ポップだけど、そっちに流されすぎないってとこ。必ずメッセージはいれたい。負けもせず勝ちもせずもやもやしてる若者の違和感を歌いたい。
グソクムズがセルフタイトルの1stアルバムを完成させた。東京を拠点に活動するたなかえいぞを(Vo, G)、加藤祐樹(G)、堀部祐介(B)、中島雄士(Dr)の4人組は、井上陽水や高田渡、はっぴいえんどらのDNAを受け継ぎながら、2021年の感覚でよるべない若者を描写する。77年生まれで90年代に青春を過ごした筆者は、豊かでもなく貧しくもない状態が永遠に続くと思っていた。その意味で輝かしくはないが、未来は確かにあると。だがいまの子供たちは何を思う。大半の大人が人間不信に陥り、景気も気候も悪い。おまけに未知の伝染病まで蔓延する。グソクムズの1stアルバムにはそんなディストピアをリアルに生きる若者の気持ちが描かれる。
そんなアルバムについて、さらに今回はバンドのヒストリーをたなかえいぞをに聞いた。

今回取材に応じてくれたヴォーカル/ギターのたなかえいぞを
息してるだけでお金がなくなっていく。夢も生活もどんどん削られているのに、街はどんどん発展してでっかいのが建って。地元の吉祥寺も、下北沢も。僕はそこでうまく生活できないなって思うんですよ。
■グソクムズはもともとたなかさんと加藤さんのフォーク・デュオだったんですよね?
たなか:そうです。加藤くんとは高校から付き合いでいっつもふたりで遊んでました。僕らは不良とオタクと引きこもりしかいない高校に通ってて。僕はクラスの人気者だったけど、加藤くんは日陰者でした(笑)。でも音楽の趣味というか、単純に気があったのですごく仲良くなりました。
■そんな学校で人気者だったということは、たなかさんももともとはすごい不良だったとか?
たなか:いやいやいや。本物の悪い人たちはだいたい1年の1学期でいなくなっちゃうんですよ。僕は平和主義者だし。1年でやめちゃったけど大学にも行ったし。
■音楽にはどのようにハマっていったんですか?
たなか:原体験は両親ですね。いま65歳なんですが、家で60~70年代のカーペンターズとかサイモン&ガーファンクルとかがよくかかってたんです。そういうのを自然に聴いてたから、60~70年代の雰囲気がいちばん馴染むんですよね。高校とかだとまわりはワンオクとかセカオワを聴いてました。僕はそういう人たちとも仲が良くて、音楽のことは加藤くんと濃く話してた感じですね。彼はすごく音楽に詳しくて。井上陽水や高田渡も加藤くんが教えてくれました。そこから僕もどんどん音楽にのめり込んでいった感じですね。
■フォーク・デュオを結成した経緯は?
たなか:高校を卒業したあとよくふたりで公園で焚き火しながら朝まで話したりしてたんですよ。七輪を買ってきて、なんかを焼いて食べたり。その流れで、ある日加藤くんがギターを持ってきたんですよ。そこで一緒に陽水さんのカヴァーしてるうちに「スタジオいこう」みたいなノリになったのがきっかけですね。
■バンド名は当時からグソクムズだったんですか?
たなか:いや当時は別の名前でした。でもカッコ悪いのであんまり言いたくない。スタジオに通ううちに友達伝いで「ライヴやるから出ない?」って誘われたんですよ。フライヤーに名前をクレジットしなきゃいけなくて、僕らは名前なんて決めてなかったから適当につけたんです。グソクムズという言葉に当初の痕跡は残ってます(笑)。
■「やるぞ!」というよりゆるく形になっていったんですね。
たなか:そうです。ニュアンス的には加藤くんと、マーシー(真島昌利)の『夏のぬけがら』みたいなバンドにしようぜって話してたんです。その名残として、グソクムズにもアコースティックな雰囲気が残ってるんだと思う。
■バンド編成になったのは?
