございました!


アレクシス&アル:ありがとう!


Please take a rest(どうぞゆっくり休んでください)。


アレクシス:ははは!


interview with Bo Ningen - ele-king

 以下に掲載するのは、菊地佑樹によるボーニンゲン(棒人間)を名乗るバンドにおいてベース&ヴォーカルを担当するたいげん(Taigen)氏へのインタヴューの記録である。ボーニンゲンはロンドンで結成された日本人4人によるバンドで、2010年にロンドンのレーベルからデビュー・アルバム『Bo Ningen』を発表している。ボーニンゲンの音楽は、ホークウインドを彷彿させるような迫力満点のハード・サイケデリックだが、長髪で黒づくめの日本人が激しく動き回りながら日本語で歌うその光景は耳だけではなく目を惹きつけるにも充分な妖しさを発している。謎に包まれたこのバンドがどのように生まれ、どのように活動しているのであろうか......。

 2010年1月、Bo Ningenの来日公演。僕は生まれて初めて日本のアンダーグラウンドなイヴェントに足を運び、恐怖と興奮がうずめくフロアに立ち尽くした。長髪、黒ずくめの、まさに「棒人間」と呼びうる見てくれの男たちが、大音量でギターをぐわんぐわん鳴らしている。ヴォーカルは「人生一度きり(Jinsei Ichido Kiri )!!!」とシャウトする。そのすさまじい演奏に、酒もろくに飲めない僕は、生まれてはじめて酔うという感覚を覚えたのである。

僕のなかでプロレスの入場テーマ曲っていうのはバンド音楽の原体験でもあって、入場テーマ曲で知ったバンド挙げてくだけでも、ブラック・サバス、レッド・ツェッペリン、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、メタリカ......


Bo Ningen
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Bo Ningen with Damo Suzuki
Foreign Affair Confidential

So I Buried Records

では、まずはバンド結成の経緯を教えて下さい。

たいげん:たぶん2007年、5年前になるのかな? 僕は当時いろんなバンドを現地の外国人と組んでいて、イギリスにある日本系のイヴェントに出演することになったとき、たまたま対バンしたのが、こうへい君(ギター)で。彼は東雲オーケストラ(現在のDay and Buffaloの原型バンド)っていうバンドにいたんだけど、そのバンドに共通の知り合いのリカちゃんって子がいて、その子が紹介してくれて話したのが最初かな。当時は実験的な音楽っていうか、ノイズ・ミュージックとか、いわゆるエクスペリメンタル・ミュージックをまわりで聴いてる人たちがあんまりいなくて、そこでこうへい君も同じ状況だったみたいで。お互いの演奏も気に入ったし、そのイヴェント以降、単純に話したり、遊んでるうちに「じゃあ今度セッションしようか」っていう流れになって。

そのときはすでにBo Ningenとして活動していたんですか?

たいげん:その当時はまだBo Ningenとしては活動してなかった、でもBo Ningen名義でこうへい君と曲を作ってたりはしたのかな? それでまた全然違う経緯で、ある友人に日本からギターを持って帰って来れなかった奴がいるから、貸せるギター余ってない? って相談されて。そのギターを持って帰って来れなかったのがゆうき(ギター)だったっていう(笑)。僕パソコンとかでも当時ライヴしてたんだけど、たまたまゆうきがお客さんで来ていてくれてて、そこで話しかけてくれたんだけど、こうへい君とはまた別に今度はゆうきとセッションしようってなって、っで実際にゆうきとセッションとか、話し合いをしてるうちに、これはこうへい君と会わせたら面白いことになるんじゃないかって。

最初はそれぞれ別で活動していたんですね

たいげん:そう。で、最後がもんちゃん(ドラム)。もんちゃんは共通のSM女王様がいて......それでライヴに来てくれて、合うんじゃない? って、その後一回みんなでスタジオに入ってこれでしっくりきたから、じゃあこれで行こうっていう。

イギリスにある日本人のコミュニティもそれぞればらばらで、かつ日本の出身地も違うんですよね?

たいげん:うん、僕が東京で、ゆうきが兵庫でしょ、こうへい君は岐阜、もんちゃんは群馬だから日本でのバックグラウンドも違うし、ロンドンでのコミュニティも違ったから、バンドを組む前からの知り合いとかではなかったんだよね。

当時、メンバーのみなさんはアートスクールに通われてたんですよね?

たいげん:ゆうきはメディア系の学校で、こうへい君は僕が行ってたロンドン芸術大学内の違う大学でイラスト専攻。でも出会ったのは学校でというよりは、友だちの友だちって感じだったかな。メンバー募集とかもしてないし、だから本当に自然に成った感じで、そこはヘルシーというか。あとこれよく言われるんだけど、髪型と服装。各自好きなことをやってるだけなんだけど、どこか共通点はあるし、でもみんなわりかしばらばらでしょ? 単純に好きな格好してるだけで、髪もみんな長いのが好きだったのかなっていう。そういうのも含めていろいろとやっぱり自然な気がするよ。

たいげん君は高校を出て、イギリスに行くわけですが、当時なぜイギリスを選んだんですか?

