「R」と一致するもの

Little Dragon - ele-king

 これは火が点きそうな予感がひしひし。かつてサブトラクトゴリラズ作品への客演で注目を浴びたシンガー、ユキミ・ナガノ(ケレラも彼女から影響を受けています)を擁するスウェーデンはヨーテボリのシンセ・ポップ・バンド、リトル・ドラゴンがなんと〈Ninja Tune〉と契約、11月9日に新作EPをリリースします。UKでも大人気の彼ら、最近ではバッドバッドノットグッドとの共作“Tried”がBBCなどでよくとりあげられていますが、このたび公開された新曲“Lover Chanting”もダブテクノ風の装飾を効果的に利用したポップな仕上がり。早く全曲聴きたい!

Little Dragon
北欧スウェーデン発のエレクトロ・バンド
リトル・ドラゴンが〈Ninja Tune〉と電撃契約し
11月に新作『Lover Chanting』をリリース!
タイトルトラックが本日解禁!

北欧スウェーデン発の人気エレクトロ・バンド、リトル・ドラゴンが〈Ninja Tune〉と電撃契約し、11月に新作EPをリリースすることを発表した。今回の発表に合わせてタイトルトラック「Lover Chanting」がリリースされている。

Little Dragon - Lover Chanting
https://found.ee/9tFu

日系スウェーデン人のフロントウーマン、ユキミ・ナガノ率いるリトル・ドラゴンは、1996年に結成され、これまでに5作のアルバムをリリース、アメリカやイギリスでも成功を収め、アメリカのダンス・チャートでは直近の3作が連続でトップ5入りを記録。2014年の『Nabuma Rubberband』はグラミー賞にもノミネートされている。

またコラボレーションにも積極的なリトル・ドラゴンは、ゴリラズやサブトラクト、ケイトラナダ、フルームなどのヒット作品に参加し、最近では、カナダのジャズ/ヒップホップ・カルテット、バッドバッドノットグッドとのコラボ曲「Tried」をリリースし、ラッパーのヴィック・メンサと共に、ファレルの弟子格として知られるプロデューサー・デュオ、クリスチャン・リッチの楽曲にフィーチャーされたことも話題となった。

BADBADNOTGOOD & Little Dragon - Tried
https://youtu.be/MREJtWbQ6Bw

Christian Rich -DRIPPING SUMMERS (Feat. Little Dragon & Vic Mensa)
https://soundcloud.com/christianrich/christian-rich-dripping-summers-feat-little-dragon-vic-mensa

リトル・ドラゴン最新作『Lover Chanting』は11月9日にデジタル先行でリリースされたのち、同月中にアナログ盤でもリリースされる予定。

label: Beat Records / Ninja Tune
artist: Little Dragon
title: Lover Chanting EP

release date: 2018.11.09 FRI ON SALE

[Tracklisting]
1. Lover Chanting
2. In My House
3. Timothy
4. Lover Chanting (Edit)

故川勝正幸渾身のあの幻の勝新図鑑が間もなく本当に君臨!

めくる度にめくるめく 脳内麻薬が出まくる 痛快・合法的ドラッグの書!
斬りまくり殴りまくり翔びまくり愛しまくり笑いまくり歌いまくる勝新太郎。
『座頭市』、『悪名』、『兵隊やくざ』から鬼レアな映画ポスター、ロビーカード、レコード等お宝図版をめいっぱい収録!

2003年に出版されるも諸事情?により廃刊、現在入手困難でバカ高い値で取引されている勝新の永遠なる決定的図鑑が目出度く復刊!! しかも微料に安くなって、故勝新太郎関係者各位の熱い協力の下、遂に再び陽の目を見ることに。

勝新が突然入れられた “別荘” で描いた「仏陀が見えた部屋」、デニス・ホッパーによる序文「宇宙船因果号の邂逅」があり、勝新ディナーショーの魅力を語りつくした、横山剣(クレージーケンバンド)による「モミアゲハンサムワールド」や、漫画家やまだないと氏による絵と文「ろくでなしの男」、勝新フィギュアの制作者である高杉涼氏の談話、また、かつての「オリーブ少女」にはたまらない仲瀬朝子氏による『悪名』シリーズはかわいいなどの素敵な文章に、勝新映画のビジュアルが盛りだくさん!


Banksy - ele-king

 バンクシー、格好良すぎ。去る金曜日、ロンドンにておこなわれたサザビーズのオークション会場にて、出品された「風船と少女(Girl With Balloon)」が約104万ポンド(約1億5000万円)の値で落札、それは過去バンクシー作品に付けられた最高額と並ぶ値段だったそうですけれど、その直後、額縁にあらかじめ仕掛けられていたシュレッダーによって作品がばらばらに断ち切られるという出来事が発生しました。100万ポンドを燃やしたザ・KLFの逆パターン?

