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“和レアリック”対談

CHEE SHIMIZU×松本章太郎

   Oct 04,2019 UP

 空前の和モノ・ブームである。シティ・ポップの人気はいまだ根強く、竹内まりやのベスト盤は幅広く聴かれているようだし、中古市場では、相変わらず和モノ・コーナーには人がいる。最初にシティ・ポップを再評価したのは90年代初頭の東京のアンダーグラウンドのDJカルチャーだったけれど(初期のユーミン、シュガーベイブ、『風街ろまん』など)、21世紀には欧米のDJカルチャーもそこに目をつけ、そしてさらにまた近年は再々評価が高まっている。
そんな最中に刊行された『和レアリック・ディスクガイド』は、いまの和モノ・ブームの先を見据えた内容となっている。この造語は、もちろん90年代初頭のDJカルチャーに多大な影響を与えた、スペイン領のバレアレス諸島にあるイビサ島のDJスタイルに由来する。バレアリックとは、いまでは多幸性のあるものを指しているようだが、本来は、ロックでもディスコでもアシッド・ハウスでもなんでもアリのDJスタイルを指していた。まあつまり雑多なスタイルなわけで、“和レアリック”もまた、その雑多であることの魅力を和モノにおいて展開している。
『和レアリック・ディスクガイド』の監修者であり、コンセプトの発案者である松本章太郎氏と、DJとして国際舞台で活動中のCHEE SHIMIZU氏に、「“和レアリック”とはなにか?」について話してもらった。とあるベテランDJは、この“和レアリック”なるコンセプトをよくぞ捻り出したものだと感心していたが、ここには「まだまだ和モノはディグしがいがあるぞ」というメッセージのほかにも雑多な裏付けがあるのであって……なので、ぜひ、本を読みながら深読みものほうも楽しんで下さい。(疑似・和レアリック、欧州アジアの外国人DJによる和モノ・トップ3など、面白い企画ページもありますよ〜)


対談は下井草のCHEEさんのお店、「Organic Music 」でやりました。

わかりやすく言うと。その前も、もちろん松本さんはココナッツにいて、山のようなレコードと商売として格闘していたから、自分の身近には大量にあったと思うんですけど、たぶんそのくらいのときからちょっと接し方が変わってきたよね。(CHEE)

そもそも“和レアリック”とはなんでしょう?

CHEE SHIMIZU(以下、CHEE):いつから“和レアリック”って言い出したの?

松本章太郎(以下、松本):10年くらい前。和モノでミックスを急に作ったときがあったじゃないですか。あのときに思いたって。

10年前?

松本:まずはバレアリックというのが10年くらい前にあったんですよ。我らの共通感覚として。“オブスキュア”とかよりもちょっと前。

CHEE:“コズミック”とか言っていたあとだよね。

松本:あの辺の質感とやっていることがリンクしている頃だったので、たまたま耳で和モノをひっかけたらああなった。

CHEE:Flaticもそうだし、みんな元々はイタロとかにいって、“コズミック”にいって、飽きた頃になんとなくバレアリックって言い出したんだよね。

松本:たまたま和モノをみんな掘っていなかったんですよね。新しいジャンルだったんですよ。まだいくらでも見つけるチャンスがあった。

欧米のものをある程度堀りつくした感があったから?

CHEE:そういうところあると思うんですよね。ちょっと飽きたというか。あまり知られていないにしても、いままでは外国のすでにあった規定の何かを見つけて面白がっていたんですけど、それがなくなった。それからだよね。

松本:手元にいっぱいあったし。感覚として、違う質感の新しいものを見つけたという感じもちょっとあったと思うんです。

CHEE:ディスコの延長ではもちろんあったんです。

松本:メインはそうですね。

CHEE:アンビエントとかは別ですけど、和モノに関してはざっくり言ってディスコっぽいグルーヴが基本的にどこかにあるんです。それはいまもそんなに変わってないと思います。イタリアだったり、どこかを聴いたりでだいぶみんなシラーっとしてきた頃に、打ち合わせとかしていないけど、なんとなくみんな和モノを聴きだしたね。

