「Wire」と一致するもの

KEIHIN(ALMADELLA/Maktub) - ele-king

過日、紙のele-kingの企画で三田格さんと倉本諒さんとINDUSTRIAL対談しました。
ダンスミュージック限定の私的INDUSTRIAL10選です。
意外に最近の盤が多くなりました。
どれも思い入れのあるレコードなんで、興味のある方は是非チェックしてみてください。

3月29日(金)ニューパーティー"Maktub"をAIRにて始動致します。
https://www.air-tokyo.com/schedule/1334.html

私的INDUSTRIAL10選


1
Ken Bennet / David J. Wire - An Introduction To The Workplace - Downwards

2
Outline Meets Surgeon - Blueprint 7 - Blueprint Records

3
Deuce - Deuce EP - Ostgut Ton

4
Surgeon - Whose Bad Hands Are These? (Disinvectant Dislocated Finger Mix) - Dynamic Tension

5
The Weakener - What Do You Know About It - Wordsound Records

6
O/V/R - Post-Traumatic Son (Marcel Dettmann Mixes) - Blueprint

7
Ugandan Methods - Beneath The Black Arch - Ancient Methods

8
Aphex Twin - Ventolin - Sire

9
Vex'd - Degenerate - Planet Mu

10
Karenn - Sheworks 001 - Works The Long Nights

僕らがエレグラに行く理由 - ele-king

竹内:エレクトラグライド2012〉、いよいよ開催がせまって参りました。とりあえず、木津さんのお目当ては?

木津:今年で言うと、アンドリュー・ウェザオールとコード9の親父ズかな。

竹内:それは見た目的な話ですか?(笑)

木津:それも込みで(笑)。ウェザオールはヒゲ生やして圧倒的にセクシーになったから......。トゥナイトも超楽しみ。竹内くんは?

竹内:僕はフライング・ロータスです。あとは電気(グルーヴ)。

木津:おお! すごくいいエレグラ参加者だ! ちょっと先にそっちの話からしよう。そもそも、竹内くんはエレグラ初めて?

竹内:初めてです。というか、この規模の会場でダンス音楽を聴くこと自体、初めてです(笑)。

木津:そうか、じゃあ2009年の〈ワープ〉20周年のイベントのときも行ってないってことやんね?

竹内:あのときはさすがに盛り上がりを感じていて、記念コンピレーションを買って家で聴いていました(笑)。LCDの"ダフト・パンク・イズ・プレイング・アット・マイ・ハウス"を地で行っている人間なわけです。

木津:へええ! じゃあ、今年参加するのはどうして?

竹内:カジュアルに言うと、今年からライヴをわりと見るようになって、「ライヴっていいもんだなあ」と素直に思えるようになったから、くらいのものなんですけど(笑)。クラブ音楽って、「この曲がどうしても聴きたい」っていうような目的性からは離れているわけですよね。つながった時間のまとまりを享受するという。それがこの規模になったときにどうなるのか、単純に興味があります。

木津:なるほど。じゃあ僕の話をすると、エレグラには何回も行っておりまして、フジロックのときに発表があったんだけど、すんなり「お! 行こう」という感じで。いま関西に住んでいて、ある程度ダンス・ミュージック好きだったら、オールナイト自体が貴重なので。

竹内:そうなると、多少、政治性を帯びる可能性もある?

木津:うん、今年はやっぱり少しはね。でも、みんな基本的には楽しみたいだけですよ。今年も大阪でも開催するし、みんなすごく楽しみにしていると思う。

竹内:なるほど。僕のことを言うと、「地方の因縁から離れて、誰も自分を知らない空間に逃避したい」というのがあります。暗い(笑)。

木津:いやあ、好き勝手に楽しめばいいんですよ!(笑) 以前も書いたけど、僕のオールナイト体験で、いちばん強烈だったのがオウテカのライヴで。

竹内:あらためて教えてください。

木津:フロントがLFOで最高に盛り上がった後、電気が全部消えて、真っ暗闇のなかであのビートの応酬っていう。

竹内:おお(笑)。

木津:あれは凄まじかった。で、2005年のエレグラでオウテカがやったときは、大きい会場だからそこまで真っ暗にはできないんだけど、彼らのことを全然知らなかったひともけっこう衝撃を受けたと思う。

竹内:なるほど。

木津:この規模のイベントの醍醐味はそういうところなんじゃないかな。

竹内:未知との遭遇ということですか?

木津:うん。〈ソナー〉のときに、スクエアプッシャーが観てみたいという、クラブに行ったことのない2こ下の男子を連れて行ったんだけど、アフリカ・ハイテックをすごく好きになってた。

竹内:いい話ですねー。

木津:電気だけを目当てで来たひとが、コード9にやられる可能性だってあるだろうしね。

竹内:ところで、ゼロ年代の後半にエレグラは沈黙を強いられたわけですよね。内部的な事情はともかく、この期間になにか文化事情的な意味はあると思いますか?

木津:うーん。まあ理由はいろいろあるんだろうけど、ダンス・アクトに大物が目立たなくなったということはあるのかなあ。だって、いつまでもアンダーワールドに頼るのもねえ。

竹内:その話は重要な気がします。当時の現実的でシニカルな若者は、本当はダンス・ミュージックを聴きたくても、たぶん「こんな単純な4/4に乗れるか!」とか思っていたんじゃないでしょうか。まあ、僕の話ですけど(笑)。

木津:ほお。

竹内:そこでいうと、やはりダブステップは大きいのかも。

木津:ダンス・ミュージックの本質がアンダーグラウンドに潜ったってこと?

竹内:快楽が形骸化した一面はあるのでは、みたいな感じです。

木津:なるほど。

竹内:その反発はジューク/フットワークにまでもつれ込むのだと思っていて。ダンス・ミュージックが新しいステップを踏むには、ある種のアングラにならざるを得なかったのかなあ、みたいな。

木津:まあ、〈ワープ〉の第一世代が完全にクラシックになったタイミングでもあるよね。だから、今年はフライング・ロータスがいちばんの顔になっているのはいいことじゃない?

竹内:ですね。そこでいうと、今回フライング・ロータス(〈ワープ〉の新たな顔役)とコード9(〈ハイパーダブ〉代表)が来るのは大きい。ハドソン・モホークとルナイスが組んだトゥナイトもですね。

木津:フォー・テットも最近、かなりフロア・ミュージックになってるしねえ。

竹内:出所はエレクトロニカですもんね。それでいうと、ロータスはヒップホップですよ。やはり、どこかのタイミングでダンスへの再接近があったと。フォー・テットもブリアルとやっていますね。あれは凄まじかった。

木津:うん。わりと最近ライヴ観たときはかなりダンサブルだったよ。とまあ、今年は本当に「ダンス」のあり方が多様でいいと思う。

竹内:ですよね。これまでの話とまったく逆をたどれば、クラブのオリジナル世代からしたらダンスと呼びたくないようなものまで、もしかしたら入っているかもしれない。

木津:そっか。でも、DJクラッシュやDJケンタロウのようなベテランもいるし。

竹内:ですね。年長組で言うと、木津さんはアンドリュー・ウェザオール? ファック・ボタンズのセカンドで名前を聴きましたね。

木津:うん、ソロではロカビリーをやったりするんだけど、DJのときはしっかりハウスのときがけっこう多いかな。あとオールドスクールのエレクトロ。でも、新しい音もけっこうかけるのかなあ。

竹内:どうでしょうかね。僕はやっぱり、電気が観てみたい。ライヴの間くらい、馬鹿になるのが目標なので(笑)。

木津:はっはっは。このラインアップに電気がいるのは、けっこう面白いよね。ある意味、いちばん浮いてる。

竹内:ですよね。それだけ、信頼が厚いと?

木津:そうなのかな。いちばん、変な感じになりそうやけど(笑)。

竹内:楽しみです(笑)。あと、視覚を活かしたアーティストが何組かいますね。

木津:それで言うと、まずはアモン・トビンでしょう! 前作の『アイサム』のときのフィールド・レコーディングのコンセプトを、ライヴで具現化したものになる......らしい。この前のDVD作品もすごく評判だけど、ライヴだとパワー・アップするでしょう。これが観たいので、僕は大阪から幕張に行きます(笑)。映像ものはクリス・カニンガムのときもすごく盛り上がったけど、大きいイベントならではやね。スクエアプッシャーは〈ソナー〉のときにLEDヴィジョンを使ってたんだけど、今回はそれに加えてベースもプレイするとか。

竹内:ほお。それはフィジカルな。

木津:スクエアプッシャー最近、妙に元気やんね。ライヴに燃えてる。

竹内:オービタルは?

木津:僕は、2004年でいったん活動やめるっていうからその年の〈WIRE〉に観に行ったよ! 往復青春18きっぷで(笑)。

竹内:愛だ!(笑)

木津:だから、最近ふつうに再活動しててちょっと納得がいかない(笑)。でも、あの大らかなテクノは大バコに映えるでしょうな。

竹内:他のイベントとの差別化って、どんなところにあるんでしょう?

木津:エレグラは〈ワープ〉周辺がとくに好きなひとに訴えるような作りになっている気がするなー。いち時期、LCDとか!!!とかも出てたんだけど、そういう意味ではインディ・ロック好きにもちょっと寄ってるし。普段クラブ・ミュージックは聴かないけどフライング・ロータスは聴くってひともけっこういるんじゃない?

竹内:ですね。どんなプレイ・セットになるのかなあ。

木津:前回観たときは生ベースがあったりで、かなりグルーヴィーだった。

竹内:アルバムからいくと、また今回は違った雰囲気かもしれないですね。

木津:もうちょっとチルな感じなのかなあ。でも、そのときはドラゴンボールのコスプレで「カメハメハー!」って言ってたよ(笑)。

竹内:うわああ(笑)。

木津:いやいや、でも今回の顔なのは間違いないでしょう!

竹内:でしょう!

木津:でも、2ステージに分かれてこれだけアクトが揃ってると、ほんとにそれぞれ好きに楽しめそうやね。

竹内:ですね。「しばらくクラブから遠ざかってたけど、さすがに今回のエレグラは行くかなあ」なんて声も聞きました。

木津:おお、いいことですなあ。それは特定のアクト目当てで?

竹内:というより、ダンス・ミュージックに再燃の兆しを認めている感じかもしれません。

木津:お! でもたしかにそういう説得力のあるラインアップですよ。

竹内:どんと来いと(笑)! 「僕がエレグラに行った理由」を、みんなでぜひ語り合いましょう!

木津:そうやね。じゃあ、最後にお互いイチオシを挙げときましょうか。僕はウェザオールとコード9......としつこく言いたいところだけど、アモン・トビンとTNGHTで。

竹内:僕はいろいろあるけど、フォー・テットで。ゼロ年代インディ以降の代表格が見つけたダンス・ミュージックを生で聴いてみたい。彼のキャリアの軌跡って、いまの若いリスナーが通った道ともかなり近い気がするんですよね。

木津:うん、フォー・テットのいまのモードは、シーンのモードだと思うよ。それはともかく、飲まされすぎないようにしないと、僕はトイレが近いので......。〈ソナー〉のときも、ひたすら飲まされ続けたからなあー。

竹内:ははは、今回は各自楽しみましょう(笑)。

木津:そうやね(笑)。

竹内:願わくは、レポのことなんて気にしないで......。馬鹿になりましょう!(笑)


RELATED

Orbital / Wonky

2000年のエレクトラグライドでヘッドライナーを、翌年のフジロックでもホワイト・ステージの大トリをつとめるなど日本でも絶大な支持を得てきた「テクノ四天王」オービタル。2004年の『Blue Album』発表時に活動休止を宣言して以降、シーンへのカム・バック作となる2012年の通算8作目。

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TNGHT / TNGHT

〈ワープ〉の新世代を象徴するアンファン・テリブル、ハドソン・モホークが盟友ルナイスと組んだコラボレーション・プロジェクト、トゥナイトの5曲入りEP。それぞれのレーベル〈ワープ〉と〈ラッキーミー〉からリリースされた2012年作だ。ミニマルかつエクストリームなウォンキー良盤。

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Flying Lotus / Until the Quiet Comes

『コズモグランマ』から2年。マシューデイヴィッドやマーティン、ライアット、ジェレマイア・ジェイなど、〈ブレインフィーダー〉レーベルにおける活動もますます興味深いものとなっているなかで発表され、自身が「神秘的事象、夢、眠り、子守唄のコラージュ」と呼ぶ本年重要作。

