Home > Interviews > interview with Shugo Tokumaru - とにかく聴いていました。CDを集めるのも好きだったし、知らないCDやアーティストがいるのがイヤだった。もっと良いものがあるんじゃないか、「何でないんだろう?」って、そう思って
Shugo Tokumaru Port Entropy P- Vine |
ところで、トクマルシューゴの音楽、とくに今回のアルバムを語るうえでひとつキーワードとされるのは"ファンタジー"だと思うんですね。ファンタジーとしての音楽、メルヘンとしての音楽、そういう風に言われたとき違和感はありますか?
トクマル:ファンタジーやメルヘンという言葉が好きじゃないんですけど、意味合いとしてはぜんぜんアリだと思います。ファンタジーやメルヘンというと、どこか女々しい感覚があって、それが苦手なだけです(笑)。
空想世界......というかね。
トクマル:いちおうパンクから入ったので、そういう女々しいのが苦手なだけで、意味としては当たっていると思います。実際に作っているモノはそういうモノなので、メルヘンという言葉は大嫌いですけど(笑)。
僕もパンクから入ったんですが、女々しいモノが大好きだということにあるときに気がついたことがあって(笑)。
トクマル:ハハハハ、まさにそういう感覚ですね。
リスナーとしてもそういう、ある種の別世界を構築していくような音楽を好んで聴く傾向にあるんですか?
トクマル:んー、あるかもしれないですね。ただ、ホントに無差別に聴くのが好きなんですよね。
日本の音楽からの影響はあるんですか?
トクマル:あると思いますよね。子供の頃から耳にしてきたモノだから、あると思いますね。
コーネリアスなんかもファンタジーだと思うんですけど、シンパシーはありますか? 欧米ではトクマルシューゴとよく比較されていますが。
トクマル:好きですけど、そんなに詳しくはないですが......
聴いてなかった?
トクマル:10代の頃のはホントに洋楽ばかり聴いていて、むしろ日本の音楽は避けていたようなところがあったんです。
コーネリアスがクラウトロックだとしたら、トクマルシューゴはソフト・マシーンというか、カンタベリーかなと思ったんですね。だから似ているようで違っているとも言える。
トクマル:でも、言われてみれば、すごく近い感覚があるのもわかるんです。
ファンタジー、という言葉を敢えて使わしてもらうと、自分自身ではファンタジーを作っているという意識はあるんですか?
トクマル:結果的にそういう面はあると思います。ただ、もっと単純なところで、自分が作りたい音楽を作るっていうところがありましたね。"空想"は後付のところもあるんです。あるはずの音楽......「ホントはあるはずなのになぁ」とずっと思っていた音楽を具現化する、だから"想像"を具現化する作業なんです。
ああ、なるほど。まずは音ありきなんですね。
トクマル:そうですね。
じゃあ、言葉というのは自分のなかでどういう風に考えていますか?
トクマル:僕には伝えたい言葉は何もないんです、メッセージとかね。自分の曲のなかではそれはない。
感情を伝えるというタイプでもないですよね。
トクマル:そうですね。感情を伝えるタイプでもないです。具体的なワードを述べたいというわけでもないんです。ただ、想像のきっかけになればいいかなと思っているんです。僕は夢日記から歌詞を取っているんです。夢日記をずっと付けているんです。
へー。
トクマル:そこから引用するんです。たとえば......テレビというものがあるとしたら、「テレビ」という言葉を使わずに「四角い箱」という言葉を使うとする、そうすると想像の幅が広がるんですよね。もし10年後に同じ作品を聴いたとしたら、想像の幅を広げたほうが違った聴こえ方をすると思うんです。10年後に思う「四角い箱」になるんです。
そういう、別世界を見せてくれる表現に関して、音楽以外で好きなモノはありますか?
トクマル:映画は好きですね。いまはそんなに観ている時間がないけど、昔は1日3本みたいな感じで観ていましたね。
とくに思い入れがあった監督は誰ですか?
トクマル:映画もやはり、とくにひとりという感じじゃないんですよ。もう自分のなかで決めるんですよ。今月はヒッチコックをぜんぶ観るんだ、とか。デヴィッド・リンチをぜんぶ観るとか。リンチにハマったときもあったし、B級アクションにもハマりましたね。けっこう好きでしたね。
ホントに何かひとつって感じじゃないんだね。
トクマル:そうなんですよ。すぐに飽きてしまうんです。
文学作品は?
トクマル:芥川とか......。
ハハハハ、まったく意外だね(笑)。
トクマル:ハハハハ。ひと通り読むんですよ。でも、いつの間にか苦手になってしまった。
童話文学は?
トクマル:ないですよね。
文:野田 努 photo : Hideki Otsuka (2010年4月22日)