「S」と一致するもの

Ulapton(CAT BOYS) - ele-king

ダンディズムな気分に浸れる10曲(動画)

New Order×Takkyu Ishino - ele-king

 新作『ミュージック・コンプリート』が好調なニュー・オーダーだが、ここに来てビッグ・ニュース。シングル曲“Tutti Frutti”のリミックスを石野卓球が手掛けていたことがわかった。(同曲では、すでにホット・チップによるリミックスが発表されている)
 電気グルーヴの初期の名曲に“N.O.”があり、また、ZIN-SAY時代の曲を集めた編集盤のタイトルが『サブスタンス』であり、また、彼の作曲には、ニュー・オーダー風のメロディアスな展開が多々見受けられる……といったように、若き日の石野卓球が愛したバンドのひとつがニュー・オーダーであることはファンには常識となっている。今回、石野卓球がニュー・オーダーの曲をリミックスしたと知って、思わずガッツポーズしていることだろう。本当に、早く聴きたい。

LV - ele-king

 南ロンドンのLV(当初は3人組だったが、現在はシー・ウィリアムズとウィル・ホロックスのコンビ)といえば、コード9やブリアルに次いで〈ハイパーダブ〉を初期から牽引してきたアーティストだ。他にも〈ヘムロック〉や〈セカンド・ドロップ〉など、ダブステップの名門から作品をリリースしている。UKガラージ、グライムをルーツに持ち、〈キーサウンド〉からリリースされた詩人ジョシュア・アイデンヘンとのコラボ・アルバム『ルーツ』(2011)や、〈ハイパーダブ〉からの単独名義でのファースト・アルバム『スベンザ』(2012)に顕著なように、当初はラッパーやMCをフィーチャーした泥臭くルーツ色の濃いサウンドを得意としていた。『スベンザ』には南アフリカのハウス・ミュージックからの影響もあり、そこからはジューク/フットワークとの結びつきも見出せる。そして、ジョシュアとの2枚目のコラボ作『アイランド』(2014年)では、ダブ、テクノ、エレクトロニカなどさらに多くの要素を融合し、コード9同様にダブステップの進化も担うサウンドとなっていた。つまり、ダブステップの進化・実験性とともに歩んできたのがLVと言える。

 そんなLVの通算4枚めのアルバム『アンシエント・メカニズム』は、何と〈ブラウンズウッド〉からのリリース。ジャイルス・ピーターソン主宰のこのクラブ・ジャズ総本山からのリリースということで、いままでとはまた大きくテイストが異なるものとなっている。中でもトピックとなるのが、アルメニア出身のジャズ・ピアニストのティグラン・ハマシアンとの共演だ。ロバート・グラスパーのようなUS勢とは異なる新世代ジャズの異才として注目を集めるハマシアンだが、そんな彼とLVの初コラボは2012年のこと。ジャイルスのラジオ番組「ワールドワイド」でのライヴ・セッションとして実現した。ハマシアンはジャズに現代音楽やポスト・ロック、エレクトロニカ、さらにアルメニア民謡などまでを融合した独自の音楽性を持つピアニストだが、この共演によってLVが新たな方向を摸索しはじめたのは間違いない。それ以来重ねてきたコラボの成果がこの『アンシエント・メカニズム』なのである。

短いインタルードも含めて全12曲を収録するが、その中でハマシアンをフィーチャーするのは5曲。従ってほぼ半分は両者のコラボと言える。ハマシアン抜きの曲も、そのコラボの延長線上にあるものだ。ハマシアンのアコースティック・ピアノが入ることにより、逆にヴォーカルやMCは排除し、ほぼインスト・アルバムとなった点も特徴だ。数少ないヴォーカル曲の「ヤリモ」と「インフィナイト・スプリング」も、そこで聴かれるのはアルメニア民謡調のコーランのようなもの。かつてのグライムの影響下にある荒々しさとは決別し、リリカルで美しいサウンドとなっている。コラボが行われたベルギーの町の名前である「ロイセレデ」など、耽美的という点ではブリアルにも通じるところもあるが、ダークな中にも透明感や清廉さを湛えているのはハマシアンのピアノの為せる技だろう。LVのビートも「ハンマーズ・アンド・ローゼス」「ジャンプ・アンド・リーチ」「トランジション」のようなブロークンビーツ調が目に付き、いままでの作品に比べてジャズ・ピアノとの親和性の高いものへと変化している。「ダー・ソウイリ」はハマシアンとのコラボ曲ではないものの、北アフリカ音楽からの影響も伺える現代音楽的なモチーフのビート作品で、明らかにハマシアンとの共演が影を及ぼしていることが伺える。ボサノヴァを消化したような3拍子の「バランス・スプリング」は、本作と同時期にリリースされるフローティング・ポインツのアルバム『エレーニア』とともにエレクトロニック・ジャズの傑作だ。ジャズとポスト・ダブステップ、ベース・ミュージックとの融合の新たな1ページを書き加えるアルバムであることは間違いない。

特集 エレクトロニカ“新”新世紀 - ele-king

 こういうひとつの括り方に抵抗を感じる人がいるのはわかっているが、なかば強引にでも括った方が見えやすくなることもある。もともと踊れもしないテクノ(エレクトロニック・ミュージック)を、しかし前向きなニュアンスで言い直したのがエレクトロニカ(ないしはえてして評判の悪いIDM)なるタームである。

