「Nothing」と一致するもの

Minna-no-kimochi - ele-king

 コロナ禍にトランス・レイヴ・クルーとして発足以降20年代東京クラブ・シーンの立役者として暗躍、現在はコア・メンバーによるDJユニットとして世界を駆け巡る存在となった〈みんなのきもち / Minna-no-kimochi〉が、15周年を迎えた渋谷・WWWとの共催によって今年のカウントダウン/ニューイヤー・パーティを開催。

 今回はなんとWWW / WWW X / WWWβの3フロアを全館解放し、24時間にわたるロングラン・レイヴとして開催されるとのこと。ラインナップは後日発表。150枚限定の早割チケットはすでに完売している。24時間という長尺での開催という性質から、1月1日の午前6時以降はIDチェックなしで入場可能、というのも気になるポイント。折り返しを迎える2020年代という時代の、次なるフェーズを予感させる内容となるか。その答えはフロアに。

Minna-no-Kimochi x WWW presents
24 Hour New Year Party 2025-26

LINEUP : Minna-no-Kimochi + TBA

2025/12/31 WED 21:00 - 2026/01/01 THU 21:00
at WWW / WWW X / WWWβ

Early Bird : ¥2,500 (+2D) *limited to 150
ADV : ¥3,000 (+2D)
*TICKET : LivePocket (URL : https://t.livepocket.jp/e/24hour_nyp)

INFO:WWW 03-5458-7685

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※20歳未満入場不可・要顔写真付ID / Over 20 only・Photo ID required
※入場時別途2ドリンク代 / 2 drink tickets charge for entry
※AM5:00以降再入場可 / ReEntry after 5;00 AM
※再入場時別途1ドリンク代 / 1 drink ticket charges for re entry
※AM6:00以降IDチェックなし/ No ID check after 6:00AM
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▼Minna-no-Kimochi

みんなのきもちは、2021年に東京で結成されたレイブクルー/DJ ユニット。アンビエントや実験音楽に根ざしつつ、90年代トランスをポストクラブ的手法で解体し、 身体的恍惚と精神的高揚を同時に立ち上げるそのサウンドは、現代トランスの臨界点を映し出す。レイブの原初的コミュニティ感覚とグローバル・クラブカルチャーを接続する媒介者として知られている。レイブクルーとしては、都内近郊の倉庫、海岸線、山間の廃墟などオフグリッドなロケーションでプライベート・パーティーを開催。

ドキュメント化を拒んできたその活動の傍ら、クルーのコアメンバーによる DJ ユニットはグローバルな開かれた活動を続け、ワールドツアーを度々成功させてきた。2024 年夏には英国グラストンベリー・フェスティバルの Shangri-La ステージに初登場し、4 日間を締め括るクロージングセットを披露した。また、2025年1月30日、ベルリン・ベルグハインで開催された CTM Festival でのクロージングセットも記憶に新しい。これまで欧州ツアー各所から、北米・アジアのローカル地下パーティーまで幅広く出演。DJ Magによる「Ones To Watch 2025」に選出された。彼らのレーベル・プロジェクト「Mizuha 罔象」は、次世代のトランスミュージックや環境音楽、ポスト・クラブのサウンドスケープを探求するオンライン・プラットフォームで、世界中から先鋭的な作品を集めリリースしている。

Oneohtrix Point Never 『Tranquilizer』 - ele-king

OPN考

 気づけば、どんな話題にも「美学」という言葉が入り込んでいる。K-POPのファンダムでは「〇〇コア」という呼び方が定着し、ファッションでも、写真でも、何かしらの“感じ”に名前がついていく。
 いま、誰もが美学の話をしている。「Aesthetics Wiki」には既に千以上のページが生まれ、今やリミナルスペースは人気のフォト・スポットである。
 美学は孤独を説明するのだ、とぼくは思う。
 「Y2K」「Dreamcore」「Liminal Space」──それらの言葉は、あなたの指先にあるもの、足元に転がっているものをもってして、あなたが一人ではないことを示す。
 それはあなたの「コア」であり、私たちのものでもあるのだ。
 「コア」を所有すること。それは孤独を共同所有物へと変えることだ。
 しかし、Oneohtrix Point Never、このどこまでも加速し続ける音楽家はそうした戯れにほとんど興味を示していないように見える──決して誰の手にも収まらないまま、彼は進み続ける。
 メディウムを変え、声を変え、時には名義も変えながら、ただ残響だけが、その軌跡を指し示す。