 翌日、バンクシーはインスタにその様子を捉えた動画を投稿、それによるとシュレッダーはすでに数年前から仕込まれていたらしく、「破壊」行為そのものがバンクシー自らの意図によるものと判明しました。これはオークションに対する明確なアンチの表明ではありますが、それによってかえって裁断された絵画の価値が上がるという指摘もあるようで、もしかしたら今度は切り裂かれた断片がふたたびオークションに出品されるという事態もありえるのかもしれません。バンクシーの次の一手が気になります。

https://www.instagram.com/p/BomXijJhArX/

Riton & Kah-Lo - ele-king

 ナイジェリアといえば国外に出るとしたら、これまではイギリスと相場が決まっていたし、実際、世界最大のナイジェリアン・コミュニティはいまだイギリスにあり、ここからディジー・ラスカルやスケプタといった移民二世のビッグMCが出て来たことはよく知られている。ところが新たなトレンドを求めて方向性を変えたメジャー・レイザーの最新ミックス・テープ『Afrobeats』にフィーチャーされていたラッパーやプロデューサーの出身地を調べてみると圧倒的にナイジェリア出身者が多く、かつてジャマイカからイギリスへと渡っていたレゲエやダンスホールのMCたちが90年代以降はジャマイカからアメリカへと目的地を変えたことと同じことが現在のナイジェリアにも起きつつあることがよくわかる。そうしたナイジェリアのMCたちがアメリカで制作したラップ・アルバムを聴いてみると、ところどころでナイジェリアや汎アフリカ的な表現も挟まれているものの、やはりアメリカン・マナーに染まってしまうケースが大半で、目先が大きく変わっているのでなければ、だったらリル・ウェインやカレンシーの新作を聴いた方が……と僕などは思ってしまう。スーサイド・ボーイズとかね。
 クラインと同じくイギリスのクラブ・ミュージックに進路を定めたナイジェリア育ちのカー~ローことファリダ・セリキはそして、これまでにリトンことヘンリー・スミッソンと組んだ2枚のシングルでごく短期間に頭角を現し、早くも昨年のグラミー賞でベスト・ダンス・レコーディングスにノミネートされている。TVドラマ『13の理由』のプロデュースやSNSからの撤退で何かと話題のセレーナ・ゴメスが早くも「Back To You」のリミキサーに起用しているので、メジャーでの知名度も急速に高まり、もはや爆発寸前だろうというタイミングでアルバムもリリースされた。

 これまでリトン名義でしかアルバムをリリースしてこなかったスミッソンも今回は名義をリトン&カー~ローとしている。リトンは99年にデビューした古参のプロデューサーで、〈グランド・セントラル〉からのデビュー・アルバム『Beats Du Jour』では穏やかなダウンテンポ、キュアーをカヴァーした“Killing An Arab”ですぐにもエレクトロクラッシュに移行し、2008年にはアイネ・クライネ・ナハト・ムジークの名義でクラウトロックとハウスをクロスオーヴァーさせたアルバムを、以後はわかりやすいことにレーベルも〈エド・バンガー〉に移り、2010年代に入ってからはベース・ミュージックを取り入れたEP「Bad Guy Riri」やヴォーカルにメレカをフィーチャーした“ Inside My Head”で完全に迷走状態に入ったかに見えた。その直後にツイッターで知り合ったのが(同時期にニューヨークに住んでいた)カー~ローだったという。“Habib”など現在に通じる曲もなくはなかったスミッソンがカー~ローをフィーチャーした“Rinse & Repeat”はアフロビートを取り入れているわけでもないのに、微妙にテンポをずらす彼女の歌い方だけで、それまでとは驚くほどグルーヴ感の異なる曲となり、まさかのグラミー賞ノミネートへ突き進んでいく。続く“Betta Riddim”のプロダクションは明らかに彼女の歌い方を生かす方向に変化し、以後もtqdやフィット・オブ・ボディといった80Sガラージ・リヴァイヴァルと歩を揃えた“Money”からイナー・シティ“グッド・ライフ”をループさせた“Fasta”などスミッソンの作風も15年目にして一気に固まり、いままであるようでなかったヒップ・ハウスのアルバムに仕上がっていく。

 アルバム・タイトルはおそらくゼノフォビア(移民嫌悪)を念頭に置いた上で、「外国人の気分」を表すスワヒリ語のようで、カー~ローの歌詞も「覇気のある人はいないのか」と繰り返す“Ginger”やニューヨークやロンドンでの生活とナイジェリアでの暮らしを比較した“Immigration”などシンプルなものが多い。「みんな、お金が欲しい」とか「(未成年の)女の子も楽しみたい、飲みたい、フェイクI.D.を持って行こう」とか。そう、ラゴスのパーティ・カルチャーを曲に反映させるためにナイジェリアからゲストを何人か招いた曲もあり、ガヤガヤとした感じで曲は進む。カー~ローはすでにリトンとのプロジェクトとは別にハイチ出身のマイケル・ブラントとも“Spice”をリリースしている。ペース早いです。ちなみに彼女の声のせいか、多くの曲はどうしてもケロ・ケロ・ボニトを思わせるものがあり、妙な懐かしさもあるのだけれど、実際のケロ・ケロは新作となる3作目でパンク・ギターを全開にし、いわばパワー・ポップ路線を突き進んでいる。

Low - ele-king

 ひとつの否定では足りない。そういうことだろうか。ふつう「二重否定」というと打ち消しを重ねることによって肯定に転じる意味で用いられるが、しかし、ミネソタ出身のヴェテラン・バンド、ロウの12作目のアルバム『ダブル・ネガティヴ』はあらゆる肯定的な感情を拒絶するかのように、重く、冷たく、じつにゆっくりと下のほうへ沈んでいく。慌てて過去作を聴き返してみたが、やはりここまでの透徹したダークさには至っていない。結成25年にして、ロウの暗黒は臨界点に達してしまった。すでにバンド史上もっともチャレンジングな作品として称賛を集めている。

