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RIP

R.I.P. MF DOOM

R.I.P. MF DOOM

追悼 MFドゥーム

大前至 Jan 07,2021 UP

 30年以上にわたってヒップホップ・アーティストとして活動し、アンダーグラウンド・シーンのスーパースターとしてカリスマ的な人気を誇ってきたラッパー、MF DOOM (本名:Daniel Dumile)が2020年10月31日に亡くなった。彼の死が明らかになったのは死後から2ヶ月経った12月31日のことで、MF DOOM の公式インスタグラム・アカウントにて妻の Jasmine 名義での声明が発表され、偉大なラッパーの訃報は瞬く間にインターネット上で拡散された。享年49歳で、死因は明らかになっていない。

 MF DOOM が初めてヒップホップ・シーンでその存在を知られるようになったのは、彼がまだ Zev Love X と名乗っていた1989年のことで、当時、シーンのトップ・レーベルであった〈Def Jam〉からリリースされた 3rd Bass 「The Gas Face」への客演によって、彼自身のグループである KMD にも注目が集まることなった。客演をきっかけに〈Elektra〉との契約を果たした KMD は1991年にデビュー・アルバム『Mr. Hood』をリリースし、この作品はヒップホップ・ファンの間で大きな話題を呼ぶ。しかし、KMD のメンバーであり実弟でもある DJ Subroc の交通事故死や、レーベル側からの一方的な契約破棄によって 2nd アルバム『Black Bastards』がリリース中止になるなど不運な出来事が続いたことで、彼は一時的にヒップホップ・シーンから離れ、ホームレスに近い生活を送っていたという。しかし、マーベル・コミックの悪役キャラクターであるドクター・ドゥームからインスピレーションを受けた「MF DOOM」というアーティスト名を提げてシーンに復活し、ドクター・ドゥームと同様の金属製のマスクが彼自身のトレードマークに、1997年からソロでの作品のリリースを開始。そして、1999年にリリースされた 1st ソロ・アルバム『Operation: Doomsday』は高い評価を受け、1990年代半ばからはじまったアンダーグラウンド・ヒップホップのブームを象徴する作品にもなった。

 その後、Viktor Vaughn、King Geedorah、Metal Fingers など様々な名義でも次々と作品をリリースし、さらに様々なアーティストとのコラボレーションも行なってきた MF DOOM であるが、彼の黄金期とも言える2000年代にリリースした作品の中で最も大きな注目を浴びたのが、LAのレーベル、〈Stones Throw〉の看板アーティストであった Madlib とのコラボレーション・プロジェクト= Madvillain 名義で2004年にリリースしたアルバム『Madvillainy』だ。プロデューサーとして絶頂期であった Madlib のビートに独特な世界観と空気感を伴った MF DOOM のラップが乗ったこの作品は、コアなヒップホップ・ファンだけでなく幅広い層の音楽ファンの心を掴み、当時の〈Stones Throw〉のレーベル史上最高のセールス数を記録し、MF DOOM 自身にとっても初の商業的な成功を収めた作品にもなった。

 筆者は『Madvillainy』リリース後にLAにて行なわれたアルバムのリリース・イベントに取材を兼ねて行ったのだが、LAでは滅多に観ることのできない MF DOOM のライヴに対する観客の興奮度の高さは本当に凄まじく、彼のカリスマ的な人気を改めて実感した。そして、ライヴ後にステージ袖でマスクを取って、汗だくになっていた彼の素顔がいまでも忘れられない。

 2010年代に入ってからは、生まれ故郷であるロンドンを拠点に活動していたという MF DOOM だが、ヨーロッパを中心としたライヴ活動に加えて、コラボレーションや客演といった形で実に数多くの作品を発表し続けてきた。最も新しい作品としては、人気ゲーム『Grand Theft Auto V』のために作られた Flying Lotus のプロデュースによる “Lunch Break” が昨年12月に発表され、さらに Flying Lotus は MF DOOM とのコラボレーションEPを制作中であったことも明らかにしている。また、『Madvillainy』の続編に関しても、2011年の時点で MF DOOM 自身の口から制作中であることが発表され、一時は完成間近とも言われていたが、残念ながらいまだにリリースはされていない。しかし、実は水面下でアルバムの制作は継続していたとのことで、いずれ何らかの形で日の目を見ることを願いたい。

大前至

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