「!K7」と一致するもの

Meemo Comma - ele-king

 先頃マイク・パラディナスの〈プラネット・ミュー〉からリリースされたMeemo Comma(マイクの奥さん、ラーラ・リックス-マーティンの変名)の新作は『Neon Genesis』、これは「新世紀エヴァンゲリオン」の英語タイトル「Neon Genesis Evangelion」から来ているのではないかと、Meemo Commaがかつて『攻殻機動隊』にインスパイアされた『Ghost On The Stairs』をリリースしていることを知っているファンはすでに察していることでしょう。

 Wireの目隠ししジュークボックスでの夫婦漫才(?)でも笑わせてくれましたが、Quietusの企画、旦那=マイクが妻=ラーラにインタヴューするという記事も面白いんですよ(例;マイク「自分の夫のレーベルからのリリースは縁故主義だと思いますか?」。ラーラ「もちろん、本当は出したくなかった」)。そのなかで「『Neon Genesis』を出したのは何故?」とマイクから訊かれて、彼女いわく「あながた出せと言ったからでしょう」とのことでした。なんというか、つまり、間違いなく〈プラネット・ミュー〉は新次元に進んでいるようです。

 さて、実際のところですが、bandcampの解説によれば、彼女が『エヴァンゲリオン』のヴィジュアルにインスパイされたのは事実で、また、それとは別に『Neon Genesis』には彼女のユダヤ人体験が主なコンセプトとしてあるということです。ちなみに音楽はエレクトロニカ+アンビエント+フットワーク仕様で、これは冗談抜きの聴き入ってしまう注目すべき作品です。レヴューはあらためて掲載する予定ですが、アルバムはぜひチェックしましょう。

Overmono - ele-king

 2013年の「Hackney Parrot」や「Nancy’s Pantry」で大きなインパクトを残し、近年は〈Whities〉(現在は〈AD 93〉に改名)からもリリースしているテッセラ(Tessela)ことエド・ラッセル。
 その彼と、トラス(Truss)名義で活動するトム・ラッセルから成る兄弟デュオがオーヴァーモノだ。昨秋のEP「Everything You Need」も良かった彼らだが、去る3月24日に最新シングル “Pieces Of 8” がリリースされている。

 どうです、かっこいいでしょう。これまで彼らのライヴで披露されてきたこの曲は、4月9日に発売される12インチ「Pieces Of 8 / Echo Rush」のA面に収録予定。B面も楽しみだ。

Alan Vega - ele-king

 2016年7月に他界した、NYノーウェイヴの始祖スーサイドのヴォーカリストだったアラン・ヴェガ。彼が1995年から1996年にかけてニューヨークで録音した未発表作品が『Mutator』というタイトルで〈Sacred Bones〉から4月23日にリリースされることが先日アナウンスされた。そのリリースに先駆けて、アルバムから“Fist”なる曲が公開されている。Liz Lamereによればこの曲は「人びとが力を集め、いっしょになってひとつの国を作るための強力な行動の呼びかけ」だという。
 なお、〈Sacred Bones〉にはほかにもヴェガの未発表音源のアーカイヴがあり、『Mutator』以降も発表する予定だ。

Mark Fell And Rian Treanor - ele-king

 前々号のWire誌のインヴィジブル・ジュークボックス、面白かったなぁ。マーク・フェルライアン・トレイナーという親子対決だったんですけど、アンソニー・シェイカーを巡ってここまで盛り上がれる親子がこの惑星上にどれほどいるというのか! (最新号のマイク・パラディナスとラーラ・リックス-マーティンとの夫婦対決も面白かったんだよな)
 そのエレクトロニカ親子がついに共作を発表した。マンチェスターのクールなレーベル〈Boomkat Editions〉から『Last Exit To Chickenley』。カセットテープでのリリースで、昨年の夏にサウスヨークシャー州ロザラムの庭で録音されたという。アンビエント/ミュジーク・コンクレート、そしてパーカッシヴなフリー・フォーム。レーベルサイトで試聴できます。
 そんなわけで、いつの日か小山田圭吾と米呂も共作することがあるのだろうか……

Andy Stott - ele-king

 10年代を代表するプロデューサーのひとり、アルバムごとにいろんな表情を見せるマンチェスターの異才、アンディ・ストットが通算8枚目となる新作『Never The Right Time』を〈Modern Love〉からリリースする。これまでの彼の作品の進化型であると同時に、ノスタルジアや魂の探求に導かれた曲もあるようだ。現在 “The Beginning” が先行公開中。ストットの元ピアノ教師にして近年のコラボレイターであるアリソン・スキッドモアのヴォーカルがフィーチャーされている。発売は4月16日。

