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「ageHa THE FESTIVAL 2024」ACiD open air - ele-king

〈ageHa〉によるフェスティヴァル・プロジェクト「ageHa THE FESTIVAL」、3つのステージで、国内外のエレクトロニック・ミュージシャンのライヴやDJを満喫しよう。今年はジャーマン・トランスの巨匠のなかの巨匠、SVEN VÄTHが出演。ほかにもGONNOやGROUNDも! ここで、失った夏を取り戻そう。

ageHa THE FESTIVAL 2024
ACiD open air

2024年9月28日(土)開場・開演12:00〜終演21:00
シティサーキット東京ベイ(東京・お台場)

出 演:
SVEN VÄTH
MONOLINK [LIVE]
SOLARDO
ATSUO PINEAPPLE DONKEY [LIVE]
DRUNKEN KONG
GONNO
GROUND
MACHINA [LIVE]
MILLION DOLLAR SOUNDS
MR. HO
NASTHUG
RISA TANIGUCHI
SATOSHI OTSUKI
SAKUMA
TNSEEI (ENSITE)
YAMARCHY
YUI (ENSITE)

VJ:
HEART BOMB

オフィシャルサイト:
https://acid.tokyo

主 催:ACiD
共 催:LIVEEXAM
特別協力:楽天チケット
協 力:シティサーキット東京ベイ
企 画:SMI ENTERTAINMENT
制 作:ageHa production

━━━━━━━━━━
料 金
━━━━━━━━━━
■早割チケット[楽天チケット独占] ¥11,000
■早割デラックスチケット[楽天チケット独占] ¥23,000
■早割チケット U-23 [楽天チケット独占] ¥9,000
販売期間:2024年8月20日〜9月2日
プレイガイド:楽天チケット

■前売りチケット ¥13,000
■前売りデラックスチケット ¥25,000
■前売りU-23 ¥10,000
販売期間:2024年9月3日〜9月27日
プレイガイド:楽天チケット / ZAIKO

■チケット購入
楽天チケット https://r-t.jp/acid
ZAIKO https://acid.zaiko.io/

 三面ゴシップとは、PUNPEEのライヴDJとして知られる原島 "ど真ん中" 宙芳、ラッパー仙人掌のDJ名義=DJ Slowcurv、ライターとして活躍する二木信という、「飲み友だち」3人からなるDJチームにしてパーティである。ゆるりと継続されてきた同パーティは今年10周年を迎えるそうだ。というわけで、アニヴァーサリー・パーティのお知らせです。
 9月22日(日曜/祝前日)恵比寿のBATICAにて開催されるそれには、ゲストとして田我流×!!!??(Secret Guest)、TWICE AS NICE -Gradis Nice & DJ Scratch Nice-(NYC DANCE MUSIC SET!!)、KRAIT(Kana & Timmy)の3組が登場、それぞれスペシャルなB2Bを披露することになっている。
 また、深夜にはBATICAによるレフトフィールドなヒップホップのパーティ、「特急帯域」オーガナイズによるアフターパーティも予定されているとのこと。盛りだくさんの一夜、ぜひ足を運んでみましょう。

三面ゴシップ ―10th Anniversary Party―

9/22(sun/祝前日)
開場:18:00
Open Till Midnight

EBISU BATICA

入場料
¥2,000(with 1d)

Special Guest Back 2 Back DJs!!
田我流×!!!??(Secret Guest)
TWICE AS NICE -Gradis Nice & DJ Scratch Nice-(NYC DANCE MUSIC SET!!)
KRAIT(Kana & Timmy)

FOOD
WANDERLUST

Hosted by
三面ゴシップ(原島"ど真ん中"宙芳、DJ Slowcurv、二木信)

After Party
Late Night After Party Presented by 特急帯域


特急帯域 vol.9
9/22(wed)24:00 open

door 2000+1D dis 1500+1D

LIVE
TiGht Plump
Vela
MK woop
moca mac

BEAT LIVE
KAZZY

DJ
3icrowave
juli
mami
you/rs
4810
daz

Food
Kabuto

C.E - ele-king

 ファッション・ブランド〈C.E〉による2024年最初のパーティがWWW Xにて開催される。大人気のベン・UFOを筆頭に、ベルギーから初来日のキャリアー、日野浩志郎のソロ・プロジェクト=YPY、昨年の〈C.E〉のパーティにも登場したChangsie、〈Incienso〉のDJ'JにDJ Trysteroと、なかなか刺戟的なラインナップだ。9月21日(土)、きっとこのころには涼しくなっていることでしょう。秋の夜長にひと踊り。

C.E presents
Ben UFO, Carrier, YPY
Changsie, DJ’J, DJ Trystero

2024年度初となるC.Eのパーティが9月21日土曜日、WWW Xで開催。

洋服ブランドのC.E(シーイー)が、2024年9月21日土曜日、東京は渋谷に位置するWWW Xを会場にパーティを開催します。

C.Eは、2011年のブランド発足以来、不定期ながら国内外のミュージシャンやDJを招聘しパーティを開催してきました。

2024年初の開催となるC.E presentsでは、イギリスよりBen UFO(ベン・ユーエフオー)、ベルギーよりCarrier(キャリアー)、日本よりYPY(ワイピーワイ)、Changsie(チャンシー)、DJ Trystero(ディージェイ トライステロ)の3名、アメリカよりDJ’J(ディージェイ ジェイ)をゲストに迎えます。

C.E presents

Ben UFO
Carrier
YPY
Changsie
DJ’J
DJ Trystero

開催日時:2024年9月21日土曜日11:30 PM
会場:WWW X www-shibuya.jp
料金:Door 3,000 Yen
Advance 2,000 Yen
t.livepocket.jp/e/20240921wwwx

Over 20's Only. Photo I.D. Required.
20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います

■Ben UFO
イギリスを拠点とするBen UFOは、インターネットラジオ局であるSub.FMにおいて番組The Ruffage Sessions(Loefahの楽曲名に由来)を2007年にスタートさせ、同年には友人であるPangaea、Pearson Soundと共に音楽レーベルHessle Audioを立ち上げた。2008年から現在に至るまでレーベルと同名のラジオ番組をロンドンのRinse FMで隔週で担当している。
現在に至るまでにミックスCD並びにミックステープがThe Trilogy Tapes、Rinse、Fabriclive、Wichelroede、Cav Emptよりリリースされており、FACT Magazine、RA、Boiler Room、Little White Earbuds、Truants、Blowing Up The Workshopなどにミックス音源の提供を行っている。
soundcloud.com/benufo
hessleaudio.com

■Carrier
90年代半ばから音楽制作を続けるGuy Brewerによるプロジェクト。
ドラムンベースのプロデューサー兼DJとしてキャリアをスタートさせ、その後約10年間にわたりShiftedの名義をメインに据えつつ、そのサイドプロジェクトとして数多の名義で楽曲を発表してきたGuyがShiftedを終了させ、新たにスタートさせたCarrier。
昨年23年にThe Trilogy TapesよりCarrier初のアルバム「Lazy Mechanics」を発表し、その後EPを3枚、ミックステープを1つリリースした。
SHXCXCHCXSHなどのリリースで知られる音楽レーベルAvian主宰。

「2020年に完成したShifted 名義における最後のLPを作った過程を考えると、私はすでに切り離すことを模索していました。今から思えば、私はすでに次に行くべき場所を模索し始めていたんです」
「Carrierは、ドラムンベース、テクノ、あるいはエクスペリメンタルなど、私がアナリストとして歩んできた中で拾いあげてきたものすべてに踏み込むことを意味していると思います。それらすべては自身のレンズを通して見てきたもので、私はそれを区画化してきました。Carrierでは、私のパレットを使い、これらの影響を取り入れたものへと適用し、統一感を生み出すことを目指しています」
soundcloud.com/driftingover

■YPY
日野浩志郎によるソロプロジェクト。
国内外のアンダーグラウンドミュージシャンのリリースを行うカセットレーベル「Birdfriend」、コンテンポラリー/電子音楽をリリースするレーベル「NAKID」主宰。
「goat」、「bonanzas」というバンドのプレイヤー兼コンポーザーであり、これまでの主な作曲作品は、クラシック楽器や 電子音を融合させたハイブリッドオーケストラ「Virginal Variations」(2016)、多数のスピーカーや移動する演奏者を混じえた全身聴覚ライブ「GEIST(ガイスト)」(2018-)の他、サウンドアーティストFUJI|||||||||||TAと共に作曲・演奏した作品「INTERDIFFUSION A tribute to Yoshi Wada」(2021-)等。佐渡を拠点に活動する太鼓芸能集団 鼓童とは2019年以降コラボレーションを重ねており、中でも延べ1ヶ月に及ぶ佐渡島での滞在制作で映像化した音楽映画「戦慄せしめよ/Shiver」(2021、監督 豊田利晃)では全編の作曲を日野が担当し、その演奏を鼓童が行った。
soundcloud.com/koshiro-hino
twitter.com/po00oq
instagram.com/po00oq/

■Changsie
千葉は銚子の潮風が育んだ1988年産DJ。2010年代初頭に出会ったダブステップをきっかけに、DJとしての活動を開始。UKのベースミュージックを軸に古今東西の様々なジャンルを織り交ぜるプレイスタイルで、国内外のいたるフロアで低音を轟かせてきた。
2020年にはロンドンに拠点を移し、現地でラジオ番組配信やクラブイベントへの出演を重ねる。
NTS Radioでバイマンスリー番組を担当中。
nts.live/shows/changsie
soundcloud.com/changsie

