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Home >  Interviews > interview with Forest Swords - 石の下にも3年

interview with Forest Swords

interview with Forest Swords

石の下にも3年

──フォレスト・ソーズ、インタヴュー

質問・文:小林拓音   
翻訳:尾形正弘(Lively Up)、中田志保美(Lively Up)、矢岸礼子(Lively Up)
Photo by Dense Truth 2017  
May 31,2017 UP

リヴァプールは旅行客にもっともフレンドリーな街のひとつとしてつねに名前があげられているんだ。みんな会話を交わすのが大好きだし、それはアーティスティックな眼で見れば、コラボレイト好きってことにもなる。

最初に音楽に興味を持ったきっかけは何でしたか? また、そこからいまのような音楽を作るようになった経緯を教えてください。現在のあなたを形作ったもの、もっとも影響を受けたものは何だったのでしょう?

MB:リヴァプールのアートスクールでグラフィック・デザインを勉強していたときに、ジョンという教師がいたんだけど、彼はびっくりするような曲をたくさん聞かせてくれて、何時間もかけて、ものを作り出す方法やその理由を教えてくれた。すばらしい芸術作品を世の中に送り出すことの重要性についてもだ。「なんだっていい。とにかくほれぼれするほどの傑作を作りなさい」とその教師はいつも言っていた。彼は数年前に亡くなってしまったが、ぼくが作るものはすべて彼に捧げている。それは、彼がぼくと話すことに時間を費やしてくれたり、いろんな生き方があることを考えさせてくれたりしたおかげでいまのぼくがあるからだ。
 音楽を始めたときのことだけど、ぼくは数年前にリストラされたんだ。そのときにノートパソコンのミュージック・ソフトで音楽を6ヶ月ほど勉強した。それででき上がったのがEP「Dagger Paths」だ。すべてオーガニックにゆっくりと時間をかけて生まれたものだ。適当に音を鳴らしたり、メロディを奏でたり、リズムを打ったりしていただけで、音楽をきちんと演奏する気はなかった。それが可能だとは思わなかったし、そんな野心もなかった。だから、ぼくのやっていたことに人が関心を示し始めてくれたのは嬉しい驚きだったよ。それで、徐々にフルタイムで音楽をやるようになったんだ。とても幸運だと思っている。

リヴァプールのご出身とのことですが、当地はビートルズを筆頭に、多くのアーティストを生み出してきた都市です。リヴァプールが、ロンドンやマンチェスターなどの他の都市と異なっているのはどういうところでしょうか?

MB:リヴァプールはロンドンやマンチェスターに比べると小さな都市なんだ。80年代や90年代には多くの経済問題や社会問題があった。でも、この10年で街は自ら再生を果たした。いまは素晴らしい音楽や芸術や文化があって、観光業も栄えている。リヴァプールと他の都市の違いだけど、リヴァプールは、ぼくが行ったことのある英国の他のどの都市よりも、ずっと親しみやすくて開放的だね。リヴァプールは旅行客にもっともフレンドリーな街のひとつとしてつねに名前があげられているんだ。みんな会話を交わすのが大好きだし、それはアーティスティックな眼で見れば、コラボレイト好きってことにもなる。リヴァプールくらいの町の大きさだと、良い演奏会場やバーを安く開店できるチャンスもあるから、アーティストやミュージシャンが手軽にライヴをできるし、こういうエリアの出身だってことを誇らしく思うよ。

あなたはショート・フィルム『La fête est finie』のためのスコアでマッシヴ・アタック(Massive Attack)とコラボレイトしています。かれらはあなたにとってどのような存在ですか?

