「Nothing」と一致するもの

Matthewdavid - ele-king

 この快楽。濃厚な音の快楽。昨年末のシゲト『フル・サークル』は予兆に過ぎなかったのか、短い曲の連なりで構成された『アウトマインド』は久々に100%スモーカーズ・デライトを狙った作品であり、追求されるイメージはたったの一種類。その反復強化。どこを取ってもキラビやかな光のなかを歩むバレアリック・ブレイクビーツの波は西海岸で起きているドローンやチルウェイヴの変化とも足並みを揃え、DJシャドウによる翳りあるメランコリーをアーカイヴの一部へと封じ込めかねない。いま、ここには光が溢れている。四方八方から光が降ってくる。
 今年、もっとも注目されているカセット・レーベル、〈リーヴィング〉の主催者がその主役で(やはり〈リーヴィング〉からのリリースとなったサン・アローとのジョイント・ライヴに続き)初のスタジオ・ソロ作はフライング・ロータスのレーベルから。「ホコリと光のすごいごちそう」に溢れかえるオープニング"ロス・アンジェルス・イズ・ビューティフル"から有無を言わせず引きずり込まれ、陽気なフライング・ロータスと陽気なベーシック・チャンネルが交互に、あるいは、混合しあって光のなかを引きずり回される。中盤に入ってフライング・ロータスをフィーチャーした"グループ・ティー"で初めてメランコリックな迂回をしばし経験させられるものの、無限大に与えられるユーフォリアのイメージは最後まで揺るぐことがなく、ひと時も快楽的な音楽であることをやめることはない(サン・エレクトリックからドリームフィッシュに変わった程度というか)。
 これはもう、気持ちEとしか書きたくない。ニキ・ランダをフィーチャーした"フロアー・ミュージック"はタイトルを裏切るようにノン・ビートのアンビエント・ドローンで、マシューデイヴィッドがここ数年のアンダーグラウンド・カレントを総合しながらひとつのイメージにまとめていったことが簡単に推し量れる。すべてはここに向かっていたでしょうといわんばかり。最後にメドレー形式で配置された"ノー・ニード・トゥ・ウォリー/ミーン・トゥ・マッチ"で昇天できなければ、もう一度、再生ボタンを押してしまうだけである(つまり廃人コース)、

 RZAとエイフェックス・ツインに影響を受けたという18歳のインフィニティロックが昼間は学生、夜はグリッチ・ホップのプロデューサーと化してつくり上げたファースト・アルバムも同じ傾向に足を踏み入れようとしているアルバムで、手習いの感はまだ拭えないものも、完成度ということでは申し分ない。なるほど『アンビエント・ワークス』をブレイクビーツで下支えしたような"テンチ・サイティングス(天地目撃?)"や"キルン"、タイトルとは裏腹に天国的なイメージを掻き立てる"ガンス・オブ・キングストン"など、あっという間にどこかに連れ去ってくれる曲は多い。ヒンズー語が理解できないインド系2世か3世にあたるそうだけど、ジュンパ・ラヒリのような屈折もなく、文字通り年齢にあった感性の産物といえる。
 『ミュージック・フォー・プライモーディアル・リコレクション』は、1年ほど前に紹介したスフィアン・スティーヴンスのレーベルからライブラリーの体裁でリリースされたローウェル・ブラームスと同じシリーズの14作目にあたるもので、同時にリリースされたレブ・レイズのセカンド・アルバム『ミュージック・フォー・トラブルド・マシーナリー』も同じくアンダーグラウンド・ヒップホップの変り種。上記2作に比してダイナミックで何をやろうとしているのかすぐにはわからない迷宮性が持ち味といえる(PS 1年前にローウェル・ブラームスってまさかスフィアン・スティーヴンスの変名じゃないだろうなと内心では思いつつ書いていたりしたのだけれど、実は母親の再婚相手で、初めての出会いはスティーヴンスが1歳未満のときだったとか。アスマティック・キティ=喘息猫はふたりが共同で運営するレーベルであり、スティーヴンスの勧めで初めて録音したのが『ミュージック・フォー・インソムニア』だったそうです。ちなみにドミューンやヴィンセントラジオでオン・エアしたなかでは、いまのところもっともリアクションが高く、買いましたよといわれたレコードである)。

 すべてのタイトルに『ミュージック・フォー~』という決まり文句が付けられたライブラリー・カタログ・ミュージック・シリーズはほかにも魅力的なリリースが多い。全作を聴いたわけではないけれど(そんなことするのは岡村詩野だけ!)、最近のものでは12番のB・ラン3『ミュージック・フォー・ハンティング・アンド・マッピング』、少し前のものだとインストゥルメンツ・オブ・サイエンス&テクノロジーが出色の出来で、とくに後者はリチャード・スイフツの名義でふだんは普通にロック・ミュージックを演奏している人なのに、この名義に変わると底が抜けてしまうのか、予想も付かない実験主義に走り出す異才。セカンド・アルバムにあたる『ミュージック・フォー・パラダイス・アーマー』は、前作ではまだ少しは残っていた楽曲性もあらかた砕け散って、部分的には坂本龍一『B2ユニット』を思わせるキッカイな内容に。

