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Interviews

interview with Courtney Barnett

interview with Courtney Barnett

座って考えて、座って、でも踊る

──コートニー・バーネット、インタヴュー

取材:野田努    撮影:小原泰広   Jan 20,2016 UP

Courtney Barnett
Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit

Marathon Artists/トラフィック

Indie Rock

Amazon

 いや、すいません、申し訳ないっす、web ele-kingのレヴュー原稿もたまにしか書けないほど、昨年ぼくは本作りに時間を費やしていまして、このコートニー・バーネットの取材なんか10月31日ですよ。前日にリキッドルームでライヴがあって、その翌日土曜日の朝11時、と手帳に書いてある。
 周知のように、彼女のデビュー・アルバム『サムタイムス・アイ・シット・アンド・シンク、サムタイムス・アイ・ジャスト・シット(ときに座って考えて、そしてまさに座る』は、時代のトレンドとはまるっきり離れているのに関わらず、たくさんのメディアが2015年の年間ベスト・アルバムの1枚に選んでいる(もちろん紙エレキングでも選んだ)。最近ではグラミー賞の新最優秀新人賞にもノミネートされて、アルバムの評価の高さをあらためて印象づけている。

 ロックはスーパースターとともに終わるのではない。簡潔にまとめてみよう。彼女の音楽にはふたつの点において素晴らしい。ギター・ロック音楽としてのソングライティングのうまさ、もうひとつは言葉の素晴らしさだ。
 彼女の歌には、昔ならボブ・ディランやヴェルヴェッツの曲で歌われるような魅惑的な人物が登場し、わずか1行の言葉でしょーもない人生の切ないものを言い表す。だいたい、どの曲のどの歌詞のどの部分でもそうなのだ。アルバムのなかに、なにか特別なトピックがあるわけではない。だが、彼女の曲で描かれる日常のすべての瞬間は,とても大事なものになる。物語があり、わずか言葉の密度は濃く、具象的でありながら、多数の人間の思いを集めてしまう。

 ロック/ショー・ビジネスの世界の最悪なところは、成功すると一般社会ではありえないほど過保護な扱いをうけることにある。まあ、売れもしないのに過保護にされているロック・ミュージシャンも少なくはないよな。で、さて、彼女への取材だが、初来日で大盛り上がりだったライヴの翌日、しかも午前中だし、場所は観光客で賑わう渋谷だし、ああ、眠たいだろうなぁ、機嫌が悪かったら嫌だなぁ……などと案じていたのだけれど、これがまた、ステージで見た彼女と同じように虚勢をはることもなく、コートニー・バーネットは実にさっぱりとした顔で、渋谷の喫茶店にぼくらよりも先に着いていたのです。
 ライヴも良かったし、取材に駆けつけたぼくと小原がますます彼女のファンになったことは言うまでもない。

昔から男女関係とか車について歌ってるようなポップ・ミュージックには全然興味なかった。自分が好きなミュージシャンはもっと深いところに響くものを歌っているように思えたし、私はそういう歌に考えさせられてきた。それが正しい理解であるかどうかは抜きにしてね。

さっぱりとした表情で安心しました。あなたはツアー中で、ライヴの翌日で、しかもこんな早くの取材だから疲れているかなと思ってちょっと心配していたんです。

コートニー・バネット(Courtney Barnett、以下CB):ははは(笑)。ちょっと早かったけど全然大丈夫。

ライヴをやって、3時くらいまで飲んで、そして朝早くに取材を受ける方もいるので(笑)。

CB:前だったら飲んできてたかもね(笑)。

体は強い方なんですか?

CB:この2年間はずっとツアーをしてたから、体力と精神的な面の自分の限界がわかったというか。必要なときはゆっくり休むようにしてるかな。

昨日のライヴもすごくよかったんですけど、このアルバム(『Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I just Sit』)は2015年聴いたなかでも大好きなアルバムなんです。まず、このタイトルとジャケットがすごくいいですよね。あなたの音楽はグルーヴィーで踊れる音楽でもあると思うんですが、それとは対照的に「座って考えて」というタイトルで、ジャケットには椅子の絵が描かれています。

CB:このアルバムの多く毎日つけている日記にインスピレーションも受けてるんだけど、そういうのを書いてるときって日常についてじっくり考えることができる。だから私の日常を反映した内容になっていると思うな。それから、なんていうかなぁ。自分と向き合って作ったから、瞑想的な感じ(笑)? そういうフィーリングが強いかも。曲を書くときは集中するために都会を出て、田舎へ行ったりすることもあるな。私のライヴはエネルギッシュだけど、それとは反対に歌ってること内省的だったりする。こんな感じで、私はそういう対象的なものが混在しているのが好き。

あなたが音楽に夢中になった理由を教えてもらえますか?

CB:音楽にハマったのは10歳のときで、そのときから私はギターをはじめた。そういうピュアなときって、取り憑かれたように練習するでしょ? だから弾き方もどんどん上手くなっていって、曲を覚えるのが単純に楽しかった。それから曲を書くようになるんだけど、それが自分のコミュニケーション手段になると気づけたのは大きかったと思う。普段は言葉で言えない気持ちとか考えを音楽なら伝えられるわけだもん。時間が経つにつれて、自分の歌から何かを感じ取ってくれるひとも増えてきて、これって超ポジティヴなことだなって気づいた。えと、ちゃんと説明できてるかわからないけど(笑)。

10歳のとき、最初はアコースティック・ギター?

CB:うん。はじめは家族の知り合いがアコギを貸してくれたんだけど、ボロくてチューニングがすぐズレちゃうやつだった(笑)。でも私は本気で練習したかったから、親に頼んで新しいのを誕生日に買ってもらったのよ。

いまのポップ・ミュージックって、シンセであったりとか、エレクトロニクスが入っているのがほとんどです。しかし、昨日のライヴやアルバムも、あなたは昔ながらのギター・サウンドに拘っています。それはなぜですか?

CB:昔、実家で親がクラシックとかジャズを聴いていて、私はニール・ヤングとかを聴いてた。だから、あんまりエレクトロ系とかメジャーなポップ・ソングにハマったことがないのよね。だからそれは関係あるんじゃないかな。あと楽器が少ない生な音とライヴ感があるものが大好き。そういう音楽には曲を作ったひとのエネルギーが込められているような感じがしない? そこにはスタジオを歩く足音が聞こえてきそうな臨場感があるからすっごくワクワクする。

取材:野田努(2016年1月20日)

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