Photo: Aidan Zamiri

Tranquilizer

 今作の創作のきっかけとなったとOPNが語る商業用オーディオ・キットは、単なる素材であるからして、鳥の鳴きも「悲しげな」ピアノの旋律も──そのままでは一切の意味を持っていない。
 いや、持たないように設計された「マテリアル」であった。
 それらは音楽家によって分解され、加工され、成形され、楽曲を構成するパーツとなる。
 そのときに初めて、鳥の鳴き声は鳥の鳴き声として機能し、悲しげなピアノの旋律は悲しげなピアノとしての役割を得るのだ。
 精神安定剤(Tranquilizer)。
 「安定させる」という言い方をするのなら、そこにあるものはひどく不安定であったということだ。
 大量のマテリアルを触っては投げ捨て、その果てにやっと完成した一応の形も、彼はやや大ぶりな身振りでどこかへ投げ捨て、また次のマテリアルへと手を伸ばしていく。
 安定と不安定の往復。トラックを作りながら次のサウンドを“ブラウジング”している音楽家の姿がぼくには見えてくる。
 彼は安定を捨て、均衡を崩し、もっともらしさを軋ませて……そうまでして、何かを探し求めている。
 山積みになったマテリアルをある瞬間旋律と和声で拾い上げて、その底に眠っている、ひどく重たく、歪なままのものに触れることを試みるのだ。
 安定などとうに失った世界で、誰かが夢見た別の未来の残響が、その奥からまだ微かに響いているのではないか。
 OPNが触れようとするそれは沈没船の宝箱か、固く閉ざされていた、地獄の蓋か。

その鳥が卵をひっくり返した。
卵は巣をひっくり返した。
巣は鳥かごをひっくり返した。
鳥かごは敷ものをひっくり返した。
ジョルジュ・ペレック『さまざまな空間』水声社

現在発表された以下の5曲の各曲レヴュー

“Lifeworld”

 クレーン車、どこかのレコードショップ、キーボードを叩く手……。
 アルバムから最も早く公開されたこの曲のビデオは、一見すると無関係なシーンが次々に移り変わる、落ち着きのない4分ちょっとの映像であった。
 ちかちかするシンセサイザーと環境音のなかで、繰り返されるハミング。それは何か主題めいたものを伝えようとしているようにも思えるが、実のところ、それ自体は何も語ろうとしてはいない。単なる「イメージ」の蓄積。データとして加工された音声ファイルがただ暫定的な居場所を与えられているにすぎない。
 しかし、私たちはつい聴き取ってしまう。何を?
 ビデオでは最後に、不明の撮影者が誰かに呼ばれて家を出ようとする。
 外は明るい。山を切り開き、そこに意味を持たせた農園風景。何度も現れる宇宙のモチーフ。表面温度という情報にのみ還元された私。

“For Residue”

 残ったもののために(For Residue)。
 サンプル・ライブラリの喪失を創作のインスピレーションとする本作のイントロであるこの曲は、柔らかなノイズから始まって、「For Residue」と楽曲名を呟く声が現れる。そしてその後に弦楽器とシンセサイザーの和声で幕が開く。……その身振りはやや大袈裟で演技じみているように思えてくる。
 だが、聴いていけばすぐに、そのハリボテめいた演出こそが、本作を理解するキーとなっていることがわかった。シンセサイザーのループは中途半端なところで繰り返し、それは明らかにメロディラインとしての佇まいではない。同じように、鳥の声は環境のレイヤーには配置されず、むしろハイハットやタムドラムのようにただ用いられている。
 いちどマテリアルとなった音声は、全てその機能のために並べ替えられる。

“Bumpy”

 この楽曲に「でこぼこしている」(Bumpy)というタイトルが付いていることが非常に重要だ。
 その動きは非常にスムースだ。こぼれ落ちそうなサンプルを次から次に和声と旋律をもってして拾い上げる。動き続けるメロディを組み合わせて見事なソフト・ランディングを見せる終盤の流れも素晴らしい。
 だが、完璧な滑らかさのなかでこそ、いかにこの楽曲が「でこぼこ」であるかを感じさせられる。整いすぎた表面を撫でながら、私たちは音の下にある微細な凹凸を確かに感じ取る。