たいげん:よくこっちでUKの音楽に興味があったんですか? って訊かれるんだけど、僕は正直現行のUKの音楽、たとえばガレージとか、ブリット・ポップとかまったく興味がなくって、いわゆる興味がなかったからこそ、アメリカよりかは暗いのかなっていう。明るい曲と、暗い曲なら暗い曲のほうが好きみたいな。それくらいの認識だったのかな? もちろんキング・クリムゾンとかレッド・ツェッペリンとかUKで好きなバンドはいっぱいいるよ。とくにクリムゾンは高校のときからコピバンするほど大好きだったんだけど、こっちの音楽学校でまわりがクリムゾンのこと全然知らなくて唖然として(笑)。僕とゆうきはわりかしUKに来た動機が似てて、まず日本の大学にあんまり興味がない→留学を視野に入れる→英語圏の国→当時アメリカの情勢が良くない、それで→UKっていう(笑)。

僕はアークティック・モンキーズなど、当時のインディ・ロックが大好きなんですが、たいげん君がイギリスのインディ・シーンに興味を持てなかった理由はなんでですか?

たいげん:なんでだろう? 個人的にインディという音楽にあまり興味がなかったのかも。マイナーという意味としても、反産業ロックという意味においても本当に姿勢や音楽的にインディだったバンドがいたのは90年代ぐらいまでなんじゃないのかな? 僕はプロレスが大好きで「インディ団体」の姿勢やプライドが好きだったから、音楽のインディ・シーンを見たときに強烈なこれじゃない感が......。

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自分のなかで英語で歌うって選択肢はなかったかな。単純に自分の表現として即興で歌詞を作ったりするときって、僕は歌詞をあらかじめ紙に書いたりしないから......


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〈ストールン・レコーディングス〉との契約の経緯はどういったものだったんですか?

たいげん:スクリーミング・ティー・パーティというバンドと仲が良くて、彼らつながりでストールンの人たちとは以前から知り合いで。最初はライヴに何回か来てくれたんだけど、まあ日本語で歌ってるし、音楽性もいまと少し違ったから契約するか迷ってたみたい(笑)。それでマネージメント的なところから手伝わせてくれない? って言われて。そのあとに回を重ねて向こうからちゃんと契約してEPとアルバム出さないか? って話がきた感じかな。だから「これもすごい自然だったね」っていうのは僕たちもよく言ってて、お互いのこと事前に知ってる状態だったからビジネスとしてだけじゃなくて気軽に何でも話せて、わりかし自由にやらせてくれる、でもしっかりと意見をくれるし真面目な事も真剣の話せる、という良い環境だと思うよ。

たいげん君の音楽的なルーツを辿ると、プロレスの曲が原点なんですよね? そこからどのように音楽を見いだしていったんですか?

たいげん:幼少期を振り返ってみると、たまに母親が部屋でギターを練習していて、聴こえてくるフォーク・ソングがうるさいなぁくらいに思ってて(笑)、音楽そのものというよりは何かに関連/付加してる音楽が好きで、例えばゲームだったりだとか、アニメだったりだとか、いわゆるサウンドトラックだよね。それで中学からプロレスに興味が出て、ゲームやアニメの音楽からプロレスの音楽に興味が移った感じかな。プロレスの入場テーマ曲ってバンドから打ち込み、ジャンルもバラバラで色々な音楽をジャンルに縛られずに自由に横断して聴けるのは今役に立ってるかも。ちなみに僕のなかでプロレスの入場テーマ曲っていうのはバンド音楽の原体験でもあって、入場テーマ曲で知ったバンド挙げてくだけでも、ブラック・サバスでしょ、レッド・ツェッペリン、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、メタリカ、ミッシェル・ガン・エレファント、パンテラもそうか、あとELPもワールドプロレスリング(新日本プロレスの中継番組)のテーマ曲だったり(笑)。

灰野(敬二)さんなどは海外に出てから知ったんですよね?

たいげん:うん。海外に出て、日本にいたときに知っていた日本のアンダーグラウンド・ミュージックとはまた違う、海外で評価が高い日本の音楽というのかな。灰野さんだったり、メルツバウだったり、ちなみにそのふたつはフィンランドで知ったんだよね。

メンバーのみなさんそれぞれが違う音楽観を持つなか、当初はどんなサウンドだったのでしょうか?

たいげん:最初はもっとフリーフォームだったかな。リフは決まってるけど、回数とか、構成とかはあんまり決まってなかったし、いまよりも即興だったりだとか、ノイズとかに近い感じだったね。

ノイズやいわゆるエクスペリメンタル・ミュージックには以前から興味はあったんですか?

