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Interviews

interview with East India Youth

interview with East India Youth

ラップトップの前に出てみた

──イースト・インディア・ユース、インタヴュー

質問・文:橋元優歩    電話取材協力:ホステス   Apr 23,2015 UP

East India Youth
Culture Of Volume

Indie PopElectronic

Tower HMV Amazon iTunes

 ファースト・アルバムのジャケットには、人肌の表現としてはいささか大胆な色づかいの、抽象的な自画像が用いられていた。『トータル・ストライフ・フォーエヴァー(Total Strife Forever)』と名づけられたその作品は、タイトルやアートワークにたがわず混沌とした印象のサウンドだったが、人気もメディアによる評価も高く、同年の英マーキュリー・プライズにノミネート。彼自身、その後はロンドンという舞台を同じくして活躍するファクトリー・フロアとのツアーを行ったり、ジーズ・ニュー・ピューリタンズのサポート・アクトを務めるなど、目ざましい──そして自身にとってもかけがえがないと述べる体験や活動を経てきた。
 イースト・インディア・ユースことウィリアム・ドイル。彼は特定ジャンルにおけるフロンティアの掘削者というよりも、英ポップ・シーンの表舞台でマイペースに自己探求をつづける、みずみずしいプロデューサーである。エレクトロニックな方法を用い、実際にテクノ、インダストリアル、エレクトロ・ポップ、あるいはジェイムス・ブレイクなどと比較されて語られるのを目にするが、大仰にそうしたジャンル名をかぶせるよりは、たとえば“エンド・リザルト”などがそうであるように、レディオヘッドが、キーンが、ザ・スポットライト・キッドが、つまりは英国ロックのある傍系の遺伝子が現在という空気と時間のフィルターをかぶって表出したものだと言うほうがしっくりくるだろう。しかしもちろん、さまざまに比較を受けているエレクトロニック/ダンス・ミュージック的な要素・傾向もまた、アンダーグラウンドの成果やトレンドの渦を反射するようにEIYの音楽を豊かにしている。

 そうした充実の中でかたちを成したこのセカンド・アルバムにはふたたび自画像があしらわれた。今回はより写真的なかたちで自身を映し出しているのが興味深い。それはこのインタヴューのなかでも述べられているように、「プロデューサー気質を発揮するよりも、自分がラップトップの前に出たかった」という気持ちをいくばくか象徴するものなのかもしれない。その意味で、多様性はそのままに、しかし格段に整理され、ポップ・パフォーマンスという方向性を得た音は、前作に比較してもすばらしく表現の威力を増している。

ちなみに、これまた以下に回想されているのだが、ファクトリー・フロアとのツアーの興奮や影響は冒頭の“ザ・ジャダリング(The Juddering)”に思いきり顕著で、微笑ましい。

■East India Youth / イースト・インディア・ユース
現在はロンドンを活動の拠点とする、ウィリアム・ドイルによるソロ・プロジェクト。デビュー作『トータル・ストライフ・フォーエヴァー』が高い評価を受け、FKAツイッグスやボンベイ・バイシクル・クラブとともに2014年度のマーキュリー・プライズにノミネートされた。第10回Hostess Club Weekenderで初来日、本作はその後初にして2枚めのフル・アルバムとなる。

昔のコンピュータにもかかわらず、そんなにレトロな感じがしなくて、どちらかというといまっぽいものになっているんじゃないかと思って

今作も自画像がジャケットのアートワークに用いられていますね。しかしいくらか抽象度が下がりました。これは前作と今作の音における表現の差でもあるでしょうか?

