「Lea Lea」と一致するもの

Oneohtrix Point Never with Jim O'Rourke and Eiko Ishibashi - ele-king

 2024年2月に東京および大阪での公演を控えるワンオートリックス・ポイント・ネヴァー。そのスペシャル・ゲストとして、なんとなんと、ジム・オルーク石橋英子の出演が決定! オルークは最新作『Again』にも参加していたわけだけれど、ここ日本でついに彼らがおなじステージに立つ、と。
 またこのアナウンスに合わせ、『Again』収録曲 “Nightmare Paint” のMVが公開されている。監督はアンドリュー・ノーマン・ウィルソン。目から出る光線でCDを焼く? なんとも印象的な映像なので、こちらもチェックしておこう。

DJ HOLIDAY - ele-king

 今年日本でも公開されて話題になった映画『ルードボーイ』、UKにおいて先駆的かつもっとも影響力のあったレゲエ・レーベルの〈トロージャン〉の物語である。で、この映画のヒットもあってか、このところ日本でも60年代、70年代のスカ、ロックステディ、アーリー・レゲエが静かに注目されているという。そんな折に、DJ HOLIDAYがまたしても〈トロージャン〉音源を使ったミックスCDをリリースする。
 〈トロージャン〉には膨大な量の音源があるわけだが、DJ HOLIDAYはそのなかから、クリスマス〜年末年始という、人恋しいこれからの季節に相応しいラヴリーな20曲を選んでいる。ロックステディの女王、フィリス・ディロンとアルトン・エリスによる甘々のデュエット曲“Love Letters ”からはじまるこの『Our Day Will Come』、有名曲のカヴァーも多く、きっといろんな人が楽しめるはず。ハードコア・バンド、Struggle for Prideのフロントマンとはまた別の表情の、珠玉のレゲエ集をどうぞお楽しみください。

DJ HOLIDAY (a.k.a. 今里 from Struggle for Pride)
Our Day Will Come : Selected Tunes From Trojan Records
TROJAN/OCTAVE-LAB

フォーマット:CD
発売日:2023年12月20日 (水)

TRACK LIST
1. Phyllis Dillon & Alton Ellis / Love Letters
2. B.B Seaton / Lean On Me
3. B.B. Seaton / Thin Line Between Love And Hate
4. Louisa Marks / Keep It Like It Is
5. Lloyd Charmers / Let's Get It On
6. John Holt / When I Fall In Love
7. Merlene Webster / It's You I Love
8. Slim Smith / Sitting In The Park
9. Pat Kelly / Somebody's Baby
10. Alton Ellis & The Flames / All My Tears
11. Derrick Morgan / Tears On My Pillow
12. Judy Mowatt / Emergency Call
13. The Heptones / Our Day Will Come
14. The Paragons / Maybe Someday (Oh How It Hurts)
15. Rudies All Around / Joe White
16. The Gaytones / Target
17. Ken Boothe / Why Baby Why
18. Ken Boothe / Now I Know
19. Owen Gray / I Can't Stop Loving You
20. Derrick & Naomi / Pain In My Heart /


〈TROJAN RECORDS 〉
イギリスに移住したジャマイカ人、リー・ゴプサルが1967年に設立した、イギリス初のレゲエ・レーベル。もともとは彼と同じように、移民としてイギリスで暮らすジャマイカ人たちのためにジャマイカ音楽を発信していたが、その音楽は労働者階級の白人にも浸透し、ある意味、その後のUKベース・ミュージックの下地を作っていく。リー・ペリーをはじめ、ジャマイカの一流アーティストたちによる名盤は数多く、また、アートワークも格好いいので、いまでも人気のレーベルであり続けている。