■DJ’J
1/2 of Incienso.
1/3 of down2earth.
soundcloud.com/jennyslattery
inciensorecs.bandcamp.com
soundcloud.com/down-2-earth

■DJ Trystero
東京を拠点とする音楽プロデューサー兼DJ。
インディペンデント音楽レーベルCity-2 St. Giga(シティー トゥ セント・ギガ)主宰。
英国のThe Trilogy Tapesより2枚のEP、米国のInciensoよりLPを1枚、日本のCav Emptからミックステープを1つ、葵産業よりミックスCD1枚をリリースしている。
soundcloud.com/djtrystero
instagram.com/st._giga/

KMRU - ele-king

 KMRUはケニア・ナイロビ出身、ベルリン在住のアンビエント・アーティストである。ここ数年、新世代のアンビエントアーティストとして、その名を知らしめてきた逸材だ。そんな彼の新作『Natur』が英国の老舗〈Touch〉からリリースされた。
 『Natur』は、これまでのKMRUのアンビエント作品を包括し、新たな音響領域の模索・実践し、そして高密度なサウンドスケープを形成した見事な音響作品だ。
 機械的な音でありながら、有機的な音響でもありつつ、聴くほどに没入感をもたらすサウンドスケープは見事の一言。2020年に〈Editions Mego〉からリリースされた『Peel』に匹敵する彼の代表作と呼べるアルバムになるのではないかと思う。ちなみにマスタンリグを手がけたのは、スロウダイヴのメンバーで、優れたアンビエント・アーティストであるサイモン・スコットである。

 では『Natur』はどんなアルバムなのか。どのような音響作品なのか。以下、概要を簡単に説明していこう。
 ナイロビからベルリンへ拠点を移した彼は、その都市の発する音に惹きつけられたという。ナイロビとは異なる都市の音、それは静謐であり人工的であり無機的なサウンドスケープであった。そこでは昼夜のコントラストも不明瞭であり、故郷のナイロビとは何もかもが異なっていたという。ナイロビは常に騒音があり、常に人の声が響きわたり、昼はどこまでも明るく、夜はどこまでも暗闇だった。
 『Natur』は、そんなKMRUのベルリンでの都市生活にインスパイアを受けて制作されたアルバムなのである。機械の音を引き伸ばしたような無機的な持続音=ドローンを基調にしつつ、微細なグリッチノイズや環境音がレイヤーされていく。そのサウンドメイキングの手腕がこれまで以上に研ぎすまされ、さながら音による(映像を欠いた)映画とでもいいたくほどに見事な音響空間を実現している。この楽曲は2022年に作曲され、以降、フェネスとのツアー、ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラとのコンサートなどで演奏されてきたという。時間をかけて作り込まれていった楽曲は、全52分におよぶ長大な曲に仕上がった。
 これまでのKMRUにあったエモーショナルな感覚は控えめになり、マシニックな音の持続、それこそ都市のあちこちから漏れ出る機械音を混合させたような音響が冒頭から発せられていく。しかしその音の「冷たさ」はとても心地よいのだ。鉄のひんやりとした感覚とでもいうべきか。その無機的なムードは、KMRUがベルリンで感じた孤独さとそれゆえの快適さの感覚に近いのかもしれない。

 アルバムは大まかに5部構成になっており、それぞれ“Natur 1”、“Natur 2”、“Natur 3”、“Natur 4”、“Natur 5”となっている。
 まず“Natur 1”では静謐な電子音響のドローンが鳴り始め、そこにさまざまなノイズが、さながら都市の絶縁体から漏れ出る接触不良のノイズのようにレイヤーされていく。ノイズのスタティックな饗宴は“Natur 2”でいったんピークを迎える。ノイズたちの音量が増し、刺激的な音響空間を形成していく。ナイロビからベルリンに移住したKMRUがナイロビよりは遥かに静かな都市の中で耳を澄まし、その都市のノイズを聴きとっていくさまが見えてくるかのようだ。
 続く“Natur 3”では機械的なドローンやノイズに混じり、鳥の声などの環境音が、はっきりと聴こえてくる。自分はここまで相当に没入して聴きこんでいたので、一瞬、幻聴かと思ってしまったほど。まるで過去の記憶と現実世界の音が入り混じるようなサウンドだが、幻想的ではなく、「この現実」が極度に抽象化された音のように思えた。環境音と電子音が入り混じり、機械的な音とオーガニックな音が入り混じるドローンを展開しているのである。
 環境音を経て音響は再び機械的なドローン/電子音響へと変化するのが“Natur 4”と“Natur 5”のパートである。聴き手の耳は不意の環境音の挿入を経て変化していく。“Natur 5”の終局近くに鳴るカラカラとしたノイズに、先ほどの環境音の記憶が重なる。エモーショナルを廃した音響に、オーガニックな音響を混ぜることで、音響の色彩にほんの少しの変化を与えたかのようだ。何より、ベルリンとナイロビの都市空間の差異という彼が感じた具体的な問題をベースとしつつ、このように抽象的な音響作品を作り上げている点に注目したい。

 ここでは機械化された都市空間を否定するだけではなく、その空間の心地よさや違和感とも対話し、世界の認識を改めようとする音楽家の柔軟な思考と感覚の揺らぎを聴き取ることができるの。思えばKMRUのアンビエントは、音響は、コロナ禍の状況で生まれた『Peel』なども含めていつもそうだった。自らの置かれた状況と、その状況と対話するようにサウンドスケープを構築しているのだ。
 かつてはその対話は自身への感情とも深くリンクしていたためエモーショナルなアンビエントともなったが、本作では、その対話が自身のインナースペースに向かうというよりは、ナイロビとベルリンという二つの異なる都市の対比から生まれていたためか、よりマシニックになった。その意味でKMRUは変化し続けている。ケヴィン・リチャード・マーティンとのコラボレーション作品でもそのような変化を聴きとることができたが、本作ではソロ作品であるがゆえ、マシニックな音響が全面化している。 
 どこまでも続く持続音、接触不良のようなノイズ、時折、脳裏を横切る鳥の声などの環境音が入り混じり、画一化された都市のサウンドスケープに潜む「曖昧さ」を50分に及ぶサウンドスケープとして展開する。

 と、くどくどと書き連ねてきたが、とにかく言えることは単純にこの機械的な音の持続と変化が気持ち良いということに尽きる。頭を無にして、機械の音をぼうっと聴き続けるように本作を聴いてほしい。そうすれば自ずとKMRUの見事な音響の構成力が体に染み入るように理解できるはずだ。

Caribou - ele-king

 カリブーとはいえば、ハウス・ミュージックにエレクトニカのセンスを取り入れて、じつに楽しいダンス・ミュージックをつくってきたダン・スナイスの主要プロジェクトである。我々は2010年の『 Swim』を忘れていないし、2014年の『Our Love』だってそう。だから、『Suddenly』以来の新作を楽しみしている。
 また、カリブーは、単独来日(10月14日@Spotify O-EAST)と朝霧JAM(10月12日〜 13日)の出演も決定している。

CARIBOU
Honey

PLANCHA / City Slang
2024年10月04日発売
※解説・歌詞・対訳付き予定


'Honey' cover art. Art direction and photography by JasonEvans. Design by Matthew Cooper

TRACK LIST

01. Broke My Heart
02. Honey
03. Volume
04. Do Without You
05. Come Find Me
06. August 20/24
07. Dear Life
08. Over Now
09. Campfire
10. Climbing
11. Only You
12. Got To Change

CARIBOU – Honey
YouTube

CARIBOU – Broke My Heart (Video)
YouTube
Video directed by Richard Kenworthy of Shynola.

CARIBOU – Volume [Video]
YouTube
Video directed by Richard Kenworthy of Shynola.


CARIBOU

日程:2024年10月14日(月・祝)
会場:Spotify O-EAST
時間:開場 18:00 / 開演 19:00
前売料金(税込):8,500円 *別途1ドリンク代金必要

ARTIST:
CARIBOU

オフィシャル先行受付:受付終了
https://eplus.jp/caribou/

一般:発売中
https://w.pia.jp/t/caribou/
https://l-tike.com/caribou/
https://eplus.jp/caribou/

※お一人様4枚まで
※未就学児入場不可、小学生以上チケット必要

企画・制作:SMASH

お問い合わせ:SMASH
HP smash-jpn.com
TEL 03-3444-6751

Godspeed You! Black Emperor - ele-king

 Godspeed You! Black Emperorが新作『No Title As of 13 February 2024 28,340 Dead』のリリースを発表した。欧米では10月4日に発売。
 また、アルバムのリリース発表に際して、あらたなステイトメントも発表した。

明白な真実
我々はそのなかを漂い、議論した
毎日が新しい戦争犯罪で、
毎日が花を咲かせる
私たちは一緒に座り、
ひとつの部屋でそれを書き、
そして別の部屋に座って録音した

タイトルはない=小さな体が倒れながら、どのようなジェスチャーが意味をなすのか? 
どのような背景があるのか?
どのような壊れたメロディがあるのか?
そして、線上の一点を示すための集計と日付、
負のプロセス
増え続ける山
灰のベッドに沈む太陽

我々が一緒に座って議論しているあいだ
旧世界秩序はかろうじて気にかけるふりをした
新世紀はさらに残酷になるだろう
戦争がはじまる
諦めるな
どちらかを選べ
がんばれ
愛を
GY!BE


“No Title As of 13 February 2024 28,340 Dead”:

01 Sun Is a Hole Sun Is Vapors
02 Hole Sun Is Vapors Babys in a Thundercloud
03 Raindrops Cast in Lead
04 Broken Spires at Dead Kapital
05 Pale Spectator Takes Photographs
06 Grey Rubble – Green Shoots


