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Interview

interview with Ben Klock

interview with Ben Klock

彼はテクノ・マシン

――ベン・クロック、インタヴュー

取材:浅沼優子    photos by Sven Marquardt   Dec 21,2011 UP

テクノの歴史を知らない若い子たちが僕らを通してこの音楽を知ってくれるのは嬉しいね。(パリの)〈Rex Club〉でプレイ中に、18歳か19歳くらいの若い男の子が携帯電話のスクリーンにメッセージを打って僕に見せて来た。「僕の世代にテクノを呼び戻してくれてありがとう」と書かれていた。僕がかけていた曲なんて、彼らが生まれる前のものだったりするわけだよ(笑)。

あなたはつねに、いまプレイしているようなハードめなテクノが好きだったんですか? 〈Cookies〉などでやっている頃から?

ベン:もちろん僕もいろいろなフェーズを経験してきているよ。〈Cookies〉でやりはじめた頃はいまよりずっとハウシーだった。DJを最初にはじめた頃はドラムンベースやジャングルをかけていたしね。その後ハウスやテクノもかけるようになったけど、いまよりも、そうだな、メロウだったと言えばいいかな。その後、もう少し激しい音楽に発展していった。

ほう。それはなかなか興味深いですね。ベルリンのクラブ・ミュージックの変移を考えると、ほとんど逆行しているように聞こえます。大多数の人は、90年代にハード・テクノにはまり、その後他のスタイルに移行していったんじゃないでしょうか? ハードなテクノは2000年代に入ってむしろ廃れていったものだと思っていました。

ベン:そうだね。なぜそうだったのかは自分でもわからない。おそらく、周りの友人や環境の影響じゃないかな。僕はドラムンベースやジャングルと、入り口からして違ったわけで。90年代前半に僕自身はそれほど(テクノ・)レイヴ体験をしたわけじゃなかなった。

つまり、あなたは他の大多数の人よりもテクノと出会ったのが遅かったということになりますか?

ベン:ああ、そうなんだ。僕はテクノと出会ったのが他の人より遅かったと思う。だからよく、当時僕が知らなかった90年代のレコードをいまかけると、その頃からDJをやっている人は「うわ、そんな曲もう恥ずかしくてかけられないよ!」なんて言う。僕には僕がいまかけている曲ととてもよく合うように思えても、その頃に聴いていた人には古くさく聴こえるんだろうね。

それはとても意外ですけど、よく分かります! 私も同じようなケースだからです。〈Berghain〉で体験するまでハード・テクノの良さが全然わからなかったんですが、あそこで意味がわかったんです。

ベン:うん、よくわかるよ。そのシーンにいる人には、それが世界そのもののように感じるけれど、実はその世界はごく小さなもので、ほとんどの人はその外の世界に生きている。世界中がテクノを聴いているように思えても、実際聴いている人はものすごく少なくて、それ以外の人たちはまったくそれが何かわかっていないし、何がいいのかさっぱり理解できない。それを考えたときによく思うのが、「テクノがいったい何なのか知りたければ、〈Berghain〉のダンスフロアの真ん中にしばらく立ってみればいい。たぶん、少し理解できるだろう」ということ(笑)。音も雰囲気もイマイチなクラブで同じ音楽がかかっても、何も伝わらないだろうと思うよ。テクノは、とくに「体験」してみないと理解できない類いの音楽。きちんと体験できれば、すべての意味がわかるようになるはずだよ。僕もそうだった。僕も「こういうブンブンいってるハードな音楽はちょっとよくわからないな」と思っていたから(笑)。

私はてっきり、あなたはずっとテクノ一辺倒でやってきた人かと思っていたので、すごく意外です!

ベン:僕は常に幅広い音楽に興味があったから、ハードなものにも関心はあったよ。例えば、僕はつねにグリーン・ヴェルヴェットの大ファンだった。もっとメロウな音楽をかけていた時期でも、グリーン・ヴェルヴェットやシカゴものはいつも混ぜてかけていた。でもテクノのより深い部分、ディープな音にも惹かれるようになったのはだいぶ後になってからだったね。

いま現在は、自分のことをテクノDJだと思いますか? それともそういう定義づけはせずオープンにしておきたいですか?

ベン:もちろん他のさまざまな音楽に対してオープンではあり続けるけど、間違いなく自分はテクノDJだと思っているよ。いまは「ハウスからテクノ、ダブステップまでかけます」というDJも多いけど、僕はテクノDJだと自分で思う(笑)。

そこまでテクノが好きな理由はなんだと思いますか?