“Measuring Ruins”

 落ち着きのない楽曲構成の中でぼくに見えてきたのは、彼が「ブラウジング」...何かを探し求めて、音声ファイルを次から次に配置していく姿であった。
 飛び回るドローンが世界を捕捉する。あらゆるマテリアルは管理可能な対象へと変わる。そして空間上に現れるのは「美しい」風景群だった。

“Cherry Blue”

 この楽曲の特殊なところは、明らかに作品の「進行方向」が強く意識されている点だ。
 トラックの再生開始地点から終了地点へという意味ではない、つまり「力の働く方向」が確かにそこにあるように感じられる。
 楽曲を通して使われているピアノリフがその最も顕著なところである。ダブの響きを思わせる深い音響効果のなかで、この旋律はフィルターのオープンとクローズでその身体を何度も引き裂かれようが、ループの中に引き込まれようが、そこからどうにか戻ってきてまた進み続ける。
 楽曲のヴィデオはとりわけ奇妙で、木々や家、街といったイメージがカットが変わるごとに姿を変えて、ついには現実と非現実ですらいくつものレイヤーに分解されたうえでないまぜになる。彼がクロッシュの中の何かを家へと運んでゆく、その力の「進行方向」だけは決して最初から最後まで変わらない。

パート2へと続く……

Tocago - ele-king

 どこまで歩けば、自分の居場所にたどり着けるのだろうか。奪われた生活圏、シティ・ポップの空虚さ、裏路地にさえも安くはない古着屋やカフェが並んでいる。居場所を失った声が耳から離れない。それは、Tocagoというバンドの“家”という曲である。

 ここ数週間、Tocagoのことが頭から離れないでいる。運が良かったのだろう。ライヴを観るまで、ぼくはTocagoに関する情報をもたなかったから、なんの先入観もなく、無防備な状態で彼らの演奏と向き合うことができた。

 ボブ・スタンレーは、21世紀のポップ・ミュージックにとっても通用する二つのひな形を、ジュディ・ガーランドとビリー・ホリデイのなかに見ている。スタンレーによればこうだ。ガーランドは常に「この歌は私に何を与えてくれるのか?」を問いながら歌ったが、ホリデイはただ「自分はこの歌に何を与えられるのか?」を考えた。前者がどういう人たちのことかは読者のご想像にまかせるとして、Tocagoの沖ちづるは明らかに後者に分類される。でっかいエピフォンの生ギターを抱えながら歌う彼女の、まさにホリデー的な酩酊状態にも似た歌唱法には即興性がある。ゆえに、ライヴにおいてその生々しさがより強度を上げて発揮される。ぼくが初めて聴いたライヴの冒頭で演奏した“虫”という曲には殺気だったものがあり、と同時に、自分の魂を型にはまられてたまるかという確固たる気持ちの強さがより鮮明に出ていたけれど、やはり圧倒されたのは、なかば乱暴な、静的でありながら暴力性を秘めたその歌唱だった。

 こんなバンドがいたのか、というこの予期せぬ出会いに喜びを感じながらぼくは釘付けになった。Tocagoは、表向きにはビッグ・シーフに触発されたバンドと紹介されているが(じっさい、リキッドルームでのライヴの第二部では1曲目にカヴァーを演奏した)、彼らのポテンシャルを考えれば、そうしたレッテルが剥がれるのは時間の問題だろう。磯部兄弟のリズムには、レゲエが入っている点において、アメリカーナの表層的な模倣にはなりえない。また、森飛鳥のすばらしくブルージーなギターは、ホリデー的な沖の歌唱から感じられるアウトサイダーとしての威厳をみごとに支えていると言えるだろう。メンバーのふたりがアンビエント・プロジェクトに着手していることも、Tocagoの潜在能力を大いに膨らませている。