Arrington de Dionyso's Malaikat dan Singa - ele-king

 ケチなことを言うようで恐縮だけれど、再結成したザ・ポップ・グループがサマー・ソニックで来日すると知って、僕のようにリアルタイムで熱心に聴いていた夢見がちな世代――1978年に2800円払ってUK盤を買った人なんて決して多くはないだろうけれど――はけっこ失望しているんじゃないだろうか。よりによってなぜあのザ・ポップ・グループが......と思っていることでしょう。しかしまあ冷静に考えてみれば、再結成とは屍体を墓場から掘り起こすようなものであって(だからアリ・アップはザ・スリッツは再結成ではないと強調したのであって)、マーク・スチュワートの初来日時のあの素晴らしかったよれよれのステージとは比較にもならないだろうし、そう考えればぜんぜんアリなのだ。が、それにしてもなぁ......("ウィ・アー・オール・プロスティチューズ"を演奏したら爆笑するしかないが、きっと笑えないだろうし)。
 セックス・ピストルズやザ・クラッシュからファッション性をさっ引いて、さらに過剰に政治と哲学とアヴァンギャルドを詰め込んだのがザ・ポップ・グループだった。その音楽を戦地の"野火"のようだと形容していた人がいたけれど、『Y』とはそうした喩えが泉のように湧いて出てくるほどの作品だった。ザ・スリッツもそうだったが、ポスト・パンクの時代は、西欧主義を挑発するかのような、ある種の野蛮さが賞揚された。ことにザ・ポップ・グループのような、サイモン・レイノルズ言うところの"ディオニソス的プロテスト・ミュージック"すなわち"激情派の反抗"の背後には、キャプテン・ビーフハートからの影響がうかがえる。日本で言えばじゃがたらも同類で(そして一時期のボアダムスにもそういうところがあった)、ビーフハート系のディオニソスはワールド・ミュージック的ななものへとアクセスする。まあ、それもいまとなっては秩序的なものへの毒づき方のひとつのクリシェと言えなくもないけれど、それを多数の耳を惹きつけるほどの高みに持っていけるバンドはそう多くはない。90年代末は狂ったガレージ・パンク・バンド、オールド・タイム・レリジュンで活動していたアーリントン・デ・ディオニソによるプロジェクト、マレイカット・デン・シンガ(Malaikat dan Singa)のアルバム『スアラ・ナガ(Suara Naga)』はまさしくビーフハート~ザ・ポップ・グループの熱狂と陶酔の系譜に位置づけられる作品である。

 インドネシアのデス・メタル・バンドがフリー・ジャズを演奏したらどうなるか想像して欲しい。それがこのアルバムである。アーリントン・デ・ディオニソはインドネシア語で、むせかえるような声で雄叫びをあげる。なぜインドネシア語なのかはわからないけれど、とにかくこのアルバムを家で聴いていると、さすがに家人たちも「何これ?」と言ってくる。それだけこの音楽には耳障りな異様さがあるのだ。ところどころファンクもあり、リズミックなうねりが熱狂を待ちわびていることは明かである。ギャング・ギャング・ダンスやチューン・ヤーズと同様に、ある種の空想的ワールド・ミュージックとも言えるが、アーリントン・デ・ディオニソはポップとは真逆の方向に突進している。その過剰さにおいて、『Y』に連なるディオニソスであることは間違いないのである。

Chart by JET SET 2011.04.25 - ele-king

Shop Chart


1

G.MITCHELL & JEBSKI FEAT. KENGO ONO

G.MITCHELL & JEBSKI FEAT. KENGO ONO NATSU EP2 »COMMENT GET MUSIC
1stアルバムが大ヒット中のJebskiとG.Mitchellの新作12インチはリミックス音源3曲を収録した超強力盤!ベスト・アルバムしたばかりのCalm、アナログ・ヒットを連発するDJ Yogurt & Koyas、Kaoru Inoueがリミックスを提供。

2

KUNIYUKI

KUNIYUKI BAMBOO CITY »COMMENT GET MUSIC
アルバム『Dancing in the Naked City』収録の新曲がアナログカット!!A面"Bamboo City"はLucianoとFour Tetの融合とも評されるディープ・チューン。良い音の箱で聴けば意識が飛ぶことは間違いなしのプログレッシヴ・ガムラン・ミニマル!!

3

STUPID HUMAN

STUPID HUMAN GUN-GA-DIN / GET ON UP »COMMENT GET MUSIC
謎の注目ユニット、Stupid Humanによる待望の3rd.シングル!!Bill Brewster(DJ History.com)、DJ Cosmo等が絶賛した前2作も大好評を博したUKからの新たなるリエディット達人、Stupid Humanによる第3弾が遂に到着。今回も超ナイス!!

4

BULLION

BULLION YOU DRIVE ME TO PLASTIC »COMMENT GET MUSIC
ご存じPaul WhiteとともにUK名門One Handed Musicを代表する天才Bullionが絶好調Young Turksから凄まじい1枚をリリース!!

5

OWINY SIGOMA BAND

OWINY SIGOMA BAND WIRES »COMMENT GET MUSIC
Theo Parrish Remixを収録した"Record Store Day"限定盤!!お急ぎ下さい!!Honest Jon'sからのリリースで知られる才人Elmore JuddことJesse Hackettを中心としたUKのミュージシャンと、ケニア/ナイロビのローカル・アーティストとのコラボレーションを繰り広げるBrownswood発の大型プロジェクト"Owiny Sigoma Band"。リリースが待たれる1stアルバムからの先行カットが到着です。

6

GO! TEAM

GO! TEAM APOLLO THROWDOWN »COMMENT GET MUSIC
ヒット・アルバム"Rolling Blackouts"収録曲を、Star Slinger、D/R/U/G/S、Ruby Suns、Tabaccoがリミックス!!

7

JAMES PANTS

JAMES PANTS S.T. »COMMENT GET MUSIC
溢れ出る才能が止まりません! 3rdアルバムは久々の2LP仕様です!いくらStones Throwの新作とはいえ、コレを特定の枠に押し込めておくのはあまりに勿体無いので、当然ジャンル全方位的にオススメします!

8

DIGITALINE

DIGITALINE UP AND DOWN MY SPINE »COMMENT GET MUSIC
またしてもCadenzaからジャンル・ブレイカーなキラー・チューンが登場!!西アフリカはマリ共和国出身のシンガー、Oumou Sangareの"Diaraby Nene"をモロ使いしたA面"Africa"は、Michel Cleis"Un Dolce"級の特大ヒットとなりそうな勢い。マストです!!

9

WORST FRIENDS

WORST FRIENDS BILLIARDS WITH A MIDGET »COMMENT GET MUSIC
リリースインフォ第一報から5ヶ月振りに登場の本作、なんとDr. Dunks a.k.a. Eric Duncanリミックスを収録してました!!オージーFuture Classic発"Neeves for None"も素晴らしかったブルックリン発新鋭コンビによる随分待たされた新曲。オリジナルも勿論良いですが、Prins Thomas、Eric Duncanそれぞれのリミックスが最高です!!