たなか:やってくうちに「もっとこうしたい」みたいな気持ちになってきて、通ってたスタジオの店員さんがギターで加入したんですよ。ギター3人組。その人はいま僕らのマネージャーをしてくれてます。で、その後、同じスタジオに来てた加藤くんの先輩だった二個上の堀部さんが加入します。巷では楽器がうまくて有名だったんですよ。その後ドラムはなかなか決まらず、いろんな人とスタジオに入ったけどなんか合わなくて。そこで最終的にスタジオの店員だったナカジさん(中島雄士)を誘ってようやくいまの4人組になりました。
■『グソクムズ』は演奏面、楽曲面ともに1stアルバムとは思えない安定感のある作品だと思いました。
たなか:いわゆる初期衝動みたいなものは、それこそ加藤くんとふたりでやってた頃に作ったシングルで出しちゃったからだと思います(笑)。堀部さんもナカジさんもいろいろなバンドを経てのグソクムズだったりするし。アルバムを聴いて安定感を感じていただいたのだとしたら、そのへんが出てるんじゃないかな。あと僕らはかなり細かく作品を作り込んでいくタイプなんですよ。
■スタジオに集まってセッションしながら作っていくのではなく?
たなか:はい。コロナだからスタジオに行けなかったというのはあるんですが、僕らは基本的に全員が作詞作曲するんですね。加藤くんは歌えないけど、グソクムズ以前は堀部さんもナカジさんもそれぞれギターを弾いて歌ってたんですよ。そんな感じで、昔はみんなで一緒にスタジオに入って、それぞれ作ってきた曲を披露する会とかもしてたんですけど、いまはそれぞれが宅録して納得できるデモができたら、LINEのグループトークにデータを投げて、「これいいね」ってなったらあれこれ話しながらこつこつと完成度を高めていく形で作っています。
■なるほど。本作は統一感があるけど、同時に音楽的な幅も感じたんです。それがメンバー全員の個性なんですね。
たなか:ですね。例えば1曲目の “街に溶けて” は堀部さんが作りました。この曲はフォークっぽいけど、彼は黒人音楽やメタルも好きで、幅広く音楽を聴くんですね。8曲目の “グッドナイト” も堀部なんですけど、これはベースがグイグイいわしてる。
■“街に溶けて” にはいちばんはっぴいえんどを、“グッドナイト” にはいわゆるシティ・ポップらしさをいちばん感じました。
たなか:堀部さんはモテ曲が多いんですよ(笑)。
[[SplitPage]]はっぴいえんどはアングラすぎるし、山下達郎はトレンディすぎる。グソクムズはその中間がいい。それにメンバー全員が井上陽水さんを好きなので、その色は消したくない。だからシティ・フォークと言ってるんです。
■MVにもなった “すべからく通り雨” は誰が?
たなか:ナカジさんですね。夏に「曲を作ろっか」とデモを持ち寄ったとき、全員一致で「これはA面だね」っていうくらいポップ。
■たなかさんが作詞作曲したのは?
たなか:“迎えのタクシー”、“そんなもんさ”、“濡らした靴にイカす通り” です。今回のアルバムは事前にシングルとしてリリースしてた “夢が覚めたなら”、“街に溶けて” に加えて、“すべからく” や “グッドナイト” みたいな、バンドとして強い曲、柱になる曲を入れようという話になったんですよ。僕と加藤くんはバンドの幅を表現する曲を作っていった感じですね。
■“迎えのタクシー” はアルバムのなかでいちばん土臭い雰囲気がありますね。
たなか:僕はもっとポップな感じで作りたかったんですよ。でも僕はこのスケールのフレーズしか弾けないから、とりあえずデモを作って、あとはみんなにいい感じにしてもらおうと思ってたんです。そしたら「なんでこのコード進行にこのギター・フレーズなの?」って突っ込まれて。しかもフレーズが採用されて、コードを換えてるんですね。だからこの曲は前半がブルースっぽくて、後半がポップスっぽいんです。
■この感じすごい好きでした。“そんなもんさ” にも通じますが、たなかさんの曲はちょっとやさぐれた雰囲気がありますね。
たなか:“そんなもんさ” はコード進行と歌詞だけはずっと自分のなかにあって。作ったのは結構前ですね。僕は基本的にいつもいっぱいいっぱいなんです。キャパシティもそんな大きくないほう。どの曲もしっかりと作り込みたい気持ちはあるけど、忙しいとすぐ「疲れたなあ」と思っちゃう。根がいい加減なんです。それでこういう歌詞になりました。でも今回のアルバムにはいいかなと思ってみんなに聴かせた感じですね。僕らは4人が作詞作曲するから、みんなのなかに「グソクムズらしさ」があるんですよ。
■「グソクムズらしさ」とは?