松本:おもしろかったね。もうちょい前、あのときうちらはシェルターでやっていたじゃないですか。

CHEE:シェルターでずっとパーティをやっているんですけど、それで松本さんと当時ココナッツで働いていたRyota OPPとWataru(R)とDJを一緒にやったんです。俺はカミさんのお母さんが当時銀行の外交員をやっていて、お客さん周りをしていたときに、お客さんの家の玄関の前にレコードが捨てる寸前でおいてあったらしくて。うちの娘の旦那がレコード屋をやっているからってもらってきてくれたんですよ。そのなかにショーケンとか矢沢永吉とかサザンとかいっぱいあって。とりあえず聴いてみようと思って聴いたんです。そうしたらけっこういいのがあって。シェルターで松本さんとかを呼んでDJをやっているときにそれをかけたんです。「これはなんだ?」という話になって。

松本:CHEEさんの流れがおもしろかったんですよ。“オブスキュア”な流れでひょっとこうもってきた。あの感じがおもしろかった。

CHEE:うちらは基本的に体系とかはまったく気にしてないから。これは良いってなったときにだいたい体系を追ったり、作ったりするけど、うちらはそういうことが全くなかった。いままでもDJとして、そういう感じで音楽を聴いていたと思うんですよ。そのままの延長できちゃっているので、和モノがきたときにあんまりそういうことを気にしてなかった。

松本:目の前のやつを好きかそうでないかだけで判断していましたね。

CHEE:歌モノとか歌詞の壁ってあったんです。恥ずかしいって。

松本:最初にミックスをしたときにワタルが絶対にやめてくださいって(笑)。

CHEE:そうだね。やっぱり恥ずかしさがあったから。

松本:“レフトフィールド”とかかっこつけていた人が急にね(笑)。でも癖になるんですよね。声も全然ありだなって。

きっかけは矢沢永吉の曲だったんですか?

CHEE:わかりやすく言うと。その前も、もちろん松本さんはココナッツにいて、山のようなレコードと商売として格闘していたから、自分の身近には大量にあったと思うんですけど、たぶんそのくらいのときからちょっと接し方が変わってきたよね。

松本:和モノがYAS-KAZとかアラゴンとか最初に外国の音楽と同じ耳で聴いていた時期があって。それを5年くらい前からやっていたんですよね。

松本さんはココナッツディスクで働いていますよね。大量の中古レコードを目の前にして、通常100円コーナーで売られているような音楽を一生懸命片っ端から聴いていったら意外といいのがあるじゃんってなったんですよね?

松本:それが基本ですね。昔から知識がない分聴いてやっていくしかないので。そのあとは感覚でやるしかなかった。その楽しみがずっと昔からあるんです。

それをよく聴きましたね。

松本:でも“オブスキュア”とか“レフトフィールド”ってもともとそうですもんね。みんなが知らない曲を探したいという欲が私にはけっこうあったので。チャンスがいっぱいあるなら聴けって。あんな時間のかけ方は、ああいう仕事をしてなかったら無理かなと思うんですけどね。

“レフトフィールド”というのはわかるんだけど、“オブスキュア”ってどういう意味ですか?

CHEE:意味はないですよ。

松本:ほぼ一緒に近い。でも“オブスキュア”はCHEEさんが言い出しちゃいましたもんね。

CHEEさんが流行らせた言葉でしょ。

CHEE:全然そんなつもりないですけどねぇ。レアってあんまり言いたくないんですよ。日本でいうレアっていうキーワードがあんまりしっくりこない。値段と正比例しているような言葉に思えちゃうので、あんまり使いたくない。お店でレコードを売っていてもレアって言いたくないんですよね。誰がこれを高いって決めたのかという疑問が。それは昔からです。中古レコードを買い出した頃からそうなんですけど。なるべくレアという言葉を使いたくないなと思ったときに“オブスキュア”とかそういうことを言い出した。

松本さんに“オブスキュア”ってどういう意味ですかと聞いたら……。

松本:「めずらしいっ」て意味だって。

「みんながまだ価値に気が付いてない」とか? 「スルー、軽視されているもの」。

CHEE:それもあると思います。

松本:でももうちょっとこっちはゴミっぽいというか。

CHEE:そうゴミっぽい。

松本:“レフトフィールド”はもうちょいトンマぽいというか。

CHEE:でもだいたい同じような。だからレアとか言っちゃうとすでに価値づけされているものだから。実際に外国ではどういうふうに使われているのかは別にして。

外国人からすれば日本のシティ・ポップとかに気がつきたのはここ数年。だから見つけたという感覚があるんでしょうね。すごい勢いで外国ではシティ・ポップが広がっているので。

