![]() Bushmind SWEET TALKING SEMINISHUKEI/AWDR/LR2 |
街は死んでいる。かつては僕たちの遊び場だった街が。
いま僕たちが街にいるのには、消費者であることが条件付けられている。渋谷系リヴァイヴァルだって? とんでもない、90年代はセンター街の入口のキノコの屋台が、やって来る外国人を驚かせていたほどだ(笑)。渋谷駅構内では毎週、当時の日本で最高のディジェリドゥ演奏者がパフォーマンスを聞かせていた。コンビニで買ってきた缶ビールを飲みながら、僕はいつも地ベタに座っていた。そんな公共性が残っていたのが1990年代の渋谷で、あの時代がリヴァイヴァルするなんてことは、僕にはとても想像できないな。
街は僕たちの遊び場だった。ブッシュマインドの2007年のデビュー・アルバムのタイトルは『Bright In Town』=「街の輝き」。まごうことなき街の音楽。ceroも歌っている、いわば「失われた街」の生存者。そして、ブッシュマインドはいまでも街の音楽をやっているひとり。泣くことも嘆くこともなく、たんたんとドリーミーに。
不良の匂いをさせているところも良い。不良というのは悪人のことではない。管理を拒む者のこと。管理サッカー、管理野球、管理社会……を拒むと言うことは、試合中、臨機応変に自分で判断しなければならないということだから、実は(とくに日本人には)難しい。(シカゴなんかは、管理されることもなく、むしろ臨機応変に自分で判断しかしないから、あんなに多彩なゲットー・ミュージックが生まれるのだろう)
ブッシュマインドは、そういう意味で本当に自由にやっている。新作『SWEET TALKING』は全21曲が収録されているが、もうひとつ重要なのは、ここに30人以上の人間が参加していることだ。そこにいる30人は、トレンドやハイプなどとは無関係の人たち。『Bright In Town』もそうだったように、いろいろな人たちと繫がることでしかこのアルバムは成立しない。街で出会い、街で遊んでいる人たちと。
音楽が怒りのはけ口だとか、俺はそういうのはとくにないんですよね。ムカついたときに音楽を作るとかもほとんどないですし。俺にとっては、音楽は楽しむものって思っています。
■新作『SWEET TALKING』は、いままででベストだと思いました!
Bushmind(以下、B):マジっすか、ありがとうございます!
■ブッシュマインドってさ、ヒップホップをベースにテクノを取り入れてるっていう風によく語られてて、たしかにその通りなんだけど、僕はドリーミーなチルアウトってイメージを持っているんですよね。で、まさに今回のアルバムはそれを突き詰めたっていうか。『Bright In Town』からずっと継続されているものなんだけど、それを今回のアルバムはいろんな意味で発展させ、研磨している。素晴らしいと思いました。
B:アップデートするってことをすごく意識しました。過去と似通っちゃわないようにっていうのと、できるだけいろんな引き出しを見せるということ。頭のなかで考えたことをうまく曲に反映できた手応えはありますね。
こうしたいとか、こうやりたいとかっていうのを、パソコンで細かくいじれるようになって。いままでは一旦サンプリングで強引に形を作って、そっから正解を見つける感じだったんですけど、今回は思ったところにいきやすくなったっすね。技術的にはまだまだ全然ですけど、ここ3年でかなりいろいろ覚えられたので。
■8年前とは違うぞっていう。
B:そうです(笑)。
■ブッシュマインドらしさがすごく出てるよね。13曲目とか、16曲目とか、本当に良い感じのチルアウト・ヒップホップというか。サイケデリックというよりは、チルアウトでありドリーミーなんだよね。前に会ったときはアンチコンからすごく影響を受けているって言っていたけど、アンチコンはもっと実験っていうかさ。
B:ちょっとアート的なね。
■そうそう。ブッシュマインドはもっと陶酔的じゃない?
B:そうですね。単純に音楽として楽しめるようにっていうのは考えてやっていますね
■ストリートから来るタフな感覚はあるんだけど、同時にドリーミーでチルアウトな感覚が一貫してあるというのは何でだろう?