 90年代の後半のクラブ・シーン/レイヴ・カルチャーは現在と似ている。アンダーグラウンド文化に大資本が介入すると、音楽が、最大公約数的にわかりやすいものへと、やんわりと画一化されていってつまらなくなる。ゲットー的なもの、冒険的なものはまず排除される。逆に、こういう状況のなかでカウンターとしての需要を増し、発展し、新たなリスナーを獲得したのがエレクトロニカだった。ポストロックと並行してあったものなので、リスナーも重なっている。

 2010年に〈エディションズ・メゴ(Editions Mego)〉からOPN(Oneohtrixpointnever)が『リターナル(Returnal)』を出したときは、この手の音楽がエレクトロニカというタームを使って解釈されることはまずなかったが、しかし、エイフェックス・ツインが華麗な復活を遂げて、かたやEDMが全盛の今日において、エレクトロニカ新世紀と呼びうるシーンが拡大するのはなんら不思議なことではない。

 いや、むしろエレクトロニカ的なものがなければ、音楽は面白くないのだ。それは、この音楽が実験的であるとか、高尚であるとか、知的であるとか、そんな胡散臭い理由からではない。この(なかば強引な)ジャンルが、リスナーをさまざまな音楽を結びつけるからである。ジャンルという牢獄から解放することは、90年代後半を経験している世代は充分にご存知のことだろう。

 新世代を代表するのはOPNとArcaだろうが、他にもたくさんの秀作が出ている。また、受け手が作り手と紙一重なのもこのシーンの特徴でもあるので、我々がここでチェックできていない新しい作品がなんらかのカタチで出ていることは充分にあるだろう。もしそうした穴があれば、ぜひ教えてください。なにはともれ、今回の特集が少しでも、あなたの宇宙を拡張する手助けになれば幸いである。   (野田努)

Electronica Classics - ele-king

さて、「エレクトロニカの“新”新世紀」と銘打って、とらえがたくも魅力的なエレクトロニック・ミュージックの現在を示している作品群を取り上げる本特集だが、一般的に「エレクトロニカ」という名で認識されている作品にはどのようなものがあっただろうか。リアルタイムで聴いてこられた方も多いことと思われるが、あらためていま聴き返したいエレクトロニカ名盤選をお届けします。


Alva noto - Transform
Mille Plateaux (2001)

 キム・カスコーンが「失敗の美学」と名づけたデジタル・グリッチの活用によって、90年代後半から00年代前半にかけてのノンアカデミックな電子音響が始まった。カールステン・ニコライ=アルヴァ・ノト/ノトは、そのグリッチ・ノイズをグリッドに配置することで、ステレオの新美学とでもいうべき電子音響を生み出していく。とくに本作の機械的でありながら優美で洗練されたサウンドは、2001年の時点ですでにポスト・グリッチ的。数値的なリズム構成が生み出すファンクネスには、どこかクラフトワークの遺伝子すら感じるほどだ。00年代以降のエレクトロニカに大きな影響を与えた傑作。


Fennesz - Endless Summer
Mego (2001)

 ティナ・フランクによるグリッチなアートワークは、リアルな「永遠の夏」そのものではなく、いわばポップ・ミュージックの記憶から生成するヴァーチャルな世界=記憶の表象であり、このアルバムの魅力を存分に表現していた。これはテン年代的(インターネット的)な光景・環境の源流のようなサウンド/イメージともいえ、たとえば、甘いギター・コードに介入する刺激的なグリッチ・ノイズは、「歯医者で聴いたフィル・コリンズ」というOPNのコンセプトへと接続可能だろう。ヴェイパーウェイヴ以降のインターネット・カルチャー爛熟期であるいまだからこそ新しい文脈で聴き直してみたい。


Jim O'Rourke
I'm Happy, And I'm Singing,
And A 1, 2, 3, 4
Mego (2001)

 ジム・オルークの唯一の「ラップトップを用いたオリジナル・アルバム」は、00年代以降、多くのエレクトロニカの雛形ともなったアルバムでありながら、しかしほかの何にも似ていない孤高のアルバムでもあった。じじつ、この弾け飛ぶような電子音には、ヴァン・ダイク・パークスのポップネスから、メルツバウのノイズまでも圧縮・解凍されており、ジム・オルーク的としかいいようがない豊穣な音楽が展開されている。フェネス、ピタらとのフェノバーグとは違う「端正さ」も心地よく、まさに永遠に聴ける電子音楽的名盤といえる。2009年に2枚組のデラックス・エディションもリリースされた。


Ekkehard Ehlers
Plays
Staubgold (2002)

 このアルバムこそ、00年代後半以降の「ドローン/アンビエント」のオリジン(のひとつ)ではないか? コーネリアス・カーデュー、ヒューバード・フィヒテ、ジョン・カサヴェテス、アルバート・アイラー、ロバート・ジョンソンなどをソースとしつつも、それらのエレメントを弦楽的なドローンの中に融解させ尽くした美しい音響作品に仕上がっている(元は12インチシリーズであり、本作はそれをアルバムにまとめたもの)。“プレイズ・ジョン・カサヴェテス2”における超有名曲(“グッド・ナイト”?)を思わせる弦楽にも驚愕する。イックハルト・イーラーズの最高傑作ともいえよう。


Shuttle358
Understanding Wildlife
Mille Plateaux (2002)