10

TOM DEMAC

TOM DEMAC INDULGE & LUNGE »COMMENT GET MUSIC
Soulphiction、Iron Curtisリミックス!!UKモダン・ハウス注目プロデューサー、Tom DemacによるLiebe*Detail Spezialからのソロ・リリース。オールドスクールな武骨さ満点のベース・ヘヴィ・ハウス!!

tUnE-yArDs - ele-king

 21世紀を過ぎてから、ロック・ミュージックとはますますはっきりと、レトロ趣味と冒険とに二分されるようになったが(もちろんどちらにも価値がある)、チューン・ヤーズは後者を好む者が待ちこがれた人である。いまでもロックの冒険は続いているけれど、彼女のようなタイプはそういない、というのも彼女の冒険......実験という言葉に置換してもいいのだけれど、そこには何かとてつもない喜びがある。何か新しい種類の喜びだ。チューン・ヤーズは実験だが、実験に耽溺するだけの存在ではないのだ。
 生き生きとした彼女の音楽を聴きながら、アリ・アップやビョークやM.I.A.が登場したときを思い出す感傷的なリスナーもいるかもしれない。しかしチューン・ヤーズを名乗るメリル・ガーバスの音楽はそれらすべてと共通するものを持ちながら誰とも違っている。
 まずは......ウクレレの弾きながら、ヨーデルとソウルがごっちゃになっている歌を声高らかに歌っている女を想像したまえ。メリル・ガーバスはニューイングランドで生まれ、モントリオールのDIYコミュニティで彼女の音楽を磨いた。彼女はドラムの音をループさせながらウクレレを弾いて、歌った。その音楽は最初、彼女の部屋でディクタフォン(取材などでよく使う録音機材)という超ローファイな環境のなかで録音された。それがカセットテープでリリースされた彼女の2009年のデビュー・アルバム『BiRd-BrAiNs』となった(そしてそれが〈4AD〉の目にとまって、数か月後にはCDとヴァイナルになった)。

 『フーキル』はそうした彼女のローファイ活動とは違って、初めてのスタジオ録音によるセカンド・アルバムになる。ふたつのスネアドラムとタム類を使った彼女のパーカッシヴなビートがチューン・ヤーズのトラックの主成分だが、今回はそこに控えめなエレクトロニクスと素晴らしいベースが演奏され、またどんどこどんどこといったリズミックな鼓動もクリアに録音されている。レゲエからは哲学的な影響を受けたと話している彼女だが、奇しくもアルバムの1曲目"マイ・カントリー"はザ・スリッツの『リターン・オブ・ザ・ジャイアント・スリッツ』、そしてザ・レインコーツの『オディシェイプ』のコンセプトが新しく生まれ変わったようだ。つまり、好戦的なアフロ・ビートからはじまるわけだが、ひとつ大きく違うのは、先述したようにヨーデルの要素を取り入れた彼女のパワフルでソウルフルなヴォーカルである。その表現力豊かなパフォーマンスは間違いなくこの音楽全体に圧倒的な生命力を吹き込んでいる。そして、その歌声と張り合うようにバックトラックのほうも実にユニークに作られている。"ドアステップ"などはOOIOOのトライバルなドラミングをバックにエイミー・ワインハウスが優雅に歌っているようだし、"ギャングスタ"を聴いていると像の群れがロサンジェルスの街中を行進しているようなシュールな錯覚に覚える。元気いっぱいでグルーヴィーな"ビズネス"はすでにYouTubeで話題になっている。
 もうひとつ、チューン・ヤーズにおいて興味深い点は"ギャングスタ"をはじめ"ライオットリオット"や"キラ"といった曲名、あるいはアルバム・タイトルの『フーキル』といった言葉からも、ある種の暴力的なニュアンスが匂っていることだ。「私にはセックスについて延々と歌う必要がないのよ」と、彼女は『ガーディアン』で続けてこう話している。「とくに"パワ"は暴力に関係している。中東には下層階級の蜂起による中産階級の恐れがあるのよ。それはたしかにあって、そこには女性への暴力もある。恐ろしい現実が私を邪魔するけど、私はそこを歌で掴みたかったのよ」
 「コミュニティに何が起きているのかを、個人的なパースペクティヴにおいて見極めようとした」と彼女は言うが、歌詞の内容はあくまでフィクションであり、すべては空想だと彼女は明かしている。もちろんフィクションは現実から生まれている。収録曲の背後には、現在彼女が住んでいるカリフォルニア州オークランドの地下鉄で、丸腰のアフリカ系アメリカ人男性が警官に射殺された事件が関係している。その悲劇は警察への2500万ドルの訴訟と暴動によって決着がついたというが、チューン・ヤーズの音楽はそうした現実の暗さをひっくり返してしまうような、瑞々しい躍動感がある。
 ......というわけで前向きなのは音だけではないという話。チューン・ヤーズは、何かこう、新しい種類の喜びを予感させるのだ。

Chart by UNION 2011.04.22 - ele-king

Shop Chart


1

P. ELADAN

P. ELADAN Monochordium MUTING THE NOISE / GER »COMMENT GET MUSIC
あのGURU GURU周辺の人物とも噂があるものの、まったく詳細がつかめないP.ELADANなるアーチストがAMEによるヴァイナルオンリーのレーベルMUTING THE NOISEの1番を飾った!BPM110程度の生ドラムを延々と展開、ガムランを彷彿とさせる他方向へ飛び交う様々なウワもの、僅かなビートのもたつきやエフェクトまで全てがヴィンテージな鳴りだが、いつ頃製作されたのかも謎のまま。。。ドープ極まりない2ヴァージョンを収録!

2

FRANCESCO TRISTANO

FRANCESCO TRISTANO Bachcage, Moritz Von Oswald & Lawrence Remixes DEUTSCHE GRAMMOPHON / GER »COMMENT GET MUSIC
クラシックとテクノを行き来する天才・FRANCESCO TRISTANOがバッハとジョン・ケージに挑んだ話題作「bachCage」からの限定リミックス・シングルカット! MORITZ VON OSWALDとLAWRENCEがリミックスを手掛けています。

3

GATTO FRITTO

GATTO FRITTO Gatto Fritto (LP) INTERNATIONAL FEEL / URG »COMMENT GET MUSIC
現場はもちろん主要サイト「Beats In Space」、「Electronic Beats」等のレビューでも絶賛されている秘境ウルグアイ発のレーベルINTERNATIONAL FEELから初のアーチストアルバムはロンドンを拠点に活動するGATTO FRITTOによる500枚限定2LP。ジャケットも豪華!

