「S」と一致するもの

 ライヴ会場を救おうというUKの#saveourvenuesは、すでにドネーションが100万ポンド(約1億4千万円)に達したそうだ。これは、アマゾン・ミュージック、ベガーズ・グループ、ソニー、キリマジェロ・ライヴ、DHPなどといった企業からの寄付が大きい。さらに現ロンドン市長サディク・カーンの緊急文化援助基金より、45万ポンド(約6300万円)が追加される見込。
 #saveourvenuesを主宰するMVT(The Music Venue Trust)は、当初、営業できない全国のヴェニューを救うには最低100万ポンド必要だと公表してこのキャンペーンを開始した。ベガーズ・グループ社長のマーティン・ミルズは即「私たちが生き残るにはこれらの場所が必要だ」として「このキャンペーンを完全に支持する」と意思表示している。欧州アマゾン・ミュージックの責任者も「UKのライヴ事業は特別で、UK音楽文化の重要な要素だ」とし、UKの音楽コミュニティのサポートに手応えを感じているようだ。

 これを日本に当てはめて考えると、#saveourspaceに東京都知事がぼんと6千万の援助金、およびいくつかの儲かってる企業もぼんとお金を出して、とにかく音楽は重要な文化なのだから全国のヴェニューを救おうと、そういうムーヴメントが起きているという洗煉された話です(金なら無利子で貸すという冷たい話じゃありません)。

出典(https://completemusicupdate.com/article/mvts-saveourvenues-secures-1-million-in-donations-but-more-needs-to-be-done/

R.I.P. Tony Allen - ele-king

文:増村和彦

 誰よりもオリジナリティを湛えたドラミングで僕たちを踊らせて、何よりも僕たちを解放に導いてくれたトニー・アレンがいなくなってしまった。

 「一部のドラマーは、ソフトに演奏するという意味を知らない、彼らの辞書にないんだ」彼は2016年にそう言った。「私のドラムは派手に盛り上げることだってできる。が、しかしもっと繊細に叩くことだってできる。その音は、まるで川がながれるように聞こえるだろう」

 あらためてソフトに演奏するということに思いを馳せる。
 
 “アフロビート”の向こう側に見える“アフロなビート“の醍醐味のひとつは、ひとりひとりが叩き出すリズムはシンプルながら、それらが絡み合ったとき形成される大きなうねり。ダイナミック且つロジカルで、究極の共同分担作業。もうひとつは、うねり続けることによって得られる高揚感。いつの間にか思考が薄れ、渦のなかにただいるかのような感覚。繰り返しに気持ちよさを感じる経験は演奏しなくても誰しもきっとあると思う。そして、そのビートは多くの場合ダンスと密接な関係を持つ。
 トニーは、ドラムという楽器でこれをひとりでやってしまった。右手、左手、右足、左足にそれぞれドラマーを湛え、それらは絡み合ってタイトにうねる。そして、そのビートは踊らすこと以外のためにはないと語る。トニーが抜けたあとのアフリカ70に、複数のドラマーが必要だったという伝説も頷ける。
 “アフロビート”には大いに“アフロなビート“の影響があると思いたい。その上で“アフロビート”たらしめたのは、もう散々伝えられている通りジャズの影響だった。トニーは、バップ・ドラミングとりわけアート・ブレイキーのドラミングを聴いて、ひとりではなく、まるで複数人で叩いているように聞こえたそうだ。あなたのドラムを初めて聴いた時、全く同じことを思ったよ!
 たしかに、フレーズがバップまんまなところがあるというのはわからないでもないが、そんなことではなくて、キック・スネアもフレージングの一部にしていくバップのアイデアと、“アフロなビート“感覚の融合が、“アフロビート”を生み出す原動力になったのではないか。トニーのドラムは、いつも同じ匂いがしながらも、よく聴くとフレーズの多様さに溢れている。トニーが叩いていると一聴しただけでわかるのに、全く同じフレーズというものがない。覚えたフレーズを使うのではなくて、自在に四肢でフレージングさせていく。しかも、踊らせることを忘れることなく、複雑なことをやっているようで、その実はシンプルだ。これは本当にすごいことだ。あなたのドラムを初めて聴いた時、頭にスネアがバシッとくるだけで面食らったよ!
 もっともジャズに近いけど絶妙に所謂スイングはしないニクいハット、変幻自在で流れるようなスネアワーク、タイトなベードラ、嵐のようなフィルとそのあとのスネア頭一発、どれもしびれ上がるけど、どうやらそれらを操っている部分があることに段々気づいてきた。おでことおへそが、みぞおちの辺りで繋がっている感じ、第三のチャクラとかスポットとかいろいろな呼び方があるのだろうが、そういえば、ブレイキーも、ケニー・クラークも、バップドラムをさらに進化させたエルヴィン・ジョーンズもそこで叩いているような気がしませんか。常にリラックスしながら、たとえ音が小さくても太鼓がとても気持ちよく響き、フィルの瞬間風速は凄まじく、いつまでも止まらないかのようなビートで踊らせてくれる。