松本:まあでも外国人が日本のものを探したら嬉しいんじゃないですかね。うちらが知っているような外国人じゃなくて、もっと普通の人にも日本にはこんなものがあるっていうことが新鮮に映るんじゃないかなと思うんです。でも海外でもきっとあのラインが流行る要素がある。外国人のやっているAORとかああいうものに手を出せばいいのにと思うんですけどね。

CHEEさんは、清水靖晃とか高田みどりとかアンビエントの吉村弘とか、あの辺の人気に火をつけた人物でもありますよね。

CHEE:基本的には松本さんと一緒で、外国の音楽をDJとしてもリスナーとしても聴いていたので、日本の音楽を掘るようになっても、自分の感覚は一緒なんです。だから外国の音楽を聴いているのと同じ感覚で聴いている。唯一の違いは、日本人だから歌詞がわかっちゃうというところだけ。アンビエントとか、ちょっとコンテンポラリーなものとかも感覚としては外国のものを聴いているときとほとんど変わらないですよ。

矢沢永吉とかをかけた頃に同じように?

CHEE:時期的には同じくらいです。真剣に堀り出したのは、俺の場合は外国人の連中が「お前は日本人なんだから自分の国のレコードを掘って持ってこいよ」と言われたことも大きい。

そう言われたんですか? 

CHEE:言われましたよ。11年くらい前ですけど、レコ―ド屋をはじめて海外に買い付けに行って、向こうの連中のところにお世話になって、みんなで一緒に夜音楽を聴いていると、その段階で日本の音楽を掘っている連中が何人かいたんです。日本に行って、すごくいっぱい良い音楽を見つけてきたみたいな感じでみせられて。

それはどの辺の音楽を?

CHEE:吉村弘とか、日向敏文とか清水靖晃もそうですけど。そういうのを知ってるか? と言われて、知っているけどちゃんと聴いたことはなかったなって。たしかに実家の物置に子供の頃から買っていたレコードがたくさんあって、家を壊すから全部持っていけと言われ田舎に帰って箱を開けたら、そういうものが入ってるんですよ。えー俺こんなのいつ買ったんだって。

“和レアリック”とは雑多なものである、それは本来の“バレアリック・ハウス”の意味と同じなわけですが、CHEEさんが“和レアリック”っぽいと言うときはどういうイメージなんですか。

CHEE:あんまり気にしてないよね。とりあえず自分で本に載っているものを並べてみたんですけど、まったくめちゃくちゃですよ。統一性も何もない。だから基本的に何か音楽的に引っかかる部分があればもう良しなんですよね。最近はとくにイージーリスニングとかもっとこってりした歌謡曲とか演歌とかその辺までいっちゃっているので。

松本:やっぱいきますよね。この辺に慣れると次にいきたくなるというか。

CHEE:あとは基本的に僕らくらいの年代だとある程度知識、経験の蓄積がこの年なので増えてくる。そうすると歌謡曲を聴いても、サウンドのプロダクションだとか、アレンジャーはこの人だといいなと思うと、その人がアレンジしているものを聴いてみたりとかいう感じになってくるんです。だからそういう目線でみているところもある。

ちなみに“和レアリック”の魅力って何ですか?

CHEE:やっぱり雑多性。俺はちょっと悪ふざけしている感じがあるんです。

松本:それは間違いないです。ニヤリ感。

CHEE:俺はだいぶ悪ふざけしてる(笑)。

松本:ハハハ(笑)。

CHEE:普通だったら、こんなのかけたら、客に殴られるんじゃないかなみたいなやつも、ニヤッとしてこうね。

松本:以外とそういうものがウケたりするから、手から離してみないとわからないもんなんですよね。

CHEE:それをひとりでやる勇気がないから一緒にやっているようなもんですよ(笑)。

一同:(笑)。

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