 00年代初頭に人気を博したクリッキーなビートはエレクトロニカの「ポップ化」にも貢献した。LAのシャトル358(ダン・エイブラムス)が、2002年に〈ミル・プラトー〉よりリリースした本アルバムは、その代表格。細やかに刻まれるビートに、朝霧のように柔らかい電子音が繊細にレイヤーされ、00年代初頭の小春日和のような空気を見事に象徴している。耳をくすぐるカラカラとした乾いた音響が気持ちよい。2015年には11年ぶりのアルバム『キャン・ユー・プルーブ・アイ・ワズ・ボーン』を老舗〈12k〉よりリリース。こちらは森の空気のようなアンビエント作品に仕上がっていた。


Frank Bretschneider &
Taylor Deupree
Balance
12k (2002)

 電子音響とエレクトロニカの二大アーティストの競演盤にして、ミニマル/クリック&グリッチ・テクノの大名盤。初期テイラー・デュプリー特有のミニマル・テクノな要素と、フランク・ブレッシュナイダーのクリッキーかつグリッチなエレメントが融合し、緻密なサウンドのコンポジションを実現している。シグナルのような乾いたビートと、チリチリとした刺激的なノイズが交錯し、マイクロスコピックな魅力が横溢している。ミニマル・グリッチな初期〈12k〉の「思想」を象徴する最重要作といえよう。フランク・ブレッシュナイダーはシュタインブリュッヘルとのコラボ作もおすすめ。



SND
Tenderlove
Mille Plateaux (2002)

 マーク・フェルとマット・スティールによるクリック/グリッチ・ユニットSNDのサード・アルバム。近年でもファースト・アルバムがリイシューされるなど常に高い評価を得ている彼らだが、本作は、そのキャリア中、もっともハウス・ミュージックに接近した問題作である。ハウス・ミュージックの残滓を残した甘いコード感と、シンプル/ミニマルな音響の中で分断されていくダンス・ビートなどは、現在のアルカなどにも繋げていくことも可能だろう。後年、〈エディションズ・メゴ〉や〈ラスター・ノートン〉などからリリースされたマーク・フェルのソロ作も重要作。あわせて聴きたい。


Hecker
Sun Pandämonium
Mego (2003)

 なんというノイズか。まるで太陽のように眩く、獰猛であり、優雅でもある。嵐のようなノイズの奔流はラッセル・ハズウェル級であり、まさに取り扱いが危険な盤だが、しかしその強靭な音響は一度ハマると抜け出せなくなる快楽性がある。いわば90年代末期に誕生したピタなどのグリッチでノイジーな電子音響と、2010年代的なインダストリアル/ノイズをつなぐアルバムといえ、いまをときめく〈パン〉が、2011年にアナログ盤でリイシューしているのも頷けるというもの。まさにヘッカーの最高傑作だ。刀根康尚やデヴィッド・チュードアなど実験音楽や電子音楽の系譜にも繋げて聴いてみよう。


Pan Sonic
Kesto
Blast First (2004)

 キム・カスコーンがグリッチ・ムーヴメントの最重要バンドと認識するパン・ソニック。ファースト・アルバム『ヴァキオ』(1993)が有名だが、ここではあえて本作を紹介したい。彼らの5枚目のオリジナル・アルバムにして、脅威の4枚組。ブルース・ギルバート、灰野敬二、スーサイド、スロッビング・グリッスル、アルバン・ルシエなどに捧げられた楽曲群は、インダストリアルから電子ノイズ、果ては静謐なドローンまで実にさまざまで、さながらパン・ソニック流の電子音楽/ノイズ史といった趣。グリッチ以降の電子音響が行き着いた「宇宙」がここにある。アートワークも素晴らしい。


Stephan Mathieu
The Sad Mac
HEADZ (2004)

 フィールド・レコーディングに弦楽のようなドローンがレイヤーされ、記憶の層が再生成していくような美しい音響作品であり、同時に「作曲家」ステファン・マシューの個性が前面化した最初の作品でもある。弦楽曲のもっとも美しい瞬間を、まるで記憶のスローモーションのように引き伸ばすシネマティックな作風は、電子音楽とエレクトロ・アコーステイックの境界線を静かに融解させていく。アルバム・タイトルは愛用してきたマックのクラッシュを表現しているようで、いわばマシンへのレイクエムか。現在のアンビエント/ドローンの系譜を振り返るときに欠かせない重要なアルバム。


Electronica “New” Essential Discs - ele-king

「こういうひとつの括り方に抵抗を感じる人がいるのはわかっているが、なかば強引にでも括った方が見えやすくなることもある。もともと踊れもしないテクノ(エレクトロニック・ミュージック)を、しかし前向きなニュアンスで言い直したのがエレクトロニカ(ないしはえてして評判の悪いIDM)なるタームである」

「2010年に〈エディションズ・メゴ〉からOPNが『リターナル』を出したときは、この手の音楽がエレクトロニカというタームを使って解釈されることはまずなかったが、しかし、エイフェックス・ツインが華麗な復活を遂げて、かたやEDMが全盛の今日において、エレクトロニカ新世紀と呼びうるシーンが拡大するのはなんら不思議なことではない」
(本特集巻頭言より)

──とすれば、フロアにもベッドルームにも収まらない今日的なエレクトロニカとはどのようなものか。ディスク・レヴューで概観する。

Akkord - HTH035 (Houndstooth 2015)