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Squarepusher / Ufabulum

〈ワープ〉を代表し、エレクトロニック・ミュージックにとどまらず広範な影響を与えてきたトム・ジェンキンソンが「最近あらためてピュアなエレクトロニック・ミュージックのことを考え始めたんだ。とてもメロディックで、とても攻撃的なものをね」と語る2012年作。

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Four Tet / Pink

ポストロックを代表するフリッジのギタリストであり、最近ではフォークトロニカとダンス・ミュージックとを鮮やかに縫い合わせているかに見えるフォー・テットことキエラン・ヘブデンの最新作。60分を超える大作である反面、フロアに映えるようなダンス・ナンバーも増えている。

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Amon Tobin / ISAM

フィールド・レコーディングを駆使して構築され、気鋭の若手アーティスト、テッサ・ファーマーとのコラボレーションによって完成したキャリア集大成とも言える大作。自然や生命の繊細さと大胆さを洗練されたテクニックと鋭敏な感性でとらえた美しくも挑戦的な2011年作。

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The Asphodells(Andrew Weatherall) / Ruled By Passion, Destroyed By Lust

25年にわたって第一線での存在感を保ちつづけてきたプロデューサー、アンドリュー・ウェザオールの最新プロジェクト、ジ・アスフォデルスのデビュー作。ヨーロッパで頭角を現し、名門クラブでのDJプレイで活躍するティモシー・J・フェアプレイとのコンビで編まれたエレクトロニック回帰作。

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Kode9 & The Spaceape / Memories of The Future

ブリアルの発掘を機に世界的なインディ・レーベルへと成長し、狭義のダブステップの境界を超えて刺激的な作品を発掘しつづけている〈ハイパーダブ〉の主宰者、コード9。 本作はブリアルの処女作と並ぶ、レーベル最重要作品のひとつ。

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https://www.electraglide.info/

WIRE - ele-king

 ワイアーは、UKにおけるポスト・パンクの最高のバンドである。
 コリン・ニューマンとブルース・ギルバートを中心と彼らが残した最初の3枚のアルバムは、パンク・ロックがいかにロックのクリシェを捨てて音楽的に発展したのかを示す、優れたドキュメントとなっている。PiLはダブとクラウトロックを参照したが、彼らは独自の方法論で、彼らのぱっと聴いたところシンプルだが、よく深く聴いてみると機械の内部のように細かいスタイルを発明した。コリン・ニューマンとブルース・ギルバートは、それぞれソロ活動としても身を見張る成果を残している。
 惜しくもブルース・ギルバートは脱退したが、2011年の最新アルバム『Red Barked Tree』では、その健在ぶりを証明している。そして、同年7月に開催された代官山UNITの7周年イヴェントにもメイン・ゲストとして出演、新旧織り交ぜたセットを披露し喝采を博した。
 なお、対バンには、今年の5月に約四半世紀振りの復活を遂げ大きな話題となったEP-4の佐藤薫とBANANA-UGによるエレクトロニクス・ノイズ・ユニット、EP-4 unit3 の出演も決定!
 おまえ誰だ! ワイヤー!

■2012/11/12(MON)
代官山UNIT
OPEN 18:30 START 19:30
ADVANCE ¥3,500(DRINK 別)

DAIKANYAMA UNIT EVENT INFORMATION
MORE INFORMATION : UNIT/TEL 03-5459-8630 www.unit-tokyo.com
ADVANCE TICKETS 一般発売 : 10/20 (SAT) 10:00~
LAWSON TICKET(L:77341), e+, 代官山UNIT 店頭にて発売

WIRE
guest : EP-4 unit3


■大阪公演 11/14(木)
東心斎橋LIVE SPACE CONPASS

” EXTRA III ” supported by neutralnation - WIRE (UK) JAPAN TOUR -

OPEN 19:00/START 19:30 前売¥3,500(ドリンク代別途)
info. 06-6243-1666 (CONPASS


■"NEUTRALNATION 2012" 11/11(日)
新木場STUDIO COAST

出演アーティスト:WIRE (UK)、DE DE MOUSE + Drumrolls、toe、mouse on the keys、LITE、にせんねんもんだい、ペトロールズ、eli walks、UHNELLYS、jemapur、Quarta330 and more

OPEN 12:00 START 13:00 前売¥5,000 円
more info : https://neutralnation.net/

新ジャンル用語解説 - ele-king

問題:以下のアーティストをジャンル別に分けよ。ジュリア・ホルター、アイコニカ、アクトレス、ハイプ・ウィリアムス、ダニエル・ロパティン、ジェームス、フェラーロ、ジャム・シティ、ワイルド・ナッシング。
答え:無理。理由としては、ジュリア・ホルターをひとり見ても、シンセ・ポップ、アンビエント、ノイズ、いろいろある。ダブステップ系に括られるアイコニカにしても、フットワーク、エレクトロ......。ハイプ・ウィリアムスやダニエル・ロパティンにいたっては、スクリュー、ニューエイジ、ダブ、シンセ・ポップ、ジャム・シティはUKガラージ、サイケデリック、ドローン、ワイルド・ナッシングはシューゲイズ、ドリーム・ポップ......(以下、略)。

 1980年代後半から1990年代にかけてのジャンル用語を振り返ってみる。シカゴ・ハウス、デトロイト・テクノ、ガラージ、アシッド・ハウス......このあたりからジャンル用語は噴出する。アンビエント・ハウス、ガバ・ハウス、ハード・ハウス(NYのコマーシャル・ハウス)、ヒップ・ハウス(ラップ入りのハウス)、そして舞台をUKに移すと、バレアリック・ハウス、アシッド・ジャズ、プログレッシヴ・ハウス(トランスとほぼ同義)、テクノ、ハード・テクノ、ジャーマン・トランス、ゴア・トランス、インテリジェント・テクノ(大いなる失敗作)、ハード・ミニマル、ミニマル・ダブ、トライバル・ハウス、ディープ・ハウス、そして1994年当時もっとも問題視されたトリップ・ホップ(多くのアーティストがこう呼ばれることを嫌悪した)、そして、さらに多くの批判を促した用語としてIDM(レイヴで踊っている奴はバカという視点に基づく)がある。
 さらにまた、ハンドバッグ・ハウス(その名の通り、ちゃらいハウス)、ジャングル、ドラムンベース、ダークステップ、2ステップ、ビッグビート、ドリルンベース(駄洒落のきいたネーミングだった)、ブレイクコア、ポスト・ロック、グリッチ、アブストラクト・ヒップホップ、ブロークンビーツ......、当時はこうした用語解説を依頼されたものだった。
 ゼロ年代のダブステップ以降もまた、こうしたジャンル用語シーンが活性化している。ことインターネット・ユーザーにとっては、これらは知識というよりもある種のシニカルな情報との戯れでもある。

 たとえば、「hypnagogic(ヒプナゴジック)」、これは2009年の『Wire』誌が言い出しっぺのタームで、ポカホーンティッド、エメラルズ、マーク・マッガイア、ダックテイル、ジェームス・フェラーロなどがその例として挙げられている。おわかりのように、ほぼ同じときを同じくして出てきたある世代の共通的な感覚を『Wire』なりに言い表したタームだ(要するに、正確に言えば、感覚を指す用語で、ジャンル名ではない)。

 ちなみに『Wire』は、「ポスト・ロック」というタームを1990年代後半に生んでいる。これが日本では長いあいだ誤用されている。
 そもそも「ポスト・ロック」とは、トータス周辺に象徴される音で、つまり主義主張を訴えていたロック文化とはまったく別の(まさにポストな)方向性を持つ音楽を意味する。さらに言えばジャズやクラウトロック、さもなければ現代音楽にその源泉を求めている。ゆえにモグワイやシガー・ロス、65デイズ・オブ・スタティックスのような、歌手がいないインストというだけで、基本やってる音はロックな連中にまで「ポスト」を冠するのは間違っている。
 フリー・フォークも同じように、かなり曖昧に日本の音楽ライター界では使われている。これも『Wire』が出自で、この場合の「フリー」とは、フリー・ジャズの「フリー(即興)」に近いニュアンスだった。ゆえにサン・バーンド・ハンド・オブ・ザ・マンのような即興性の高い音楽はフリー・フォークと呼べるが、デヴェンドラ・ヴァンハートは昔ながらのフォークであり、フリー・フォークではない。
 こうした誤用はときには「ま、どうでもいいか」で済ませるが、ときには済ませられないこともある。音楽としての「フリー」を目指しているバンドにとってフォーク(アコースティックな響き程度の理由から)と呼ばれることは、ひとつの解釈という話しではなく、誤謬そのものだ。旧来のフォーク・スタイルに「フリー」が冠せられるのもあんまりである。

 music is music........あったり前だが、音楽を楽しんでいるときにジャンル用語を気にしているリスナーがいると思ってはいない。それでも僕がこうしたジャンル用語をわりと面白がるのは、それら情報のカオスから生まれたタームが、音楽を語る言語の停滞を阻止する役目を果たし、新しい問題提起へと連続させるからだろう。単純な話、これは人の好奇心を煽る。昔はよく、商売熱心なレコード会社やレコー店もジャンル用語をでっちあげたものだったが......(デス・テクノとか、サイバー・トランスとか、あるいはレイヴという言葉さえもジュリアナ東京に差し替えたりもしたが、ことの善し悪しはともかく、それによって売り上げが伸びたのは事実)。

 たしかに新ジャンル用語はときにリスナーを困惑させる。IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)というジャンル名が出てきたとき、「何がインテリジェントだ」と、最初は抵抗があった。が、もうどうでもいいやと思って使っている。IDMという用語の普及とともに、その音楽性も急速に拡大したという事実を前に、「それで通じるなら、ま、いいか」と、「便宜上」使うことにした。IDMをやっていれば知的だとは決して思っていない。 
 最近では、「chillwave」もやっかいなタームだった。「chillwave」はブロガー発の新ジャンル用語として定着した最初の例となったわけだが、その契機となったウォッシュト・アウトやトロ・イ・モアの初期音源(つまり、ネタありきの音楽)からはずいぶん離れたところでも使われている。
 「chillwave」とは、いわば素人の作ったタームだ。それはデジタル文化における情報発信の自由がもたらした最初の結実だ。音楽を楽しんでいる素人の作ったブログから生まれた造語と、レーベルから送られてくる情報のコピー&ペーストで構成される音楽情報サイトと、どちらが文化的に有益だろうか。いずれにせよ、それがどんなに陳腐に見えようが、今日の新ジャンル用語の氾濫は、アンダーグラウンド・シーンの活況を反映しているのである。

 以下、興味がある人のみ参考にしてください。そして、間違い/追加項目があったら教えてください。

screw:わかりやすく言えば、ウルトラマンに出てくるゼットン星人の声だが......音楽の世界では、いまは亡きヒューストンのDJスクリューの編み出した技から来ている。ゆえにジャンル用語ではなく、グリッチと同じように、テクニック用語である。ピッチを落としてミキシングするだけだが、独特の幻覚性が得られることから、ゼロ年代半ば以降から現在にかけて、いろんなシーンで流行っている。オリジナル・チルウェイヴとクラウド・ラップがスクリュー・リヴァイヴァルをうながしている。



footwork(juke):シカゴの速くてくどい、ハードなダンス。チョップとドラムマシン。強いコミュニティ意識から生まれたジャンル用語。DJネイト、DJロック、DJダイヤモンド、DJラシャド等々。彼らの汗は、欧州や日本へも飛び火している。また、こうした固有の地域から生まれたジャンルには、他にもメンフィスの「crunk」、南アフリカの「shangaan electro」、ディプロが見つけた「new orleans bounce」などがある。