 ソフトに演奏するって、こんなことらなんじゃないかなって思いながら書いていたけど、きっとそれだけじゃないですよね。「川のように流れていく(flowing like a river)」ドラム、わかる気もするけど、まだわかっていないことのほうが多い。でも、これからも多くの気づきを与えてくれそうな感じがするのも楽しみで、ずっと聴き続けたくなります。
 60年代フェラ・クティと出会った頃すでに“アフロビート”ドラミングのスタイルを確立していたみたいだけど、フェラ・アンド・アフリカ70の映像を見ると結構ガシガシやっているのも見受けました。“アフロビート”は集団戦。強烈なクティの個性だけを聴く音楽ではなくて、数え切れないほどステージにいるもの全員が合わさって“アフロビート”だ。そしてそれをひとつにまとめあげたのが、トニー・アレンの発信と説得力の塊のようなドラミング。フェラ・クティとトニー・アレンが“アフロビート”を創り出した。
 トニーズベストに挙げる人も多いだろう、トニー・アレン・ウィズ・アフリカ70は、勢いとリラックスが同居して、まさに油の乗った様がかっこいい。"Jealousy"の鍵盤は何度聴いても気持ちよいです。その直後のトニー・アレン・アンド・ザ・アフロ・メッセンジャーズは、めちゃくちゃ渋い。『No Discrimination』というタイトルからしてもっとも勇気を与えてくれる作品のひとつだ。
 円熟味は増し続け、ジャンルを越えた様々なコラボレーションは、僕たちを解放へ向かわせてくれる。オネスト・ジョンズが熱心に再評価し続けたこともあり、南ロンドン勢の生きた影響を感じられる作品たちも興味深い。「でもさ、実はみんな同じものじゃない? ハウスにジャズ云々、いろいろとジャンルはあるものの、要は同じ。誰もがあらゆるものを分け隔てなく聴いている、と。ほんと、ソウルフルな音楽か、リズミックな音楽かどうかってことがすべてなんだしさ」カマール・ウィリアムスのこの言葉は、そのままトニーの軌跡にも当てはまるだろう。
 最近のジャズに還ってきたかのような作品群では信じられないほど四肢の動きが小さいまま、踊らせるのも見受けました。文字通り「to play soft」の極意が最高まで達したかのようなドラミング。

 「ベストであること。それは他の誰かと同じことすることではない。ベストであることとはつまり、他の誰かがそこから学べる、それまでなかった何かを創造し、残すことである」

 たしかに、あなたはいままでもこれからもあまりに大切なものを生み出して、変遷を辿れば辿るほどに、ボクたちに多くの気づきを与えてくれている。
 
 “I wanted to be one of the best — that was my wish,“
 たしかに、あなたは間違いなく最高中の最高だ!

文:小川充

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文:小川充

 ワン・アンド・オンリーという言葉がこれほどふさわしいミュージシャンもいないだろう。アフロ・ビートの創始者であるドラマーのトニー・アレンが4月30日にパリのポンピドゥー病院で亡くなった。先日亡くなったカメルーン出身のマヌ・ディバンゴもそうだが、多くのアフリカ系ミュージシャンにとってパリは活動しやすい町のひとつで、ナイジェリア生まれのトニー・アレンも1980年代半ば以降はパリに居住していた。マヌ・ディバンゴの死因はCOVID-19によるもので、トニー・アレンの死因は今のところ公表されていないので何とも言えないが、現在の状況下ではその可能性も否定できない。
 1940年8月12日生まれのトニーは享年79歳だったが、つい先日もヒュー・マセケラとの共演アルバム『リジョイス』が発表されたばかりで(録音自体は2010年に行われたセッションが基となる)、現役で活躍していた印象が強いだけにこの死はあまりにも唐突である。