4

DJ COLE MEDINA

DJ COLE MEDINA 1.6 Upglade HOUSE ARREST / US »COMMENT GET MUSIC
DJ Harvey, Rub N Tug, Idjut Boys等がプレイしたCole Medina初期作をサイドに、Cole Medinaが新たに始動したスローモー~バレアリック系ディスコレーベルGIMMIE THE LOOTのプロモ盤をBサイドに配したスプリット!終始スモーキーなグルーヴを醸し出したバレアリックな調理、これはマジでハズセマセン!!!!!

5

JUNIOR BOYS

JUNIOR BOYS Work (Remixes) PHILOMENA / GER »COMMENT GET MUSIC
ドイツ地下PHILOMENAの超限定盤!先日リリースされたBEN KLOCK 『Berghain 04』の前半、DVS1の次にプレイされていたダークなヴォーカルトラックJunior Boys - Work(Marcel Dettmann Remix)、そしてPrins Thomasによるバレアフィールなリミックス(これまた最高!)もカップリングとこれは見逃せない1枚。

6

HARUKA

HARUKA Fukiware Waterfall WHITE / JPN »COMMENT GET MUSIC
千葉Future Terrorへ加入後、さらに現在活動の幅を広げているDJ HarukaによるMIX-CDが入荷。音への理解と懐の深さを感じさせる多彩なスタイルの選曲、その中でもフィジカルとマインドを交互に刺激するリズム、グルーヴ、コードとメロディーが巧みに重ねあわされた素晴らしい内容に。ハウシーな空気感も心地よく、幅広いリスナーにオススメです。

7

DJ COLE MEDINA

DJ COLE MEDINA Medina's Magic/Cole Loves Your Inside Out AMERICAN STANDARD / US »COMMENT GET MUSIC
驚異的ロングセラーで殿堂入り確実の名盤!極上のバレアリックテイストにミックスされたBEE GEESとOLIVIA NEWTON JOHNのエディットを披露、艶かしく緩やかに広がるトラックに溶け込むヴォーカルパーツの絡みは両サイドとも抜群の仕上がりで、MARK Eなど多くのトップDJ達がプレイ中。

8

MOODYMANN / ムーディーマン

MOODYMANN / ムーディーマン I Can't Kick This Feelin When It Hits DECKS REWORX / GER »COMMENT GET MUSIC
96年にKDJの6番としてリリースされたクラシック"I Can't Kick This Feeling When It Hits"が再発! NILE ROGERS率いるCHICの名曲"I WANT YOUR LOVE"のギターリフとボーカルを巧みにサンプリングしたリコンストラクト・トラック。ジワジワとベースラインが強調され意図的に歪ませているあたりはいかにもKDJ的でフロア映え抜群!

9

GUTI

GUTI Patio De Jugeos DESOLAT / GER »COMMENT GET MUSIC
LOCO DICE & MARTIN BUTTRICH主宰レーベルDESOLATの新作はアルゼンチン人アーティストGUTI!! GUTIがこれまで受けてきたアルゼンチン・フォーク、ブルース、ロック、ジャズなどの音楽的教養をエレクトロニック・ミュージックに落とし込んだ意欲作。最初から最後まで一切の妥協なく紡がれた南米新世代の息吹をじっくりとご堪能あれ!

10

MARCELLUS PITTMAN

MARCELLUS PITTMAN Eastside Story EP SEVENTHSIGN / UK »COMMENT GET MUSIC
壮厳なヴォイス・サンプルとウォーミーなシンセパッドが夢見心地な"An Afternoons Delight"、トラックタイトル通りにマッドなアシッド・シンセが炸裂する"Mad Underdog"、アフターアワーズにもってこいのリラックスした雰囲気が漂うビートダウン"You Want Me (Never)"というPITTMANの幅広い作風が楽しめる快作。

Kode9 & The Spaceape - ele-king

 「空には穴が空いている。それは私の目を焼き尽くす。なぜ空に暗い穴が空いているのだろう」――ダブステップにおける知性派、大学教授でもあるスティーヴ・グッドマンによるコード9名義の2枚目のアルバム『ブラック・サン』は、3年前のファースト・アルバム『メモリーズ・オブ・フューチャー』と同様に、彼のディストピック・ヴィジョンを繰り広げている。前作は都市における暗闇――『ピッチフォーク』が物々しくレヴューしたように「テロリズム・パラノイア、内部コミュニティの争い、インナーシティの抑圧、それら恐怖のテーマを文字通りのジャマイカ感覚において企てる」ものだったとしたら、『ブラック・サン』はサイエンス・フィクション仕立てのさかしまのユートピアにリスナーをテレポートさせる。学者としてのグッドマンの同胞であるコドウォ・エシュン言うところの"ソニック・フィクション"だ。
 ......で、それにしてもどうですか、このアートワーク。狩野派の描いた襖絵を意識したようなこのデザインは、日本で暮らす我々を虚構から引き離し、この現実に引き留める。グッドマンが創出したディトピアは英国への呪い(彼のタームで言えば"一神教信者によるニューエイジ・バビロン")から生まれているというけれど、しかしながら黒い太陽はいままさにアポカリプティカを生きる我々の頭上で輝いているのである。
 とはいえ、彼の不吉なる「ブラック・サン」は、2009年に12インチ・シングルとして発表されている。この悪夢は3年前からはじまっているというわけだ。僕が面白いと思うのは、この曲がUKファンキーからの影響で作られていることで、UKファンキー......それはUKガラージにおけるアフロとソカの混合であり、そのダンス・ミュージックとしての展開であるが、「ブラック・サン」は民芸品に陳列されているアフロやカリブ海ではない。〈ハイパーダブ〉が送り出したテラー・デンジャーのフリーケンシーズがどこか不機嫌で、手の施しようのないくらい過剰だったように、ガラージやファンキーにおけるアフロ・ディアスポラは心地よい陽光や大地とはむしろ逆の感性を磨いている。おそらくグッドマンが目を付けたところもそこだ。「ブラック・サン」のブラックにはアフロが含まれているのだろうけれど、そこに笑顔はないのだ。