UK funky:グライムのハウス化。ソカのセンスが混じっている。ロンドン在住の友人によれば、ほぼ20歳以下限定のノリだとか。

brostep(filthstep):レイヴ仕様のダブステップ。もともとはダブステップもブローステップも同じ場所にいたはずで、こうした識別こそジャンル用語のネガティヴな作用だと言える。ハンドバッグ・ハウスよりはマシだが......。

dream pop:ドリーミーな宅録音楽。チルウェイヴ、クラウドラップ、ヴェイパーウェイヴと違って、盗用すなわちサンプリング主体ではない。ビーチハウス、ピュリティ・リングス、ナイト・ジュウェル、ツイン・シスターほか多数。

cloud rap:ドリーミーかつヒプナゴジックなラップとトラックで、クラウド・ストレージのような共有ファイルからがんがんに音源をダウンロードして作っている、サウンド的にもクラウド(雲のよう)なラップ。リル・B(本人は自分の音楽を「based」と呼んでいる)、メイン・アトラキオンズ、クラムス・カジノ、エイサップ・ロッキー、オッド・フューチャーなどなど。また、「trill wave」という言い方もあって、クラウド・ラップのラップがあるかないかという説明がされている。ストーナー・ラップとも親和性が高いが、別に大麻を主題としているわけではない。



dark wave:コールド・ケイヴのような、ゴシック調のシンセ・ポップ・リヴァイヴァル。ちなみにコクトー・ツインズ系のような気体のような音、マジー・スターのようなウィスパー系を、欧米では、エーテル系(ether、英語読みではイーサ)と呼んでいる。

witch house:冗談めいた、ちょっと痛いジャンル名のひとつ。簡単に言えばゴシックなハウス。ブリアルの影響下で生まれ、スクリューを取り入れている。oOoOOが有名で、ほかにもセーラムとか、†‡†とか、恐怖モノですな。



vaporwave:クラウド・ラップのように、ネットからダウンロードした音源の再利用によって作られているモダン・サンプリング・ミュージックの第三の波。グローバル資本主義への批評性、もしくは抵抗とも解釈されている。ひとつの文化現象としても興味深い。情報デスクVIRTUAL 、インターネット・クラブ、マッキントッシュ・プラス等々。



Burial follower:これは筆者が勝手に言っている。ジャンル名ではなく、ひとつの傾向。悲しく、ダークで、ヴォーカルを加工するところに特徴を持っている。ホーリー・アザー、バラム・アカブ、マウント・キンビー、ダークスターなどなど。クラムス・カジノも、共通の感覚を有している。

drone folk:ギターでドローンしながら歌うことだが、なんとなく雰囲気を指し示す、曖昧なターム。そもそもフォークとは、ポップスと比較して言葉表現が自由なことから、詩的な言語を使えるジャンルとして発展している。ドローン・フォークは、必ずしも一音で構成されているわけではないし、言葉の詩学ももたない。ときにポポル・ヴーといったドイツのコズミックの系譜とも関連づけられる。グルーパー、モーション・シックネス・オブ・タイム・トラヴェルなどなど。



haunted R&B:ハウ・トゥ・ドレス・ウェルをはじめ......ジャンル名というよりは今日顕在化している感覚。ウィッチ・ハウスと同じようなものか。サッド・コアとかね。



dark minimalism:シャックルトンの絶大な影響力によって拡大している。雨後の竹の子のようにこれからも出てきそうな気配。

dark industrial:デムダイク・ステアやレイミ、ブラッケスト・エヴァー・ブラックのようなインダストリアル・リヴァイヴァル。





 一時期は「post dubstep」とはなんだったのかとよく訊かれたが、僕なりに説明すれば、ブリアル以降のハウスのBPMに合わせたベース・ミュージックで、ピアソン・サウンドやジョイ・オービソンなどその一部はテクノやハウスに回帰しているから、その過程だったともいまなら言えるか。
 また、〈ワープ〉の若手としてはダントツに才能がありそうなハドソン・モホークは、少し前は「wonky」などと呼ばれていたが、いまでは死語となりつつある。

きのこ帝国 presents「退屈しのぎ vol.3」 - ele-king

 この晩、きのこ帝国は最初に新曲を3曲演奏した。その3曲とも、前作からの飛躍があった。
 1曲目は、クラウトロック(大げさに言えば、オウガ・ユー・アスホール)をバックにボス・ザ・MCがラップしているような……といってしまうと本当に乱暴な表現だが、BMP125ぐらいのピッチの曲で佐藤はラップもどきを披露した。早口で何を言ってるかわからないが、それが前向きさを表していることはわかる。
 あとで訊いたら初めてのライヴ演奏だったという。それにしちゃあ、鮮烈なインパクトがあった。佐藤のラップ・ミュージックへの関心の高さを具体化した最初の曲でもあった。きのこ帝国がバンドとしていまどんどん動いていることがうかがえる。初演ということもあってドラミングは先走り、ピッチは速まってしまったそうだが、逆に言えば意味がわからないほどのファスト・ラップの最後で唯一聞き取れる「生きている」という言葉が、するどく胸を射貫いた。悪いことは言わない。この曲はシングルにして発表するべきだ。12インチ作りましょうよ! 良いリミキサーは日本にはたくさんいる。何よりも、この曲を必要としているリスナーはたくさんいます!
 「退屈しのぎ」とは、きのこ帝国の代表曲だが、彼らのオーガナイズするイヴェント名でもある、ということをその晩僕は知った。その晩は、編集部で橋元の二次元話に付き合わされたあと、JET SETのM君の四次元話にハマってしまったおかげで、4つ出演したバンドのうちのふたつ、きのこ帝国をのぞくとひとつしか見れなかった。そのひとつ、大阪からやって来た吉野というイントゥルメンタル・ロック・バンドは、最初から見ることができた。しかし、吉野とは……佐藤と匹敵するほど検索不能なネーミングだ。吉野は、ギター、ベース、ドラマーの3人組で、エレクトロニクスを用いた導入からモグワイめいたダークなギター・サウンドへと巧妙に展開して、ライヴをはじめる。ポテンシャルの高さを感じさせる演奏で、最後のチルなフィーリングも良かった。まだ非常に若いバンドだが、ビートに磨きがかかれば、より多くの注目を集めることになるだろう。がんばってくれ。しかし、大阪人のくせに東京のラーメンが美味いと言ってはいけないよ。


きのこ帝国の物販で働く菊地君。筆者はドラマーのコン君のデザインしたピックを1枚購入。

 下北沢ERAは、100人も入ればパンパンの小さいライヴ・ハウスだったが、満員だった。先述したように、きのこ帝国は、ラップの曲のあとにふたつ新曲を披露した。その2曲も良かったことは覚えているが、最初の曲のインパクトが強すぎてどんな曲だったか忘れた。バンドに音の隙間が生まれ、それによって音の空間が広がってた。それ以外のことは忘れた。こういうときは、明け方の5時でも、マニェエル・ゲッチングのライヴでメモを取っている菊地祐樹君を見習うべきなんだろう。菊地君は、物販で働きながら、お姉さんと妹さんもライヴに呼んでいた。3人とも顔が似ているどころか、誰が年上で誰が年下かわからない。しかもお母さんが僕と同じ歳という……なんということだ!

 きのこ帝国の演奏が終わると、大きな拍手とアンコール。アンコールに出てきたあーちゃんは慣れないMCを続け、ジョイ・ディヴィジョンの『アンノウン・プレジャー』のTシャツを着た相変わらず佐藤はクールに構えている。最後の曲って“夜が明けたら”だっけ? “退屈しのぎ”だっけ? 忘れた。が、細かいことはいいだろう。良いライヴだった。翌日は「WIREに行くんです」と嬉しそうに喋っている菊地君をその場において、僕は12時20分過ぎの小田急線に乗った。

KABUTO (LAIR/CABARET) - ele-king

SCHEDULE
8/24 @grassroots
8/30 minimood label night@ oath
9/1 barrier@module
9/22 ERR@だるま山キャンプ場
9/28 @Cave246
9/29 @Eleven
10/6 CABARET feat Daniel bell@UNIT/SALOON

https://twitter.com/Kabutooo

2012.8.CHART


1
MORITZ VON OSWALD TRIO - FETCH - Honest Jons

2
BRETT DANCER - EUPHONIC MOODS EP - TRACKMODE

3
MAKAM - DREAMS OF TOMORROW - SUSHITECH

4
DANIEL KYO - HYPNOTIZED (Kelvin K Remix) -LOST MY DOG

5
DEWALTA & MIKE SHANNON - THE ADVENTURES OF SAINT JACK DE SMOOVE - MEANDER

6
OPUSWERK - WIRED CONNECTIONS - PLAK

7
ANDRES ZACCO - POMPAK - ESPERANZA

8
CHRIS MITCHELL - PHRENETIC EP - Vanguard Sound

9
J ANTONI - NO SLEEP (Thoms Krome mix) - UES

10
GRIMES ADHESIF - pa'am shlishit glida - naif

interview with Kim Doo Soo - ele-king

 空しく消えるその美よ
 咲いてまた散る
 花と同じように
 朝霧
 夕焼け......
 また運のない日が過ぎ 
 多くの苦悩と彷徨も
 忘れたかのように消え去るだろう
"道なき時の歌"


キム・ドゥス - 10 Days Butterfly 10日間の蝶
PSFレコード

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キム・ドゥス - Evening River 夕暮れの川
PSFレコード/Blackest Rainbow

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 韓国のソウルの街には、東京とは異なる雑然さ、猥雑さ、アッパーな気風がある。僕が韓国の街を散策したのは2002年のワールドカップ期間中のこと。滞在中、CDショップにも足を運んだ。勘で選んだ現地の音楽を数枚買って聴いてはみたが、あの頃はどれもがJ-POPの劣化版にしか思えなかった。しかしそれがいまではどうだ、おそらくは血のにじむような研究と努力によってK-POPは世界に認知されている。グライムスでさえも少女時代のPVを面白がっている。しかし......我々はもっとも近い外国である韓国について多くを知らない。
 
 2006年、アメリカの〈20|20|20〉レーベルから、『インターナショナル・サッド・ヒッツ(国際的な哀しいヒット曲集)』というコンピレーションがリリースされている。ギャラクシー500のデーモン&ナオミが主宰するレーベルからのリリースということもあって欧米では話題になっている。収録されているのは三上寛、友川かずき、トルコのFikret Kizilo、そして韓国のキム・ドゥス。彼らは「言葉」の人だが、それは「音」としての魅力を発見されて、世界に伝播している。
 キム・ドゥスは、韓国のアシッド・フォークとして、近年になって注目を集めている。ショービジネス界のなかでしごかれたK-POPとはまったく別の韓国のシーンを代表するシンガーだ。本サイトでの三上寛のインタヴューでも語られている。
 キム・ドゥスがデビューしたのは1986年、名前は『土地』という小説に出てくる悪漢"キム・ドゥス"から取られている。ファースト・アルバム『シオリッキル』で歌われている自由思想は、思想に厳しい当時の韓国政府から圧力をかけられたほどのものだったというが、キム・ドゥスの運命を変えたのは1991年に発表した『ボヘミアン』だった。あるリスナーがこのタイトル曲に歌われている人生の虚無感を引き金に自殺するという事件が起きる。これを受け止めるかたちでキム・ドゥスは音楽を捨て、山に籠もり、電気のない生活を10年も送ったという。2001年、アルバム『自由魂』でカムバックしたキム・ドゥスは、韓国国内の音楽シーンで賛辞ともに迎えられ、以来、地道な活動を続けている。

 『FOUND』や『bling』といったスタイル雑誌も刊行され、華やかなポップ・カルチャーが拡大している韓国において、キム・ドゥスの厭世的な音楽はいまでも異端な輝きを発しているように思える。ティム・バックリーをさらに瞑想的にしたような『10日間の蝶』や『夕暮れの川』からは、K-POPからは見えない風景が広がっている。言葉がわからずとも、彼の深い漂泊の思想ないしはロマン主義、波瀾万丈な彼の人生から湧きあがるエモーションは充分に伝わってくる。ヘルマン・ヘッセが人生のベルトコンベアから落ちた人=敗残者たちの流浪における美を描いたように、キム・ドゥスもさすらいのなかに人生の本質を見いだしているのだろう。

 地平線の上に明星が輝くとき
 私はまた放浪の道に立っている
"彷徨う人のために"

 去る7月、来日していたキム・ドゥスに明大前のカフェで話を聞いた。帰国を直前にしたあわただしいなか、筆者の的はずれな質問にも丁寧に答えてくれた。

歌詞を禁止されたりしましたが、そういったことに哀しみは感じませんでした。政治的な弾圧によって音楽的な方向性を変えたこともありませんし、ですから韓国の歴史と自分の音楽の哀しみとは関係はありませんね。

Kim Doo Sooさんの音楽は、日本では口コミで広がっていて、ディスクユニオンをはじめとする都内の輸入盤店でも、4~5年前から韓国のアシッド・フォークとして売られています。

Kim:私は自分のスタイルを貫いているだけで、ジャンルにはあまりこだわりはありません。どんな風にみんなから呼ばれても、あまり気にしません。それは評論家の役割で、私にはあまり関係はありませんね。私はミュージシャンですから。

アシッド・フォークと呼ばれることに違和感はありますか?

