「E E」と一致するもの

SEKITOVA - ele-king

Sekitova - Premature Moon And The Shooting Star
Zamstak

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 ele-kingの創刊は1995年1月、編集部を作ったのは1994年の秋、初めて友だちとクラブ・イヴェントを企画したのが1993年で、当時の僕はターゲットとする読者やオーディエンスの年齢層を訊かれたらはっきり「17歳」と答えていた。17歳に読んで、聴いて欲しい。企画書にもそう書いた。17歳、セックス・ピストルズの曲名にもあるし、大江健三郎の短編にも「セブンティーン」がある。
 セキトバは、昨年、17歳にしてデビュー・アルバム『PREMATURE MOON AND THE SHOOTING STAR』を発表したDJ/プロデューサーである。「1995年生まれの高校生トラックメイカー兼DJ」として騒がれてしまったようだが、彼のバイオを知らなくても、いや、知らないほうがむしろ『PREMATURE MOON~』を素直に楽しめるんじゃないかと思う。スムーズなグルーヴも心地よいが、繊細なメロディ、アトモスフェリックな音響の加減も魅力的で、デトロイトのジョン・ベルトラン風の優しいアンビエント・テイストもあれば、クルーダー&ドーフマイスター風のダウンテンポからスクリュー、お茶目な遊び心もある。その多彩な曲調、お洒落さ、そしてバランスの良さを考えると、ホントに17歳なのかと信じられない。が、彼は間違いなく、日本のクラブ文化の未来の明るい星のひとつなのだ。
 元旦生まれなので、数日前に18歳になったばかりのセキトバへのメール取材である。


何歳から、どのようなきっかけでハウス・ミュージックを作っているんですか?

SEKITOVA:はじめてDTMを触ったのが14歳の頃なんですけど、その頃はテクノやハウスよりもエレクトロをよりたくさん作っていました。理由は「ディストーションをかけるだけでなんかそれっぽい音が出たから」っていう安直なものなんですけれど。逆にテクノやハウスなんかは音をつくるのがとても難しかったので僕にはなかなかつくれませんでした......。当時はちょうどDigitalismやJunkie XL、Justiceなんかが情報として得やすかったのでそこからエレクトロやその周辺の影響を受けたということもありますね。
 年月を重ねるうちに技術があがってきて、自分のやりたいことが徐々に思い通りに出来るようになってきたので、じゃあ自分のやりたかったことをやってみようって意気込みで始めたのが現在のスタイルです。

子供の頃、ピアノなど、楽器を習っていたんですか?

SEKITOVA:4歳か5歳の頃から10歳の辺りまでまさにピアノを習っていましたが不真面目すぎてまったく上達しませんでした。当時は音楽よりサッカーに夢中で、ピアノ=女々しいと思っていたくらいですし。
 そこからは楽器を習ったりすることだとかは今日までまったくないですね。ただ学校でたまにあった民族音楽を聴く授業はとても好きでした。東南アジアやアフリカのダンサンブルなものがとくに好きで間違いなくいまの僕はそこから影響を受けている部分があります。

たくさんの音楽を聴いているようですが、ご両親からの影響ですか?

SEKITOVA:両親のほかに母方の祖父がジャズの好事家だったり、トラック制作をはじめた頃知り合った人たちにとてもライブラリがあったり周りからの影響はとても強いと思います。
 中学の頃には友だちの母親から立花ハジメやkyoto jazz massiveだとかのCDを貸してもらったりしてました。昔から音楽だけに限らずなにかと大人と接する機会が多かったわけです。
 またインターネットの発達で、年代や距離の障壁がより薄くなっていたことも大きな要因の一つですね。なにせいまはとても簡単にレアトラックにアクセスできる時代ですから。
 あ、もちろんテクノディフィニティヴも買いましたよ!

あ、ありがとうございます! 機材は何を使っているんですか?

SEKITOVA:けっこう驚かれるのですが、GaragebandというDAW(DTM)をつかっています。iMacに最初から入っているソフトウェアで、手軽に遊び始めてからずっとこれですね。最近ではほかの有料DAWも色々使ってみたりしたのですが中々慣れなくて・・・。
Garagebandをシーケンサーとして利用してそこに様々なプラグインやソフトシンセを導入する形でやっています。ハード機材が一切ないので2013年はまずMIDIキーボードを入手するところから始めたいです。

DTMはどうやって学びました?

SEKITOVA:「曲を作ってるうちに出来るようになっていく」というパターンがいちばん多いですね。どうしてもわからないときはインターネットの知恵を借りたりもしますが基本的に面倒くさがりなのでDTM上でだらだらしながら解決策を探す感じです。たまに○○が上手だなんて言われたりもするんですが僕自身技術なんてほとんど勉強したことがないので褒められても言われてる本人はよくわからなかったりします。

レコードとCDではどちらが好きですか?

SEKITOVA:どちらもいいところがあるので難しいですね......。というかあまり対立させるものでもないのでは、と思ったりもします(あるいはもう対立させて語ってもしょうがないのでは、という考え)。
 レコードはやっぱりかっこいいです。よく音質を語る際に「レコードの音には温かみが~~~」なんて言われますが、視覚的にもけっこう温度を持っていると思います。アナログDJの動作なんかはそれだけでヴィジュアライザ要素を果たしてしまうくらいにかっこいいです。
 CDは取り扱いの手軽さが良いですね。手軽ゆえにいろいろ工夫が出来たりして、それを考えるのも楽しいです。レコードショップのドッシリ感も好きなのですが、CDショップでたくさんのCDがズラッと無機質に並んでいるのもテクノ感があって素敵です。

少し前、20代前半の連中に取材したとき、テクノに興味持ってクラブに行っても「30過ぎたおっさんとおばさんしかいなかった」と言われたことがありました。欧米では若年層がメインですが、日本では違います。だから、もし自分がいま20歳前後だったら同じことを思ったかなーと思います。逆に言えばセキトバ君のような若い人がよくテクノを作っているなーと思ったんですが、この音楽のどこが魅力だったんですか? セキトバ君にとってのハウスやテクノの魅力をがんがんに語って下さい!

SEKITOVA:そもそもの話になっちゃうんですけど、僕はテクノをつくってるつもりなんです。DJをするときも作った曲にもどこかしら「ハウス」の文字が入ってしまう僕ですが、ハウスのなかにとてもテクノを感じる曲が好きだし、自分で作るときにも常に頭のなかにはテクノへの憧れと尊敬があります。だから、音的にはハウスかもしれないし、どちらかに言いきっちゃうならばハウスなんですけど、実際ハウスを作っているつもりっていうのはあまりないんです。
 僕が好きなテクノっていうのはその曲やアーティストの思想や哲学をついつい深読みしたくなってしまうようなもので、その思想や哲学を理性で考えさせてくれるのではなく、もっと直感的なところで感じさせてくれるものです。

自分と同世代の人たちにもハウスやテクノを聴いて欲しいと思いますか?

SEKITOVA:常々思っています。

セキトバ君の世代では、たぶん、洋楽を聴いている子すら少ないと思うのですが、音楽の趣味が合う人はいますか?

SEKITOVA:お察しの通り、同じ年代のDJやアーティストでもなかなか僕の好きなテクノ、ハウスについて一緒に同じ価値観から一晩明かせるような人はいないですね。当然学校にもまったくいないです。僕はポップスやほかのジャンルの音楽にあまり抵抗はないので、こちらから話を合わせることはできるし、話に困ったりすることってそんなにないんですけど、やっぱり自分のいちばん好きなところの話をもっと同世代としていきたいです。

自分と同世代や自分に近い世代の音楽って、どんなイメージを持っています?

SEKITOVA:これは難しい質問......。というのも音楽を聴くときにあまり年齢を気にして聴いたりはしない(文脈を踏まえて聴く時には勿論必要な情報にはなってきますけど)ので、イメージって言うイメージが特にないんですよね......。
 基本的に僕らの世代はもう時代やジャンル関係なくいろんな音楽を聴ける環境なので、いろんなルーツを持ってる人がいて面白いなぁとは思います。

DJはどういう場所でやっているんですか?

SEKITOVA:すごく真面目に答えるなら風営法をなぞりながら「そもそもクラブとはなにか」ってところから説明をしないといけないのですが、長くなるので、まず先に省略して答えるなら「DJセットがあって、それなりに音が出るところ」ですね。大阪や関西もそうですが、東京でプレイする機会もそれなりにあって、月に一回とかそのくらいのペースで東京に出てきています。現場でDJをやる前はよくustreamなどインターネットでもやっていました。

IDチェックがあるようなクラブに行けない年齢なわけですが、ハウスやテクノで踊るのも好きなんですよね? 

SEKITOVA:むしろそれがいちばん好きです。

ダブステップ以降のベース・ミュージックだは好きになれなかったんですか? 

SEKITOVA:詳しくはないですけど、けっこう聴いたりしますし、嫌いではないです。好きな曲もいっぱいありますよ。ただ長時間聴くのはやっぱり辛いですね。

とくに影響を受けたDJ /プロデューサーがいたら教えてください。

SEKITOVA:Dave DK、Kink、Tigerskin、Robag Wruhme、Christopher Rau、ADA、Henrik Schwarz
 ほかにもたくさんいるんですけど、いつも必ず頭に出てくるのは彼らです。

80年代や90年代に対する憧れはありますか?

SEKITOVA:これは説明が難しいんですけど、懐古主義的、再興的な意味での憧れは全然ないんです。あくまで自分の理想のサウンドを追求する過程で90年代や80年代の環境や音や世界観が必要になってくるって感じで。だから「80年代や90年代あるいはそれ以前に残されたもの」に憧れはあっても、時代そのものにはあまり憧れはないです。これから後世に憧れられるような時代を僕が作っていけたら素晴らしいですね。

IDMやエレクトロニカにいかなかったのは、やっぱりダンス・ミュージックが好きだからですか?

SEKITOVA:そんなことないですよ、って思ったけれど、やっぱりそうかも知れないですね。もちろんエレクトロニカもすきですが、それ以上にダンス・ミュージックが好きです。エレクトロニカのような技術をもってダンス・ミュージックのなかに分解再構築が出来ればまた理想のサウンドに一歩近づくので、そう言う意味ではこれからもどんどん制作手法としてIDMやエレクトロニカの研究は続けていきたいです。

テクノ以外でよく聴く音楽、これから追求してみたい音楽ってありますか?

