Home > Interviews > Christopher Owens × Sintaro Sakamoto - 対談:クリストファー・オウエンス × 坂本慎太郎
親愛なる読者のみなさま、明けましておめでとうございます! 本年もよろしくお願い申し上げます。さて、以下の対談は、昨年12月上旬の、雨も降る肌寒い夜にやったものですが、2013年はふたりの素晴らしい新作ではじまります。どうぞ、お楽しみください。
クリストファー・オウエンス - リサンドレ よしもとアール・アンド・シー |
坂本慎太郎 - まともがわからない zelone records |
クリストファー・オウエンスがツイッターで呟いた、「坂本慎太郎に会いたい!」という一文を読んで、興奮した。もしこのふたりの対談が実現したら......という思っていた矢先だった。
人生とは本当に面白い。編集長から、「再来週クリストファー・オウエンスが来日するんだけど、菊地君はガールズのこと超大好きだったよね。こないだのSXSWでもガールズ見たっていったよね? 取材やらない?」と電話がかかってきた。ガールズを解散後の最初のアルバム『リサンドレ』(1月9日発売予定)のプロモーションのための来日だという。ちょうど、坂本慎太郎も新しいシングル「まともがわからない」(1月11日発売予定)のリリースを控えている!
そして、この企画はトントン拍子で実現へと進んだ.....んだけれど......取材当日、まさかの「クリストファー・オウエンスが飛行機に乗り遅れました」という連絡......まじっすかーーーー(笑)!
しかし、この企画に関わったみんながふたりの対談を望み、日程を調整してくれたおかげで中止は逃れた。
2012年の寒い雨の夜、取材場所に到着するとクリストファーは部屋で待っていた。取材する我々ひとりひとりに丁寧に挨拶&「ごめんなさい」を言いながら、そして、時間通りに坂本慎太郎が入ってくると、彼の笑顔は最高潮に達するのであった......。
山積みになったレコードのいちばん奥底に坂本慎太郎さんのレコードがあって、それを聴いたらすぐに好きになったよ! 実際、他のレコードは全然気に入らなかったから全部アメーバに売っちゃったんだ(笑)。唯一キープしたのが坂本さんの『幻とのつきあい方』だったってわけ。
■ではさっそくですが、はじめさせていただきますね。
クリストファー・オウェンス:あの、最初の日から変更になってしまって本当にごめんなさい......。
坂本慎太郎:ああ、全然大丈夫です。
■そもそも今回は、クリストファーさんが坂本さんに会いたいということで実現した対談なのですが、まず、クリストファーさんはどういったきっかけで坂本さんを知ったのですか?
クリストファー:えっと......、ガールズはアメリカでは〈マタドール・レコード〉からリリースしてたんだけど、ガールズを脱退してソロになったときに、僕は1年契約を結びたかったんだよね。でも〈マタドール・レコード〉はそれが嫌だって言ってきたから、〈ファット・ポッサム〉へ移籍したんだ。っで、〈ファット・ポッサム〉はアザー・ミュージックのレーベルもやっていて、僕がソロ・アルバムを作るときに、彼らがリリースしているレコードを僕の家に一箱ドンと全部送りつけてくれて、その山積みになったレコードのいちばん奥底に坂本さんのレコードがあって、それを聴いたらすぐに好きになったよ! 実際、他のレコードは全然気に入らなかったから全部アメーバに売っちゃったんだ(笑)。でも唯一キープしたのが坂本さんの『幻とのつきあい方』だったってわけ。
坂本:センキュー・ベリー・マッチ。
■ちなみに、坂本さんはクリストファーさんのことをご存知でしたか?
坂本:いや全然知らなくて(笑)、いまの海外の新譜とかをチェックすることがあんまりないので、ガールズも全然知らなくて、今回この対談の話をいただいて、過去の作品を送ってもらって、それではじめて
■おっ! ではガールズなどの作品も聴いていただいたということですか?
坂本:はい、聴いてきました。
■どうでした!?
坂本:ああ、良かったですよ(笑)。
■では、クリストファーさんは、具体的に坂本さんの音楽のどういったところにグッと惹かれましたか?
クリストファー:僕、いまのインディってあんまり好きじゃないんだ。いわゆるシューゲイズ・リヴァイヴァルとか、エレクトロニック・ポップの流行とかね。もともと昔ながらのクラシックなロックンロールとか、ポップ・ミュージックが好きなんだけど、『幻とのつきあい方』を聴いたときに、テイストっていうか、趣味が最高によくて、本当にパーフェクトなアルバムだと思ったよ! アレンジがものすごく好きだし、演奏もよくて、品のあるアルバムだと思ったね! おかしいのは、歌詞が全然分からないのにこんなに惹かれて、歌詞がなくても成立する、ジャズを聴くような感覚で聴きまくったんだ。とにかく、このアルバムのプロダクションが大好きで、ハーモニカのソロなんかはいままで聴いたなかでも最高のものだったし、コンゴとか、サックスとか、フルートとかも最高! あと、バック・ヴォーカルもすごい好きで、実際そのことについていろいろ聞こうと思ってたくさんメモをとってきたんだけど......(恥ずかしそうにメモをバッグから取り出す)。
■はははははは。今日はいくつか質問を考えてきてもらったということですね(笑)。
クリストファー:うん(笑)。
■"詞"というものが少なからずインパクトを与える坂本さんの音楽を、海外のミュージシャンがこう評価しているのに対してどう思いますか?
坂本:えっと、自分は20年くらいバンドをやってきて、それを解散したあとこのアルバムを作ったんですけど、ひとりで部屋にこもって、いちばんそのときに作りたかった曲を作って、自分では気に入ったものが出来たんですけど。うーん、まあ外国ではウケないと思ってたんで
■(笑)
坂本:普通の音楽っていうか、地味だし、すごいこだわってるのが微妙な部分なんですけど、そういうのが伝わるのかなっていうのがあったので、そういう言葉が分からない外国の人が気に入ってくれてるっていうのはすごい嬉しかったです。
■おふたりの新しい音源を聴かせていただいたのですが、それぞれ聴き比べてみると、かなり似た部分があるような気がしました。
野田:うん、ソング・ライティングというか、中心にあるのが歌っていうところがまず似てるかなっていう。
クリストファー:偶然ながら、はじめてサックスとかフルートを使ったアルバムだったから、坂本さんのアルバムを聴いたときは「ワォー!!!」って感じだったよ(笑)! でも同時に全然違ったアルバムだとも思うね。だって坂本さんの音楽はすっごいファンキーだけど、僕は全然ファンキーじゃないからね(笑)。
司会:菊地祐樹(2013年1月07日)