Kim:ないです。

僕はKimさんの音楽を聴いて、美しさと哀しさを強く感じました。『10 Days Butterfly』の1曲目でも、歌詞が自分のなかの哀しみのことを書かれていますよね。その哀しみっていうものは、個人的な哀しみっていうよりも、物凄く大きな、Kimさんがこれまで受け取ってこられた歴史的な哀しみという風に捉えてよろしいんでしょうか?

Kim:すべての作品は作った人間の人生が関係するものですので、(おっしゃるような)わたしの音楽の哀しみというものは、わたしの人生と関係があるものでしょう。

それは韓国という国の歴史と関係があるのでしょうか?

Kim:それはないですね。人間の本質的なもので、韓国の歴史とは関係ありません。

でもたとえばKimさんは、光州事件を経験されていますよね。非常に政治的な意味での弾圧を経験なさっているわけですけれども、それは音楽とはどういった関係にあるのでしょうか?

Kim:たしかに歌詞を禁止されたりしましたが、そういったことに哀しみは感じませんでした。それ(政治的な弾圧)によって音楽的な方向性を変えたこともありませんし、ですから韓国の歴史と自分の音楽の哀しみとは関係はありませんね。さっき哀しみとおっしゃったんですけれども、それは政治とは全然関係ありません。自分は政治家でもないですし。

わかりました。では「哀しみ」はひとまず置いておいて、Kimさんのバイオグラフィー的なことを大雑把に聞きたいんですけれども。光州事件っていうのは、若い韓国の学生たちが韓国の民主化を訴えた事件でしたが、Kimさんもその渦中にいながら音楽でもって何か主張していたんでしょうか?

Kim:そのとき衝撃はあったのですが、私は政治にはあまり関心がなく、自然や人間に関心がありました。韓国には民主化を掲げるような歌もありましたが、私はそのような歌を歌う人間ではなかったです。バガボンドと言いますか、放浪者のような感じでした。

Kim Doo Sooというのは、韓国の有名な小説の悪役から取ったということなのですが、それはどのような意図だったのでしょうか?

Kim:家では歌を歌うことを反対されていましたので、そのとき芸名が必要だったんです。本名を使えなかったのです。それで、そのとき読んでいた小説が有名な『土地』だったのです。その悪役がKim Doo Sooでした。そのとき特別な意図はなく、いっしょに住んでいた兄と酒を飲みながら、「このキャラクターのなかで誰がいいかなー」と話してたまたま選んだのがKim Doo Sooでした。

(笑)なるほど。たとえば日本では、それこそKimさんぐらいの世代のひとたちは、アメリカとかイギリスとか、ビートルズとかボブ・ディランとか、そういった欧米のロックやフォークを聴いて、そしてその自由な精神に影響を受けて、それを自分たちの上の世代に向けて表現しました。その時代、韓国では、どうでしたか?

Kim:私は特定の個人やバンドに没頭したことはないんですけれども、70年代のアメリカのフォークには影響を受けました。

ソウルには、その手の音楽を買えるレコード店もあったんですよね。

Kim:もちろん買うことはできました。

ドラッグ・カルチャーとかサイケデリック・カルチャーは、韓国ではどうだったんですか?

Kim:韓国も一時期、大麻で騒動というのがありましたよ。有名な芸能人が刑務所に入ったこともありましたし、いまも問題になっています。

その辺は日本と似ているかもしれませんね。日本もすごく厳しいので。韓国には、アンダーグラウンド文化といいますか、三上寛さんのように(インディペンデントで)やってらっしゃる方っていうのはたくさんいらっしゃるんですか?

Kim:以前はたくさんいましたけど、いまはあまりいなくなりました。ただ、インディ・バンドは増えつつあります。テレビには出ずに、クラブ(ライヴハウス)での活動を活発にするバンドがいま現れています。それはいい傾向だと思っています。

なるほど。Kimさんのこれまで歩んできた人生を調べますと、"ボヘミアン"という曲がすごく影響力を持っていて、YouTubeなんかにも上がっていますけれども。それを聴いたひとが自殺してしまったという事件が起きてしまったということがよく書かれているのですが、その件について話していただいてよろしいでしょうか。どのようなことが起きたのかということを。

Kim:とても悲しいことが起きました。それを聞いて私はすごくショックだったのです。自分の音楽を聴いて、ひとが平穏になったり癒されたりすることを望んでいたのに、自殺したという噂を聞いて衝撃を受け、それから10年くらい活動を一切しませんでした。

具体的にはどのようなことを歌った歌なのでしょうか?

Kim:放浪について、です。これはリメイクで、オリジナルは他のアルバムにあります。それはやはり、むなしくなるような(虚無感のある)雰囲気でした。詞も違いました。だから詞も書き直して、新しく作りました。

そうだったんですか。オリジナルの"ボヘミアン"は何年に書かれたんですか?

Kim:89年に作って90年に発表しました。

Kimさんご自身が一番初めにアルバムを出したのは何年なんですか? 86年デビューと書いてありますが、それは自主制作で出したのですか、それとも韓国のレコード会社から出したのですか?

Kim:メジャー・レーベルから出しました。

日本でも表現の自由と言いながら、歌ってはいけない言葉があったり実は自由がないんですけれども、韓国でも、たとえば政治的な歌は歌えないとか、そういう話を聞いたことがありますけれども、その辺りの韓国の音楽シーンの表現の問題というものをどのように考えていらっしゃいますか?

Kim:昔は酷かったんですけれども、いまは少し良くなって表現の自由が得られるようになりました。お笑い芸人が政治家をネタにしてギャグをする時代になりました。ですから、昔ほどの問題はないですね。かつてだったら想像もできないことです。

ちなみにどの大統領によって変わったというのはありますか?

Kim:たぶんノム・ヒョンですね。

それはノム・ヒョン大統領が民主化政策をどんどん進めていって、自由な表現をある程度許容したってところがあるんですか?

Kim:もちろん。そうですね。

ノム・ヒョン大統領というと、日本では小泉政権のときに、彼が靖国参拝をする度にノム・ヒョン大統領がそれを批判していたのをすごく覚えているんです。そういったすごく複雑な日本と韓国との政治的な関係があります。日本と韓国の歴史的な歴史的関係についてKimさんはどのように考えていらっしゃるでしょうか?

Kim:音楽には国境はありませんし、ミュージシャンはみんな友だちですし、私はそういった複雑な関係というのはあまり気にしません。

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ヨーロッパの詩人の言葉ですけれども、この言葉に全部含まれているでしょう。「哀しみと死がなかったら、人間はどこに行くのでしょう」というものです。その言葉を読んだとき、私は絶望感よりも平穏をもらいました。


キム・ドゥス - 10 Days Butterfly 10日間の蝶
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キム・ドゥス - Evening River 夕暮れの川
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音楽はいちどやめようと思ってたんですか? そのときどのような生活を送っていたんですか?

Kim:そのときは完全に音楽をやめようと思って、山に行きました。10年間山に住んでいて、すごく気持ちが落ち着きました。それは自然がくれた力だと思います。

その10年間はどういった生活を送られていたんですか?

Kim:1ヶ月の生活費が韓国ウォンで20万ウォン(1万5千円ほど)でした。厳しかったですね。

そのときの気持ちというのは、絶望的なものだったんですか?

Kim:多少絶望的な気持ちもありました。しかし、当分の安定と平穏さは戻りつつありました。

ギターはどういったところから影響を受けているんですか? 

Kim:あまり影響を受けたことはないです。誰かから教えてもらったこともないですし、自分で学びました。

じゃああのメロディというのも、自分で作られたものですか?

Kim:そうです。誰からも教えてもらったことはないです。

小さいこと聴いていた歌とか、そういうところから?

Kim:童謡はすごく好きでしたね。

ほかの同世代のミュージシャンというのは、Kimさんと同じように何かの影響ではなく、自分たちで歌い始めたものなんですか? 

Kim:たぶん、学校とかそういうところで習ったひとが多いでしょうね。

ボブ・ディランとか、そういったものの影響もなかったんですか?

Kim:それは、ディランとか、ニール・ヤングとか、トム・ウェイツとか、そういうのをたくさん聴いたのは事実です。居酒屋やコーヒー・ショップに行くといつも流れているのはアメリカのフォークでしたから。

ああー、そうなんですか。

Kim:70年代、80年代はアメリカのフォークが流行っていましたからね。

へえー。あの、80年代というと、日本ではディスコとかそういうのでしたからね。

Kim:音楽だけ聴くようなコーヒー・ショップなんかもあったんです。韓国でLPっていうのがすごく流行ったことがありましたね。

いつミュージシャンになったんでしょう?

Kim:これだというきっかけはたぶんないんですけれども、小学生のとき、先生が私の家にわざわざ来て「彼に音楽をさせたほうがいいです」と言われたことはありました。でも、家ではすごく反対されました。儒教が厳しくて、家ではラジオも聴けないような状態でしたから。そんな家でミュージシャンが生まれたのは不思議なことですね。

日本でも儒教的な影響はすごく強くて、たとえば先輩後輩の関係であるとか、そういうところで影響は強いんですけれども、そういう儒教的な文化に対する反抗心みたいなものはあったんですか?

Kim:当然ありました。高校を卒業したら家を出ようと子どものときから思っていました。

なるほどね。では、ボブ・ディランであるとかアメリカのフォーク・ソングの歌詞の内容は当時わかっていたのですか?

Kim:わざわざ辞書を引きながら勉強したようなことはなかったんですけれども、大体の内容はわかっていました。

先ほどご自身で放浪者とおっしゃいましたけれども――。

Kim:そういう流れ者的な表現がいいと思っていました。放浪する生活はずっと夢でした。あちこちに行って歌うような生活、それが夢だったんです。

11年ぶりに『自由魂』というアルバムを出しますよね。11年ぶりっていうのが......。

Kim:私のアルバムを作ってくれた制作者がわざわざ山まで来て、昔のアルバムを再発したいと言ってきたのです。そのときは精神的にかなり良くなっていて、再発よりはいま出来ている曲があるから、新しくアルバムを作った方がいいんじゃないですかと提案しました。そのとき『自由魂』を作りました。

その後、『International Sad Hits』というコンピレーションを、それこそ三上さんとかといっしょにアメリカで発売されますけれども、海外で活動されるようになったのはどのようないきさつなんでしょうか?

Kim:〈P.S.F. Records〉が宣伝しはじめて、そのスケジュール通りでやってますね。

最初に海外でプレイしたのはどこなんですか?

Kim:ベルギーですね。

何年ですか? 2006年?

Kim:ああー、正確には思い出せないです(笑)。

それまでフォークというのは、言葉の音楽ですよね。だから、歌詞が理解できないとその本当の面白さは伝わらない。三上さんもKimさんも、音だけで国際的に広がったのはすごいなあと思って。

Kim:言葉が違うので心配していたんですけれども、直接演奏してみると、やはり言葉というのはそれほど問題ないですね。むしろ、もっと深く感じるような気もします。

日本ではここ数年K-POPが大人気です。K-POPの人たちは英語でも歌うし、日本語でも歌うんですね。取材も日本語で答えるんです。Kimさんは、それとは全く逆のことをやって国際的になってるっていうのは面白いですね(笑)。
 KimさんはK-POPに関してどのような見解を持っていますか?

Kim:K-POPが流行って日韓が友好になるのはすごくいいと思いますけど、言ってしまえばK-POPは音楽ではなくてエンターテインメント・ビジネスだという気がします。

韓国国内ではK-POPというのはどうなんですか?

Kim:若いひとというか、学生ばかりですね。テレビを観たらみんな少女時代で、年寄りはチャンネルを変えます(笑)。

韓国ドラマやK-POPは日本でずっと人気があるんですけれども、韓国の人気スターで自殺するひとが多いじゃないですか。どうして彼らは自殺しちゃうんですか?

Kim:うつ病や、精神的なストレスですね。個人的な事情があったり。韓国はインターネットがすごく盛んですけれども、そこでの誹謗中傷を見てストレスが溜まる場合もありますし。それも、たくさんの理由のうちのひとつでしょうね。

それはやはり、韓国の音楽ビジネスの悪いところなんでしょうかね? 