SEKITOVA:もっと漠然に「趣味」として最近はヒップホップとか、そういう音楽に興味を持っています。仲の良い知り合いにbanvoxってエレクトロのアーティストがいるんですが、彼がとてもヒップホップに詳しくて、そこから情報をいつも得ています。もちろん音楽としても僕の好きなアーティストもBPMが遅くなっていく過程でヒップホップの要素を入れていったり、もともとヒップホップ上がりだったりなんて事もよくある話になってきたので、これからどんどん聴いていきたいです。

やっぱマルチネ・レコーズの存在は大きかったですか?

SEKITOVA:とても大きいですね。明確な目標のひとつとしても、自分のなかでのトピックとしても、計り知れない大きさがあります。マルチネのサウンドって手広いようで絞られていて、僕がそのなかにいるかどうかって言うと微妙な話なんですが、そのどれもがいろいろな方向に手を伸ばしていて、なおかつ一定以上のクオリティがあってとても影響をうけています。マルチネ主宰のtomadさんなんかはいつも次の一手が気になる存在だし、彼からも大きな影響を受けていますね。

自分の作った音楽を同級生に聴かせることはありますか? その場合、どんな反応がありますか?

SEKITOVA:限定して言えば、むしろはじめは僕の曲を聴いてくれるのなんて親しい男友だちのふたりだけでしたよ。それ以外はネットにあげてもまったくビューなんて伸びませんでしたし。その彼らがいまだに僕の曲を喜んで聴いてくれるのが「SEKITOVA」にとってもっとも嬉しいことのひとつです。彼らはいつも「すごい」と褒めてくれますが、まぁそれは身近な「僕」の事を知ってくれているからこその評価だと思っています。

 本題に戻って答えると、ほか不特定多数の同級生らに自分の音楽を聴かせることはこれまでまったくないですね。僕の名前は龍生って言うんですけど、SEKITOVAと龍生ってある意味では別人というか、なんというかそう言う感覚があって、普段龍生として接している人にSEKITOVAとしての一面を見せる事に違和感が結構あるんですよ。その逆の場合はそうでもないんですけどね。

曲名はどんな風に決めますか?

SEKITOVA:大体の場合は曲から連想するか、いいなと思った言葉をメモっておいてそこから想起して曲を作るか、です。どうしても出てこない時はツイッターとかで呼びかけてもらった答えからつけたりする場合もあります。
 どの場合も基本的に曲を作ってる時間と同じくらい曲名に時間がかかります。曲の世界観をイメージしてその世界の人やモノになりきってインスピレーションを沸かす事がよくあるんですが、たまに親とか姉に見つかって奇異の目でみられます。

アルバムのタイトル『PREMATURE MOON AND THE SHOOTING STAR』にはどんな意味がありますか?

SEKITOVA:もともと自然現象の名前にしようと思ってたのもありますが、僕のなかで「ノスタルジー」ってなんだろうって考えてたら、だんだん思考がそれちゃって、感傷に浸れるような世界ってなんだろうってことを考えるようになり、そのとき直感で出てきたのが思わず背筋が伸びるような、冬の朝の澄んだ青空に出る月だったんです。いわゆる昼の月というモノなんですけれども。それがビビッときてpremature moonとつけました。あとはさっきも書きましたけど名前が龍生なのでそこから音をとって英訳してshooting starとつけました。

アルバムの水墨画は何を表しているのでしょうか?

SEKITOVA:「空間」です。これは水墨画という手法に対してなんですけど。絵になったときに浮き上がってくる滲みであったり、基本的には白と黒の2色なんだけれども、濃淡によってとても表情豊かで眩しすぎるほどにその世界観を表してくれるところに、イーヴンキックのミニマルやダブ、そしてテクノの美学と通ずる所を感じて、という具合です。僕の好きな音楽の「空間」を絵画手法的に表すと、水墨画になるなぁと思ったんです。

DJ/トラックメイカーとしての将来の夢を教えてください。

SEKITOVA:良くも悪くも国内市場が大きくて、ガラパゴス化してしまっているが故の弊害がたくさんある音楽シーンに一石を投じられる存在になれればと思います。
 あと、DJとトラックメイクで生きていきたいです。もちろんセルアウト用の大衆主導のものじゃなくて、僕の好きな音楽だけを作り続けて。いろいろな考えがあるとは思いますが、大衆主導の音楽をつくったり、そういうDJしかしないのは、結局どこどこ勤めのサラリーマンと変わんないじゃんって気持ちがあって。もちろんそう言う人たちのことは本当にすごいと思いますし、サラリーマン自体のことも凄いと思っていますし、存在の必要性もわかっていますが、「僕が音楽で生きていくなら」、常にこちらから提示するアーティスティックな方向性でありたいです。
 そしていまの日本ではそういう生き方が尋常じゃなく難しいし、僕のやってるジャンルなら尚更も良い所なので、そう言う所のインフラ整備というか道も僕が作っていきたいなと思っています。
 ......という野望を達成するにはまだまだ実力も経験も足りなさすぎるので、そこをあげていく事が当面の目標です。

ありがとうございました! 最後に、オールタイムのトップ10 を教えてください。

1. Dave DK - Lights and Colours
2. Akufen - Fabric 17
3. Tigerskin - Torn Ep
4. Daft Punk - Alive 2007
5. Dr.Shingo - Nike+ Improve Your Endurance 2 / initiation
6. Chet Baker - Albert's House
7. MAYURI - REBOOT #002
8. Penguin Cafe Orchestra - Penguin Cafe Orchestra
9. Muse - H.A.A.R.P
10. Underwater - Episode 2

 厳選しすぎると10もいかず、ちょっと基準を緩めるとたちまち10どころか50、60となってしまって、この項目だけ1週間くらい悩んだのですが、やっぱりシンプルに思いついた順から答えていこうということで、こんな感じになりました。たぶんまだまだ経験が足りないのだと思います......。なのでトップ10というか、ここに書いてないものでも好きなのはたくさんあります。

 1はもう言わずもがな、僕が数少ない神と崇めているDave DKのアルバムです。彼はこのアルバム以外にもとても良い曲をたくさん作ってて、どれも本当に好きで、僕にとてつもない影響を与えています。

 2はAkufenによる名門FabricからのDJ MIX。
 Akufenといえば"Deck The House"がとても有名で、僕もそこから入ったんですが、こっちを聴いて本当に鳥肌が立ちました。もとより僕はクリック系の音数が少ないテクノやハウスが好きだったのはあるんですが、そこにグルーヴの概念を痛烈に刻み込んでくれたのは間違いなくこのアルバムです。

 4はおそらく中学2年生の頃、もっとも聴いたアルバムかもしれません。もともと僕が音楽なんて何も知らなかった頃に親が家でよくかけてたのが彼らの伝説的なアルバム、『Discovery』でした。そういう経緯もあってDaft Punkはどのアルバムもとても好きなんですが、その好きな曲たちがこの1枚に凝縮されてるのがたまらないです。ライヴ盤なので生のグルーヴがあるのが本当に良いです。もちろん出てる音はエレクトロニック・ミュージックに基づいた電子の音で、途中途中のアレンジも事前に仕込んだものとはわかってはいるのですが、それでもお客さんのあげる歓声の熱気や空気感から、最高に生のグルーヴが僕に伝わってくるんです。

 7は小学生の頃よく親がかけてました。その頃はうるさくて嫌いだったんですが、あるとき自分から指を伸ばして聴いてみたら、なにかが違って聴こえた感じがしました。ほんとに衝撃というか、いままで意識せずに聴いてきた音楽たちが、その瞬間にすべて脳内でつながった感覚をいまでもよく覚えています。このアルバムのバイオによるとMAYURIさんはセカンド・サマー・オブ・ラヴをリアルタイムで経験していたそうですが、僕にとってのサマー・オブ・ラヴは、間違いなくこのアルバムです。ちなみにこれに入ってるChester Beattyの"Love Jet"ネタのトラックはマジで超ヤバイです!

SEKITOVA
1995年、元旦生まれの高校生トラックメイカー兼DJ。14歳の頃よりDTM でのトラックメイク、16歳でDJとしてのキャリアをスタートさせる。2011 年にはインターネット・レーベル『Maltine Records』よりEP をリリース。その認知度をより深めた。初期には幅広いジャンルの制作を行っていたが次第にルーツであるミニマルテクノやテックハウスにアプローチを寄せるようになる。中でも昨年末にsoundcloudにて発表したアンビエンスなピアノハウストラック『Fluss』は大きな評価を得て、日本のみならずドイツなど本場のシーンからも沢山のアクセスを受けた。DJとしても歌舞伎町Re:animation、新宿でのETARNAL ROCK CITY Fes. への出演など大規模イベントへのブッキングも増えており、これからの活動に期待が寄せられる。

https://sekitova.biz
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https://soundcloud.com/SEKITOVA
https://twitter.com/SEKITOVA
https://twitter.com/SEKITOVA_INFO

二木信 - ele-king

 こんにちわ二木信です。嘘です。ニック・グリフィンです。昨年アナウスされた二木信の初の単行本『しくじるなよ、ルーディ』が今週末の18日に発売されます。著者の所業の数々ゆえなのか、政治やデモの本だと勘違いされている方もいるようですが、これはヒップホップの本です。主に、この10年の日本で生まれたヒップホップ・シーンの本と言えましょう。多くのラッパーが登場します。S.L.A.C.K./SEEDA/Killer-bong/田我流/環ROY/鎮座Dopeness/haiiro de rossi/MIC JACK PRODUCTION/SHINGO☆西成/MS......他に、ビッグ・ジョー、ザ・ブルー・ハーブ、デレラ、シミラボなどについての言葉が綴られている。平岡正明やURついて書いたエッセイもある。

 日本のなにかしらについて書くとき、日本の内部のみを見ることがその手立てではない。日本の外部すなわち異文化を対立させることによって、内部の空想にひたっているだけでは見えないもうひとつの内部が浮かび上がる。二木信は、彼にとっての内部を照射させるための外部からの知恵を「ファンキー」という言葉で説明している。
 「ファンク」は、もうひとつの内部の悦びであり、生命の根源のようなものであり......まあ、とにかく、しくじることを恐れるなってことだ。勝つと思うな~思わば負けよ~と美空ひばりも歌っているように、「どんなにアホっぽく、拙く、荒削りだとしても、自分のスタイルで......(略)」と二木は書いている。
 巻末には書き下ろしで、60枚のアルバムが紹介されています。日本のヒップホップに興味がある人、とくにこれからの暗黒時代をファンキーに生きたい方、あるいは街で暴れたい人は手に取りましょう!