 今でこそトニー・アレンはフェラ・クティの盟友で、フェラと一緒にアフロ・ビートを生み出したパイオニアとして語られるが、その評価が定まってきたのは比較的近年のことだ。
 1970年代はフェラ・クティ率いるアフリカ70の一員として、『シャカラ』(1972年)、『エクスペンシヴ・シット』(1975年)、『ゾンビ』(1977年)などフェラの全てのアルバムに参加していたが、当時の欧米や日本ではフェラ・クティ自体がマイナーな存在で、トニー・アレンにまで認識が及んでいなかったというのが実情だ。これまでフェラ・クティはいろいろなタイミングで再評価されてきたが、ちょうど彼が死去した1997年前後のことを振り返ると、当時はジョー・クラウゼルやマスターズ・アット・ワークなどによるアフロ・ハウスが盛況で、そのルーツであるフェラの音楽にもクラブ・ミュージック方面からスポットが当てられていた。彼の息子のフェミ・クティの作品もそうした流れでDJプレイされたり、リミックスされるなどしていたが、同時にフェラ・クティのレコードもいろいろと再発され、さらにトニー・アレンの初リーダー作である『ジェラシー』(1975年)を筆頭に、『プログレス』(1977年)、『ノー・アコモデイション・フォー・ラゴス』(1979年)、ジ・アフロ・メッセンジャースを率いての『ノー・ディスクリミネーション』(1979年)が立て続けにリイシューされた。1999年のことだが、これらは世界で初めてのリイシューで(全てアナログ盤でリイシュー)、企画元であるPヴァイン(ブルース・インターアクションズ)には感謝しかない。それまでナイジェリア盤でしか聴くことができなかった音源なので、私を含めたほとんどの人にとってトニー・アレンの存在を知った瞬間ではないだろうか。『ノー・ディスクリミネーション』を除く3作は全てアフリカ70と録音したもので、フェラ・クティもエレピやサックスで参加していたのだが、フェラ・クティというカリスマがフロントに立たなくてもアフロ・ビートは成立していて、すなわちアフロ・ビートの核はトニーであることを証明していたわけだ。
 フェラ・クティは1980年代に入ると新しいバンドのエジプト80を結成するが、トニー・アレンはそこには参加せず、ソロ・ミュージシャンとして新たなステップを踏み出していく。ナイジェリアを離れてロンドン、パリと移り住み、より広い世界を視野に入れて活動をするようになる。

 これらリイシューが出た頃のトニー・アレンは60歳くらいだったが、そこから一気に再評価の波が広がり、当時はフランスの〈コメット〉というクラブ系レーベルから『ブラック・ヴォイシズ』(1999年)という久々の新作も出した。
 このアルバムはドクトール・Lというプロデューサーと組み、ブロークンビーツやニュー・ジャズとトニーのドラムを交えたものとなっているが、この手のクラブ系サウンドの中においてもトニーの存在感は抜群だった。
 さらに『ブラック・ヴォイシズ』を発展させる形でドクトール・Lらフランスの若手アーティストたちと組んだサイコ・オン・ダ・バスは、アフロ・ビートにフューチャー・ジャズ、ブロークンビーツやエクスペリメンタルなトリップ・ホップなどを融合したようなプロジェクトで、60歳ものトニーがよくこんな新しく実験的なことをやるなという印象を持ったものだ。
 フェラ・クティの息子のフェミ・クティやシェウン・クティは父の遺志を継ぐ正統的なアフロ・ビートをやっているが、彼らよりずっと年長のトニー・アレンのほうが音楽的には柔軟で、アフロ・ビートのオリジネイターという根っこはありながらも、今の新しい音楽や異ジャンルのミュージシャンとも積極的に交信していた。
 ジ・アレンコ・ブラザーフッド・アンサンブルというリミックス・プロジェクト的な企画では、トニー・アレンの生ドラムを介してザ・シネマティク・オーケストラ、カーク・ディジョージオ、ヨアキムなどの作品をリワークしていて、ミュージシャンでありながらリミキサーでもあるという現在の音楽シーンに見事に対応する姿も見せる。
 2002年の『ホーム・クッキング』ではブラーのデーモン・アルバーンやラッパーのタイたちと共演し、そこからデーモンとの交流が深まっていく。そしてデーモンのほかザ・クラッシュのポール・シムノン、サイモン・トングと組んだザ・グッド・ザ・バッド・アンド・ザ・クイーン、デーモンやレッチリのフリーと組んだロケット・ジュース・アンド・ザ・ムーンも始まった。ロケット・ジュース・アンド・ザ・ムーンの同名アルバム(2012年)にはサンダーキャットやエリカ・バドゥも参加して、オルタナ・ロックにアフロ・ビート、ヒップホップやエクスペリメンタルなファンクが混然一体となったまさにミクスチャーな音楽をやっている。
 2014年のソロ・アルバム『フィルム・オブ・ライフ』にはデーモンのほかにマヌ・ディバンゴも参加していて、こちらは比較的オーソドックスなアフロ・ビートをやりつつも、ダブやファンクの要素も混ぜたり、マリの音楽、グナワなどモロッコ音楽やエチオピアン・ジャズなどさらに広範なアフリカ音楽〜ワールド・ミュージックに取り組んでいた。