Kim:たぶんそうですね。

日本では華やかな部分ばかりが強調されています。タワーレコードの一階に行けばK-POPがダーッと並んでいます(笑)。でも、在日の人たちとってはすごく前向きな変化をもたらしてもいるようです。
 さきほどインディ・バンドが増えているとおっしゃってましたけれども、たとえばKimさんの歌を聴きに来るような若い世代のリスナーが増えているっていう状況もあるんでしょうか?

Kim:少しずつ増えています。自分はあまりライヴをやらなかったんですけれども、いまは増やしています。私はあまり健康でないのでライヴをたくさんはできないんですけども、観客は少しずつ増えています。ファンはライヴをもっとやってほしいと不満を持っているみたいですね。

なるほど。最初の質問に戻りますけれども、哀しみと言ったときに、Kimさんは人間の本質的な哀しみだとおっしゃいました。それがどういうことなのか、他の言葉で話してくださいますか。

Kim:この表現がいちばんいいと思います。ヨーロッパの詩人の言葉ですけれども、この言葉に全部含まれているでしょう。「哀しみと死がなかったら、人間はどこに行くのでしょう」というものです。その言葉を読んだとき、私は絶望感よりも平穏をもらいました。哀しみと死は、私たちをもっと人間的にさせるものです。
 ヘルマン・ヘッセは「死は人間の友だ」と言っています。

ヘルマン・ヘッセも放浪ということをテーマにしていますけど、お好きなんですね。

Kim:すごく好きな作家です。ヘルマン・ヘッセのための歌を作ったこともあります。

あなたの歌のなかにはすごく自然が出てきますけれども、あなたは何を意味して、どのような意図で自然を歌うのでしょうか?

Kim:他の言葉では表現できません。自然は自然なのです。

いまはソウルに住まれてるんですか?

Kim:ソウルから一時間くらいの田舎に住んでいますが、もっと田舎に行きたいので行くつもりです。

ちなみにサッカーはお好きですか?

Kim:野球のほうが好きです(笑)。

歌詞のテーマっていうのはどういうところから来るものなんですか?

Kim:疑問、自然、経験......といったことです。

この『10 Days Butterfly』のアートワークが美しいですけれども、これは?

Kim:私の友人で、有名な画家のHan Hee Wonによるものです。蝶は10日間しか生きられません。その短さ(はかなさ)が人間の生に似ていると感じました。人間の生の短く美しい様を表現したいと思ったのです。

日本という国は島国なんですね。周りを海に囲まれているんですけれども。韓国は全部陸で、変な話ベルギーまでつながってる。歩いて行こうと思えば行けるじゃないですか。そういう、大陸で繋がっているというのは、感覚としてあるんですか? 

Kim:ありませんね。韓国の上には北朝鮮がありますから、日本と同じように、繋がっているわけではありません、

ちなみに韓国のひとたちが好きな日本の音楽というと?

Kim:昔はJ-POPもすごく有名でしたが......。

アンダーグラウンドでいうとどうですか?

Kim:いま、韓国に日本のアンダーグラウンドのミュージシャンがたくさんいらっしゃってるみたいです。韓国に住みながら活動しているミュージシャンを、自分も3人ぐらい知っていますよ。

へえー。日本人ですか?

Kim:そうです。

たとえば誰ですか?

Kim:ハチさんです。有名なギタリストです。

春日博文さん(カルメン・マキ&OZなどで知られるプロデューサー。現在韓国で活動中)ですね。

Kim:彼はすごく指が長いみたいですね。あとは、長谷川さん、佐藤行衛(ゆきえ)......。

『10 Days Butterfly』には英語と韓国語と日本語の歌詞が載っていますよね。それが素晴らしいと思いました。

Kim:ちゃんと翻訳ができていますか(笑)?

すごくいい翻訳ですね。美しい日本語で。

Kim:リズムとか韻とかはたぶん、掴みきってないと思うんですけど。

今年韓国も大統領選を控えているじゃないですか。どうなんですか? 原発問題なんかも、大統領選のひとつの論点になってるじゃないですか。

Kim:政治は自分はちょっと関心がないですね。韓国も、良い政治家は少ないですね。良いリーダーの資格がない人ばかりです。それで私はさらに関心がなくなりましたね。

逆に言えば、韓国からセックス・ピストルズみたいなパンク・ロッカーが出てくる可能性はあるんでしょうか?

Kim:ありますあります。インディペンデント・バンドの実力がすごくついているので、うまい人がたくさん出ると思います。

モスクワでは、ライオット・ガールズというか、プッシー・ライオットという女の子のパンク・バンドが出てきていま話題になっていますよね。

Kim:おおー!

三上寛さんは「日本のパンクのゴッドファーザー」なんですよ。

Kim:彼はスーパーマンです。寛さんがヨーロッパに行ったらすごく喜ばれるんじゃないかと思います。彼のようなスタイルはないので。

数年前、イギリスの『WIRE』という雑誌がKimさんを紹介をしてましたけど、韓国でも反応がありましたか?

Kim:反応があったかどうかは私はわかりません。家でテレビもほとんど見ませんし、インターネットもメールばかりで、ちょっと記事を読むぐらいですね。情報には疎いほうです。自分の名前が売れることにはあまり興味がありませんしね。

 この暗い世の中を彷徨う人よ
 あなたはどこに流れるのか
 星はまた光り鐘は鳴るだろう
 この瞬間はお前のために
 この瞬間だけはお前のために
"彷徨う人のために"



interview with Heiko Laux - ele-king

 ハイコ・ラウクスはジャーマン・テクノを体現するような人物だ。テクノ黎明期に多感な10代を過ごし、周囲の誰よりも早くシンセサイザーとドラムマシンで楽曲制作を開始。94年に地元ヘッセン州の小さな町でレーベル〈Kanzleramt〉を立ち上げた。それがスヴェン・フェイトの目に留まり、フランクフルトの伝説的クラブ、〈Omen〉のレジデントに抜擢される。99年にはテクノ・キャピタルとして勢いを増していたベルリンに拠点を移し、変わらぬ情熱と熟練のスキルで制作活動とDJ活動ともに精力的に続けている。

 数ヶ月前、宇川直宏氏に「今年もFREEDOMMUNE 0 <ZERO>やるから、いいテクノDJブッキングしてよ!」と言われて真っ先に思い浮かんだのが彼だった。実際に出演が決まり、〈eleven〉でのアフター・パーティと大阪〈Circus〉でもそのプレイを披露することになったハイコに、ベルリンで話を聞いた。テクノ・ファンならすでにお馴染みのベテラン・アーティストだが、3年ぶりの来日ツアーに先駆けて、これを読んでその素晴らしいプレイのイメージを膨らませて頂ければ幸いだ。


ドイツのテクノもデトロイトの影響を受けてはじまったようなものだからね。そのデトロイトの人たちはクラフトワークに影響を受けていたりするわけだけど。


初めまして。もうすぐFREEDOMMUNE 0 <ZERO>に出演のため来日されますが、私があなたをブッキングしたんですよ。その経緯から少し話させて下さい。実は、きっかけは今回共に出演するDVS1をEle-Kingのために昨年インタビューしたことだったんです。

ハイコ:へえ? どういうことかな?

彼が、90年代にあなたをミネアポリスに呼んだことがあって、その縁であなたに〈Tresor〉でDJする機会をもらったと言っていました。それが初めてベルリンでプレイした体験だったと。

ハイコ:ちょっと待って、いまもの凄い勢いで頭の中の記憶を呼び戻してるから... でもDVS1という人は知らないな。前は違う名前でやっていたのかな?

あれ? 覚えていないですか? それは意外ですね。ではその事実関係は日本で再会した際にDVS1本人と確認して頂きましょう。いずれにせよ、その話を聞いたのが昨年のちょうど同じ頃で、そのすぐ直後にあなたが〈Berghain〉に出演していたので、初めて聴きに行ったんです。

ハイコ:ああ(ニヤリ)、あの日あそこに居たのか。あれは......かなりいいセットだった。

めちゃくちゃ凄かったです(笑)。それで一発でヤラれてしまったんですよ。そのときに、「この人を日本にブッキングしよう」と思ったんです!

ハイコ:そうか、ありがとう。実はね、公にはしていないんだが、CLR Podcastに提供したミックスは、あの日のセットの中の2時間分なんだ。あそこのクラブは録音だの撮影だのに関してはとてもうるさいからね、ここだけの話だけど! うん、あれはかなりいいパーティだった。

2009年の〈WIRE〉に出演して以来、日本には行ってませんものね?

ハイコ:そうなんだよ、だからもの凄く楽しみにしている。そろそろ行きたいと思っていたところだよ。

それまでは、わりと定期的に来日してましたよね?

ハイコ:2000年か2001年くらいから、ほぼ1年おきには行っていたね。

これまでの来日体験はどうでしたか?

ハイコ:いい思い出しかないよ。日本は大好きだ。僕は食べるのが好きなんでね、食べたいものがあり過ぎて困るくらいだ(笑)。初めてスキヤキを食べたときなんて、発狂するかと思ったよ! ヤキニクとか、コウベビーフとか...... とにかく日本の食べ物のレヴェルの高さは凄い! もう6回くらい日本には行ってるけど、毎回驚きがあるね。

ちょっと音楽の話に戻しましょうか(笑)。実は私は90年代のテクノについてデトロイトのことはある程度知っているんですが、ドイツのことはほとんど知識がないので、ぜひその頃の話、そしてあなたがどのような体験をしてきたのか教えて頂きたいんです。

ハイコ:まあドイツのテクノもデトロイトの影響を受けてはじまったようなものだからね。そのデトロイトの人たちはクラフトワークに影響を受けていたりするわけだけど。

バイオグラフィーによれば、ファーリー・ジャックマスター・ファンクの「Love Can't Turn Around」に衝撃を受けて音楽をはじめたとのことですが?

ハイコ:そうだね、まああの曲は一例だけど、ああいうサウンド、いわゆるTR-909のドラムととてもシンプルなベースだけであれだけパンチのある曲は衝撃だった。ああいう音が部分的に使われている曲は聴いたことがあったけれど、シカゴハウスからはそれまで感じたことのない凝縮されたエネルギーを感じたんだ。「俺はこれをやりたい」と思ったんだよ。

それはラジオで聴いたんですか?

ハイコ:いや、クラブだよ。当時は兄がDJをしていたので、まわりの子たちよりも早くクラブに行くことが出来たし、家にそういうレコードがあった。シカゴ・ハウスやUKノアシッド・ハウスなどだね。それ以外はまだポップ・ミュージックしかなかったけれど、あの頃はポップ・ミュージックのシングルにもB面に風変わりなダブ・ミックスなどのインスト・ヴァージョンが入っていた。そういうシンプルなグルーヴの音楽を好んでいたね。特定のサウンドを上手く組み合わせれば、とても少ない音で凄い威力のある曲が出来上がるというところに魅了された。

かなり早い段階から自分の曲を制作することに興味を持っていたようですね?

ハイコ:ああ、もう10代半ばから。小さなバイクに乗れるようになった頃に、最初のキーボードを買いに行ったのを覚えているよ。14歳とかじゃないかな。

その歳ですでにクラブに行って、制作も始めていたんですね?

ハイコ:ああ、地元のバート・ナウハイムという小さな町から、兄の車に便乗してフランクフルトのクラブに出入りしていた。あの頃聴いたDJといえば、スナップ(Snap!)のプロデューサーのひとりだったミヒャエル・ミュンツィッヒなどだね。彼はいつも、ド派手な衣装で現れた。インディ・ジョーンズみたいな帽子を被ったり......毎週違う格好で(笑)。でも誰よりもクールな音楽をかけていた。彼はビートマッチ(曲のピッチを合わせる)だけでなく、ハーモニーをミックスしていたのが印象的だった。前の曲のブレイクのときに、例えばピアノのハーモニーが入っていたとしたら、次の曲のBPMの違うイントロのハーモニーと混ぜるんだ。そこから全然リズムが変わったり。それがとても新鮮だったね、「こういうことも出来るんだ」と思った。いまそういうやり方をする人は全然いない。でも僕は、いまでも選曲をするときにハーモニーで選んだりするよ。他に僕が体験したことと言えば、クラブ〈Omen〉の盛衰だけれど、それもバイオグラフィーに書いてあることだね。

当然、DJとしてスヴェン・フェイトからも大きな影響を受けていますよね?