二木信評論集 ──しくじるなよルーディ
Pヴァイン

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Dean Blunt - ele-king

 戦争中から戦後にかけて、センチメンタリズムは氾濫した。それは、いまだに続いている。しかし、わたしには、その種のセンチメンタリズムは、イデオロギーぬきの生粋のセンチメンタリストに特別にめぐまれているやさしさを、いささかも助長するようなシロモノではなかったような気がしてならない。
──花田清輝

 DLカードが入っていたのでアドレスを打ち込んでみたが、何の応答もない。彼ららしい虚偽なのかもしれない。だいたい世相が荒れてくると、人はわかりやすいもの、真実をさもわかった風に言うもの、あるいは勇ましい人、あるいは涙に支配された言葉になびきがちだ。未来はわれらのもの......この言葉は誰の言葉か、ロックンローラーでもラッパーでもない。ヒトラー率いるナチスが歌った歌に出てくるフレーズである。
 こんなご時世にロンドンのディーン・ブラントとインガ・コープランドという嘘の名前を懲りずに使用する、ハイプ・ウィリアムスというさらにまた嘘の名前で活動しているふたりの男女は、相も変わらず、反時代的なまでに、嘘しか言わない。希望のひと言ふた言でも言ってあげればなびく人は少なからずいるだろうに、しかし彼らはそんな嘘はつけないとばかりに嘘をつき続けている。

 DLカードが虚偽かどうかはともかく、『ザ・ナルシストII』は、ディーン・ブラントを名乗る男が、もともとは昨年冬に(『ブラック・イズ・ビューティフル』とほぼ同時期に)フリーで配信した30分強の曲で、金も取らずに自分の曲を配信するなんて、まあ、そんなことはナルシスティックな行為に他ならないと、間違っても、なるべく多くの不特定多数に聴いて欲しいからなどというつまらない名分を口にしない彼らしい発表のした方を選んだ曲(というかメドレー)だった。それから半年後になって、〈ヒッポス・イン・タンクス〉からヴァイナルのリリースとなったというだけの話だ。

 映画のダイアローグのコラージュにはじまり、ダーク・アンビエント~R&Bの切り貼りにパイプオルガン~ヴェイパーウェイヴ風のループ~ギター・ポップ~ノイズ、ダウンテンポ、R&B、アシッド・ハウス......ディーン・ブラントは一貫して、腰が引けた情けな~い声で歌っている......インガ・コープランドと名乗る女性が歌で参加する"ザ・ナルシスト"は、最後に彼女の「ナルシストでした~」という言葉と拍手で終わる......そのとたん、ライターで火を付けて煙を吸って、吐く、音楽がはじまる......。『ザ・ナルシストII』は、時期的にも音的にも『ブラック・イズ・ビューティフル』と双子のような作品だが、こちらのほうが芝居めいている。催眠的で、ドープで、ヒプナゴジックだが、彼らには喜劇的な要素があり、そこが強調されている。
 正月の暇をもてあましていたとき、エレキングからネットで散見できる言葉という言葉を読んで、この世界が勝ち気な人たちで溢れていることを知った。勝ち気と自己肯定の雨あられの世界にあって、怠惰と敗北感と自己嘲笑に満ちた『ザ・ナルシストII』は、微笑ましいどころか清々する思いだ。
 しかも、正月も明け、ゆとり世代の最終兵器と呼ばれるパブリック娘。が僕と同じようにこの作品を面白がっていたことを知って嬉しかった。音楽を鼓膜の振動や周波数ないしは字面のみで経験するのではなく、それらが脳を通して感知されるものとして捉えるなら、真っ青なジャケにイタリア語で「禁止」と描かれたこの作品の向こうに広がっているのは......苦境を生き抜けるなどという啓蒙すなわち大衆大衆と言いながら媚態を呈する誰かとは正反対の、たんなるふたりのふとどきものの恋愛の延長かもしれない。

Ahnnu - ele-king

 2ミニット・ポップとは、2分の間に美しい形式性をともなって完結するポップ・ソングの謂であり、その意味ではここに並んだ22曲の対極にある音楽である。『プロ・ハビタット』の、曲ともいえない、端切れのようなサンプリング・トラックの平均時間はわずかに1分20秒。定形を逃れ、R&Bやジャズやオールディーズなどから任意に摘み取られてきた音の切片が、ヒス・ノイズにまぶされ、スクリューに仕立てられ、ループしながら消えていく。マナーとしてはヒップホップに数えるべきかもしれないが、ここに介在する時間感覚には、そうしたジャンル性を些細な問題へと変えてしまうような鮮やかさがある。たとえば、こうした音の隣りにこそジュリアナ・バーウィックを並べたいと思う。

 アーヌことリーランド・ジャクソンによる本作では、トラックの短さにも明瞭に表れているように、ひとつひとつのサンプリングはきわめて散漫に用いられている。何かを構築しようというよりは、吐く息のようにどんどんと前方へ放たれ、飛ばされていくような印象だ。これはバーウィックが声を重ねるのと同じメカニズムではないか。彼女も構築的にハーモニーを生もうとしているのではない。結果的にそれは和音をなしてはいるが、どちらかといえばひとつひとつ息をリリースしているのだと感じさせる。いまそれを体内から放たなければならない。彼女にはなにか一瞬を際限なく際立たせるような働きかけがあり、そのようにして身を離れた音が反響している。彼らに共通するのは、なにか回収のきかない時間性を生みだそうとする、はかなくも挑戦的な取り組みだ。

 しかし『プロ・ハビタット』は、その「いま」という時間がたえず「いま」ではなくなりつづけることへの諦めもある。瞬間の象徴として放たれた音の端切れどうしをビートが意図的に撹乱しているように聴こえないだろうか。アブストラクトなビートは、一瞬一瞬を単調には切り分けられない唯一無二なものとして演出するようでいて、その実、唯一無二な一瞬(=音の端切れどうし)を単調にくっつけている。バーウィックにおける音の一片が、「いま」が永遠に「いま」であるという矛盾を成立させようとする祈りであるならば、アーヌのそれは自身のビートによって断念された「いま」のむくろとも言えるだろう。しかしその心のうちにはバーウィックの影ともなる、相似した時間感覚が広がっている。

あらゆるものがネットワーク上で相対化されるように、アーヌの音もそこで時間を失う。その顛末を儀式として22回再現したような作品だ。

リリースはデジタルとカセットで〈WTR CLR〉から。ダスティン・ウォンやジェイソン・ユリックの作品もリリースするレーベルだが、全曲無料試聴とダウンロードが可能だ。フリーの視聴環境を舞台とするアーティストたちに彼もまた連なっている。アーヌ自身は昨年はじめにもう1作品『カフ(咳)』というタイトルもあり、「息」の連想がそう間違ってもいないことがわかるだろう。

小林祐介 (THE NOVEMBERS) - ele-king

初めまして。THE NOVEMBERSというバンドで活動をしている小林祐介です。2012年によく聴いた(最近よく聴いている)ものを選びました。今回書かせていただいたチャートを見返すと、個人的に2012年は新たなアーティストとの出会いは少なかったように思いました。(Wild Nothingはele-kingで知りましたが。)
あと、3/10が4ADという結果的な贔屓っぷりにも驚きです。

Chart


1
Godspeed You! Black Emperor - Allelujah! Don't Bend! Ascend! (Constellation)

2
Wild Nothing - Nocturne (Captured Tracks)

3
Chairlift - Something (Columbia)

4
Flying Lotus - Until The Quiet Comes (Warp)

5
Ariel Pink's Haunted Graffiti - Mature Themes」 (4AD)

6
THA BLUE HERB - TOTAL (THA BLUE HERB RECORDINGS)

7
Grimes - Visions (4AD)

8
Scott Walker - Bish Bosch (4AD)

9
OGRE YOU ASSHOLE - 100年後 (VAP)

10
Beach House - Bloom (Sub Pop)

Rilla (Almadella) - ele-king

現京都在住です。
DJ予定
2013/1/19(FRI)GADOGADO@某所(大阪)
2/1(FRI)@fab-space(姫路)
2/3(SUN)BLACK HALL番外編@BLACK BOXxx(京都)
2/10(SUN)@bar txalaparta(徳島)
https://www.almadella.jp/
https://rillamadella.blogspot.com/
https://www.twitter.com/rilla_

2012年ベスト(順不同)


1
Dino Sabatini - Shaman's Paths - Prologue

2
Alex Coulton - Bounce - Dnuos Ytivil

3
Shackleton - Music For The Quiet Hour/The Drawbar Organ Eps - Woe To The Septic Heart!

4
Keihin - This Heat - Almadella

5
Shapednoise - Features Vol.2 - Repitch

6
Deadbeat - Eight - Blkrtz

7
Phrasis Veteris ? Humble Ep - All Inn Black

8
Shifted - Crossed Paths - Mote Evolver

9
Pushim - The Great Songs - KRE

10
Marter - Finding & Searching - Jazzy Sport

 明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。

 2013年最初は、去年の11月にアクシデント(ハリケーン・サンディで家から出れず、自力で歩いて行った。往復4時間!)で、初めて行った、ファースト・サタデイズをレポートする。
ファースト・サタデイズは、その名前の通り毎月最初の土曜日にブルックリン・ミュージアムで行われるイベントで、スポンサーはターゲット。入場料からアトラクションすべてがフリー。
https://www.brooklynmuseum.org/visit/first_saturdays.php


ブルックリン・ミュージアム外観

 前回は、そこでブルックリン・バンドのSavoir Adore(サヴォア・アドア)を観たり、展示作品やシアター上映も体験でき、一日いても飽きず、もういちど行きたくなるイヴェントである。

 今回のメイン・バンドはDas Racist (ダス・レイシスト)のheemsのソロ。その他、東ヨーロッパのジプシー・ミュージック、ダンス・パフォーマンス・アート、ヒップホップ・ワークショップ、アートの新しい見せ方、「ウォール街を占領せよ」についてのトークなど、盛りだくさん。
筆者の目当ては、Prince Rama(プリンス・ラマ)とLez zeppelin(レッズ・ツェッペリン)。


本イヴェントのフライヤー

 プリンス・ラマは美人姉妹によるサイケデリック・アートなブルックリン・バンド(https://princerama.tumblr.com/)。レッズ・ツェッペリンは、レッド・ツェッペリンの女の子カヴァー・バンド(https://www.lezzeppelin.com/)。
残念ながらプリンス・ラマは逃してしまったのだが、レッズ・ツェッペリンのパフォーマンスに圧倒され、すべてがぶっ飛んでしまった。実際のレッド・ツェッペリンを観たことがないのでとやかく言えないのだが、理解できたのは、ツェッペリンの音楽を男女の壁を超えて最もパワフルに、情熱的に表現したのが、彼女たちであるということだ。