L’Rain - ele-king

 ブルックリン育ちのミュージシャン兼キュレーターのロレインことタジャ・チークは、3作のアルバムを通じて、彼女が「approaching songness(歌らしさへの接近)」と呼ぶ領域間で稼働してきた。その音楽は、記憶と連想のパリンプセスト[昔が偲ばれる重ね書きされた羊皮紙の写本]で、人生のさまざまな局面で作曲された歌詞とメロディーの断片が、胸を打つものから滑稽なものまで、幅広いフィールド・レコーディングと交互に織り込まれている。それはつねに変化し、さまざまな角度からその姿を現す。ニュー・アルバム『I Killed Your Dog』の “Our Funeral” の冒頭の数行で、チークはオートチューンで声を歪ませて屈折させ、息継ぎの度に変容させていく。焦らそうとしているわけではなく、一節の中に複数のヴァージョンの彼女自身を投影させるスペースを作り出そうとしているのだ。高い評価を得た2021年のアルバム『Fatigue』のオープニング・トラックは、「変わるために、あなたは何をした?」との問いかけではじまっている。ロレインは確かな進化を遂げながら、その一方でチークは、これまでの作品において、一貫性のある声を保っているのだ。ループするギター、狂った拍子記号、糖蜜のようににじみ出る、心を乱すようなドラムスなど、2017年の自身の名を冠したデビュー盤でみられた音響的な特徴は、『I Killed Your Dog』でも健在だ。同時にロレインは、これまでよりも人とのコラボレーションを前面に打ち出している。今回は、彼女とキャリアの初期から組んできたプロデューサーのアンドリュー・ラピンと、マルチ・インストゥルメンタリストのベン・チャポトー=カッツの両者が、彼女自身と共にプロデューサーとしてクレジットされているのだ。チークが過去の形式を打ち破ることを示すもっとも明白なシグナルは、気味が悪くて注意を引く今作のアルバム・タイトルに表れている。『I Killed Your Dog』の発売が発表された際のピッチフォークのインタヴューでは、これは彼女の「基本的にビッチな」アルバムであり、リスナーの期待を裏切り、意図的に不意打ちを食らわせるものだと語っている。また他のインタヴューでは、最近、厳しい真実を仕舞っておくための器としてユーモアを利用するピエロに嵌っていることに言及している。これは、感傷的なギターとピッチを変えたヴォーカルによる “I Hate My Best Friends(私は自分の親友たちが大嫌い)” という1分の長さの曲にも表れている。(念のため、実際には彼女は犬好きである。)
 メディアは、ロレインの音楽がいかにカテゴライズされにくいかということを頻繁に取り上げている。だが、チークが黒人女性であり、予期せぬ場で存在感を発揮していることから、これがどの程度当たっているのかはわからない。その点では、彼女には他のジャンル・フルイド(流動性の高い)なスローソン・マローン1(『Fatigue』にも貢献した)、イヴ・トゥモア、ガイカやディーン・ブラントなどの黒人アーティストたちとの共通点がある。「You didn’t think this would come out of me(私からこれが出てくるとは思わなかったでしょ)」と、彼女は “5to 8 Hours a Day (WWwaG)” で、パンダ・ベアを思わせるような、幾重にも重ねられたハーモニーで歌っている(「この歌詞の一行は間違いなく、業界へ向けた直接的な声明だ」と彼女はClash Musicでのインタヴューで認めている)。
 『I Hate Your Dog』 では、チークがこれまででもっともあからさまにロックに影響された音楽がフィーチャーされているが、彼女のこのジャンルとの関係性は複雑なものだ。最初に聴いたときに、私がテーム・インパラを思い浮かべた “Pet Rock” について、アルバムのプレス・リリースにはこう書かれている──2000年代初期のザ・ストロークスのサウンドと、若い頃のロレインが聴いたことのなかったLCDサウンドシステム──これには、一本とられた。
 彼女の初期のアルバムと同じくシーケンス(反復進行)は完璧で、各トラックを個別に聴くことで、その技巧を堪能することができる。これは、トラックリストに散りばめられたスキットやミニチュアに顕著で、アルバムのシームレスな流れに押し流されてしまいがちだ。33秒間という長さの “Monsoon of Regret” は、微かな焦らしが入ったような、混沌とした曲であり、“Sometimes” は、アラン・ローマックスがミシシッピ州立刑務所にループ・ペダルをこっそり忍び込ませたかのような曲だ。
 “Knead Be” がアルバム『Fatigue』の言葉のないヴォーカルとローファイなキーボードによる1分間のインタールードで、ヴィンテージなボーズ・オブ・カナダのようにワープし、不規則に揺れる “Need Be” をベースにしている曲だと気付くには、注意深く聴き込む必要がある。この曲でチークは、そのトラックに沈んでいたメロディーの一節を、小さい頃の自分に、物事がうまくいくことを悟らせる肯定的な賛歌へと拡大した。ただ、その言葉(「小さなタジャ、前に進め。あなたは大丈夫だから」)はミックスの奥深くに潜んでいるため、歌詞カードを見ないと、何と歌っているのか判別するのが難しい。
 初期の “Blame Me” のような曲では、チークはひとつのフレーズのまわりを、まるでメロディーの断片が頭の中に引っかかってリピートされているかのようにグルグルと旋回する。『I Killed Your Dog』では、何度かデイヴィッド・ボウイの “Be My Wife” のようなやり方で、一度歌詞を最後まで通したかと思うと、またそれを繰り返して歌う。あらためて聴き返すと、彼女が足を骨折した後に書いたバラード調の “Clumsy(ぎこちない・不器用)” ほどではないが、歌詞は、その歌詞に出てくる問いかけ自体に回答しているかのように聴こえる。“Clumsy” では曲の最後に、冒頭で投げかけた問いへと戻る。「想像もつかないような形で裏切られたとき、(自分が足をついている)地面をどのように信頼しろというの?」
 彼女はまだ、答を探り続けているのかもしれない。
 終曲の “New Years’ UnResolution” は、チークがアルバムを「アンチ・ブレークアップ(別れに反対する)」レコードと表現したことを端的に表している。この曲でも、歌詞がループとなって繰り返されるが、今回はその繰り返しの中で、歌詞が大きく変えられているのだ。彼女はその言葉には、別れた直後と、かなりたってから、後知恵を働かせて書いたものがあると説明している。バレアリックなDJセットで、宇多田ヒカルの “Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り-” と並べても違和感のない、ダブ風のキラキラと揺れる光のようなグルーヴに乗せて、チークは、陰と陽のような、互いを補いあう2つのヴァースを生み出している。

