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interview with Róisín Murphy

interview with Róisín Murphy

ロイシン・マーフィーとは何者か?

──UKインディ・ダンスの最高峰が語る、彼女の思想とハウス/テクノへの愛情

質問・序文:河村祐介    通訳:原口美穂 Photo by Nik Pate   Oct 12,2023 UP

シネイド・オコナーは、アイルランドの新しい一面を世界に見せてくれた人だった〔……〕完全にアイコン的存在だった。だから一時期、10代のときは彼女みたいな格好をしていた時期もあった。

■今回の制作でもっとも困難だったことはなんでしょうか?

RM:ソフトウェアの使い方を学ぶことだったと思う。でも少なくとも、私の夫がプロデューサーだから、彼にいろいろ教えてもらえたのは助かった。いまだに使い方をマスターしたわけじゃなくて、ヴォーカルをレコーディングするとか、ハーモニーをレコーディングするといった自分にとって必要なことができるだけだけど、まずは自分だけでそれができるようになることが最優先だった。

■歌詞に関して、今回はアルバムを通してコンセプトなどはありましたか?

RM:歌詞に関しては、私がこれまでリリースしてきた全てのアルバムに共通するコンセプトがある。それはモロコのときから続いているテーマで、個人主義と自由。そして繊細さと降伏する勇気。それは、つねに私の作品に存在しているコンセプト。

■先日リリースされた先行シングルではムーディーマンをリミキサーに迎えていました。彼を起用したのはあなたのアイディアですか?

RM:そう。私がムーディーマンの大ファンだから(笑)。彼はいつだって私の最初の選択肢。

■『Hit Parade』というタイトルは、どのような意味でつけたんでしょうか?

RM:DJコッツェが、「もし脱落せずに僕との作業を続けてくれたら、君を『ヒットパレード』や『トップ・オブ・ザ・ポップス』に出して有名にしてあげるよ」って冗談で言ってたんだけど、もう『ヒットパレード』も『トップ・オブ・ザ・ポップス』もやってないでしょ(笑)? だからその皮肉が面白いって思ってそのタイトルにしたの。「トップ・オブ・ザ・ポップス」、いい番組だったよね。いまはもうあの番組が成り立つほどのポップ・スター自体が存在していない気がする。

■話しは変わりますが、あなたの少し上の世代になるかと思いますが、同じくアイルランド出身のシネイド・オコナーが先日亡くなられました、あなたにとって彼女はインスピレーションを与えてくれるシンガーのひとりでしたか?

RM:もちろん。私は子どもの頃、12歳でアイルランドからイギリスに引っ越したんだけど、私が引っ越したとき、彼女のような存在の人がいてくれたのはとても幸運だった。シネイド・オコナーは、アイルランドの新しい一面を世界に見せてくれた人だったから。そのおかげで、私のようなアイルランド人の子どもたちは生きやすくなったと私は思う。昔、イギリスではアイルランド人に対する人種差別がけっこうあった。アイルランド人は、穴を掘ったり道路を作ったりする建設業者、労働者階級の人たちが多く、そのステレオタイプが強かったから、イギリス人とは別の人種だという扱いを受けていた。でも、ティーンエイジャーだった私にとって、シネイド・オコナーのような人たちがいたおかげで、アイルランド人がただの貧しい人種ではなく、それ以上に大きな展望を持った現代的な人間であり、クールでとても重要な存在なんだという誇りを持つことができた。それは私にとってすごく大切なことだったと思う。美しかったし、彼女は完全にアイコン的存在だった。だから一時期、10代のときは彼女みたいな格好をしていた時期もあった。ショートヘアにしたりなんかして。

シェフィールドの人たちが皆DIYでいろいろなことをやっていて、音楽文化に貢献しているのを見てすごくいいなと思った。マンチェスターやロンドンに比べるとシーンは小さかったけど、もっとDIYでもっと活動的で、特徴があったと思う。

■あなたのキャリアはそのスタートから、DJカルチャー/ダンス・カルチャーとともにあると思うのですが、今回のようなDJ出身のアーティストとのコラボレーションはあなたのクリエイティヴィティ、もしくはアーティストとしてのキャリアになにをもたらしたと思いますか?

