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河地依子   Nov 25,2016 UP
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 ソランジュとキングとビヨンセと

 ソランジュの8年ぶりのサード作『A Seat At The Table』を聴きながら、真っ先に思い出したのはキングの『We Are King』だった。ソランジュのバックはシンプルな演奏ながら基本的にバンド形態で、曲の合間合間には両親やマスターPなどの語りが挟まり、リル・ウェインなどラッパーのゲストも招くなど、キングとの違いはいろいろあるが、可愛らしく優しい歌声、従来のパターンにとらわれず自由に流れていく中にポップなフレーズが浮かんでは消えるメロディー・ライン、コーラスの絡ませ方など、共通点もたくさんある。そして何よりも、美しいドリーム系の最高峰がもたらす絶大な癒し効果が共通している。

 ソランジュはこのアルバムの曲を13年から作りはじめたという。自分のピアノと歌で仮録音したそれらの曲を、仲間のミュージシャンたちとジャム・セッション風に演奏して自由に広げ(時には1時間を超える演奏にもなったという)、それを今回ソランジュとともにプロデュースを担当したラファエル・サディークが仕上げた、という手順だったようだ。推測するに、ラファエルはソランジュの意向を上手に丁寧に汲み取り、とてもいい仕事をしたのではないだろうか。

 ソランジュの歌声とその表情は、折に触れて姉ビヨンセにそっくりで、『Lemonade』のドリーム系の曲にも思いを馳せた。アメリカに黒人女性として生まれたからには、人種と性の二重の差別構造の中で、日々経験することの多くが私的な経験であると同時に社会的な経験でもある。そしてビヨンセもソランジュもそれをアルバムで表現し、「女性の社会的地位の向上と自立」を訴えることに繋げた。ビヨンセは圧倒的なパワーでリーダーシップを発揮してリスナーを鼓舞するが、ソランジュはナチュラルな佇まいでそっと静かに伝えて共感を呼ぶ。対照的なアプローチだが、いずれも芯の強さを備えているからこそできることであり、どちらも社会運動の活性化には必要な要素だ。またソランジュは「悲しみと癒し」も本作のテーマに含めており、ビヨンセの『レモネード』も「与えられた困難(=レモン)から美味しいレモネードを作る」という意味だった。つまるところ、ふたりは同じテーマのアルバムを作ったのだと思う。ビヨンセの『Lemonade』は、いつものように全米アルバム・チャートの1位になり、本作も9月30日に配信が始まってから約2週間で同チャートの1位になった。これまでソランジュは、姉ビヨンセの七光りで得をすることよりも、逆にその陰となって損をすることの方が多かったんじゃないかと思うが、我が道を行き続けて花開かせたのは立派だ。

 ところで最初に本作に興味を持ったのは、オハイオ・プレイヤーズ→ソロ→Pファンクと渡り歩いた独創的な天才ジューニー・モリスンの曲にインスパイアされた、その名も「Junie」という曲があると知ったからだった。悪い癖で、Pファンクが絡んでいると知ると聴かないと気がすまないため、その場でフィジカル盤を予約した。だが待ちに待った本作が届いてひとたび聴きはじめたら、そのことはすっかり忘れて引き込まれ、終盤16曲目の当該曲にさしかかってようやく、「あ、そういえば…」と思い出したくらいだった。シンセの音色やリフの挟み方、スライを起点とする急転直下型の展開など、ジューニーの特徴的な要素が多々取り込まれていて、とても愛らしく思える曲だった。


河地依子

※国内盤(歌詞対訳付き)の発売は、11月30日です。(編集部)

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