ひとりでいるのがどんな感じか忘れてしまった
雨を吐いて 雪を吐き出す。
日々は、ただ古くなっていく
何も持たないということがどんなものか知っている?
どんなものかは知らないけれど
あなたは今夜ここに来る?
私から電話するべきか あるいは無視するべき? 私は……する
恋をするということがどんな感じか忘れてしまった
太陽を飲み込んで 雪を吐き出す
日々は、古くはならない。
何かを持っているということがどんなことか知っている?
ふたりともそれを知っている。
ただ真っ直ぐに私の目を見て
あなたから私に電話するべきか あるいは私を無視するべき? あなたは……する

 彼女はいまや、人生を両側から眺めることができたのだ。


L’Rain - I Killed Your Dog

written by James Hadfield

Across three albums, L’Rain – the alias of Brooklyn-raised musician and curator Taja Cheek – has operated in an interzone that she calls “approaching songness.” Her music is a palimpsest of memories and associations, interleaving fragments of lyrics and melodies composed at different points in her life, with field recordings that range from poignant to hilarious. It’s constantly shifting, revealing itself from different angles. During the opening lines of “Our Funeral,” from new album “I Killed Your Dog,” Cheek contorts and refracts her voice with AutoTune, morphing with each breath she takes. It isn’t that she’s playing hard to get, more that she’s making space for multiple versions of herself within a single stanza.

“What have you done to change?” asked the opening track of her widely acclaimed 2021 album “Fatigue.” L’Rain has certainly evolved, but Cheek has maintained a consistent voice throughout her work to date. Many of the sonic signatures from her self-titled 2017 debut – looping guitar figures, off-kilter time signatures, phased drums that ooze like treacle – are still very much present on “I Killed Your Dog.” At the same time, L’Rain has become a more collaborative undertaking: She’s quick to credit the contributions of producer Andrew Lappin – who’s been with her since the start – and multi-instrumentalist Ben Chapoteau-Katz, both of whom share producer credits with her this time around.

The most obvious signal that Cheek is breaking with past form on her latest release is in the album’s lurid, attention-grabbing title. As she told Pitchfork in an interview when “I Killed Your Dog” was first announced, this is her “basic bitch” album, pushing back against expectations and deliberately wrong-footing her listeners. She’s spoken in interviews about a recent fascination with clowns, who use humour as a vessel for hard truths. In this case, that includes a minute-long song of gooey guitar and pitch-shifted vocals entitled “I Hate My Best Friends.” (For the record, she loves dogs.)

Media coverage frequently notes how resistant L’Rain’s music is to categorising, though it’s hard to say how much this is because Cheek is a Black woman operating in spaces where her presence wasn’t expected. In that respect, she has something in common with other genre-fluid Black artists such as Slauson Malone 1 (who contributed to “Fatigue”), Yves Tumor, GAIKA and Dean Blunt. “You didn’t think this would come out of me,” she sings on “5 to 8 Hours a Day (WWwaG),” in stacked harmonies reminiscent of Panda Bear. (“That line is definitely a direct address to the industry,” she confirmed, in an interview with Clash Music.)