 残念ながらTocagoは、まだ自分たちのほんとうの実力を録音しきれていない。バンドは2023年に自主でEP「Wonder」を出し、昨年配信のみで「How Are You Feeling?」を発表、アナログ盤のみでそのカップリングが〈Pヴァイン〉から再来週リリースされることになっているが、ライヴでは未発表の曲も演奏している。KATAのライヴではビートレスで、スライドギターが滑らかに広がる曲(曲名は知らない)が印象的だった。その自己破壊的で即興性のある沖の歌唱は強烈で、誤解を恐れずに言えば、ブルースに浸った中島みゆきのように思えた。その曲に限らず、Tocagoの多くの曲は愛についての歌だが、それは愛について歌われるときの単純化された言説を突き放した愛の歌である。愛について語るときに切り捨てられる愛についての歌は、書かれているときよりも声に出したときに強いものとなる。
 もちろんバンドには軽快な曲がある。とくに“How Are You Feeling?”のような曲にはグルーヴがあるし、磯部兄弟のリズムには走っているときに感じる風がある。代田橋FEVERでのライヴはワンマンではなく、またフロアもまばらで、KATAのときとはだいぶ状況が違っていたが、バンドは緊張感を削ぐことなく、さいごまで全力で駆け抜けていった。風は冷たくなるだろう。それでもかまわない。すばらしいバンドと出会えたことを思えば。


Tocago / トーカゴ
How are you feeling? / ハウ・アー・ユー・フィーリング?

発売日:2025.11.19
定価:¥4,500(税抜¥4,091) / PLP-8275

TESTSET - ele-king

 TESTSETのセカンド・アルバム『ALL HAZE』。これは本当に見事な作品だ。名盤といっていい。現代のニューウェイヴの理想形、あるいは理想郷と呼ぶべきアルバムである。私はアルバム・リリース以来、何度も聴き返しているが、いまだ飽きることがない。
 音色、音の質感、構造、緻密さ、リズム、メロディ、ノイズ、声。そのすべてが精巧に組み立てられ、バンドの有機的な推進力を生んでいる。1曲目 “Dry Action Pump” を再生すれば、気づけばラストの “Initiation” まで一気に聴き通してしまう。その構成の見事さと音の快楽。そのまま頭に戻り、再び再生してしまうほどだ。
 メンバーは言うまでもなく、LEO今井、砂原良徳、永井聖一、白根賢一の4人。METAFIVEからLEO今井と砂原が独立し、サポートだった永井と白根を正式に迎えて始動したバンドである。だが、いま彼らにMETAFIVEの影を重ねることに意味はない。TESTSETはすでに、完全に自律したバンドという有機体へと進化している。
 確かにファースト・アルバム『1STST』も秀逸だった。だが『ALL HAZE』は、さらにその上をいく。現在進行形のバンドとしての「逞しさ」を手にした作品といえよう。ここであらためて、このバンドの中核にいる砂原良徳という存在から、その到達点を見てみたい。
 砂原良徳は、YMOそのままの音を決してそのまま再現しない音楽家だ。世界有数のYMOマニア(YMOカルトキング!)であり、メンバーのソロ作品のリマスタリングも手がけてきた人物でありながら、彼自身の音は再現ではなく再構築である。電気グルーヴでもソロでも、影響を独自の濾過装置に通し、浄化し、別次元へと変換してきた。彼の音には確かなシグネチャーがある。聴けばすぐに「あ、砂原の音だ」とわかるが、その特徴を言語化することは難しい。明確でありながら不定形。ジャンルにもフォーマットにも収まらない。その不定形さこそ、彼のポップ・アート的な本質であり、モダン・ニューウェイヴの核心にある要素だ。