 スロウコア、サッドコアの始祖と知られるロウだが、本作はロック・アクトの領域をゆうにはみ出し、比較としてウィリアム・バシンスキ、ミカ・ヴァイニオ、トマス・クーナーといった名前と並べられている。音の要素は恐ろしくミニマルで、ごく少ないドローン音の上にいくらか甘いメロディが重ねられ、もしくはノイズに埋めつくされていく。インダストリアルを思わせるリズムの打音が物悲しい調べを導いてくるばかりの“Dancing And Blood”はアンディ・ストットのトラックのようで、ビージーズ風のディスコ歌謡がどんよりとしたアンビエントの音響のなかに消えていく“Fly”はティム・ヘッカーの作風を思わせる。サッドコアの精神はまさにその「コア」を保ったまま、音を更新して解像度を上げている。

 前作『ワンズ・アンド・シックシーズ』に引き続きボン・イヴェール周りのBJバートンがプロデュースを務めているのだが、前作からの連続性よりも細かいノイズやヴォイスの細かいエフェクト処理などに『22、ア・ミリオン』以降を嗅ぎ取ることができる。通底しているのはデジタルによるザラついた質感であり、オーガニックな音がそうでないものとぶつかり合い消耗するような感覚である。重たいものを引きずるようなループにすさまじく音の割れた声が乗る“Tempest”、メランコリックなメロディがエフェクト・ヴォイスの断片とフィードバック・ノイズの海に飲みこまれていく“Always Trying To Work It Out”と、彼らが長年培ってきたダウナーながらもスウィートな旋律や透き通ったファルセット・ヴォーカルはあるのだが、それらはほとんど痛めつけられるように執拗に、微細に加工される。生の感情を曝け出すことを恐れるように、拒絶するように。緊張感が絶えることのない“The Son, The Sun”のドローンを通過したあとのアンビエント・フォーク“Dancing And Fire”のみが生音の柔らかさを前面に出しており、ここでアルバムはそれまでとのコントラストゆえある種壮絶な美しさを見せる。が、“Poor Sucker”で再びザリザリとした肌触りへと音を変え、“Rome (Always In The Dark)”では重苦しいビートと叫びに似た悲痛なヴォーカルが切り刻まれる。簡単に聴き手を慰めない。クロージングの“Disarray”の透き通っていたはずのコーラスもまた、意図的に汚されている。だが、だからこそいまの耳に染み入るものがある。

 このヘヴィなアンビエント/ドローン・アルバムはトランプ・エラの精神そのものだと評されているが、しかし、トランプなどという具体的かつわかりやすいモチーフに回収されることはない。ひどく抽象的で、ひどく不定形の憂鬱。アルバムにはAlwaysという単語が3度も曲タイトルで出てくるが、「いつも上がっている」というのは反語に違いないし、「いつだって上手くいくように頑張っている」というのはすなわち「いつも上手くいかない」ということであり、“Rome (Always in the Dark)”が言うように、わたしたちはいつも真っ暗闇にいることを思い出させてくれる。メランコリーが聴き手の期待する癒しに呼応するようにあらかじめ準備された音楽が溢れるなかで、『ダブル・ネガティヴ』はそれすらも否定するように意図的に心地よさに違和感を挿しこみ、すっかり常態(Always)となったこの時代の形のない悲しみを見事に描き出す。無理をして肯定に転じなくてもいい。ここには否定に否定を重ね続ける、ぞっとするが奇妙な安らぎがある。

Maisha - ele-king

 まあちょっとざっくり言うと、2018年は『We Out Here』からはじまった。ロンドンのアンダーグラウンドからUKジャズの新しい波がやって来て、スピリチュアル・ジャズにアフロビートをたたき込み、クラブ・カルチャーと隣接しながらシーンに喜びと恍惚をもたらしたと。
 いろんなミュージシャンの名前を覚えた。シャバカ・ハッチングスをはじめ、モーゼス・ボイド、ジョー・アモン・ジョーンズ、テンダーロニアス……それから女性サックス奏者のヌビア・ガルシアも。
 『We Out Here』は、マイシャの曲からはじまる。ドラマーのジェイク・ロングが率いるこのグループは、いまの“UKジャズ”のひとつの型を表している代表。要するに、アリス・コルトレーンとファラオ・サンダースからの影響をアフロビートと混ぜること。グループでサックスを吹いているのはヌビア・ガルシア。マルチ・カルチュアルで、男女混合というスタイルにも“いま”を感じる。
 で、そうしたお約束ごと的前説を経て、しかしもっとも重要なことを言うと、場所。抑圧だらけの世界からは隔離された場所。だって場所がなければひとは迷ってしまう。マイシャのデビュー・アルバムは11月9日にジャイルス・ピーターソンの〈ブラウンズウッド〉(日本盤はビート)からリリースされる。タイトルは『There Is A Place』。ぼくたちには“場所”がある。

パソコン音楽クラブ - ele-king

 パソコン音楽クラブ、情報デスクVIRTUALではないしMacintosh Plusでもない。新手のヴェイパーウェイヴではない。前期YMOや80年代エレ・ポップの現代解釈版。ダフト・パンクからの影響もあるんじゃないのかな。しかし、不思議と懐古主義的には聴こえない。トーフビーツから教えてもらった関西の若手有力株。ようやくCD買ったでぇ~。
 はじまりはベッドルーム。ストリートにありがちな人間関係の面倒くさいしがらみはない。オンライン文化の暗闇(アイロニー、シニシズム、憎しみ、悪意)だってスイッチをオフにすればいいだけ。お、可愛い犬もいるんだね。