“I Hate Your Dog” features some of Cheek’s most overtly rock-influenced music to date, although her relationship with the genre is complicated. According to the press notes for the album, “Pet Rock” – which made me think of Tame Impala the first time I heard it – references “that early 00’s sound of The Strokes and LCD Soundsystem that L’Rain never listened to in her youth.” Touché.

Like her earlier albums, the sequencing is immaculate, and it’s worth listening to each track in isolation to appreciate the craft. That’s especially true of the skits and miniatures scattered throughout the track list, which can get swept away in the album’s seamless flow. The 33-second “Monsoon of Regret” is a tantalising wisp of inchoate song, reminiscent of Satomimagae; “Sometimes” is like if Alan Lomax had snuck a loop pedal into Mississippi State Penitentiary.

It takes close listening to realise that “Knead Be” is based on “Need Be” from “Fatigue,” a one-minute interlude of wordless vocals and lo-fi keyboards that warped and fluttered like vintage Boards of Canada. Here, Cheek takes the wisp of melody submerged within that track and expands it into a hymn of affirmation, in which she lets her younger self know that things are going to work out – though her words of encouragement (“Go ’head lil Taja you’re okay”) lurk so deep in the mix, you’d need to look at the lyric sheet to know exactly what she’s singing.

On earlier songs such as “Blame Me,” Cheek would circle around a single phrase, like having a fragment of a melody stuck in your head on repeat. Several times during “I Killed Your Dog,” she runs through all of a song’s lyrics once and then repeats them, in the manner of David Bowie’s “Be My Wife.” Heard again, the words sound like a comment on themselves – no more so than on the ballad-like “Clumsy” (written after she broke her foot), when she returns at the end of the song to the question posed at its start: “How do you trust the ground when it betrays you in ways you didn’t think imaginable?” It’s like she’s still grasping for an answer.

Closing track “New Year’s UnResolution” – which best encapsulates Cheek’s description of the album as an “anti-break-up” record – also loops back on itself, except this time the lyrics are significantly altered in the repetition. She’s explained that the words were written at different points in time, both in the immediate aftermath of a break-up and much later, with the earned wisdom of hindsight. Over a shimmering, dub-inflected groove that wouldn’t sound out of place alongside Hikaru Utada’s “Somewhere Near Marseilles” in a Balearic DJ set, Cheek delivers two verses that complement each other like yin and yang:

I’ve forgotten what it’s like to be alone
Vomit rain spit out snow.
Days, they just get old.
Do you know what it’s like to have nothing?
I don’t know what it’s like.
Will you be here tonight?
Should I call you or should I ignore you? I will...
I’ve forgotten what it’s like to be in love
Swallow sun spit out snow
Days, they don’t get old.
Do you know what it’s like to have something?
We both know what it’s like.
Just look me in the eye.
Should you call me or should you ignore me? You will...

She’s looked at life from both sides now.

André 3000 - ele-king

 数ヶ月前、渋谷のど真んなかにある高いタワーで開催されたWeb3のイベントに参加していたとき、私は、そこにいた何人かの人びとのあいだの小さな騒ぎを感じた。目の前にはフルートを持った背の高い黒人の後ろ姿があった。世界各地において幽霊が訪れたかのごとき「目撃(sitting ) 」情報は何度か耳にしていたが、私は幸運にもアンドレ3000を目の当たりにすることができたわけだ。もっとも怖気づいた私は舌を噛むだけで、彼に何かしたわけではなかった。だいたい特段アウトキャストのファンではなかった私は、ノスタルジーからスターストラック(スターに夢中) になったわけではないのだ。彼のことを意識するようになったのは、アウトキャストの最後の2枚のリリースと、その後何年にもわたってアンドレがランダムに発表したゲスト作品がきっかけだ。まあ、いまとなってはファンかもしれない。みんなと同じように私も彼の精神状態を心配していたのだから。

 アンドレ3000の17年ぶりとなるアルバムが、パレスチナのガザで大虐殺が起こっているのとまったく同じ時期にリリースされたのは偶然の一致だろう。だが、ほんとうにそうなのだろうか? 宇宙はおかしなものだ。彼は「No Bars(小節はない)」とはっきり言っているので、この音楽のアクアティックな性質に驚く人はいないだろう。瞑想的、アンビエント、シンプル、リラックス、退屈などなど。誰も予想していなかったこのレフトフィールド作品を形容する形容詞はまこと多い。フランク・オーシャンの古典 (クラシック) 『Blonde』収録の“Solo (Reprise)”で、息もつかせぬ勢いを見せた男の作品だ。クラシック (古典) のさらにそのうえのクラシカル (古典的) なミュージシャン。

