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Toddla T

Toddla T

Watch Me Dance: Agitated by Ross Orton & Pipes

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野田 努   Aug 28,2012 UP
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 「DJパイプスとロス・オートンは俺の最大のヒーローだ」と、トドラ・Tは話しているが、ふたりは彼にとって地元の先輩である。トドラ・Tが学校を辞めてシェフィールドのスケート場で働く「瞳孔の開いた」十代だった頃に、パイプスなる、怪しい名前のDJと会っている。このベース・フーリガンこそ地元クラブの顔役的なDJであり、そしてジャーヴィス・コッカー(パルプ)のDJチーム「ディスペレイト(絶望的な)・サウンドシステム」のメンバーでもある。彼らがオーガナイズするパーティ「ディスペレイト・ナイト(絶望的な夜)」において、トドラ・T、そしてパイプスとロス・オートンはダンスホール愛によって結ばれた。
 ロス・オートンは10年前の、エレクトロ時代のシェフィールドを代表するファット・トラッカーのメンバーであり、ジャーヴィス・コッカーのバンドのドラマーでもあり、アークティック・モンキーズやなんかの曲のプロデュース、MIAのリミックスも手がけるような名の知れた音楽人だった。トドラ・Tに作り方を教えた先生である。そういう地元の先輩ふたりが、トドラ・Tのセカンド・アルバム『ウォッチ・ミー・ダンス』を再構築したのが本作「アジテイティッド・バイ・ロス・オートン&パイプス」というわけだ。

 トドラ・Tは明るすぎるし、アホすぎるかもしれない。ビートたけし系のヒューマニズムに心底感動しているファッキン真面目な青年、竹内正太郎の文章を読んでいると、この国の湿度の高さが精神に与える影響もあるのでは……。「3.11以降」という彼の好きな言葉を使わずとも、昔から日本では、暗い風が吹くとファッキン内側に籠もりがちだ。島国だから? 現実が絶望的だから? 政治が大衆のために機能しないから? 『CRASS』の後書きでも書いたことだが、イギリスの若者文化は1978年の時点であたり一面の絶望に直面している。ノー・フューチャー、未来なんかない、俺にもあんたにも……ジョニー・ロットンはそう笑ってみせた。「ノー・フューチャー」を繰り返し聴かされたUKの若者文化はむしろ元気になって、ポスト・パンクの時代へと展開した。ポスト・パンクが何をしかったって? サッチャーという英国を愛する頑固なおばさんが絶対に許さない連中──たとえばジャマイカ移民に代表される──とつるんだ。英国らしさの真逆に突き進むことで、音楽も多様化した。結果、そうしたポスト・パンクの抵抗が「ノー・フューチャー」な英国に自由な領域を創造した。レイヴ・カルチャーはそのなかで生まれた。トドラ・Tがダンスホールと結ばれたのもそうした過去と無関係ではない。

 それにしてもトドラ・Tのふたりの先輩は、後輩以上にアホじゃないかと思われる。「アジテイティッド・バイ・ロス・オートン&パイプス」からは……いわばガンジャ節というか、ファッショナブルでポップ・ソングを意識した『ウォッチ・ミー・ダンス』をさらに深くクラブ・サウンドのほうへと変換している。アシッド・ハウスのフレイヴァーが全体を通底しているが、これは最近のモードだ。ショーラ・アマと一緒に作った最新シングル「アライヴ」も、まあ、お洒落で良かったが、僕は先輩がいじった本作のほうを推したい。ちなみに日本にも「ノー・フューチャー」で「未来を見せる」ことのできる人たちはいる。最近で言えばドタマとか、再結成したタコとか……。

(※)文中の「ファッキン」は竹内君に毒づいているというよりは、9月からはじまる編集部が大好きなライターの新連載の予告です。さて誰でしょう。こうご期待!

野田 努