 パソコン音楽クラブはトーフビーツのフォロワーではない。水曜日のカンパネラの強力なライヴァルというわけでもない。そもそもこの音楽は力んでいない。気取ってはいるが、まわりを意識しているようには思えない。“OLDNEWTOWN”は、トーフビーツの“NEWTOWN”へのアンサーではないのだろう。同じメランコリーでも出し方がまったく違う。前者は、軽い。後者が重たいわけではないのだけれど、パソコン音楽クラブのメランコリーはさっと通り過ぎていく、跡形も残さずに。あ、いま通った? という感じで、ちょっと清々しい。
 ジャケットのアートワークは、「水星」へのオマージュにも受け取れるし、ジェントリフィケーション時代の申し子である自らを表しているのかもしれない。記憶だけがカラフルな、この殺伐としながらも恍惚な風景。好むと好まざるとに関わらず、ぼくたちが暮らしているお馴染みの世界。ザ・スリッツの“NEWTOWN”から39年、NEWTOWNというNEWではない街。
 ぼくもRX17持ってました。リアルタイムで。ダサい音なんだよね、これが。とはいえ、パソコン音楽クラブは「昨日」の音ではない。だからといって「明日」の音でもない。いくぶん感傷的だが、これは「現在」の音なのだ。“Inner Blue”で歌われるようにそれは「終わらない夜」、つまり、ただただ陶酔したいという願い。“Beyond”という最後の曲は夢の時間のはじまりだ。そう、チルウェイヴであれチル&Bであれ、ミニマルであれアンビエントであれ、アンダーグラウンドであれオーヴァーグラウンドであれ、これこそ今日のポップの奔流に通底するもの。パソコン音楽クラブ、今後の活躍が楽しみ。
 

interview with Yo La Tengo - ele-king

ストリートで行進している人びと、落胆している人びと、怯えている人びと。美しい風景とは真逆なんだ。

 暴動が起きている。静かに。それはあのチャイルディッシュな元実業家がいちばん「偉い」立場に座っているアメリカ合衆国はもちろんのこと、ここ日本でも、どこであろうとそういえるだろう。しかしその暴動は主に、例えばワッツ暴動や西成暴動のように怒号や流血を伴ったものではない(そういった暴動ももちろん起こるであろうことを否定しているわけではない)。おそらくいま起こっているそれは主に、内面における暴動である。
 我々はいま、どのような形にせよ、後期資本主義体制下における効率主義と各種マネージメント思想の跋扈により心身の疲弊に絶え間なく晒され、(俗流の理解では最後の聖域とされてきた)「内面」までもが徐々にその戦いの場に供出させられるようになっている。しかも明確に指弾できる誰かにそうさせられているわけでなく、主には我々自らがすすんで、だ。「やり甲斐」は労働の場における新たな付与価値となり、それが収奪されることで個々の内面は切り崩されていく。また、「思想」は分類され、マーケティングされ、その結果として再び商品化(特定の“クラスタ”向けに調味)され外から内面へとやってきて、思想の顔をして内面を牛耳る、といったように。
 こうした趨勢を好ましいと思う人はあまりいないと思うが、悔しいことに、こうした趨勢には火炎瓶の投擲では対抗することが難しい。なぜなら倒すべき「敵」が内面化してしまっているから。

 1971年、躍動する肉体を鼓舞するようなそれまでのロック調ファンクをかなぐり捨て、スライ&ファミリー・ストーンとその首領スライ・ストーンが、『There's A Riot Going On』(邦題:『暴動』)というタイトルの暗く内省的な作品で愛と平和の時代の終焉をあぶり出したことと、ヨ・ラ・テンゴという尊敬を集めるベテラン・オルタナティヴ・ロック・バンドが同名のタイトルを据えたアルバムをこの2018年にリリースをしたということに、何かロマンチックな関連性を見出さないでいられる音楽ファンはいないだろう。事実、以下のジェイムズ・マクニューに対するインタヴューでは明言が避けられているにせよ、その関連は認められているし、別のインタヴューで彼らは「なぜこのタイトルにしたかは皆それぞれに考えてほしい」とも言っている。

 おそらく本作はバンド史上もっとも儚げで、しとしととした、そして類まれに美しいアルバムだ。最大のアイドルであるヴェルヴェット・アンダーグラウンド由来のギター・ロックを基軸に、ディープなリスナーとしてつねに様々な音楽を吸収し、茫漠としたサイケデリック風景を呼び込むグルーミーな音像、そして極めてメロウな旋律と詩情が融合した世界を作り続けてきた彼らは、世界中に熱心なファンをたくさん生んできた。つねに身近な題材や内面を描いてきた彼らは、もしかするといま、各種のせめぎ合いの場が我々の内面にまで伸長していることを、敏感に察知しているのかもしれない。美しい音楽へと耽溺し、エスケープすることは誰にも止める権利はないし、ときにそうすべきときもあるだろう。けれど、エスケープする先たる我々の内面そのものが何者かによって(それにも増して我々自身によって)侵食/破壊されているのだとしたら。その侵食の脅威にハッと気づかせてくれ、我々を立ち上がらせるのは、このように美しく鎮かなヨ・ラ・テンゴの音楽こそが得意とするところなのかもしれないし、内面で起こりつつある「暴動」を静かに焚き付けてくれるのかもしれない。

 その真摯さゆえなのだろう、相変わらず質問をはぐらかそうとしているように見えるジェイムズ(ライターとしては困ってしまうが、ファンとしては妙に嬉しくもある……)だが、要するに彼はこう言いたいのではないか。「全ては君の解釈さ。解釈するその内面の自由を大事に」
すべての解釈をいたずらに肯定するのではなく、解釈が成り立つ場として、我々の内面を慈しむこと。来る3年ぶりの来日ツアーで、彼らがいまどんな演奏を我々の内面に届けてくれるか、とても楽しみだ。

※ 以下の電話インタヴューは、アルバム発売時におこなわれたものです。

音楽学校に行ったり、ミュージシャンになるためにプロからの教育を受けなくても、経験でそれができるようになったのはすごくありがたいことだったし、良い気分だった。

最新作『There's A Riot Going On』は、みなさんのこれまでのディスコグラフィーのなかでももっとも美しい作品の一枚だと思いました。今作のオフィシャル・インタヴューで、アルバムがリリースされるまでの「待つ時期」は辛い、とおっしゃっていましたが、それから開放されて、いまどんな心持ちでしょうか? 