 そんな彼が例外的にYMOの遺伝子を強く意識したのがMETAFIVEだった。高橋幸宏のバンドであった以上、それは必然でもある。だがTESTSETは異なる。同じく多層的なサウンドでありながら、よりモダンで開かれた均衡を志向している。砂原のみならず、LEO今井、永井聖一、白根賢一、それぞれが「ズラす」ことを恐れず、ズレながらも一体化している。そこにバンドとしての統合がある。『1STST』がまだ名刺代わりだったとすれば、EP「EP2 TSTST」(2024)を経た今作では、完全に4人の共同体として結実した。LEO今井+砂原良徳という出発点から、永井と白根を含む有機的なユニットへと進化したのだ。
 『ALL HAZE』は、その進化の証だ。LEO今井の痙攣的なダンディズムと、権威への抵抗を孕んだ歌詞はさらに研ぎ澄まされ、その声がバンドの顔として機能している。永井聖一のギターは、令和の布袋寅泰(いや、本当にそう思うのだ)を思わせるような音色と存在感を放ち、白根賢一のドラムはニューウェイヴ的な硬質のグルーヴを描き出す。そして砂原良徳のシンセ・ベースが、バンドのもうひとつのアイコンのように鳴り響く。個々の演奏者としての力量が、ひとつの生命体のように融合している。
 加えてサウンド・デザイナーとしての砂原は、各メンバーの音を際立たせつつ全体を統制し、俯瞰的に構築している。YMOの系譜を継ぎながらも、METAFIVEの物語(あるいは呪縛)から自由になり、TESTSETとしてのモダン・ニューウェイヴを確立した作品、それが『ALL HAZE』である。もちろん、現代の音楽にアーカイヴ意識が皆無なわけではない。『ALL HAZE』にはウルトラヴォックス『Vienna』やデペッシュ・モード『Violator』の気配が漂う。80年代的な構築美と緊張感を、21世紀の音像でアップデートしている。これこそがモダン・ニューウェイヴの実践である。
 “Dry Action Pump” や “Deleter” ではLEO今井のヴォーカルが圧倒的な存在感を放ち、“Neuromancer” では永井聖一の透明な声が浮かび上がる。どこかニューウェイヴ/ニューロマンティックな気配を湛えたこの曲は、本作の象徴的な名曲だ。同じく永井作の “Rabbit Hole” ではデペッシュ・モード的な質感が広がり、永井の存在感がさらに強く響く。LEO今井、永井聖一、砂原良徳による共作 “Coptic Feet” は、90年代テクノ的トラックの上で三者の個性が交錯する佳曲だ。そして白根賢一作曲の “The Haze” は叙情的で胸に迫るエレクトロニックなネオアコ風味の曲。そしてラストを飾る砂原によるインスト “Initiation” は、彼なりのニューウェイヴ論として、わずかに不穏な余韻を残して幕を閉じる。
 現在のTESTSETの魅力は、この絶妙なバランス感覚にある。だから聴き飽きないのだ。個々の霧が拡散しながらも、どこかで結び合うような流動的な進化を遂げた。TESTSETは、その発生の経緯からしても特異なバンドであったが、今、真の意味でバンドになった。そしてその音は、唯一無二の現代的なニューウェイヴ・サウンドとして響いているのだ。

 砂原良徳は過去を継承しつつ、決して「そのまま」をやらない音楽家である。その精神はTESTSETでも貫かれている。彼は俯瞰しながら自らを霧のようにバンドに溶け込ませ、新しい音の未来を構築していく。彼は、そしてTESTSETは、ニューウェイヴを更新し、現代における最高の形で結実させたのである。

Lankum - ele-king

 こいつはすさまじい。先週10月30日、ダブリンのフォーク・バンド、ランクムがザ・スペシャルズ1981年のラスト・シングル “Ghost Town” のカヴァーを公開しているのだが、これが鬼気迫る1曲に仕上がっている。失業や廃墟化する都市、暴動などを背景にした原曲もじゅうぶんダークだったけれど、ランクムはそれをさらに尖鋭化、「これが現代世界の真実だ」といわんばかりに、原曲以上に闇に満ちたアレンジを施している(MVも原曲を意識)。必聴です。

『マザーシップ・コネクション』50周年記念号
Pファンク研究の第一人者、河地依子監修による永久保存版

パーラメント/ファンカデリックのほぼ全ディスクをはじめ、メンバーのソロ作品もほとんど網羅。総数200枚近くのPファンクの宇宙を大紹介!

