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interview with Miss Red & The Bug

interview with Miss Red & The Bug

ダンスホールでぶっ飛ばせ

──ミス・レッド&ザ・バグ、インタヴュー

取材:野田努    通訳:Goh Nakada   Sep 26,2018 UP

 ミス・レッドとザ・バグは、トレンディなことをやろうなどという気はさらさらない。彼らはとにかく、キレッキレのライムとビートが欲しいだけ。ダンスホールでぶっ飛ばしたい、限界まで、まずはそれ。
 『K.O.』はそのヴィジュアルもサウンドも、いまどき珍しくアグレッシヴなアルバムだ。もちろんアンダーグラウンドではダンスホールは再評価/再解釈の兆しを見せている。ジャマイカのイキノックスがそうだし、Raimeのような暗黒系のプロデューサーもダンスホールのカセットを出したこともそうだし、ジャングルやグライムにはつねにその成分がミックスされている。
 ザ・バグのダンスホールはまた特殊だ。なにしろ最初はエイフェックス・ツインが関わっている〈Rephlex〉からのリリース。2003年のそのアルバム『Pressure』がダンスホールだった。以来彼はいろんなMCといっしょにラガ、ダブ、テクノの実験を続けている。そのなかにはUKが生んだ素晴らしい女性MC、ウォーリアー・クイーンと一緒にやった一連の12インチやフロウダンとキラー・Pをフィーチャーした「Ganja」のような忘れがたい名作もある。つまり『K.O.』は、彼のダンスホール歴の新たなる栄光の1ページとなるだろう。
 イスラエル出身の、あり得ない早口で、キレッキレの声をしたこのMCのアルバム『K.O.』は、数ヶ月前にリリースされると日本でも話題になった。そして9月の上旬、ベルリンのそれぞれ別の場所にいるミス・レッドことシャロン・スターン、ザ・バグことケヴィン・マーティンとスカイプ上で合流し、21世紀的な取材をした。

イスラエルのヤッファという場所の小さいパーティでDJをしたんだけど、人がパンパンで前日にやったライヴよりも盛り上がった。で、前の方で狂ったように踊っていた赤い髪の姉妹がいて、それがミス・レッドと彼女のお姉さんだった(笑)。そのクレイジーな姉妹のひとりが、俺がDJをしている最中に肩を叩いてきて、「私にもやらせろ」って言ってきたんだ。

まずおふたりの出会いについて、2011年テルアビブでケヴィンがDJをしたときに、ミス・レッドさんに出会ったと聞きましたが、そのときの様子を詳しく教えてください。

ケヴィン・マーティン(以下、KM):テルアビブに行った日に休みがあって、パーティに行った。その前日にバブでライヴをして、その翌日にDJを頼まれた。そのエリアはヤッファという場所で、小さいパーティでDJをしたんだけど、人がパンパンで前日にやったライヴよりもそっちの方が盛り上がっていた。で、前の方で狂ったように踊っていた赤い髪の姉妹がいて、それがミス・レッドと彼女のお姉さんだった(笑)。

シャロン・スターン(以下、SS):ハハハハ。

KM:そのクレイジーな姉妹のひとりが、俺がDJをしている最中に肩を叩いてきて、「私にもやらせろ」って言ってきたんだ。最初は「これは大丈夫か?」という感じで、普通はそういうことがあってもやらせないんだけれど、そのときは「ま、いいか」と思ってマイクを渡した。どうせ自分のライヴというよりもパーティという感じだったから、「まぁいいやちょっとやらせてやろう」みたいな感じでね。実際マイクを持たせてみたら、そのときの凄さにビックリして、すごかったね。いきなりイスラエルの真んなか、自分が知らない場所で、自分が探していたような高めのキーの声を持つ女の子に出会って、フローもバッチリで、ダンスホールみたいなジャマイカン・スタイルのMCで。自分が探し求めているようなMCに偶然出会ったことは自分でもビックリしているよ。しかもドープなだけじゃなくて攻撃的。

攻撃的ですよね。

KM:イスラエルの真んなかで出逢えるとは思っていなかったので、そういう出会いが自分には衝撃的だった。

イスラエルで生まれ育って、どのようにダンスホールや、レゲエというものと出会い、そしてなぜあなたはMCになったのでしょう?

SS:ダンスホールの音楽やスタイルがちょうど私に合っていた。ちょうど私の若い頃、ダンスホールのシーン自体がイスラエルで育っている時期だったし。友だちがサウンドシステムを持っていて、そういう影響もあってダンスホールの音楽を深く掘り下げるようになった。

ダンスホールのどのようなところが魅力だったんでしょうか?

SS:ダンスホールが持っている爆発的なエネルギー。スペースにすごくエネルギーを感じる。ダンスホールのリズムで使う周波数も。スペースといったのはリズムのなかのスペースという意味ではなくて、ダンスホールの雰囲気だったり、雰囲気が作るエネルギーだったり、攻撃的な感じだったり、そういうムードのこと。

イスラエルでダンスホールはポピュラーなものですか? それとも、マイナーでアンダーグラウンドなものなのでしょうか?

SS:いまはかなりポピュラーなポップ・ミュージックとしてイスラエルで盛り上がっているけど、10年前はすごくアンダーグラウンドだった。

2011年にケヴィンとミス・レッドさんが出会って、2015年に最初のアルバムをフリー・ダウンロードでリリースしましたが、それまでの間にはおふたりでどのようなやり取りがあったのですか?