ジェイムズ・マクニュー(James McNew、以下JM):ははは(笑)。でき上がってからリリースされるまでの期間は、なんとも言えない時間なんだ。皆が聴けるようになるまで、ただ待って、待って、待ちまくる。その期間は緊迫の毎日だから、アルバムがリリースされていまは本当にハッピーだし、ホッとしているよ。日本にも行けるしね。日本は好きだから、また訪日できるのが待ちきれないよ。

本作はみなさんの作品のなかでも、楽曲もサウンドもとりわけジェントルでメロウな印象を受けました。そのようなモードになったのはなぜなのでしょう?

JM:それは意識してそうなったわけではないから、僕たちに理由はわからない。あと、僕たち自身はあまりジェントルでメロウな作品とは感じていないんだ。レコーディングも緊張感に溢れていてまったくメロウではなかったし(笑)。アメリカでライヴをしたんだけど、ライヴ自体もすごく緊張感があった。だから、僕にとってはまったくリラックスの要素はなくて、どちらかと言えば張り詰めた感じのアルバムなんだ(笑)。

皆さんのレコードからは、ありし日の美しくも儚い情景がふと浮かんでくるような、記憶や風景を喚起させる力を感じます(そして今作ではその感覚をより強く感じます)。あなたたち自身でも、曲作りをおこなっている際や演奏している際に、そういった感覚を覚えることはありますか?

JM:それも、君がそれを感じるとすれば、たまたまそういった音楽になったということだと思う。前回のアルバムを除いては、僕らはアルバムの音楽の方向性を初めからわかっていたことがないんだよ。コンセプトを考えたことがなくてね。だから、今回もコンセプトはない。自分たちが特にそれを感じることはないけれど、君がそう感じてくれたなら僕らはハッピーだよ。リリースされたいま、音楽はリスナーのものだし、自分たちの音楽が人に何かを感じさせることができているなんて本当に嬉しい。でも、僕たちはそういう風景は感じないんだ(笑)。というのも、僕らがアルバムで歌っている内容は、そう言った風景とはまったく逆のものだからね。ストリートで行進している人びと、落胆している人びと、怯えている人びと。美しい風景とは真逆なんだ。

今回は元々サウンドトラック作品の制作がきっかけとなり、その流れでオリジナル・アルバムの制作へ入っていたっと伺いました。劇伴音楽の特徵たる「映像とともにある音楽」、そのような意識は今作にも受け継がれていると思いますか?

JM:この質問に答えるのは難しいな。自分たちの周りにあるものすべてが受け継がれているからイエスとも言えるし、かといってそれがどう受け継がれているのかは自分たちにもわからない(笑)。自分たちのライフすべてがインスピレーションだからね。でも、サウンドトラックのプロジェクトの流れでアルバム制作がはじまったのは事実。あれがうまく行ったからアルバム制作につながったとはいえるね。作業と曲作りがテンポよく進んだんだ。すごく良い勢いがついているところでムーヴィーのプロジェクトが終わってしまったから、ムーヴィーなしで自分たち自身のためだけの作品を作りはじめたんだよ。

今回のアルバムに限らず、映像のための音楽を作る経験から何か得たことはありますか?

JM:ムーヴィー用の音楽のために、2004年から徐々にニュージャージーにあるリハーサル場所みたいなところで作業してきて、そのときは、エンジニアもプロデューサーも雇わず、ずっと自分たちだけだったんだ。そこには小さなレコーディングのセットアップなんかがあるんだけど、徐々にその場所での作業が上手くなっていったし、そこでの居心地が良くなっていった。自分たちの楽器も全部そこにあるしね。そういう面では、そこで自分たちだけで作業するようになったのはムーヴィーの経験からだから、それがいちばん大きな影響かもしれない。自分たちだけでも作品が作れるということを、その経験から学んだんだ。30年以上の活動のなかで、まったく新しいやり方で作品ができたときはすごくエキサイティングだったよ。新しい経験だったし、自分たちがやりたいだけミスをすることができたし、すごくスリルがあって自由だった。それを感じることができるようになったのは、ムーヴィーのプロジェクトの経験を通してだね。

いまのインディ・ロック・シーンは、すごく良い状態だと思うね。良いバンドがいないとか、勢いが落ちてきていると言われてもいるけれど、自分が好きな音楽、バンドというのは、探し続けている限り必ず見つかると思うんだ。

前作『Fade』ではジョン・マッケンタイアがプロデュースを担当していました。今作はバンド自身のセルフ・プロデュース作です。「プロデュース」という言葉の定義はときに曖昧でもあるかと思うのですが、あなたたちにとって「レコードをプロデュースする」とはどういったことなのでしょうか?

