ざばあっと海水がスローモーションで跳ね上がり、巨大なシーラカンスが現われる。
1曲目の冒頭で、脳内スクリーンにそんな映像が映し出された。
なんでこんなに変わっとらんのだ、この人たちは。
この曲の題名には、"現われ出でたるシーラカンス"が相応しい。しかし、この雄大なシーラカンスのテーマは、22年のときを経て発表するアルバムの冒頭としては、全年齢層のリスナーをびっくりさせる上では有効かもしれない。実際、わたしなんかも狼狽してマグカップを落としそうになり、体勢を立て直して大笑いしたではないか。と思いながら2曲目に進む。
と、そこでもざばあっとスローモーションで海水のしぶきが上がっていた。
英国では、『mbv』のリリースは、ボウイ新曲発表のインディ界ヴァージョンのようなものだった。しかし、どちらが熱いリアクションを呼んだかといえば、『mbv』だ。『ガーディアン』は出血絶賛状態だ。しかも、レヴュー文がやけに長い。書き手の年齢的なものもあるのだろう。一般レヴェルでも、リスニング・パーティをオーガナイズした個人やバーがあったと聞いている。ミドルクラスのインディおやじたちにとっては格好の週末イヴェントだったのだろう。そういえば、最速でレヴューをあげた媒体のひとつは『ファイナンシャル・タイムズ』だった。
しかし、どうしてこのタイミングなのだろう。
UK版『ハフィントン・ポスト』にときどき時事ネタを書くおっさんになっていたアラン・マッギーが、昨年5月に「本を書いたり、映画を製作したり、絵を描いたりする暮らしも気に入っているが、音楽業界に戻るかもしれない。日本の人びとと話をしている」と書いていたが、どうやらその「Tokyo Rocks 2013」のブッカーの仕事で思うところがあったようで、年末には「新レーベルを立ち上げたい」と宣言した。そして、「Tokyo Rocks 2013」のヘッドライナーはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインらしい。これらの動きと『mbv』は、おそらくリンクしている。ファンにせっつかれてどうしようもなくなって、というのはいまいち説得力に欠けるし、浪漫派の人びとが言うような、シューゲイズ・シーンを爆破終結させるためのアルバムなら、2013年じゃないだろう。
あるいは、ギターの時代が戻ってくると騒いでいるUKメディアや、80年代末から90年代初頭のようなファッションで歩いている若者たちを見て、ざわざわ血が騒いで踊り出て来てしまったのだろうか。
4曲目から唐突に曲調が変わった。
キーボードがピロピロいっている。でも、これだけ? 6曲目も衝撃的だ。単なるクリアーなインディ・ポップだからである。後からもっと加工して創意工夫するつもりで、かったるくなったんだろうか。いや、22年もかけといて、面倒になったはないだろう。新譜は『Isn't Anything』のほうに近い。とケヴィン・シールズが言っていたのを読んだが、でも、それにしても、なんかちょっと、デモテープみたいで。
現在のケビンの風貌は、スクラッフィでいかにもアイルランド人だなと思う。アイリッシュ・ロックのコンピレ・アルバムでは、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインは常に除外されているし、ダブリンで結成されたこと自体、知らないアイルランド人が多い。若き日のケヴィンがダブリンでアドバイスを乞うたのは、ヴァージン・プリューンズのギャヴィン・フライデーだった。
「Get the fuck out of Dublin for a start」の彼の一言で、ケヴィンはアイルランドを後にする。
だが、いまのケヴィンみたいな、どうでもいいようなセーターやシャツを着て、クレイジー・プロフェッサーみたいな髪型をした、もう音楽以外には何もないというような、ダブリンのおっさんを何人か知っている。新曲ができたんだよ、と聴かされるたびに、若い頃に聞かされた曲とまったく同じなのが彼らの共通点だ。2年も20年も大差ないような、溶解するダリの時計が刻むような時間があの辺りには流れている。
7曲目で、お。と思った。8曲目はヴァージン・プリューンズを思い出した。最後の"Wonder 2"がいちばん好みだ。とり散らかっているが、勢いがある。何故これを冒頭に持って来なかったのだろう。
ざばあっと現れ出でたるシーラカンスが、帰り際になって、波間でちょっとした躍動的な暴れを展開して海中に戻って行った。
全編を通じて映像の手ブレが激しかったため、わたしはまだ船酔いしている。