Madlib - ele-king

 さまざまな名義でソロ活動からコラボレーションなど精力的に活動するマッドリブだが、昨年から今年にかけても実に多忙である。昨年はここ数年のパートナー的なフレディ・ギブズとの共作があり、カリーム・リギンズと組んだジャハリ・マッサンバ・ユニットも先日紹介したばかりだが、早くも次の新作が届けられた。今回はソロ名義ではあるが、実質的にはフォー・テットことキーラン・ヘブデンとのコラボである。片やUSのアンダーグラウンド・ヒップホップ界のカリスマ、片やUKのエレクトロニック・ミュージック界の鬼才と、一見するとあまり繋がりが見えないふたりであるが、そもそもふたりはそうしたジャンルにとらわれないアーティストであり、これまでもボーダーレスな活動をしてきたので、こうしてコラボをおこなうことは自然なこと、いや、むしろ遅かったくらいかもしれない。

 彼らがキャリアにおいて頭角を表わしてきた時期はほぼ同じで、同世代のアーティストと言える。ふたりの直接的な関係がはじまったのは、マッドリブがMFドゥームと組んだマッドヴィランのリミックスをフォー・テットが手掛けたことによる。このリミックス集は2005年にリリースされたのだが、フォー・テットにとってはテクノやダブステップなどにいく前のエレクトロニカ~フォークトロニカ期にあたるもので、一方マッドリブは前年にブロークンビーツのDJレルズをやるなど脱ヒップホップ化が進んでいた。ライフワークのビート・コンダクターをはじめて、より広範囲な音楽を素材としたビート・サイエンティストぶりに拍車が掛かっていた時期でもある。またフォー・テットはこの年にジャズ・ドラマーのスティーヴ・リードのアルバムにエレクトロニクスで参加し、その後両者のコラボによってジャズとエレクトロニクスの融合の新たな1ページを刻むことになる。そうした意味でマッドリブとフォー・テットにとって、この2005年は転機の年だったのである。
 ちなみに、フォー・テットが2003年に〈ドミノ〉からリリースしたミックスCDではマッドヴィランをかけているのだが、同じくJ・ディラプレフューズ73などヒップホップやIDM系の音も結構入れていた。ほかの収録作品はジム・オルークからドン・チェリーにミルフォード・グレイヴズスティーヴ・ライヒにモートン・サボトニック、ジミ・ヘンやフリートウッド・マックにアフロディテス・チャイルドと、まさにボーダーレスなフォー・テットの面目躍如たるものだ。

 今回のコラボはマッドリブが主宰する〈マッドリブ・インヴェイジョン〉からのリリースで、マッドリブが作曲をおこない、フォー・テットがエディットおよびアレンジを担当している。また〈ナウ・アゲイン〉のイーゴンも全面的に協力しているとのこと(彼は〈マッドリブ・インヴェイジョン〉の運営もヘルプしている)。数年来に渡って秘密裏に制作されたとのことだが、『サウンド・アンセスターズ』というタイトルは彼らの音楽の祖先、すなわち影響を受けたルーツ的な音楽を示していると考えられる。ということで、両者の共通項からするとジャズがテーマになっているのかなと思ったのだが、ジャズはもちろんソウルやファンクなどさまざまな音楽を参照したものとなっている。
 たとえば “ロード・オブ・ザ・ロンリー・ワンズ” は1960年代のフィラデルフィアのソウル・コーラス・グループのジ・エシックス(後のラヴ・コミッティー)の “ロスト・イン・ア・ロンリー・ワールド” を元にしている。ネタの掘り起こしはマッドリブらしいのだが、スウィート・ソウルの原曲がソフト・ロックというかサイケデリック・ソウル調のナンバーへと変貌しているのは、フォー・テットのミキシングによるところも大きいだろう。タイ・ファンクに通じるソフト・サイケな雰囲気は、イーゴンが関わる諸作と同じテイストだ。

 ネタ選びやサンプリング・センス的な部分では、マッドヴィランのアルバム『マッドヴィレイニー』(2004年)に通じる作品と言えるだろう。『マッドヴィレイニー』はビル・エヴァンスからマザーズ、ジョージ・クリントン、スティーヴ・ライヒと、実にさまざまなジャンルの音楽をサンプリングしていたのだが、その中でもブラジルのオスマール・ミリト&カルテット・フォルマをサンプリングした “レイド” が実に秀逸だった。“ロード・オブ・ザ・ロンリー・ワンズ”はそれに近いサンプリング・センスを感じさる。
 ほかのサンプリング例では “ダートノック” はヤング・マーブル・ジャイアンツの “サーチング・フォー・ミスター・ライト” を使っていて、やはりマッドリブはほかのアーティストとはセンスが違うというところを見せつける。元ネタは不明だが、“ラティーノ・ネグロ” はスパニッシュかフラメンコが原曲のようである。また古い音源ばかりではなく、“ワン・フォー・クアルタベー” では現在のブラジルのアヴァン・ポップ・バンドのクアルタベーを参照するなど、古今東西のあらゆる音がマッドリブとフォー・テットによって加工されている。