ハイコ:完全に。スヴェンとの出会いは、僕のキャリアのターニング・ポイントになったから、特別な存在だね。あの頃は誰もが〈Omen〉でプレイすることを目標にしていた。だから僕も自分から「やらせて下さい」なんて野暮なことは聞かなかった。その代わり自分でレーベル(〈Kanzleramt〉)を始めて、曲を出すようになった。そしたら、96年にスヴェンがライヴをやらないかと誘ってくれたんだ。そしてライヴ出演したら、またやって欲しいと言われて、「実は僕はDJもやるんです」と言った。当時、金曜日がスヴェンの日で土曜日が外部のゲストDJがプレイしていた。その土曜日に何度かやったところ、「金曜日にお前の枠をやるから、好きな奴を呼んでパーティをやれ」と言われた。だからサージョンやニール・ランドストラムなどを呼んで一緒にやっていた。店が閉店するまで、それを続けたんだ。

ライヴもやっているんですね? それは知りませんでした。

ハイコ:実はそのときと、すぐ後に一度「POPKOMM」(かつては毎年開催されていたドイツ最大の音楽見本市)だけで、それ以来全然やっていないんだ。他のアーティストとコラボレーション、例えばテオ・シュルテと一緒にやっているオフショア・ファンクなどでは何度かやっているけど、ソロは全然やっていない。それも最後にやったのは2008年だ。その後はDJしかやっていないね。でも、今年のADE(Amsterdam Dance Event)で久々のライヴを披露する予定だよ。とても楽しみだけど、ライヴとなると途端にナーヴァスになる(笑)。

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僕はたしかにラップトップを使っているけど、間違いなくDJをしているからね、そこが違うんだと思う。僕はちゃんと曲を「触っている」。それが鍵なんだよ。こういうシステムを使うと、オートシンクも簡単に出来るけど、それをやってしまうとDJの醍醐味がなくなってしまう。

少し意外なのは、あなたがハウスから音楽の道に入ったということですね。テクノ一辺倒なのかと思っていたので。

ハイコ:というか、あの頃はテクノというものが存在していなかったんだよ。デトロイト・テクノもシカゴハウスの影響で出て来たものだからね。テクノへと加速していったのは90年代初頭のことだよ。

そういう流れのなかで、あなた自身もよりテクノに傾倒していったと?

ハイコ:そういうこと。だからテクノ・ブームがやって来る少し前に、すでにこういう音楽に脚を踏み入れていたのは、幸運だったと思う。周りがテクノに目覚めた頃には、すでにシンセサイザーやドラムマシンに親しんでいたからね。だからテクノが確立される前から、テクノをどうやって作るのかは分かっていた。ハウスを速くして、テクノのエネルギーを足せば良かったんだ。

そう考えると、あなたはドイツにおける第一世代のテクノ・アーティストと言えますね。

ハイコ:やはり僕よりも、スヴェン・フェイトやジェフ・ミルズやDJヘルの方が僕よりも先にやっていたけれどね。僕の出身の小さな町では輸入盤のレコードを売る店なんてなかったから、それほどたくさん聴けたわけではなかったし。アンダーグラウンドな音楽は、大都市に行かないとアクセスできなかった。僕がレコードを買っていた隣町の店なんて、半分が自転車屋で、店の半分がレコード・コーナーになっていたからね(笑)。レコードを売るだけでは、まだ商売にならなかったからだ。〈Omen〉の前身だった〈Vogue〉というクラブで、スヴェンを聴いたり、90年代に入ってからジェフ・ミルズやジョーイ・ベルトラムのプレイを聴いた。
 それでデトロイト・テクノに開眼して、「そうか、こんなことも出来るのか!」と思ったね。特に、ジェフ・ミルズを見たときは度肝を抜かれた。プレイしたレコードを次々と背後に投げ捨てながらプレイしていた(笑)。傷がつくとか、そういうことを気にせずにバンバン投げ捨ててたね......そういうクラブが身近にあって、本物のアーティストを間近で見て体験することが出来たのはとても幸運だったと思う。ジェフがヨーロッパで初めてやったのは〈Omen〉だったんじゃないかな。当時は、フランクフルトがドイツのダンス・キャピタルだったからね。ベルリンの壁が崩壊してからは、フランクフルトとベルリンのライヴァル関係がしばらく続いた。もちろん、その後ベルリンが勝つことになるわけだけども...... 90年代前半はほぼ同等のレヴェルだった。その競争意識が、音楽にもプラスに働いたと思う。

なるほど。そういう環境の中で、あなたのDJスタイルも築き上げられていったわけですね。あなたも当時のジェフのようにターンテーブル三台を操ることで知られていましたよね?

ハイコ:そうだね。かつては、三台使ってレコード1枚あたり2分くらいだけ使ってどんどんレイヤーしていくスタイルをやっていたけど、いま(のレコードで)同じことをやっても上手くいかない。ただテクニックを見せびらかすだけみたいになって、せわしなくて聴いている方は楽しめないと思うんだ。お客さんも世代交代しているからね。でも三台使ってプレイするのは楽しいから、またやろうと思っている。新しい使い方を考えているところだ。一時期は、なるべく展開や要素を削ってどこまでできるか、というプレイに挑戦していたんだけど、それも退屈になってしまって。だって、二台だけだと、あいだの5分間くらいやることがなくて(笑)。
 いまはSeratoを使ってプレイしているけど、Seratoが面白いのはレコードの好きな部分を好きなようにループできるところ。この機能を使うと、レコードとはかなり違ったことが出来る。また、Seratoの場合、曲の途中で停止しても、また好きな瞬間から狂いなく再生することができるから、曲の抜き差しが正確に、より自由に出来るようになった。レコードだと、ミュートできても曲の尺は変えられないから終わるまでに何とかしなければいけないというプレッシャーがある。でも、Seratoなら、好きなだけブレイクをホールドして、好きなタイミングで曲を戻すことが出来る。Seratoのおかげで、アレンジメントの幅が広がったと思うよ。
 いまはCDJ三台と、それぞれに効果音などを入れたUSBスティックも使ってさらに自由な組み合わせが出来るようにしている。だから単なるDJというよりは、サンプラーを取り入れているようなプレイだね。「遊び」の幅が広がった。今はブースで暇を持て余すこともなくなったよ(笑)。またDJすることが楽しくなっている。一時期は楽しめなくなっていたのも事実なんだけど、今は自分でも楽しめる新しいプレイの仕方を確立しつつある。

私は個人的にヴァイナルDJを好むことが多く、とくにテクノやハウスに関してはラップトップDJに感心することは滅多にないんですが、あなたのプレイは別格だと思いました。レコードでやっているようなライヴ感というか、臨場感がありましたし、長い経験を感じさせる確かなスキルがわかりました。

ハイコ:わかるよ、僕も同じだから。僕はたしかにラップトップを使っているけど、間違いなくDJをしているからね、そこが違うんだと思う。僕はちゃんと曲を「触っている」。それが鍵なんだよ。こういうシステムを使うと、オートシンク(自動的にピッチを合わせる機能)も簡単に出来るけど、それをやってしまうとDJの醍醐味がなくなってしまう。自分の手で合わせるからこそ、そこにエネルギーが生まれるんだ。ソフトウェアでプログラムされてしまっていると、そのエネルギーがない。完璧にシンクされた曲を次々と並べていくなんて、簡単過ぎるし何の面白味もない。やっている方もつまらない。その場の思いつきで新しいことを試していくことが面白いんだからさ。僕はフォーマットではなく音楽を重視するから、何を使ってプレイしているかはこだわらない。音源がCDでもラップトップでも別にいいと思う。それを使って何をするか、が問題なんだよ。いまはラップトップを使うのが面白いから、しばらく使ってみるつもりだ。

先ほどフランクフルトとベルリンがライヴァル関係にあって、いまはベルリンがその競争に勝ってテクノ・キャピタルになっているという話が出ましたが、その両方を見て来たあなたはベルリンの現状をどう受け止めていますか? ここ数年でテクノはさらにリヴァイヴァルした印象がありますけど?

ハイコ:とくに何とも思わないな(笑)。自分が幸運だとは思うけれどね。ごく自然なことだと思う。街やそのシーンの勢いというのは移り変わりがあり、より活気があるところに人が集まって来るのは自然なこと。テクノのシーンに関わりたいなら、ベルリンにはそういう仕事がたくさんあるし、その上観光客も大勢やってくる。ここにいればいろんな人に会えるし、活動の場を作っていける。レッド・ホット・チリ・ペッパーズからジョージ・クリントンまで、みんなやって来るから観ることが出来る。生活費も安いしね、これほど条件が整っていて、ニッチなアーティストにまで機会が与えられている街は他にない。これはテクノに限ったことではないし、他のジャンルも、演劇やアートに関しても同じだ。さらにベルリンはとてもリラックスしていて競争がない。周りを蹴落とそうとするような人はいない。そしてとてもリベラルだね。僕は99年にベルリンに移って来たけど、一度も後悔したことはないよ!

 

【来日出演情報】
8/11 FREEDOMMUNE 0 <ZERO> @ 幕張メッセ
8/17 AFTER FREEDOMMUNE +1<PLUS ONE> @ 東京eleven
8/18 CIRCUS SHOW CASE @ 大阪Circus

【リリース情報】
Jam & Spoon - Follow Me (Heiko Laux SloDub)
https://www.beatport.com/release/follow-me!-remixes-2012/924547
発売中

Sterac - Thera 1.0 (Newly Assembled by Heiko Laux) of "The Secret Life on Machines Remixes" on 100% Pure vinyl/digi with Ricardo Villalobos, Joris Voorn, Vince Watson, 2000 and One, Joel Mull, ...
2012年8月発売予定

Rocco Caine - Grouch (Heiko Laux & Diego Hostettlers 29 Mix) (12"/digi Drumcode)
近日発売予定

Heiko Laux & Diego Hostettler - Jack Up Girl (12"/digi on Christian Smith's Tronic TR89)
近日発売予定

Heiko Laux - Re-Televised Remixed (12"/digi on Thema Records NYC)
original and remixes by Lucy, Donor/Truss
近日発売予定

Heiko Laux & Luke - Bleek (on Sinister, 4-tracker V/A with P?r Grindvik, Jonas Kopp & Dustin Zahn)
2012年秋発売予定

Mark Broom & Mihalis Safras - Barabas (Heiko Laux Remix)
other remixers: Slam
近日発売予定

石野卓球 - ele-king

 YMOとクラフトワークとアンディ・ウェザオールとパレ・シャンブルグを聴いた後、という非常にヘヴィな状況で、もう帰ろうと思っていたんだけど、石野卓球がDJをはじめた途端にどんどんひとがフロアから出て行くという滅多にない光景を見てしまったものだから、それまでのすし詰め状態から自由に踊るくらいの余裕ができたダンス・フロアのど真んなかにわざわざおりていったら、卓球の繰り出す魔術的なビートに絡めとられて、しばらく踊り念仏と化してしまった。以前はほんとにしょっちゅう聴いていた彼のDJだけど、最近は本当にごぶさたしていて、それでなのか懐かしいようなとてもフレッシュなような、いろんな感覚がぐるぐると渦巻いた。