RM:私たちは、ある特別な音楽を作ろうとしたわけじゃなくて、ただ木が成長するように今回のアルバムを作った。でもDJカルチャーに関して話すなら、私にとって最も偉大な音楽教育者たちはDJたちだった。あらゆるダンス・ミュージックに精通し、あらゆるジャンルやスタイルをミックスできる人たち。DJパーロットやウィンストン・ヘイゼル(注:〈Warp〉のファースト・リリースとなったフォージマスターズのひとり)のような人たちね。何年もの間、私は彼らのようなDJたちに興味を持っていて、週に3、4回くらい、シェフィールドのいろんなヴェニューに彼らのプレイを見に行っていた。彼らのセットは毎回違っていたし、その度に、私は新しい何か、音楽同士の繋がりを学ばせてもらっていた。彼らは音楽に関する百科事典のような知識を持っていて、のちに私の人生の中に入り、その知識を私と共有してくれた。それは私にとって本当に大きな意味があり、重要なことだった。彼らのおかげで、私のダンス・ミュージックとのつながりは、うわべだけの関係ではなく真の関係に築き上げられていった。私はそういう環境で育ってきたし、その中でDIYであること、自分自身の音楽を自分自身のシチュエーションの中で作ることを学んでいった。

■またモロコが結成されたのも1990年代前半のシェフィールドですよね。当時のシェフィールドのシーンはどのような雰囲気だったのですか?

RM:私本当に素晴らしかった。たくさんの人たちがいて、みな音楽を作り、パーティーをして、スタジオを作っていた。当時、シェフィールドにはデザイナーズ・リパブリックっていう素晴らしいデザイン・スタジオあったし、〈Warp〉もあったし、重要なアンダーグラウンドのダンス・ミュージック・シーンが存在していた。そして世界中の音楽が広がっていた。だから、素晴らしいDJやプロデューサーたちから音楽を学びたければ、シェフィールドを出る必要は全くなかった。様々な活動をしている人たちが周りにたくさんいたから。私はその前マンチェスターに住んでいて、マンチェスターのクラブ・シーンにどっぷり浸かっていたし、レコード屋を回ってレコードを買い漁っていた。でもシェフィールドに引っ越したとき、シェフィールドの人たちがみなDIYでいろいろなことをやっていて、音楽文化に貢献しているのを見てすごくいいなと思った。マンチェスターやロンドンに比べるとシーンは小さかったけど、もっとDIYでもっと活動的で、特徴があったと思う。私にとって新たな扉を開く鍵をくれた場所だと思うし、自分では気づけなかった可能性の存在を教えてくれる場所だった。

■今後の予定を教えてください。

RM:いまのところはアメリカでのツアーと、いくつかライヴをすることになってる。南米にも行くし、ヨーロッパにも行く。イギリスでもライヴがあるし、あと、来年の夏はいくつかフェスティヴァルにも出る予定。前回日本に行ったのは相当前で、マシュー・ハーバートと一緒だった。もう20年くらい前じゃないかしら。私の子どもたちが日本の文化が大好きで。だから、また日本に行けたら嬉しい。

質問・序文:河村祐介(2023年10月12日)

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河村祐介/Yusuke Kawamura河村祐介/Yusuke Kawamura
1981年生まれ。渋谷区幡ヶ谷出身。2004年~2009年『remix』編集部、LIQUIDROOM勤務やふらふらとフリーを経て、2013年より、OTOTOY編集部所属。その他、テクノ、ダブ方面などを中心にプラプラと書いたりしています。監修本に『DUB入門――ルーツからニューウェイヴ、テクノ、ベース・ミュージックへ』(2024年)がある。

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