ドイル:たしかに今作は、音としても以前よりカラフルで、それがアートワークに反映されているかもしれないな……。これは80年代のアミーバ(Amoeba)というコンピュータを使ってつくったものなんです。もっとピクセルが粗くって、それによってローファイなアートになっているんだけれど、それをキャプチャー画像として使用していて。おもしろいのは、昔のコンピュータにもかかわらず、そんなにレトロな感じがしなくて、どちらかというといまっぽいものになっているんじゃないかと思って……そのへんが今回のアートワークとしておもしろいところかなと思いますね。

あなたがプロジェクトを始めた当時は2012年ということですね。今作までで機材環境にはどのような変化があったのでしょうか。可能でしたらどのようなものを用いていらっしゃるのかということもふくめて教えてください。

ドイル:メインの機材はラップトップなんだけど、すべてはそこからはじまっていて、ソフトウェアをたくさんつかっているけど、ハードウエアはそんなに使用してないんです。それはライヴでもいっしょで、最近、ベース・ギターはライヴでも楽曲制作のときでもよく使うようにしているんですけど、それ以外はツールも少なくて。どちらかというと個人的にはソフトウェアに興味があるんだけど、プロデューサーやエンジニアさんというのはやっぱりハードに関心のある人が多いんですよね。だからヴィンテージな機材を掘り出して使う人も多いと思います。
僕の場合はソフトの中からいろんな音を出すというのが好きで、そうやって遊んでいますよ。もともとは、前にいたバンドではアコギをメインとして弾いていたし、10歳のころからすでに自分のメインの楽器はギターだったんです。これからはもっとギターをこのプロジェクトにも投入していきたいなと思っていますよ。ただ、機材ということでいえば、このプロジェクトがはじまってからいまでもベーシックは変わっていないですね。3年に一度くらいは自分のセットアップを更新しているというか、コンピュータやソフトを見直して変えていて、それが環境の変化といえばいえるかもしれないです。

音楽をつくりはじめることになったきっかけは? 最初からいまのようなDAWソフトを用いたエレクトロニックなものだったのですか?

ドイル:10歳のときに父がエレキ・ギターを買ってくれたんです。それが音楽人生のはじまりでしょうか。当時、アコギを友人から借りて自分なりに独学で弾いていたのを親が見て、それでギターを買ってくれたんだと思います。いっしょにアンプなども買ってくれたので、自分でももっと練習するようになったし、見よう見まねで曲もつくりはじめました。10歳か11歳のときにバンドも組んだりして、13歳か14歳の頃にはコンピュータを使いはじめたかな……。というのも、生まれ育った町から引っ越したので、友だちもいないし、バンドも組めなかったから。仕方なく自分だけで音楽をつくる方法を探すしかなかったし、ちょうどベックとかモービーとかを好きになりはじめてもいたから、アコースティック要素はあるけどエレクトロニックなところもあるような音楽に心が向かったというところもあったかなあと。そのときキューベース(Cubase)を独学で学ぶようになっていまにいたりますね。10年経ったいまでも同じプログラムを使って音楽を書いています。とくに音楽的な家庭に育ったわけではないし、環境としても音楽的だったわけではないけど、いまでは本当に音楽が人生の一部という感じですね。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『ラヴレス』を最初に聴いたときっていうのは、いまでも覚えているんだけど、その音の印象や衝撃がすごく自分の中に焼きつきましたね。

シーンとして、たとえばベースミュージックだったり、ダンス・ミュージックの流れを意識していますか?

ドイル:じつはぜんぜんシーンやジャンルを意識したりということはないんですよ。自分がどういうところにカテゴライズされているのかとか。ある楽曲はすごくダンス寄りだったり、ある曲はシンセ・ポップだったり、急にインストゥルメンタルなものが入ってきたり、クラシック寄りのものだったり。それから、シーンやジャンルっていうものにずっぷりとはまってしまいたくないなとも思います。そういうものが嫌いなわけではないし、テクノのイヴェントやレイヴなんかに遊びにいくのも大好きですけど、自分がどこにも該当しないというポジションがとても気に入っているので、これからもそんなかたちで活動していきたいとは思っていますね。

“マナー・オブ・ワーズ(Manner of words)”などにとくに顕著ですが、今作においてはリヴァーブや歪(ひず)みがサウンドのひとつの特徴になっているようにも思います。M83など、エレクトロニックな特徴をもったシューゲイザーなどを思い浮かべました。そういった音楽やギター・ノイズ、その増幅によってつくられる音楽に興味があるのですか?