JM:すごく自然。僕たちはプロデューサーでもエンジニアでもないけれど、何年もかけて、素晴らしいプロデューサーやエンジニアと一緒に作業してきて、多くを学んできた。ロジャー・ムジュノーやジョン・マッケンタイアたちは、僕たちに多くを教えてくれたんだ。今回も、わからないことがあったときはメールで教えてもらったりしたし(笑)。音楽学校に行ったり、ミュージシャンになるためにプロからの教育を受けなくても、経験でそれができるようになったのはすごくありがたいことだったし、良い気分だった。自分の頭のなかにあるアイディアをそのまま、かつどうにか表に出すというのは、直感的でもあったね。

今作は、スライ&ザ・ファミリーストーンの『暴動』(71年作)と同名であることが話題となっています。ご自身たちで思う、あのアルバムと今作の共通点と、また相違点は何だと思いますか?

JM:それは僕らにはわからない。自分たちとそのタイトルとの繋がり方と、スライとそのタイトルとの繋がり方は違うんじゃないかな。でも、感情的に、スピリチュアル的に何かコネクションがあるんじゃないかとは感じているよ。

音楽および社会的な面において、1971年と2018年に何か象徴的な共通点と、また異なった点があるとすれば、どんなことだと思いますか?

JM:どうだろう(笑)。もっと変わってくれていたらと思うけど、問題はまだまだ残っていて、その問題の数々は全然変わっていないと思う。解消されつつある部分もあるかもしれないけれど、状況は同じなんじゃないかな。

このような時代だからこそ声高にプロテストを叫ぶ流れもあるなかで、本作ではむしろ何気ない日々を慈しみ、それを丁寧に伝えようとするような印象を抱ききました。いまこの時代において、そうしたパーソナルなことを歌い続けていくことの意義というものがあるならば、どういったことだと思いますか?

JM:僕自身は、そこに違いは感じない。皆、自分が言いたいことを表現しているのは同じで、表現の仕方が違うだけだと思うよ。例えば(初期の)ボブ・ディランのようなやり方もあるし、僕自身はボブ・ディランも好きだし、表現方法や音楽との繋がり方に選択肢がたくさんあって、皆がそれぞれに混乱や自分たちの周りにあるものを表現しているんだと思う。

オルタナティヴ・ロックがシーンに登場してから長い年月が経ちました。80年代からつねにシーンの一線で活動を続けてきたみなさんの目からみて、現在のインディ・ロックのシーンの状況はどのように映りますか?

JM:すごく良いと思う。素晴らしい若いバンドがたくさんいるし、長年活動していて、いまだに、そしてさらに力強い音楽を作り続けているバンドもまだたくさんいる。それらのバンドが共存しているいまのインディ・ロック・シーンは、すごく良い状態だと思うね。僕自身が好きな音楽が溢れている。良いバンドがいないとか、勢いが落ちてきていると言われてもいるけれど、自分が好きな音楽、バンドというのは、探し続けている限り必ず見つかると思うんだ。

みなさんとも深い交流のある坂本慎太郎さんですが、みなさんの催促も届いたのか、ついに昨年からライヴ活動を再開しました。今回のツアーでも10/11の東京追加公演では対バン共演をされますね。彼との出会いによって与えられた影響というのは、今作にもどこかへ表れていたりするのでしょうか?

JM:彼がライヴ活動を再開して、僕は心から嬉しい。でも、面白い質問だけど、僕には彼との出会いの影響がどう反映されているかはわからない。彼の音楽は大好きだし、彼らと一緒に演奏ができたのは素晴らしい経験だった。すごくマジカルな瞬間だったし、坂本さんとは良い友情を築けているんだ。彼がまた音楽を作りはじめてライヴ活動をはじめたことが、本当に嬉しいよ。

ずっと自分たちのレコードもアナログでリリースし続けているから、あまり復権という感覚はないね。僕らにとって、レコードというものはすごく自然な存在なんだ。

交流のある坂本慎太郎さんやコーネリアスといったアーティスト以外に、近頃注目している、もしくはお好きな日本のアーティストがいれば教えてください。

JM:たくさんいすぎて、誰からはじめればいいか……日本のサイケデリック、エクスペリメンタル音楽、70年代の音楽がとくに好きなんだけど、はっぴいえんどは好きだね。あとは、細野晴臣、ボアダムス。彼らの音楽にはどれも独特のソウルがあって、彼らのような音楽はこの世にふたつとない。ヨ・ラ・テンゴは彼らからとてつもなく影響を受けているし、彼らは、僕たちがこれからも絶えることなくインスピレーションを受け続けるアーティストたちだね。

ここ日本でも、この10年ほどでインディ・シーンが成熟してきつつあり、あなたたちのように長い年月にわたって質の高い作品をリリースし続け、ライヴもおこない続けているバンドに対しリスペクトを持っている若いアーティストたちも多くいます。「バンドを続けていくこと」にはどんな喜びがあるのか、また続けていくにあたってのコツはなんでしょうか?

JM:わからないな(笑)。じつは、僕はあまりそれを考えたことがない。バンドを続けるということを意識していないんだ。僕らは、お互い3人が出会ったことがただただラッキーだと思っているし、自然に作業していくなかで達成感が感じられることを皆で続けているだけ。何がコツかはわからないけど、若いバンドの皆が自然体で自分たちの作りたい音楽を作り続けていってくれることを願っているよ(笑)。

ヘヴィな音楽リスナーでもあるみなさんに伺います。ここ日本でも現役バンドが新作をアナログ盤でリリースしたり、過去の埋もれた作品がヴァイナルでリイシューされたりすることが定着しつつあります。みなさん、レコード蒐集は続けていますか? また、データ~サブスクリプション配信時代におけるこうしたレコード文化の復権についてどんな思いを持っていますか?