 『ブラック・サン』はディストピック・ヴィジョンによるコンセプト・アルバムだが、音楽的に言えばグッドマンのビートへの探求心がもたらした作品だと言える。彼は自分のリスナーがフーコーとドゥルーズを読んでいる大学生ばかりではないことを証明するかのように、ここにはアントールドやピアソン・サウンドといった新世代のベース・ミュージック・プロデューサーからの影響も伺えるし、僕が驚いたのはデトロイト・テクノやシカゴ・ハウスへの接近である。グッドマンにしても、彼の優秀な生徒と言えるだろうブリアルにしても、もともと2ステップ・ガラージのビートの応用者である(あの、一拍目と三拍目二にアクセントをおいたブレイクビートですね)。それはジャングルの発展型であり、テクノ/ハウスからずいぶん離れたダンス・ビートである。どこまで意図的かは知らないが、『ブラック・サン』にはリズム・イズ・リズムのラテン・パーカッションをパラノイアックな恐怖にまで反転させたような曲があるし、シカゴ・ハウスの首を締め上げたような曲もある。このアルバムを聴いたあとではドレクシアの悪夢でさえも気さくなファンタジーに思えるかもしれない。まあ、とにかくエモーションなどないし、"ラヴ・イズ・ザ・ドラッグ"なる曲があるが、それはもう、気が滅入るような恐ろしい呪文である。
 これはデトロイト・テクノではないし、ましてやダブステップでもない。アルバムのクローザー・トラックではフライング・ロータスが参加しているが、彼は錆びて、シミだらけのこのアルバムに相応しいグリッチ・ノイズを表情を変えずに鳴らしている。それがひとかけらの愛も希望もない、どこまでも絶望的なこの物語を後味悪く締めている。
 ここまで徹底的に、執拗なまでに未来の崩壊を表現しようとするグッドマンはどうにも底意地の悪い、ニヒルで手に負えない悲観論者だと言えるのだろうか。そうかもしれないし、あるいはJ.G.バラードやジョージ・オーウェル、ネビル・シュートといった偉大なディストピアンを輩出した英国ならではの伝統を汲んだ作家か、もしくは本気で警鐘を鳴らしたいのだろうか......、いやそんなことよりも、彼の感受性がとことん恐怖を感じ取ってしまっているだけのことなのかもしれない。

Siriusmo - ele-king

 東北大地震の影響でアマゾンの倉庫から出荷がスムーズに行われないとは聞いていたけれど、なるほど直後に注文したCDがいくら待っても届かない。ぜんぜん来ない。ついでだと思って一緒に注文したアニカンの秋山澪特集はすぐに届いたのにモーリツ・フリードリッヒのフル・アルバムは陰も形も表わさない。噂ではCDのプラ・ケースが全部割れたとか、アマゾンにわりを食らっていた店がここぞと売り上げを伸ばしているとか、時期的にも想像は悪い方にしか向かわない。そして、そろそろ2週間が経とうという頃にアマゾンから料金を払って下さいという通知メールが。......そ、そんなものはとっくに払っているじゃないかと抗議の電話をかけようと思ったところ「回線が非常に込み合っているので問い合わせはメールで」とかなんとか。そこでお金はすでに払っていることを伝えると現金での返却はできないのでその分はポイントだかなんだかに振り返るから改めて料金を払えばCDを発送するという解答。えー、なんだよ、それってどうなってんだよ......というやり取りが続いたあげく、結局、一度、注文をキャンセルして再注文すれば改めてお金を払わなくてもCDを発送するけれど、在庫が一点しかないために、もしも、キャンセルしてから再注文するまでに誰かが先に注文をすれば、もう1枚取り寄せるまでにさらに10日ぐらいは待つことになるという......。要は賭けですよ......と。仕方が......ない。少しはギャンブル体質がなくもない僕としては、その賭けにのるしかないじゃないか......

 というわけで、これも二次災害というやつなのか、発売から1ヵ月以上遅れの紹介となってしまいました。モードセレクターのレーベルから本格デビューとなったエレクトロ・ディスコのジリモウスモー(=「憎い」)。久々に精神性も希薄な打点主義のダンス・ミュージック。
 ダフト・パンクの楽観的なリズム運びに神経症的なアクセントを組み合わせたスタイルはボーイズ・ノイズやハウスマイスターがドイツで展開していた流れとそう違うものではない。これにダブステップを取り入れたり、ブレイクを多用する手法はモードセレクターやスウィッチとも近しく......と書いてしまうと何も新しいところはないようだけれど、押し引きの加減が絶妙で、流麗なメロディを小出しにしながら滑らかに展開していく部分を併せ持つことで、よりビート・ミュージックとしての快楽を明確にしているといえる。ビート、ビート、ビート......あくまでもビート。いわゆる凝ったリズムとかそういうものではなく、基本的には低俗なディスコ・リズムに過ぎず、それをなんとかして飽きることなく聴かせる工夫が縦横に凝らされている。そう、踊れればなんでもよかった日々が蘇える。ロック・ミュージックからビート・フリークへと寝返ったセカンド・サマー・オブ・ラヴの初期衝動を。
 あー、それにしても薄っぺらい。ダフト・パンクよりも神経症的なシンセサイザーのリフが楽しい"バッド・アイディア"、デンデコデンデコな"ラス・デン・フォーゲル・フライ!"にタイトル曲では実にファンタジックで軽快なモード、どこかYMOな"イデイロギー"とか"ナイツ・オフ"にデス声とロボ声を折衷したようなうめき声が暴れる"ピーヴド"と、あんまり聴いているとマジでバカになりそう。先行シングルからまったく落ち着きのない"ジリマンデ"やいかにもドッチェラントな"フィード・マイ・ミートマシーン"が採録されているのはCDだけで、アナログとCDでは収録曲がかなり異なっている。後悔したくない人はどちらも買わないことをお奨めします。