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 シーンに現れたときにはマスクを被り謎の存在だったアコード。彼らはマンチェスター近郊を拠点に活動をするシンクロとインディゴによるテクノ・ユニットだ。プロジェクトをはじめるにいたってエイフェックス・ツイン、セラ、シャックルトンといった面々を念頭に置き、この作品においてはその影響がジャングルやダーク・アンビエントを通して噴出。そのリズムをアタマで理解しようとすると複雑で脳の中枢が熱くなり、体で捉えようとすると妙なダンスが生まれる。また今作の後半にはフィスやリージスといったプロデューサーたちのリミックスを収録していて、特にハクサン・クロークによる「数多くの証人」と題された曲がトんでいる。前半の楽曲すべてをひとつにリフィックスしてまとめたもので、家でもフロアでも聴けないような音の暴力が10分続き、ド派手なSF映画のようにそれが突如パッと終わる。(髙橋)

Actress - Ghettoville (Werk Discs, Ninja Tune / ビート 2014)


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 思えば、転換期は2010年だった。アクトレスで言えば『Splazsh』の年。その後も『R.I.P』、そして『Ghettoville』へと着実に我が道を進んでいる。UKクラブ・カルチャーから生まれたモダン・エレクトロニカを代表する。(野田)

AFX - Orphaned Deejay Selek 2006-08 (Warp/ビート 2015)


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 エレクトロニカとは、いかに工夫するか。リチャード・D・ジェイムスにとってのそれは機材の選び方にも関わっている。高価なモジュラー・シンセや最先端のデジタル環境を賞揚するわけではない……という話は佐々木渉に譲ろう。『Syro』から続く3作目は、アシッド・サウンドの最新型。(野田)

Albino Sound - Cloud Sports (Pヴァイン 2015)


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 日本においてこのエレクトロニカ・リヴァイヴァルの風を敏感に感じ取ったひとりが、アルビノ・サウンド。詳しくはインタヴューを参照。(野田)

Arca - Mutant (Mute/トラフィック 2015)


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 音楽作品において、これほど強烈なヴィジュアルは、久しぶりである。若く敏感な感性は、なんとも妖しい光沢を発しているこのヴィジュアルに間違いなく手を伸ばすだろう。アルカはそういう意味で、現代のハーメルンの笛吹き男である。(野田)

Four Tet - Morning/Evening (Text/ホステス 2015)


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 好き嫌い抜きにして、フォー・テットの功績は誰もが認めざる得ないだろう。最新作は2曲収録。メトロノーミックなドラミングの上を、エキゾティズムを駆り立てるように、インド人の歌のサンプリングが挿入され、叙情的な展開を見せる1曲目。そして静かにはじまり、多幸的な協奏のなか、心憎いドラミングでエンディングを用意するもう1曲。見事、というほかない。“ストリングス・オブ・ライフ”のカヴァーも素晴らしかったし。(野田)

Holly Herndon - Platform (4AD/ホステス 2015)


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 〈リヴェンジ(RVNG Intl.)〉からの『ムーヴメント』(2012年)がクラブ・シーンにも届いたこともあって、新作は名門〈4AD〉からのリリースになったサンフランシスコ出身のホーリー・ハーンダン。簡単にいえば、ローレル・ヘイローとは対極にいるプロデューサーで、彼女の女性らしい“声”がこの音響空間では重要なファクターとなっている。「R&Bエレクトロニカ」とでも言ったらいいのかな。(野田)
https://www.youtube.com/watch?v=nHujh3yA3BE

Huerco S. - Colonial Patterns (Software / melting bot 2013)


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 ブルックリンの新世代電子音楽マスターが、2013年にOPN主宰〈ソフトウェア〉からリリースしたアルバム。デトロイトの高揚感と、ハウスの優雅さと、ミニマル・ダブの快楽性と、00年代以降のアンビエント/ドローンの浮遊感を、ポスト・インターネット的な情報量と感性で(再)構築。4/4のテクノ・マナーと、雲の上を歩いているようなスモーキーな感覚が堪らない。あの〈オパール・テープス〉などからも作品をリリースしている。(デンシノオト)

Kind Midas Sound, Fennesz - Edition 1 (Ninja Tune / ビート 2015)


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 ザ・バグことケヴィン・マーティン、イラストレイターとしても活躍するキキ・ヒトミ、詩人でありテクノ・アニマルでマーティンと共演したこともあるロジャー・ロビンソンによるスーパー・ダブ・トリオが、電子音楽化クリスチャン・フェネスと組んだ意外作。家(に籠る)系アカデミシャンを、ストリートの知性派ギャングが外へ引きずり出したらどうなるのか? いや、ここでの実験はその逆だろうか。〈ハイパーダブ〉からのリリース作で聴けるスモーキーで力強いダブステップは押しやられ、フェネスの繊細な残響プロダクションがバグのラフさをときに助長し、ときに漂白する。リズムがもう少しあってもいいかなと思う気もするが、両者のバランスを考えれば納得もできる。インテリジェント・ダブ・ミュージック。(髙橋)

Laurel Halo - In Situ (Honest Jon's / Pヴァイン 2015)