 2024年、文字通り指先ひとつでどんな音楽にもアクセスできるようになったいま、1970年代と聞いてもピンとこないかもしれない。ファラオ・サンダースの『Thembi』(1971)を彷彿させる緑色の服を着たジャケット写真は、多くの人が西洋社会の侵略に抗議するために着ていた、インドの影響を受けたスピリチュアルな服装に似ている。だが、そんなことをもう多くの人が理解しようとすることはないし、憶えていないかもしれない。フリー・ジャズやスピリチュアル・ジャズの伝説的なジャズの多くが、高次な意識に到達するためにフルートを演奏していたことを多くの人は理解していないし、憶えていないかもしれない。

 『ニュー・ブルー・サン』はラップの世界にとっては驚きだが、70年代のジャズの名人芸を排した黒人的伝統に完璧にフィットしている(インドから音楽的、精神的に影響を受けたことは注目に値する)。マイルス・デイヴィスの『In a Silent Way』を思い出せばいい。絹のようなメロディ、スローモーションのヴァイブ、リズムが飛び込んでくるまでのムーグ演奏によるゴージャスな地図。あるいは、コルトレーンの『A Love Supreme』における感情的な呪文。そして、数多のサン・ラー作品で聴ける、インストゥルメンタル神秘主義の奇妙な響き。アンドレは、経済的な状況を顧みることなく非商業的でエキセントリックな道を受け入れ、かれこれ50年以上にわたって継続されている、フォロワーたちにカーブボールを投げることを決めた黒人アーティストの系譜をたどっているのだ。

 各トラックに付けられた凝った皮肉たっぷりのタイトルは、誰もが面白がるだろう(*)。だけどジャズ・ヘッズは音楽のシンプルさにがっかりするかもしれない。しかし、それでいいのだ。皮肉屋は、この太陽の下に新しいものは何もないと言うだろう。しかし、そんなことはない。アンドレ3000のレフトフィールド・リリースは、いまのところ唯一、インスタグラムのストーリーやソーシャルメディア上で伝染していく実験的音楽だ。あたかもビートとフローがあるかのように、ほとんどビートのないニュー・アルバムにうなずくアトランタのヒップホップ・ファンのユーモアを反映したミームがインターネット上には溢れかえっているのだ。CD/レコード店の実験的ジャンルの売り場には足を踏み入れたこともない、つまりこのようなアルバムを手に取ることもないような人たちが、アンドレ3000が作ったこのチルな新世界について、友人たちに(私がそうだったように!)チェックしておくべきだと吹聴しているのは明らかな事実だ。

 ときに歴史は繰り返されるものだが、重要なのは文脈なのだ。セラピーの適切さが広く認識されるようになったいま、ブラック・ライヴス・マターであれガザ占領の終結であれ、人びとが抗議のために通りに飛び出す準備が整っているいま、自殺や深刻な精神疾患は治療や予防が可能だと多くの人が感じているいま、『ニュー・ブルー・サン』は、みんなの重たい心を休ませるために作られた、この戦争の年の最後の 鎮静剤 (レッド・チル・ピル**) であり目印である。


訳注 *たとえば1曲目は “本当に "Rap "アルバムを作りたかったんだけど、今回は文字通り風が吹いてきた”。2曲目“俗語であるプッシーは、正式表現であるヴァギナよりも遥かに簡単に舌を転がす。同意する?” /**レッド・ピル=『マトリックス』に出てくる現実が見える薬/チル・ビル=リラックス剤。


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Andre 3000 - New Blue Sun

by Kinnara : Desi La

Several months ago, while attending a web3 event in a tall tower in the center of Shibuya, I felt a small commotion among some of the people there. In front of me was the back of a tall Black man carrying a flute. Having heard the stories numerous times of these “sitings” around the world, like a ghost visiting, I was lucky enough to witness Andre 3000 myself. Intimidated, I bit my tongue and let him be. Never an OutKast fan, I wasn’t star struck from nostalgia. I came to him late with their last 2 releases and then the scattered guest drops he popped up on randomly over the years. A fan, yes but also concerned of his mental state knowing other people had similar concerns.