たいげん:とくに初期はね。実験的なものって言ったらちょっと変だけど、冷静に自分たちの音がどう変化してきたっていうのを考え直してみると、僕以外はオリジナルの曲を演奏するバンド歴みたいなものが皆無だったのね、しかも僕もBo Ningenの前にやってたバンドはすべてベーシストとしての参加で、ヴォーカルとしてオリジナルのバンドをやるのはBo Ningenが初めてだった。こうへい君とかもちょこちょこ活動歴はあったんだけど、僕が初めて会ったとき彼はまだギター歴2年とかだったし、ゆうきもオリジナル・バンドはこれが初めてで、もんちゃんもしばらくオリジナルのバンドはやってない感じだったんだよね。だからまっさらな状態ではじめられて、だからこそ最初はもっとフリーフォームというか、自由に構成とかも決めずにとにかく音を出していたのは必然で、メンバーの技術的なこととか、経験とかいろんなことが重なってっていまの形になってってるのかなって、だから途中で方向転換しようって感じではなかったかな。とにかく全部ジャムから作ってるのもあるけど。

僕がBo Ningenの音源を初めてmy spaceで聴いたときに、リリックにも衝撃を受けたのですが、イギリスで活動していくうえで、日本語で歌う迷いなどはなかったのですか?

たいげん:迷いはなかったかな。もちろん不安はあったよ、どういう風に受け取られるんだとうって。でもその時点で自分のなかで英語で歌うって選択肢はなかったかな。単純に自分の表現として即興で歌詞を作ったりするときって、僕は歌詞をあらかじめ紙に書いたりしないから、思ったことを脳から考えることでの変換機能を通さずに口から出したくて。そうすると、もちろん日本語じゃないときもたまにあるんだけど、でもやっぱりなんだかんだで日本語になるんだよね。頭のなかで変換してる時間がないんですよ、英語に。

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自分たちの音楽を聴いてるお客さんに対して、自分たちはどういうモノに影響を受けたか、普段どういう音楽を聴いてるだとか、こういう音楽もおすすめだよっていうのは本当に発信していかなきゃいけないことだと思うの......


Bo Ningen
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以前「リリックなどのすべてのメロディを最初はサウンドとして消化する」と言っていたのを思い出したのですが、そういう自分の聴き方が、曲を書くうえで、たいげん君にどのような影響を与えているのでしょうか?

たいげん:いま冷静に考えてみると、歌詞を見ながらだと歌詞が先に入ってきて、歌詞がよいなと思って音に期待しても、実際に鳴ってる音と歌詞とのギャップを自分のなかで感じることが多かった気がする。最初に聴いた曲で、歌詞カードみなくてもひっかかる歌詞がある曲はひっかかるし、単純に聴いてピンとくるかどうかが問題な気がするしね。あとはプロレスの入場テーマ曲やゲーム/アニメのサントラってインストも多かったから(笑)。

たとえば「人生一度きり」というあのフレーズは、英語ではなく、日本語であるからこそ響くのかなと思うのですが、実際に現地の反応はどのようなものなんでしょうか?

たいげん:これはすごく面白いんだけど、これは本当にその通りで、外人のお客さんも歌詞の意味がわかんないけど感情的なところで入って来るっていうのはやっぱりあるみたいで、ライヴで見れば僕らの動きがもちろんあるわけで、歌詞がわからないからこそ感情的に、衝動というか、うちらが出してる音もそうだし、なんかいろいろ出てるじゃない? 音以外でも。それをもっとストレートに受け止めてもらえる感じがして、しかもライヴをやって反応を見てるうちにお客さんが「こういうこと歌ってるんでしょ?」とか自分のなかで解釈してくれて、それは言語がわからないからこそで100人いたら100人違う解釈で僕は良いと思ってるし、それでCD買ったときに対訳の歌詞カードに英訳があるわけじゃん? そこで「なるほど」って曲の世界感の認識が変わるのもまた面白いと思う、だからアドヴァンテージとして今いまは捉えてるね、日本語で歌うってことは。単純に僕が英語得意じゃないっていうのもあるけど(笑)。

Bo Ningenはある種、欧州っぽくもある反面、日本っぽくもあるというか、その逆も言えるのですが、そういうバランスみたいなものは、ロンドンで活動してるからこそ滲み出る音なのかなと正直に思うのですが、ロンドンで活動することはたいげん君にとってどのような影響を及ぼしていますか?