終演後のレッズ・ツェッペリン

 この現代において、パンタロンである。ソバージュである。ヘソ見せである。フラワー・チルドレンである。王道を行く音楽は、観客(+子供たち)にとどまらず、ミュージアム中の人たちをトリコにし、至るところでダンスに狂喜している集団が見えた。終わった後の取り巻きの多さもさすが(警備員も総出)。小さな女の子3人が、「あなたたちみたいなロック・バンドになりたいです!」とみんなで挨拶に行っていたのが微笑ましかった。これぞ、正しいロック・バンドの姿。


4Fからの眺め

 ミュージアムのなかを散策すると、4Fまで、展示物やペインティング、家一軒のミニチュアなど、目の保養、発見で有意義な時間を過ごせ、4Fからは吹き抜けの3Fが見え、ダンス・パフォーマンスを観ることもできるので、ミュージアム鑑賞だけでも十分楽しい。人が多すぎるのと、ドリンクが高い(缶のハイネケンが$6!)のが難点だが、フリーだし、月1回の娯楽として大いに利用させていただきたい。こんなイヴェントを開催してくれるブルックリン・ミュージアムとターゲットに感謝。


展示されたスケートボード

 さて、2013年。スポンサーの助けを借りて娯楽を提供しながら、DIYの本拠地はよい方向に動いている。
サイレント・バーン(https://m.facebook.com/silentbarn)が再オープンし、マーケット・ホテル(https://markethotel.org/)もそれに追いつく勢い、さらにブルックリンのブッキング王、トッド・Pも新しい会場をブシュウィックにオープン予定。2013年もいろんなDIY音楽情報他、ランダムにお届けできるように走り回る予定ですので、サポートよろしくお願いします。

Brood Ma - ele-king

 断固としてモダンでなければならない――アルチュール・ランボー


 タワーレコードミューンでもかけたけれど、正月はブッディ&リーフジェイムスズーがヘヴィロテになるかと思いきや、年末に仕入れたカセット2本がストンとツボにw。とくにブルードゥ・マーの無機質でトゲトゲしい感触はジャム・シティよりもさらに気分で、他人に引っ掻き回されやすい自分の心が冷たいステンレス製のダブによって容赦なく切り裂かれ、人間嫌いが爆発している夜には欠かすことのできない必需品となってしまったw。複数の金属音にさまざまなイフェクトが施され、ダブステップのフォームを偽装したような曲のつくりは、カラフルというよりは銀食器を撒き散らしたような同系色の美しさに彩られ、J・G・バラード『結晶世界』のクライマックスを強烈にイメージさせる(→https://soundcloud.com/broodma)。坂本龍一がジャム・シティやアンディ・ストットに反応して『B2ユニット』をリ-モデルさせたら、もしかしてこうなるだろうか?

 ジェイムズ・B・ストリンガーという人物は音楽以外にもいろいろなことをやっているらしい(詳しいことはわからなかった)。サウンドクラウドにもアルバム以外の音源は3曲しか上がってないし、何度聴いてもダブステップがフォームを崩したものなのか、その逆なのかもよくわからない。ただひたすらシャープでとくに後半は無機質な混沌が波打ち、音に呑み込まれるだけ。重量感が伴いそうなのでインダストリアルという言葉は使わず、「ステンレス製のダブ」という形容をしてみたけれど、おそらくこれはインダストリアル・リヴァイヴァルの一翼をなすものには違いない。アンディ・ストットやエコープレックスとも大きな意味では共振するところがあり、なによりも美意識には深く通底するものがある。80年代にもR&B化するシンセ-ポップの裏側で鳴っていたのが、やはりボディ・ミュージックやニュー・ビートだったので相互作用でも働くのだろうか。人間味はとにかく切って落とされている。

 対照的にノーUFOズはぼんやりとした景色にだらだらと迷わせてくれる。スペクトラム・シュプールズでアナログ化された『ソフト・コースト』よりも着実にスキル・アップし、ダブに新たな地平を与えようと格闘しているといったところ。サン・アロウが音の配置にこだわるジオメトリック・ダブだとすれば、コンラッド・ヤンダフは深海潜航艇のように低音に意識を集中させる。なんというか、強制的に落ち着かされる(かなり直球のドラッグ・ムーヴィーだったルパート・サンダース監督『スノーホワイト』に使われていれば、けっこうはまったかも)。

 3~4年前、ドローンの衰退と共にカリフォルニアから出てくる音が次から次へとバリアリック・モードになっていくなーと感じていたら(ジェイムズ・プロトキンがそれを肯定していたのは驚いたけれど――エレキング復刊1号)、そのうちにその流れがチルウェイヴなどというものに××してしまい、アホかといって鼻毛を伸ばしていたら橋元UFOに噛みつかれ(ノート広げ攻撃が出たもんなー)、かといってウルフ・アイズやピート・スワンスンによるにわかテクノ・モードにもどこか馴染めず、じっと手を見ていたら、いつの間にかサバーバン・スピリット・ガイドやブルードゥ・マーといったトゲトゲしい音に囲まれるようになっていた。アンディ・ストットがいい例だけど、おそらく精神的なものはポスト・クラシカルに任せたこともあって、リヴァイヴァル・インダストリアル・ミュージックはテクスチャーをいじくり回す音響的なモードであることを初めから限界とするはずである。あるいは、そのように願いたいというか。


PS

 ブッディ&リーフのブッディはシーパンクにゆかりのプロデューサーで(エレキング8号P144)、スパンク・ロックにも曲を提供していたリーフのミックス・テープ『ダーク・ヨーク』は以下からダウンロード可(https://www.thefader.com/2012/04/18/stream-le1fs-dark-york-mixtape/)。詳しくは同エレキングP97。

Christopher Owens × Sintaro Sakamoto - ele-king

 親愛なる読者のみなさま、明けましておめでとうございます! 本年もよろしくお願い申し上げます。さて、以下の対談は、昨年12月上旬の、雨も降る肌寒い夜にやったものですが、2013年はふたりの素晴らしい新作ではじまります。どうぞ、お楽しみください。


クリストファー・オウエンス - リサンドレ
よしもとアール・アンド・シー

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坂本慎太郎 - まともがわからない
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 クリストファー・オウエンスがツイッターで呟いた、「坂本慎太郎に会いたい!」という一文を読んで、興奮した。もしこのふたりの対談が実現したら......という思っていた矢先だった。
 人生とは本当に面白い。編集長から、「再来週クリストファー・オウエンスが来日するんだけど、菊地君はガールズのこと超大好きだったよね。こないだのSXSWでもガールズ見たっていったよね? 取材やらない?」と電話がかかってきた。ガールズを解散後の最初のアルバム『リサンドレ』(1月9日発売予定)のプロモーションのための来日だという。ちょうど、坂本慎太郎も新しいシングル「まともがわからない」(1月11日発売予定)のリリースを控えている! 
 そして、この企画はトントン拍子で実現へと進んだ.....んだけれど......取材当日、まさかの「クリストファー・オウエンスが飛行機に乗り遅れました」という連絡......まじっすかーーーー(笑)!
 しかし、この企画に関わったみんながふたりの対談を望み、日程を調整してくれたおかげで中止は逃れた。
 2012年の寒い雨の夜、取材場所に到着するとクリストファーは部屋で待っていた。取材する我々ひとりひとりに丁寧に挨拶&「ごめんなさい」を言いながら、そして、時間通りに坂本慎太郎が入ってくると、彼の笑顔は最高潮に達するのであった......。

山積みになったレコードのいちばん奥底に坂本慎太郎さんのレコードがあって、それを聴いたらすぐに好きになったよ! 実際、他のレコードは全然気に入らなかったから全部アメーバに売っちゃったんだ(笑)。唯一キープしたのが坂本さんの『幻とのつきあい方』だったってわけ。

ではさっそくですが、はじめさせていただきますね。

クリストファー・オウェンス:あの、最初の日から変更になってしまって本当にごめんなさい......。

坂本慎太郎:ああ、全然大丈夫です。

そもそも今回は、クリストファーさんが坂本さんに会いたいということで実現した対談なのですが、まず、クリストファーさんはどういったきっかけで坂本さんを知ったのですか?

クリストファー:えっと......、ガールズはアメリカでは〈マタドール・レコード〉からリリースしてたんだけど、ガールズを脱退してソロになったときに、僕は1年契約を結びたかったんだよね。でも〈マタドール・レコード〉はそれが嫌だって言ってきたから、〈ファット・ポッサム〉へ移籍したんだ。っで、〈ファット・ポッサム〉はアザー・ミュージックのレーベルもやっていて、僕がソロ・アルバムを作るときに、彼らがリリースしているレコードを僕の家に一箱ドンと全部送りつけてくれて、その山積みになったレコードのいちばん奥底に坂本さんのレコードがあって、それを聴いたらすぐに好きになったよ! 実際、他のレコードは全然気に入らなかったから全部アメーバに売っちゃったんだ(笑)。でも唯一キープしたのが坂本さんの『幻とのつきあい方』だったってわけ。

坂本:センキュー・ベリー・マッチ。

ちなみに、坂本さんはクリストファーさんのことをご存知でしたか?

坂本:いや全然知らなくて(笑)、いまの海外の新譜とかをチェックすることがあんまりないので、ガールズも全然知らなくて、今回この対談の話をいただいて、過去の作品を送ってもらって、それではじめて

おっ! ではガールズなどの作品も聴いていただいたということですか?

坂本:はい、聴いてきました。

どうでした!?

坂本:ああ、良かったですよ(笑)。

では、クリストファーさんは、具体的に坂本さんの音楽のどういったところにグッと惹かれましたか?

クリストファー:僕、いまのインディってあんまり好きじゃないんだ。いわゆるシューゲイズ・リヴァイヴァルとか、エレクトロニック・ポップの流行とかね。もともと昔ながらのクラシックなロックンロールとか、ポップ・ミュージックが好きなんだけど、『幻とのつきあい方』を聴いたときに、テイストっていうか、趣味が最高によくて、本当にパーフェクトなアルバムだと思ったよ! アレンジがものすごく好きだし、演奏もよくて、品のあるアルバムだと思ったね! おかしいのは、歌詞が全然分からないのにこんなに惹かれて、歌詞がなくても成立する、ジャズを聴くような感覚で聴きまくったんだ。とにかく、このアルバムのプロダクションが大好きで、ハーモニカのソロなんかはいままで聴いたなかでも最高のものだったし、コンゴとか、サックスとか、フルートとかも最高! あと、バック・ヴォーカルもすごい好きで、実際そのことについていろいろ聞こうと思ってたくさんメモをとってきたんだけど......(恥ずかしそうにメモをバッグから取り出す)。

はははははは。今日はいくつか質問を考えてきてもらったということですね(笑)。

クリストファー:うん(笑)。

"詞"というものが少なからずインパクトを与える坂本さんの音楽を、海外のミュージシャンがこう評価しているのに対してどう思いますか?