 驚いたのはイヴィル・マッドネスでピタのレーベルに移ってリリースされた4作目『スーパー・グレート・ラヴ』はクラウトロックに捉われていた部分はあらかた払拭され、ほとんどエレクトロ・ディスコのユニットとして再生してしまった(前作は『カフェ・シカゴ』)。いまの気分のどこを探ればこんなシンセ-ポップが有効なのかと思いつつ、"カフェ・アインドホーエン"や"Brudubillinn"(読めない)と聴き進むうちにこれもまた妙に明るい気分に(理性ではありえねーと思う半面、この大袈裟なタイトルは本気だということを理解したり)。
 しかし、よくよく聴いていると80年代前半に山とあふれていたエレクトロニック・ポップとはやはりどこかが違うし、エレクトロやディスコの模倣とも言い切れない。一番、似ているなーと感じたのが電気グルーヴ『イエロー』で、それこそお蔵入りしていた石野卓球のソロ・アルバムですよとかいわれて松山晋也に「めかくしプレイ」でも仕掛けられたら、けっこう信じてしまったかもしれない。卓球の大味なフレーズと細かいところが共存している辺りもダブる気がするし。そして、どうしてそういうことになるのか、4曲目には"イザベル・アジャーニ"と題された爽やかなトランス・エレクトロが収録されている。これは心穏やかではない。イメージとまったく違うし、アジャーニといえばヴィクトル・ユゴーの次女を演じたフランソワ・トリュフォー監督『アデルの恋』で狂気に捉われた姿が世間にアピールしたはずで、アンジェイ・ズラウスキー監督『ポゼッション』でアジャーニがクロイツベルクの改札から出て来るなり一分間ほど強烈なヒステリーを起こす場面があって、そこに行って、アジャーニの横っ面を引っ叩いて黙らせるのが僕の長年の夢なんだから......って、そんなこと可能なわけがないんだけど......。
 また、〈エディション・メゴ〉の傘下にはエメラルズからジョン・エリオットがA&Rを務める〈スペクトラム・スプールズ〉というアナログ・オンリーのレーベルが発足したばかり。カタログ1番はエメラルズと同じくオハイオからマシュー・マレーンによるファブリック名義のファースト・アルバムで、マレーンはこれ以前にマーク・マッガイヤーやサーストン・ムーアがソロでアコースティック・ギターのシリーズを出していた〈VDSQ〉から『ヴォリウム4』を担当したのみというニュー・フェイス。フィールド・レコーディングスやミュージック・コンクレートの技術も駆使しつつ、ギタリストのアルバムとして仕上げられた『ア・ソート・オブ・レイディエンス』はいってみればひとりエメラルズ。ふわふわとした質感を基調とした軽いドローンがだらだらと続くのみ。もう少し緊張感のあるパートがあってもよかったかなと。
 2番のビーマスク(蜂仮面)はオフィシャルのセカンド・アルバムに当たり、ギフト・テープスから2010年にカセットでリリースされていたもののアナログ化。デビュー作『ハイパーボーリアン・トレンチタウン』は〈ウイアード・フォレス〉から09年にリリースされていたそうで、しまった、チェックしておけばよかったというほどこれはよく出来ている。ベースになっているのはやはりドローンで、かなり混沌としたイメージを秩序立てて聴かせる構成力とも相俟ってそうは簡単に骨組みを表わさないものの、一貫したトリップ・イメージは最後まで崩さない。いわゆるプログレッシヴ・ミュージックとは発想自体に大きな違いはないはずなのに、過去の様式性には起源を持たない独特の実験精神に裏打ちされた感覚が全体を包み込み、ダブル・レオパーズやイエロー・スワンズといったゼロ年代に特有の覚醒したドローンからザ・プリゼントやサン・アローへと向かったポップ=商業的な流れとはまったく違う導線を組み立てつつあるという感じ。もしくはこの幻想的でどこまでも両義的な価値観に跨ろうとする欲の深さはエレクトロニック・ヴァージョンのタレンテルと言い換えてもいいかもしれない(ファブリックはいまのところエメラルズ帝国の裾野を広げるコマのひとつだろうけれど、ビーマスクにはもっと違う役割が今後は発生してくるかもしれない)。
 〈スペクトラム・スプールズ〉は毎月2点のリリースを計画しているそうで、このレヴューがアップされる頃には早ければ2回目のリリースが到着している予定。


*4月24日23時からヴィンセント・ラジオのレギュラー番組で松沢呉一との対談を放送します。

Peaking Lights - ele-king

 禁煙してからすでに8年以上経っているが、このアルバムを聴いているとたまらなく吸いたくなる。いかんいかん。そう思っていると本当に煙が夢に出てくるから困る。だからこういうことを安易には言いたくないのだけれど、それにしたってこれは......スモーカーズ・デライトなアルバムである(『ピッチフォーク』はこれをアヘン・フレンドリーな作品だと評しているが、そうなのだろうか......)。いずれにしてもこの音楽はサイケデリックであり、ダブである。音の幻覚作用に関する優れた調合士として名高い、サン・アローを追いかけている三田格が何故このアルバムをスルーしたのか理解しかねるほどだ。

 アメリカはウィスコンシン州マディソンの男女によるピーキング・ライツ(頂点に達する灯り)は、2年前に1枚のアルバムをCDRやカセットテープといったメディアをメインにリリースしている〈ナイト・ピープル〉から発表している。彼らのセカンド・アルバムにあたる『936』はあたかもLAヴァンパイアーズのアルバムに続くかのように、〈ノット・ノット・ファン〉の最近の傾向を象徴する作品となっている。つまり、ダビーでサイケデリックだが、ポップなのだ。
 ピーキング・ライツのポップさは、彼らのわりとはっきりしたメロディラインにある。ローファイで、あたかもオブラートで包まれた半透明な世界で反響するような歌でありながら、ここにはメロウネスもある。ヴォーカルを担当するインドラの声はレイジーではあるけれど、ドラッギーなロマンが漂っている。ホープ・サンドヴァルほどエロティックではないにせよ、僕には魅力的だ。もっともベースラインはレゲエ・マナーを押さえ、スピーカーの低音領域を絶えず震わせている。ドラムマシンは始終ゆったりとしたテンポをキープしている。ニュー・エイジ・ステッパーズとLAヴァンパイアーズの溝を埋める......とまではいっていないかもしれないけれど、かなりいいセンまでいっている。曲の随所に挿入されるメランコリックな鍵盤のフレーズも悪くない。ベスト・コーストのような新種のビーチ・ポップと言っても差し支えないだろう。チルウェイヴに取って代わるかもしれない、至福のポップだ。

 オール・ザ・サン・ザット・シャインズ......輝けるすべての太陽よ、彼女はそう繰り返しているが、アメリカの西海岸にはいま、どう考えてもサイケデリックな光に照らされた場所がある。絞り染めのワンピースを来た女が海の家でもくもくになりながらダブミキシングをしている......もしくは、いまそこに陽光が降り注ぐ海がある。目を開けているのがつらいほど、世界は眩しい。ビーチバッグのなかには『936』がある。木陰を見つけて寝そべって、まぶたをゆっくりと閉じて、もう何もしなくていい、何も......。


(↓......そして、橋元優歩さんも同じネタで書いてきたのであった)