ベン:当初ドラムンベースなどをプレイしていた経験から、テクノのほうが音楽体験としてより強烈(intense)だということを実感したんだ。言葉で説明するのは難しいけれど、ダンスフロアの真んなかに立って、温かくもパンチのあるベース・ドラムが腹に響くあの感覚... あれが全てだと思うんだよね。その感覚が好きでしょうがない、としか言えないな。

いまも大好きなんですね。

ベン:もちろん。

これだけ毎週、長時間プレイし続けていても大好きだと言えるのは凄いですね......私だったら絶対飽きると思うんですが(笑)。

ベン:でも、それは単純に音楽だけではないんだ。DJとしての音楽体験全体だから、お客さんからのフィードバック、その会場にいる人を全て引き込むような雰囲気を作ることが僕にとってはとても重要なことなんだ。日常生活から解き放たれて、音楽のヴァイブに身を任せる、その体験全体をクリエイトすることが好きなんだ。もしかしたら、僕にとってはそれが音楽そのもの以上に重要なことかもしれない。

〈Berghain〉以外でもそういった体験を頻繁に作り出すことが出来ますか?

ベン:場所によって異なるね。〈Berghain〉は間違いなくとても特別な場所だけれど。前回、僕のなかでも最長記録になった13時間セットなどは...... 〈Berghain〉でしか実現しないことだと思う。少なくともいまのところはね、他にそれができそうな場所は知らない。なぜかそれができてしまう特別なヴァイブがあるんだ、あそこには。他のクラブでは、2~3時間やったところで飽きてしまって続けられないところもある。だけど、長ければいいというものではないから、短くてもとても内容の濃い、濃縮されたセットをプレイできることもあるし。時間が限られているからこそ〈Berghain〉よりもよりもずっとお客さんがクレイジーになるところもあるし。それはそれで特別な体験だよ。

そんななかで3回訪れた日本に対してはどんな印象を持っていますか?

ベン:とてもいい体験をさせてもらっているよ。とくに昨年〈WAREHOUSE702〉でクリスマスにやったパーティ(『MARIANA LIMITED 001』)はとても素晴らしかったな。雰囲気もとても良かったし、山のなかでやった〈Taico Club〉フェスティヴァルも良かった。あの年にやったフェスティヴァルのなかではベストのひとつだったよ。多くのフェスティヴァルでは盛り上げなきゃいけないというプレッシャーを感じるものだけど、〈Taico Club〉はそんなことなくてリラックスした気持ちのいい雰囲気だった。よりクラブっぽいというのかな。とても良かったよ。日本のお客さんはよく音楽を知っているなという印象を受けるね。まだリリースしていないトラックまで知っているような気がすることがあるよ(笑)。でも、これは多くのDJが言うことだろう? 日本はDJにとってプレイしたい場所だって。

そうですね、多くの人がそう言いますね。ところで、先日発表されたばかりの〈Resident Advisor〉の人気DJ投票で、10位に選ばれましたね。そのご感想は?

ベン:もちろん嬉しいよ。去年(5位)よりは落ちたけどさ......(笑)。20位以内に選ばれた人たちを見ると、他にあまりテクノDJがいないから、そこに選ばれるのはとても喜ぶべきことだと思う。僕に投票してくれた人にはお礼を言いたいよ。

それは気づきませんでしたね、たしかにテクノDJが少なめです。でも全体的に、個人的には何だかよくわからない投票結果だったんですけど、自分が歳とっただけですかね(笑)?

ベン:ははは(笑)。でも僕のまわりでもそう言ってる人が多いよ。今年の結果を見て、「もう無理、ついていけない」ってさ。次の世代に交代したというのか、何かががらっと変わったよね。

世代交代はいいことだと思うんですけどね、実力が伴っているのかどうかは疑問です。スキルよりもハイプ、って感じがします。

ベン:さっきの話に戻るんだけど、2000年の初頭に僕がDJを辞めようとしたって言っただろう?あの頃のことを少し思い出すんだよね、アンダーグラウンドやクラブというよりも、ポップ・アピールのある、「僕を見て!」って感じの音楽。

まったく違うシーンという感じがします。

ベン:そうだね。僕がまったく知らないシーンのことだからコメントもできない。誰かがかけてている曲のことを「この曲は本当にヒットしているよね、みんながかけてる」と言われても、僕はいち度も聴いたことがない、なんてことがよくある(笑)。

私もよくあります、それ(笑)。しかもそういうことが増えてる気がします。もしかしたら、思っている以上にクラブ・シーンが細分化されているということかもしれないですね。

ベン:でもRAの投票結果などを見ると、例えばジェイミー・ジョーンズと僕が一緒に上位に入っていることとか、これだけ違うスタイルの人たちが混ぜ混ぜに投票されているのは面白いことでもあるよね。

取材:浅沼優子 (2011年12月21日)

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