8月のジャズ - ele-king

 カナダのトロント出身のバッドバッドノットグッドは、純粋なジャズ・バンドということではなく、基本的にインストのジャム・バンドであり、ジャズのほかにもオルタナ・ロックやパンク、ヒップホップやファンクなどのさまざまな要素が混在している。自在な即興演奏が彼らの軸で、活動初期は実際のライヴ・レコーディングを音源としてリリースしていた。ナズからジェイムズ・ブレイクに至る独特のカヴァーやパンクのような縦ノリのライヴが話題を呼び、2010年代初頭から着実にファンを増やしていく。


BADBADNOTGOOD
Mid Spiral

XL Recordings / ビートインク

 基本的にはベース、キーボード、ドラムスのトリオとして出発したが、ゴーストフェイス・キラーとの共演などほかのアーティストとのコラボレーションも増え、メンバー交代やサックス奏者の加入などの変遷を経て、進化を続けている。2016年の『IV』あたりからは、演奏技術だけでなく作曲やアレンジ面での成長が著しく、ミック・ジェンキンスやシャーロット・デイ・ウィルソンといったラッパーやシンガーたちとのコラボにより、単なるインスト・バンドではなくトータルの音楽性で聴かせるバンドへと変貌してきている。そうした成果が表れたのが2021年の『Talk Memory』で、ブラジルのレジェンドであるアルトゥール・ヴェロカイほか、ララージテラス・マーティン、カリーム・リギンズ、ブランディ・ヤンガーら多彩なゲストを招き、特にヴェロカイがアレンジしたストリングス・セクションとの融合による素晴らしい世界を披露していた。

 それから3年ぶりの新作が『Mid Spiral』で、もともと3枚のEPでリリースされた連作を1枚にまとめたアルバムとなっている。今回はシンガーなどが入らず、インスト・バンドとしてのバッドバッドノットグッドに原点回帰したものだ。そして、特徴として挙げられるのはラテンであり、ヴェロカイとの共演が作用したのかどうかはわからないが、中南米的なリズムや音楽構造が随所に表れている。スペイン語のカウントではじまる “Juan’s World” が筆頭で、土着的なフルートやパーカッションをフィーチャーしたラテン・ジャズ/フュージョン調のナンバー。今回はトロントやロサンゼルスのセッション・ミュージシャンもいろいろと録音に参加しているが、パーカッション奏者はラテン系のミュージシャンで、そうした人選からもラテンを意識している点がうかがえる。

 “Sétima Regra” も同様にラテン風味のメロウなジャズ・ファンク/フュージョンで、1970年代のデオダートあたりのアレンジに近いところを感じさせる。“Your Soul & Mine” や “First Love”、“Audacia” も1970年代の〈CTI〉のジャズ・ファンクやフュージョン的だが、隠し味的にラテンのエッセンスが加わっている。ボサノヴァのリズムの“Sunday Afternoon’s Dream” にしても、スローなジャズ・ファンクとシャッフル・ビートを行き来する “Eyes On Me” にしても、もラテン音楽特有のメロウなフィーリングが溢れている。前面にラテン色を打ち出すのではなく、ジャズやファンクなどとミックスさせて洗練した味付けを施した作品が多いようだ。ゆったりとしたスピリチュアル・ジャズ調の “Celestial Hands” にも仄かなラテン・アクセントが加わり、クルアンビンがスピリチュアル・ジャズをやったような作品となっている。


Thandiswa
Sankofa

King Tha Music / Universal Music

 ンドゥドゥゾ・マカティーニマルコム・ジヤネリンダ・シカカネと、ここのところ南アフリカ共和国出身のミュージシャンによる作品を紹介してきているが、キング・ターの異名を持つタンディスワ・マズワイも南アフリカ出身のシンガー・ソングライター。1990年代よりボンゴ・マフィンというグループで活動し、クワイト系のダンス・バンドとして南アフリカのゲットーの若者たちの間で絶大な人気を得て、数々の音楽賞も受賞してきた。アメリカなどワールド・ツアーもおこない、スティーヴィー・ワンダーやチャカ・カーンなどのビッグ・スターとも共演を果たすが、タンディスワは2000年代半ばに脱退。ソロ・シンガーに転向してリリースした最初のアルバム『Zabalaza』(2004年)は、全体的にはネオ・ソウル風のアルバムではあるが、南アフリカに根付くジャズやフォーク・ミュージックの要素を取り入れた自身のルーツを主張するものだった。
 高評価を得た『Zabalaza』に続くセカンド・アルバムの『Ibokwe』も大きなセールスを記録し、この2枚でタンディスワはソロ・シンガーとしても大きな成功を収めることになる。南アフリカはじめ欧米でも高い評価を得ることになった彼女の作品は、ジャズ、ファンク、レゲエなどに、クワイトからムバカンガ、コーサ音楽といった南アフリカ周辺を起源とする音楽の要素を交えたもので、しばしば政治的なメッセージを孕む。1976年のソウェト蜂起の年に反アパルトヘイト運動家でジャーナリストの両親のもとに生まれ、ヨハネスブルグのソウェトで育ってきた彼女は、幼い頃から人種差別、貧富や社会的格差が身近にあり、そうした背景が彼女に政治や社会へ目を向けた歌を作ることへと向かわせた。妹のヌツキィとノムサもシンガーやアーティストとして活動するが、特にヌツキィは詩人/作家として社会活動にも参加するなど、家族全員がアクティヴィストとしての顔を持つ。

 南アフリカの巨星のヒュー・マセケラほか、ミシェル・ンデゲオチェロ、ポール・サイモンら大物アーティストと共演をしてきたタンディスワは、2016年の『Belede』ではビリー・ホリデイを意識したようなジャズ・シンガーへの道を歩きはじめる。そして、この度リリースされた新作『Sankofa』では、ミシェル・ンデゲオチェロと同郷のンドゥドゥゾ・マカティーニを共同プロデューサーに迎え、ヨハネスブルグ、セネガルのダカール、ニューヨークで録音をおこなった。
 反アパルトヘイト活動家のスティーヴ・ビコの演説を引用した “Biko Speaks” はじめ、『Sankofa』には政治的なメッセージに彩られている。“Kunzima: Dark Side Of The Rainbow” の終わりでは南アフリカ議会での嘲笑のような音声がコラージュされ、現在の南アフリカ政府への政治不信を示している。“With Love To Makeba” は南アフリカ出身の偉大なるシンガーであるミリアム・マケバに捧げたものであり、反アパルトヘイト活動に傾倒した彼女が国外追放され、その後ギニア大統領の庇護を受けてギニアに移り、音楽活動を継続していった経緯などについても触れている。ちなみに『Sankofa』とは、西アフリカのガーナの言葉で「過去からの学びを未来へ生かす」というような意味。アフリカ系アメリカ人とアフリカのディアスポラの重要なシンボルである鳥の形を示すものとしても知られる。南アフリカ、セネガル、アメリカと3か所で録音し、ミシェル・ンデゲオチェロというアフリカ系アメリカ人の視点も加え、タンディスワの汎アフリカ主義が主張となって表れたアルバムと言えよう。

 音楽的に『Sankofa』の軸をなすのはジャズとアフリカ民謡で、そこにクワイトやムバカンガといった新しい南アフリカの音楽を融合している。“Emini” はマリ音楽のようなビートを持ち、そこにエレクトリックなアプローチを交えたもの。“Dogon” では西アフリカのコラやンゴニといった固有の楽器が用いられるが、これらセネガルのミュージシャンとのセッションはンドゥドゥゾ・マカティーニによってまとめられている。“Children Of The Soil” はアルバム中でもっともスピリチュアルなナンバーで、ビリー・ホリデイとミリアム・マケバの両者から影響を受けたような歌唱を披露する。アフリカの大地から生まれた子どもたちが、政治や貧困に苦しめられる、そんな苦難を歌にした作品であり、黒人奴隷の悲哀を歌にしたビリー・ホリデイやアパルトヘイトと戦ったミリアム・マケバへと繋がるものだ。タンディ・ントゥリのピアノをフィーチャーした “Xandibina Wena” もディープなジャズ・ヴォーカル作品で、動物的で野性的な甲高い歌声が心に残る。


Kavyesh Kaviraj
Fables

Shifting Paradigm

  カヴィエシュ・カビラジはミネソタ州のツイン・シティーズ(ミネアポリス~セントポール)を拠点とするピアニスト/作曲家で、『Fables』はデビュー・アルバムとなる。オマーンでインド人両親の元に生まれた彼は、2歳のころにはすでにピアノをはじめたという早熟児で、南インドのカルナータカ音楽と北インドのヒンドゥスターニー音楽を学んでいった。音楽家である父からはクラシックと現代音楽に関するレッスンを受け、10代に入るとインドに移り住んでスワルナブーミ音楽アカデミーに入学。2016年にツイン・シティーズへ移住し、アメリカで本格的な音楽教育を受ける。2019年からバークリー大学でジャズ専門コースを選択し、ダニーロ・ペレス、ケニー・ワーナー、ジョアン・ブラッキーンらに師事する。2020年に音楽修士の学位を取って卒業してからは、ジャズを主戦場にしつつもR&Bやヒップホップ、ファンク、ゴスペル方面のセッションにも参加してきた。現在はセント・トーマス大学でピアノ学部の教師を務めるほか、カールトン・カレッジやウォーカー・ウェスト・ミュージック・アカデミーで客員講師を務めるなど、おもに音楽教育家として活動する一方、自身の音楽制作やバンド活動もおこない、そして発表したのが『Fables』である。