ジョージ・クリントンの貴重なインタヴューも2本再録

執筆:河地依子、春日正信、新田晋平、野田努、二木信、ニール・オリヴィエラ、小林拓音
写真:石田昌隆、ほか

菊判/224ページ

刊行に寄せて

目次

【ディスクガイド・ヒストリーほか】
文:河地依子・新田晋平・春日正信・野田努・二木信・小林拓音

Chapter 1 前史 1955~
Chapter 2 ファンカデリック始動 1970~
Chapter 3 黄金時代 1974~
Chapter 4 ジョージのソロ活動 1981~
Chapter 5 Pファンクの復活 1989~
Chapter 6 再評価の波 1996~
Chapter 7 新世代との融合 2009~
Chapter 8 主要メンバーたちのソロ活動

【コラム】
楽しいPファンク(河地依子)
Pファンクとデトロイト・テクノ、あるいはメタ化されたファンク(野田努)
ヒップホップ世代に継承されるPファンク(二木信)
ジョージの自宅訪問記(河地依子)
Pファンクが解放したもの、身をもって変革したこと(ニール・オリヴィエラ)

【インタヴュー】
ジョージ・クリントン 1992(河地依子)
ジョージ・クリントン 1994(河地依子)

人物紹介(河地依子)

著者プロフィール

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
amazon
Rakuten ブックス
7net(セブンネットショッピング)
ヨドバシ・ドット・コム
Yahoo!ショッピング
HMV
TOWER RECORDS
disk union
紀伊國屋書店
MARUZEN JUNKUDO
e-hon
Honya Club

全国実店舗の在庫状況
紀伊國屋書店
三省堂書店
丸善/ジュンク堂書店/戸田書店、ほか
有隣堂
くまざわ書店
TSUTAYA
大垣書店
未来屋書店/アシーネ

Zohran Mamdani - ele-king

 11月4日におこなわれたニューヨーク市長選で民主党の候補ゾーラン・マムダニが当選確実、との知らせが飛びこんできた。ムスリームとして初のNY市長が誕生する。
 マムダニはウガンダの、音楽ファンにとっては〈Nyege Nyege〉でなじみ深いカンパラの出身で、インド系の34歳。社会主義者として知られ、富裕層への増税、家賃値上げ凍結、公営バス無料化などをうったえているが、政界進出前にはヒップホップ・ミュージシャンとして活動していたこともあって、Young Cardamom名義でウガンダのラッパーHABとEPをリリース、それこそ《Nyege Nyege Festival》への出演経験もあったりする。
 なぜいまマムダニが重要なのかについては、『別冊ele-king アメリカ』のいくつかの記事でも触れられているので、これを機にぜひチェックしてみてください。


Kieran Hebden + William Tyler - ele-king

 今日、フォー・テットをひとつの輪郭で捉えることは、もはや難しい。同名義で作品を提供し続けてはいるが、いまや名義も多彩で、パーカッションズ、KH、さらには00110100 01010100や⣎⡇ꉺლ༽இ•̛)ྀ◞ ༎ຶ ༽ৣৢ؞ৢ؞ؖ ꉺლなる意味不明な名義も。一方でコラボも旺盛だ。出自たるクラブ/ダンス方面では言わずもがな、スピリチュアル・ジャズのドラマー、スティーヴ・リード、ヒップホップではマッドリブと驚きの共作も果たした。
 そんな縦横無尽に活発なキーラン・ヘブデンがその本名で送るのは、ラムチョップ、シルヴァー・ジューズの元メンバーとしても知られるフォーク・ギタリスト、ウィリアム・タイラーとのコラボレーション。生まれた国は違えどふたりが共有するノスタルジックな記憶──父親が愛聴していた80年代USのカントリーやフォークに囲まれた幼少期に触発された今作は、ふたりの記憶と技巧が交差した作品に仕上がっている。エレクトロニック・ミュージシャンとフォーク・ギタリストのコラボだが、これはいわゆる “フォークトロニカ” ではない。

 タイトルにある「41 Longfield Street」はヘブデンが幼少期を過ごしたイギリスの住所で、タイラーの出自たるアメリカのナッシュヴィルとはずいぶん距離がある。さらにいえば、父がその地で活躍したソングライターであり、その伝統を基調としつつ先鋭的なアメリカーナを追求するタイラーと、他方、UKポスト・ロックからはじまり、その地のクラブ/ダンス文化の文脈にいるヘブデンでは、その音楽的な歩みもまったく異なるものにみえる。しかし、一見は共通点を見出しにくいふたりが出会い意気投合し、ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーフェネスなどの共通言語を見出しながら、やがて先述した意外な共通の記憶にいき当たる。それは先行して〈Psychic Hotline〉からの「Darkness, Darkness / No Services」としてお目見えし、続編たる今作へとつながった。