B:好きなんですよ。何も考えないで作ると自然とその方向へ行っちゃって。
■『Bright In Town』(2007年)でブッシュマインドの印象を決定づけたのって、やけのはらとやった"Daydream"だったと思うんだよね。で、ブッシュマインドは、あの曲で表現した感覚をさらに自分に引き寄せて、どんどんブラッシュアップしていったよね。『Bright In Town』の次に『Good Day Commin'』があったでしょう? あれって3.11の年(2011年)だったんだよね?
B:そうですね。
■まだショックが生々しかった時期だったよね。いたるところでネガティヴな感情が表出していた時期に、「良い時代がやってくる」というアルバム名の、しかもあれだけドリーミーでスモーキーな……(笑)。
B:はははは。
■だって、あの時期だよ。あの時期に『Good Day Commin'』を出すというのは、やっぱりそこにはブッシュマインドなりの時代へのスタンスっていうかさ。
B:そこはけっこう分けていますね。音楽が怒りのはけ口だとか、俺はそういうのはとくにないんですよね。ムカついたときに音楽を作るとかもほとんどないですし。俺にとっては、音楽は楽しむものって思っています。
■ある意味では、あの時期にあれってリスキーだと思ったんだよね。
B:いろいろ起きているなかで、おちゃらけてるみたいな(笑)。
■わかってて、あえてというか?
B:自分はああいうドリーミーな部分が好きなんだけど、その裏にハードコアな熱い部分をチラ見せするみたいのが、真っ正面には見せない感じが理想ですね。アーティストを追っかけていても、実はムチャクチャ喧嘩っぱやいとかムチャクチャおっかないとか見せてない、裏の一面があるアーティストがすごい好きで。自分が不良じゃない分、そうゆう人には憧れがありますね。
■それは本当の自分じゃないと?
B:はい。
■今回の『SWEET TALKING』もそうだけどさ、『Bright In Town』や『Good Day Commin'』にしても、タイトルからして、桃源郷の方へ行くじゃない(笑)?
B:だから俺、今回もかなり意識しましたね。“bright”、“good”ときて、さて次はどうしようかなって(笑)。
■はははは。
B:でもなんで好きな部分がそっちの方向なのかというのと……。うーん、なんでですかね。
■サイプレス・ヒルというよりは、ナイトメアズ・オン・ワックスなわけでしょう?
B:そこを隠したいというのと、俺はできるだけいろんなひとに聴いてもらいたいというのがあって。そういうポジティヴな方向のほうがよりたくさん聴いてもらえるかなって。
■みんなはそこで「グッド・デイズ・カミン」ではなく「バッド・デイズ・カミン」って思っているわけじゃないですか?
B:そうなんですかね。自分は楽しく過ごしたいっていうのがあるんで。自分の音楽にそういうネガティヴな要素を入れたいとはそんなに思わないんですよね。作っていてほんと楽しいんで。
■今回のアルバムでも、テクノのビートっていうかさ、ヒップホップのトラックメイカーだったらまず作らない曲も入ってるよね。BPMもダンス・ミュージックのテンポだったりするし。
B:そうですね。
■アシッド・ハウスっぽいのもあるんだけど。
B:今回は303を多用してますから。偽物ですけどね(笑)。いやぁ、もう楽しくなっちゃって。本当にあの機材はすごいんですよ。ついつい使いすぎちゃった。自分の好きな音とフレーズを決定づけてくれるというか。キラキラしたコードも出やすいというのもあって。
[[SplitPage]]自分はああいうドリーミーな部分が好きなんだけど、その裏にハードコアな熱い部分をチラ見せするみたいのが、真っ正面には見せない感じが理想ですね。
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■「ヒップホップとテクノの融合」みたいなことよく言われるじゃないですか? 今回もまさにその通りなんだけど、そういうミックス感覚はある程度自分でコントロールしているの? この曲はテクノっぽくいこうとか、あとはロー・ビートで何曲くらい作るとか?
B:全部はできてないですけど、アルバムの全貌がある程度見えてきてからはコントロールしましたね。最初はとりあえず何も考えないで曲を作ってコマとしてを並べていって、最後のほうはその隙間というか被らないようにっていうのを意識しましたね。
あとは自分が聴いて素直にアがれる曲というか。設定優先とかやり方優先とか、方法論で作っても、最終的に聴いてちゃんと機能するものを意識したっすね。
■設定とは?