 意外なところではベーシック・チャンネルのモーリッツ・フォン・オズワルド率いるトリオにも参加し、『サウンディング・ラインズ』(2015年)でダブ・テクノやミニマルにも対応した演奏を行っている。トニーが〈オネスト・ジョンズ〉からリリースした2005年のアルバム『ラゴス・ノー・シェイキング』のミックス及びマスタリングをモーリッツが手掛け、その後もトニーの作品をリミックスするなどした縁から繋がった共演なのだが、当時は「どれだけ間口が広いんだ」と驚かされた。しかし、そうしたところでもアフロ・ビートの痕跡はしっかりと残していて、まさにワン・アンド・オンリーなミュージシャンである。
 ほかにもジンジャー・ベイカー、ジミー・テナー、セオ・パリッシュ、ジェフ・ミルズ、リカルド・ヴィラロボス、セローン、トム・アンド・ジョイ、アワ・バンド、ニュー・クール・コレクティヴ、ニコル・ウィリス、メタ・メタ、ニュー・ギニアなど様々なアーティストと共演やコラボを行ってきたトニー・アレンだが、自身のソロ活動としてはバック・トゥ・ルーツな方向性が近年は目立っていた。
 もともとアート・ブレイキーやマックス・ローチなどアメリカのジャズ・ドラマーに影響を受けてドラムを始め、その後フェラ・クティと出会ってクーラ・ロビトスを結成。最初はジャズやアフリカのハイ・ライフが混ざり合った演奏をしていたが、アメリカにツアーをした際にジェイムズ・ブラウンやスライのファンクの洗礼を受け、それからナイジェリアのラゴスに戻ったふたりはアフリカ70を結成し、アフリカン・リズムにファンク・ビートを融合したアフロ・ビートが生まれた、というのがトニー・アレンの初期のキャリアである。
 そうしたドラムを始めたきっかけとなったジャズのビ・バップやハード・バップ、アフロ・キューバン・ジャズや大らかなハイ・ライフの世界に戻ったアルバムが2017年の『ザ・ソース』で、これはフランスの〈ブルー・ノート〉から出ている。
 同じく〈ブルー・ノート〉からはアート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズのカヴァーEPも出していて、“チュニジアの夜”や“モーニン”といった往年の名曲を演奏していた。その一方で、昨年リリースされたヌビアン・ツイストの『ジャングル・ラン』にも客演するなど、まだまだ現役バリバリで活躍していた。そしてモーゼス・ボイドやエズラ・コレクティヴなど、トニーの影響を受けた新しいミュージシャンやバンドの活躍が注目を集め、さらなる再評価の波が訪れていた矢先だけに、彼の死は本当に残念でならない。

文:小川充

Sun Araw - ele-king

 逃げ場所はどこにもない。パンデミックによってスウェーデンを除く世界中の国々でSTAY HOMEの日々が続くなか、初夏のように晴れた日の昼から穀物の発酵で生成された揮発性の液体を飲んでサン・アロウを聴く。おつである。
 『ロック経典』という新作だが、彼の出世作『On Patrol』から早10年。ぼさぼさの髪に髭、キャップにギターにTシャツにデニムといういかにもインディな出で立ちの、ロサンジェルスのサン・アロウことキャメロン・ストローンズ、この男がこれまでやってきている音楽は、じつは本来であれば松村正人氏が評価すべきエクスペリメンタル・ミュージックである。
 ところが、おお、なんということだろうか、氏は気に止めていないようなのだ……が、ele-kingではサン・アロウ関連の諸作をこれまで何回もreviewしてきている。キャメロン・ストローンズは、10年前のロスのインディ・シーンにおけるドローンやらダブやらの、どさくさのなかから出現した(ように日本からは見えた)。〈サイケデリック〉というのが彼の作品を語るさいの世界共通キーワードではあるが、その趣向はラヴよりもリー・ペリーに近く、ライヒよりもテリー・ライリーに、ドアーズよりもビーフハートに、ラリーズよりもボアダムスに近い──のだった。
 サン・アロウはどうしてもユーモアを隠せない人だ。レゲエの伝説コンゴスとのコラボ、ニューエイジの伝説ララージとのコラボでも型にはまらずヘンなところに着地する。CANみたいだ。
 新作は本当にCANみたいになっているので驚いた。CANの掲げた「民俗学的偽造シリーズ」ほどの豊富なヴァリエーションはないかもしれないけれど、ユーモアとワールド・ミュージックと実験という観点で言えば両者には近しい感覚がある。試しにCANの名盤とさえ言える未発表曲集『Unlimited Edition』とサン・アロウの『ロック経典』を交互に聴いているのだが、1974年と2020年の作品は時空を越えて繋がっていることが確認できる。聴いている人間が酩酊しているだけのことかもしれないが……

 先日は偉大という言葉さえも白々しいほど偉大なドラマー、トニー・アレンが永眠したが、『ロック経典』もまたアフロビートの恩恵を受けている。また、パーカッショニスト(Jon Leland)とシンセサイザー奏者(Marc Riordan)を有する生演奏(ライヴ)が、『ロック経典』がサン・アロウのカタログのなかの特筆すべき1枚である理由になっていることは疑いようがない。
 『ロック経典』には10分ほどの曲が4曲収録されている。1曲目の“Roomboe”はリズムの間合いが素晴らしいスペース・ファンク・ロックで、親指ピアノに導かれてはじまる2曲目“78 Sutra”では絶妙なポリリズムを展開しながら……顔はシラフだがその内側は宇宙大のトリップをしていますと言わんばかりのオーガニックなグルーヴを創出する。
 3曲目“Catalina”も出だしのリズムが格好いいんだよなぁ。キャメロン・ストローンズのギターの特徴がよく出ているというか、とてもレゲエとは呼べないが、もっともレゲエからの影響を感じさせる曲がこれである。そして今作で最高の曲が4曲目の Arrambe”。じつを言うとぼくは最初にこの曲が好きになったのだった。本作中、はっきりとした反復するメロディがある曲なのだが、これはもう、近年の数多あるクラウトロック解釈のなかでも最高の出来に挙げられよう。後半おとずれる恍惚感はすさまじしく、顔はシラフだがその内側はもはや時空を越えてしまっているようである。
 『ロック経典』はアンビエントではない。リズミックな作品で、ちょっと可笑しいヘンな音が好きでこのGW中に家でヒマしているようだったら、ぜひ聴いてみてください。で、タイトルの意味? わからんです。