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 ローレル・ヘイローが2010年に何をやっていたかと言えば、〈ヒッポス・イン・タンクス〉からチルウェイヴ風の柔らかい作品を出していたのだった。が、ヨーロッパを経験してからは、彼女の音楽は遠近法のきいた音響のダンス・サウンドへと変容した。2013年に〈ハイパーダブ〉から出した12インチ「ビハインド・ザ・グリーン・ドア」に収録された“スロウ(Throw)”なる曲は彼女の最高作のひとつで、ピアノとサブベース、パーカッションなどの音の断片の数々は、宙の隅々でささやかに躍動しながら、有機的に絡み、全体としてのグルーヴを生み出す。テクノへと接近した新作においても、立体的にデザインされた小さな音の断片とサブベースが、独特のうねりを創出している。凡庸のテクノとは違う。女性アーティストに多く見受けられる甘い“声”(ないしは女性性)をいっさい使わない硬派による、素晴らしい作品だ。(野田)

Lee Bannon - Pattern Of Excel (Ninja Tune/ビート)


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 サクラメントのプロデューサー。2012年にアルバム『ファンタスティック・プラスティック』でデビューして以来、ヒップホップに軸足を置きつつもしなやかに音楽性を変容させ、翌年の『オルタネイト/エンディングス』ではジャングルを、そしてこの『パターン・オブ・エクセル』ではアンビエント・ポップを展開。2015年はジョーイ・バッドアスのプロデュースで話題盤『B4.DA.$$』にも参加するなど、時代にしっかりと沿いながらもジャンル性に固執しない無邪気さを発露させている。自らが「ピュア・ベイビー・メイキング・ミュージック」と呼ぶもうひとつのペルソナ、ファースト・パーソン・シューター(FPS)名義ではチルウェイヴに同調。クラムス・カジノやスクリュー、ウィッチ・ハウスとも隣り合いながら、まさにFPS(一人称視点のシューティング・ゲーム)──主観性が先行する世界をドリーム・ポップとして読み替え、2010年前後のリアリティを提示した。(橋元)

Logos - Cold Mission (Keysound Recordings 2013)


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 〈テクトニック〉や〈Keysound〉といったレーベルからリリースを重ねてきた、UKのグライム・プロデューサー、ロゴスのファースト・アルバム。マムダンスとの『プロト』(Tectonic, 2014)ではUKハードコアの歴史を遡りフロアを科学する内容だったのに対して、こちらはリズム・セクションを可能な限り廃して、空間に焦点を当てたウェイトレス・グライムを前面に出し、そこにアンビエントの要素も加えた実験作。グライムの伝統的なサウンドである銃声や叫び声のサンプリングと、尾を引くベース・キックがフロアの文脈から離れ、広大な宇宙空間にブチまけられているかのような様相は恐怖すら覚える。「グライムを脱構築していると評された」本作だが、本人は大学で哲学を学んだ経験から「ロゴス」の名前を採っているとのこと。(髙橋)

Mark Fell - Sentielle Objectif Actualité (Editions Mego 2012)


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 Sndのマーク・フェルも長きにわたってこのシーンを支えているひとり。2010年以降はコンスタントに作品を出している。これもまたミニマルを追求した作品で、NHKコーヘイとも共通するユーモアを特徴としている。(野田)

NHK - Program (LINE 2015)


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 NHKコーヘイは、本当にすごい。〈ミル・プラトー〉〈スカム〉〈ラスターノートン〉と、そのスジではカリスマ的人気のレーベルを渡り歩き、ここ数年は〈PAN〉、そしてパウウェルの〈Diagonal〉からも12インチを切っている。もちろん彼にとっての電子音楽は大学のお勉強ではない。それは感情表でもなければ研究でもない、おそらくは、意味を求める世界への抵抗なのだろう。2015年の新作では、素っ頓狂なミニマルを展開。小さなスクラッチノイズのループからはじまるこの反復の、どこを聴いても物語はない。タイトルは、あらためて言えば、NHK『番組』。(野田)

Oneohtrix Point Never - Returnal (Editions Mego 2010)


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 この1曲目から2曲目の展開を、大音量で聴いていない人は……いないよね? いい、1曲目、そして2曲目だよ。そうしたら、最後まで聴いてしまうだろう。(野田)

Patten - ESTOILE NAIANT (Warp/ビート 2014)


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 OPNが錯視家なら、パテンは詐欺師。「D」とだけしか名乗らないロンドンの“ミステリアスな”プロデューサーによるセカンド・フル。煙に巻くようなタイトルやアートワーク、あるいは言動によって、アブストラクトなダンス・トラックにアートや哲学の陰影をつけてしまうスリリングなマナーの持ち主だ。〈ノー・ペイン・イン・ポップ〉から最初のアルバムを、〈ワープ〉から本作をリリースしたという経歴は、〈エディションズ・メゴ〉と〈メキシカン・サマー〉をまたぐOPNが同〈ワープ〉と契約したインパクトに重なり、当時のインディ・シーンにおける先端的な表現者たちがいかに越境的な環境で呼吸をしていたのかを象徴する。とまれ、Dは人気のリミキサーにして自身もレーベルを主宰するなど才能発掘にも意欲的。彼の詐術とはまさにプロデューサーとしての才覚なのかもしれない。(橋元)


 本当だったら「エレクトロニカの“新”新世紀」特集に載っていたはずの新騎手、各誌讃辞を惜しまない新作とともに来日。後日の公開をお楽しみに。

■Visionist Live presented by Diskotopia & melting bot

2015.11.15 sun at CIRCUS Tokyo
START : 18:00 ADV ¥2,000 | DOOR ¥2,500

〈PAN〉再来襲! 現代グライムの旗手、ロンドンのVisionistがデビュー・アルバム『Safe』を携え来日。FKA Twigsとの帯同ツアー、KENZOやAcne Studiosの音楽も手がけ、ファッションまでも巻き込む気鋭がUKサウンドシステム・カルチャーを拡張する日本初のライブを披露。