 『Fables』のメンバーはカヴィエシュ・カビラジ(ピアノ、キーボード)以下、ジェフ・ベイリー(ベース)、ケヴィン・ワシントン(ドラムス、パーカッション)、ピート・ホイットマン(サックス)、オマー・アブドゥルカリム(トランペット)で、楽曲によってゲスト・シンガーやストリングスが加わる。抒情的なメロディによるモーダルな “Who Am I”、ブラジリアン・リズムを取り入れたジャズ・サンバ調の “Saudade”、ダイナミックなピアノが飛翔感に満ちた演奏を展開する “Rain”、変則的なリズムが躍動する “They Cannot Expel Hope” などが並ぶなか、“Lullabuy” ではインド固有の木管楽器であるバーンスリーをフィーチャーしていて、インド系のカヴィエシュらしい楽器使いと言えよう。ここでのバーンスリーとタブラのようなパーカッション、ストリングスとピアノによるラーガ的な美しいアンサンブルは、幼少からインド音楽を学び、ジャズの世界でも研鑽を積んできたカヴィエシュだから出せるものだろう。


Frank London
Brass Conspiracy

Tzadik

 ニューヨーク出身のフランク・ロンドンはクレズマーのトランペット奏者である。クレズマーは中央~東ヨーロッパで広まったアシュケナージ(ユダヤ人)による音楽で、ギリシャやルーマニアなどの民謡や、バロック音楽、ドイツやスラブ地方の民俗舞踊音楽、ユダヤの宗教音楽などがミックスされた民間音楽として親しまれた。19世紀後半にはアメリカにも広まり、1910~20年代にはジャズと結びついてビッグ・バンドで演奏されるなど、ポピュラー音楽のひとつとして人気を得た。その後、第二次世界大戦中にアメリカにおけるクレズマーは人気の低下を迎えてしまうが、1970年代以降はリヴァイヴァルし、近年はジャズやファンク、ロック、パンクなどと結びついて新たなファン層を拡大している。改革派ユダヤ人の家庭に生まれたフランク・ロンドンは、10歳のころからトランペットをはじめ、1980年にニュー・イングランド音楽院でアフリカ系アメリカ人音楽の学士号を取得。ニューヨーク州立大で音楽講師を務めるほか、クレズマティクスやハシディック・ニューウェイヴなどのクレズマー・バンドで演奏した。デヴィッド・バーンと戯曲家のロバート・ウィルソンによるオペラ『 The Knee Plays』では、指揮者と音楽監督も務めている。そして、自身のバンドであるクレズマー・ブラス・オールスターズを結成し、2000年からアルバム・リリースもおこなう。ほかにもフランク・ロンドン・クレズマー・オーケストラ、フランク・ロンドン・ビッグ・バンド、フランク・ロンドン・アンサンブル、フランク・ロンドン・グラスハウス・オーケストラなどジャズやクレズマー系のバンドを多数率いるなど、ニィーヨークにおけるクレズマー音楽の第一人者的存在と言えるだろう。これまでラ・モンテ・ヤング、アイザック・パールマン、ジョン・ケイル、アレン・ギンズバーグ、ガル・コスタ、レスター・ボウイ、イギー・ポップ、ピンク・フロイド、ジョン・ゾーン、メル・トーメ、ユッスー・ンドゥールなど、さまざまなジャンルの多士多彩な面々と共演してきた。

 レコードも精力的にリリースしているフランク・ロンドンだが、2024年はまずジ・エルダーズというバンドを率いて『Spirit Stronger Than Blood』をリリース。ニューヨークのフリー・ジャズや前衛音楽を代表する老舗レーベルの〈ESPディスク〉からリリースされたというのが興味深いのだが、内容的にはクレズマーよりもジャズ寄りのもので、ゴスペルやスピリチュアル・ジャズ的な要素が濃いものだった。録音時期は2023年の7月と1年ほど前のものだったが、続いてリリースしたのが最新作の『Brass Conspiracy』である。“Engraftamento” はミスティックなムードのラテン・ジャズ作品で、キップ・ハンラハンの作品に近いイメージを持つ。1980年代にフランク・ロンドンはジャック・ブルースなどと共にキップ・ハンラハンのグループで演奏していたこともあり、そうした時代も彷彿とさせる。一方、“Rube G Funk” はジャズ・ファンクで、大衆音楽であるクレズマーと結びついてジャム・バンド的なセッションを繰り広げる。ジャズとクレズマーのわかりやすい魅力が詰まった演奏と言えるだろう。

interview with Creation Rebel(Crucial Tony) - ele-king

 いまやDUBそれ自体がひとつのジャンルのようなものになっている。もちろん、このスタイルが1970年代のジャマイカで発明されたことを忘れてはならない。しかし、DUBを説明するときに、いつまでもそれを「オリジナル」に対する「ヴァージョン」であると繰り返す必要はないだろう。というのも、DUBはひとつの、オーディエンスを惹きつけるための遊び心あるギミックではなく、まあ、良くも悪くも西欧の枠組みのなかの「アート作品」として評価され、ジャマイカとは別の回路で発展している。
 UKは、DUBのそうした創造的転用に関する最初の拠点だった。『DUB入門』のなかのコラム原稿で少し詳しく書いたけれど、2020年にはロンドン博物館で『DUB LONDON』という、いかにUKにおけるDUBがひとつの文化現象として重要であるのかを多角的に展示する展覧会が開催されている。面白いのは、UKでは、とくに女性には、ルーツよりもDUBのほうが好まれたという話だ。人種的アイデンティティを覚醒させてくれた意味では、ルーツに対する尊敬の念は大いにあった。が、その家父長制的な女性観には当時口には出せない抵抗を感じていたと。アレサ・フランクリンなどUSソウルに親しみながらUKの都会で暮らすジャマイカ移民の女性たちがDUBに向かうのは、なるほどたしかに理解できる。また、西欧のサイケデリック文化とそれが接合されたことも、欧米におけるDUBの展開においては大きかった。ジ・オーブもマッシヴ・アタックも、ジャングルもダブステップも、その回路なくして生まれなかったのだから。
 いよいよ来週からはじまる〈DUB SESSIONS 2024〉、名歌手ホレス・アンディとともに今回の目玉であるUKダブ・バンドの大御所……というか生きる伝説……というか、とにかく、来日直前にクリエイション・レベルのリーダー、クルーシャル・トニーことトニー・フィリップに話を聞くことができた。クリエイション・レベルとは(エイドリアン・シャーウッドとのスタジオ作業を通じて)、それこそDUBを「ヴァージョン」ではなく、こっちを「オリジナル」にしてしまったバンドだ。また、クリエイション・レベルは70年代、ザ・クラッシュやザ・スリッツなど、パンクとも共演している。デニス・ボーヴェルやジャー・シャカなどと並ぶ、UKレゲエ史そのもののような存在だ。
 ぼくが推薦するクリエイション・レベルの作品は、まずは『Starship Africa』(1980)、そしてニューエイジ・ステッパーズとの共作『Threat to Creation』(1981)、この2枚は必聴盤として、ほかにも最初期の『Dub From Creation』(1978)、ジョン・ライドンが参加した『Psychotic Jonkanoo』(1982)も大好きだし、クルーシャル・トニーが参加した作品でフェイヴァリットを挙げようものなら、プリンス・ファーライ&ジ・アラブス、ニューエイジ・ステッパーズの全作品、シンガーズ&プレイヤーズの全作品、マーク・スチュワートの初期作品など、もうキリがない。すなわち、トニーさんの話を紹介できることが嬉しい。面白いので読んでください。


そしていま現在もクールなクリエイション・レベル。左から、ランキン・マグー、エスキモー・フォックス、そしてトニー。

来日前のお忙しいとき、時間を作ってくれてありがとうございます。数年前にロンドンでは、「DUB LONDON」という大掛かりな展覧会が開催されて、UKにおいてDUBがいかに重要な文化であり、重要なアートであるのかを多角的に見せていましたよね。DUBはジャマイカで発明された手法/スタイルですが、それがUKではいまではひとつのジャンル/独自の文化として認識されている。1970年代には考えられなかったことだと思いますが、こうした現在の現状に関しての、あなたの感想を聞かせてください。

クルーシャル・トニー:いま、DUBはとてもいいよ。老いも若きも興味を持っている。DUBの昔のアルバムを手に入れて聴いている人もいる。DUBをプレイする機会が多くなっているというのが、いまのDUBの文化だ。DUBに関してはとても良い状況が続いている。アナログ盤もリヴァイヴァルしているし。

70年代のUKではジャマイカ移民が多く、レゲエは故郷の音楽として人気があった。とはいえUKで暮らす黒人がレゲエを演奏することは、たとえば、UKのレゲエは「オーセンティック」ではないということでサウンドマンにはかけてもらえなかったり、いろんな壁があったと聞いています。ジャマイカのルーツ・レゲエの影響を受けながら、UK独自のサウンドがどのように生まれていったのでしょうか?