 初回から昨年まで、13年分の〈WIRE〉コンピに収録された卓球の曲を古い順に並べた今回の企画盤は、たぶん初回からずっと〈WIRE〉に通い詰めているようなオールド・ファンに同じような感覚をもたらすんじゃないかと思う。本作に関連したインタヴューでもアルバム収録の本人解説でも語っているように、初期の頃にはこのフェスの顔になるような、アンセム的な曲をオーガナイザー自ら提供している感じで、実際会場でも何度も耳にしてすごく記憶に残っているトラックが多い。途中からそういう意識が変わって、〈WIRE〉でのプレイ中に使うわけでもない、コンピの中の一曲というものになったという。当然、後半にいくに従っていわゆるオオバコ映えする派手なトラックからBPMも下がって、地味で実験的な曲が増えていくんだが、だからといって卓球らしさというか、「味」みたいな部分が減退しているかというとそんなこともなくて、むしろ歳を取るにつれてそのひとの本性が顕わになるみたいなところもある。
 去年のコンピからの収録曲"Five Fingers"は5拍子で、イントロからしばらくは普通の4/4のストレートな曲からは感じえない妙なきもちわるさがある。だんだんと音数が増えるとその異物感も緩和されて、卓球の持ち味のひとつであるトランシーな上物が輝き出すと、あっという間にその世界に引き込まれる。去年、WIREコンピを入手した後すぐループで聴いていて、この曲がすごく耳に残ったのを覚えている。そのときは5拍子だからっていうのはパッとわからなかったけど、いっぽうで彼が昔Mijk Van Dijkと作ってヨーロッパ中でヒットしたUltra-Takkyu vs Mijk-O-Zilla名義のトラックとよく似たハマリ系のトランシーさを持っていて、ずっと変わらない本質的な快楽原則を追求した部分と、そのチャレンジングな冒険とがこんな具合にブレンドされるのはすげえなと思ったのだ。しかも、それ1回では飽きたらず、今年のWIREコンピでも、今度は7/4拍子というまたも「変」なリズムを探求するという筋金入りの変態っぷりを披露している。
 毎年欠かさず〈WIRE〉に遊びに行っているロートルとしては、当時小学生だったリアル・キッズがいまや成人して堂々とオールナイトで酒飲んで大暴れできる年齢になってると改めて考えると衝撃を受けるが、そういう人たちがこのアルバムで石野卓球の〈WIRE〉における変遷をはじめて振り返るとどういう風に聞こえるのかは結構興味がある。おじさんは、懐かしさもあるから初期の曲にはもちろんかなり思い入れもあるし、いまでも全然かっこいいと思うんだけど、いまの耳で聴くならこっちかなというのは07年の"St. Petersburg"とか09年の"Slaughter & Dog"とか、もしくはボーナス・ディスクに入ってる10年の"Carrie"あたり。でも、こないだShin Nishimuraくんと、若いクラバーは、パンチの効いた往年の"ザ・テクノ"みたいなノリはあまり体験してないから、そういうのが逆に新鮮なんじゃないかと話していて、実際彼が自分のパーティに石野をゲストに呼んで「クラシック」をテーマにオーガナイズした晩も、どう見ても20代前半の若いお客さんが、10~20年前の曲でガンガンに盛りあがっていた。たぶん、90年代に一般化した編集/DJ的な聴き方や、00年代のiPod的シャッフル感すら遠くの過去のものにする感性を、彼らはもっているに違いない。

 歌謡曲でもロックでも、購買力があって思い入れが強いのは中高年のファンだから、そういう人たちに向けて再結成や懐メロ的な展開して一稼ぎっていうのはもうどこでもあたりまえの光景になってしまったけど、年代的にもキャリア的にもそろそろそういう部類に入りそうな卓球が、こういう「思い出を振り返る1枚」みたいな装いの企画をこなしながらも実際はまったく明後日の方向へひょいひょいと走ってることは感動的ですらある。

interview with Hot Chip - ele-king

 僕が欲しかったのは君だった
 さあ、僕らの最後の選択の時だ
 僕たち、どうやって嘘をついたり後知恵で批判したりするだろうか?
HOT CHIP "Don't Deny Your Heart"(2012)

 え~、またなの~? 親愛なる読者、どうかそう思わないで欲しい。来日ライヴはまるでパンクのコンサートのように、下手したらトリのブロック・パーティを食ってしまうほどの縦のりの大騒ぎだったホット・チップ。以下、バンドのフロントをつとめるふたり、アレクシス・テイラー(Alexis Taylor)とアル・ドイル(Al Doyle)といっしょに、実験的な取材を試みた......。


うん、髭のある女性は好きだな。とっても無愛想で......脅迫的で......暴力的で......男っぽくて......毛だらけで......髭が生えてる女性かな。








Hot Chip

In Our Heads


Domino/ホステス


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野田:いいですか? 今回はひとつルールを決めたいと思います。「絶対に、本当のこと、真実を言ってはいけない」というルールです。

どうでしょう?


アレクシス:(即答)了解。いいよ。


アル:りょ、了解......難しいね(笑)!


野田:それでは「ホットチップくん」、よろしくお願いします。


オッケー。えー、まず最初に、Welcome to Japan! ということで、日本の好きなところはどこでしょう?


アル:(即答)何にも好きじゃない。嫌い。


(一同爆笑)


アル:こんな感じで行きますよー、みんな(笑)!


アレクシス:この視点で、ちょっと考え方を変えてみよう。なんで僕が日本を好きか。食べ物がシンプルで、ここで食べれる料理はひとつだけ。


アル:そうだね......(笑)!


アレクシス:ハンバーガーしかないから。まあ、いいんだけど。あと、住んでる人が......もっと愛想があったらいいのになと思う。


アル:ふふふふ......(笑)!


アレクシス:献身的じゃないし、秩序もないし、何事にも雑だから。いや、これ難しいね。こんな嘘をついてると、僕が無礼に聞こえない?


(一同爆笑)


アレクシス:でも嘘をつき続けなきゃいけないんだよね。もっと上手く答えていこうか。


好きな女の子のタイプは?


アル:アレクシス、これはマジでちょっと......(笑)!


アレクシス:これも嘘じゃないといけないんだよね? 了解。(しばし沈黙)......とっても無愛想で......脅迫的で......暴力的で......男っぽくて......毛だらけで......髭が生えてる女性かな。


アル:うん、髭のある女性は好きだな。うん、髭か......気にしないけどね。


アレクシス:ほんと、こんなこと考えたことなかったよ。ねえ、やっぱり、ほら、すごく無礼に聞こえるよね?


アル:無礼になるのは愉しいよ! 日本では無礼な感じでいこう。ははは(笑)。


アレクシス:女性全員を不快にしてしまいそうだね。


心配しないで!「Don't Worry. There is nothing left to....」


アル:そうだね(笑)。


(註:アレクシスの別バンドであるアバウト・グループ≪About Group≫の曲"Don't Worry"の歌詞)


得意な楽器はなんですか?


アレクシス:僕はギターの才能が輝いてるよ。


(一同笑)


アレクシス:ギターに関してはハッキリと言える。それに、たぶん僕は世界一のギタリストだよ。惑星一だ。あとは、吹奏楽器ならなんでも得意。なんでもこいって感じだよ。


アル:僕も吹奏楽器は得意だな。


ほう。2010年のツアーでは"I Feel Better"のイントロでフリューゲル・ホルンをプレイしてましたね。


アル:そうそう。とても得意だよ......って、嘘つくのも大変だ!


アレクシス:これって僕らが嘘をついてることは読者に伝えてくれるの?


野田:もちろん、もちろん!


もちろん、もちろん! オフコース!


アレクシス:了解。いいよ。......でも、それも嘘かもしれないじゃない?


いやいやいや......なにもなにも......(笑)。


アル:ぷははははは! 了解(笑)。


このインタヴューはスペシャル・ゴージャス・ボーナス・トラックです!


アレクシス:了解。


アル:ははは、了解。気にしないで(笑)。


そう、そのロイヤル・トラックス(Royal Trux)みたいな感じです。


アレクシス&アル:ふふふふ......。


(註:『In Our Heads』のボーナス・トラック"Doctor"にはロイヤル・トラックスのニール・マイケル・ハガティ≪Neil Michael Hagerty≫がギターで参加しており、ロイヤル・トラックスのアルバム『Accelerator』のTシャツをインタヴュー時のアレクシスが着ていた)


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ひとつ問題があって、記者たちは僕たちの最初の指令を読み違ってしまった。「Greek」(「ギリシャ人」)という語から「r」を忘れてしまったんだよ。僕らはギリシャ人なんだけどもね。記者たちは僕らが「Geek」(オタク/奇人/ダサい男)という言葉を発信したがってると思ってしまったんだ。

自分の好きなところはどこですか?

アレクシス:うーん......。僕は背が高くて......。

ふふふ......(笑)。

野田:うう(笑っていいのか気遣う)。

アレクシス:だから、見晴らしがいいところ。......僕の体型も好き。で......。

アル:僕は彼の体型きらいだけどね。ははははは!

野田:ははははは!(遂に笑う)

ふふふ(笑)。

アレクシス:......視覚が優れてること。で......、聴覚が素晴らしくて......、強い意志の力があるところも好き。......あらゆる悪に抵抗できることも。......それで......決断力もあるところ。

なるほど。あなたはアバウト・グループのリーダーですもんね。

アレクシス:いや、違うよ。

本当ですか、えっと、では。

アレクシス:17名いるメンバーのうちの1人でしかないよ。

17名?

アル:ふふふ(笑)。

ふふふ(笑)。了解しました。好きなダブステップのアーティストはいますか?

アル:(即答)スクリレックス(Skrillex)!

野田:ははははははは(爆笑)!

やっぱり(笑)!

アル:明らかでしょ!

アレクシス:僕は世に出ているダブステップに関するあらゆるものが好きで、ずっとずっと後世まで残ればいいなと思ってる。僕にとっては、もっともオリジナルでもっとも高尚な音楽のフォーマットかな。

はははは......!

アル:ふふふ(笑)。

レディオヘッドについてはどう思いますか?

(沈黙、5秒)

アレクシス:表現豊かで、......思慮があって、......とても音楽が美しい。とくに歌手の声がね。彼にしか触れられない心の琴線というのものに届くいてくるし......。

アル:ふふふ(笑)。

ふふふ(笑)。

アレクシス:で、......彼ら全員がレディング(Reading)出身というのに感心します。

アル:レディングという町にとても貢献してるよね。

(註:レディオヘッドはオックスフォード(Oxford)出身。ちなみに、ホット・チップのうちジョー・ゴッダード(Joe Goddard)はオックスフォード大学出身)

チャールズ・ヘイワードやロバート・ワイアットのようなポリティカルなミュージシャンとの共演についてはどのような感想をもっていますか?

アル:(即答)やったことない。

アレクシス:ないね。

(一同爆笑)

おおおお、了解、了解しました(笑)! では、とくにポリティカルなロバート・ワイアットのような人と共演したいと思いますか?

アレクシス:うーん、政治には興味がない。2012年以前に作られたどんな音楽にも興味がない。どれにもね。

アル:古臭いよね。

アレクシス:古くて霧のかかった音楽だよ。

アル:彼らには「黙れ、ジジイ」と言いたい。「黙ってればいいから。音楽やらなくていいから」と思うな。

(註:元ディス・ヒート≪This Hear≫として名高いチャールズ・ヘイワードは、ホット・チップの『One Life Stand』と『In Our Heads』にも参加しており、アバウト・グループのメンバーでもある。元ソフト・マシーン≪Soft Machine≫のロバート・ワイアットはホット・チップのリミックスEP『Made In The Dark』にヴォーカルで参加しており、ベルトラン・ブルガラ≪Bertrand Burgalat≫との曲"This Summer Night"をホット・チップがリミックスしている)

おふたりは、自分たちのことをプロフェッショナルだと思いますか?

アレクシス:んー......。

(しばしの沈黙)

アル:あー...、超難しい! 脳みそが燃えてる(笑)!

アレクシス:うーん、僕たちは......見た感じ、いまだにとってもアマチュアっぽく見えると思う、やることなにもかもにおいてね。僕たち自身が僕たちは音楽で生計を立てていると思っていたとしても、ね。たぶん、......僕たちをプロフェッショナルだと思っているのは、世界で僕たち自身だけだよ。

アル:ほう。ふふふ(笑)。

なるほど。

野田:ふふふ......(笑)。

アル:ふふふ......(笑)。

アレクシス:ふふふ......!(堪えきれず声を抑えて笑う)

野田:自分たちの音楽でいちばん伝えたくないことはなんですか?

アル:僕たちの感情とか、それと、欲望とか、うーん...。

アレクシス:楽しすぎる音楽は好きじゃないな。表現豊かな音楽も。

アル:そうだね......、退屈で現実に則していない音楽が好きかな、それと、うーん......。(笑)

アレクシス:僕はいつどんなときも、ダニエル・スパイサー(Daniel Spicer)という人がどんな音楽を作るかについて考えるんだ。彼は『Wire』誌のとても素敵な記者で......。

アル:はははははは(笑)!

アレクシス:彼は自分のバンドをもっていて、<Linkedin>というサイトに彼と記者として仕事をする機会を人びとに宣伝しているんだ。僕は、彼は世界でもっとも知的な人だと思うし......

