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Instra:mental

Instra:mental

Resolution653

Nonplus Records

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野田 努   Jun 09,2011 UP

 1991年に、リッチー・ホウティンによるF.U.S.E.名義の"サブスタンス・アビューズ"を聴いたときは心底格好いいと思った。あの時代の自分はいまよりも数段オメデたかったし、ものすごーくバカだった。アシッド・トランスに身を委ねながら「オーヴァードーズ」という声が反復されても、ま、いいかと、いま思えばそういうところがあった。ゆえに2011年の春にリリースされたドラムンベースの知性派として名高いインストラ:メンタルの最初のアルバムにおいて、"サブスタンス・アビューズ"とほとんど同じような音楽性で、そしてまったく同じように「オーヴァードーズ」と繰り返されるとけっこう困惑する。意味的にも、そして20年前のスタイルの復興としても。
 "サブスタンス・アビューズ"のあまりにも心地よいバッド・トリップは、その両義性、というか分裂性において忘れられない曲だった。が、しかし......その両義性、というか分裂性がいま最高潮に達しているUKのクラブ・カルチャーにもあると『レゾリューション653』に収録された"ユーザー"という曲が報告するのであるならば......自分がチルウェイヴのようなわりとこじんまりとした佇まいの音楽にじょじょに惹かれていったのも無理もないなーと、あらためて思ってしまうのである。

 当たり前の話だが、震災後、おもに東北から関東に住んでいる人間がもっとも身に染みていることは、たわいもない日々の暮らしがどれほど大切かということだ。チルウェイヴの日本におけるリアリティとは、そうした日常のなかのささやかな夢の欲望にある。とても小さな......そして日々の生活のなかで感じるべき重要な夢。ところがいまのUKときたら、おそらく規模的に言って、20年前のダンスの時代の再来を経験している。それはある意味では羨ましい話だけれど、ここ東京で暮らしながらいまこの瞬間においてバキバキになって踊るっていうのもある程度ハードなダンサーだって躊躇する......いやいや、そんなことはないのかもしれないけれど、そんなに多くはないような気がする。

 もっとも驚いているのはコアなドラムンベースのリスナーだろう。『レゾリューション653』に収録された音楽はジャングルでもダブステップでもグライムでもない。それは驚くべきことに......100%テクノなのだ。それも1991年あたりのリッチー・ホウティン周辺、UR周辺、ジョイ・ベルトラム周辺の......とにかくまあ、昔懐かしきトランシーなテクノないしはエレクトロである。
 日本とはずいぶん温度差のある、イケイケ状態のUKのクラブ・シーンからは、魅力的な音楽が生まれているのは事実だ。それはアンダーグラウンドのみならず、ケイティ・B、あるいはトドラ・Tの作品ようにポップ・フィールドにおいても充分に通用するものもある。それで先日、素晴らしいセカンド・アルバムを完成させたトドラ・Tに取材したところ、彼は「セカンド・サマー・オブ・ラヴ時代の"ラヴ"の要素をもう少し注入したい気分だ」と話していたけれど、人によってはそういうことみたいである。みんな気をつけよう。

野田 努