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Home >  Interviews > interview with MC Kan - ヒップホップ・ドリーム・アゲイン

interview with MC Kan

interview with MC Kan

ヒップホップ・ドリーム・アゲイン

――MC漢、ロング・インタヴュー

二木 信    special thanks to:宇川直宏(DOMMUNE)   Jun 02,2014 UP

一生かけても言葉でこの街改造/野望はでかいぞ ――漢
拡声器空間~MIC SPACE(FROM MS CRU)
“新宿アンダーグラウンド・エリア”(2002年)

 ここに掲載するMC漢のインタヴュー記事は、昨年9月25日にDOMMUNEで放送された番組「鎖GROUP presents MC漢SPECIAL!!」における「MC漢、激白インタヴュー!」を構成/編集したものである。

 漢はその日、自身のヒップホップ・フィロソフィー(ヒップホップ哲学)を生々しい体験談を交え、ユーモラスに語った。きわどいブラック・ジョークやギャグを巧みに駆使しながら。その卓越した話術に多くの視聴者が舌を巻き、彼のラッパーとしての神髄を見たにちがいない。


MC漢 & DJ琥珀
Murdaration

鎖GROUP

Tower HMV Amazon iTunes

 『ヒップ――アメリカにおけるかっこよさの系譜学』(篠儀直子+松井領明訳)の著者であるジョン・リーランド風に言えば、漢が2000年代に切り拓いた地平はひとまずこのように説明できるだろう。つまり、「漢は善悪の古臭い対立をなくし、救世主と悪漢というお決まりの枠から日本のラップを解放した。そのかわりに彼がラップのなかで描く人びとは自分自身と衝突することになった――性的、道徳的、および職業的に」と。そして、このインタヴューで漢が語ったヒップホップ哲学は、「では、その後、どう生きるのか?」という、一筋縄ではいかない、普遍的な問題提起をはらんでいる。

 漢は2012年の夏にヒップホップ・レーベル〈鎖グループ〉を立ち上げ、実質上のセカンド・アルバム『MURDARATION』を発表している。それから2年、ついに〈鎖グループ〉が本格始動する。6月4日には、前述した番組の続編がDOMMUNEで放送される。僕はいま、漢と〈鎖グループ〉の挑戦と彼らのヒップホップ・ドリームについてより多くの人びとと議論したいと考えているが、なによりもまずは、漢の痛快なトークを思う存分堪能してほしい。

いまは、また再びスタート地点に立っただけですね。

■今日の主役のMC漢さんが到着しました。どうぞよろしくお願いします。

漢:よろしくお願いします。

■DOMMUNEへの到着、番組開始のぎりぎりでしたね。

漢:どうも、みなさんにご迷惑をおかけして、たいへん吸いました。

(会場爆笑)

■ハハハハハ。漢さんはこれまでもDOMMUNEに何度か出演されていますよね。

漢:これまでというか、近年、宇川さんとDOMMUNEにはすごいお世話になっていますね。(出演は)今回で確実に3回めですね。

■ただ、こういう形でインターネットの生放送番組で単独インタヴューを受けるのははじめてですよね。かなり貴重な機会だと思います。

漢:なんだろうね? これまでこういう機会がなかったんですよね。はじめて宇川さんとここで会ったときから、良い意味でいろいろ近くなれるのかなっていう感触ですかね、それがありました。はじめて会ったときに、まだ俺の達していないレヴェルの人だなっていうのはわかりましたから。

■漢さんが主宰を務めるヒップホップ・レーベル〈鎖グループ〉を立ち上げたのは去年でしたか? それとも一昨年でしたか?

漢:一昨年ですね。立ち上げたというか、登記したのは。だから、いまは、また再びスタート地点に立っただけですね。

■これから本格始動していこうと。

漢:うん。〈鎖グループ〉を立ち上げるまでは、制作は〈ライブラ〉に任せていたけど、〈鎖グループ〉っていうのは、〈ライブラ〉のなかの〈鎖グループ〉ではなくて、完璧に独立した会社なんですね。

■〈ライブラ〉を辞めて、〈鎖グループ〉を立ち上げて新たなスタートを切ったと。

漢:そうですね。ただ、進み方にはまだちょっと不満がありますね。その不満を解消して、確実にいい感じで広げていけるパワーが集まってきてはいますけどね、いま。元気玉みたいな感じなんでね。今日はその第一歩になるようなインタヴューにしたいなと。

■そうですね。

漢:うん、最初は少し時系列的にいこうか。もともとMSCっていうのは、俺とGO、PRIMAL、O2、TABOO1ってヤツらとDJ陣がいたりしてはじまったわけですよ。SATELLITE(少佐、DOGMA、SAWから成るMSCの別動隊)と呼ばれるヤツらも当時からいて、それが原形だった。で、〈ライブラ〉っていうのは、俺やTABOO1が住んでいる、明治通りをはさんで反対側の神楽坂や牛込あたりの人たちで、二十歳以降に知り合ったっていうかね。お互い名前も知っていて、〈ライブラ〉の社長も俺のことは、まあ、噂で聞いていたんですね。カッコよく言うと、ストリート的な感じのビジネスで知り合って、そこから、いろいろつながって、MSCと〈ライブラ〉が合体したんですね。

■それが、2003年ころですね。

漢:うん。いちばん最初にリリースしたEPの『帝都崩壊』(2001年)は〈Pヴァイン〉から出していましたからね。で、2003年のEP『宿(ジュク)ノ斜塔』から〈ライブラ〉の制作で、ファースト・アルバムの『MATADOR』もそう。だからいきなり鬼のようなスピードで加速して行った。MSCにはDJしかいなくて、トラックメーカーがいなかったから、I-DeAのスタジオでデモテープを録らせてもらって、そのときにはじめて「トラックを作るにはMPCが必要らしいぞ」って知ったぐらいだからね(笑)。作り方もよくわからない状態で作っていたんですよ。『MATADOR』のマスタリング作業には、メンバーのなかで俺だけ参加していたんだけど、マスタリングが終わったときに、当時MSCを担当してくれていた元〈Pヴァイン〉のA&Rの佐藤(将)さんに俺が言った一言は、「これ、ほんとに出しますか?」だったからね。

■それはどうしてですか?

漢:自分たちがイメージしていたヒップホップではなかったから。

■それはサウンドが?

漢:全部が! 自分でもよくわからなくなって、当時持っていた自信が揺らいだというかね。「あれ、大丈夫か?」みたいな感じになった。だけど、『MATADOR』はじょじょに効いてくるんですよ。「この音楽はヤベエくせぇな」と。最後は、「この音楽はオリジナルだ」って解釈したね。ただ、当時の自分の理想のイメージに近かったのは『宿(ジュク)ノ斜塔』で、あっちのほうが良いマインドで作れていると思う。


取材/本文構成:二木信(2014年6月02日)

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Profile

二木 信二木 信/Shin Futatsugi
1981年生まれ。音楽ライター。共編著に『素人の乱』、共著に『ゼロ年代の音楽』(共に河出書房新社)など。2013年、ゼロ年代以降の日本のヒップホップ/ラップをドキュメントした単行本『しくじるなよ、ルーディ』を刊行。漢 a.k.a. GAMI著『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社/2015年)の企画・構成を担当。

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