トニー:最初はジャマイカ出身の人たちは同じスタイルの音楽に興味を持っていたけど、ちまたでいろんな音楽が溢れかえって飽和状態になると、みんなDUBに向かうようになったんだ。みんなが興味を示すようになったんだよ。一流のエンジニアがいたからだ。サイエンティスト、エロル・トンプソンとかがいろいろなことを試していた。ロンドン、もしくはイギリスに住んでいる西インド諸島出身者のなかには、ジャマイカの文化をフォローしている人たちが多かったんだ。

UKにおいてDUBがなぜ重要なのか、「DUB LONDON」のホームページに掲載されたそのひとつの理由に、女性が入りやすかったという話があって、興味深く思いました。ルーツには家父長制的なところがあったから、女性はどこか抵抗があったけれど、DUBはもっと間口が広がったという話なんですが。

トニー:同感だね。

他にも、たとえば現代のジャングルやベース・ミュージックに与えた影響も大きいです。ある意味、ほとんどUK独自のダンス・ミュージックの基礎はDUBの応用によって作られているように思います。

トニー:間違いないね。

というわけで、「UKにおいてDUBがなぜ重要なのか」、あなたの意見を聞かせてください。

トニー:いろんなサウンド・システムがあったなかで、DUBがプレイされていた。みんな、DUBが大好きだったんだ。レコードをプロデュースした人たちの音のミックスの仕方が気に入られたんだな。キング・タビーはかなり人気があった。〈Studio One〉にだってDUBはあった。DUBは、レゲエとともに入ってきた。DUBは、ヴォーカルにも音楽にもリヴァーブといったエフェクトを思いっきりかけていた。クリエイティヴになりたくて、独特の音作り、周波数作りをしていた人たちがいたからだ。いろんなスピーカーを使って、パワー全開でガツンと来る音作りをしていたんだよ。

それがUKのダンス・ミュージックに影響を与えたと?

トニー:ああ、もちろんだとも。

クリエイション・レベルは、もともとはジャマイカの大物歌手がイギリスでライヴをやる際のバックバンドとして結成されたそうですね。

トニー:たしかに彼らのバックでプレイしていたけど、もともとはクリエイション・レベルとしてのアルバムをレコーディングしたんだ。そしてそれがヨーロッパでかなりウケたんで、我々はクリエイション・レベルとしてツアーに出かけていた。その同時期に、プリンス・ファーライやビム・シャーマンといったアーティストと出会って、彼らがプロモーションなり何なりでヨーロッパに来ると彼らとツアーするようになった。

通訳:最初はバックバンドだったのが、その後自身のバンドとしてアルバムを作ることになったのだと思いましたが、まずはアルバムをレコーディングして、それに伴うヨーロッパ・ツアーを行なっていたときにジャマイカのアーティストと出会ったんですね?

トニー:そうだ。

では、クリエイション・レベルを結成したのはいつのことでしたか?

トニー:1977年のことだった。ずいぶん前だな。

そもそもなぜ、DUBを生演奏するバンドを組もうと思ったのですか?

トニー:元々リリースしたアルバム『Dub From Creation』は実験的だったけど、人びとはそれに魅了された。それでずっと続けたんだ。みんなが聞きたかったのが、バンドがプレイするDUBだったんだよ。みんなが楽しんでくれていると思ったし、大いに興味を示されたんで、我々は続けて、どんどん作っていったんだ。ライヴをどんどんやるようになったんだよ。

でも、DUBバンドという発想はジャマイカにはなかったUK独自のハイブリッドなスタイルへと繋がっていったと思います。

トニー:そうだな。

通訳:たとえば、ポスト・パンクの接続という点で言えば、とても大きかったと思いますが、いかがでしょうか?

トニー:あの頃はパンク・バンドがたくさんいたけど、スキンヘッズとか、イギリスのパンク・バンドの多くはレゲエをプレイしていたんだ。彼らはあのビート・サウンドに馴染むようになったんだよ。

通訳:パンク・バンドは、最初からレゲエが好きだったわけですね?

トニー:そう、彼らにとってレゲエは第二の音楽だったんだ。二番目に好きな音楽だったんだよ。

通訳:それはなぜだったと思いますか? パンクとレゲエに何らかの共通点があったとか?

トニー:う〜ん、あったんじゃないかな(笑)。

通訳:たとえばどんな?

トニー:あまり統一されていなかったことかな。我々はザ・クラッシュと共演した。彼らはとっても気に入っていたよ。彼らはレゲエをプレイするのが大好きだった。DUBが大好きだったんだ。それで共演したんだろう。ザ・スリッツとも共演した。彼女たちともよくやったよ。

通訳:PILとも共演しましたよね?

トニー:PILもそうだったな。

通訳:あなたは音楽としてのパンクがお好きでしたか?

トニー:う〜ん、いいや(笑)。

通訳:(笑)

トニー:僕はアヴァンギャルドが好きだからけっこう興味深かったけど、あまり好きとは言えなかったな。

通訳:ではどうして、彼らとコラボしたのですか? 彼らの方があなた方を好きだったからですか?

トニー:そう、彼らが我々の音楽を好きだったし、我々を称賛してくれたんだ。

通訳:なるほど。でも結果的に、パンク・バンドとの共演はあなたにとって楽しい経験でしたか?

トニー:いま振り返ってみれば、そうだね。いろんな人と出会えたし、みんなに評価もされたからね。いい経験だったよ。(※ちなみに「レゲエとパンクは似たもの同士ではない」というコラムを野田が『DUB入門』で書いているので、興味のある方はぜひ)

通訳:『Dub From Creation』をリリースする以前からあなた方はライヴをやったりツアーを行なっていたのですか?

トニー:いやいや。リリースしてからだよ。

通訳:そのアルバムが売れたので、あなた方はツアーに出ることができたわけですか?

トニー:その通り。

通訳:そのツアーでジャマイカのアーティストと出会ったのですか?

トニー:そうだよ。

『Starship Africa』は、レゲエ・ピュアリストからは批判されるような、常識破りの作品でした。あの傑作はどのように生まれたのでしょうか?

トニー:たくさんレコーディングしたものをテープに収めたんだ。あれはエイドリアン・シャーウッドのアイディアだったんだよ。

通訳:あなた方はそのアイディアを気に入ったのですか?

トニー:いいや(笑)。

通訳:(笑)またですか? じゃあ、なぜ受け入れたのですか?

トニー:それでもやっぱりクリエイティヴになりたかったんだ。私自身のまた別の道だったからね。私はプレイするのが大好きだけど、予測できないものが好きなんだ。だから、この手のものをやってみたんだよ。でも君が言ったように、たしかにピュアリストは気に入らなかった。彼らには耐えられなかった。でも、これは我々のアルバム中もっとも売れたものなんだ。いまとなってはクラシックだよ。

通訳:その通りですね。いま振り返ってみると、あのアルバムを作って良かったとあなたも思いますよね?

トニー:思うよ(笑)!

あのアルバムのSF的なアートワークは、Pファンクやサン・ラーなど、70年代のアメリカの黒人音楽には見られた傾向ですが、ラスタの思想を重んじ、アーシーであることに重点を置いたジャマイカのルーツ・レゲエにはなかった発想だと思います。

トニー:我々がDUBを第一線に押し出したんだよ。

先ほどエイドリアン・シャーウッドの名前が出ましたが、18歳の彼はどんな青年でしたか?

トニー:いまと変わらないよ(笑)。彼はレゲエに対してとても熱心で、当時は若者の中心になってレゲエを盛り上げていた。私も若かった。どっちもこの音楽を盛り上げたいと思って一緒にやっていたんだ。

通訳:そしてその関係は今日に至るまで続いていますね。すごいですね。

トニー:そうなんだよ、驚くことにね! 我々はたくさんのプロジェクトを一緒にやってきた。いまのプレイヤーともたくさんやってきたんだ。

先ほど、プリンス・ファーライやビム・シャーマンといった名前を挙げられましたが、彼らとの思い出について聞かせてください。

トニー:プリンス・ファーライと初めて会ったときのことは一生忘れないよ。ロンドンでプリンス・ファーライと出会ったんだ。ライヴの2〜3日前に会ったんだよ。あれは我々にとってエキサイティングなことだった。彼のことは知っていて、その彼と会えたんだからね。彼と一緒に仕事ができて良かったよ。スタイル・スコットもいたな。プリンス・ファーライがジャマイカから連れてきたんだ。スタイルはルーツ・ラディックスのドラマーだったけど、私ちが会ったときの彼はまだラディックスに加入する前だった。彼も若かったんでね、エキサイティングだったよ。プリンス・ファーライとビム・シャーマンは、我々が一緒に仕事をした最初のアーティストだった。

通訳:ビム・シャーマンとも、プリンス・ファーライと同じ頃に出会ったのですか?

トニー:そうだよ、同じ頃だった。

アリ・アップは?

トニー:ザ・スリッツの人だね。彼女たちともツアーで出会ったんだ。ザ・スリッツと一緒にツアーしていたんだよ。もちろん、あれも良かった。

そして昨年は『Hostile Environment』で、ほとんど40年振りにバンドが復活しました。本国ではとても温かく迎えられていましたが、80年代のクリエイション・レベルと比較して、現在のバンドはどこが進化していると思いますか?

トニー:進化したと思う。経験を積んだからね。でも、DUBのやり方は変わっていないな。ただ、いまはもっとうまくなったよ。各楽器の弾き方も経験を積んできたから。大勢のアーティストやミュージシャンと一緒にやって来たからうまくなったんだ。この40年のあいだに、私はいろんなことをやってきた。プロデューサーなんだ。私が1980年にロンドンで共同設立した〈Ruff Cut〉のプロデュースを手がけている。いろいろなものを手がけてきたよ。スタジオワークもたくさんやって、ギターのオーヴァーダブをやってきたし、各種レーベルのためのプロデュースも手がけてきたし、いろんなアーティストと数え切れないほどのライヴをやってきた。250近くのアーティストと一緒にやってきたんだ。ジャマイカのバンドともやってきた。

通訳:それでも去年、クリエイション・レベルを復活させたかったんですね?

