Home > Interviews > interview with STRANGE REITARO TRAVEL SWING ORCHESTRA - 酔っぱらい楽団
「ソウルは人に訴える。シンプルだが、特別なインパクトがある。人間の裸の心が発する声だ。楽しいだけじゃない。がっちりとタマを掴んで、高みへ引き上げてくれる」
映画『ザ・コミットメンツ』より
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 桜富士山 Pヴァイン |
羽目を外すときが来た。夕方の5時前だが、けっこう良い感じに酔っている。取材のテーブルの上には空き缶、ワイン、お菓子......トラベルスイング楽団 のメンバーのうち8人が並んでいる。取材どころではない。宴会だ。
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団にはそうした飲み会的な寛容さがある(笑)。いまどき珍しい酒臭いソウル・ミュージック......ないしは歌謡PUBロックである。この時代に11人とか600人とか、時代に逆行するかのような、大人数のバンド編成も、良い。こうしたバンドのあり方自体がひとつの態度表明になっている。
アラン・パーカーの映画『ザ・コミットメンツ』を思い出す。どんな人間もやっかいで、クセがあり、短所があり、弱さがあり、他人との齟齬を生む......が、ソウル・ミュージックによってそれを乗り越える(あの映画の「アイルランド人はヨーロッパのなかの黒人だ。だから胸を張って俺たちは黒人だと言え」は名言)。奇妙礼太郎トラベルスイング楽団の魅力もそれに尽きる。飾り気のない、人生に要領を得ない人たちが集まって、ステージに上がっているときだけは、ビシッと素晴らしい演奏を聞かせる。多くの人は、ビールを片手に踊りたくなるだろう。80年代の松田聖子のメロドラマでさえも、彼らにかかるとソウルフルな光沢を発するのである。
いずれにしても、夜を奪われた大阪から実に賑やかなバンドがやって来た。彼らのセカンド・アルバム『桜富士山』は、これからはじまるロマンティックな夏の宴の音楽である。
名乗ってました! 出だしから。ナイアガラ礼太郎と......。世界一デカいとされている滝で。どうせ滝になるならナイアガラになりたいと。おばあちゃんの遺言で。
■まずは自己紹介を......。
奇妙礼太郎(以下奇妙):こんばんは、奇妙礼太郎です! イエーイ!
(拍手起こる)
PEPE安田(以下安田):ベースの安田です。よろしくでーす。
まいこ:サックスのまいこです。
手島幸治:僕ドラムの手島です。
キツネうどん:パーカッションのハマダです。
塩見哲夫:ギターのシオミです。
田中ゆうじ:サックスの田中です。
山藤卓実:トランペットの山藤(サントウ)です。
■じゃ、ビールでも。ぷしゅ。お疲れ様でしたー。
奇妙:ぷしゅ。よろしくお願いしまーす。
(乾杯)
■いつもこんなノリなんですか?
奇妙:はい。
田中:ライヴ前後とかはこんなノリです。
■あのね、奇妙さん。
奇妙:はい。
■本日いらしてるのは8人ですよね。で、11人以上いるとのことですが、正式な人数っていうのは何人ですか?
奇妙:600人ぐらいですかねえ......。
一同:はははは!
■じゃあ中心になってるのは(笑)?
奇妙:まあ中心ぐらいになってるのは......まあこのひとですかねえ。
手島:僕だけってことすか!?
キツネうどん:まあ12、3人はいるんじゃないですか。ローテーションで。
奇妙:マジメか!
■基本的に、メンバーを集めたのは奇妙さん?
キツネうどん:安田さん。
安田:はい。
奇妙:僕が目を閉じていたら......こういう感じで。
安田:集まってきたんや? 指触ったやつがメンバーになったような。
奇妙:すごいここにね、月の光がこう......。
一同:だははは(笑)。
手島:スイッチが入っているんで、比較的に無視していただいて大丈夫なんで。
■いやいや(笑)。じゃあ安田さん、そもそもバンドはどういう風にはじまったか、基本的な質問で申し訳ないんですけど教えてください。
安田:それ奇妙くん言ってみて。
奇妙:まいこが安田くんを産んだときの話をしないと。
安田:まあそういうことですね。
■ああー、まいこさんから安田さんが産まれて。
安田:はい、産まれて。
奇妙:ビートがはじまって。ト、ト、ト、ト......。
安田:ト、ト、ト、ト......。
手島:それ木魚っすよね(笑)? 死んだときっすよね?
■ははははは。安田さん、最初はまいこさんから産まれたとして――。
奇妙:途中ギバちゃんになって。90年代前半にギバちゃんになってー。
手島:はははは!
安田:なってからの?
■これだけ人数が多いから、居酒屋入るのも大変じゃないですか?
奇妙:それはマジ大変です。
■席ないでしょ、だって。
奇妙:席基本5、5で分かれて、休んでるやつの悪口言うっていう。休んでるやつのプレイに対して悪口を言うっていう。
(一同笑)
安田:ドキドキしかせーへんな。
奇妙:まあ俺がいちばんドキドキしてる。
■とにかく、安田さんと奇妙さんの出会いがはじまりなんですね。
奇妙:あれ? なんでわかったん!?
一同:はははははは!
奇妙:出会い系サイトで。
安田:最終的にはね。
■そのときから奇妙礼太郎を名乗ってたんですか?
奇妙:名乗ってました! 出だしから。
■なぜそんな名前を?
奇妙:ナイアガラ礼太郎と......。
安田:デカいのいきましたね。
奇妙:世界一デカいとされている滝で。どうせ滝になるならナイアガラになりたいと。おばあちゃんの遺言で。
塩見:でも名前の由来言ってたじゃないすか。ほら。
奇妙:あれ、コンペイトウついてますけど。
塩見:タトゥーですよ。
奇妙:タトゥー!!
(一同笑)
田中:すいません、続けましょう。
■いやいや、いいですよ。逆にこれもひとつのプロモーションになる......かもしれない。じゃあ、トラベルスイング楽団は大阪だから生まれたバンドだと思います?
奇妙:ああ、まあそうっすねえ。
■大阪っぽいなって自分たちで思います?
安田:そんな思ってない。
■そんなに思ってない、そこは?
奇妙:まあ生粋の大阪人のまいこちゃんが。
まいこ:ぜんぜん違うやん。
安田:コテコテやでー。
奇妙:もうかりまっかー。
安田:ボチボチでんなー。
奇妙:奄美大島出身で。
■松村正人と同じですね。
奇妙:完全に外人や(笑)。
(一同笑)
奇妙:お前登戸住んでるやん。いろいろおかしいやん。
■えっ登戸住んでるんですか!? 俺わりと近くですよ、じゃあ。
田中:登戸ですね。近いですね。
奇妙:これ飲みナカナ発見じゃないんで。飲みナカナって言ってもーた(笑)。
■じゃあバンドのためにわざわざ。
塩見:急に来よったんです。
■急に来たんだ?
田中:そうなんです。
奇妙:もういっこ田中がやってるLa Turboっていうバンドのヴォーカルのひとがすごいべっぴんさんで僕好きやったんですけど。東京に引っ越すっていうんで、「お前もちろん来るやんな?」って言われて。
田中:元々大阪のバンドなんです。いまは東京に。
安田:なんでそこは本当のこと言うん?
取材:野田 努(2012年7月13日)