たいげん:活動してるからっていうのもあるし、日本で活動してる日本人より、日本の良いところ、悪いところ、例えばさっき出て来た、灰野さんだったり、メルツバウみたいな音楽をメインストリームだとか、サブカルだとか、そういうのをまったく抜きにして見れる環境があるからこその視点は絶対あるとは思ってる。その両方の視点っていうのは僕のなかですごい大事で、悪い例を言っちゃうと、日本人のバンドももちろんイギリスにちょこちょこいるわけで、だいたい音楽的に「ウッ......」っていう人は、日本の批判ばっかするわけ。日本の良いところも見えてなくて、そうなるとイギリスの良いところもちゃんと裸眼で見えてるかちょっと不安になっちゃう感じで、こっちの良さも勘違いしちゃってる人も多いのね、そういう意味では両方に良いところ、悪いところ、長所も、短所も、日本も、UKもやっぱりたくさんあるから、僕はその両方をちゃんと見据えるのが大事だと思ってて。
 あとUKのバンドと対バンして、なんかダサかっこいいというか、ダルいのがかっこいいみたいな姿勢のバンドを見る時に「あっ、これをやっちゃいけないんだ」だとか、「僕がかっこよくないと思うのはこういうところか」という風に反面教師的に影響を受けてるとも言えるかな。もちろんそれは日本のバンドに対してもあるよ、個人的にバンドで限って言えば、どちらかというと直接的に影響を受けてるのは日本のバンドのほうが多いのかな? でも日本で活動してなくて、UKのバンドからは反面教師として影響を受けてる......だからちょうど中間にいる感じなのかな?

ゆうきさんがよく「うちらはイギリスのバンドだから」と言ってる言葉の背景にはどのような意味があるのでしょうか?

たいげん:うちらみたいなバンドが本当に初期から日本で、ずっとアングラでやってたと仮定して考えてみると面白いかも。日本のシーンって一個一個すごいかっこいいと思うんだよね、超突き詰めてるし、ニッチで良いとこ攻めるしさ、しかも同じような音が多いでしょ、ひとつのシーンに。これは悪い意味でも、良い意味でもなんだけど、何系ってすごい好きじゃん、例えば高円寺系だとか、渋谷系だとか。シーンも近くてバンドの音も似てるからバンドもお互いに影響受け合うし、っていうところで、影響受け合う人がすごい近いところにある環境。それはストイックでかっこ良いんだけど、なんかちょっとそれぞれのシーンが閉鎖的な感じもするのね、影響受け合う人もそうだし、なんか同じところでしかまわっていないと言うか。
 もしうちらがまったく同じメンバーで、日本で初期からそういうところで活動してたら、多分まわりの日本のバンドと似たような音になってたかもしれない、っていうところでUKのバンドっていうのをゆうきは意識してるんだと思う。最近BBCのインタヴューで僕たちがチャーチ(教会)でやったライヴについて訊かれたのね、けっこう歴史がある教会だったんだけど、そういう場所で演奏することに対してのことを質問されて、うちらBo NingenはBo Ningenだけれども、その場所に100%支配されるわけでもなく、Bo Ningenがその場所を100%支配するわけでもなくて、でもBo Ningenは100%Bo Ningenだし、歴史があるそのチャーチは100%チャーチなわけ、そこでうまく合わせていく、Bo Ningenのなかでのその場所に対してのリスペクトというか、対応みたいなものがあって、あのライヴが生まれたと思うんだけど、なんかそういう場合ってけっこう、なんていうのかな、わりかし我が強いバンドって言ったら変だけど、プロパーなロック・バンド、例えばガンズ・アンド・ローゼズでもなんでもいいんだけど、彼らがチャーチでやったら絶対どっちかに飲み込まれると思うんだよね、どっちかが強くなりすぎてしまうというか、そういう意味で色々なシチュエーションや場所でやってきた自負はうちらはあるから、『Dazed and Confused』の創立記念ファッション・パーティだとか、ヴェネツィア・ビエンナーレのアート・イヴェントだったりだとか、V&AミュージアムでのYoji Yamamotoのイヴェントとか。そこでしかできないことやいつも通りではできない事があって、それでも100%Bo Ningen出さなきゃいけないっていう、そういう経験はUKだからこそ出来たっていうところは感じてるし、いろんな場所でプレイできて、いろんな業界やシーンをクロスオヴァー出来たのはロンドンで活動してるからってのは思ってるかな。

しかし、アンダーグラウンドなど、いまはアメリカのシーンに勢いがあると思うんですけど、敢えてイギリスを選ぶ理由や、日本を拠点にしない理由はなんでですか?

たいげん:僕は個人的に日本が大好きで、友だちからも日本が合ってるとよく言われるんだけど(笑)。前の質問でも触れたけど、日本にいないからこその日本人らしさや日本の良さをちゃんと見るためには、まだ日本に帰るのは早い気がする。アメリカは行ったことないから、実感がわかない。だから早く行ってライヴしてみたいな。これも前の質問と同じだけど、イギリスはシーンのクロスオーヴァーも盛んだし、ヨーロッパからいろいろな人やバンドが来たりと良い意味でも悪い意味でも混沌としてるから、音楽に留まらず、全体を見渡した時に表現、活動をする街としてはとても魅力的だよ。

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明らかにクラブのほうが得るものはデカイ。でもいまダブステップっていう言葉が一般的になって、少しチャラくなってるんだよね、ブローステップっていうのかな?