KM:俺はそのときロンドンに住んでいた。「もしもシャロンがロンドンに移ってきたらもっとチャンスがあるし、一緒に何かできる機会が増えると思うんだけど」と彼女に言ったら、彼女はすぐこっちのヨーロッパによく来るようになった。で、彼女とアフター・パーティで出会った日、俺は彼女のことが気に入ったので、翌日一緒にレコーディングをしないかと誘ったんだ。アフター・パーティが終わったのは朝の4時。俺がスタジオを見つけられたのは朝の10時。で、「いまからレコーディングをしようぜ」と言ったら、彼女は全然やる気で、二日酔いでけっこうベロベロだったにも関わらず、無事にちゃんと時間通りに現れたよ。レコーディング自体も上手くいって、これを1回だけで終わりにしないで今後続けていったらもっと良いものができるかもしれないと話した。俺はロンドンに帰ったあと、「もしもシャロンがロンドンやヨーロッパに来るようになればもっとこういうことができるし、君にとっても面白い機会があるよ」と誘ったら、シャロンは「私行く!」という感じで。俺は彼女のそういう情熱がすごく気に入っている。

最初のアルバムはマーク・プリチャードやマムダンスも協力していますが、「こんな素晴らしMCがいるから一緒にやろうぜ」みたいな感じでケヴィンが声をかけて集まってきたんですか?

KM:最初にミックス・テープで使った曲というのは、もともと俺がシャロンにこういうスタイルで、こういう音楽で、こういうディレクションでMCをのっけてやったらすごくフューチャリスティックな新しい感じのものになるんじゃないかみたいなアイデアがあってやった。最初にマーク・プリチャードたちの音をシャロンに聴かせて、これはすごく新しいものができるし、これがやりたいディレクションのひとつなんだという話をした。シャロンもそのコンセプトやアイデアをすごく気に入ったよ。で、そのあと俺がマムダンスや各プロデューサーにコンタクトをとった。俺とミス・レッドがやった“Diss Mi Army”という曲を送って、こういう面白くてヤバいMCがいるから、トラックを使ってもらえるか? ってコンタクトをとったんだ。

ミス・レッドさんから見て、曲であったり、コンセプトであったり、ケヴィンがやっていることのどんなところが魅力的だと思いましたか?

SS:彼の音楽を聴いたことがあったし、さっき言ったミックス・テープみたいなコンセプトを元にプロダクションをスタートできることはめちゃくちゃエキサイティングだった。ダンスホールとはまた違った、新しくてあんまりないようなものをミックスしてやるなんて最高よね。それに、わたしはもともとケヴィンのプロダクションがすごく好きだったから。

今回の『K.O.』を聴いて、ケヴィンはダンスホールが好きなんだなとあらためて思いました。ザ・バグ名義で最初にだしたアルバム『Pressure』(2003年)の頃からすごく一貫したものがあって、それがアップデートされたかたちをやっているようなふうにも思ったのですが、ケヴィンはなぜダンスホールというものにこんなに長く強く惹かれ続けているのですか?

KM:『Pressure』のときは、ダンスホールを使って実験をする感じだった。ダンスホールのリズムを使ってフリーキーなことをするというね。Steely & Clevieが手掛けた“Street Sweeper”という曲があった。聴いたことがないようなリディムで、俺は当時かなりやられた。それが俺のスタート地点。そのリズムが作られたのは90年代だったけれど、超未来的な感じだった。ビートがスプリングする感じ、フロアで踊っている女の子のケツとリズムのスウィングがシンクロするような感じ、そういうちょっとワイルドなところも良かったし、とにかくリズムの未来的なところにやられたね。

“Street Sweeper”がきっかけだったんですね。

KM:そう。最初にダンスホールのリズムを使って実験したのはテクノ・アニマル時代だった。あるライヴの終盤、相方のジャスティンに「自分が最近作っているダンスホールのリズムをかけて良いか」って言って、それをかけたことがあった。テクノ・アニマルのお客さんというのは男ばかりでね、みんな髭が生えていて、フードを被っているような奴らなんだけど、連中はダンスホールのリズムがかかるといっせいにフロアの後ろにいってしまった。で、その代りに彼らのガールフレンドが前の方に来たと(笑)。みんなステージの上にあがって踊りだしたりとかして。ジャマイカン・スタイルというよりは、もっとアグレッシヴな感じだったけど、ダンスホールのスウィングする感じが女の子を躍らせるのにすごく重要ということにそのとき気付いたよ。

素晴らしい発見ですね。

KM:まったくな……で、あのころはDJスカッドという友だちがいて、彼が作った“Total Destruction”というトラックの上に Admiral Baileyのアカペラを載せている曲があった。俺の『Pressure』もノイズだけど、リズムがあって、ジャマイカMCが入っている。このアイデアは最初はその辺からきた。そのときDJスカッドに、「このアイデアを使って他のローカルの黒人のMCとかジャマイカのMCと一緒にやったらどうだ?」と言ったんだけど、彼は乗り気じゃなかった。このアイデアや方向性は面白いから、だったら俺がやったろうと、それで俺のダンスホールがはじまった。

取材:野田努(2018年9月26日)

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