ドイル:そうですね、意識しているというほどではないですが、たとえばマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『ラヴレス』を最初に聴いたときっていうのは、いまでも覚えているんだけど、その音の印象や衝撃がすごく自分の中に焼きつきましたね。それは根づいているからこそ知らないうちに表現の中に出てきているものだと思います。たしかにそう言われると、この“マナー・オブ・ワーズ”のどの部分を指しているのかということがすごくよくわかります。ただ、それは意識したものではなくて、自分の中の感覚としてすごくナチュラルに出てくるものなんだろうなと思いますね。おもしろいのは、『ラヴレス』とか、いま日常的に聴いているものじゃないのに、そうやって影響を及ぼしているってことですよね。最初の印象が強いばかりに、そんなふうになるのかな。

資料によると、あなたは今回、プロデューサーとしてよりもポップ・アーティストとして歌い、パフォーマンスを行ってみようというひとつの転換点を迎えたということですね。それはマーキュリー・プライズにノミネートされるというような出来事にもきっかけがありますか?

ドイル:そうですね、マーキュリー・プライズにノミネートされたというのもひとつのきっかけだったと思います。このイースト・インディア・ユースのパーソナリティをもっと表に出して、みんなに知ってもらいたいたかったんですよね。自分が前に出ようと思った。以前はラップトップの後ろにいて、地味な感じだったんです。でもライヴをやるごとにみんなが楽しめる要素を増やしてきているかなと思います。そういうことに対するリアクションを見ながら、もっと自分としてもエネルギッシュなパフォーマンスを楽しんでもらいたいと思っていたんですが、まさかこんなに人気の出るプロジェクトになるとは思ってもみなかったので、こうやってノミネートしてもらったり楽しんでもらったりすることで、そうやって好まれるようなかたちになっていきたいなという思いも自然にふくらみましたね。それが、こうやってプロデューサー気質を前に出すというよりも、パフォーマンスを楽しんでもらうというような、そしてそんな道をもっと突き進みたいというような気持ちになっています。

プロデューサー気質を前に出すというよりも、パフォーマンスを楽しんでもらうというような、そしてそんな道をもっと突き進みたいというような気持ちになっています。

詞はどのようにつくるのですか? ご自身が観念的なタイプだと思いますか?

ドイル:じつは、歌詞を書くっていうのが自分にとってもっとも難しいことなんです。苦手なので、いまでもなんで自分がこんなことをしているんだろうって不思議な気持ちになります。いつも苦しむところなんですよ。自分がおかれている環境や場所をモチーフにはしていて、それを最終的には抽象的なかたちで表現するので、歌詞によってはすごくアブストラクトになっていると思います。どちらかというと、空間を絵具で塗ってつくっていくような感覚で言葉をつくっていますね。……本当に自分ではいつも苦しむ、もっとも音楽制作のなかで難しいことだと感じています。

今作にはより大きなスケール感が備わっていて、映像表現との相性もよいのではないかと感じましたが、あなたの「ポップ」なあり方は、今後どのような展開をしていくものなのでしょう?

ドイル:自分の理想的なポップのかたちは、みんなが聴いて楽しめるもの、ですね。でもその背景にはアンダーグラウンドなものの要素が隠れているというのが目指すところでもあります。聴いてすぐに楽しめるものだけれど、何度聴いても発見があったり、耳に冒険を与えられるものだったり、そんなものが見え隠れする曲をつくりたいですね。すぐに惹かれるようなメロディやリズムがあって、ポップ感のあるものがいいけど、その後ろに複雑な要素が見え隠れするもの──でも、そうやってうまく成功している人たちもたくさんいますよね。1曲でそれをやるのは難しいけれど、アルバムを通してそれが感じられるようなものをつくりたいなと思います。自分の好きな要素、ポップに反した要素なんかも、ね。