坂本:えっと、自分は20年くらいバンドをやってきて、それを解散したあとこのアルバムを作ったんですけど、ひとりで部屋にこもって、いちばんそのときに作りたかった曲を作って、自分では気に入ったものが出来たんですけど。うーん、まあ外国ではウケないと思ってたんで

(笑)

坂本:普通の音楽っていうか、地味だし、すごいこだわってるのが微妙な部分なんですけど、そういうのが伝わるのかなっていうのがあったので、そういう言葉が分からない外国の人が気に入ってくれてるっていうのはすごい嬉しかったです。

おふたりの新しい音源を聴かせていただいたのですが、それぞれ聴き比べてみると、かなり似た部分があるような気がしました。

野田:うん、ソング・ライティングというか、中心にあるのが歌っていうところがまず似てるかなっていう。

クリストファー:偶然ながら、はじめてサックスとかフルートを使ったアルバムだったから、坂本さんのアルバムを聴いたときは「ワォー!!!」って感じだったよ(笑)! でも同時に全然違ったアルバムだとも思うね。だって坂本さんの音楽はすっごいファンキーだけど、僕は全然ファンキーじゃないからね(笑)。

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自分は外国のレコードを主に聴いて育ったので、音楽聴くときは歌詞が何語でも気にしないんですけど、一応こだわってやっているんですが、音として聴こえて面白い日本語っていう側面でも作ってるので、意味がわからなくても楽しめるとは思うんですが、うーん、まあ、歌詞読んでもいいと思います(笑)。


クリストファー・オウエンス - リサンドレ
よしもとアール・アンド・シー

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坂本慎太郎 - まともがわからない
zelone records

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(笑)。ではさっそくですが、せっかく質問を考えてきてもらったということで(笑)。

クリストファー:オーケー(笑)。もういくつか答えてもらっちゃったんだけど、まずは、今日は本当にありがとうございます! じゃあ、えっと、最初の質問は(メモをめくる)............。僕は詞っていうのものが大好きだから、歌詞は僕にとってすごく大きなものなんだけど、たとえば、僕セルジュ・ゲンズブールが大好きでよく聴くんだけど、歌詞自体フランス語で何を言ってるのかわからないから、単純に音楽性に惹かれてるんだよね。んで、坂本さんの場合は、歌詞ってものがどのくらい重要で、僕は果たして、英語に翻訳したものをちゃんと読むべきなのか、それとも読まないでもいいのかっていう。

坂本:そうですね、えーと、自分は外国のレコードを主に聴いて育ったので、音楽聴くときは歌詞が何語でも気にしないんですけど、自分でやるときはなんでもいいっていうわけじゃなくて、一応こだわってやっているんですが、音として聴こえて面白い日本語っていう側面でも作ってるので、意味がわからなくても楽しめるとは思うんですが、うーん、まあ、歌詞読んでもいいと思います(笑)。

(笑)

クリストファー:オーケー(笑)、トライしてみるよ!

坂本:すごく日本語をロック・サウンドとかにのせるっていうのが難しいって長いあいだ言われてて、けっこうダサイ感じになっちゃったり、失敗してる例がいっぱいあるんですけど、そこをなるべく上手くやろうっていうふうにやってきた感じで。まあ、自分はなんかアジアのロックとかそういうわけ分かんないロックを聴いて楽しむ感じがあるんですけど、自分のレコードもそういう感じでいいです。

(笑)

クリストファー:もうすでに日本語のロックンロールとしてサウンドを楽しんでるけど、もちろん歌詞の意味もわかったらいいなって思ってね。そういうチャンスがあれば誰か訳してくれないかなーって思ってるよ。あと、女の子のバック・ヴォーカルもすごく気に入ったんだけど、クレジットを見たら三人の名前が書いてあって、そこにはそのうちのひとりがそのなかのリーダーだって書いてあったんだけど、実際のアレンジとしては坂本さんが全部バック・ヴォーカルを決めて、彼女たちに頼んだのか、それともある程度オープンな状態で彼女たちにやってもらって、彼女たちがアレンジをやった部分があるのか、それと、そのリーダーってクレジットされてる女性が誰なのか知りたいんだけど。

坂本:えっと、リーダーはなくて、リーダー............えっと

クリストファー:アレンジみたいなところに名前がひとりクレジットされてたと思うんだけど、彼女が友だちなのか、どういう人なのか気になって......えっと、たぶん、ジュンコ・ノギさん?

坂本:えっと、3人は同じ曲では歌ってなくて、曲によってひとりが何個も歌って、重ねて。えっと...(資料を見ながら)、1曲目と8曲目はそのノギさんがアレンジも考えて歌ったんですけど、その他の曲は僕が考えたラインを他の人に歌ってもらいました。

クリストファー:ノギさんは友だち? 他にどんな活動をしてるの?

坂本:ママギタァっていうバンドをやってて、今日持ってくればよかったんですけど、2月にアルバムを出して、僕のレーベルからリリースしました。僕がベースを弾いて、出しました。

クリストファー:アー! オーケー! 聴いてみる!!

坂本:持ってくればよかったですよ。

クリストファー:ハーモニカの人も友だち?

坂本:ハーモニカの人は、はじめて会った人なんですけど、初山博という年配のベテランのジャズの人で、ビブラフォンとクロマチックハーモニカなんかの名手と言われている人を紹介してもらって。

クリストファー:僕も今回ちょっと年上のジャズ・ミュージシャンの人を紹介してもらって一緒にやったから、似たような経緯だね。

坂本:そうですか。

クリストファー:えーっと、よし、オーケー、じゃあビッグ・クエスチョン。「スゴイ・クエスチョン!」(とっても緊張しながら)。

おお(笑)?

クリストファー:坂本さんは、他の人のアルバムをプロデュースしたことってありますか? 

坂本:うーん、まだやったことないですねー。

クリストファー:でも興味を持たれることはありますか? えっと、つまり、その............、僕のレコードのプロデュースをやってくれることってないかな?

坂本:うーん、ちょっと、いや、そうですね、あのー(苦笑)。

一同:(笑)

坂本:いや興味はあるんですけど、あんまり軽く言っちゃうとすごいあれなんで(笑)

クリストファー:オフコース! ここで「イエス」って言ってもらうつもりはないから大丈夫だよ。自分のアイデアとして思いついて、可能かどうか聞いてみたかったんだ。

坂本さんは、salyu x salyuなどで詞を提供されていたりするので、坂本さんがクリストファーさんに日本語の曲を提供して、それをクリストファーさんが実際に日本語で歌ったら面白いかもですね(笑)。

一同:(笑)

クリストファー:オーケー(しっかりsalyu x salyuをメモ用紙に書く)、じゃあ次の質問ね。僕はこの何年かのあいだ、ずっと日本でツアーをやりたいと思っているんだ。東京と大阪だけじゃなくてね、日本の小さな町なども廻りたいと思ってる。でもなかなかそれが実現しなくて......。アメリカとかヨーロッパなんかは10代のバンドがそうやってインディペンデントなツアーをずっと廻ったりして、それを観た更に若いキッズたちがバンドを作ったりしてるんだけど、日本はどうなのかな? あと、実際に僕がそれをやることの意味とかっていうのも気になるんだけど...

坂本:いいと思いますよ。日本のバンドも皆やってますね。車で運転して、小さい町に行くっていうのは皆やってるし、まあ、すごく狭いので、アメリカ・ツアーよりも全然楽だと思いますよ。

僕がはじめてガールズを聴いたときって、僕はまだ18歳とかで、もちろん僕も英語の歌詞が全部わかるわけではなかったんですけど、フィーリングだったり、どこかで同じ気持ちを共有できた気がして、すごく助けられました。なので、それは是非実現してもらいたいですね!

クリストファー:イェー! ティーンエイジャー! じゃあ、これが最後の質問ね。クラシック・ジャズは好きですか? モダンじゃないジャズ・ミュージック。

坂本:全然詳しくないですね。嫌いとかではないんですけど、いままで聴いてきてないので、よくわからないかなー。

クリストファー:何枚か僕が好きなレコードを送ったら聴いてくれる? 最近なぜかジャズをすごい聴きはじめてね。いきなり一つ大きな世界が開けたみたいにインスピレーションを受けてるんだ。もしかしたら興味を持ってくれるかなって思って聞いてみたんだけど。

坂本:たとえばどういうの?

クリストファー:コルトレーンとか、チャーリー・パーカーとか、マイルス・デイヴィスとか、チェット・ベイカーみたいな本当にスタンダードなやつ。細かいのは僕も全然知らないんだけど、最近聴きはじめて本当に気に入ってるんだ。

坂本:その辺の有名なところは、一応昔聴いたんですけど、他のジャンルを買うのに忙しくて、ジャズはまだ追求してないので、他が終わったら聴いてみます。

(笑)

坂本:でもチェット・ベイカー・シングスはヴォーカル・アルバムとして、昔から本当に好きです。

クリストファー:クール! 僕もだよ。えっと、これで一応終わりなんだけど、とにかく、素敵なアルバムと、今日という機会を作ってくれて本当にありがとう!

坂本:ありがとうございます。

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最初にアルバムをもらって聴いてて、さっき名前が出たから言うわけではないんですけど、コンセプトにしろ、ゲンズブールの『メロディ・ネルソンの物語』に近い印象を持ったんですけど、その辺を意識してたりするんですか?


クリストファー・オウエンス - リサンドレ
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坂本慎太郎 - まともがわからない
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ではせっかくなので、逆に坂本さんがクリストファーさんに聞きたいことってありますか?

坂本:最初にアルバムをもらって聴いてて、さっき名前が出たから言うわけではないんですけど、コンセプトにしろ、ゲンズブールの『メロディ・ネルソンの物語』に近い印象を持ったんですけど、その辺を意識してたりするんですか?

クリストファー:ゲンズブールは昔から僕のアイドルで、すごい影響を受けてるんだけど、あまりにも偉大でクールな人だから僕と比較は出来ないよ(笑)。『メロディ・ネルソンの物語』は映画のサウンド・トラックっていう側面がかなり大きいよね。そこは僕のアルバムと違うところだけど、あのレコードも、ひとりの女性のキャラクターっていうのが中心にあって、それに基づいたレコードだから似てる部分もあると思うし、もっと大きな意味での影響はいままでものすごく受けてきたはずだよ。

坂本:あと、出身はサンフランシスコですか?

