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interview with The National (Matt Berninger)

interview with The National (Matt Berninger)

名もなきアメリカーナ

――ザ・ナショナル(マット・バーニンガー)、インタヴュー

木津 毅    通訳:染谷和美   May 22,2013 UP

ニューヨーカーでも、アメリカ人でも、あるいは男でもない。もちろん、そういう事実に影響されていないとは言わないけれども、アメリカのニューヨークに住む白人男性であるという事実は、わずかな......ごくごく小さな、小さな要素でしかない。

なるほど。では音的な話を。新しいアルバムには、あなたたちが影響を受けてきたであろうさまざまな要素――パンク、70年代のシンガーソングライター、イギリスのニューウェーヴ、90年代のオルタナティヴ・ロック、クラシック音楽など――が見事に融合しているように思えますが、制作にあたってバンド内で合意していた音的なテーマはあったんですか。


The National
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マット:いや、僕らはあらかじめレコードについて話し合うということはしない。それどころか、完成するまで方向性の確認なんかしないに等しい。......うん、昔はもっと話し合っていたけれども、最近はむしろ、曲が勝手に発展していくに任せて、僕らはその後を追いかけていく、という感じ。今回、ある程度自分たちが自信を持っているという自覚はあったように思うよ。いままでのレコードだったら入れていなかったかもしれないような、聴いた感じがセンチメンタルすぎる曲とか、古風すぎるからもっとクールに、モダンにしたい、とかいう曲が出来ても今回は気にせずに、とにかくどんどん書いて、僕らが恋に落ちた要素を素直にレコードにしていったんだ。
それを後から改めて聴いたいまだからわかるのは、ああ、ここには僕らの大好きなものや影響が集約されているな、ということ。ニュー・オーダーからロイ・オービソンにまで及ぶ僕らのレコード・コレクションの、あっちもこっちも入っているな、とね。でも、いずれにせよ意識的ではなかったし、戦略会議のようなものは僕らにはあり得ない。いろいろなもののミックス――漠然としたミックス――が僕らで、いまとなってはそれ自体が意味を持つようになっている。だからもう、話し合いは必要ないんだ。

つまり、これぞザ・ナショナルのサウンドだ、という作品だ、と。

マット:思うに、たぶんこのレコードは......うん、最もピュアかもしれないね。良い曲を書くということ以外には何も考えていなかった、という意味で、良し悪しは別として僕らの本質をいままでの作品以上に体現しているんじゃないかな。

はい。では、これが最後の質問になりますが。はじめの方でお話したようなことを踏まえて、あなた方はアメリカのバンドだということに意識的ですか。

マット:ふむ......意識はしてないよ。だけど、きっと音楽には僕らの気づかない形で滲み出てはいるんだろうな。アメリカ的なバンドでありたいと思っているわけではないし、アメリカのバンドであることを重要視しているわけでもないし、アメリカに対しては僕なりにたくさん愛情を感じている一方、それと同じくらいの怒りとフラストレーションも感じているし、だからといってアメリカのバンドであるということを意識するかというと......いや、してないな......うん、僕は自分たちがアメリカ的なバンドだとは思わないよ。音楽的な影響でいったら、英国のバンドや、どこの国か知らないけれどもクラシックのコンポーザーとか、作家ではムラカミだったりするわけで、そういうものから受けた影響は、恐らくアメリカ的なものから受けた影響に勝るとも劣らない。アメリカ人がやっているバンドである以上、DNAの一部であり成長過程の一端であるアメリカ的なものは否定できないし、僕らの音楽の一部にも間違いなくなっている。それはこれからもなっていくんだろうけれども、僕らはそのことにことさら意識的ではないし、それだけのバンドだとは思っていない、ということだ。

取材:木津毅(2013年5月22日)

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Profile

木津 毅木津 毅/Tsuyoshi Kizu
音楽・映画ライター。1984年、大阪生まれ。2011年よりele-kingに参加し、紙版ele-kingや『definitive』シリーズにも執筆。

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