トニー:そうなんだ。これは、しばらく前からやりたいと思っていたことだったけど、みんなそれぞれいろんなプロジェクトに関わっていたんで、去年やっと実現したんだ。みんなが死ぬ前に、ぜひともやっておきたかったんだよ(笑)。

日本のファンのために、あらためてDUBの魅力、UK独自のDUB文化の魅力について話してもらえますか? 

トニー:とっても興味深いものだ。ほとんどの場合、我々はただ自分たちの音楽をプレイしているだけだけど、過去じつにいろんなアーティストと共演してきた。一流のレゲエ・シーンでやってきたんだ。デニス・ブラウン、リー・ペリー、大勢いる。ミステリアスで、予測不能で、興味をそそるよ。

今回の日本でのライヴに関しての、あなたの意気込みを聞かせてください。

トニー:とにかくみんなにはありのままの自分を出して音楽を楽しんで欲しい。我々がもうすぐ行って、ディープなルーツ・レゲエとDUBを披露するよ!

ADRIAN SHERWOOD PRESENTS
DUB SESSIONS 2024

HORACE ANDY [live mix by Adrian Sherwood]
CREATION REBEL [live DUB mix by Adrian Sherwood]
Crucial Tony (G)、Charlie Eskimo Fox (Ds)、Ranking Magoo (Perc)、Kenton "Fish" Brown (B)、Cyrus Richards (Keys)
Horns:icchie (Tp), Hashimoto “Kids” Takehide (Sax), Umeken (Tb)
ADRIAN SHERWOOD [DJ Set]

OPENING DJ: MASAmida from audio active [ON-U Set]
OSAKA - 09.12(THU) Umeda CLUB QUATTRO
NAGOYA - 09.13(FRI) ReNY limited
【SOLDOUT】TOKYO - 09.14(SAT) O-EAST

OPEN/START 18:00 前売:8,500円(税込 / 別途1ドリンク代 / オールスタンディング)
※未就学児童入場不可

【TICKETS チケット詳細】
前売¥8,500(税込/別途1ドリンク代 /オールスタンディング) ※整理番号付 ※未就学児童入場不可

[東京] SOLDOUT
INFO: BEATINK www.beatink.com

[大阪]
イープラス
チケットぴあ (P:270-870)
LAWSON TICKET (L:53380)
BEATINK
INFO: SMASH WEST 06-6535-5569

[名古屋]
イープラス
チケットぴあ (P:270-951)
LAWSON TICKET (L:43138)
BEATINK
INFO: JAILHOUSE 052-936-6041

Undefined meets こだま和文 - ele-king

 まさか“Requiem Dub”を聴けるとは思いも寄らなかった。もしもフランクフルト学派がこの日のこだま和文のライヴを見ていたら、泣いて喜んだことだろう。20世紀前半のもっとも重要な文化研究グループとされる彼らは、アートがこの資本主義社会で果たす役割があるとすれば、それは「耐え難いこの世界を告発することだ」とした。「偉大なる拒絶」の一部になること。2024年8月24日の21時、渋谷のWWWで、いまだにそれをやっているひとがいた。
 ぼくはフランクフルト学派ではないが、泣いた。同じように、たぶんフランクフルト学派ではないマヒトゥ・ザ・ピーポーも「泣いた」と言って、ライヴ終了後に楽屋でこだまさんをハグしていた。ほかにも、多くのひとが泣いたに違いない。ひょっとしたらその涙は、こだまさんが自分の詩を朗読しながら訴えたパレスチナの現実および自分たちが生きているこの悲しい世界に対する憤りの涙で、と同時にそれは、悲しくも美しいダブをバックにそれを表現するひとがいま目の前にいることの嬉しさでもあって、あるいは、まあ、いろいろだろう。個人的には松岡正剛さんのことがあったので、悼みながら聴きいていたが、いつしか無心になって、ただただ聴き入っていた。
 
 その夜ぼくと編集部コバヤシは、河村祐介監修『DUB入門』の先行発売という口実で、渋谷のWWWで開催の、虎子食堂の15周年記念イベント「SUPER TIGER」に混ぜてもらった。天候も不安定だったし、ライヴ・イベント会場だし、多くは売れないだろうなと思っていたら、ありがたいことに完売した(DUBの未来は明るい。いや、河村人気なのかな? とにかく、あのとき購入していただいた方々、どうもありがとうございました。DUBが女性に人気というのはほんとうでした)。そんなわけでぼくとコバヤシは物販スペースで本の売り子をしながら、SOUL FIREのライヴ、1TA&Element、HIKARUらのDJタイムは代わりばんこにフロアに出入りしていたのだけれど、Undefined とこだま和文のライヴ前には売り切っていたので、幸いなことに最初から集中して聴くことができたのである。

 『A Silent Prayer』からは“T-Dub”(“Move”だったかも?)と“One-Two”をやった。この日はUndefinedとのライヴなので、ほとんどのひとがあの素晴らしい『2 Years』の曲を待っていたと思う。しかしこだまさんは、既発作品の再生ではなく、“いま現在のこだまさんの思い”を表現した。
 そんなことをしても変わりっこない、そういうシニシズムがアートを支配しはじめたのは1980年代後半のことだった。メッセージなどダサい、どうせ変わらないのだから受け入れた方がいい、笑えればいい、格好よければいい、それがミュート・ビートが輝いていた1980年代後半に芽生えた新しい表情のひとつだった。美術館の売店でモネのスカーフが5千円で売られても誰も気にすることもなくなった時代、やがてルイ・ヴィトンとタッグを組むジェフ・クーンズが登場した時代、要するにフランクフルト学派みたいなことをいうのはもうダサくなりはじめた時代のムードに、こだまさんが違和感を覚えていたという話はこれまでの取材で知っている。そう、知っているけれど、それをブレることなくずっとやり続けていることは、やはり、すごいことだという思うし、ぼくはこだまさんのいまも変わらない「悲しみを隠さないDUB」をますます愛おしく思う。この国に、こだま和文がいてくれてほんとうに良かった。

 たとえば、以前松島君がreviewしたA. G. Cookの〈PC Music〉は、言うなれば、J-POPもAFXも同じだろうというある種のなかば熱狂的な相対主義をいまの時代に全開した代表的なレーベルだ。ぼくはその考え方も善し悪しだと思っているが、じつはいろんなことがどうでもよくなっていて、楽しさをもとめた挙げ句に不正なゲームのうえで踊らされるのはまっぴらだとも思っている。この夜の、虎子食堂15周年のお祝いに駆けつけたひとたちも同じ思いだろう。アートはそれを失うべきではない。小さなことだけれど、最高に美しい夜だった。

interview with Toru Hashimoto - ele-king

 私たちは皆、「Free Soul」以後のパラダイムにいる。何を大げさなことを、と思うかも知れないが、こればかりは確実にそうなのだ。音楽を楽しむにあたって、そこに聞こえているグルーヴや、ハーモニーの色彩、耳(肌)触りを、その楽曲なり作り手であるアーティストの「思想」や「本質」に先んじる存在として、自分なりの星座盤とともに味わい、愛で、体を揺らすというありようは、現在では(どんなにエリート主義的なリスナーだとしても、あるいは、当然、どんなに「イージー」なリスナーだとしても)多くの音楽ファンが無意識的に共有するエートスとなっている。だからこそ、その革新性にかえって気付きづらいのだ。しかしながら、そうした音楽の楽しみ方というのは、元々は1990年代に少数のトレンドセッターたちによって試みられてきた、(こういってよければ)「ラジカル」な価値転換によって切り開かれてきたものなのである。その事実を忘れてしまってもいまとなってはそこまで困ることはないだろうが、同時に、その事実を丁寧に噛み砕きながらリスニング文化のこれまでを振り返ってみる行為にも、思いの外に巨大な楽しみがあるものだ。
 そう。Free Soulとは、あなたと私にとって、紛れもない「空気」なのだ。それも、いざ思い切り吸い込んで味わってみれば、その爽快感と美味が病みつきになってしまうたぐいの。
 いまから30年余り前。Free Soulという「発明」は、いったいどうやって成されたのか。「発明家」橋本徹は、そのときにどんなことを考え、何を提案しようとしていたのか。そしていま、どんな思いでFree Soulという我が子と対面するのか。30周年を記念する「ベスト・オブ・ベストFree Soul」なコンピレーション・アルバム2作品=『Legendary Free Soul ~ Premium』(Pヴァイン)と、同『Supreme』(ソニー)の発売に際し、じっくりと話を訊いた。

マニアの狭いコミュニティの中での評価とかレア度とかで何を載せるのかを決めるんじゃなくて、どういうふうに紹介するか、もっといえばどういうふうに「見せる」かということをすごく意識していました。

橋本さんは「Free Soul」というコンセプトを立ち上げる前に「Suburbia」のシリーズや同名のレコード・ガイドを展開されていますが、どういった経緯でFree Soulというコンセプトが生まれてきたんでしょうか?

