ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. R.I.P. Tom Verlaine 追悼:トム・ヴァーレイン (news)
  2. R.I.P.鮎川誠 | シーナ&ロケッツ (news)
  3. Joesef - Permanent Damage | ジョーセフ (review)
  4. John Cale - Mercy | ジョン・ケイル (review)
  5. interview with Young Fathers 日本はもっとヤング・ファーザーズを聴くべき | アロイシャス・マサコイ (interviews)
  6. Yves Tumor ──現代のきらびやかなアイコン、イヴ・トゥモアがニュー・アルバムを送り出す (news)
  7. Loraine James - Building Something Beautiful For Me (review)
  8. Rob Mazurek ──シカゴ・ジャズ・シーンの重要人物ロブ・マズレクが新作をリリース (news)
  9. Boys Age - Music For Micro Fishing (review)
  10. Meemo Comma ——ミーモ・カーマの新作には90年代がいっぱい (news)
  11. Columns ギラ・バンド、ガールズ・バンド、そして音楽的不快感 (columns)
  12. R.I.P. Yukihiro Takahashi 追悼:高橋幸宏 (news)
  13. 坂本龍一 - 12 (review)
  14. Ben Frost - Broken Spectre | ベン・フロスト (review)
  15. Columns 高橋幸宏 音楽の歴史 (columns)
  16. Thomas Bangalter ——元ダフト・パンクのトーマ・バンガルテルのソロ・アルバムが面白そうだ (news)
  17. Sun Ra ——生涯をかけて作り上げた寓話を生きたジャズ・アーティスト、サン・ラー。その評伝『宇宙こそ帰る場所』刊行に寄せて (news)
  18. R.I.P. Terry Hall 追悼:テリー・ホール (news)
  19. Marcel Dettmann - Fear Of Programming | マルセル・デットマン (review)
  20. interview with agraph その“グラフ”は、ミニマル・ミュージックをひらいていく | アグラフ、牛尾憲輔、電気グルーヴ (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Danny Brown- uknowhatimsayin¿

Danny Brown

Hip Hop

Danny Brown

uknowhatimsayin¿

Warp / ビート

Tower HMV Amazon iTunes

大前至   Dec 27,2019 UP

 Q-Tip がエグゼクティヴ・プロデューサーを務めるということで、個人的にもリリース前から期待度が非常に高まっていた Danny Brown の5作目となるニュー・アルバム。結論から先に言ってしまうと、その期待通りの素晴らしい出来で、間違いなく2019年を代表するヒップホップ・アルバムの1枚だ。

 2ndアルバム『XXX』を A-Trak 率いる〈Fool's Gold〉からリリースし、4枚目となる『Atrocity Exhibition』からは〈Warp〉と契約を結ぶなど、いわゆるメジャー・アーティストや、あるいはアンダーグラウンドのラッパーとも異なる道を辿ってきた Danny Brown。奇抜な髪型にさらに前歯も抜けていたりと、ルックス的にも個性的過ぎる彼であったが、それ以上にフリーキーとも言えるラップのスタイルと、天才と変態が表裏一体になっているようなリリックの世界観は、まさに唯一無二の存在であり、ヒップホップ以外のフィールドからも非常に高い評価を受けてきた。そんな、ある意味、アーティストとして完全に突き抜けた位置にいた Danny Brown であったが、今回、Q-Tip がアルバム制作に関わったことによって、彼の持つ混沌の方向性が見事に整理され、ひとつの作品としての強度は非常に増している。Q-Tip 自身もプロデューサーとして3曲手がけており、ファースト・シングルとなった “Dirty Laundry” は実に Danny Brown らしいフリーキーな1曲であるが、個人的にも本作のベスト・トラックと思っているのがセカンドカットの “Best Life” だ。リリック的にはドラッグにまみれたような最悪な環境から何とか這い上がるしかないという、どう見ても複雑な「最良の人生」をラップしているわけだが、Q-Tip ならではのソリッドなドラムを軸としたトラックの、程よくファンキーで明るい希望を見出してくれるような空気感が、全てを前向きに輝かせてくれる。

 ゲスト参加曲では Run the Jewels をフィーチャした “3 Tearz” がリリックの内容の酷さも含めて、Danny Brown の魅力を十二分に引き出しており、ナイジェリア出身のシンガー、Obongjayar をフィーチャしたタイトル・チューン “Uknowhatimsayin¿” も Danny Brown のまた別の顔が伺える一方で、盟友、Paul White が手がける浮揚感溢れるトラックが最高に素晴らしい。そして、参加プロデューサーに関しては、やはり “Negro Spiritual” での Flying Lotus は特別な存在感を放っており、Thundercat が奏でるベースラインとともに Danny Brown の持つ狂気を見事に増幅させている。

 Danny Brown 自身は本作を「スタンドアップ・コメディ的なアルバム」と語っているそうであるが、彼の持つユーモアと毒をひとつのアートとして見事に昇華させることができたのは、間違いなく Q-Tip の功績であろう。ATCQ 亡き後、Q-Tip の今後の動きにも注目してみたい。そう思わせてくれる作品だ。


大前至

RELATED

Danny Brown- Atrocity Exhibition Warp/Fool's Gold/ビート

Reviews Amazon

Danny BrownOlive Oil - HARD BODYOILWORKS Rec.

Reviews Amazon