 毎年恒例のバースデイ・ライヴを自粛のため延期にした戸川純が「なにかしなくては!」と動画配信を始めました。しかも内容は得意の人生相談と本職の歌! 早くも第1回配信がゴールデンウィークから開始されています。ツイッターで募集した深刻な悩みに次から次へと意味不明の解決法を持ち出していきます。


戸川純の人生相談 令和弐年 第一回 前半


戸川純の人生相談 令和弐年 第一回 後半

Session Victim - ele-king

 レコード屋のセールス文句では「若き日のナイトメアズ・オン・ワックスやDJシャドウを連想させる」と表現され、RAでは「ドイツ人のデュオがダウンテンポへ、これは果たして成功か?」という見出しで語られるが、どんな表現をされようが超マイペースな彼らには関係のないことだ。昨年クルアンビンとリオン・ブリッジズのアルバム『Texas Sun』のリリースも好調なレーベル〈Night Time Stories〉(〈LateNightTales〉の姉妹レーベルでもある)から、ハウス・プロデューサー、セッション・ヴィクティムの最新アルバム『Needledrop』がリリースされた。

 ドイツ人プロデューサーのハウケ・フリーアとマティアス・レーリングのふたりはどちらも大のレコード・ディガーで、DJプレイもヴァイナル・オンリー。アーティストからのプロモ音源もレコードでなければほとんど受け取らない程の徹底ぶり。リリースの大半もいわゆる「ヴァイナル・オンリー」が大半を占め、過去に発表したアルバム3枚はジンプスター主宰のレーベル、〈Delusions Of Grandeur〉からのみ(アルバムはデジタルもリリース)という、とてつもなく限定的な活動を展開するが、エネルギッシュなライヴ・パフォーマンスと、独特なサンプリング・センスと生音を融合させたプロダクションが人気を集め、ハウス/ディスコ・シーンでは安定の位置を確立。今回は一気に舵を切り全編に渡りスローなジャムを展開している。

 11曲中10曲がインスト・トラックで、唯一のヴォーカル曲には98年にリリースされたエールのファースト・アルバム『Moon Safari』にも参加したベス・ハーシュをフィーチャー。“Made Me Fly (Ft. Beth Hirsch)” としてアルバムのリード・トラックに。なるほど、ハウス方面に限らず、エールを聴いていたようなリスナーにとってもどこか共感が持てるような角度をこのアルバムは潜めているかもしれない。というよりも元々彼らの聴いてきた音楽的なバックグラウンドや趣味嗜好がより反映されたアルバムになっているのかもと感じさせてくれる。

 個人的なオススメは6曲目の “Waller and Pierce” と9曲目の “Cold Chills”。ライヴでもベースを担当するマティアス・レーリングのレイドバックなベースラインと絶妙な雰囲気で重なる音のレイヤーは繰り返し聴いても飽きが来ない。アルバムとはいえ全編通して聴いても約30分程度。一周した後に「もう終わり?」と思いながらもう一度頭から針を落とす。(レコードはグリーンカラーのクリアヴァイナル。もちろんCDやデジタル、ストリーミングだってなんでも構わない。)

 トラックのタイトルには「Bad Weather」「Pain」「No Sky」「Cold」など決して明るくポジティヴなメッセージが込められているとは思えないが、楽しいだけが人生じゃない、あえて暗いムード、落ち着いた雰囲気のときに選んでほしい1枚な気がする。

LIQUIDROOM - ele-king

 新型コロナウイルスの影響により、現在すべての公演を中止している恵比寿のリキッドルームが、ふたたび訪れるだろういつかの日を願い、「We will meet again」なるプロジェクトを始動させている。その第1弾として企画されたのが、電気グルーヴおよび坂本慎太郎とのコラボを含むTシャツのリリース。幾多のすばらしい夜を演出してきた同会場でふたたび笑いあえる日を夢見て、このプロジェクトをサポートしよう。

◆リキッドのライヴ・レポ一覧
2018年6月13日 Autechre
2018年1月17日 坂本慎太郎
2017年12月9日 DYGL
2016年8月24日 The Birthday × THA BLUE HERB
2013年9月24日 Disclosure / AlunaGeorge
2013年5月1日 Andy Stott
2012年7月25日 電気グルーヴ vs 神聖かまってちゃん
2012年3月25日 トクマルシューゴ
2012年1月24日 Washed Out
2011年9月30日 Alva Noto & Blixa Bargeld
2011年9月22日 Mathew Herbert
2010年12月22日 神聖かまってちゃん
2010年1月9日 七尾旅人
2009年12月30日 ゆらゆら帝国、Hair Stylistics、巨人ゆえにデカイ


電気グルーヴ、坂本慎太郎と LIQUIDROOM によるこの2020年を刻む T-shirts を受注販売!

