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三田 格   Aug 17,2012 UP

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 『アタック・ザ・ブロック』を制作したエドガー・ライトといえばデビュー作にあたる『ショーン・オブ・ザ・デッド』がいまだに金字塔的作品で、このところ強くなっていく一方だったゾンビを極端に弱い存在にしたことがひとつの勝因ではあったといえる。それを、さらに上回るというか、下回る弱さでゾンビを登場させたのがキューバ初のソンビ映画『フアン・オブ・ザ・デッド(邦題『ゾンビ革命』)』で、いくらなんでも弱すぎるというか、これではゾンビがどんどん増えていくのは不自然かも......と思うほどだった(おかげでキューバ音楽とのマッチングはよかったし、海底のシーンはかなりよかった)。また、アメリカとの関係はやはり複雑なんだなーと思う場面が多々あって、アメリカは圧倒的に強いということを示すためにゾンビの頭部がまとめて刈られていくシーンがあり、そのひとつが地面に転がった瞬間は奇妙な間も含めてなかなか印象に残る場面となった。ゾンビの首がちょっとかわいかったんですよね。

 頭部マニアなのか、インストラ:メンタルの抽象路線とはやや様変わりしつつ、ジョン・コンヴェックスのファースト・ソロにはまたしてもキャサリン・Wの頭部がデザイン的にシリーズで使われている。アルバム・タイトルは「アイドル」と読ませたいんでしょうか。前半が英語で後半はローマ字? とはいえ、キャサリーン・Wが低い声でボソボソと歌う感じは(なんとなく「エイジ・オブ・ラヴ」なんだけど)アイドルのイメージからは遠くかけ離れていて、ある種のSM的イメージを浮かび上がらせる。つーか、単純に混乱させられる。村上隆の作品を初めて見せられた欧米人の感覚はこうだったかも......しれない。

 先行シングル→http://soundcloud.com/surus/jon-convex-fade-convex

 抑制の効いたオープニングからアルバムは全体にスキューバやジミー・エドガーとは雰囲気の異なるストロング・スタイルのエレクトロやゴツゴツとしたテクノで占められ、ロスカと同じくケヴィン・サンダースン的なセンスを随所で感じてしまうと同時に、ソロの石野卓球にも近い資質を感じさせる(あるいは、その原型であるジョーイ・ベルトラム=ニュー・ビートとデトロイト・テクノの交点に彼は現れた)。拷問と快楽が紙一重で混在する極端なストイックぶりには、ルーシー以降のコールド・ミニマルや、16ビートを志向しないシンセ-ポップ・リヴァイヴァルがファクトリー・フロアー(やトレヴァー・ジャクスンのミックスCD『メタル・ダンス』)のようにビートを強化してインダストリアルな傾向(=ミニマル・ウェイヴ?)に突進しはじめたこととも共振性はあるだろう(むしろアンディ・ストットやマルセル・デットマンのような生真面目な快楽主義とは、どことなく相容れない?)。太鼓の乱れ打ちを思わせる「ディソレイション(孤独)」がとくにいい出来かな(また、同じインストラ:メンタルからアレックス・グリーンもボッディカ名義でジョイ・オービソンとナイス・コラボレイションを連発中で、ボッディカもエレクトロ主体ながらだいぶ奇妙な方向性を示しているし、すでに9曲はあるわけだから、このタッグのままでなんとかアルバムもやって欲しい限り)。

 唐突にダブステップを取り入れたクリスチャン・ヴォーゲルの14作目も結果的にはストロング・スタイルのエレクトロに聴こえる作品を完成。新機軸を取り入れているのに、なぜ『慣性の』というタイトルにしたのかはわからないけれど、スペインのバレエ団のために2枚のアルバム制作していたため(これがいい!)、いわゆるダンス・ミュージックのアルバムとしては5年ぶりとなった。もともと、アブストラクトな感性をあふれんばかりに携えてデビューしてきた人なので、どことなく90年代初頭に戻った感もあり、それが円熟味を増して完成度を高めたと聴くことも可能だろう(スーパー_コライダーも呑み込んで!)。『リスケイト137』で自らのルーツ(=チリ系)を全開にした時もちょっと感動があったけれど、ややこしいリズムの連打にはやはり心が和んでしまう。波をイメージしたらしきエンディングは意外にもガス(マイク・インク)を思わせるアンビエント・タッチ。

三田 格