森俊二(Natural Calamity)と石井マサユキ(Tica)の二人によって2000年に結成されたギター・インストゥルメンタル・ユニット。2004年にファースト・アルバム『Straw Hat, 30 Seeds』を発表。続いて2006年に発表したセカンド・アルバム『Nicky's Dream』はその年のベスト・アルバムとして多くのメディアで取り上げられた。同アルバムからの楽曲は、様々なコンピレーションや映画『ホノカアボーイ』のサウンドトラックにも収録。2012年4月には渾身のサード・アルバム『Twilight For 9th Street』をリリースした。また、トリップ感溢れるライヴ・パフォーマンスも各方面で絶賛され、これまでにFUJI ROCK FESTIVAL、GREENROOM FESTIVAL、Sense of Wonder、SUNSET LIVEなどの大型フェスへも出演を果たしている。
ハワイで生を受け、2歳の時に日本へと移住。中高時代はパンクやオルタナに開眼し、ハイティーンの頃には友人のユタカ、Delawareの点、そして立花ハジメとLow Powersのメンバーでもあったエリと、携帯電話の着信音をオケに使用し歌うというユニークなバンド、The Japaneseを結成し活動した。そしてボルティモアに渡った後、マット・パピッチとエクスタティック・サンシャインの活動を始める。同時に彼は通っていた美術大学のクラスメート達と共にポニーテイルを結成。カオティックなサウンドと怒濤のライヴ・パフォーマンスは瞬く間に話題となる。また、エクスタティック・サンシャインとしても〈カーパーク〉からデビュー・アルバムをリリースし、多方面から高評価を得るもののダスティンは脱退する。ポニーテイルもさらなるブレイクを期待されていたが突然活動休止を発表(2011/9/22に解散を発表)。そしてダスティンは〈スリル・ジョッキー〉と契約し、サード・ソロ・アルバムをリリースした。多数のエフェクターを足元にならべ、ディレイ、ループ等を駆使し、ミニマルでカラフルなレイヤーを描き出していくギター・パフォーマンスは注目を集めている。2012年通算4作目となるアルバムをリリースし、4月にはレコード発売記念の日本ツアーも敢行。NHKライヴ・ビートへの出演も果たす。7月にはNYで行われたダーティー・プロジェクターズの最新作のリリース記念ライヴのオープニングに抜擢され、10月の日本ツアーでも全公演オープニングを務めた。9月から10月前半にかけてビーチ・ハウスとのUSツアーを行った後、朝霧JAM2012にも出演を果たした。
エレクトロニクスと生楽器を絶妙なバランスで調和させ、力強さと繊細さを自然体で同居させる。湘南・藤沢を拠点に活動を続け、人間味溢れる温かいサウンドを志向するアーティスト、鎌田裕樹による電子音楽団tickles(ティックルズ)。2006年発売のファースト・アルバム『a cinema for ears』リリース後から続けてきたバルセロナやローマ、韓国などを巡ったライブ・ツアーでは、人力の生演奏を取り入れたスリリングでドラマチックなライブ・パフォーマンスで大きな賞賛を得た。そんな数々の経験を経て紡がれた珠玉の楽曲をたっぷりと詰め込んだ待望のセカンド・アルバム『today the sky is blue and has a spectacular view』(2008年)は自身のレーベル〈madagascar(マダガスカル)〉よりリリースされ、TOWER RECORDS、iTunesを中心にセールスを伸ばし、高い評価を得た。2011年、次なるステップへと進むべく〈MOTION±〉と契約。ピアノ、シンセサイザー、フェンダー・ローズ、ピアニカ、オルガン、鉄琴、オルゴール、ギター、ベースなど、様々な楽器を駆使しながら感情的なメロディーと心地良いリズムを生み出していくスタイルに更なる磨きをかけ、2012年4月にニュー・アルバム『on an endless railway track』をリリース。6月にはSchool of Seven Bells来日公演のサポート・アクトを務めるなど、リリース後はエレクトロニクスとリアルタイム・サンプリングを駆使するライブ活動を精力的に展開。柔らかいビートの上で胸を震わせる旋律が幾重にも重なり合い、交錯していく夢幻のサウンドスケープは、聴く者の心を捉えて離さない。
クラブのみならず、ファッションショーやホテル、ショップ、カフェなど、およそ音楽と触れ合うことが出来る空間すべてに良質な選曲を提供してきた山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)、青野賢一(BEAMS RECORDS)の3人の頭文字を並べて命名されたユニット「真っ青」。20年以上のDJキャリアに裏付けされたスキル、レコード・CDショップのバイヤー経験がもたらす豊潤な音楽的バックグラウンド、そしてアート、文学、映画などにも精通する卓越したセンスから生まれるそのサウンドは、過去、現在、未来に連なる様々な心情を呼び起こし、聴くものの目前に景色を描き出すものである。リミックスを手掛けた「中島ノブユキ/Thinking Of You (真っ青Remix)」 はまさに青いサウンドスケープ。