現在、LIQUIDROOM は世界中の音楽施設と同様に、新型コロナ・ウィルス感染拡大防止の協力のため、全公演の自粛をよぎなくされています。LIQUIDROOM ではこの惨禍が過ぎ去った後に、ふたたびこの場所で最高の音楽をともにする日を願ってプロジェクト〈We will meet again〉をスタートします。まずは LIQUIDROOM とも縁が深く、幾度もの伝説的な夜を作り上げてきたアーティストとメッセージ入りTシャツをリリースします。フジロックの出演も発表され、復活の機運高まる電気グルーヴとの「NO LIQUID, NO DENKI」Tシャツ。そしてリキッドで予定されていたワンマンが延期となってしまった坂本慎太郎との「Let’s Dance Raw」Tシャツ。さらに LIQUIDROOM の「We will meet again」。本日正午より受注販売をスタート、詳しくは公式ウェブサイトにて。

受注販売期間:2020年5月1日(金)12:00 ~ 2020年5月31日(日)22:00
※商品は6月末頃に順次発送を予定しております。

販売種類:

LIQUIDROOM We will meet again T-shirts ¥3,500
LIQUIDROOM We will meet again T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)1個 ¥4,000
LIQUIDROOM We will meet again T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)2個 ¥4,500


LIQUIDROOM × 電気グルーヴ NO LIQUID,NO DENKI T-shirts ¥3,800
LIQUIDROOM × 電気グルーヴ NO LIQUID,NO DENKI T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)1個 ¥4,300
LIQUIDROOM × 電気グルーヴ NO LIQUID,NO DENKI T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)2個 ¥4,800


LIQUIDROOM × 坂本慎太郎 Let’s Dance Raw T-shirts ¥3,800
LIQUIDROOM × 坂本慎太郎 Let’s Dance Raw T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)1個 ¥4,300
LIQUIDROOM × 坂本慎太郎 Let’s Dance Raw T-shirts + LRロゴ缶バッチ(designed by 五木田智央)2個 ¥4,800

※LRロゴ缶バッチはリキッド公演時にバーカウンターにてドリンクと交換できます。

販売サイト:https://liquidroom.shop-pro.jp

問い合わせ先:LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

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We will meet again
LIQUIDROOM 2020

音楽、そしてライブを愛するすべてのみなさまへ
-再会できる未来のために-

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、世界中の人々が、いまだかつてない経験を強いられていることと思います。

これまでアーティストたちの表現の場として活用していただいた LIQUIDROOM も深刻な問題に直面し、出口の見えない日々に不安を感じています。

LIQUIDROOM は様々なカルチャーがひしめき合う新宿歌舞伎町でスタートし、恵比寿に移転して以来25年間、たくさんのアーティストの方々、ファンのみなさまと、かけがえのない瞬間・空間・時間を共有させていただきました。これはアーティストやそれを支えるスタッフ、そしてなにより音楽ファンのみなさまと作り上げてきた、一言では語り尽くせないたくさんの思いが込められた場所です。

本来、こんな不安定な状況であれば、LIQUIDROOM は音楽で、みなさまの不安な気持ちを率先して解消させたいところですが現状それもかないません。
しかし、今後、どんな険しい道が待ち受けているのか計りかねませんが、後ろは振り向かないことにいたしました。

すでに温かいお言葉やご支援の声をいただいく機会もありましたが、この惨禍が過ぎ去った後に、ふたたびこの場で最高の音楽とともに分かち合える瞬間を願い、今、みなさまのご協力をお願いしたいです。

アーティストの方々にもご協力をいただき、決して忘れられることができないであろう2020年をライブではなく言葉でTシャツに刻んでいただきました。

いつか笑って、あの時は……なんて話せる日を願って。

LIQUIDROOM

当事者たちが語る赤裸々なパンク史

こっちへ来いよ、本当の話を教えてやるからさ ――ルー・リード

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドからセックス・ピストルズまで、ミュージシャンをはじめ、マネージャー、カメラマン、ライブハウスオーナー、グルーピー等々の当事者たちの証言で綴るアメリカのパンク・ヒストリー。幻の名著が20周年版増補を加えてついに復刊!