 そして、故J・ディラに捧げられた “トゥー・フォー・2 - フォー・ディラ”。ふたりと交流のあったJ・ディラへのオマージュが綴られると共に、アルバム全体としてはリリースの直前に急逝してしまったMFドゥームへの追悼の念を感じずにはいられない。

Goat Girl - ele-king

 ゴート・ガールのセカンド・アルバムは、2021年初頭のクライマックスのひとつだろう。本作がリリースされた1月から2月にかけてのおよそ1ヶ月ものあいだ、ぼくは三田格とともに『テクノ・ディフィニティヴ』改造版のため、ほぼ毎日、1日8時間以上、エレクトロニック・ミュージックを片っ端から耳に流し込んでは文章を書きまくっていたので(それはそれで充実した日々だったけれど)、ほかの音楽を聴く時間などなかったし、ましてや新譜などエレクトロニックでなければ後回しである。で、『テクノ・ディフィニティヴ』が終わったと思ったらここ1ヶ月は、またしても三田格とともに別冊のフィッシュマンズ号のために取材をしたり調べたり、ほぼ毎日、1日8時間以上はフィッシュマンズを聴いている……わけではないので、いまようやくゴート・ガールまで追いついたという。ふぅ、いまようやく、彼女たちの新作『On All Fours』が素晴らしい出来であることを知ったのであった。

 にしても……バンドというものは、こうして成長するのか。本作3曲目に“Jazz (In The Supermarket)”という曲がある。喩えるなら、この曲はザ・クラッシュの『サンディニスタ!』やザ・レインコーツのセカンドのなかに入っていたとしても不自然ではない、そう言えるほどの舌打ちしたくなるような格好いい雑食性がある。レゲエ風のリズムも個人的にかなりツボで、本文を書いているたったいま現在かなり空腹であることから、ロンドン郊外のあまり高級ではないエスニック・レストラン街が夜霧の向こうに見えてくるようだ。
 ふざけている場合ではない。『On All Fours』はメランコリックで、雑多で、不機嫌で暗い顔をしている人たちをひそかに讃えながら、不安の波が打ち寄せる空しい夜の甘い甘いサウンドトラックとなる。“P.T.S. Tea”のトランペットといい、“Once Again”のベースラインといい、“A-Men”のドラムマシンといい、そしてアルバム全体を浮遊し漂泊するシンセサイザーやギターの音色といい、ゴート・ガールはポストパンク流の格好の付け方をよくわかっている。ちなみに1曲目の曲名は“ペスト”、歌詞は読んでいない、ぼくはまだ音だけに集中している段階なんだけれど、本作がパンデミックの状況にリンクしていることは確実だろうし、メンバーの深刻な病も無関係でないだろう。
 しかし『On All Fours』には、そうした不吉なムードを払いのける強さもある。ザ・フォールの前座を務めたという経歴は伊達ではなかったし、憂鬱で冷たくて、しかし13曲すべてにそれぞれ固有のアイデアがあって、それらすべての曲がキャッチーでもあるこのアルバムは、ものごとがどうにもうまくいかない愛すべき人たちのなかで何度も反復されるだろう。フィッシュマンズのことを考えている最中に聴いても、あまり違和感がない。

REGGAE definitive - ele-king

全世界の音楽ファン必読のディスクガイドが登場!

スカ、ロックステディ、レゲエ、ルーツ、ダブ、ダンスホール

60年以上もの歴史のなかから
選りすぐりの1000枚以上を掲載
初心者からマニアまで必読のレゲエ案内

A5判・オールカラー・304ページ

Contents

Preface

●Chapter 01 The Ska era (1960-1965)

Column No.1 サウンド・システムのオリジン

●Chapter 02 The Rock Steady era (1966-1968)

Column No.2 1968 最初のレゲエ

●Chapter 03 The Early Reggae era (1969-1972)

Column No.3 DJというヴォーカル・スタイル
Column No.4 ルーツ・ロック・レゲエ、バビロン、Fire pon Rome

●Chapter 04 The Roots Rock Reggae era (1973-1979)

