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Interviews

interview with Ogre You Asshole

interview with Ogre You Asshole

引き裂かれたチルアウト

──オウガ・ユー・アスホール、インタヴュー&雑談

取材:野田 努    Sep 25,2012 UP
E王
OGRE YOU ASSHOLE
100年後

バップ

Amazon iTunes

 あのさ、と彼は言った。9月になったら世界恐慌が起きて、日本もギリシャみたいになって、それから......と彼は続けた。医療制度から原発問題にいたるまで、ひと通り。そして9月になって、オウガ・ユー・アスホールの新作『100年後』がリリースされた。
 『100年後』は実に興味深いアルバムだ。これを失敗作と言う人がいても不自然ではないと思えるほど、バンドは、ある意味では、思い切った賭けに出ている。もしここで『homely』をもっとも象徴する曲を"ロープ"のロング・ヴァージョン(12インチ・シングルに収録)だとするなら、『100年後』はあの曲のスペース・ロックめいた恍惚、清々しいまでの残響から自ら離れていったアルバムだ。
 気晴らしに徹することができたらどんなに楽だろう。結局のところ『homely』で最高に気持ちが良いのは、"ロープ"のロング・ヴァージョンの長い長いインストの箇所かもしれない。もうひとつ、『homely』を象徴する曲"フェンスのある家"で歌われている「嘘みたいに居心地が良い場所(comfortable lie)」が具体的にはどこを指しているのかバンドからの説明はないと思われるが、はっきりしているのは、オウガ・ユー・アスホールには離れたい場所があったことだ。
 バンドは音楽的に多様なスタイルを身に付け、ここ数年で、聴覚的な面白味を具現化している。石原洋と中村宗一郎によるそれ自体がアートの領域のようなミキシングを介して生まれる刺激に満ちたサウンドは、『homely』の最大の魅力である。出戸学の歌詞は、ほとんど断片的な言葉で組み合わされている。受け取り方によっては、パラノイアックにも思えるし、アイロニカルで、そして感情的な空想を駆り立てている。それらが一体となったとき、いかにもシャイな青年たちによるオウガ・ユー・アスホールは最高の高揚に達する。「わな?  居心地よく 無害で/笑っていた ここはウソ/飾るためのドア/つかれた彼も/心地よく呑まれていた」"作り物"

 アビヴァレンツなムードが『homely』以上に際立っているのは、『100年後』が異様なほどにリラックスしているからだ。『homely』が"マザー・スカイ"なら今回は『フロー・モーション』とも言えるが、『フロー・モーション』ほどリズムをテーマにしている感じではない。それでも『100年後』には、快適さや楽観性と並列して恐れや懐疑がある。メロウで弛緩しながらも、ところどころでささくれている。その点では『フロー・モーション』的と言えるだろう。
 そして、この面倒な混線のあり方は、たしかにわれわれのいまを表しているのかもしれない。わけわかんないって? しかし、それでは、ガイガーカウンターの音でもサンプリングすればいいのかという話だ。
 オウガ・ユー・アスホールは、彼らの催眠的な演奏を控え目にしながら、多様な思いを、複雑な感情をある種チルアウトな場所へと持ってく。感情の垂れ流しではない。僕は、このアルバムの感覚は、フライング・ロータスの新作やエジプシャン・ヒップホップのアルバム、ないしは今日のアンダーグラウンド・ミュージックにおけるアンビエント志向ともそれほど遠くはないと思う。なんとかして、落ち着きを取り戻しているのだ。ひどく引き裂かれながら......。
 『100年後』はなかばトロピカルなゆるさとともに、こういう歌い出しからはじまる。「これまでの君と/これからの君が/離れていくばかり」"これから"

『homely』がほんとに自分たちでは完成度の高いものができたなと思ってるんで、それに恥じないものを作ろうと思ってました。でもそれの延長上もイヤだったんで。その最初のきっかけがどういうものになるかっていうのがもっとも重要な点でしたね。

『homely』のあとの方向性として、チルアウトな感じっていうかメロウな感じ、もしくはエクストリームな感じか、っていう風には思ってたんですよ。それで、どっちに行くのかな、っていう興味があって。結果を言えば、エクストリームな方向性っていうのをあそこまでライヴで実現しておきながら、捨てたじゃない? すごくもったいないなと思ったんですよね(笑)。

出戸:ああー(笑)。でも、エクストリームな方向に行くと、『homely』の延長上になってしまう気がするんですよね。

もちろん、もちろん。

出戸:そこはまあ、作品の連続性があるなかでも、ベクトルは変えたいなと思って。

ただ、『homely』であれだけ自分たちのサウンドを作ったわけだから、もう1枚ぐらい続けても良かったんじゃないのかなっていう。そういう気持ちは少しぐらいはなかった?

出戸:そういう気持ちも、ほんとに半々でスタート地点でどっちに行こうかっていうので僕も迷ってて。でも最初に作った曲が、1曲目の曲なんですけど。

あ、1曲目の"これから"が最初だったんだ?