橋本:Suburbiaでは、フリーペーパーの時代から、基本的にソフトでスマート、スウィートでソフィスティケートされた音楽――具体的には、フレンチやボッサ、カクテル感覚のジャズ、映画音楽、ソフトロックなど――を新しい感覚で楽しむことを提案していたんです。それで、渋谷のDJ Bar Inkstickでやっていたパーティや、TOKYO FMの番組「Suburbia’s Party」の集大成的なものとして、1992年末に『Suburbia Suite; Especial Sweet Reprise』という本を出したんですが、いろんな中古レコード・ショップが本に載っているタイトルを掻き集めて売るようになったり、各レコード会社から再発の相談を受けたり、とても大きな反響があって。まずはそれが前段階ですね。

それまではあくまでメーカー側主導のリイシューが主流だったことからすると、リスナーの側が作ったカタログ本が再発のきっかけになったというのはかなり革新的なことですよね。

橋本:そうですね。業界からリスナーへと情報が降りてくる従来のルートとは反対の矢印だったんです。そしてそれは、1990年代のいろんなカルチャー・シーンで同時に起こっていたことでもありますね。ありがたいことにたくさんのリイシュー監修のオファーをいただいて、すごく充実した1993年を過ごしていたんですが、そもそもSuburbiaで紹介していた音楽というのは、僕の嗜好の中のあくまで一部分だったんです。次第に、自分がリスナーとして熱心に聴いていたUKソウルやアシッド・ジャズと共振するテイストと、一冊目のレコード・ガイドで提示した過去の音楽の新たな解釈とか、当時の東京ならではのリスニング・スタイルを合流させていきたいなと思うようになって。

そこで、70年代のソウル・ミュージックとその周辺の音楽をFree Soulというタームとともに提案するようになった、ということですね。

橋本:はい。一冊目のSuburbia本の続編や縮小版みたいなものをもう一度やるよりも、そのときの自分の熱い気持ちを反映したコンセプトにしたいと思っていたんです。ある種のコントラストを見せたかったということですね。そこから、1994年の3月に「Free Soul Underground」というDJパーティをはじめて、翌月に二冊目の本『Suburbia Suite; Welcome To Free Soul Generation』と、Free Soulのコンピレーション・シリーズ第一弾である『Impressions』と『Visions』が出たんです。もともと、『Impressions』と『Visions』も、〈BMG〉のディレクターがサントラ~ラウンジ系のレコードの再発企画を持ちかけてきたのに対して、こちらから「次はソウルで行きませんか?」と逆提案したものなんです。

周囲からの反応はどんなものでしたか?

橋本:最初の頃は「え? ソウル?」みたいな反応がかなりありましたね。けれど、NANAの小野英作くんがデザインしてくれたロゴやアートワークの魅力も大きかったと思うんですが、若い女性含めて、それまでソウル・ミュージックに馴染みのなかったリスナーがこぞって手に取ってくれたんです。

まさに、「切り口」の勝利。

橋本:そういう意味では、僕が1992年に初めて手掛けたコンピレーション『'Tis Blue Drops; A Sense Of Suburbia Sweet』が好評だったというのも、前夜的な流れとしてとても重要でした。ウィリアム・デヴォーンとかカーティス・メイフィールドのメロウ&グルーヴィーな曲が入っているんですが、いかにもソウルっぽいヴィジュアルは避けて、スタイリッシュで洒落たジャケットにしたんです。

それまで、ソウルやブラック・ミュージックのファンといえば、一方ではマニアックなおじさんたちが蠢いていて、片や六本木あたりのディスコでちょっとやんちゃな人たちが楽しんでいて……というイメージだったわけですよね。

橋本:そうそう。頑固なコレクター的な世界と、「ボビ男」くん的な世界がほとんど(笑)。そういうイメージが強固にあったからこそ、いわゆる渋谷系的なセンスと重なり合うヴィジュアル面での工夫がとても重要だったんです。

その辺り、Suburbiaの活動と並行して出版社に勤めていた橋本さんならではのエディトリアルなセンスを感じます。

橋本:そういう感覚はフリーペーパーの時代から特に意識せずとも自然と大切にしていましたね。マニアの狭いコミュニティの中での評価とかレア度とかで何を載せるのかを決めるんじゃなくて、どういうふうに紹介するか、もっといえばどういうふうに「見せる」かということをすごく意識していました。だからこそ、当時ブラック・ミュージックの大御所の評論家の方から「まったく、重箱の隅をつついて……」みたいな小言も言われましたけどね(笑)。

日常の全てが幸せなわけではないけど、前向きなマインドになれたり、輝く瞬間があって。そういうありふれた日常を励ましてくれるのがFree Soulであり、『LIFE』だったんじゃないでしょうか。

ご自身のソウル原体験はどんな感じだったんですか?

橋本:80年代前半にイギリスのインディ・シーンから出てきたアーティスト、例えばアズテック・カメラやペイル・ファウンテンズ、エヴリシング・バット・ザ・ガールなどの影響元を探っていくうちにっていう流れですね。いちばん大きかったのはスタイル・カウンシル。ポール・ウェラーはソウルからの影響を特に頻繁に公言していたし、実際にカーティス(・メイフィールド)をカヴァーしているので、高校生くらいから自然と興味を持つようになったんです。オレンジ・ジュースもアル・グリーンのカヴァーをやっていたりとか。そこからまずはマーヴィン・ゲイ、ダニー・ハサウェイ、スティーヴィー・ワンダー、ビル・ウィザース、スライ(&ザ・ファミリー・ストーン)あたりを好きになって。

日本で言うところの「ニューソウル」系ですね。

橋本:はい。一応は当時出ていたブラック・ミュージック評論家の方たちの本も買って読んだりはしていたんですけど、激賞されているものがあまり刺さらなかったり、反対に、自分が素晴らしいと感じたものが軽視されたり無視されていたりして(笑)。やっぱり、物差しというか価値観が違うんだなとその時点から思っていました。

レアグルーヴとの出会いはいつ頃ですか?

橋本:80年代後半、大学生の頃でした。ダンス・ジャズやアシッド・ジャズのムーヴメントもあまり時差なく日本に伝わってきて、自分と近い感覚だなと感じていましたし、フィロソフィー的にもシンパシーを抱くようになっていきました。

DJという存在を意識するようになったのは?

橋本:少し後、1990年前後だと思います。大学3、4年くらいから渋谷や青山、西麻布あたりの小箱に遊びに行くようになって、徐々に意識するようになりました。けど、その頃は後に自分でもDJをするようになるとは思っていなかったですね。むしろ、〈アーバン〉とか〈チャーリー〉とか、UKのいろんなレーベルから出ているレアグルーヴ系のコンピレーションを通じて、コンパイラーという存在に先に興味を持っていました。もともとプライベートな選曲テープを作るのが好きだったので、それと同じ感覚で楽しんでいましたね。「これはバズ・フェ・ジャズっていう人が選曲していて、こっちはジャイルス・ピーターソンがやっているんだな」っていうふうに。

ある種の統一的なセンスを元に、一見無関係そうな曲を並べるっていうコンピレーションのあり方自体が新鮮だったということですよね。

橋本:そうです。当時は、単純にビッグヒットを並べただけとか、単体アーティストのベスト盤にしても、律儀に年代順に並べたものばかりだったので。いちばんわかりやすいのがジェイムス・ブラウンのベスト盤ですね。既存のものは、ほとんどが「プリーズ、プリーズ、プリーズ」はじまりなわけですよ。こっちはもっとファンキーなものを聴きたいのに(笑)。だからこそ、クリフ・ホワイトがレアグルーヴ~ヒップホップ世代に受けそうな曲を中心に選んだコンピ『イン・ザ・ジャングル・グルーヴ』(1986年)が新鮮だったんです。後にFree Soulでアーティスト単体のコンピを出すにあたっても、そういった発想にはかなり影響を受けていると思います。

音楽ファンの全員がそのアーティストのことをクロノジカルに研究したいと思っているわけじゃないですもんね。

橋本:まさにそうですよね。

ロックを中心とした旧来の音楽ジャーナリズムやエリート主義的な音楽リスナーのコミュニティでは、それって「不都合な真実」でもあったわけですよね。それを、レコード好きの視点から鮮やかに提示してみせちゃったというのは、ある意味でパラダイム転換だったと思うんですよ。

橋本:評論的な観点から音楽を聴く人なんて、音楽好きの中でもごく一部だけでしょう。大勢の人はあくまで感覚先行で聴いているんですよね。Free Soulが大事にしてきたのも、まさにそういうリスニングのあり方なんです。

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やっぱりFree Soulの全盛期である90年代半ばの熱気や輝きがダイレクトに感じられるようなものにしましょうという話になって。

今回の30周年コンピレーションを聴いても、改めてFree Soul的な感覚の核には、オーガニックなサウンドというか、反デジタル的なカラーがあるなと感じたんですが、そういう志向には、1990年代当時の主流シーンへのアンチテーゼも込められていたんでしょうか?