Column No.5 スライ&ロビーとルーツ・ラディクス、ロッカーズからダンスホールへ

●Chapter 05 The Early Dancehall era (1980-1984)

Column No.6 ダンスホールの時代
Column No.7 サイエンティストの漫画ダブ

●Chapter 06 The Digital Dancehall era (1985-1992)

Column No.8 My favorite riddims.
Column No.9 レゲエと聖書とホモセクシュアル

●Chapter 07 The Neo Roots era (1993-1999)

●Chapter 08 The Modern + Hybrid era (2000-2009)

Column No.10 大麻問題

●Chapter 09 Reggae Revival era (2010-2020)

Column No.11 Reggae Revivalというコンセプト

Index

[著者]

鈴木孝弥
ライター、翻訳家。訳書『レゲエ・アンバサダーズ 現代のロッカーズ──進化するルーツ・ロック・レゲエ』、『セルジュ・ゲンズブール バンド・デシネで読むその人生と音楽と女たち』、『ボリス・ヴィアンのジャズ入門』ほか。レゲエ・ディスクガイド関係の監修では『ルーツ・ロック・レゲエ 』や『定本 リー “スクラッチ” ペリー』など。『ミュージック・マガジン』のマンスリー・レゲエ・アルバム・レヴューを15年務めている。

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧

amazon
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
7net(セブンネットショッピング)
ヨドバシ・ドット・コム
HMV
TOWER RECORDS
disk union
紀伊國屋書店
honto
e-hon
Honya Club
mibon本の通販(未来屋書店)

P-VINE OFFICIAL SHOP

SPECIAL DELIVERY

全国実店舗の在庫状況

紀伊國屋書店
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア
旭屋書店
有隣堂
TSUTAYA

VIVA x Television Personalities - ele-king

 昨年はザ・ドゥルッティ・コラムやカンなどをモチーフにした服が話題になった奥沢のViva Strange Boutique、いま現在はなんとテレヴィジョン・パーソナリティーズとのコラボを展開している。
 テレヴィジョン・パーソナリティーズのダン・トレイシーは、ザ・フォールにおけるマーク・E・スミスのような、ポスト・パンク時代の圧倒的な個として知られている。とはいえ、その疑いようのない才能と魅惑的な作品、大きな影響力(アラン・マッギーをはじめ、ペイヴメントやMGMTにまで広範囲に及ぶ)を思えば、ダン・トレイシーは決して幸運な人生を歩んできたとは言えない。
 70年代末にロンドンで結成されたテレヴィジョン・パーソナリティーズの音楽には、インディー・ギター・サウンドと括られるもののほとんどすべてがある。ウィットに富んだポップ・センス、ヴェルヴェッツ、モッズ、ローファイ、ペデンチックな言葉やアート、そして何よりも自分の痛みから生まれるメロディ、甘さ、弱さ、誠実さ、神聖なる若さ、そうしたものが詰まっている。もしあなたがギター・ポップと括られる音楽が好きであるなら、テレヴィジョン・パーソナリティーズの最初の4枚のアルバムは必聴盤だ。
 しかし、そうした彼の華麗な音楽とは裏腹に、ダン・トレイシーは長いあいだドラッグ中毒や貧困に苦しみ、盗みを働き監獄で暮らしてもいる。数年前は大病を煩い手術をし、いま現在も治療と療養を兼ねて施設にいるそうだ。今回のVIVAとのミーティングやデザインのチェックなどはzoomでおこなったそうだが、「久しぶりの明るいニュースだ」と本人は喜んでいたとのこと。
 それで生まれた5つのアイテム、初期テレヴィジョン・パーソナリティーズのスリーヴ・デザインを彷彿させるコラージュ感が良い感じで、当然のことながらモッズ・コートがいちばん最初にデザインされたようです。しかし……まさか“Mummy, Your Not Watching Me”がスウェット・シャツになるとは!