橋元優歩
Apr 20, 2011

 ソファーにもたれてキスをしたりしながら、彼氏はギターでノイズを出しつづけ、彼女は歌い、ハンディなシンセでオルガンのリフを奏でつづける。〈ノット・ノット・ファン〉から、ダビーでミニマルなサイケデリック・エクスペリメンタル男女デュオ、ピーキング・ライツの新作がリリースされた。キスをしながら演奏するのはヒッピー、と思っていたが、ピーキング・ライツがヒッピーから受け継ぐものは、そのディープなサイケデリアのみ。退廃的なキャラクターを持った音とは裏腹に、夫婦でもある彼らは、服とレコードとカセットを置く雑貨屋を営み、そこでショウなども行い、〈ノット・ノット・ファン〉をはじめとする音楽コミュニティの活性化に尽力している。
 2000年代後半のサイケデリック・ルネッサンスのなかでは、フリー・フォーク的な文脈からの接続を感じさせつつ、ポカホーンテッドやサン・アローのようなドロドロとしてダブ・ライクなサイケデリック・ファンクの流れに連なり、そしてL.A.ヴァンパイアーズやオーなどウィッチ・ハウスの変則型のようにも捉えることができそうだ。レーベル内の繋がりも強いようで、彼らは音と活動の両面においてシーンを刺激する新しい勢力を生んでいる。
 カセット・テープの音源こそを純粋なものととらえ、ヴァイナルをこの上なく愛するというウルトラ・アナログ志向もピーキング・ライツの特徴だが、この感性もまた最近の若いアーティストに広く共有されているものだ。アナログ音源の神秘化についての議論は措くが、CDを嫌い、mp3のダウンロードに代表される新しい音楽受容の形態に違和感や居心地のわるさを感じる人たちが相当数いるということがよくわかる。彼・彼女らにとって、ニュー・メディアによるフリーティングな音楽受容は、存在論的な不安にすら繋がっているのかもしれない。ピーキング・ライツのふたりは、目に見え、手の届く音楽仲間達と、ショウという体験共有の場を大事にしながら活動をおこなっている。この点、チルウェイヴの主たるアーティストたちとは対照的であって、おもしろい。

 さて、本作はエメラルズを透して見たタンジェリン・ドリームのような、多分にクラウトロックの要素を含んだアンビエント・トラック"シンシー"で幕を開ける。スペーシーで神秘的、そしてどこかしら身体を縛る緊張感がある音だ。2曲目の、ダビーで躍動的なベースに縁どられたアングラ・ダンス・ナンバー"オール・ザ・サン・ザット・シャインズ"でその緊張がほどよく解かれる。インドラのレイジーな唄もよい。先日CD化されて話題にもなった70'Sスペース・サイケ・バンド、ギャラクシーの女性ヴォーカルを思わせる。唄というか、ぐるぐると飽きることなくリフレインされる詞が退廃的で危険な香りを漂わせ、本当に、これを聴いているだけでは彼らの活動のポジティヴィティが理解できないほどだ。世間を無視し、他人の音には関心も寄せず、延々と薄気味のわるい温室でじゃれあって暮らすアダムとイヴ。そんな画が浮かんでくる。"バーズ・オブ・パラダイス"などもまさにそうだ。"ヘイ・スパロウ"などシド・バレットを煮崩したジャム、とでも喩えたい、不健康でバッド・トリッピンなナンバー。個人的には"マシュマロ・イエロー"のようなかっちりとしたビートのあるものが好きだが、このアルバムを統べているのは、そうした甘い腐臭とでもいうべきデカダンスのほうだ。
 こうしたデカダンスには、逆に未来を伐り拓くような、あるいは未来を滅ぼすようなエネルギーがあるのだろうか。彼らのような音とチルウェイヴとをどうしても比較したくなるのだが、それはチルウェイヴという逃避のマナーに私自身が新しいものを感じているからである。逃避は、あくまで逃避であって、現実世界を睥睨するような態度ではない。ひとたび世界に舞い戻ると傷ついてしまう可能性が残されている。それに比して、デカダンスは世界に対していち段上位で構えている。そういう強い態度が彼らのクールな佇まいを作っているのかもしれない。
 ピーキング・ライツが鳴らしているのは、めそめそしたり、傷ついたりしない、現在聴けるなかでももっともハードな部類の音だと思う。逃げながらも絶えず世界を意識せざるをえない、夢を見ながらも常に醒めざるをえないチルウェイヴ的な感性に、私個人はより多く共感する。だが、このストロング・スタイルのサイケデリックがこれからの10年にどのような遺伝子を残すのかは楽しみだ。

Battles - ele-king

 『グロス・ドロップ』に最初興奮できなかったのは、1曲目を聴いて、このメジャー2作目はハードコアの緊張感をデジタルな感性で再構築した『ミラード』の方法論の延長線上にあり、私は彼らも自己模倣と無縁でなかったのかと複雑な気持ちになったからだが、真剣に何度も聴くうちに『グロス・ドロップ』は『ミラード』の圏域に留まるというよりも、その領域の外へ向かう"ベクトル"を音で描けばこうなるのではないかと思った。反射した鏡像が無限に増殖する数列的なイメージから直線をもたないフラクタルな空間認識へ、ドラスティックなきりかえしがこの2作のあいだにあるということは、アートワークにある種象徴的にあらわれているが、それ以上にバンドにとってタイヨンダイ・ブラクストンの脱退は小さくない事件だった。私は残念ながら今回彼らに取材する機会はなかったので、ことの次第はメディアの伝えることで知るに過ぎないが、メンバーがひとり欠ければバンドの力関係は決定的に変わる。バトルズのように(ほとんど)主従関係をもたない、グループ全体の運動そのものを音楽に転化するスタイルではなおさらで、イアンもジョンもデイヴも途方にくれたにちがいない。しかし私は思うのだが、半分以上作業が進み、完成形が見えた作品を放棄し、いちから作り直すことこそ、モノを作る人間の生き甲斐である。制作過程という、いちばん濃密な空気に戻ることができるからだ。そのとき、発表するあてのない作品は彼らだけのものになり、彼らはこのメジャー1.5作目ともいえる音源をのりこえるべく、3人のバトルズとして作業を再開することになった。