 幕開け、ライル・ラヴェット “If I Had a Boat” の11分長のインスト・カヴァーでは、かすかに燻る歪んだサウンドが立ち上がり、タイラーの繊細なフィンガー・ピッキングのアルペジオがはっきり現れると、やがてヘブデンによる電子音楽の世界へシフトする。暗がりに陽光が射すまでの移ろいを描くかのような美しい曲だ。
 このカントリーのカヴァー、また、断章で挟まれる古いラジオの周波数を探るかのような音などは、ふたりが共有する音楽的ルーツの追体験をリスナーに促すかのようで、極めて懐古主義的な作品にも感じられる。しかし他方、対面セッションを設けタイラーの即興的なギター演奏を録音すると、それらを素材に、ほぼ2年に及ぶ丹念なプロダクション作業が施されたという。“When It Rains” のようにアメリカーナの香りを色濃く残しつつ、電子的な空間処理でほのかに揺らぎを与える曲もあれば、“Spider Ballad” のようにヘブデンらしい四つ打ちが明らかに響く、クラブ耳に嬉しい佳曲もある。今作において最も耳を傾けるべきは、過去を掘り起こし、その記憶をなぞらえる郷愁的な側面ではなく、互いの遠い記憶の交差点を確かめ合いながらも、まったく別の大陸で生まれた異なる創造性がせめぎ合い、混じり合い、ひとつのサウンドへみごとに昇華したところだ。クローザーの “Secret City” は間違いなくベスト・トラック。ヘブデンによるエレクトロニックな音の壁に覆われ、やがてタイラーの紡ぐギターが霧をかき分けるかのごとく浮かび上がってゆくさまは本当に美しく、圧倒的で涙すら誘う。

 〈NTS〉のプログラム「Hearts of Age」では、まるで今作の “エクステンデッド・ヴァージョン” とでも言いたくなる、2時間に及ぶミックスが公開されている。今作の音を散りばめつつ、カヴァーしたライル・ラヴェットの原曲、ヘブデン自身の四つ打ち、あるいはタイラーの好むフォーク、フィールド・レコーディングなどが並べられる。なるほど、確かにそこにはノスタルジーが横たわっている。しかし、単なる焼き回しではない。共有する記憶を慈しみながらも、その繊細な指使いがアンビエントの気配にまで触れるタイラーのギター演奏を軸に、ヘブデンが長年培ってきた電子音楽の技巧を重ね、かくも美しいサウンドとして結実した。それは過去を手がかりに、まだ見ぬ景色を描こうとする試みかのようだ。


¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U - ele-king

 2026年にはコーチェラ・フェスティヴァルへの出演も決定し、いまや世界からもっとも注目される日本人DJとなった¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U(行松陽介)。インターネット上でのヴァイラルによってプレイ・スタイルへのイメージは変化したかもしれないが、その本質が実験的でエッジーな音楽を求めつづける生粋の好事家であることに変わりはない。

 そんな¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uがかつてのホームであった大阪を拠点に主催していたパーティ・シリーズ〈Zone Unknown〉が、渋谷・WWWの15周年公演シリーズとして開催。これまでイキノックスやKamixloなどアヴァンギャルドなアーティストたちを招聘したのち、活動の変化にともない一時休止。今年ベルリンにて再始動した同シリーズが、初の東京編としてデイ・タイムで開催される。

 出演者にはUKよりマーク・フェルライアン・トレイナー親子を招聘し、ローカル・アクトとして盟友YPY(日野浩志郎)、京都のエクスペリメンタル・セレクターAkaneが出演。ライトニング演出は現代美術とクラブ・カルチャーを行き来するデュオ・MESが担当。メインストリームとアンダーグラウンドの両極に立つ彼の、いまの真意に触れられる一夜となるか。

Congo Natty - ele-king

 ジャングルのパイオニア、レベルMCことコンゴ・ナッティがひさびさに来日を果たす。コンゴ・ナッティとしての活動30周年を記念するツアーで、大阪が12月5日、東京が6日と8日の2公演。重要人物の希少な来日公演、これは目撃しておきたい。

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