The release of Andre 3000`s first album in 17 years at exactly the same time as a genocide is occurring in Gaza, Palestine is a coincidence. Is it? The universe is funny that way. He's said very clearly “No bars” so no one is surprised by the aquatic nature of the music. Meditative, ambient, simplistic, relaxing, boring, etc. There are numerous adjectives that could be used to describe this left-field work that no one was expecting. This from the man that killed “Solo (Reprise)” on Frank Ocean`s classic Blonde breathlessly. A classic musician upon a classic.

2024 with access to any type of music at ones finger tips literally, heads may not connect the dots to the 1970`s. Or the jacket photo`s resemblance to Thembi by Pharaoh Sanders with green clothing similar to the Indian influenced spiritual garb that many wore to protest the aggressions of western society. Many may not understand or remember that many Jazz legends of free jazz or spiritual jazz took on the flute to reach higher consciousness.

New Blue Sun is a surprise to the world of rap but fits perfectly in the Black tradition of 70`s out Jazz minus the virtuosity (which notably was influenced musically and spiritually by India). You only need to look back at Miles Davis` In a Silent Way. A gorgeous map of silky melodies, slow motion vibes and Moog vistas before the rhythms jumps in. Or the emotional incantations of Coltrane`s A Love Supreme. Numerous Sun Ra albums too many to mention evoke the quirky side of instrumental mysticism. Andre follows a lineage stretching over 50 years of Black artists who decided to throw curve balls to their followers embracing noncommercial eccentric pathways regardless of economic fallback.

The elaborate tongue in cheek titles of each track will amuse anyone. Jazz heads may be disappointed in the simplicity of the music. But that’s ok. The cynic will say there is nothing new here under the sun. But that’s not what is happening. Andre 3000`s left field release is probably the only experimental music that is viral across instagram stories and otters social media. Memes have flooded the internet reflecting humor of Atlanta hip hop fans nodding to the almost beatless new album as if there were beats and flows. Its a clear fact that people who would never venture into the experimental aisle of a music store (if there were one) and pick up such an album are dming their friends (as happened to me!) about this chill new world made by Andre 3000 which I should check out. Though history sometimes repeats itself, the context is most important. In a time of wider recognition of therapy’s relevance, in such a time when people are ready to run out into the street to protest, whether for Black Lives Matter or the end of occupation in Gaza, in such times that many feel that suicides and severe mental illness is treatable and preventable, A New Blue Sun is a red chill pill last earmark in this year of war made to lay everyone’s heavy heart to rest.

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Sleaford Mods - ele-king

 「死んだ方がマシなときもある/銃を自分のこめかみに当てて」という歌い出しからはじまるHi-NRGサウンド。ペット・ショップ・ボーイズの永遠の名曲“ウェスト・エンド・ガールズ”を、なんとスリーフォード・モッズがカヴァーし、Bandcampや配信で発表した。そもそも1980年代半ばのこの大ヒット曲は、サッチャー政権下のヤッピー文化(小金持ちの若者文化)を風刺した曲と言われている。「ぼくたちに未来はなく過去もない。ただ今日だけがある」、いかにも英国風のひねりの利いたこの曲をスリーフォード・モッズがカヴァーすることが面白い(先行発表のMVはオリジナルのパロディで、笑える)。しかも、この曲の収益は、ホームレスを支援している団体に寄付される。ペット・ショップ・ボーイズ本人たちもこのシングルを讃え、シングルでは自らリミキサーとしても参加。そしてこうコメントしている。「スリーフォード・モッズは、大義のためにイースト・エンド(労働者階級)の少年たちをウエスト・エンド(繁華街)のストリートに呼び戻してくれた」
 ちなみにジェイソン・ウィリアムソンは、「ペット・ショップ・ボーイズのアルバム『Please』と『Actually』をよく聴いている」そうだが、この2枚、ほんとうに名作です。PSBといえば、この2枚さえ聴いておけばいいくらいに。
 なお、フィジカルの発売は12月15日。


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 また、スリーフォード・モッズは最近は、ドイツのミニマリスト、Poleのリミックスも発表している。これが結構いいんです。
 