JM:もちろん、レコードはいまだに集めている。自分たちは昔からずっとヴァイナルを買っているし、1993年からずっと自分たちのレコードもアナログでリリースし続けているから、あまり復権という感覚はないね。僕らにとって、レコードというものはすごく自然な存在なんだ。でも、ウォークマンやカセットプレイヤーを持ち歩いていた時代を考えると、iPodがやはり素晴らしいとも思う。移動中はよくCDボックスを持ち歩いてなくしたりもしていたけど(笑)、iPodだと、何千もの音楽をあんな小さいもののなかにすべて納めて持ち運ぶことができる。まさにミラクルだよ。

最近購入して、これは日本のファンにもぜひオススメしたい! という音楽作品(新譜旧譜問わず)があれば教えてください。

JM:ニューヨークのバンドで 75 Dollar Bill というバンドがいるんだけど、彼らの作品はオススメ。そのバンドはたまに2人だったり、たまに8人だったりするんだけれど、インストゥルメンタル音楽で、サウンドが本当に美しいんだ。彼らのような音楽は他にないと思う。すごく壮大な音楽だからぜひチェックしてみて。誰もが気にいると思うよ。

National Sawdust にておこなわれた Pitchfork Live の映像がアップされていますが、今後、今作の楽曲がライヴ演奏されていくにしたがい、本作収録曲たちはバンドにとってどんな存在になっていきそうでしょうか?

JM:まだツアーをはじめて2週間だからわからない。これから時間をかけてわかっていくんだろうね。これまで演奏した感じでは、すごく自然に感じているし、本当に楽しい。セットに新しい感情やサウンドが加わるのは、やはりエキサイティングだね。アルバムがリリースされ、みんなの前で演奏されていくことで、曲は成長し、変化していく。いまは、生まれたばかりの子どもを見守っている親みたいな感覚だな(笑)。

ありがとうございました。来日公演楽しみにしています!

JM:ありがとう! 僕たちも日本に行くのを楽しみにしているよ。

OGRE YOU ASSHOLE - ele-king

 OGRE YOU ASSHOLEが9月17日、東京・日比谷野外大音楽堂にて初のワンマン・ライヴを開催した。サウンド・エンジニアに佐々木幸生、サウンド・エフェクトには中村宗一郎(THE SOUND OF PEACE MUSIC STUDIO)というお馴染みのふたりを迎え、今回は複数のスピーカーを用いた「クアドラフォニック・サウンドシステム」を導入しての公演となった。

  • OGRE YOU ASSHOLE
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 この日は朝からよく晴れ、思わず「オウガ日和!」とツイートしてしまうくらいの陽気だったのだが、昼過ぎから徐々に雲行きが怪しくなっていた。このところ、夕方になるとゲリラ豪雨も頻繁に勃発していたため、いざというときのためウィンドブレーカーをカバンに突っ込み野音へと向かう。今日は、サラウンド音響を存分に楽しむため、佐々木と中村が待機するPAブース付近で観ることに。定刻を20分ほど過ぎて、メンバー4人がステージに現れたときにはすでに上空に重たい雨雲が垂れ込めていた。

 まずはメンバー全員がアナログシンセに向かい、電子ノイズを思い思いに発信していく。それがステージ左右のスピーカーと、会場後方に設置された2台のスピーカーをグルグルと行き来する。その立体的なサウンドスケープに驚いていると、2011年のアルバム『homely』から“ロープ”で本編がスタートした。馬渕啓(Gt)による、宙を切り裂くようなファズギターが響き渡り、極限まで削ぎ落としたミニマルな勝浦隆嗣(Dr)と清水隆史(Ba)のリズム隊がそれを支える。続いてセルフ・タイトルのファースト・アルバムから“タニシ”を演奏した後、現時点では最新アルバムの『ハンドルを放す前に』から“頭の体操”。掴みどころのないコード進行の上で、まるで人を食ったような出戸学(Vo、Gt)の歌声が揺らめく。

 さらに、ダンサンブルな“ヘッドライト”、ピクシーズの“Here Comes Your Man”を彷彿とさせるオルタナ・ポップ・チューン“バランス”、3拍子の名曲“バックシート”と、旧作からの楽曲を披露。その間にも雨は降ったり止んだりを繰り返していたのだが、“ひとり乗り”を演奏する頃にはいよいよ本降りに。しかしほとんどのオーディエンスは、手早く雨具を取り出し動じることなくライヴに集中している。さすが。

 筆者ももちろんウィンドブレーカーを羽織ったが、強まる一方の雨のせいでチノパンはあっという間にぐしょ濡れ。関係者エリアは見る見るうちに人びとが退散していき、気づけば周りに誰もいなくなっていた。雨除けのフードを被ったものの、これだと四方八方に音が広がる「クアドラフォニック・サウンドシステム」の威力を100パーセントは楽しめない。そう思ってときおりフードを脱いでみるものの、ものすごい勢いで雨に打たれてすぐに被り直す。

 “ムダがないって素晴らしい”や、“素敵な予感”が演奏される頃には、雷鳴が響き渡るほどの土砂降りに。もはやサラウンド効果を体感することは諦め、フードを被ったまま滝のような雨に打たれて踊り狂っていた。“素敵な予感”では、オリジナル・ヴァージョンからオルタナティヴ・ヴァージョンへといつの間にか移り変わり、そのアブストラクトな音像が雨で乱反射する照明と混じり合う。豪雨によって周囲から遮断され、そんな幻想的な光景に没入し反復するリズムに身体を委ねているうちに、意識は完全にトランス状態となっていた。