クリストファー:うん。

坂本:サンフランシスコは行ったことがないんですけど、知り合いのミュージシャンの話では凄い面白い場所で、世界で一番狂ったところだって聞いてるんですけど、いまのサンフランシスコの音楽のシーンっていうか、自分が所属しているシーンみたいなものがあるのか、もしくは孤立してひとりでやってるのかっていうのが気になったんですが。

クリストファー:音楽シーン自体はあるよ。ヘヴィーなガレージ・ロックとかサイケデリック・ロックとかね。皆友だちだし、僕は彼らの音楽が大好きなんだけど、音楽性としては、僕は孤立していて、彼らと違った音楽をやっているっていう感覚は少なからずあるかな。

坂本:なんかそういう実験的な、アヴァンギャルドなシーンとか、パンクのシーンがあるのかなって思ったんですけど、歌をメインでやられているので、ライヴとか普段どういうところで、どういう感じでやってるのかなと思ったんですよね。

クリストファー:ガールズのときはもうちょっとロックンロールなショーをやっていたんだけど、今回のアルバムに関してはこれまでのライヴとはまったく違うような感じだね。カーテンがあって、座席があって、画が飾られているような、古くて小さい劇場で、アルバムを最初から最後まで演奏するような感じ。

サンフランシスコでは、日本の音楽がどれくらい浸透していて、実際にどれくらい聴かれているんですか? 

クリストファー:サンフランシスコ自体はとっても大きな日本人街があるし、そこで音楽を売っているお店もあるから、アクセスしようと思えば出来るんだけど、僕も最近は新しい音楽を追いかけたり、どんどん掘り起こしていったりしなくなったから、日本の音楽は全然知らないんだよね。たぶん、坂本さんのレコードも、送られてこなかったら聴いていなかったかもしれないし、なかなかそういう機会はないかもね。

じゃあ、坂本さんがクリストファーさんに「この日本のアーティストは絶対聴くべきだ!」っていうをここで教えるのはどうですか?

クリストファー:イェー!!! やろう!!!

(笑)

クリストファー:実は今回の来日でいくつか変わったレコードを買ったんだけど、えっと、ぴんからトリオとか(笑)。

一同:おお(笑)!!

クリストファー:あと坂本九とかね。テレビでたまたまやってたから買ったんだけど(笑)。

坂本:どういうのが好きなんですか? というか、どういうのが聴きたいの?

クリストファー:うーん、僕のレコードに近いっていうか、日本の伝統的なフォークみたいな、歌ものの影響を感じられるロックとかポップとか。あとは女性のバック・コーラスがいいやつと、ゆらゆら帝国に似ているものも聴きたいな。

坂本:そのママギタァを持ってくればよかったんですけど(笑)。

一同:(笑)

坂本:最近自分が買ったのだと、八代亜紀がジャズ歌ってるやつ。あれは日本の古い歌も入ってるし、いま売ってるので、いいかもしれないですけど。

クリストファー:クール!

坂本:なんでしたっけ? あ、『夜のアルバム』だ。さっき古いジャズって言ってたから、日本の歌謡曲みたいな感じでぱっと浮かんだんですけど。うーん、でもいっぱいあるなぁ。じゃあ、なんか今度まとめて送ります。

クリストファーさんは、コーネリアスをご存知ですか?

クリストファー:まだちゃんと聴いてことはないんだよね。名前は聞いたことあるんだけど。今回たくさん取材を受けたんだけど、どこかの雑誌で見た気がする。

先ほど言っていた、salyu × salyuは、コーネリアスの小山田圭吾さんという方がアルバムをプロデュースされていて、そこに坂本さんが詞を提供されてるんですよ。

クリストファー:サウンズ・グッド!!!! ありがとう、聴いてみるよ。

では、あと少しで今年も終わってしまいますが、お互い、今年1年を振り返っていかがでしたか?

クリストファー:ふーーーーー。

(笑)

クリストファー:とってもクレイジーだったよ。ガールズを脱退したのが大きくて、僕にとっても辛い決断ではあったんだけど、でもそうしなきゃいけなかったんだ。すごくパーソナルなこともいくつか起こったし、はじめてソロ・アルバムも作った。本当に目まぐるしい1年だったね。

坂本さんはいかがですか?

坂本:僕はなんにもない、抑揚のない1年でしたね。

一同:(笑)

来年は、何か動き出したりはしないんですか?

坂本:動かないですね。まあ音楽はずっと家で作ると思うんですけど。淡々と作業する感じで。

次のアルバムも自分のタイミングで出す感じですか?

坂本:そうですね。凄いことは何も計画したりはしてないですね。

クリストファーさんは?

クリストファー:まず、またここに戻って来ること。あと、本当に日本をツアーするっていうのは大きな目標だね。このアルバムをリリースしたら、アメリカとヨーロッパでツアーをやる予定なんだけど、日本に関しては東京が出来るかなっていう状況で......。本当はさっきも言ったように、いろんなところでライヴをやりたいんだけど、何かそのためのアイデアとかってないかな?

坂本:僕はライヴやってないのであれですけど、精力的にライヴやってるいいバンドと友だちになって、車に乗せてもらって、ギター持って、やればいいと思います。

一同:(笑)

でもそれはメディアが頑張らなくていけない部分でもあると思うので、僕も頑張ります!

坂本:ちなみに『リサンドレ』の日本盤出るんですか?

〈よしもとアール・アンド・シー〉さんから出ます。

坂本:じゃあレーベルの人がブッキングしてくれますよ。

クリストファー:やらせます!!

本当に今日のこの対談が、お互いの何かのきっかけになればといいなーと、素直にそう思います。僕は坂本さんのライヴにも期待していますので。

坂本:ああ、そうですか。

クリストファー:とにかく僕はこのアルバム(『幻とのつきあい方』)の大ファンだから、いつか「僕と一緒にやりませんか?」って本当に連絡するかもしれないけど、そのときはよろしくお願いします!

坂本:あ、はい(笑)。

最後に何か言いたいことありますか?

クリストファー:えっと、坂本さんと一緒に写真撮っていいかな(笑)?

一同:(笑)


 坂本慎太郎の独特な間合い、滅多に表情を変えない、独特な佇まいと、初恋の人に会うようなクリストファー・オウエンスのあからさまにウキウキしている感じとの対照的なふたりが面白かった。あらためて、良い音楽は国境を越えることを知った。
 最後に、クリストファー・オウエンスの傑作『リサンドレ』についても触れておこう。インタヴュー中の彼の表情にも、自由を手に入れた嬉しさと自信が垣間見れたが、『リサンドレ』は、本当にトレンドなど無視して作った、ただの、素晴らしいポップ・アルバムだ。「さあまたはじめよう、前に進まなくちゃ」と、"ヒア・ウィ・ゴー・アゲイン"からはじまる『リサンドレ』は、対談中でも触れているように、女の子との出会いと別れが描かれている。セルジュ・ゲンズブールの『メロディ・ネルソンの物語』のようなフィクションが語る真実がある。

 個人的に2012年は本当にいろんなことがあった。大学を正式に辞めて、イヴェントやって、糞みたいなバイトで貯めたお金でアメリカ行って、上半期は本当に活動的だった。下半期は何もやらなかった。僕も前に進まなくちゃ。そう思っているあなたも、ぜひ『リサンドレ』を手にとって聴いて欲しい。彼は、2013年はあなたの街のライヴハウスにもやって来るかもしれないし。

 撮影が終わってもふたりは名残惜しむように話している......。「今度は新宿のゴールデン街で飲みながら話しましょう」と坂本慎太郎。クリストファーも目をキラキラさせながら「いいね」と言う。「それか、思い出横町とか」、「うんうん」とクリストファー......。編集長にあとで聞いたら、この手の対談で、ちゃんと質問までメモってくるような人はわりと珍しいとのこと。お互いのリスペクトがわかる、良い雰囲気の良い対談だった。

 そんわけで、2013年も音楽を聴きまくりましょう!

interview with Darkstar - ele-king

E王
Darkstar - News From Nowhere
Warp/ビート

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 公園のベンチに座るのが好きだ。色や匂いが違う。ただそれだけのことだが、ダークスターの『ニュース・フロム・ノーウェア』はその感覚を押しひろげているように感じる。その点で言えば、ビーチ・ハウスの『ティーン・ドリーム』を思わせる。USインディ音楽のドリーム・ポップがUKの湿った土壌で醸成されたというか、いずれにせよ、この音楽にはもうUKガラージやダブステップの記憶はほとんどない。

 ダークスターは、2009年末、〈ハイパーダブ〉からの12インチ・シングル「エイディーズ・ガール・イズ・ア・コンピュータ」によって大々的な注目を集めている。当時はふたり組だったが、その後3人組となった。後から加入したジェイムス・バッテリーはヴォーカリストだ。彼が入る前の「エイディーズ・ガール・イズ~」や「ニード・ユー」は、初音ミクよろしくコンピュータのソフトウェアが歌っている。
 2009年といえば、ダブステップが多様化を極めようとしていた時期だ。ブリアルの影響下でマウント・キンビーやジェームズ・ブレイクが登場、あるいはラマダンマンやSBTRKT、ジョイ・オービソンらが頭角を現していたが、ダークスターのエイデン・ウォーリーとジェイムス・ヤングは他の誰とも違ったアプローチを見せた。それは、ちょっとクラフトーク風の、ロボティックなシンセ・ポップだった。そして、3人組となって録音、2010年の秋にリリースされたデビュー・アルバム『ノース』では、明らかに、がつんと、バッテリーの甘い歌声を活かした楽曲を披露した。それはイングランド北部の喪失感をえぐり出すような、暗く寒い音楽だった。
 しかし、『ノース』は素晴らしいアルバムでもあった。90年代の〈モワックス〉からDJシャドウが、あるいはアイルランドからデヴィッド・ホームズが出てきたときのようなイメージと重なる。憂鬱が今世紀のクラブ・サウンドのなかで見事に音像化されている。いわば灰色の魅力だ。
 対して2年ぶりのセカンド・アルバム──〈ワープ〉移籍後の最初のアルバムとなる『ニュース・フロム・ノーウェア』は、前作以上に、多彩なテクスチャーを見せている。アルト・ジェイの電子版とでも形容できそうな、聴き応え充分のアルバムだ。たとえばこの曲とか。



最初にたまたま作った音楽がダブステップだったっていうのはあるけど......でもいつももうちょっとメロディのある歌ものを作っていたんだ。

そもそもダークスターという名前はどこから来たんですか? 

ジェイムス・ヤング:ダークスターという名前は......なんだろう、ダークな感じっていうだけなんだけど......。最初は『ダークスター』っていうレコードから名前をとったんだ。それで『ダークスター・ヒューマノイド』っていうのにしようと思ってたんだけど、変な名前だなーと思って短くしたんだよ。

オリジナル・メンバーのふたり(エイデン・ウォーリーとジェイムス・ヤング)はどうして出会ったのでしょうか?