B:設定が面白かったりする音楽ってけっこうあると思うんですけど。たとえばアート・リンゼイが楽譜をシャッフルして演奏するのとか、ああいうのは最終的な仕上がりよりも設定が優先なのかなって自分は思ったので。
■ブッシュマインドのミックス感覚は独特だよね。ヒップホップ系のひととも違っていると思うし。
B:もともと曲作りも混ぜて遊ぶっていう感じだったからっすね。DJをしていて2曲、3曲重ねたときに全然違った感じになるときとか、やっぱすごくアがるんですよ。混ぜてまったく違う曲にするっていうのが、自分のDJをする醍醐味だと思っていて。
■いまは何を使っているの?
B:いまはCDですかね。ターンテーブルも使いますけど、データが多くなってきているんで、CDに焼いてますね。それで混ぜてまったく違う曲にするっていうのが、自分のDJをする醍醐味だと思っていて。
■そういえば、『Bright In Town』から8年経ったんだね?
B:そうですね。CDが廃盤になってました(笑)。アマゾンで海外の業者が1,5000円とかで出してて「えー!」みたいな。実際、ネットで探しても全く出てこなくて。「もうそんなに時間が経っちゃったんだ」って。
■早いよね〜。あのアルバムは、時代のある場面を描写したっていうか、関わっている人間の数もハンパなかったよね。
B:あのときは友だちがどんどん増えて躁状態になってましたね。友だちが増えるといろんな街に行って遊ぶ機会も増えてったんで。その思い出をパックしたアルバムですね。
■この8年のなかで、タカアキ君のなかで変わったことって何でしょう?
B:変わったこと……。この8年ですよね。難しいですね。どんだけ変わったんすかね……。
■日本社会でいうと、3.11があってものすごく揺れ動いた。それで『Good Day Commin'』が出た。それから数年後、安倍政権が誕生したと。音楽でいうと風営法があったりとか、ますます音楽が売れなくなったりとか。だって、8年前の『Bright In Town』って〈エイベックス〉じゃん。こういう音楽を〈エイベックス〉から出すことって、もう考えられないでしょう(笑)。
B:俺も本当に信じられない(笑)。その思いが年々強くなってるんですよね。当時は「すげぇ良い話がきた!」くらいにしか思ってなかったけど、いま思えば挑戦的なことをしたんだなって。
■〈SEMINISHUKEI〉はその前からだよね?
B:レーベルは2000年初頭くらいですね。ずっと人数が少なかったんですけど、ストラグル(・フォー・プライド)のライヴに行くようになって、友だちが一気にバーンっと増えてメンバーを増えていった感じでした。そのときは大人数で遊ぶのがムチャクチャ新鮮で楽しかったですね。
ただ、時間が経つと離れていくひともいて。そうゆうときにいかに固く自分たちの世界を作れるかっていうのは、すごく意識するようになりました。大所帯のクルーが時間経ってバラバラになって残念な感じになってくってのはよくあるけど、その流れには抵抗したいですね。
■『Bright In Town』は勢いって感じがあって、それが良かったし……。あれを出したときに時代は変わるって思った?
B:いや、そこまでは意識していなかったです。本当に初めてなことばっかりだったので、作ることを楽しんだというか。ラップ・トラックを作るのも初めてだったし、ラッパーの友だちもいなかったっすから。それでいろんなひとに紹介してもらって。楽しかったですね。
■セカンドの『Good Day Commin'』のときは、また状況が違っていただろうし。
B:あのときはマーシー君、〈WD Sounds /PRESIDENTS HEIGHTS〉が自由にやらせてくれたんですよ。まあ、逆に大変でしたけどね。
■あの作品はマーシー君から出さないかってきたの?
B:そうっすね。ただ今回のリリースの話を振ってもらってからがこれでコケたら周りも道連れにするなって思って(笑)。チャンスが来たと思ったのと同時に責任も感じましたね。
■世のなかのコミュニティのあり方も、この8年、ネットの普及によって多様化したよね。だって、8年前はツイッターとかなかったわけだからね。
B:ネットはもちろん使っているんですけど、作品を作る上でネットのみのやり取りっていうのは避けてますね。最初のきっかけとしてはいいと思うんですけど、曲を作って実際会ってみたら反りが合わなかったりとか。実際会わないとズレも生まれるし、国が違ったら文化も違うじゃないですか。ネットでも面白い出会いってあると思うんですけど、現場で繋がってできる音楽の方が魅力を感じますね。
■それがブッシュマインドだもんね。
B:そうですね。いまは情報を手に入れやすくなったぶん嘘もいっぱいあるじゃないですか。情報に踊らせれて型にはまらないようにってのは気をつけてます。いまって、世界で時間差なしで流行があるようになってきているじゃないですか?