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 ライヴはいよいよ終盤へ。トライバルなドラミングに出戸と馬渕のギターが絡み合う“フラッグ”は、引きずるようなテンポで焦らしに焦らし、出戸のシャウトと共にリズムがガラッと変わる。その瞬間、目の前の光景がグニャリと歪むような感覚に襲われた。後半、ヘヴィな展開ではまるで豪雨までも操っているかのように会場の空気を支配していく。その証拠に、“見えないルール” “ワイパー”で本編が終了する頃には、雨も野音から遠ざかっていたのだった。

 アンコールに登場した出戸が、「雨、やみましたね……。僕らが演奏しているときだけ降っていてすみません」と挨拶すると、会場から大きな笑いが起きた。そのまま“ロープ”のロング・ヴァージョンと、9月7日に配信リリースされた新曲“動物的/人間的”を演奏。平成最後の夏を名残惜しむような楽曲で、この日の公演は全て終了した。

 アンコール含め、新旧バランスよく並べた全16曲。これまでのオウガのキャリアを総括するようなこの日のライヴは、決して忘れられない体験となった。

HOLGER CZUKAY - ele-king

 ホルガー・シューカイ(80年代の日本の一部のファンのあいだではその知性と容姿ゆえにホルガー博士とも呼ばれていた)のソロ作品8タイトルがリイシューされる。

 それはつまりこういうこと。
 みんながそこは自由だと思っていた。ギターもLSDもみんな揃っていたから。が、しかし、その外側にはもっと広大な自由があることに気が付いているひとたちもいた。たとえ未熟であっても、いや、むしろ未熟だからこそ自由であることにもそのひとたちは気が付いていたし、いずれにせよ、その広大な自由を選んだ。これが俗にいうところのクラウトロックというもので、70年代前半のドイツのロックが70年代末から80年代初頭のポストパンクと同期したのも、お互いロックの外側の自由に貪欲だったからだった。ホルガー・シューカイはその中心人物のひとりである。
 それは最初から英米中心主義に意を唱えるモノでもあった。サンプリング・ミュージックの先駆的作品と言われる1969年の『カナクシス5』にはベトナムの民謡がミックスされているし、1979年のもっとも有名な人気作『ムーヴィーズ』に収録されたもっともヒットした曲“ペルシアン・ラヴ”にはイランの歌謡曲がカットインされている。ジョン・ハッセルとイーノの『第四世界』やトーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』あるいはイーノとバーンの『マイ・ライフ・イン・ブッシュ・オブ・ゴースト』のような作品は、ホルガー博士の(CAN時代の作品もふくめて)存在なくして語れない。
 周知のように、ホルガー・シューカイは、シュトックハウゼンの生徒だった。つまりは、厳密な理論と思想のうえから生まれた電子音楽の父のもとで学んでいる。が、彼はその厳密さを絶対的な自由に変換してしまった。マイルス・デイヴィスのジャズ・ロックとヨーロッパの前衛音楽とのあいだに回路を見つけてしまったし、そして明白な意味において「明日」の音楽を創造した。それは眉間にしわを寄せながら聴くような音楽ではない。基本的に、微笑みの音楽。
 CANやクラフトワークが古くならないように、ホルガー・シューカイが古くならないのはそういうわけだ。いま時代はようやく、かれらが出かけていった「外側の自由」に気が付いて、それをグローバル・ビートなどと呼んだりしている。
 ホルガー・シューカイ、ぜひ聴いて欲しい。

(※今回の再発、2種類のポスター・かレンダーやポストカードの特典があります。どうせなら、お店で買って特典もらってください。詳しくは→https://p-vine.jp/news/20180919-190000

●9月28日発売

PCD-24762

TECHNICAL SPACE COMPOSER'S CREW (aka Holger Czukay & Rolf Dammers) / Canaxis 5
1969年作品
このアルバムは80年代~90年代は聴くのが大変でした。82年にジャケ違いで再発されたもので聴いていたし、オリジナル盤は見たことがなかったです。エレクトロニック・ミュージックにおける重要作。

PCD-24763

HOLGER CZUKAY / Movies
1979年作品
“おー、神様、我らにお金をもっとください”というのが1曲目。ジャンルの境目を消していく、ユーモラスな音楽旅行の傑作。

PCD-24764

HOLGER CZUKAY / On The Way To The Peak Of Normal
1981年作品
ポストパンクとリンクしながらも離れていくナンセンス・ポップ・ロック・ダダイズム。

PCD-24765

HOLGER CZUKAY, JAH WOBBLE, JAKI LIEBEZEIT / Full Circle
1982年作品
まったく古びない(というかそのお手本のような)エディットが冴えている、ダビー・ダンス・トラックの“How Much Are They?”を聴くために買ってもソンしない。

●10月10日発売

PCD-24775

HOLGER CZUKAY / Der Osten Ist Rot
1984年作品
「東は赤」というタイトルで、つまり“東方紅”という中国の国歌で、作中にサンプリングされている。支離滅裂な作品だが、“フォト・ソング”は素晴らしい名曲。

PCD-24776

HOLGER CZUKAY / Rome Remains Rome
1987年作品
「ローマはローマのまま」。教会の聖歌や教皇の言葉のサンプリングをはじめ、“Sudentenland”でもそのサンプル技は冴える。“Hit Hit Flop Flop”のようなお馴染みのギャグも炸裂。

PCD-24777

HOLGER CZUKAY / Moving Pictures
1993年作品
過小評価されがちだがまるで晩年のフェリーニの映画を観ているような気持ちになれる佳作。年季が入ったコラージュとダウンテンポの“All Night Long”が最高。

PCD-24778

HOLGER CZUKAY / Radio Wave Surfer
1991年作品(ライヴ・アルバム)

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