たなか:共通する部分もあってそこがアルバムの統一感に繋がってると思うんですが、同時にそれぞれのバックグラウンドや考え方で微妙に違うとこもある。僕が思うのはポップだけど、そっちに流されすぎないってとこ。必ずメッセージはいれたい。負けもせず勝ちもせずもやもやしてる若者の違和感を歌いたい。僕はグソクムズの違和感担当ですね。
■高校時代は人気者だったのに?
たなか:学生の頃の僕は何も考えてなかったんですよ(笑)。だけどバンドで生きていこうとなってからは考えることが多くなりました。その感じが出てるのが “濡らした靴にイカす通り” です。僕は革靴が好きなんですけど、お金ないからあまり手入れできない。息してるだけでお金がなくなっていく。夢も生活もどんどん削られているのに、街はどんどん発展してでっかいのが建って。地元の吉祥寺も、下北沢も。僕はそこでうまく生活できないなって思うんですよ。違和感を感じるし、置いていかれる気持ちになる。
ライヴハウスの音が良かったり、歌ってて気持ちが良かったりすると歌詞を忘れちゃうんですよ。昔はそういう自分が嫌でライヴ自体が苦手でした。けど、コロナ前くらいから「楽しければなんでもいいか」と思えるようになった。
■表現するようになって、現実や自分と向き合うことが多くなった?
たなか:それもあるけど、やっぱバンドを本気でやるようになってからですね。最初は他力本願なとこがあって、週1でライヴしてればレーベルの誰かが見つけてくれてなんとかなっていくんだろうと思ってたんです(笑)。でも当たり前のように世の中そんな甘くなくて。ライヴハウスのブッキング・ライヴに出ても友達しか呼べない。他のバンドも友達を呼んでる。当時の僕らは、まあいまもなんですが、お金が全然なくてMVを作れなかった。仮に(僕らのことを)気になってくれたとしても、探す術がないんですよね。そんな状態でいくらブッキング・ライヴに出ても意味ないなと思った。ノルマ代も、練習スタジオ代もバカにならなかったし。だから僕らは3年前にライヴをやめて、そのお金を全部制作につぎ込むことにしました。レコーディングして、MV作って YouTube にアップして。
■まさに「夢も生活もどんどん削られている」なかで、ドラスティックに活動スタイルを変えたんですね。
たなか:自分たちの甘えもありましたけど(笑)。とはいえ、バンドをやってたり、夢を持って生きてる人にはいまって生きづらい世の中だと思う。この曲(“濡らした靴~”)は、「でもイカした生き方ができるんだぜ」って思いで書きました。僕が書いた曲は割と僕がリアルタイムで感じてることが反映されてるかもしれないです。普段から感じてることや使いたい表現をいつもメモしてて。僕は曲先でも詞先でもない。そのときに口ずさんだものが曲になっていく。さっき言われたように、曲を書いてて何かと向き合って気づくこともあるし、「あれ? 変だぞ」って違和感をそのまま歌にすることもある。これは後者ですね。
■ライヴは今後もやらないスタイルで活動していくんですか?
たなか:いや来年からはやる予定です。昔は僕がライヴが苦手だったんです。僕、ライヴハウスの音が良かったり、歌ってて気持ちが良かったりすると歌詞を忘れちゃうんですよ。今回のアルバムだと加藤くんが作った “夢が覚めたなら” とか。彼はメロディーとリズムにあった言葉を並べてくのに長けてる人。だからあの曲は歌っててめっちゃ気持ちいい。たぶんライヴでやると確実に歌詞が飛んじゃうタイプの曲(笑)。でも昔はそういう自分が嫌でライヴ自体が苦手でした。けど、コロナ前くらいから「楽しければなんでもいいか」と思えるようになったので、いろいろ収束したらどんどんライヴをやっていきたいです。
■ちなみに仲が良いバンドやアーティストはいますか?
たなか:The Memphis Bell ってブルース・バンドと、工藤祐次郎さんですね。工藤さんとはコロナもあって全然会えてないんですが、最後にお会いしたときは一緒にやりたいねと言ってくださっていて。
■グソクムズは街に心象を重ねる描写も多く、今後いわゆるシティ・ポップの文脈で語られるような気がします。それについてはどう思いますか?