■そんなこともないと思うよ。すごく時間差を感じるこもあるし、言いたいことも言えない監視社会になってきているようにも感じたり。本来は自由な発言の場であったハズなのに、ますます不自由な場になっているような。
B:しかもそれが生産的じゃないですもんね。
■批判とかじゃなくて、たたきつぶしてやろうっていうね(笑)。そういう意味では、クラブ・カルチャーにはまだまだ役割があると思うんですけどね。
B:音楽に関しては、ネットは使い方によってはいくらでも広がるし、曲との出会いが、ここ最近いっぱいあるんですよね。いまカヴァー曲を聴くのにハマっていて、あるサイトで検索すると世界中のいろんなカヴァーが出て来て、すごく面白い出会いが増えたんすよね。レコード屋に行ってジャケでピンと来て、買って、家に帰って、ブチ上がるみたいなのとは差がありますけど。
■タカアキ君は自分は不良じゃないって言ったけど、もうちょっと広い意味で、オモロい不良が年々いなくなったって感じもする。自分が年取っただけなんだろうけど(笑)。
B:たしかにモンスタークラスのニューカマー、そんなに聞かないすね。
■ヒップホップはそれでも受け皿になっているように思うな。ゴク・グリーンかさ。
B:A-Thugって知ってますか?
■知らないっす。
B:俺はまだ会ったことはないんですけどムチャクチャ聴いてて。『Streets Is Talking』ってアルバムが最高ですよ。
■ちょっと、メモっておくよ。
B:今回参加してくれたなかには面白い不良がいるっすね。でもたしかに、ラップが上手いやつはたくさんいるんだけど、それプラスで不良スピリットの両方を持ち合わせた若手って、あまりいないですね。
■俺はゴク・グリーンやコウも好きだよ。
B:ゴク・グリーンは聴いたことないですね
■たくさん聴いているわけじゃないから、きっと他にもいるんだろうけど。
B:今回のアルバムに参加しているひと以外では、自分のまわりではあんまりいないですね。いるとは思うし、希望も期待もあるから出会えていないだけかもしれないんですけど、まだ耳には届いていないです。
■でも、たとえば、このアルバムに参加しているR61 Boysという人たちなんか街の匂いを感じますよね。
B:こいつらの不良度は計りきれてないんですけど、面白い刺激を求めて遊び回ってる印象ですね。どこまでが軍団かわからないですけど、人数もムチャクチャいるすね。新潟の六日町にあるBARMってクラブで自分の企画やったことがあって。R61 Boysにライヴやってもらったんですけど、友だちが30人ぐらい来て。地元のお客さんより多かったです。
■今回集まっているメンバーっていうのは、世代的にはどうなんですか?
B:同年代が多いかな。TOKAI勢はちょい下すね。最年少はCOOKIE CRUNCHす。
■NIPPSさんも参加しているんだね。
B:NIPPSさんは本当に夢が叶ったって感じですよね。
■この曲、かっこいいよ。ひとりだけ毒を吐きまくっている(笑)。
B:いやー、できてびっくりしたっすわ(笑)。分のトラックがあんな曲になるってほんと最高の遊びですね。
■CENJU君も参加しているね。
B:こいつはヤバいっすよ。下北にもトラッシュがいたんだっていう。もうゲットー感が。
■彼は〈DOWN NORTH CAMP〉のひとだよね?
B:そうです。CENJUとはここ2年くらいで仲良くなって、こんなやつがいたんだって思ったんですけど。あとはKNZZ、大ファンなんですよ。もう不良道。人生がすごくドラマチックですもん。アシッド・テクノみたいな曲でラップしてるやつなんですけど、”Planet Rock”って曲ですね。
■”Planet Rock”もユニークな曲だよね。
B:KNZZ君は元々渋谷のアイス・ダイナシティってグループでけっこうトップの方まで人気が出ていたんですけど、トラブルとかでいなくなった状態になって、そこからの復活なんです。それでいままでの負の遺産を返しつつ新しいことをやって。
■“Friday”という曲では、R&Bをやっているんですよね(笑)。
B:これもやりたかったことですね(笑)。歌ものをすごくやりたかったんですよ。かなり力を入れました(笑)。曲を作る前に集まって「クラブでの出会いが良いんじゃないか」って。
■歌っているルナさんはどういうひとなんですか?