Felix Kubin - ele-king

 フェリックス・クービンのルックスを見た誰もが思うことだが、一時期の彼はまるで『マンマシーン』時代のクラフトワークのメンバーに紛れていても違和感がない。あるいは、一時期の彼は東ドイツの面影がどこか漂っているが、彼はハンブルク生まれである。フェリックス・クービンに関してまず言われることは、「彼はノイエ・ドイチェ・ヴェレ」より15年遅く生まれた、ということである。そう、遅かったNDW。11歳の少年がラジオから流れるレジデンツのアルバムを録音し、何度も繰り返し聴いている姿を想像してみて欲しい。13歳の少年がホルガー・ヒラーやデア・プラン、DAFに心酔し、自らも電子音楽家として作曲し、ステージに立ち、演奏をはじめる。ホルガー・ヒラーがサンプリングしたリゲティ、ショスタコーヴィチ、ヴァレーズを調査し、ノーノ、クセナキス、シュトックハウゼンを聴き漁る。ダダイズムやマン・レイの美学を取り入れ、そこにアナキズムと共産主義を合成する。クービンは90年代末からまったく時代のトレンドとは合致しない作品を出していく。ちなみに98年に設立した彼のレーベルは〈ガガーリン〉といって、これは「世のなかの嫌なことに反対するのではなく、衛星になれ。地球と一緒に飛ぶ。パラレルな別の人生を生きているんだ」という意味が込められている。
 さて、そんなドイツの天才児、鬼才のなかの鬼才はゼロ年代以降、ばしばしと奇妙な前衛テクノ・ポップ作品を出していくのだが、ここのディスクグラフィーはいまは省略する。というのも、このニュース原稿は、小柳カヲルによる新潟の〈Suezan〉レーベルがこのたび、クービンの少年時代の2枚のアルバムをリイシューしたことを知らせるために書いているのだ。
 クービンは、「元天才児」という言葉も、よく言われている。今回の2枚は、「現役天才児」だった時代のもので、ドイツが生んだ、このとんでもないオタクの初期衝動のすごさを見せつけている。すべての電子音楽ファンよ、フェリックス・クービンを聴かずして、テクノを語るなかれ。


フェリックス・クービン
ザ・テッチー・ティーネイジ・テープス・オブ (CD) 完全限定プレス

(Felix Kubin / The Tetchy Teenage Tapes Of)
・2023年版最新デジタル・リマスター使用
・完全限定プレス
・日本独占リリース!


ディー・エゴツェントリッシェン2
科学者たちの反乱 (CD) 完全限定プレス

(Die Egozentrischen 2 / Der Aufstand der Chemiker)

http://suezan.com/minori/newrelease

Zettai-Mu “KODAMA KAZUFUMI Live in Osaka 2023” - ele-king

 長きにわたり KURANAKA a.k.a 1945 が大阪でつづけてきたパーティ《Zettai-Mu》。その最新イヴェントになんと、こだま和文が登場する。関西公演はおよそ5年ぶり、パンデミック後としては初とのこと。バッキングDJは KURANAKA が務める。ほか、メインフロアにはDUB LIBERATION、Tropic Thunder、motokiらが出演、セカンド・エリアにも関西クラブ・ミュージック・シーンを代表するDJたちが集結する。12月16日(土)、スペシャルな一夜をぜひ NOON+Cafe で。

AMBIENT KYOTO 2023最新情報 - ele-king

 好評開催中の「AMBIENT KYOTO 2023」、最新情報のお届けです。会場ごとに撮りおろした参加アーティストの作品動画が本日より公開となります。坂本龍一+高谷史郎、コーネリアスバッファロー・ドーター山本精一の4組分、2023年末までの限定公開です。

 あわせて、イベント情報も発表されています。12月10日(日)、坂本高谷作品が公開されている京都新聞ビル地下1階にて、原摩利彦+中山晃子、古舘健+YPY(日野浩志郎)、E.O.U.+Saeko Ehara、小松千倫+jvnpeyによるパフォーマンスが披露されます。その後京都メトロにてアフターパーティも予定されているとのこと。ぜひ足を運んでみてください。

AMBIENT KYOTO 2023
-撮り下ろし作品 スペシャルムービーを2023年11月20日(月)より期間限定公開
-コラボレーションイベント ACTIONS in AMBIENT KYOTO 12月10日(日)開催決定
会期:2023年10月6日(金) - 12月24日(日)

2023年10月6日(金)より12月24日(日)まで、京都の2会場を舞台に開催されている、アンビエントをテーマにした音・映像・光のインスタレーション展「AMBIENT KYOTO 2023」より最新情報をお送りします。

参加アーティスト 坂本龍一 + 高谷史郎、コーネリアス、バッファロー・ドーター、山本精一 の作品動画を、会場ごとに撮り下ろし、11月20日(月)より2023年末まで、期間限定で公開いたします。