ぷっははははは(笑)。

アレクシス:狭量なんてことはまったくないし、自分勝手に人を非難しないし、出身で人を判断することをしないし、音楽を聴くことに本当に集中していて、とても公平で、僕はいつも......発言するときには彼のことを考えてるんだ。

アル:なにかを決断するときも考えてるよ。音楽だけでなくて、生き方そのものについて、彼に教わっているね。

アレクシス:彼の口髭は全然好きじゃないんだけどね。

(註:ダニエル・スパイサーによるアバウト・グループの1stアルバムのレヴュー
 「ドラムがすべて(all about the drums)」で、他は取るに足らないといった旨である)

(註:また、アレクシスは『Wire』誌に直接メールを送ったようで、「ダニエル・スパイサーに、嫌いな人をレヴューでイラつかせるのをやめるようアドヴァイスしてくれないか。彼はなによりもまず最初に、僕のかけている眼鏡の種類にイチャモンをつけた。ジョン・コクソン≪同じアバウト・グループのJohn Coxon≫が同じフレームの眼鏡を『Wire』でかけていても攻撃しないのにね。どんなに度を超して幼稚な雑誌なんだろうと思った」という言葉が『Wire』誌に掲載されている。
https://www.exacteditions.com/read/the-wire/october-2011-9409/6/3/>

雑誌やウェブで、ホット・チップは「nerd」(ナード)や「wonk」(ウォンク)という語で「オタク」と形容されがちですが。

アル:うん。

その上で、"Night And Day"のようセクシュアルなことを歌うことについてはどう思っていますか。

アル:ははははは!

ちょっとセクシュアルですよね。

アレクシス:どう思っているか......。セックスについて書くことは本当に居心地が悪いし、いつだって避けようとしてるよ。それに......。

アル:それに、「オタク」という形容についても、僕たちはそういう期待に応えてきて......、そのイメージでキャリアを積んできたんだ。「オタク」のイメージも僕らから発信し出して、それから記者もそう書き出して......、それで......僕らが考えてたのは、パラダイムというか......。

アレクシス:実際のところ、僕たちがたくさんの記者を雇ったんだ。デビューするにあたって、言葉を広めて。

アル:イメージを作るためにね。

アレクシス:ただ、ひとつ問題があって、記者たちは僕たちの最初の指令を読み違ってしまった。「Greek」(グリーク。ギリシャ人)という語から「r」を忘れてしまったんだよ。僕らはギリシャ人なんだけどもね。記者たちは僕らが「Geek」(ギーク。オタク/奇人/ダサい男)という言葉を発信したがってると思ってしまったんだ。それがマイナスにも働いてしまって、遂には僕らが5人の「Geek」によるバンドだと嘘をつかなくてはならなくなって......、つまりさ、今日、実際、大変な時期を過ごしてるんだよ。

アル:うん、そのとおり。次のアルバムはギリシャの経済状況について書くよ。書くべきだよね。

野田:はははは......笑えないんだけど!

「Me and Ulysses」?

アル:そう、そういうこと(笑)!

アレクシス:ふふふふ......(笑)。

(註:ホット・チップがまだアレクシスとジョーのデュオだったデビュー・アルバム『Coming On Strong』では、ふたりのクレジットは「Ulysses and Sophocles」という古代ギリシャ人名の表記になっており、収録曲"Keep Fallin'"ではそのことを強調して歌っていた。)

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まずインターネットの性質として、絶対に間違いがないということ。インターネットに表示されるあらゆることはすべて真実であるということ。つまり、今日、僕たちに与えられている答えというのは......


ご存知のとおり。昨年に僕がロンドンに行っておふたりに会う前には、日本では地震がありました。


アル:はい。


地震と津波によって原子力発電所がとても危険な状態になって、現在でも日本に住んでいて安全なのかどうかが実際にはわかりません。イギリスは最初に原発事故を経験している国ですよね。そこで、おふたりの原子力についての見解を教えてください。


アル:これで本当の意見を言えないのは大変なことになるよ!


野田:俺もそう思う。


アレクシス:ある性質があって......。


アル:了解、大丈夫だよ。


アレクシス:僕が思うにはね、まずインターネットの性質として、絶対に間違いがないということ。インターネットに表示されるあらゆることはすべて真実であるということ。つまり、今日、僕たちに与えられている答えというのは......、エラーが起こる余地はなくて、現に僕たちもこうやってインタヴューで完全に真実を答えていることからも、それがわかるでしょう。


野田:ははははは。


アレクシス:インターネットは情報を発信していくのに最適な場所だから、なんのリスクもない。つまり言えることとしては......、僕たちは、原子力についての見解もインターネットの皆さんに任せます。


野田:そうきたか、なるほどねえ。


アル:ふふふふ......(苦笑)。


アレクシス:政治家っぽいでしょ。


アル&野田:だははははは。


野田:でも、ここはルールを解除して続けましょう。


オッケー。嘘ではなくて本当のことを。


アレクシス:でも僕たちがそのルールに則っているかってどうやってわかるの?


野田:逆襲されたね。


アレクシス:真実かどうか推測しなくちゃならないよ。


了解しました。


アル:日本ではすべての原発は止めたのだっけ?


残念なことに再稼動されようとしています(註:取材は6月22日)。


アル:ジェームス・ラヴロック(James Lovelock)という科学者(環境学者)がいて、彼は『ガイア理論(Gaia Theory)』を提唱して、書物を発表してるんだ。そこには、事故が起きた際の怖さや危険性があるのは承知しつつも、必要とされている電気を供給するには、他に代替エネルギーがない限りは基本的に原子力を利用しなければならないとある。イギリスだけでなくヨーロッパでも原子力利用に反対するムーヴメントはあるんだけど、まだ誰も十分な代替案を伴ってはいないんだよね。

 もちろん、原子力利用だけが答えじゃないよ。エネルギー使用を抑えるということもできると思う。この問題はもっと議論を深めないとならないことだよね。たとえば、チェルノブイリにしても、人間には大変な悪影響を及ぼしたけども、事故現場の周りでは自然の生態系は問題なく生きていた。そこでジェームス・ラヴロックが面白い提案をしていて、放射性廃棄物をアマゾンの奥地に移せばいいと言ってたんだ。そこに住む生物は構わないだろうし、ジャングルにも全体的に影響はない。人間はそこには絶対行かないしね。これもひとつの意見だよね......とはいえど、こういった話はミュージシャンが発言していいとは思わないけど......。


(註:ジェームス・ラヴロックは、コーンウォール在住のイギリスの環境学者で、地球をひとつの生命体という視点からエコロジーを論じた1979年の『地球生命圏 ガイアの科学』は日本でも話題となった。彼の理論に対しては批判もあり、温暖化に関する諸説には本人も過ちを認めている)


ふむ。


野田:原発に関して言えば、日本には地震があるうえに、民間マターでダメだったのに行政も良いほうに機能してないし、電気料は根上がるし......深刻な状況にあるんです。でも、いまのような意見は日本ではなかなか言えないことのひとつだよね。


アル:たしかに僕がこういうことを言うのは簡単なことであって、日本では困難だと思うんだ。事故の記憶はまだ鮮明だから。ひとまず事故の記憶から距離を置けるようになってから判断をしていくべきかもしれない。何が起きているのかを明らかにしなければいけないし、政治家が結論を下すのも、事故からいくらか年数を経る必要があると思うんだ。


ふむ。


野田:政府もこの数年でどんどん酷い事態になっているし......。


アレクシス:大きい規模の話のなかで意味があるかわからないけども......、あ、これは嘘じゃないよ、僕たちは津波の被災者のためのチャリティーに参加しているんだ。


ふむ。


アレクシス:映像作家のグレゴリー・ルード(Gregory Rood)が明確な態度をもっているバンドを集めたミュージック・ヴィデオのシリーズがあって、そのうち一組がホット・チップなんだ。僕たちの曲"Look At Where We Are"のヴィデオを日本のアニメ監督に作ってもらって、ヴァースの部分でマヘル・シャラル・ハシュ・バズ(Maher Shalal Hash Baz)という日本のバンドをフューチャリングしたものを、今年の後半に出せればいいなと思ってる。レコーディングは済んでいるのだけれども、詳細がどうなっているかは分からない。この活動が、基金であったり、被災者にとって何らかの意味のあるものとして機能してほしいなと思っています。


なるほど。Thank you!


アル:いいよ!(日本語で)「どういたしまして」。


どうしよう、何か聞きたいことあったのにな......忘れちゃったな......。


アル:ふふふふ(笑)。


これも嘘でなくて結構です。アレクシスはギターが上手いと答えてくれました。アレクシスはライヴのステージ上でギターを弾く時に"Hold On"でエフェクトを深くかけて弦をかきむしりノイズのような音を出したり、動きの小さいフレーズのみを弾いたりしていますね。ギターに対してコンプレックスがあるのかなと以前から感じていました。新曲の"Flutes"では「I put a prucked string today(今日は、弦楽器をひとつ乗せよう)/Beside a note you taught me play(きみが教えてくれた音色に合わせて)/A wooden box breathes away(木の箱が大きく息づいている)/Never again...Never again...(二度とない......二度とない......)」という歌詞がありますが、これはどういう意味なのでしょうか。実際のギターに関する体験なのですか?


アレクシス:これはギターに関して歌っているわけではないんだ。"Flutes"で僕が考えていたのは、僕の大好きなザ・ビーチ・ボーイズの音楽への認識についてで、あ、これも嘘じゃないよ。


アル:あはははは(笑)!


アレクシス:『ペット・サウンズ』は、音楽に何個も新しいタンブラーを導入して新しいテクスチャーを導入したアルバムだと思うんだ。ブライアン・ウィルソンは、普通だったらポップ・ソングでは同時に鳴らさないような楽器を重ねて、それぞれに同じラインを演奏させて、レイヤーを作ったからね。そこで僕がさっきの歌詞で考えていたのは、reed instrument(簧楽器)の隣でバンジョーみたいな「prucked string」(撥弦楽器)を鳴らすことで......。僕の音楽部屋にはペダルの付いたハーモニウムを持っていて、それが「A wooden box breathes away(木の箱が大きく息づいている)」の意味なんだ。だから僕が歌っていたのは、ブライアン・ウィルソンが僕の隣で演奏を聴いていて、アレンジを教えてくれている画なんだ。「wooden box」(ハーモニウム)を「prucked string」(撥弦楽器)の隣で鳴らすんだ、みたいにね。


なるほど。


アレクシス:でも、なんで「Never again...Never again...(二度とない......二度とない...)」と歌ったのかはまったく憶えていないな。この曲の歌詞はジョーが新しい音楽を送ってくれることにとても関係してて......、だからたぶん、こんなに音楽的にエキサイティングな瞬間は二度とないかもしれないということを言っていたんだと思う。提供者であるジョーからこの曲を受けとって、唯一無二なクリエイションの時間に興奮しすぎてたんだね。


ふふふふ。


アレクシス:そして、ギターに関して......ギターを弾くのは本当にとても好きだよ。いいサウンドは作れると思うんだけど、演奏に自信がない楽器は他にもあるんだ。アルはとてもいいギタリストだし、ロブ(Rob Smoughton。ホット・チップに初期から関わっており、現在もライヴやレコーディングに参加している。ソロ・プロジェクトはGrovesnor)もいいよね。ただ、オーウェン(Owen Clarke)も僕と同じで、あらかじめ決められた演奏はできるけど、ナチュラルにギターを弾くということができないんだ。でも、アルはスティール・パンとかフリューゲル・ホルンもここ数年で練習をはじめだしてステージでも演奏しているし、自信があって得意な楽器だけでなく、熟知してなくて自信がないような楽器にも挑戦していくことがいいと思っているよ。


アル:そうだね。


なるほど。ありがとうございます。


アル:ありがとう。


もう終わりの時間ですね。では、最後にひとつ嘘をついてくれますか?


アル&アレクシス:いいよ!


(アレクシス、声を抑えて笑う)


いままでの人生で、嘘をついたことはありますか?


アル:ハハ、ハハハハハハハー......!


(沈黙、10秒)


(野田、耐え切れず声を抑えて笑う)


アレクシス:僕は嘘ばかりついて生きてきた。真実を話したのは、6月22日の12:20(註:インタヴュー開始時間)からだけで、それまでの32年間は嘘まみれの人生だった。


アル:ははは......そうだね(笑)。


野田:ふふふふふ(満足そうに笑う)!


アレクシス:付け加えておくと、僕はジャーナリストに真実を語ったことはないよ。


野田:うまい。Thank you very much for nice answers!


ありがとうございました!


アレクシス&アル:ありがとう!


Please take a rest(どうぞゆっくり休んでください)。


アレクシス:ははは!


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