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僕はザ・ホラーズのファリスがインタヴューでBo Ningenを紹介しているのを見つけて初めて存在を知りました。彼らとの出会いはどのようなものだったのでしょうか?

たいげん:たしか最初はリースとドラムのジョーだったかな? 僕達がダモ鈴木(元カン)をサポートしたときに、彼らが見てくれてて。Bo Ningenはその日Damoさんの前座の演奏後に会場を移動して違う会場で演奏、ダブルヘッダーだったんだけど、彼らはメインのダモさんを見ずに僕たちを見にきてくれて。リースが2回目のライヴ後に話掛けてきて、「すげーよかった、ダモさん見ないで2回みちゃった。俺もバンドやってんだ」って、それで「なんてバンド?」って訊いたらホラーズって言われて(笑)。
 でも本当にUKはそういう感じで、お客さんも本当に幅広くて、なんかアーティストと、お客さん、業界っていうのが凄いクロスオヴァーする環境だと思う。もちろんうちらの音楽だとか、うちらの捉えられかたが普通のこっちのUKのバンドとはちょっと違うからという理由もあるとは思うのだけど、そういう環境っていうのは僕たちにとってすごいプラスになってると思うな。

つい先日まで行われていた、ザ・ホラーズとのツアーでBo Ningenとして何をいちばん感じましたか?

たいげん:それまでもフェスや、British Sea Powerのサポートで大きな会場でやる機会もあったけど今回は会場の規模がさらに大きくて。しかも1000~3000人規模の会場で毎日演奏できるのは、本当に刺激的だった。とくに最後のBrixton Academyは4000人ぐらい入る会場で、その日のライヴが終わった後、会場の規模とパフォーマンスの関係性みたいなモノを考えさせられたよ。これは教会やミュージアムでライヴするときにも似てるんだけど、会場が違うとパフォーマンスも変わるということと似てるんだけど、小さいライヴハウスでお客さんが目の前にいる場所とBrixton Academyみたいなところだと、舞台とTVぐらい違いがあると思うのね。そこで考えすぎることはないんだけど、熱量の出し方というか、大きな会場の遠くで見れるお客さんまで届かせるためにはどうしたらよいのかなとか。これは無視しちゃいけない問題だなと思った。僕は小さいライヴハウスも大好きだけど、もっともっと大きな会場でも演奏したいから、これはいまの僕がいちばん考えてるとこ。あと、会場によってはほとんどのお客さんがBo Ningenはもちろん、メインストリーム以外の音楽を聴いたことない若い子だったりなんてこともあったから、良い衝撃でもトラウマでも、なにかしら残せた自負はある。ライヴ後にツイッター見てみると「Most Scariest Band ever seen(いままでで一番恐怖を覚えたバンド)」とか、「いま見たものをなんて言えば良いのかわからない......」みたいな意見があったりして(笑)、かと思えば「いま一番好きなバンドになった!」とか「本当にすごかった!こんなのはじめてだよ!」とか、直接的に褒めてくれる人もいたりして嬉しかったな。

ザ・ホラーズにも似たようなことを強く感じていて、音からもそうなのですが、自分たちが影響を受けてきたものを僕らリスナーにしっかり提示している気がします、そういう目的意識は持っていますか?

たいげん:僕たちもそういう影響力があるバンドに成りたいと思ってて、自分の趣味を押しつけるわけではないんだけども、まあいまは昔とは違うんだけどね、いわゆるメディアとかの影響力は少しなくなってきてるじゃない、まあこれちょっとメディアのインタヴューで言うのもどうかと思うけど(笑)、まあメインストリームのメディアっていう意味だけど。いまって流行りっていうものを作れなくなってきてるじゃない? だからこそメインのメディアで取り上げられないようなバンドが口コミで注目されるようになったり、いままで以上にリスナー個人個人が自分で好きな音楽を見つけたり、そういうのって絶対強いし、それって健全なシーンの作り方だと思うのね、そういうなかでバンドが教育っていったらあれだけど、自分たちの音楽を聴いてるお客さんに対して、自分たちはどういうモノに影響を受けたか、普段どういう音楽を聴いてるだとか、こういう音楽もおすすめだよっていうのは本当に発信していかなきゃいけないことだと思うの、というか僕はしていきたいことなわけで、国民性とかももちろんあるとは思うんだけど、でもこういうのってバンドが発信していくことだと思うのね、自分たちがお客さんに対して自分たちの音楽しか聴かせないか、それとも自分たちはこういうものも聴いてるんだよってところで発信してゆくか、とくに日本のお客さんはシーンやジャンルでの好き嫌いがはっきりしてる人が多い気がするから、バンドが発信していくことでお客さんの音楽を含めたいろいろな興味の幅が広がって、みんながオープンな考え方になれれば最高だよね。それは発信してゆく音楽性とか、パフォーマンスとかにもそういうのは出るから。

以前TEETHというバンドのインタヴューで、イギリスのレーべルの話になったときに、彼らはイギリスのバンドというよりも、いわゆるインディ・レーべルがいまのイギリスのシーンにとって良くないと言っていました。僕個人として、イギリスも僕らが見えないところで実は面白いことが起きてるんじゃないかと思っていて、アメリカよりも勢いがないと思われてる現状があるなか、そういう部分はフックアップしたいと思ってるのですが、実際のところズバリどうなんですか?