エイデン・ウォーリー:もともと僕とジェイムス(Buttery)は友だちだったり、みんなバンドをやってたり、そして全員同じロンドンの大学に通う仲間だった。僕とジェイムス(Young)は当時同じ寮に住んでたりもした。それでジェイムス・ヤングと一緒にダークスターをはじめて、その後ジェイムス・バッテリーも誘って一緒にやりはじめたんだ。ロンドンの東にあるハックニーを拠点に音楽を制作しはじめて、それでいくつか曲ができはじめたって感じで、自然にはじまったっていう感じだね。

ダークスターにはいろんな音楽からの影響を感じますが、音楽をやりはじめたきっかけは、やはりダブステップだったんでしょうか? それとも、別の契機があって作っていたところに、たまたまダブステップが流行っていたから乗ったんでしょうか?

ジェイムス・ヤング:まぁ最初にたまたま作った音楽がダブステップだったっていうのはあるけど......でもいつももうちょっとメロディのある歌ものを作っていたんだ。

ジェイムス・バッテリー:僕たちはいろんな音楽を聴くんだ。もちろんエレクトロニック・ミュージックはたくさん聴くけど、バンドの音楽も聴くし。僕たちはいろいろなものを聴くから"コレ"っていうものにカテゴライズできないと思うよ。もちろんダブステップからはじまってその上にいろいろな音楽の要素が乗ってる感じだね。

〈2010 Records〉は自分たちの自主レーベルだったんですよね? 初期のシングルはダブステップのスタイルでしたが、2007年当時は誰からの影響が強かったのでしょうか?

エイデン・ウォーリー:そうだよ、自分たちを表現するためにもいいかなと思ってさ。さっきも話したけど、最初はダブステップからはじまったけど、僕たちはいろいろなジャンルの音楽を聴くし、とくにカテゴライズしてないと思うよ。

それが2008年に〈ハイパーダブ〉から出した「Need You」あたりから変わっていきますよね。そして2009年の「Aidy's Girl Is A Computer」でいっきに変化を遂げる。実は僕は「 Aidy's Girl Is A Computer」が最初だったんですけど、聴いて一発で好きになりました。ダークスターを語るうえで逃せない重要なシングルだと思いますが、当時、ここで音楽性がいっきに拡張して、ダブステップとは別の方向性を見せた理由は何にあったのでしょうか?

エイデン・ウォーリー:たぶんここ最近の作品は「Aidy's Girl Is A Computer」の手法と同じように作っているからそういう印象を受けるのかもしれないね。とにかくそのとき考えたのは、最高に面白いものを作るってことだったしね。曲を作るときに気をつけたのはバランスだ。エレクトロニック・ミュージックのなかでヴォーカルとダンス・ミュージックの要素を上手くバランスを取って取り入れることが重要だと思うんだ。だからある意味僕たちにとってはチャレンジすることがまだたくさんある。

そしてジェイムス・バッテリーが加入して『ノース』が生まれました。歌が必要なだけならシンガーをゲストで入れれば済む話ですが、敢えてヴォーカリストをメンバーとして入れた背景には何があったのでしょうか? 言葉を必要としたということなのでしょうか?

エイデン・ウォーリー:もっと「歌」を書きたいと思ったからっていうのはあるかな。「歌」があったほうがもっといろいろなチャレンジできるしね。

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イースト・ロンドンのフラットで作ってたんだけど、けっこう荒んだエリアでね......。街ではいつもいろんなことが勃発してて、だからなんとなくそのときのことが反映されていて、エモーショナルで悲しい感じが出ているよね。

『ノース』が生まれた背景にはあなたのどんな思いがあったのか教えてください。そもそもあのとき、何故『ノース』という題名に決めて、インダストリアルな写真をデザインしたのでしょう? 

ジェイムス・バッテリー:基本的にイースト・ロンドンのフラットで曲を作っていたんだけど、8~9カ月くらい制作に時間を費やしたんだけど......いろんな曲を試したし、とくに変わったことをしたわけではなく、通常通りの曲作りをしていたね。正直そのとき自分たちに出来るベストなアルバムを作ろうっていう、ただそれだけだった。
 アルバム・タイトルについては、最後の最後まで決まらなくて、どうすればいいのか迷ってたんだけど、すごくアグレッシヴな"North"っていう曲があって、なんとなくアルバム全体を表しているような気もしたし、僕たち全員北部(ノース)の出身だから、それも意味を成してていいかなって思ったんだ。アートワークについては〈モー・ワックス〉の初期っぽい感じにした。

『ノース』のメランコリーや喪失感はあなた個人の抱えている問題でしょうか? それとも社会の反映なんですか?

エイデン・ウォーリー:イースト・ロンドンのフラットで作ってたんだけど、けっこう荒んだエリアでね......。街ではいつもいろんなことが勃発してて、だからなんとなくそのときのことが反映されていて、エモーショナルで悲しい感じが出ているよね。

ジェイムス・バッテリー:なんかこうやって前のアルバムを振り返るとそのとき気づかなかった点に気づいて、それはそれで面白いよね。そう思うと、最初に作ったアルバムって本当に小さな箱のなかで作業しているような、本当に狭い世界で出来あがったものだなって思うよ。でも僕たちはこの環境にしてはとても恵まれていると思うし、成功しているほうだと思うよ。

『ニュース・フロム・ノーウェア』は『ノース』よりも緻密に、手間暇をかけて作られていますね。音響の処理や録音も素晴らしかったです。まずはこのアルバムの制作に時間のかかった理由から伺います。それは技術的な問題からなのでしょうか、あるいは作品の方向性を決めるうえで慎重な議論を要したからでしょうか?

エイデン・ウォーリー:6~8ヶ月くらい?

ジェイムス・ヤング:まぁ、たくさん時間をかけて作った分、いろんなヴァージョンの曲も出来あがってるから、けっこうな曲数になってると思うね。

ジェイムス・バッテリー:でもマスターテープを作る作業から入れたら11か月くらいかかってない? それに僕が入院してたせいで作業が思うように進まなくて......。

どうしたんですか?

ジェイムス・バッテリー:この家の塀から落ちて背中を打ったんだよ。まだ重いものは持てないけどだいぶ治ってきているから、いまは大丈夫なんだけどね。でも、いいのか悪いのか、おかげで制作期間が延びたことで落ちついて、いろんなことができたのはあった。一回作ったものに対してひと呼吸おいて考えることができるというか。
 まぁ、とくに僕はしばらく寝たきりだったから、個人的には時間がたくさんあった。で、いろいろ考えられたんだけどね(笑)。いまはまたこうやって歩けるようにもなったし、元気になってから3~4曲出来あがったしね。

『ニュース・フロム・ノーウェア』はフィクションですか? 

ジェイムス・バッテリー:つねに「真実」は隠されていると思うけど......でも基本的にはフィクションだね。

エイデン・ウォーリー:リチャード・フロンビーとのレコーディングのあとで、どういうタイトルにすべきかっていう話になったんだ。そのときにアルバムにフィットする言葉じゃないかっていうことで、これにした。

アレンジを凝りつつ、アンビエント・テイストも深めていますよね。1曲目の"Light Body Clock Starter"もそうですが、続く"Timeaway"もそうだし。ビートが際立ってくるのは3曲目の"Armonica"からだし。

エイデン・ウォーリー:アンビエント? それはちょっと違うような気がするなぁ。自分たちとしては、もっとエネルギッシュだと思うし、アンビエントの要素はないように思うんだけどな。前のアルバムよりずっとエネルギッシュだし、ライヴではそれがより顕著に出るしね。

ジェイムス・バッテリー:アンビエントというより、オプティミスティックということだと思う。アルバム全体がいろんな音楽のコレクション的な感じになってるからね。なんていうの? スナップショットの集まりみたいな感じだと思うよ。

たとえば"Armonica"には『ノース』にはなかった気さくさがありますよね。この曲は何について歌っているのでしょうか?

ジェイムス・バッテリー:これはアルバムの最後のほうでレコーディングされた曲なんだ。この曲はとても変な作り方をしたんだよ。僕はクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジを聴いていて、この曲をアコースティックギターで作った。そしてそれをそのままレコーディングに使って、曲を仕上げていった感じ。だから他の曲ともちょっと毛色が違うかも。いつもなんとなく成行きに身を任せて曲を仕上げていくと、それがいい方向に転がることが多いしね。

"A Day's Pay For A Day's Work"もとても魅力的なメロディの曲で、ダークスターなりのポップ・ソング的なところもある曲だと思います。これは何についての曲なのでしょうか?

エイデン・ウォーリー:今回のアルバムでは、制作とレコーディングのために田舎の一軒家を借りて、そこでライティングをはじめたんだけど、その曲は、家に引っ越す前からライティングをスタートしていた唯一の曲なんだよ。クラシックでありながらも、前進したメロディ・スタイルを持った曲。アルバムのためのデモはたくさんあったんだけど、そのなかでも、レコーディングの間中ずっと完成せずにつねに考えていたのがこの曲なんだ。曲のなかのある部分がいつまでたってもしっくりこなくてね......最後の2、3週間でやっと新しいコーラスを書いて仕上げた。作りはじめたときに感じた曲の可能性に、最後の最後で達成することができた。可能性があることは最初からわかってたんだけど、それをずっと形に出来ずにいたんだ。
 これはオールドファションなポップ・ソングだよね。最初にそれを感じたから、それに従ったほうが良いと思ってね。最後にコーラスができたときは本当にハッピーだったよ。

曲自体の内容はどういったものなのでしょう?

エイデン・ウォーリー:曲の内容は......幸というか......うーん、何ていったらいいかな。クールになることにとらわれていないこととか、自分は自分っていう内容だよ。ありのままの自分にハッピーで、いまの自分でいることでリラックスできてるってこと。気取ったり無理しなくても自分自身でいながら、そのなかに何か良い部分があればそれでいいって感じの内容だね。

とてもUKらしい音楽だと思ったんですが、たとえばシド・バレットや66~7年のジョン・レノンのようなサイケデリック・ロックのシンガー・ソングライターへの共感はありますか? またそうした要素を今回のアルバムで取り入れたいと思いましたか?

