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interview with Analogfish

interview with Analogfish

俺は忘れない

──下岡晃、インタヴュー

野田 努    写真:小原泰広    Mar 15,2013 UP

たとえば話戻っちゃうけど、原発反対ってなったときに俺みたいに「反対だから反対だ」って思うひともいれば、「反対だけど、わたしも使ってる立場だから反対って言えない」みたいなひともいる。そういうのから自由になりたいっていうか。


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なるほど。では、最後の質問ですが、アナログフィッシュが理想とする社会っていうのは何なのでしょう?

下岡:(笑)それすごいですね。デカい質問。俺はなんか、もう少し自由でいたいと思うんですよ。いつも。なんか、絡め取られたくないっていうか。

法律に?

下岡:法律は、幸せに暮らすためには俺はある程度ルールは必要だと思うけど、そのルール自体がひとを見ていてほしいというか。ひとを向いていてほしい。

システムのためのルールではなくて、ひとのためのルールになってほしい?

下岡:なってほしいし、さっきの話したプレイグランドをもう少し離れて自由にやりたいと思ってる。自分の思うように。

何から一番自由になりたい? せめて大麻くらい合法にしてくれという自由であるとか。

下岡:(笑)。

真剣に医療に使ってる国だってあるわけだから。

下岡:はい、はい。

あるいは、フェミニズム的な自由であったりとか、同性愛的な自由であったりとか。環境問題的なことだったり。下岡くんが一番気にするところの自由っていうのを教えてほしいなと。

下岡:なんだろう、言うこときかされないっていうか。もう少しきっと明確に言えることがありそうなんだけど。たとえば話戻っちゃうけど、原発反対ってなったときに俺みたいに「反対だから反対だ」って言おうと思うひともいれば、「反対だけど、わたしも使ってる立場だから反対って言えない」みたいなひともいる。そういうのから自由になりたいっていうか。

(笑)それは何からの自由だろうね。

下岡:そういうのが無数に絡みまくって俺たち生きてて、べつにそれでやっていけはするけど、何だろう、あの共犯意識みたいなもので誰も何も言えなくなる感じが。

それは真面目さと言うよりも、誤謬だよね。

下岡:いやいや、それ思ったら言えよっていうところあるじゃないですか。でもその共犯意識も、何も言えなくなるためにあるじゃないかって気も考えようによっちゃするし。あの感じがイヤですね。

集団や規律みたいなものを優先してしまうというか。

下岡:想像力の無さから自由になりたいです。でも「反対だけど、わたしも使ってる立場だから反対って言えない」って人も想像力ってゆうかやさしさがありますよね。でもどう思ってるか表明した上で話した方がいい気がするけど。

じゃあ逆にさ、海外の文化でいいなって思うのはある?

下岡:ああー。たとえば俺はアメリカはすごくイヤなところもあるけど、あのひとたちって資本主義は資本主義で、原発はリスク高いから金出さないとかさ、なんか一貫してるじゃないですか。

でもその代わりにシェール革命っていうのがあるしねー。

下岡:そうそうそう! アメリカはそんな好きじゃないんだけど、そういう一貫してるのはいいと思うな。

いわゆる民主主義ってものに対して?

下岡:そうそう。あと、僕オーストラリアに住んでたけど、あのひとたちのひとのよさっていうか、単純に。変にアメリカを意識して、頑張ってはねつけてる感じとかも好きだな。

日本を見るときに海外から照射するっていうやり方もあるよね。日本のことだから日本にいれば、日本のものだけ追っていれば見えるって言うのも意外と違っていたりしてね。

下岡:俺すごく覚えてるんですけど、日本のひとたちがイラクに入っちゃいけないって言われているのに入って人質になって、「自己責任」って言われたことがあったじゃないですか。自己責任だから、国益を損ねてまで助けることないって。でもフランスかどこかが「彼らは守るために行ったんじゃないか、なんで日本は自己責任とか行ってるんだ」みたいなことを言ったら、もう世論がひっくり返って、「自己責任って言ったやつどいつだよ」みたいな話になったんですよ。なんか、その感じっていうか。最初に自己責任っていうものが出てきちゃう感じとかも、なんでかなって思う。
 でも、なんでかなって言いながら、俺も最初自己責任だろってそのとき思ったんだよね。俺そのときすごく後悔したの、なんか。俺ってなんか、ほんとつまんねーやつだなって思って。もうこんなこと絶対やだぞって思った。でも俺が政治的な音楽をやりたいかっていうと、べつにそんなことしなくてよければそれが一番いいなと思うし。必要があると思うことを、しないのが変だなと思って。

なるほど。なんか言い足りないことってある?

下岡:いや、どうかな......(笑)勘違いされたくないのは基本的にはこの世のなかが好きってことですね。

はははは、アナログフィッシュが理想とする社会とは何か?

下岡:そうですね。俺の理想か。

Jリーグの試合があるときは絶対仕事を休まなきゃならないとか。

櫻木:そうそうそう!

下岡:俺の理想は、将来の不安がないことですね。

安心して老後を過ごせる社会、自分も老年期に入りそうだから、なおさらそう思う(笑)。

下岡:そうですね。はははは! いきなり現実的になっちゃった(笑)。でも、僕社会のこととか、モラルとか倫理とかの話になると、絶対自分の祖母が出てくるんですよ。で、本とか読むよりも、祖母がああだったなって考え方をするほうが腑に落ちて好きで。俺の年だとそういうのができないからな、って思って。たとえば祖母は、いい悪いもすごくはっきりしてるし、で、彼女自身は大正に生まれてて、若いときはいまみたいに女性が自由に生きられたことは絶対ないだろうけど、でも全然不幸じゃなさそうだったし。ずっと土を触ってるとかさ。

おばあちゃんは大正のどのくらいの生まれなの?

下岡:えっと、大正11年の生まれですね。

じゃあ戦争を経験してるんだ。

下岡:経験してる。

けっして順調な人生だったわけじゃないよね。

下岡:じゃないはず。でもあのひとは、いい悪いがはっきり決まってて、そういうのが俺すごく好きだったんだよな。羨ましいと思ったし。

おばあちゃんの世代とは違って、いまの社会は流動化しているから、自分が生まれた場所で孫に話すことが限りなく少なくなっているというか。

下岡:でも、いまみたいな社会を維持していこうとしたときに、やっぱりまたひとが田舎に戻っていくってことはないのかな。

いや、それこそ現実に疎開現象とかさ。

下岡:Uターンみたいなものでひとが入ってるとは聞くけど。それだともたないんだよな、絶対。田舎って。何て言うんだろう。たとえば僕が田舎にいたときに、都会のひとが帰って来てはじめるお店とかって、都会のひとに向けてやってるお店っぽくって。田舎を売りにしたお店っていうか。田舎のひとが必要としてることじゃないって感じがして。いま田舎にひとが行ってるのって、もっと地に足がついてるのかな。もっと地に足着いてたらいいんだけど。

でも、福岡なんかは、311以後、人口が増えちゃって、音楽のシーンが賑やかになっているって二木信が言ってたよ。東京もローカルな感覚を取り戻しているし、なんか変わってきているよね。まあじゃあ今回はそんな感じで。

下岡:じゃあ、次にはもっと言えるように(笑)。

じゃあ、次のアナログフィッシュは『サージェント・ペパーズ~』だね(笑)。

取材:野田 努(2013年3月15日)

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