たいげん:僕たちが所属してるストールも規模で言えばインデ・レーベルで、うちらが契約してすぐのときはいまよりもう少しインディ系のバンドが多いレーべルだったんだけど、現在はハープの弾き語りのアーティストがいたり、もっとポップ寄りのバンドがいたり、日本語で歌ってる僕達がいたり、結構所属アーティストが多様化してるイメージだね。それで全体のシーンについてだけど、この流れでこんなこと僕も言いたくないんだけど、正直バンド関係の音楽シーンで面白いところ、すぐには思いつかないかも。

ではバンドから切り離して考えて、シーンのなかでいちばん勢いのあるものはなんですか?

たいげん:僕が最近すごく思うのは、明らかにクラブのほうが得るものはデカイ  でもいまダブステップっていう言葉が一般的になって、少しチャラくなってるんだよね、ブローステップっていうのかな? ダブステップが出て来たときって、各自いろんな音楽からダブステップに変わっていくアーティストが増えて、たとえばブレイクコアとか、テクノであったりだとか、ガレージであったり、2ステップであったり、ノイズとかね、違うバックグラウンドの人がダブステップというか、低音を強調した音楽を出しはじめてもともとダブステップになったわけで、そうするとみんな楽曲にバックグラウンドが出るんだよね、僕はゴス・トラッドさんがすごい好きなのは、彼のバックグラウンドがよく出てるからで、ノイズであったり、2ステップであったり、ダブ、ドラムンだとかね、そのバランス感覚がすご好きで、しかも日本人だから純血UKのベース・ミュージックと比べるといっそう個性的で。ゴスさんは日本人だけど、わりとダブステップ創世記からいた人でもあるしね。
 でもいま流行ってるダブステップ、ブローステップってまったくバックグラウンドがない気がするのね、自分のルーツをうまく音楽に落とし込めてない気がして。でも、わりかし新しい人でもちゃんとストイックに作ってる人たちもやっぱりいて、特にイギリスのクラブシーンって黒人の移民も多くて、それがダブとかダブステップが生まれる原因にもなったんだけど、単純にクラブのサウンドシステムだとかが日本とまったく違うんだよね、本当に体感系なのよ、僕もそれで低音の概念相当変わったし、自分が信用してるDJやサウンドシステムがいるクラブに行ったほうがライヴハウスとかに比べて断然得るものは多いかな。確かジェームズ・ブレイクとかもその畑出身なんだよね? だからそういうところでの活性化は単純に良いよね、彼もメインに出て来てるし。

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ゴス・トラッドさんがすごい好きなのは、彼のバックグラウンドがよく出てるからで、ノイズであったり、2ステップであったり、ダブ、ドラムンだとかね、そのバランス感覚が凄い好きで、しかも日本人だから純血UKのベースミュージックと比べると一層個性的で。


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ele-kingが選ぶ、2011年のアルバムランキングではジェームズ・ブレイクが1位でした。彼についてどう思いますか?

たいげん:個人的に声とかは好みじゃないけど、すごい斬新だし、実験的なところをポップ・ミュージックに突っ込んでるところとかすごい良いなとは思ったけどね。アプローチも面白いし、ああいうのがメインのところで評価されるのはやっぱり良いことだよね。

これはイギリスに限定せず答えて欲しいのですが、現在のシーンで、自分たちと似たようなメンタリティを持っているアーティストっていますか?

たいげん:ももいろクローバーZとでんぱ組.inc! ももクロは僕の音楽の拘りから生まれてたJ-POPやアイドルへの嫌悪や偏見を一掃してくれたと同時に、音楽やライヴ・パフォーマンスに対する姿勢や本気度や全力性に関してはそこらのバンドとは次元が違うというか、もの凄すごいシンパシーを感じます。あと高校生ぐらいの年頃特有の、青春の爆発力や真っ直ぐな姿勢を見てると、自分がなくした感情を思い出したり、自分がライヴでガス欠になったときにブースターになったりする。対してでんぱ組は、ももクロより少しだけ年齢層が高いから僕たちと同じ目線というか、一緒にタイムマシンに乗って失った青春を謳歌しよう! という爆発力がある。対談や対バン、ライヴでのコラボを通して、清秋を拗らせた感じとか、だからこその全力性とか、シーンの壁を壊す姿勢だったりとか、いろいろとシンパシーを感じることが多くて。アイドルに興味がない他のメンバーも競演ライヴ後、凄い良い感触だったみたいで「同志だ」って言ってました(笑)、僕もライヴ後に「これが一生の思い出ってやつか......」って思うぐらい感動したしね。

先ほど体感という言葉が出てきましたが、僕のなかでBo Ningenのライヴもまさに体感で、いろんな人に是非この感覚を味わって貰いたいのですが、ライヴに関して意識していることや、考えることはありますか?