たなか:僕らは最初から自分たちの音楽をシティ・フォークって言い張ってたんです。そういうジャンルがあるのかわかんないけど(笑)。もちろんはっぴいえんども山下達郎も好き。でも僕らの感覚だと、はっぴいえんどはアングラすぎるし、山下達郎はトレンディすぎる。グソクムズはその中間がいい。それにメンバー全員が井上陽水さんを好きなので、その色は消したくない。だからシティ・フォークと言ってるんです。
■シティ・フォークってグソクムズの音楽性にぴったりですね。では最後に今後の抱負を。
たなか:今回のアルバムは正直自信作です。かなりしっかり作り込みました。でも来年には2ndアルバムに向けて動き出すつもり。まずはこの1stアルバムをいろんな人に聴いてもらいたいですね。
グソクムズが吉祥寺・渋谷の3店舗でインストアイベントを開催! 松永良平(リズム&ペンシル)に加えて柴崎祐二(音楽ディレクター/評論家)、レコードショップ店員等からのコメントも到着!
12/15(水)に吉祥寺の新星 "グソクムズ" が、1stアルバム『グソクムズ』をリリース。吉祥寺・渋谷のレコードショップ3店舗で観覧フリーのインストアイベントを開催することが決定しました。
・12月19日(日) 14:00 at HMV record shop 吉祥寺
・12月25日(土) 16:30 at タワーレコード吉祥寺
・1月30日(日) 16:00 at タワーレコード渋谷
そして松永良平(リズム&ペンシル)に加えて柴崎祐二(音楽ディレクター/評論家)、レコードショップ店員等からのコメントも到着。特設サイトよりご覧いただけます。
[グゾクムズ インストアイベント詳細/特設サイト]
https://special.p-vine.jp/gusokumuzu/
・グソクムズ - すべからく通り雨 (Official Music Video)
https://youtu.be/TE-rqPUvyuM
・グソクムズ - グッドナイト (Official Music Video)
https://youtu.be/n8LwWJvvDd4

[リリース情報①]
アーティスト:グソクムズ
タイトル:グソクムズ
レーベル:P-VINE
品番:PCD-22443
フォーマット:CD/配信
価格:¥2,420(税込)(税抜:¥2,200)
発売日:2021年12月15日(水)
■トラックリスト
01. 街に溶けて
02. すべからく通り雨
03. 迎えのタクシー
04. 駆け出したら夢の中
05. そんなもんさ
06. 夢が覚めたなら
07. 濡らした靴にイカす通り
08. グッドナイト
09. 朝陽に染まる
10. 泡沫の音 (CD盤ボーナストラック)
[リリース情報②]
アーティスト:グソクムズ
タイトル:グソクムズ
レーベル:P-VINE
品番:PLP-7776
フォーマット:LP
価格:¥3,520(税込)(税抜:¥3,200)
発売日:2021年12月15日(水)
■トラックリスト
A1. 街に溶けて
A2. すべからく通り雨
A3. 迎えのタクシー
A4. 駆け出したら夢の中
A5. そんなもんさ
B1. 夢が覚めたなら
B2. 濡らした靴にイカす通り
B3. グッドナイト
B4. 朝陽に染まる
[プロフィール]
グソクムズ:
東京・吉祥寺を中心に活動し、"ネオ風街" と称される4人組バンド。はっぴいえんどを始め、高田渡やシュガーベイブなどから色濃く影響を受けている。
『POPEYE』2019年11月号の音楽特集にて紹介され、2020年8月にはTBSラジオにて冠番組『グソクムズのベリハピラジオ』が放送された。
2014年にたなかえいぞを(Vo / Gt)と加藤祐樹(Gt)のフォークユニットとして結成。2016年に堀部祐介(Ba)が、2018年に中島雄士(Dr)が加入し、現在の体制となる。
2020年に入り精力的に配信シングルのリリースを続け、2021年7月に「すべからく通り雨」を配信リリースすると、J-WAVE「SONAR TRAX」やTBSラジオ「今週の推薦曲」に選出され話題を呼び、その後11月10日に同曲を7inchにてリリース。そして待望の1stアルバム『グソクムズ』を12月15日にリリースすることが決定。
HP:https://www.gusokumuzu.com/
Twitter:https://twitter.com/gusokumuzu
Instagram:https://www.instagram.com/gusokumuzu/