B:ルナさんはMaryJaneってふたり組のグループで活動してて。まわりの友だちで昔から遊んでた人間がけっこういて、音源といろいろ話も聞いてたので紹介してもらった感じですね。
■小島麻由美さんにも新たに歌ってもらっていますね。この曲も面白かった。
B:これはかなりエクスクルーシヴになるなと思って。小島麻由美さんに歌ってもらったら面白いことができるんじゃないかと思ってました。最初はダブっぽい感じで歌が入ってきてみたいな感じで考えたんですけど、途中でラップ・トラックみたいになってきちゃって。
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あと連絡が大変だったっす。セカンドでちょっと人数が減ったんで、忘れてたんですよね(笑)。途中で全員にメールして確認を取らなくちゃいけないんだって思い出したとき、発売の延期をちょっと考えましたね(笑)。
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■そういえば、少し前にトーフビーツのリミックスもやったじゃないですか? あれは、さすがにびっくりした。だって、トーフビーツの曲をブッシュマインドやRAMZAがリミックスしてるんだもん(笑)。
B:あれはスタイル・ウォーズというか、好きなアーティストを使ってどれだけ面白いことができるかをやらせてもらった感じですね。大阪のトラック・メイカーも参加したんで。
■いや、良い企画だと思いますよ。トーフビーツについてはどう思う?
B:才能があるなって思います。あの曲の構成は自分にはできないんで、勉強になりますね。好みじゃない部分もありますけど。
■ふだん向いているところが違うからね。でも、違うトライブが、リミックスという作業を通じて同じ盤にいることは良いよね。
B:ナード的な物も俺は良い物があると思うし、否定するつもりはないですよ。自分の好きものにもそういう音楽はあるし。ただ、音の鳴らし方とかで音色でちょっと物足りなくなってきちゃうかなって。彼のスタンスは好きですね。斜めに見ていそうな感じとか(笑)。
■そこへいくとブッシュマインドや〈SEMINISHUKEI〉って、決して人付き合いが得意なほうではないからねー(笑)。
B:そうなんですよ(笑)。だからいまいち広がんないっていうところがあるんすよね。
■それは8年経っても変わらない?
B:〈SEMINISHUKEI〉のメンバーでアルバムを出したのって、3、4人とかですよ。総勢30人くらいいるなかで。本当は仲間うちで作品を出して競い合うっていうのが俺の理想なんですけど、なかなか実現できないですね。あ、でもDJ Highschoolってやつが1ヶ月前にすごく良いアルバムを出したんです。かなり刺激になりましたよね。
■へー。
B:Highschoolはすごいっすよ。彼は、どんなジャンルでも興味を持ったらすぐに自分でやってみて、簡単な方法でかっこいい物を作ることができるんですよ。もちろん掘り下げもするんですけど。DJ以外にラップやハードコアのバンドもやっているし。
■いろんな人が参加しているんだけど、OVERALLというトラックメイカーも面白いと思った。
B:才能があるっすね。レコードの堀り方も尋常じゃなくて、DJもすごくいいんですよ。やっちゃんとクマと3人でミックスを聴いて、みんな「これはヤバい」ってなって、「〈SEMINISHUKEI〉に入ってもらおうか」って。2マッチ・クルー周辺の人間とも仲いいんで、その影響もでかいんじゃないかと思います。
■今回は、トラックメイカーも何人もフューチャーされているんだけど、これは土台となるものをタカアキ君が作って、それに手を加えてもらうの?
B:いや、その逆で、もらう方が多かったすかね。それを俺が料理してちょっと足したりとかループを変えたりですかね。OVERALLと作った曲はけっこうシンプルで、最初のピアノとサンプリングがOVERALLで、途中から入ってくる303を俺が入れた感じで、あとは展開を自分でアレンジしました。なんかひと味足すっていう。
■ひとりで黙々と作るよりは誰かとやっていた方が楽しい?
