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interview with Seiichi Yamamoto

interview with Seiichi Yamamoto

半径500メートルの永遠のうた

――山本精一へのインタヴュー

松村正人    Jul 14,2010 UP

戦前ブルースとかテクノロジーのない時代の音楽、簡素な録音設備を使って道端で録ったような音楽ですが、そういった録音物は何度も聴ける特性がある。リヴァーブがまったくかかってない素の音楽ね。

■音の質感でいえば、Phewさんの新譜『Five Fingers』を聴いて『Playground』と似たものを感じました。

山本:そうね。Phewもそうやね。

■あとジム(・オルーク)のバカラックのトリビュートなんかもそうでしたね。

山本:そうでしょ。そっちの方に行くんでしょうね。

■その共通項は具体的にどういうものでしょう?

山本:アナログな感触ですね。それと、これまでの録音ではあまりよいとされてこなかったフレット・ノイズとかヒビリとか、ベースの音だったらラインで録ったような硬い音色。

■それはいま、新鮮かもしれないですね。

山本:うん、いい。自分のなかで考えられるのは、いい音を聴きすぎて、そうじゃない音を生理的に聴きたくなっているのかなとは思う。単純にこういった感じの質感の音は中毒性があるんですよ。リヴァーブがカットされているというかね。

■よい音の定義ではよく立体感というものがいわれますからね。

山本:それがリヴァーブだね。

■あとサラウンドのような音響も含めてですね。そういった価値観からの変化をたしかに感じました。反動ではあると思うんですが、私が好きなミュージシャンがそういった作品を作るという符号のようなものは感じました。

山本:僕はずっとレコードを聴いてきて、重層的な音像とか広がりとかドリーミーなサウンド、たとえば『ペット・サウンズ』とかビートルズとか、ああいう世界は大好きなんだけど、それと別に好きな世界があるんです。戦前ブルースとかテクノロジーのない時代の音楽、簡素な録音設備を使って道端で録ったような音楽ですが、そういった録音物は何度も聴ける特性がある。リヴァーブがまったくかかってない素の音楽ね。ほとんどCDは売ってしまったけど、ブルース関係とか、Dommuneでも紹介したイングランズ・グローリーとか、そのへんは残してるからね。

■イングランズ・グローリーは私も聴きましたが、よかったですね。

山本:宅録みたいでしょ。とくにベースなんかあんな音では録れないですよ。

■あの感じは......

山本:まあヴェルヴェット・アンダーグラウンドですね。

■そうですね。でもヴェルヴェッツほどノイジーでもなくもっとスムーズですよね。

山本:そうやね。

■陰影があってイギリスらしい音楽ですね。

山本:ニック・ドレイクとか、そういった陰りがあるね。

■あの手のものは日本には似たバンドはないですよね?

山本:どうかなー。しいていえばスターズ。石原(洋)くんがちかいかもしれない。

■そう考えると、『Playground』は石原さんがプロデュースしたゆらゆら帝国と似た質感はあると思いますよ。

山本:そうかもしれない。坂本(慎太郎)くんとか柴山(慎二)くんにも通じるかもしれないですね。

■東京でのレコ発(8月27日、吉祥寺スターパインズ・カフェ)ではベースは入れないんですか?

山本:ベースはないですね。千住とふたりですね。ベースも入れたいけど、あの感じでできるひとがいないですからね。大阪のライヴ(10月10日、梅田シャングリラ)では須原(敬三)に弾いてもらうけど。あのニュアンスは伝えられないね。ベーシストはもっと太い音を好むからね。ベーシストが作る音じゃないからね。ギタリストが弾くベースの音ですよ。あと上手すぎないことね。テクニックには僕、全然興味ないんで。上手いのはあんまり好きじゃない。

■テクニックはむずかしい問題ですからね。

山本:なにをもってテクニックというかですよ。ジャズやろうとしてテクニックがなかったらムリですからね。

■音楽が求めるものを実現するのがテクニックだとすると、こうやって譜面化できない部分が重要な音楽を演奏するには通常のテクニックが問題になるわけではないということですね。

山本:そういうことですね。譜面にできないことしか僕はやりたくないですね。譜面にしようと思ったら書けないですよ。ニュアンスといってもむずかしい。

■やらないと、聴かないと伝わらないですね。

山本:体感しないと意味がないんですよ。

■カオス・ジョッキー(モストの茶谷雅之とのデュオ)の『1』がおなじタイミングで出たのは偶然ですか?

山本:あれは去年の暮れに録ったから相当前ですよ。

■あれもギター・ミュージックとしては挑戦的でしたね。

山本:あれも一発録りですね。

■ギターの音を複数のアンプに振っていますね。

山本:8台使ったかな。

■エフェクトはそれぞれ別の系統をかませているんですか?

山本:そうだったと思う。というかどうやって録ったか忘れた。

■あれもワンテイクですか?

山本:そうやね。GOKの近藤(祥昭)さん特性の、ヘッドフォンにマイクを合体させた録音機材があって、それを人形の頭に装着してターンテーブルに乗せて回転させるんですよ。ブックレットに写真が載ってるけど、回転しながら録音しているから音像が変化するんですよ。あれは近藤さんならではのアイデアですよ。そのマイクの名前はリンダだった。

■山本さんの回りにはおもしろいアイデアをもったエンジニアの方がいますよね。オメガ・サウンドの小谷(哲也)さんもそうですが。

山本:小谷がスタジオをやめてしまったのが、とくに想い出波止場のようなバンドができなくなった要因かもね。アルケミー関係とか、みんないってる。ボアダムスもみんなあそこやったからね。ああいう感じの録音ができなくなったんですよ。あれはでっかいよね。

■小谷さんは想い出波止場のメンバーといってもよかったですね。

山本:プラス・ワンですよ。高校の同級生だったからね。あいつとずっと作ってきた感じだからね。あいつとやれなくなったのは想い出ができなくなったひとつの要因になった。

■スタジオのアイデアで想い出はできていますからね。

山本:アイデアもそうやし、僕らはあれを実現する技術的な知識はないわけだから、そこをサポートするのが彼の役割だったからね。

■音響から逆算して音楽はできていく面もありますし、音響派でなくてもスタジオワークは音楽の重要な部分ですからね。

山本:すごく重要ですよ。僕らがいうアイデアは普通のスタジオでは通らないですよ。ムチャクチャやから。ああいうのをやらせてくれるのは同級生というのもあったし、それをおもしろいと思う感性があったからね。想い出なんて音に関しては半分はあいつの世界ですよ。だから想い出はライヴはできるかもしれないけど、あのバンドは音源ありきだからね。

■ライヴは音源をどう無視するかという...

山本:そういった世界だからね。本当に困っていてね。探しているんですけど、ああいった人間には出会えない。変態やからね。完全な変態やからね。宅録ではできることが限られてしまう。俺らが普段使わない機材を使って録音する醍醐味というかね。そうじゃないとレコーディングする意味もあまりないでしょう。ものすごく高性能なマイク、1台百万くらいするマイクをビニールにくるんで水のなかに入れるとかね(笑)。何百万もするオープン・リールのテープ・デッキを手で回したり止めたりするとかね。たのんでもやらしてくれないですよ。

■水の音はそうしなくても録れますからね。

山本:そうやらないとおもしろくない。強烈に金がかかった設備で極限までアホなことをする。想い出波止場は音のクオリティはすごく高いはずなんですよ。アメリカのロウファイのバンドなんかは音はチープですからね。

2010年6月23日/Pヴァインで

文 : 松村正人(2010年7月14日)

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