エイデン・ウォーリー:そういう音楽って、すごく影響力のある音楽だと思う。3人ともビートルズを聴くし、ピンク・フロイドも聴くし......ジョン・レノンもシドも、ヴォーカル&ピアノ、ボーカル&ギターっていう音楽がすごく上手いよね。彼らの曲を聴けば、感情がうまく表現されてるから、そういったものを思い出すんだ。彼らはふたりとも素晴らしいソングライターだし、評価してるし、たくさん聴いてもいる。だから、それが音楽に反映されてることはあるかもしれないね。共感があるから。

ジェイムス・バッテリー:そもそも僕たちの楽曲制作のアプローチの仕方が彼らに近いと思うんだよね。彼らの音楽に影響を受けたというよりも、何か面白くて新しいものを作るっていう点において共通しているところはあるかもしれないね。もしビートルズやピンク・フロイドからまったく影響を受けずに生きられるのなら、岩の下とか洞窟とか人が生活する環境から遠く離れて隔離された場所にいないと無理だと思うんだ。とくに僕たちイギリス人にとっては生活やカルチャーのなかに組み込まれているものだからね。

今回のアルバムのなかにそういう要素は含まれていると思いますか?

エイデン・ウォーリー:どうだろうね。意識的には何もしてないから。でもないとも言えないよ。僕たちがこのアルバムでやったのは、ただナイスなアイディアを出しあって、そこから全員一致で好きなものを集めて、そのアイディアに境界線は引かなかったってことだけ。もし誰かが本当にナイスでスローなクラシックなポップ・ソングのアイディアを持ってきたとしたら、みんなでその曲に何度も取り組んで、自分たちのサウンドを構築していく。僕たちは、何に対してもノーとは言わないんだ。それが良いアイディアで良いサウンドだったらプレイする。もしそのアイディアとサウンドが機能したら、それは大切なことだから、絶対に活かさないとね。

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3人ともビートルズを聴くし、ピンク・フロイドも聴くし......ジョン・レノンもシドも、ヴォーカル&ピアノ、ボーカル&ギターっていう音楽がすごく上手いよね。

"Young Heart's"の悲しみはどこから来るのでしょうか? 

エイデン・ウォーリー:"Young Heart's"は、他人をリファレンスにした曲のひとつなんだ。自分じゃなくて、誰か他の人やその人のシチュエーションとかを題材にした。考えてみれば、アルバムのなかではそういうのってこの曲だけなんじゃないかな。ジェイムス・ヤングがほとんどの曲を書いたんだ。で、全員でその歌詞にいろいろとアイディアを加えていった。でもメインで書いたのはジェイムスだよ。
 アルバムに収録された曲をいまよく考えてみると、『ノース』でやったことに近い曲のような気がする。この曲は、他人のシチュエーションに関して語っている、他人のストーリーなんだ。悲しみは、たぶんそのストーリーから来てるんじゃないかな。ある女の子が恋人から捨てられるんだ。その恋人は彼女よりちょっと年上で、尊敬していた人。でも、彼女はおいてきぼりにされるんだ。こういうのってけっこう多くの人に起こることだよね。ノース・イングランドでもよくあるんだ。年上の魅力的な男と付き合ったけど最終的には最低な奴で、それを後悔する、みたいなことがね。
 すごく悲しいフィーリングだと思う。それに、ジェイムスの歌い方がすごく感情的なんだ。クールな曲だよ。彼のファルセットの声がすごくソフトでデリケートなんだ。これは最初の時点で「レコードに入るな」って確信した曲。アルバムの残りの曲は、もっと楽観的なフィーリングをもってるんだけど、これは違うんだ。

ジェイムス・バッテリー:僕にとって歌うことは「演じる」ことと同じなんだ。歌うときはとにかく深く自分の体験などを思い出してそのことに没頭するようにして、感情をうまく出せるように努めているよ。それにヨークシャーの風景は切なくてメランコリックな感触がにじみ出ていて、とくに秋は傾向が強くて人びとの仕事に影響を与えていると思うよ。実はこの曲のモチーフはテレビ・ドラマで『This is England』(2009年には日本でも公開されたスキンヘッズの映画のテレビ・ドラマ版。監督はストーン・ローゼズのドキュメンタリーを撮っている)っていうのがあってそこから来ているんだけど......そのドラマの父娘の関係性を描いているのがこの歌の歌詞だよ。ヨークシャー(英国北部の地域)のスラスウェイトはハワースからそんな遠いし、ブロンテ姉妹(ヴィクトリア時代を代表する小説家姉妹)が住んでいた場所だしね。湖に何かいるのかもね......。

"Amplified Ease"なんかとてもユニークな曲ですが、言葉の意味よりも音を重視しているということでもあるのでしょうか?



ジェイムス・ヤング:特別そういうわけではないよ。サウンドって人の気を引く最初のものだと思うから、僕たちは曲にいい雰囲気を盛り込めるように細心の注意を払っているんだ。できるだけ音にも歌詞にも出来るだけ意味を込めるようにしているんだ。ヴォーカルに関してはいつもこういう録り方をしているから、僕たちにとってはとくに目新しいものでないよ。歌詞はいつももっとチャレンジングなものだよね。歌詞は音より主観的になりやすい傾向にあるから難しいよね。歌詞に関しては曲と同じくらいの時間を費やしたからどちらも同じくらい重視しているよ。

エイデン・ウォーリー:トラックによるかも。ヴォーカルのサウンドと他の音が影響し合って良い音が生まれるっていうのは、すごく意味のあることなんだ。もちろん、ときには歌詞は何かを意味してなければいけないし、僕たち全員がその歌詞の内容にたいしてしっくりこないといけない。でもときに、その曲にとっては歌詞がそこまで大切じゃないこともあるんだ。君が言ったトラックは、まさにそういうトラックなんだけど、そのふたつの曲は、音楽で機能してるんだ。歌詞が良いっていうのももちろん大切だけど、控えめでもいいんだよ。つねにハイエンドである必要はないと思うしね。音楽そのものが曲のフィーリングを作って表現していることもあるし。僕たちは、ヴォーカルを音として、つまり楽器として使うことがあるっていうことさ。

ちなみに"Bed Muisc-North View"という曲名の「North View」という言葉にはどんな意味があるのですか?

ジェイムス・ヤング:「North View」というのは僕たちが西ヨークシャーでレコーディングのときに住んでいた家に関係あるんだけど......この家の名前が「North View」だった。

エイデン・ウォーリー:そう、アルバム制作のために借りて住んでた家の名前が、偶然にも「North View」だったんだよ。北を見渡せる家だったんだ。住むまでそんな名前だなんて知らなかったからビックリだったよ。で、ジェイムス・バタリーがレコーディング中にその家で背中を怪我したんだ(笑)。壁からおちて、背中を折ったんだよ。マジな話(笑)。あと2週間でレコーディングが終わるってときで、その夜にちょうどプロデューサーのリチャードと、もうちょっと(レコーディングに)時間が必要だなっていう話をしてたところだったんだ。
 その話をしたあと〈ワープ〉の人たちと何杯か飲みにいって、それからジェイムスが機材をもって家に帰ったら、それが重かったか取ろうとしたかで壁からおちて怪我しちゃってさ......もっと時間が必要って話してる矢先にそんなことが起きて、10週間もプラスで必要になったんだ(笑)。
 もちろんそれは不幸な出来事だったんだけど、彼は今完全に元気。まあ、背は少し低くなったけどね(笑)。それ以外は大丈夫だし、しかもその出来事が、3つのトラックを置き換える新たなチャンスをもたらしたんだ。アルバムに入るはずだったけど、自分たちがしっくりきてなかった3曲をね。"Bed Muisc"は、ジェイムスがその怪我をしてるときにベッドで書いた曲なんだ(笑)。バック・ブレース(背中を固定するもの)をつけながらね(笑)。次のアルバム制作のときも何が起こるかわからない。全員が転んだりしてね(笑)。

アンディ・ストットやレイムのようなインダストリアル・ダブな感覚には共感がありますか? 

ジェイムス・ヤング:とくにないかな。僕はどっちも好きだけどね。

エイデン・ウォーリー:共感で言えば、アンディ・スコットに対してはたぶんあるかも。彼の音楽は好きだし、すごく面白い音楽だと思うから。あの質感が好きなんだ。彼の曲もたくさん聴くけど、でも......ブリアルのほうが僕にとってはビッグ・アーティストだよ。『ノース』の前に12インチなんかを書いてた頃は、彼の音のパレットの素晴らしさに圧倒されていたよ。でも、そういうのを敢えて自分の音楽に取入れようとしてたわけじゃないけどね。

ダーク・アンビエントな感覚に対して興味はありますか?

エイデン・ウォーリー:ないね。そういうのはそこまで聴かないから。いくつかは聴くけど、ライティングで影響を受けるまでじゃない。エイフェックス・ツインみたいなアンビエントの一部はすごく良いと思うけど。彼のダークでアンビエントな作品のいくつかは素晴らしいと思う。だから聴きはするけど、意識的にそれをどうこうするっていうのはないね。自分たちの音楽には、もっと前向きなフィーリングが流れてるから。

フランク・オーシャン、ハウ・トゥ・ドレス・ウェル、エジプシャン・ヒップホップのなかではどれがいちばん好きですか?

エイデン・ウォーリー:フランク・オーシャンのファースト・アルバム。理由は、そのアルバムがとにかく素晴らしいから。すごく新鮮だし、良いヴァイブを持ってる。エナジーもすごいし、生まれたままのサウンドだよね。プロダクションがそうなんだ。でも同時に洗練されてもいて、ヴォーカルとメロディも最高。他の二つは......正直ハウ・トゥ・ドレス・ウェルはそんなにファンじゃない。ときどき頭に音楽が流れるときはあるけどね。
 エジプシャン・ヒップホップはあまり聴いたことがないんだ。でも、今回のレコードのプロデューサーのリチャード・フォームビーが彼らと仕事している。リチャードからいつも彼らがクールで良いミュージシャンだって聴いてるよ。だから、これから聴いてみたいと思ってるんだよね。

それでは、ジェイク・バッグはいまのUKの若者の代弁者ですか?

エイデン・ウォーリー:正直ファンじゃないんだ(笑)。彼がそういう存在なのかはわからない。彼に対して他の人たちにはない魅力やビッグさは感じないなあ......わからない、コメントできないよ。あまり興味がなくて......(笑)。彼が新鮮だとは思わないだけ。彼がやってることは前に誰かがやってきていることだからさ。オリジナルじゃないから。

では、〈ワープ〉のアーティストでいちばん好きなのは誰ですか?

ジェイムス・ヤング:エイフェックス・ツインの影響を受けているのようなやつらがいちばん好きさ(笑)。

エイデン・ウォーリー:うーん......いちばんか......難しいな......誰だろう。マーク・ベルだな。彼の音楽は面白いし、良い人だし、アグレッシヴでインダストリアルなサウンドだと思うから。彼が参加したビョークの作品は本当に素晴らしいと思う。

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