B:作業によりますね。細かい作業はひとりでやりたいです。ただ、その土台になったりする部分で自分にないものが入ったりすると展開が一気に変わったりすることがあるんですよ。たとえばハットを入れてもらったとか。そこから自分の発想が増えていったりもする。フィードバックが起きたときの感覚がすごく楽しいんです。バンドってひとじゃなくてみんなで作るじゃないですか? 僕はやったことがないんでわからないんですけど、そういう感じなのかなって。だからもちろん相性が悪いひととかはなかなかできなかったりするんですけど、気が合うと、あっという間に仕上がることもあるんで。
■今回の作品は、タカアキ君のなかで予定よりも伸びた?
B:完成は伸びましたね。ホントにギリギリでしたからね。ラップ取り終わった後にもトラックを最後までいじってた曲とかがあったんで。あと連絡が大変だったっす。
■それ、『Bright In Town』のときも言ってたじゃん(笑)。
B:セカンドでちょっと人数が減ったんで、忘れてたんですよね(笑)。途中で全員にメールして確認を取らなくちゃいけないんだって思い出したとき、発売の延期をちょっと考えましたね(笑)。
■はははは。それで井坂さん(担当A&R氏)に怒られたと?
B:いや、それで予定を見たら俺が1週間早く勘違いしていて。まだいける、みたいな。3枚目なんでサッとできるトラックメイカーを目指したかったんですけど。
■ジャケの絵は〈フューチャー・テラー〉でも書いているひとなんでしょう?
B:そうですね。本人たちは服飾をやっていたりしていて。ROCKASENとかもそうですね。同じクルーみたいです。
■アートワークに関してディレクションはしたの?
B:一応、ホークウィンドの『スペース・リチュアル』を(笑)。
■ホークウィンドって、ヒッピーだよ(笑)。
B:いやいや、レミーはヒッピーじゃないですよ!
■いや、レミーはヒッピーだよ(笑)。
B:まあ、時代的には、そういう要素もあったかもしれないですけどね(笑)。
■しかし、なんで『スペース・リチュアル』だったの?
B:サイケデリックの数ある名盤で、自分のなかではこれが金字塔なんです。今回は、そのくらいの作品を作りたかったんです。ワックワックにアートワークをお願いするのは決まっていたんで、じゃあ、何をお願いするのかってなったときに、彼らにこの絵を描き直してもらってリミックスしてもらったら面白いんじゃないかなって。ヒップホップのアルバムにホークウィンドっていう設定自体もないと思うんで。あとホークウインドのファンのひとが間違って手に取ったりしないかなっていう(笑)。
■それは感想を聞きたいね。
B:冒涜だとかいって、怒る人とかもいそうですよね(笑)。
■ところで、タカアキ君はなんでそんなにヒッピーを嫌うの? ヒッピーいいじゃん。ある意味では、俺らの先輩とも言えるよ。
B:まぁ、切り開いてくれたヒッピーもいたかもしれないんだけど、ラヴ&ピースで全部片付けるっていうのは、ちょっとなっていうのがあるんですよ。裏側がないっていう。その裏側が重要だと思っているんで。そこはあえて見せるものでもないと思いますけど。
■ブッシュマインドのドリーミーな裏側だね。
B:あと、俺が良いヒッピーに出会っていないんだと思います(笑)。面白いヒッピーに出会ったら、俺の考え方も変わるかもしれないですね。ダメなヒッピーってたくさんいるじゃないですか。こうありたいっていう理想像と自分が思うヒッピーの姿は全然違うというか、ある程度ひとぞれぞれの美学やルールが必要だと思うんですよ。そこがぶつかるのはしようがない。
■でも、8年後には変わっているかもしれないよ(笑)。
B:そこは確認させてください(笑)。「野田さん、8年経ちました」って(笑)。
■でもさ、タカアキ君は、60年代とかも好きそうじゃない?
B:サイケデリックも、やっぱりブルー・チアーとか。ブルー・チアーはヘルズ・エンジェルスじゃないですか。アイアン・バタフライは、ヒッピーっぽいすね。あのバンドは大好きですね。あの人たちに出会えたら、ヒッピーが好きになるかもしれないですね(笑)。