たいげん:僕、灰野さんのライヴを初めて見たときに泣いてしまったわけですよ、ツーって涙が出るというより、座り込んでボロボロ涙が止まらなくて。なんか浄化というか、体のなかから毒が出たみたいな感覚があって、その経験が僕のなかですご大きくて、演奏する側になったいまでも、その感覚は忘れないよいにしてるし、良いライヴをしたなと思うときは自分で自分が浄化できた感覚になるよ。他にも演奏側が動かなかったらお客さんも動かないっていうこともあるし、自分がそういう精神状態というか、自分も楽しんでなきゃいけないし、自分もいつも新鮮じゃないといけないし、自分も表現できてないといけないし、やっぱりそれができてると自分の心にもうまく左右するわけで、自分がしっかりしてないとお客さんもそれは感じてくれないから、自分もうまくいけばそれは絶対お客さんにも伝わるものだと思ってるから。
 だから100%自分の為にやってるわけでもないし、100%お客さんのためにやってるわけでもないから、そのバランス? でもやっぱり根底では自分が良い音だしてなきゃいけない、自分が気持ちよくなきゃいけない、新鮮じゃなきゃいけない、自分自身が浄化できてるか? それでなにより僕は、他のアーティストのライヴで一番萎えるのは、さっきはダブステップで、バックグラウンドが見えないとか言ってたけど、インフルエンスが出過ぎてるのも萎えちゃうのね、「この人になりたいんだな」っていうのが見えてしまうと、自分のフィルターうまく通してやってればいいんだけど。
 僕は逆に、いかにステージで自分になれるか、いかに自分に嘘をつかないか、っていうところを突き詰めてやってるよ、やっぱりそれが自分が一番力を出せることだし。だからって自分の好きなものからまったく吸収しないわけじゃなくて、自分のなかの自分で何かをいろいろ吸収して、Bo Ningenとか、たいげん かわべというフィルターを通って外に出したものを、お客さんは見に来てるわけだから、そういうインフルエンスっていうのは、雑誌とか、こういうインタヴューで、こういう音楽が面白いとか、おすすめですって提示していけばいい話で、自分たちのステージはやっぱりいかに自分たちであるかというのが大事かな。
 あとライヴって非日常だから、いまこうやって喋ってる自分も素だし、ステージにいる自分も素だし、いまは日常で、ステージが非日常っていうのはお客さんも一緒だし、シュールレアリズムも含めて僕は非日常ってものにすごくどきどきするし、魅力を感じるから、ちょっと抽象的だけど、そういうところは出していきたいかな。非日常だからこその体験だし、でもそれはお客さんがいかに感じれるかって、うちらがどう感じてるかと同じだと思うんだよね、演奏してる側が少しでもつまんねなーとか感じてたら絶対お客さんに通じると思うんだよねそれって、だからこそうちらは毎回セットリストとかは変えてて、会場の雰囲気とか合わせるのもあって直前まで決めないことのほうが多いね。

Bo Ningenのライヴ・パフォーマンスとしての可能性についてはどう考えますか?

たいげん:ライヴってジャンルを超えれるパワーがあるし、頭通さなくてわかるものはわかるというか、よくうちらのライヴ見てくれたお客さんの感想で、5感、6感全部使うっていう話をよく聞いて、ライヴ見ることを体験と捉えてくれることによって音源じゃ伝わらない部分まで伝わると思うんだよね、そこはBo Ningenだからこそっていう意識はあるし、捉え方は人それぞれだと思うんだけど、可能性を広げるというか、見てくれてる人の幅というか、ジャンルとか、年齢層とか幅が広がれば広がるほど感じ方もそれぞれ何100通りもわかれると思うから、見に来てくれた人の分だけ違う受け取り方があるわけだよね? 何かそれ自体が可能性って気はするよね。どういう可能性があるっていうよりかはどんだけいろんな可能性を増やせるかって可能性(笑)? っていうのかな。