Objekt、Afrikan Sciences、Bill Kouligas、Lee Gamble、M.E.S.H.、TCF、そしてRashad Beckerと来日ラッシュの続くベルリンの実験/電子レーベル〈PAN〉から今度はロンドンのVisionistが新譜『Safe』を携え来日。ここ数年でUKを中心に再興する00年代前半にダブステップと共に現れたラップ・カルチャー、ロンドン発祥のグライムを再構築しながら、UKの電子音楽やクラブ・ミュージックに根付くUKサウンドシステム・カルチャーを拡張、最新作『Safe』では脱構築を試み、グライムを彫刻のように掘り込みアブストラクトな音像を浮かび上がらせたアート・ピースはクラブや音楽シーンを飛び出しファッションまでも巻き込み話題を集めている。ブリストルとロンドンを中心に新たなる時代を迎えたUKサウンドシステム・カルチャーの前人未踏の領域へと踏み込むフロンティア、Visionistのライブが東京で実現する。

Main Floor :

Visionist Live [PAN / Codes from London]
ENA [Samurai Horo / 7even]
Yomeiriland (嫁入りランド) Live
食品まつり a.k.a foodman Live [Orange Milk / melting bot]
Prettybwoy
with MC Pakin [Dark Elements / GUM]
A Taut Line [Diskotopia]
BD1982 [Diskotopia]

VJ : Shun Ishizuka

First Floor :

VOID : Azel / Gyto / Shortie / Tum
Mr. James [Expansions, London]
asyl cahier [LSI Dream]
JR Chaparro

ADV Ticket Outlet :

Peatix / PIA (P-CODE 280477)

主催 / 会場 : CIRCUS
制作 / PR : Diskotopia | melting bot
協力 : Inpartmaint

more info : https://meltingbot.net/event/visionist-live-presented-by-diskotopia-meltingbot

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■Icy Tears Vol.3 featuring VISIONIST
Presented by Joyrich

2015.11.13 fri at Club Arc
START : 22:00 Door ¥3,000 w/1 Drink

DJ:

VISIONIST
WILL SWEENEY (ALAKAZAM)
KIRI (PHIRE WIRE)
1-DRINK
HIROSHI IGUCHI
AVERY ALAN (PROM)
KOKO MIYAGI


Mode Of Electoronic-a - ele-king


Laurel Halo / In Situ

Tower HMV Amazon

 テクノがエクスペリメンタルなモードをまとうようになった時代……。それが2010年代初頭のエレクトロニクス・ミュージックの潮流であったと、ひとまずは総括できるだろう。
 グリッチやクリック、ドローンなど00年代のエレクトロニカにおけるサウンドの実験が、ミニマル・ダブ以降のテクノの領域に流れてこんでいったことは、デムダイク・ステアやアンディ・ストットなどを擁する〈モダン・ラヴ〉、ビル・クーリガス率いる実験音楽レーベル〈パン〉、ルーシー主宰の〈ストロボスコピック・アーティファクツ〉の諸作品を思い出してみれば即座にわかる。

 その結果、(アートワークも含め)、ノンアカデミックなエレクトロニクス・ミュージックは、よりアートの領域にシフトし、コンテクストとコンセプトと物語性が強くなった。エクスペリメンタルという言葉が頻繁に用いられるようにもなる。ビートは分断され、サウンドは複雑化した。


Laurel Halo / Quarantine
Hyperdub/ビート(2012)

 ローレル・ヘイローは、待望の新作がリリースされるワンオートリックス・ポイント・ネヴァーやアルカ(新作『ミュータント』は前作を超える傑作!)などとともに、そのような時代を代表するアーティストといえよう。同時に孤高の存在でもあった。会田誠の作品を用いたファースト・アルバム『クアランティン』(2012)のアートワークなどを見ても分かるように、繊細・緻密な2010年代前半にあって、ほかにはない独自の感性であった。とはいえ、楽曲自体はどこか瀟洒で、それこそ「テン年代的」なエクスペリメンタル・アンビエントな質感を持っていた点も新しかった。

 しかし、彼女の楽曲にはある種の「つかみどころのなさ」があったことも事実。声を存分に使ったトラックもあるが、ホーリー・ハーダン(新作『プラットフォーム』は90年代以降の音響学=ポップの領域越境のお手本のごときアルバム!)のキャッチーさとはまた違う「地味」なテイストがあったのだ。

 いまにして思えば、その「つかみどころのなさ」こそ、テクノをルーツとする彼女のストイックさの表れだったのではないかと思う。テクノとアンビエントという領域のあいだでローレル・ヘイローの音は鳴っていた。実際、『アンテナ EP』(2011)や『アワー・ロジック』(2013)などを聴けば、彼女のストイックなテクノ感覚やアンビエント感覚をより理解できる。ある意味、『クアランティン』と『チャンス・オブ・レイン』は、やや異質な作品だったのではないかとも。この『イン・サイチュ』において、彼女は自分のルーツ=テクノへと素直に回帰している(『アワー・ロジック』的?)。1曲め“シチュエーション”の洗練されたビートメイクには誰しも驚くはず。この変化は彼女がベルリンというテクノの地に移住したことが大きいのかもしれないし、〈オネスト・ジョンズ〉からのリリースということもあるだろう。
 ここから私はインダストリアル/テクノ、ジューク / フットワーク、グライム、近年のアンビエント・シーンとの関連性や交錯性もつい考えてしまう。