VIVA x Television Personalities


・"...And Don't The Kids Just Love It" Fishtail Parka (Mod's Coat) -
27,000円(税抜)/29,700円(税込)


・"Mummy, Your Not Watching Me" Sweatshirt
10,000円(税抜)/11,000円(税込)


・"Three Wishes" Long-Sleeve Shirt
9,000円(税抜)/9,900円(税込)


・"14th Floor" Long-Sleeve Shirt
7,800円(税抜)/8,580円(税込)


・"Where's Bill Grundy Now?" Tote Bag + Big Orange Badge
3,500円(税抜)/3,850円(税込)

Style Wars - ele-king

 1970年代にニューヨーク・ブロンクスにて誕生したと言われるヒップホップ・カルチャー。その黎明期を描く貴重な映像作品として長年にわたって高く評価されているのが『Wild Style』と、そして今回初めて日本で劇場上映される『Style Wars』だ。当時、ニューヨークにて実際に活動していた本物のグラフィティライターやラッパー、DJ、Bボーイ(ダンサー)が出演しながらも、ドラマ仕立てで作られた『Wild Style』に対して、『Style Wars』は完全なドキュメンタリーであり、作品としての方向性は多少異なる。しかし、1980年代初頭のニューヨークにおけるヒップホップシーンの生々しい姿をダイレクトに捉えたという意味で、『Wild Style』と『Style Wars』は共に重要な作品であるのは疑いようがない。

 二つの作品に共通する重要な点の一つが、ヒップホップの3大要素であるラップ、ブレイキン、グラフィティを扱っているところだろう(注:『Wild Style』はさらにもう一つの要素=DJにもフォーカスを当てている)。実際、この3つの要素はたまたま偶然、同時代に存在していたにすぎず、特にグラフィティに関しては当事者である(一部の)グラフィティライターがヒップホップとの関連性を否定する発言を行なっていたりもしている。しかし、『Wild Style』と『Style Wars』によって、ヒップホップの定義が視覚的にも明確に示されたことは、その後、ヒップホップカルチャーが世界的に広がっていく一つのきっかけにもなっており、いまでは音楽シーンやアートシーン、さらにファッションシーンなど、さまざまな分野にヒップホップカルチャーは多大な影響を与えている。

 1980~83年に製作された『Style Wars』だが、三大要素の中でも最も強くスポットを当てているのが「グラフィティ」だ。『Style Wars』の発起人とも言える存在であり、プロデューサーとしてこの作品に関わっているフォトグラファーのHenry Chalfantは、実際に70年代初期からニューヨークのグラフィティシーンの盛り上がりを目にし、グラフィティ作品の撮影などを通じて様々なグラフィティライターたち繋がっていった。映画の撮影開始時にはすでに40代になっていた白人男性であるHenry Chalfantが、通常であれば決して素顔を明かすことのない10代~20代前半のグラフィティライターたちと深い関係を築いたことは驚くべきことだろう。その結果、有名無名含めて実に様々なグラフィティライターが本作に出演しており、さらに今では伝説として語り継がれている、グラフィティライターの交流の場「ライターズ・ベンチ」など貴重な映像が多数盛り込まれている。
 とはいえ、『Style Wars』は決してグラフィティの格好良さのみにフォーカスした作品ではない。ニューヨークの一般市民やグラフィティライター自身の家族にもグラフィティというカルチャーが理解されなかったり、大きな社会問題として行政側がグラフィティに対して否定的なメッセージを発している部分などもしっかり描かれている。実際、ニューヨークのグラフィティの最初のピークは70年代であり、本作の撮影が行なわれた80年代前半はシーンにとっても過渡期であった。ニューヨーク市交通局がグラフィティを排除するために様々な施策を行なったり、あるいは一部のグラフィティライターが表現の場をギャラリーに移していく様子など、その変化の兆しも本作ではしっかりと捉えている。

 今では全車両がグラフィティで埋め尽くされた地下鉄が、ニューヨークの街中を走る姿を見ることはまず不可能だろう。80年代初期のそんな貴重な映像を見るだけでも本作を鑑賞する意味があるが、グラフィティというカルチャーの陽と陰の対比も感じながら、ぜひ『Style Wars』を観て欲しい。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972 973 974 975 976 977 978 979 980 981 982 983 984 985 986 987 988 989 990 991 992 993 994 995 996 997 998 999 1000 1001 1002 1003 1004 1005 1006 1007 1008 1009 1010 1011 1012 1013 1014 1015 1016 1017 1018 1019 1020 1021 1022 1023 1024 1025 1026 1027 1028 1029 1030 1031 1032 1033 1034 1035 1036 1037 1038 1039 1040 1041 1042 1043 1044 1045 1046 1047 1048 1049 1050 1051 1052 1053 1054 1055 1056 1057 1058 1059 1060 1061 1062 1063 1064 1065 1066 1067 1068 1069 1070 1071 1072 1073 1074 1075 1076 1077 1078 1079 1080 1081 1082 1083 1084 1085 1086 1087 1088 1089 1090 1091 1092 1093 1094 1095 1096 1097 1098 1099 1100 1101 1102 1103 1104 1105 1106 1107 1108 1109 1110 1111 1112 1113 1114 1115 1116 1117 1118 1119 1120 1121 1122