出戸:それができたときに、「こっちだな」っていう風に思って。

ああ、なるほど。あのイントロにはたしかにやられました。でも、いや、『homely』の続編を1枚作れば、ひょっとしたらゆらゆら帝国が行けなかった領域に行けたかもしれないのに、と思って。

出戸:そうなんですか(笑)?

ゆらゆら帝国フォロワーって言われるのは自分では抵抗ありますか?

出戸:ありますね。

100パーセント抵抗あるって感じ?

出戸:それはしようがない部分があるのはもちろんわかってるんですけど、僕個人としては、フォロワーっていう気分では作ってないっていうか。それはプロデューサーが同じだから、石原(洋)さんの色とかみたいなもので共通項はあるだろうけど。まあ言ってみればメンバーがひとりカブってるようなものだと思ってるから。フォローをしていくっていうつもりはあんまりなくて。

フォロワーってちょっと僕の言葉が悪かったね。

出戸:影響は受けてると思います。石原さんと一緒にいて、喋る時間とかも長くなってるんで。そういった意味では、あるのかもしれないですけど。

僕はゆらゆら帝国も最近のオウガ・ユー・アスホールも大好きなんですけれど、ゆらゆら帝国とオウガ・ユー・アスホールの違いを僕なりに言うと、ゆらゆら帝国はドライなことをやろうとしていながら自分たちのウェットさから逃れられなかったという感じがするんですね。たとえば"つぎの夜へ"って曲があったじゃないですか。ああいうある種の感傷がばっと出てしまう瞬間があったでしょ。そこが魅力でもあったんだけど、そういうところがオウガにはない。

出戸:ないですね。

今年見たライヴなんかは、そのさばさばしたドライな感じとサイケデリックなトリップ感がものすごくうまくなった感じがあって。とくに"ロープ"のライヴ演奏とかすごかったじゃない。だからあの路線をもう1枚続ければ、ゆらゆら帝国が行けなかった領域に行けたんじゃないかって僕が勝手に思ったんだけどね、すいません(笑)。

出戸:なんですかね、まだどうなるかわからないですけど、自分のなかには構想があるんで(笑)。

そう(笑)。それで、新しいアルバムの『100年後』、出戸君の発言を拾い読みすると、「100年後を想像したときにすごく楽になれた」って話じゃないですか。それっては諸行無常ってことだと思うんだよね。ある種の無常観、つねに物事は終わっていくっていう。だけど『homely』はそういう無常観とは違うものだったよね。ちょっとパンク・ロック的な感覚もあったと思うし。パンクっていうか、100年後を想うことのある意味では対極かもしれないんだけど、たったいまこの瞬間だけを一生懸命生きるっていう感覚が。無常観っていうのもひとを楽にさせるとは思うんだけれども、たったいまこの瞬間のことだけを考えるっていうのも重要なことじゃないですか。

出戸:その熱さみたいなものもの、熱を持ちつつ、一回冷やした状態で曲を作りたかったみたいなのはあって。

それはどうして冷やしたかったの?

出戸:なんだろう、『homely』の続編を作るときに......なんですかね。まあもともの性質でもあるんですけど、僕そんなに「いまを生きる」熱さみたいなものはないのかもしれない。ライヴのときはあるかもしれないですけど。本質的にそんなにガツガツした感じではない(笑)。

それは見てて非常によくわかる(笑)。でも、「いまを生きる」って熱さでも冷たさでもなくてさ、考え方じゃないですか。気持ちのありようっていうか。そういう「いま」の連続性が、音楽でいうとミニマリズムみたいなことかなって思うんですけれど。僕もオウガから熱さは感じないからさ。

出戸:ですよね(笑)。

だからこそ、続けるべきだったんじゃないでしょうかね(笑)。

出戸:えー、今回のは、いまを生きているって感じはないってことですか(笑)?

だって今回は『100年後』だから。

出戸:まあそうですね。

それは何かきっかけがあったの? 今回のコンセプトに行き着くような。

出戸:『homely』の終末観みたいなものは自分のなかではあったんですけど、それが重くなりすぎた感じがして、僕のなかで。『homely』が。

ええ、そうなの。僕は逆になんかね、すごく軽くしたっていう風に思ってたんだけどね(笑)。あれはでも重かった?

出戸:はい。それで次はもっと軽くしたいなっていう。テーマ的にはそんなに変化はないんですけど、もっと軽く表現したいなって思ったんです。

なるほど。そういえば、ぜんぜん話飛んじゃうんだけどさ、レコーディング中にジム・オルークさんが乱入したっていう話を聞いたよ。

出戸:レコーディングっていうかライヴの練習中ですね。練習中に入ってきたんですね。

それは何? スタジオが同じだったの?

出戸:いや、僕らの持ってるスタジオが長野にあるんですけど、そこの近所で石橋(英子)さんたちがレコーディングしてて、そこのスタジオのオーナーが僕の知り合いで、それでたぶん連れてきたんですね。急に「うるさい!」って言って入ってきたんですね(笑)。

はははは。面白いね。

出戸:そのとき石橋さんも一緒にいて、って感じでしたね。

取材:野田 努(2012年9月25日)

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