Jlin / Dark Energy
melting bot/Planet Mu(2015)

 そこでまずジェイリン『ダーク・エナジー』(2014)をとり上げてみたい。類似性は3ビートメイキングではなく、独自の硬質感とファッションショーなどでも用いられるモードな雰囲気にある(とくに『イン・サイチュ』のM2)。

 モード感覚は近年のエレクトロニック・ミュージックを考えていく上で重要な要素で、〈パン〉からリリースされたヴィジョニスト『セーフ』も同様だ。グライム文脈でありつつも、エレガンスでエクスペな音楽性は、アートワークにしても未来的。彫刻のような硬質なサウンドと鉱物的なビートがたまらない。そしてテクノ・フィールドからはドイツのヘレナ・ハフ『ディスクリート・ デザイアーズ』も併せて聴きたい。彼女のトラックはアシッドなビートが強調されているが、インダストリアルなダークさもある。


Powell / Insomniac /
Should Have Been A Drummer
XL(2015)

 また、スティーヴ・アルビニにサンプリング許諾申請をして怒られ、結局、承認してくれたパウエル『インソムニアック/シュドゥヴ・ビーン・ア・ドラマー』もインダス以降の現代音響テクノの最先端として聴いておきたい。ここからエンプティセットの新作EP『シグナル』における過激で優雅な実験的なサウンドに繋げていくことも可能であろう。

 個人的には〈ストロボスコピック・アーティファクツ〉からリリースされたシェヴェル『ブラーズ』と、〈オパール・テープス〉から発表されたインダストリアル・テクノとフリー・インプロヴィゼーションとアンビエントの交配を図るマイケル・ヴァレラ『ディスタンス』こそ、『イン・サイチュ』の横に置いておきたいアルバムだ。『ブラーズ』は最先端のインダストリアル・テクノで、そのストイックな感覚は『イン・サイチュ』とスムーズに繋がっていく。『ディスタンス』は、ジャンルと形式を越境していくストレンジな感覚の中に、ローレル・ヘイローの個性に近いものを感じる。

Chevel『Blurse』

Michael Vallera『Distance』

 『イン・サイチュ』にはアンビエントなテクスチャーとジャズ的な和声感が見られる曲もある(M7とM8などにととまらず、ビート入りのトラックでもシルキーな上モノなどに彼女のアンビエント感覚を聴き取ることができる)。
 そこでカラーリス・カヴァデール(Kara-Lis Coverdale)を聴いてみたい。彼女はクラシカルな感性と素養を持ったアンビエント・アーティストだが、讃美歌や宗教歌のようなエッセンスを感じる音楽家である。声を使ったり、ミニマルなフレーズによって曲を構築したりするなど、古楽のような音楽性と浮遊感のあるサウンドのテクスチャーが素晴らしい。LXVによるグリッチ・ノイズと、カヴァデールによる乾いた音と、弦のようなアンビエンスと加工されたヴォイスなどが交錯するコラボレーション作『サイレーン』も素晴らしいが、何はともあれ神話的なアンビエント『アフタータッチズ』をお勧めしたい。

Kara-Lis Coverdale『Aftertouches』
Kara-Lis Coverdale - "TOUCH ME & DIE" from Sacred Phrases on Vimeo.


Dasha Rush / Sleepstep
Raster-Noton(2015)

 また〈ラスター・ノートン〉からリリースされたダーシャ・ラッシュ『スリープステップ』もアンビエントとテクノを20世紀初頭のモダニズムで越境するような優美なアルバムである。ジャズ/フュージョン的なコード感と今日的な電子音楽のという意味では、CFCF『ザ・カラーズ・オブ・ライフ』をピックアップしたい。架空のドキュメンタリー映画のサントラといった趣のアルバムだが、ピザールな感覚もありヘイローの諸作品と並べても違和感はない。

 エクスペリメンタルかつ音響なテクノと幽玄なアンビエント/アンビエンス。そしてジャズ/フュージョン風味。ストイックでありながらローレル・ヘイローらしさもある。そのうえ2015年的な音楽的文脈すらも聴き取ることができる。今年も素晴らしい話題作・傑作が目白押しだが、『イン・サイチュ』も独自の存在感=鉱石のような光(まるでアートワークのごとき!)を放っているように思えてならない。

Note:
Jlin『Dark Energy』
Visionist『Safe』
Helena Hauff『Discreet Desires』
Powell『Insomniac/Should'Ve Been A Drummer』
Emptyset『Signal』
Chevel『Blurse』
Michael Vallera『Distance』
Kara-Lis Coverdale『Aftertouches』
Kara-Lis Coverdale/LXV『Sirens』
Dasha Rush『Sleepstep』
CFCF『The Colours of Life』