目次

プロローグ オール・トゥモローズ・パーティーズ 一九六五‐一九六八

第一部 アイ・ワナ・ビー・ユア・ドッグ 一九六七‐一九七一
第一章 詩だと? これのどこが詩だ?
第二章 世界から取り残された奴ら
第三章 ずっと待っていた音楽
第四章 ユア・プリティ・フェイス・イズ・ゴーイング・トゥ・ヘル
第五章 暴動
第六章 リアル・クール・タイム
第七章 監獄ロック
第八章 ファン・ハウス

第二部 リップスティック・キラーズ 一九七一‐一九七四
第九章 パーソナリティ・クライシス
第十章 ダンス天国
第十一章 ポエトリー・オールスターズ
第十二章 ドールズ・ハウス
第十三章 淫力魔人
第十四章 ビリー・ドール
第十五章 オープン・アップ・アンド・ブリード
第十六章 セパレーション・アンザイエティ

第三部 ピス・ファクトリー 一九七四‐一九七五
第十七章 ゴー・ランボー!
第十八章 ダウン・アット・ザ・ロックンロール・クラブ
第十九章 53rd&3rd
第二十章 ロックンロール・スタ
第二十一章 ドールズの終焉
第二十二章 パンクってのはどう?
第二十三章 チャイニーズ・ロックス
第二十四章 メタリックKO

第四部 開けてはいけなかった扉 一九七六‐一九七七
第二十五章 電撃バップ
第二十六章 ロンドンは燃え、イギリスはたくらむ
第二十七章 パッセンジャー
第二十八章 ロンドン・コーリング
第二十九章 ディックとジェインのおふざけ
第三十章 生きてるって素晴らしいなんて、誰が言った?
第三十一章 転落

第五部 サーチ&デストロイ 一九七八‐一九八〇
第三十二章 ビコーズ・ザ・ナイト
第三十三章 ヤング・ラウド・アンド・スナッティ
第三十四章 アナーキー・イン・ザ・USA
第三十五章 ソニック・リデューサー
第三十六章 地獄から贈られたツイナール
第三十七章 トゥー・タフ・トゥ・ダイ
第三十八章 フレデリック

エピローグ ネヴァーマインド 一九八〇‐一九九二
第三十九章 勝利寸前の敗北
第四十章 メインストリートのならず者
第四十一章 ボーン・トゥ・ルーズ
第四十二章 ノー・モア・ジャンキー・ビジネス
第四十三章 マーブル・インデックス
第四十四章 ジ・エンド
さらに不届きな証言・増補版

十周年記念版あとがき
ナラティヴ・オーラル・ヒストリー 語りの記録(二十周年版増補)
謝辞
訳者あとがき

フル・キャスト


オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧

amazon
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
ヨドバシ・ドット・コム
HMV
TOWER RECORDS
紀伊國屋書店
honto

全国実店舗の在庫状況

紀伊國屋書店
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア

Have a Nice Day! presents Internet SCUM PARK - ele-king

 まさに今日にぴったりなタイトルのニュー・シングル「トンネルを抜けると」を5月6日にリリースする東京のバンド、Have a Nice Day! (通称ハバナイ!)が、その翌々日、5月8日にリリース・パーティを開催する。とはいえもちろんこの状況下だ、会場はオンラインである。まもなく新作の発売を控える COM.A曽我部恵一、KΣITO も出演。チケットは1000円ぽっきりとのことなので、ぜひ参加しよう。

Have a Nice Day! presents Internet SCUM PARK

2020年5月8日(金)
会場:インターネット
open 24:00
start 24:30
※オールナイト公演

チケット:¥1,000

チケット購入は Have a Nice Day! ホームページにてご確認ください
https://habanai.zaiko.io/_item/325864

出演者
Have a Nice Day!
COM.A
曽我部恵一
KΣITO

小さな演劇の大きさについて - ele-king

テン年代演劇の「いま」と「ここ」

新しい演劇はどこにあったのか──
テン年代日本演劇シーンをつぶさに目撃してきた批評家・佐々木敦による、初の演劇批評集!

平田オリザ、岡田利規とチェルフィッチュやそれ以降の「言葉」と「身体」の挑戦、ケラリーノ・サンドロヴィッチの不条理と笑い、神里雄大と岡崎藝術座・ノゾエ征爾とはえぎわ・木ノ下裕一と木ノ下歌舞伎等々の若手作家/劇団たち

目次

0 ─ 小さな演劇の小ささについて

1 ─ 「現代口語演劇」のアップデート
岡田利規へのファースト・インタヴュー
チェルフィッチュ『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』
岡田利規著『遡行 変形していくための演劇論』
『地面と床』の上と下
地理的身体たちの演劇 『プラータナー:憑依のポートレート』
アンドロイドはロボット演劇の夢を見るか?──平田オリザの転回
松田正隆/松本雄吉『石のような水』
(演劇の)零度のエクリチュール──松田正隆とマレビトの会論
空き家の「二階」はどこにある?──『東京ストーリー』
地点──「非=自然主義」の演劇
「チェルフィッチュ以後」以後のニッポンの演劇