ファクトリー・フロアとのツアーはいかがでしたか? 印象に残っていることと、もっともよかったと感じるショウの模様について教えてください。

ドイル:そうですね、僕にとってすごく多大な影響を与えてくれている存在です。自分のいまの道すじや、制作において重要な人々につないでくれたキーマンともいえるかも。彼らがツアーにきてくれないかと言ってくれたときは本当に二つ返事で、自分自身もこれはぜったいに行くべきだって心から思えたしうれしい出来事でしたね。彼らとツアーをしてあらためて思ったのは、毎回誰とツアーをやっても素晴らしいなと思うんだけど、そのうちそう思いながらも最初の数曲だけ聴いて場を離れるようなことが増えてきたんですね。でもファクトリー・フロアについては、最初から最後まで本当に目が離せなくて、毎晩ライヴを楽しんでましたね。セット・リストが同じだったりするのに、毎回ちがうワクワク感があって、とくにドラムのゲイヴがライヴで披露するダイナミックさというのはそれぞれの晩で異なっていたんですよね。それが「ゾーン」に入ると、もう言葉では表せないくらいすごいものになっていて……。いまでもその興奮はうまく言い表せないですね。アルバムも大好きですけど、ライヴがとにかく素晴らしい。多大な影響を与えてくれた人だし、よき友人たちです。

ジェイムス・ブレイク、よく較べられるんですよ(笑)。その理由は顔が似てるからだと思うんですよね。

ジェイムス・ブレイクなどはどうでしょう?

ドイル:よく較べられるんですよ(笑)。その理由は顔が似てるからだと思うんですよね。イギリス出身で、同じような髪型で、雰囲気がなんとなく共通しているからなのかなって……(苦笑)。自分としては音楽的にも、背景として持っているものもまったくちがっていると感じています。彼のメロディのうしろにあるものは、どちらかというとソウルとかブルースとかっていうものだけど、僕の音楽はそうではない。そして彼の音楽のほうがデリケートだと思いますよ。僕の場合は、もっとバンってみんなのまえに差し出すものだというか。スタンスも参照点もちがうので、音楽として較べられる理由はあまりよくはわからないですね。

UKにおいて、インディで活動することとメジャーで活動することの差はどんなところにありますか?

ドイル:自分がメジャーとインディのどこに属するかというようなことは、自分でもあまり考えたことはなかったんですけど、こうやって日本のインタヴューを受けさせてもらっているわけだから何かしら成功した部分はあるのかなとは思いますね。ただ、自分としては、外からの変な影響なく音楽をつくりつづけることが夢なので、その理想に近い部分ならインディでもメジャーでもいいなと思います。

出身もロンドンですか? ロンドンでの音楽体験について教えてください。

ドイル:生まれたのはボーマスという場所で、ロンドンに来たのは4年前です。ロンドンというのは音楽にまつわるカルチャーが本当にたくさんある場所で、エキサイティングで楽しいです。でも、最近は自分のライヴが忙しくなってしまって、音楽のイヴェントにはあまり行けてないんですけどね。引っ越した2年間くらいは本当にいろんなところに通いました。すごくメジャーなアーティストから、すごくマイナーなアーティストまで、たくさんのものを同じタイミングで見れる場所ですね。

昨年、今年と、あなたが観た映画や読んだ本などで印象深いものはどんなものでしょう?

ドイル:スカーレット・ヨハンソンが主演の『アンダー・ザ・スキン(邦題:アンダー・ザ・スキン 種の捕食)』という映画があるんですが、それが素晴らしかったですね。スカーレット・ヨハンソン自身もブリティッシュ・アクセントだったりするんですけども。久々にすごいものを観たと思いました。サントラもいいんですよ。それがとても印象に残ってますね。

質問・文:橋元優歩(2015年4月23日)

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