アルカ、音楽のオーヴァー・スペック - ele-king


アルカ / ミュータント

Tower HMV Amazon

 アルカの新譜『ミュータント』は、彼のミックス音源の密度がアルバム一枚にわたって展開する驚異的な作品である。今年頭に突如リリースされたミックス音源『Seep』(16分56秒)の強度が持続する1時間06秒のアルバムとでもいうべきか(ちなみに日本盤にはボーナス・トラックが収録されている)。
 これは決定的な変化でもある。何故なら2013年リリースの前作『ゼン』は、彼の作曲家としての個性が全面に出ており、ファースト・アルバムにふさわしい名刺のような秀作であった。対して本作は現代を生きる音楽家としての思考・呼吸・無意識が四方八方に炸裂するような極めてアクチュアルなアルバムに仕上がっている。先行公開された“ソーイチロー”などを聴くと前作のテイストに近いと思われてしまうが、これは一種のトラップだろう。じっさいアルバムは1曲め“アライヴ”から世界をズタズタに分断するかのような強烈な音響が展開されるからだ。まさに知覚がクラッシュしそうなほどのサウンドの情報量と快楽。私は、この「クラッシュ」感覚にこそアルカの現在性を聴き取ってしまう。

 情報/感情、事実/主観、言葉/映像、ムービー/サウンドなどが渾然一体となり、蒸発しそうなほどに飽和している現代、いわば「ポスト・インターネットな空間」から、われわれ「人間」の感覚に注入されるデータという「モノ」たち。すでに人間の知覚は、インターネット的な「モノ」の官能性と刺激に晒され、オーバースペックにある。その先に待っているのは「クラッシュ」か。本作『ミュータント』には、そのような「クラッシュ」感覚が濃厚に圧縮されているように思えるのだ。

 また、アルカやOPNの新作におけるアートワークやヴィジュアルは過剰なまでにグロテスクなものも多く、衝撃的な映像もある。が、しかし、真の問題はそこではない。先に書いたように私たち「人間」は、過剰な情報と官能の摂取で、いまや「クラッシュ」寸前であり、彼(ら)の音と映像は、その無意識と摂取の状況を的確に反映しているのである。アルカとヴィジュアルを担当するジェシー・カンダはいまをよく分かっている。そう。「クラッシュ=人間の終わり」の時代を。

 だが、アルカの「クラッシュ」感覚が、単に露悪的なものに留まっていない点も重要である。彼の音楽の本質は、ラヴェルやドビュッシーなどフランス印象派の和声感覚を想起させる優雅なものだ。そこにアルカの作曲家としての本質もあるとは思うのだが、同時に、ヒップホップやインターネットのミックス音源からも強い影響を受けている彼は、その「優雅さ」を内側から炸裂・破壊させるようにトラックをコンポジションしていくのである。そう、彼は自分自身をクラッシュさせるように音楽を生み出している。そこから必然的に生まれるノイズもまた音楽のエレメントであり、決して反社会的な象徴としてノイズを用いるわけではない。構築・破壊・再生成のコンポジション。

 その意味でアルカほど21世紀における人間の終わり(崩壊)を体現している音楽家もいないだろう。アルバム・ラストにして静謐な楽曲“ペオニーズ”が、まるで旧人類を葬送するレクイエムのようにも聴こえてしまうほどだ……。エレガント/クラッシュなポスト・インターネットにおける存在論的音楽。それがアルカの『ミュータント』だ。ここには新しい音楽が蠢いている。


DIE KRUPPS Live in Tokyo 2015 - ele-king

 ディー・クルップスがやって来る! この年の瀬にやって来る! ついに初来日公演とあいなった! 今回ディー・クルップスは、とあるシンポジウムに参加するために来日することになり、その日程に合わせて急きょライヴがブッキングされたのだ。

 首謀者、ユールゲン・エングラーが中心となり、ディー・クルップスは1980年にデュッセルドルフで結成された。オーソドックスなバンド編成にメタル・パーカッション、電動工具やミニマル・エレクトロまでもが融合したサウンドは、時に社会や政治に対し挑戦的な姿勢をとる。同時代のアインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンなどに比べると、はるかにアッパーでストレートだ。彼らの代表曲『Whare Arbeit-Wharer Lohn』(真の労働・真の報酬)は、ドイツのニューウェイヴの<アンセム>ともいえる存在だ。その後はEBM(エレクトリック・ボディ・ミュージック)シーンの立役者として注目され、ニッツァー・エブのようなフォロアーたちを生み出した。いわば、1980年代ドイツ音楽シーンの代名詞的存在なのだ。現在ではアグレッシヴなギターをフィーチャーした「インダストリアル・メタル・マシーン・ミュージック」と呼ばれる独自のスタイルを確立し、数千人単位のフェスティヴァルにも出演するほどの、名実ともにドイツ屈指のバンドへと成長した。

 「とにかく日本のファンの前で演奏したい」と言う彼らの情熱は計り知れない。今回は初来日にして、ライヴ公演はわずか1回のみという貴重な機会となった。デビュー当時から使用されている「シュターロフォン」(自作メタル・パーカッション、重量は60kg以上!)を引っ提げて、ディー・クルップスが東京を強襲する! この機会に、彼らの体の筋肉は、どれをとっても機械なのか、その目で確かめていただきたい。
(小柳カヲル)

Line Up:
Jurgen Engler (Vocals)
Ralf Dorper (Synthesizer)
Marcel Zurcher (Guitar)
Volker Borchert (Drums)
Nils Finkeisen (Guitar)


【DIE KRUPPS Live in Tokyo 2015】
2015年12月8日 (火)
東高円寺 U.F.O.Club https://www.ufoclub.jp/
開場 19:00 / 開演 20:00
前売:¥3,500(+D) / 当日:¥4,000(+D)
(主催:Suezan Studio / U.F.O.Club)

講演の詳細やチケット予約方法は特設サイトをご覧ください。
https://suezan.com/krupps/


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