MB:10代で初めて『Mezzanine』を聴いて以来、マッシヴ・アタックのファンなんだ。エレクトロニック・ミュージックに対してまったく違う見方をさせられた作品だった。彼らは、楽器の生の音やサンプリングやヴォーカルといった異なった要素をおもしろいやり方で取り入れた。音楽を始めたときに、自分の作品を作る上で彼らの方法が大きな刺戟になったよ。だからマッシヴ・アタックと手を組むことは、ものすごい特権だし、光栄なことだった。彼らのじっくり時間をかけて進めてゆく手法を見て、ぼくは自分で準備が整ったと感じるまで何もリリースするべきじゃないということを学んだ。彼らのいくつかの新曲にビートを書いたんだけど、望んでくれるならまたぜひ一緒に仕事をしたいね。

ビョークはいつも弦楽器、金管楽器といった伝統的な楽器とエレクトロニック・ビートを、作品のバランスを保ちながらおもしろい形で調和させている。それが、今回のアルバムでぼくがやろうとしたことだ


Forest Swords
Compassion

Ninja Tune / ビート

PsychedelicDubExperimental

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あなたの音楽のダークな部分には、トリッキー(Tricky)やポーティスヘッド(Portishead)の音楽に通じるものがあると感じました。90年代のトリップホップのムーヴメントからは影響を受けているのでしょうか?

MB:影響を受けているよ。ぼくは、この手の曲を聴くのが大好きだった。90年代に10代前半だったから、こういった音楽の影響力が大きい。ぼくの作るビート・プログラミングを聴くとトリップホップの影響がはっきりとわかると思う。90年代に流通していた多くのエレクトロニック・ミュージックと比べて、トリップホップのどっぷり浸れる感じが気に入っていた。本当にはまれる世界だったね。幾重にも重ねられた思慮深いサウンドが耳にも美しく響いた。圧倒されたよ。

あなたは最近、ビョーク(Björk)とアノーニ(Anohni)のリミックスを発表しています。かれらの音楽のどういったところに惹かれますか?

MB:10代でビョークの音楽を知ってから、ずっと彼女のファンなんだ。ラッキーなことに何回か会えた。本当にすてきな女性だ。彼女の作品はぼくの人生に多大な影響を与えてきたし、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとしての彼女もとても尊敬している。『Compassion』には彼女の影響が色濃くあらわれているよ。というのは、ビョークはいつも弦楽器、金管楽器といった伝統的な楽器とエレクトロニック・ビートを、作品のバランスを保ちながらおもしろい形で調和させている。それが、今回のアルバムでぼくがやろうとしたことだからだ。

それらのリミックスでは、原曲がまったく別のものへと生まれ変わっています。特にビョークのそれは45分もの長大な作品に仕上がっていますが、リミックスという作業をする際に心がけていることがあれば教えてください。

MB:曲をリミックスしたいときには、いつもゼロから作るようにしている。だから新しい曲のような気がするんだ。オリジナル曲からはわずかな要素だけを使用しているけど、もとのアーティストがわかるように努力はしている。でもバランスが難しいね。だから、リミックスの完成までとても時間がかかるんだ。けど、仕上がりにはいつも満足しているよ。その曲に自分自身のアイデンティティを加えているわけだから。まるでコラボレイションのように感じる。ビョークの曲のオリジナルは短い繰り返しで終わるけど、その部分を聴くのがとても好きだったから、さらに40分間続くようにしたんだ。そのとき、ウィリアム・バシンスキー(William Basinski)をずいぶん聴いていたから影響を受けたのかもしれない。

今後リミックスしてみたいアーティストや曲はありますか?

MB:ケイト・ブッシュ(Kate Bush)。彼女の曲作りも手がけてみたい。とても才能がある人だからぼくみたいな人間を必要としないだろうけど。

グライムは1970年代のパンク・ミュージック以降に英国で生まれたもっとも重要なジャンルだ。

いまUKではスケプタ(Skepta)やストームジー(Stormzy)などが勢いに乗っていますが、グライムのシーンについてはどのように見ていますか?

