ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 校了しました ──松山晋也による魂の1冊『別冊ele-king カン大全──永遠の未来派』、予定どおり10/31発売 (news)
  2. Young Girl - The Night Mayor / V.A. - A Little Night Music:Aural Apparitions from the Geographic North (review)
  3. Autechre - Sign (review)
  4. The Bug ──ザ・バグの最強ダンスホール沼サウンドが〈Hyperdub〉からリリース (news)
  5. Can × VIVA Strange Boutique ──カンのアートワークを元にデザインした限定のスウェットからMA-1ジャケットなどなど発売 (news)
  6. Vladislav Delay / Sly Dunbar / Robbie Shakespeare - 500 Push-Up (review)
  7. LITTLE CREATURES ──デビュー30周年の節目にニュー・アルバムをリリース (news)
  8. Vityazz ──新世代ジャズ・ユニットのヴィチアスが配信イベントを開始 (news)
  9. CAN ──クラウトロックの巨星、CANの全18タイトルがリイシュー (news)
  10. Nightmares On Wax ──あの歴史的名盤『Smokers Delight』の25周年記念12インチ発売、そしてなんともサイケデリックな短編映画を公開 (news)
  11. interview with A Certain Ratio/Jez Kerr マンチェスター、ポストパンク・ファンクの伝説 (interviews)
  12. interview with Autechre 音楽とともにオーディエンスも進化する (interviews)
  13. Siavash Amini - A Mimesis Of Nothingness (review)
  14. 校了しました ──松山晋也による魂の1冊『別冊ele-king カン大全──永遠の未来派』 (news)
  15. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  16. R.I.P. 加部正義 (news)
  17. KODAMA AND THE DUB STATION BAND & Jagatara2020 ──こだま和文率いるバンドが “もうがまんできない” をカヴァー&じゃがたら30年ぶりの新曲が12インチでリリース (news)
  18. Columns King Krule キング・クルール最新作が宿す乾きの秘密 (columns)
  19. KMRU - Peel (review)
  20. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Forest Swords- Engravings

Forest Swords

DubElectronicPsychedelicR&BWitch House

Forest Swords

Engravings

Tri Angle

Amazon iTunes

橋元優歩   Oct 29,2013 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 2000年代において「ウィッチなもの」はまずフリー(ク)・フォークの周辺に姿を現した。森ガールからさかのぼること5年前後。たとえばジョアンナ・ニューサムを、たとえばココロージーを取り巻くウィッチな――オカルトチックな雰囲気は、世を離るための装置として強烈な印象を持っていた。森へ、森へ。戦争のさなかでもあったアメリカ内部では、それはひとつの逃走でもあり闘争でもあっただろう。ドリーミーなどと甘いものではない、時期は少し後のものになるが、『イース』(2006年)の異様な肖像画に浮かんでいるのは、この世をつめたく切り離す微笑ではなかっただろうか。
 フォレスト・ソーズの音楽は、すこし、その頃のドロドロとして危なげな森とウィッチネスを思い出させる。

 UKはリヴァプールのプロデューサー、マシュー・バーンズによるユニット、フォレスト・ソーズ。2010年にリリースされた前作EP『ダガー・パース』を覚えている方も多いことだろう。ポカホーンテッドのようにずぶずぶなダブとギター・サイケデリック、クラムス・カジノの亡霊じみたスクリュー、またハウ・トゥ・ドレス・ウェルのR&Bやそのシミのように抜けにくく忘れ去り難い音像、などなどの印象に重なって、バーンズの音の世界はよどみ、滞り、ひたひたと現実の感触を腐食させていく。呪術的で間の多いビートとヴォーカル・サンプルもあわせて考えれば、ウィッチ・ハウスの傍流としてとらえられても当然だろうし、ファースト・フル・アルバムとなる今作は〈トライ・アングル〉からのリリースである。この線で現在もっとも充実したかたちを提示するための条件をずらりと揃えている。

 一方、往時のブルックリンの実験主義的なムードに含まれていたようなトライバル志向も、バーンズの音楽にとって重要な要素だ。なかでも近世~近代日本の表象が好んで用いられていることは、彼のなかのトライバリズムを大きく特徴づけている。日本趣味というよりも小泉八雲趣味というか、逝きし世の面影に寄せる興味のようなもので、前作と今作のジャケットに色濃いのは、芸者富士山ネコミミではなくて、開国ののちさまざまに失われていこうとする、あるいは開かれていこうとする、小さく、あわれ(あはれ)な存在や風俗である。ウィッチはウィッチでも、名も無き髷の日本女性を立てたところに、なんとなくではあるけれどもバーンズの問いかけがある。大きなちからの陰に、あるいは大きな時代の流れの陰に消えていくものへまなざすことが、彼のサイケデリック・ミュージックでありウィッチ・ハウスの芯ではないだろうか。“オンワード”の乾いた打撃音を、その隙間の反響音を聴いていると、知らないはずの郷愁と、それがあるはずの、ここではない世への思慕に胸がしまってくる。そして“ギャザリング”で反復されるヴォーカル・サンプルが、どこか木挽き歌のような掛けあいを生みながらピアノの旋律とキック音を招じ入れるとき、彼のアルバムは架空の風土記のように、この世のネガとして光を透過させる。

橋元優歩