 その結果できた『グロス・ドロップ』の第一印象は先に書いた。書き忘れたが1曲目の曲名は"Africastle"という。アフリカとキャッスル(城)を組み合わせた造語だが、アフリカを思わせるところはほとんどないストレートなリズム・ストラクチャーを時間軸に沿って提示する。ところが嵐のような曲調が嵐のように去った後の後半のノンビート部分で曲調はだしぬけにファニーになり、それが2曲目の"Ice Cream"へのブリッジになる。"Ice Cream"はタイヨンダイのヴォコーダー・ヴォイスが印象的だった『ミラード』のシングル曲"Atlas"に対応していて、彼の不在を埋めるようにこの曲では客演に招いた〈Kompakt〉のチリ人、マティアス・アグアーヨの歌声を加工し、"Atlas"路線を伸張しているが、"Africastle"よりこっちの方がアフリカといわないまでもファンキーである。アウトロなどデイヴィッド・モスがドゥーワップをやってるみたいだと書くと苦笑されそうだが、この2曲で例示するまでもなく、『グロス・ドロップ』では各曲のモチーフが他の曲で微妙に変化し反復される。"Futura"と"Inchworm"のリズムの表裏――それが音楽の南と北の関係を暗示するのはいうまでもない――、"Wall Street"のせわしない情景描写とかつて「知っているのは 君と機械のことだけ」("Engineers")と歌ったゲイリー・ニューマンに歌わせた"My Machine"の文明批評......『グロス・ドロップ』の前半はアルバム全体を鏡像のように反転させた『ミラード』(あるいはそのプロトタイプとしてのEPシリーズ)のガッチリした構築性とはちがう、有機的なつながりをもつ。というか、楽曲そのものがシンコペートさせることでプログレ風の組曲形式と似て非なる、ある種の即興音楽に通ずる対話がそこでは行われているだけど、スティールパンを思わせるギターの音色とハンドクラップが跳ねる7曲目の"Dominican Fade"でバトルズの問答はロックからワールドミュージックに意図的に逸れはじめる。もちろんそれはオーソライズされたワールドミュージックではなく、皮膚感覚を頼りにしており、必然的にエキゾチシズムと無縁ではない。ブロンド・レッド・ヘッドのカズ・マキノとボアダムスのEYEの参加をエキゾチシズムとみなすのは異論があるかもしれないが、外国との障壁がほとんどなくなったいまでも、いや、だからこそ、海外のシーンに影響を与えつづけるふたりの日本的な身体性ないしは訛のようなものは『グロス・ドロップ』の"揺らぎ"を象徴するものとして逆説的に浮上せざるを得ない。

 バトルズとボアダムスというオルタナティヴ・シーンの両極による幕引きの"Sundome"のトロピカ/リズムとでもいいたくなるメカニカルな祝祭性はトリオ編成になったバトルズが重から軽へ、暗から明へきりかわったことを意味するだけでなく、リズム・アプローチで行き詰まったダンスミュージックとしてのロックがポスト・ダブステップとかJUKEとか、ここしばらくのビートミュージックと拮抗するグルーヴをもちはじめたいち例であるといってもいいすぎではない。

Chart by JET SET 2011.04.18 - ele-king

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CALM

CALM MELLOWDIES FOR MEMORIES...ESSENTIAL SONGS OF CALM »COMMENT GET MUSIC
りすぐりの楽曲からエクスクルーシヴ・ナンバーまで全10曲を収めた珠玉のベスト・アルバム!Calmとして14年活動し、自身が一度キャリアを総括するべく、ベスト・アルバムをリリース ! コンパイルを担当するのは、中村智昭 (Musicaanossa)。

2

GATTO FRITTO

GATTO FRITTO S.T. »COMMENT GET MUSIC
毎度爆発的人気を誇るウルグアイ・レーベルInternational Feelより、昨年のカルト・ヒット作"Illuminations"で鮮烈なデビューを飾った"Hungry Ghost"の片割れ、Gatto Frittoによる1stアルバム。500枚限定&重量盤2枚組。

3

SBTRKT

SBTRKT LIVING LIKE I DO »COMMENT GET MUSIC
覆面トライバルUKベース天才Sbtrktが、The XXのFour Tetリミックスのヒットも記憶に新しいYoung Turksからぶっ放すボムがこちら!!

4

ONUR ENGIN

ONUR ENGIN EDITS VOL.3 »COMMENT GET MUSIC
遂に名門G.A.M.M.にもフックアップされたトルコ出身のプロデューサーOnur Enginですが、やっぱり今回も良いです!

5

FLYING LOTUS

FLYING LOTUS COSMOGRAMMA ALT TAKES »COMMENT GET MUSIC
Cosmogrammaのアウトテイク集がヴァイナル化されました!!

6

FRANKLIN THOMPSON

FRANKLIN THOMPSON ANNIVERSARY »COMMENT GET MUSIC
Dam-Funk~PPUファン直撃、Stones Throwが発掘した80'sエレクトロ・シンガー!!『Planetjumper EP』が好評だったFranklin Thompson、今回はスウィートな80'sディスコ・ナンバーです!!

7

CARIBOU

CARIBOU SWIM (REMIXES) »COMMENT GET MUSIC
Motor City Drum Ensemble、Gold Pandaによるリミックス!!

8

STEVE REICH / KIRA NERIS

STEVE REICH / KIRA NERIS VAKULA REMIXES »COMMENT GET MUSIC
ミニマル・ミュージック代表者による'09年に初演された作品"2x5"(ギター2本、ベース1本、ドラムス1台、ピアノ1台の合計5つの楽器が2セットに由来)のウクライナ出身の気鋭Vakulaによるハウス・リミックス。完全初回限定の180gクリア・ヴァイナル仕様!!

9

SKYLEVEL

SKYLEVEL SKYLVEVEL 02 »COMMENT GET MUSIC
いまだ謎多きSkylevelに加えて今回はRush Hourからの傑作リリースでお馴染みのNebraskaが参戦。めちゃ最高なカットアップ・ジャズファンク・ディスコを提供してます!!

10

MURCOF

MURCOF LA SANGRE ILUMINADA »COMMENT GET MUSIC
メキシコの音響作家による美麗アンビエント傑作アルバム!!UK名門Leafからのリリースでお馴染み、映画音楽も手掛けるメキシカン・エレクトロニカ/ミニマル・ハウス・シーンの天才が絶好調Infineから初登場リリースです!!
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