また、「AMBIENT KYOTO 2023」とのコラボレーションイベントとして、「ACTIONS in AMBIENT KYOTO」の開催が決定しました。12月10日(日)には、「坂本龍一 + 高谷史郎 | async - immersion 2023」作品が展開されて いる京都新聞ビル地下1階にて、ライブ・パフォーマンスが行われます。
その他、「Farmoon x Miu Sakamoto "wonder" X AMBIENT KYOTO 2023」が開催されるなど、会期終了まで様々 なコラボレーションイベントも実施する予定です。

会期も折り返し地点を迎えた「AMBIENT KYOTO 2023」をさまざまな角度からお楽しみください。

◉会場: 京都新聞ビル地下1階
坂本龍一 + 高谷史郎 | async - immersion 2023

動画リンク: https://youtu.be/6TzTRUlqb9A

坂本龍一が2017年に発表したスタジオ・アルバム『async』をベースに制作 された高谷史郎とのコラボレーション作品の最新版。京都新聞ビル地下の広 大な空間を使い展開するサイトスペシフィックなインスタレーション。

作品詳細・アーティストコメント
https://ambientkyoto.com/exhibition

◉会場:京都中央信用金庫 旧厚生センター
Cornelius、Buffalo Daughter、山本精一 3組のアーティスト作品

動画リンク: https://youtu.be/70Y0hRh3EjM

Cornelius : QUANTUM GHOSTS / TOO PURE / 霧中夢 -Dream in the Mist-
Buffalo Daughter : Everything Valley / ET(Densha)
山本精一 Silhouette

詳細は下記よりご覧ください。
作品詳細・アーティストコメント https://ambientkyoto.com/exhibition
作品&アーティスト概要資料 https://www.how-pr.co.jp/pressrelease/2023_AmbientKyoto_works.pdf

【コラボレーションイベント】
ACTIONS in AMBIENT KYOTO

京都新聞本社ビル地下1階の坂本龍一+高谷史郎による「async - immersion 2023」のために設置された横幅20mを超えるLEDスクリーン、そして、30台以上のスピーカーを活用した4組のコラボレーション・ライブ・パフォーマンスを開催します。広大な空間にエクスペリメンタルな音響が漂います。終演後にはmetroにてアフターパーティーを開催予定。詳細は、下記ウェブサイトをご覧ください。
https://interference-resonance.ekran.jp/

開催概要 日時:12月10日(日)
会場: 京都新聞ビル地下1階

ライブパフォーマンス
・原摩利彦と中山晃子が初のコラボレーション。
・古舘 健とYPYこと日野浩志郎によるオーディオビジュアルのデュオパフォーマンス。
・近年、クラブ/レイブシーンで大きく注目を集めるE.O.U.のパフォーマンスに、AIとジェネラティブアートを組み合わせたビジュアル作品を発表しているSaeko Eharaが映像で参加。
・現代美術と音楽の間で活動する小松千倫と新進ビジュアルアーティストであるjvnpeyによるコラボレーションパフォーマンス。

公式ホームページ. https://ambientkyoto.com
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J.A.K.A.M. - ele-king

 グローバル・ビーツの開拓者として確かな支持を得るJUZU a.k.a. MOOCHY こと J.A.K.A.M. が、11月27日に新たなアルバム『FRAGMENTS』をリリースする。

 本作はJ.A.K.A.M. が2020年にインド・ケララ州でのフィールド・レコーディングを通じて得た体験とサウンドに加え、 2023年にパキスタンのカラチ~ラホール~ペシャワールにおいても敢行された録音による伝統楽器にフィーチャーしたサウンドが特徴だ。スケート・カルチャーに端を発し、世界を股にかけてマイペースに活躍する彼の新境地が体感できるだろう。まさしく収録のトラックタイトル通り「NEW ASIA」な雰囲気漂う本作には、東洋と西洋の間に横たわる断絶が和らぐ未来を目指しつつ、まず「新しいアジア」としての連帯を呼びかけるメッセージも込められている。

 また、「2038年」という時代設定で作られた小説もアルバムと同時進行で制作されており、アジア圏とアラブ圏の文化が混ざり合い、混沌のなかに土の匂いを見出すような世界との触れ方が描写されている。16ページフルカラーブックレット入り。サウンドとあわせてチェックを。

Sun Ra - Nuclear War - ele-king

XYZ 01

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