MB:気に入っているよ。グライムは1970年代のパンク・ミュージック以降に英国で生まれたもっとも重要なジャンルだ。実際、グライムはある意味とてもパンクで、自分たちの力で活動しているアーティストもいれば、クリエイティヴな面で自分たちにプラスになるようにメジャー・レーベルを利用しているアーティストもいる。5年前まではグライムにメインストリームのリスナーはいなかったけど、スケプタやストームジーのようなアーティストたちが、どうやったらみんながグライムを手にとってくれるか、その方法を身につけたんだ。ルーツに忠実なままでね。彼らはいまでは大きな会場で演奏しているし、ラジオでも曲が流れている。賞もとっていて、大変な驚きだよ。他のグライム・アーティストや、女性のアーティストへの注目も続くよう、これが一時的なものでないことを祈っている。

あなたはレーベル〈Dense Truth〉を主宰されています。現時点ではまだご自身の作品しかリリースされていないようですが、今後、他のアーティストの作品もリリースする予定はあるのでしょうか?

MB:Zurkas Tepla という、モスクワ出身のエレクトロニック・ミュージシャン&アーティストのEPをリリースしたばかりだ。銀行強盗を題材にしたコンセプト・レコードで、すごくワイルドだよ。他にも、〈Dense Truth〉では、今年から来年にかけて進行中のものがたくさんある。ぼくは映画やダンスのスコアといったプロジェクトを手がけているから、通常のアルバムやEPよりも挑戦的な作品をリリースするのに、〈Dense Truth〉のような販売経路があるのはとても有益なんだ。でも単なるレコード・レーベルじゃなくて、クリエイティヴ・スタジオでもある。ぼくはいろんなプロジェクト(例えば、ヴィデオなど)で、才能あふれる多くのコラボレイターたちと手を組んでいて、そういう意味でも、いわゆるレーベル以上のものである方がしっくりくる。将来的には、コンテンポラリー・ダンスや映画のプロジェクト、出版など、素晴らしいコラボレイターたちと手を組んで、やり甲斐があると思えることならなんにでも門戸を開いていくつもりだ。

昨今は Spotify や Apple Music あるいは YouTube で音楽を聴くというスタイルが主流になっていると思いますが、そのことについてはどうお考えですか?

MB:音楽ファンのひとりとして、新しいものを発見できるそういったツールは大好きだ。最近ぼくはジャズやアンビエントをよく聴くようになったけど、いままでその辺のジャンルはあまり知らなかった。でも Spotify や YouTube のおかげでずいぶんわかるようになったし、おかげで素晴らしいレコードをたくさん聴くことができた。だからある意味、同じような方法で人びとにぼくの音楽も知ってもらえたらと思う。とはいえ、アーティスト本人が得られるお金は本当に少なくて、その状況がすぐに変わるとも思えない。規模の小さいアーティストたちをサポートする最善の方法は、物質的にレコードやTシャツを買ったり、チケットを購入してライヴに行ったりすることだよ。

そろそろ昨年の国民投票から1年が経ちますが、ブレグジットという結果は今後アーティストたちの活動にどのような影響を及ぼすとお考えですか?

MB:ひどく厄介なことになるだろう。現実的な問題としては、英国のアーティストがヨーロッパの他の国でパフォーマンスをするのにヴィザが必要になってしまう。いま現在は国境を越えるのにヴィザは要らない。スペインだろうがフランスだろうが、飛行機に乗って演奏しにいくのにいまはなんの書類も要らないのに、それがまるきり変わってしまうんだ。それにレコード・レーベルとしては、製造コストがいまよりも高くなる。レコード盤に2ポンド上乗せしたら、音楽ファンたちはもう買わなくなってしまうかもしれない。交渉過程も長くなりそうだ。どちらの国にとっても、そしてぼくらの芸術や文化にとっても、悪い結果にならなければいいと思うよ。

質問・文:小林拓音(2017年5月31日)

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Profile

小林拓音/Takune Kobayashi
1984年生まれ。ele-king編集部。寄稿した本に『IDM definitive 1958 – 2018』など。編集した本に『わたしたちを救う経済学』『ゲーム音楽ディスクガイド』『文明の恐怖に直面したら読む本』『別冊ele-king 初音ミク10周年』など。

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