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interview with Squarepusher

interview with Squarepusher

あのころの予測不能をもう一度

──スクエアプッシャー、インタヴュー

取材・文:小林拓音    通訳:染谷和美 写真:岩沢蘭   Jan 31,2020 UP

レイヴはその場にいる人たちだけのものだった。いまのフェスって規模は大きいけど、なにかのプロダクトのプロモーションに使われている感じがあるよね。僕の音楽もなにかを売るために使われているんじゃないかと思ったり。販売のヘルプだよ。

スクエアプッシャーはアルバムごとに新しいことに挑戦してきましたけれど、どのアルバムにもかならず1曲か2曲、とてもキャッチーで美しいメロディの曲が入っていますよね。今回だと1曲目の “Oberlove” がそれにあたると思うんですが、いつもそういう曲を入れるのは、実験的な試みとのバランスをとろうとしているのでしょうか?

TJ:たしかにそのとおり。その洞察はひじょうに興味深いな。僕が魅力を感じるのは未知の世界なんだ。いま売れているもの、いま流行っているものとそうでないもののあいだの境界線を僕はあまり意識していないけど、基本的には良い曲が好きで、良いメロディに惹かれる。これはじぶんではどうしようもない部分だよ。それを楽しみたいじぶんをあえて引きとめて、ちがうこと、そうじゃないことをやろうとするとしたら、それはじぶんにたいしてすごく残虐な行為だよね。じぶんへの裏切りだと思うんだ。僕自身はポップ・ミュージックもすごく好きだけど、でも一方では前衛的なものも大好きで。それからフューチャリスティックな試みをしている音楽も大好きだ。それらぜんぶをひっくるめてじぶんだと思っているから、たぶんそのさまざまな世界に橋渡しをするような音楽をつくりたいんだろうなって僕は思っている。聴いていてスウィートな気持ちになるような音楽ももちろん大好きだけど、おもいっきり実験的な、テクノロジーを用いてつくる音楽も大好きだからね。ときには音楽をつくるときも、メロディから入っていくことだってあるんだ。そのメロディはとてもわかりやすいものだけど、つくっていく過程でそれがだんだん発展していって、ぜんぜんちがうものに突然変異することもあるから、その過程じたいがそういう橋渡しをしていることになるのかな。そんな気もするね。ストレートでわかりやすい音楽からブルータルに実験的なものまで、そのあいだにあるのがたぶんジャズなんだろうな。ジャズでも、たとえばインプロが入ってくることによって、おなじ素材を扱っていてもぜんぜんちがう角度からその音楽を見ることができるような、ね。そういう橋渡しのようなことは意識的にしているよ。

最後の “80 Ondula” はノンビートでとてもダークで、ほかの曲と雰囲気が異なります。この曲でアルバムを終わらせたのにはなにか意図があるのでしょうか?

TJ:言っていることはわかる気がするよ。ほんとうに単純に言ってしまえば、「ライトからダークへ」。だんだんより暗くなっていくんだ。

暗くして終わらせたかったと?

TJ:友人がなくなったことで僕はすごくかなしい思いをしたから、その気持ちを、なんらかのかたちでこのアルバムで表現したかったんだ。ふだん死を意識しないで暮らしている人たちにも、命のはかなさみたいなものを感じて考えてもらえればなと思ってつくった。そのあらわれだと思うな。やっぱり生きている人間、残された人間にとって死のかなしみにひたるのはほんとうにつらいことだけど、それを含めた僕の経験みたいなものが、この暗いほうへと向かっていくアルバムの流れにあらわれているのかも。

基本的には良いメロディに惹かれる。それを楽しみたいじぶんをあえて引きとめて、ちがうことをやろうとするとしたら、それはじぶんにたいしてすごく残虐な行為だよね。じぶんへの裏切りだと思うんだ。

前作『Damogen Furies』には世界情勢にたいする怒りがありました。また3年前に国民投票でブレグジットが決まったとき、あなたは “MIDI sans Frontières” という曲を発表して、世界じゅうの人びとにコラボレイトを呼びかけました。いまのイギリスの状況についてはどう考えていますか?

TJ:とても複雑な状況だよ。手短に話すのも難しいけど、僕から見たところ、国民投票にいたるまでのキャンペーンの段階から、ひじょうに、人びとを分断する方向に動いていたような気がする。じぶんと相反する意見の人たちを悪いように見せようとして、相手にたいして疑念を持つような、そういう方向へ持っていこうとする動きがみられたと思う。それは「英国人対諸外国からきた人たち」という図式になっているけど、とにかくネガティヴで相手の悪いところばかりを増進させる、そういう政治的ゲームに巻き込まれていたように僕は思う。それを見ていてすごく気持ちが悪かったんだ。そこからどんどん下り坂で。国民投票以降、状況はさらに悪化している。見ていて衝撃的だと思うくらい、政治的な下降がみられると思っている。僕がここでなにか言ってもそれがすぐに功を奏するわけではないということはわかっているけど、少なくともじぶんのステイトメントとして、いままで見せられてきたものの対極を示したい。互いの良いところをもっと見て、つながりあおうよということだね。互いにコミュニケイションをとろうということ。それを訴えるうえで、音楽は良い道具になると僕は思っているんだ。効果のあるインストゥルメントになると思う。悪いところじゃなくて、人間の良い側面、調和性みたいなものを増進して伝える、音楽はその術になると思うね。

 訊きたいことはほかにもたくさんあったのだけれど、残念ながらここで時間切れ。蛇足ながら最後に、昨日公開された真鍋大度の手による “Terminal Slam” のMVについて少しだけ触れておきたい。
 渋谷の街中や車内に掲げられている広告を次から次へとスクエアプッシャーのものへと置き換え、それらを過剰なまでに暴走させるこの映像は、大企業や広告代理店の残虐性を見事に告発している。1月30日の深夜0時、同ヴィデオが渋谷のスクリーンに映し出されるのをじっさいにこの目で眺めるというメタ的な体験をしてみて、いかにふだんわたしたちが暴力的な広告に包囲されているのか、あらためて確認させられることになった。「僕の音楽がなにかを売るために使われているんじゃないかと思ったり。販売のヘルプだよ」という前出のトム・ジェンキンソンの発言とあわせて考えると、ひじょうに示唆的なMVである。


5年ぶりとなる超待望の単独来日公演が大決定!!

2020年4月1日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
2020年4月2日(木) 梅田 CLUB QUATTRO
2020年4月3日(金) 新木場 STUDIO COAST

TICKETS : ADV. ¥7,000+1D
OPEN 18:00 / START 19:00
※未就学児童入場不可

MORE INFO: http://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10760

チケット情報
2月1日(土)より一般発売開始!

取材・文:小林拓音(2020年1月31日)

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