2 ─ アングラ・不条理・笑い
かつて不条理と呼ばれたもの──ケラリーノ・サンドロヴィッチ論、その1
怪物とは何か? 祈るのは誰か? │ 『祈りと怪物』
二〇一三年のゴドー │ 『ゴドーは待たれながら』
条理なき笑いの彼方に │ ケラリーノ・サンドロヴィッチ論、その2
サンプル『あの人の世界』、或いは動物化するポストモダン演劇
エスエフ・ヘンタイ・サンプル
語ること、語れること、語らぬこと、語れぬこと │ 遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986‐2011』
飴屋法水/ロメオ・カステルッチ『宮沢賢治/夢の島から』
飴屋法水/椹木野衣『グランギニョル未来』
朗読と上演 │ 古川日出男『ローマ帝国の三島由紀夫』

3 ─ 新しい演劇はどこにあるか?
「演劇2.0」への/からの道程
岡崎藝術座『隣人ジミーの不在』
快快『Y時のはなし』
私の(偏)愛する劇団たち
はえぎわ
「ことば」の彼方へ? フェスティバル/トーキョー
ミュージカルシアター2013
若手劇作家たち
「演劇」とは何か?
別役実的な社会
アダプテーション2015
木ノ下歌舞伎
身体・舞台・アート
純粋劇作家、松原俊太郎
Twitterには書かなかったこと
下北ウェーブはニューウェーブか?
極私的小劇場若手俳優ベストテン
渋谷慶一郎『Scary Beauty』
アピチャッポン・ウィーラセタクン『フィーバー・ルーム』
響きあうアジア2019
演劇のことば 詩のことば
匿名劇壇『大暴力』
小泉明郎『縛られたプロメテウス』
シティキラーは何処にも落ちなかった

この本を読みながら考えたこと(あとがき)


著者
佐々木 敦 (ささき あつし)
1964年生まれ。HEADZ主宰。芸術文化の複数の分野で活動する。著書に、『私は小説である』(幻戯書房)、『この映画を視ているのは誰か?』(作品社)、『アートートロジー』(フィルムアート社)、『新しい小説のために』(講談社)、『ゴダール原論』(新潮社)、『未知との遭遇【完全版】』(星海社新書)、『シチュエーションズ』(文藝春秋)、『批評時空間』(新潮社)、『即興の解体/懐胎』(青土社)など多数。

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Clear Soul Forces - ele-king

 2012年リリースのアルバム『Detroit Revolution(s)』によってデビューし、これまで 2nd 『Gold PP7s』、3rd 『Fab Five』を経て、昨年(2019年)には4年ぶりのアルバム『Still』をリリースした、デトロイトを拠点とする4人組のヒップホップ・グループ、Clear Soul Forces。ゴールデンエイジとも呼ばれる90年代のヒップホップから強い影響を受けた、いわゆるブーンバップ・ヒップホップの流れにあり、アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパにも根強いファンを持っている彼らであるが、今回リリースされたこのアルバム『ForcesWithYou』をもって、グループとしての活動に終止符を打つという。

 グループのメンバーでもあるメイン・プロデューサーである Ilajide に加えて、7曲目 “Watch Ya Mouth” にもクレジットされている Radio Galaxy が2曲プロデュースを手がける本作だが、Clear Soul Forces のトラックの肝となっているのは、やはりビート(=ドラム)の部分だ。以前、筆者が彼らのアルバム『Fab Five』のライナーノーツを書いた際に、Ilajide のサウンドに関して「A Tribe Called Quest の後期の作品などにも繋がるような、’90年代後半の空気を強く感じる」と表現したのだが、シンプルでありながらも非常に練られたドラムの音色とパターンに、シンセを多用したシンプルな上ネタ、そしてベースのコンビネーションによって極上のファンクネスが生み出されている。同じくデトロイト出身である故 J Dilla からの強い影響を受けているのは、彼らの過去のインタヴューなどからも明らかであるが、さらに4MCによる巧みなマイクリレーが乗ることで Clear Soul Forces にしか出しえないグルーヴが完成している。

 アルバムの幕開けを飾るバトル・チューン “Gimme the Mic” やオリエンタルな雰囲気漂うキャッチーな “Chinese Funk”、PVも公開されているリード曲の “Chip$” など、アルバムの軸となっている曲はいくつかあるが、全体的にはミディアム・テンポが貫かれ、一定のトーンで進んでいくのが実に心地良い。全体のテンションもアゲすぎたり、また極端にレイドバックしたりということもなく、個々のフロウの変化でコントラストをつけながら、彼らの好きなゲームやSF、アニメの世界観が見え隠れし、それと同時にヒップホップへの愛というものがストレートに感じ取れる。

 すでに個々にソロでの作品リリースや客演などを展開しており、今後はソロ活動がますます盛んになっていくであろう彼らであるが、いずれまたリユニオンを果たして、4人での新作を出してくれそうな気がしてならない。そんな思いの残る、まだまだ何かが続きそうな Clear Soul Forces のファイナル・アルバムである。

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