なるほど、では最後にセカンド・アルバムについての現在の制作状況を教えてください。

たいげん:楽器とヴォーカルの録音はすべて終わっていて、いま僕がミックス作業をしているところだよ。

ありがとうございました。メンバーの皆さんに感謝です1

 今回のインタヴューで彼らに興味を持った方は、今夏の来日公演に是非足を運んで欲しい。7月20日の東京は高円寺 UFO CLUBを皮切りに、22日 仙台 CLUB SHAFT、8月3日 大阪 FANDANGO、4日 名古屋 アポロシアター、5日 金沢テトラポット、6日 京都 METRO、そして最終日には東京に戻り、代官山UNITでの来日公演を予定している。


Biography
Bo Ningen(棒人間)は、イギリスの〈Stolen Recordings〉に所属する日本人4人組で、2009年に限定リリースしたEP『Koroshitai Kimochi』でデビュー。昨年には国内版アルバム『Bo ningen ボー・ニンゲン(棒人間)』と、EP『Henkan』をリリース。ライヴ・パフォーマンスは国境を超え、見る人すべてを虜にし、脳髄に衝撃を与える。今年はザ・ホラーズともにツアーをまわる。最近はダモ鈴木とのコラボレーション・アルバム『Foreign Affair Confidential 』を発表したばかり。この夏には再来日公演が決まっている。


Distal - ele-king

 ブローステップ人気がアンダーグラウンドの闘志に火を付けてしまった。スウィンドルの「ドゥ・ザ・ジャズ」を聴いていると、それを確信する。力強いビート。さわやかでもなければ夏のかおりもしないが、生をがむしゃらに生きている感覚がある。アンダーグラウンド・ミュージックのヴァイタリティがみなぎっている。

 〈テクトニック〉レーベルは、ブリストルにおけるダブステップの拠点だ。このレーベルは、三田格にとっては唯一気になるダブステップだったという「Qawwali」を2006年にリリースしているピンチが運営していて、テクノとダブステップを結びつけた2562の諸作をはじめ、ジョーカーとフライング・ロータスとのスプリット盤など、他にも何枚かのヒット作を出している。最近は『テクトニック・プレーツ・ヴォリューム3』というタイトルで、レーベルにとって早くも3枚目となるコンピレーションを出しているが、あらためてアンダーグラウンド性を強調する内容だった。媚びずに自分たちの好きなことをやろうと、これはレイヴ~ジャングル~テクノ~ディープ・ハウスから綿々と受け継がれているイギリスの音楽シーンの素晴らしい一面である。去る6月に来日したヤングスタ(ダブステップのオリジナル世代のDJ)もそうだった。ドミューンで彼に「最後にひと言」とマイクを向けたら、それまで酔って、騒いで、ふざけていた態度を一変させ、真顔になって「オレはこれからもアンダーグラウンドで居続けるよ」と言った。
 アンダーグラウンドとは、いまだ理解していない人が多いのだが、排他的なマイナー主義なんかのことではない。言い換えれば、音楽がもたらす自由な公共空間のことだ。その空間において音楽は生き物ののように、つねに変化している。シカゴのフットワーク/ジュークのような新しい刺激もアンダーグラウンドの心意気に拍車をかけている。ディスタルのデビュー・アルバム『シヴィリゼイション』もアンダーグラウンド・ミュージックを拡張する1枚である。

 大学で聴覚現象の研究をしていたアトランタ出身の彼は、最初はハードコアやブレイクコアをまわすDJだったというが、2007年にピンチが〈プラネット・ミュー〉から出した「パニッシャー」に感動を覚え、スタジオに入った。2010年の初頭には自身のレーベル〈エンバシー・レコーディングス〉をはじめているが、その年には〈ソウルジャズ〉からのベース・ミュージックのコンピレーション・アルバム『フューチャー・ベース』にも1曲収録されている。
 注目度の高かった『フューチャー・ベース』によって、ディスタルのヨーロッパでの評価は上がった。この1~2年、彼の雑食性の高いユニークなビートは〈テクトニック〉ほかオランダの〈チューブ10〉などのレーベルからシングルとなっている。2012年に入ってからはDJラシャド(シカゴのジュークにおける重要アーティスト)をフィーチャーした「Stuck Up Money」が話題になっている。

 『シヴィリゼイション』はサグ・ステップと形容されているらしい。可愛らしいアートワークと彼のバイオを見る限り、とても"サグ"なヤツには思えないけれど、ダーティ・サウスが混じっているがゆえにそう呼ばれている。実際の内容はどこか特定のシーンの顔色をうかがうようなこともなく、実に雑多で、ジューク風の声ネタもあれば、アシッド・ハウス風の展開、ハードでグライムなのりもある。奇怪なダンスホール・スタイルもある。デリック・メイが好みそうなラテン・パーカッションも出てくるが、チョップド・ヴォイスが入って新種のゲットー・テックが暴れ出す。とにかく、いろいろやっているが、ディスタルは自分が進むべき方向、歩むべき道をわかっている。"文明"......というアルバム・タイトルはいまの我々にはちと重たいかもしれないが、どうかご安心を。この音楽は文明の本当に良い場所から生まれている。

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