橋本:じつはそこはあまり意識していなかったんです。単純に、僕の好みがそういう生っぽいサウンドだったということですね。いわゆるネオ・アコースティック系のサウンドが原体験にあるので、どうしても生楽器の質感への愛着が選曲に反映されがちなんじゃないかと思います。だから、一口に70 年代ソウルといっても、同時期のシンガーソングライターものとの接点にあるような音楽が特に好きなんですよね。象徴的な例を挙げるとしたら、アイズレー・ブラザーズ。彼らの例えば、キャロル・キングやジェイムス・テイラー、スティーヴン・スティルスやトッド・ラングレンのカヴァーをやったりしている時期が好みなんですよ。

ちなみに、その辺りの作品も旧来のディスクガイドの評価だと……。

橋本:ほとんど相手にされていないどころか、綺麗にスルーされていたり(笑)。でも、自分にとっては本当に大切な曲たち。ラティモアのアル・クーパー “ジョリー” のカヴァーも昔は完全に敵視されていたし、リロイ・ハトソンやダニー・ハサウェイみたいに大好きな声の持ち主が、「歌が弱い」って切られていたり。テリー・キャリアーにしても全く無視されていたり、といった感じだったんですけど、自分は死ぬほど好きで。だから、その人が感覚的に好きであれば、なんでもFree Soulと言えちゃうんですよね。でもその一方で、アコースティック・ギターのカッティングとか、心地よい16ビートのグルーヴとか、ある種のスタイルを指す言葉として広まっていったのも確かですね。

“ジョリー” のオリジネーターであるアル・クーパーとか、他にもトッド・ラングレンとか、エレン・マキルウェインとか、メリサ・マンチェスターとか、ロック~フォーク~ポップス系、あるいはコーク・エスコヴェードのようなラテン系のアーティストの曲に、ソウルの視点から光を当ててみせたというのも、とても大きな意義があったと思います。

橋本:ブルー・アイド・ソウルって言葉が好きだったんですよね。でも基本的に、旧来のロック批評というのは、特定のアーティストをカリスマ的な存在として絶対視するようなものが多かったですからね。だから、当時はベテランのロック・ファンからもいろいろと言われたりしました(笑)。

先ほども渋谷系の話が少し出ましたけど、リアルタイムの音楽シーンとの連動感もとても印象に残っています。小沢健二さんの『LIFE』(1994年)なんて、モロにFree Soul的なサウンドですよね。

橋本:当時からそれはよく指摘されましたね。「何々の曲が引用されている」ということ以上に、あのアルバムで表現されていた街の空気感だったり、当時の20代の若者たちが感じていた気持ちっていう面で、すごく共鳴するところがあったんだと思います。もちろん、日常の全てが幸せなわけではないけど、前向きなマインドになれたり、輝く瞬間があって。そういうありふれた日常を励ましてくれるのがFree Soulであり、『LIFE』だったんじゃないでしょうか。

いきなり生々しい質問になっちゃいますが、第一弾リリースの『Impressions』と『Visions』ってどれくらい売れたんですか?

橋本:『Visions』は把握していないんですけど、『Impressions』はイニシャルは2,000枚弱だったんですが、1990年代の後半の時点で3万枚を超えたと聞きました。

CD売上の全盛期とはいえ、旧曲を集めたコンピでそれは相当すごい数字ですよね。

橋本:この間、稲垣吾郎さんがパーソナリティをやっているTOKYO FMの『THE TRAD』っていう番組のFree Soul特集にゲストに呼ばれて出演したんですが、彼も当時『Impressions』を買ったって言っていました。その後も、渋谷のタワーレコードでFree Soulのジャケットがずらっと並んでいるのを仲間と手分けして集めていたらしくて。

へえ! 当時のSMAPのあのサウンドはプロダクション・チームに限らずちゃんと一部メンバーの志向と合致していたってことなんですかね。それこそ時代に共有された空気の濃さを感じさせる話ですね。

橋本:ちなみに、売上数で言うと、共にHMV渋谷の邦楽売り場でも売上チャート1位になった、〈ポリドール〉の『Parade』(1995年)と『Lights』(1996年)の方がもっと売れているんですよ。特に『Lights』はジャクソン・シスターズが入っている効果もあってか、2000年代初頭の時点で5万枚以上売れていると聞きました。アーティスト単体ものだと、アイズレー・ブラザーズのコンピ二枚(1995年)、『メロウ・アイズレーズ』と『グルーヴィー・アイズレーズ』はかなり売れましたね。それ以上に爆発的に売れたのが、1999年にFree Soulベストを編んだジャクソン・ファイヴでしたけど。

いやはやすごいなあ。

橋本:さっきの『LIFE』の話しかり、Free Soul的なサウンドとか価値観っていうのは、1990年代の時代的なムードと深いところで響き合っていたんだと思うんです。バンド・ブームやユーロビートが収束したあと、渋谷系に限らず、同時代の邦楽アーティストの曲に横揺れのグルーヴが浸透して行きましたよね。もちろんそこには、ニュー・クラシック・ソウルの流行とか、他にも要因があったと思いますけど。

そういう意味では、1995年という早い段階から『Free Soul '90s』というシリーズを立ち上げて、同時代の曲をコンパイルしていったというのも、とても重要な動きだったと思います。

橋本:同時代のシーンとの連動という意味でもプラスでしたし、旧曲のコンピであるそれまでのFree Soulのシリーズとも良い補完関係を築けましたね。「古いものの掘り起こし」である以上に、あくまで「90年代の感覚から楽しむ」という、現在から過去を見渡したときに輝いているものに光を当てるというパースペクティヴがベースにあることを、カヴァーやサンプリングを通してわかりやすく提示できましたので。

橋本さんはその後、「Cafe Apres-midi」や「Mellow Beats」、「Jazz Supreme」や「Good Mellows」など、Free Soul以外にもたくさんのシリーズを手掛けられていくわけですが、それぞれのシリーズをどう差異化していったんでしょうか?

橋本:自分の中で明確な線引きがあるわけじゃないんですよね。もちろん、カフェで聴いて心地よい音楽というコンセプトや、ジャズとヒップホップの蜜月をテーマにしたりとか、大きなくくりはありますけど、あくまでその時代々々の感覚で選曲していくイメージで。あえて各シリーズの境目をグラデーション状にして互いにイメージが広がっていくようにしたり、リスナーが親和性を感じられるようにしたりすることもありましたし。贅沢を承知で言わせてもらうと、僕の手掛けてきたコンピレーション全てを連続した物語として捉えてくれたらすごく嬉しいという気持ちがあって。

1990年代当時に、学生の頃からイギリスの音楽に親しんできた東京の普通の若者が過去の音楽をこうやって再解釈して提示したっていうこと自体がいまやひとつの歴史だと思うし、そこで提示されたパースペクティヴがいかにフレッシュだったのかというのを伝えられればと思っていて。

今回のFree Soul 30周年コンピ盤はどういうコンセプトで選曲されたんですか?

橋本:まず、〈Pヴァイン〉の山崎真央さんから「30周年で何かやりましょう」と声をかけてもらって、アイデア出しをしたんです。そのときはもっと現代寄りのコンセプトを提案したんですが、話し合っているうちに、やっぱりFree Soulの全盛期である90年代半ばの熱気や輝きがダイレクトに感じられるようなものにしましょうという話になって、2作品合計4枚にわたって人気曲やキラーチューンを惜しげもなく入れる方向に転換していきました。結果的に、Free Soulのまさに「ベスト・オブ・ベスト」的な選曲になりましたね。

Free Soulシリーズを初めて知るリスナーにもビシバシ響きそうな選曲だと思いました。

橋本:そう、セレクションを見れば自明なように、今回いちばん大事にしているのは、「次世代につなぐ」という意識なんです。昔からのFree Soulファンにニュー・ディスカヴァリーを提示するというよりは、このアニヴァーサリーのタイミングで、若い世代にFree Soulは魅力的だと思ってもらえるようなものを形として残しておきたいという気持ちになれたというか。音楽好きの若い人たちはすごく多いし、好奇心や興味もたくさん持っていると思うんですが、ただ点と点があるだけじゃ伝わりづらいので、それを繋いで線にしてみせたり、星座を描いてみせたり、あるカラーを提示するっていうことができればいいなと思っていて。

「なんでもあり」的に断片化した今のメディア環境や情報流通の速度からしても、そういう行為の重要性はかえって大きくなっている気がします。

橋本:そうなんですよね。正直、僕らの世代からしたら「まだこの曲をプッシュするのか」って思ってしまいがちだし、自分の最新の関心に基づいてプレゼンテーションしたくなるところなんだけど、もっと俯瞰して次へ繋ぐっていうことを大切に考えると、「確かにド直球もありなのかな」と思えるようになってきたんです。1990年代当時に、学生の頃からイギリスの音楽に親しんできた東京の普通の若者が過去の音楽をこうやって再解釈して提示したっていうこと自体がいまやひとつの歴史だと思うし、そこで提示されたパースペクティヴがいかにフレッシュだったのかというのを伝えられればと思っていて。これまでFree Soulという看板を背負っていろんな経験をさせてもらった身としても、これはやり続ける価値のあることだよなっていう気持ちがありますね。

ある種の責任感のような?

橋本:そうかもしれませんね。あの当時、「フリー・ソウル・ルサンチマン」って言葉がよく使われたくらいで(笑)、他のDJやコレクターやマニアの人たちからしてみれば、ひがみややっかみも含め「なにがFree Soulだよ、やりたいことやって」っていう気持ちもあったと思うんです。もともと好きだったものが、突然出てきたFree Soulっていう言葉のせいで他人のもの、一般的なものになってしまったような気持ちを抱いた人もいるだろうし、実際、労力とお金をかけて同じような領域を僕以上に深く掘っている人だっていたはずなんですよね。そういう中で自分はたまたま、やりたいことをやらせてもらえる恵まれた立場だったので、ちょっとでも注目されなくなったらすぐにやめちゃうんじゃなくて、そういう人たちに対しての責任も果たしたいなという気持ちもありますね。

手掛けられた仕事の数々に触れていても、なおかつこうしてお話を伺っていても、橋本さんの30年余りの仕事って、聴く人の時間の積み重ねやライフステージの変化に並走してくれている感じがするんですよね。クラブ・カルチャーに限らず、ライフステージの変化によって音楽とかカルチャーから離れちゃう例って、本当にたくさんあるじゃないですか。でも、Free SoulやCafe Apres-midiは、移り変わりや変化の中でも、気づけばそこにある感じがして。

橋本:それは自分でも意識している部分ですね。僕は歌も歌えないし楽器も弾けないし、ただレコードが好きなだけでいろんな提案をしてきたわけですけど、音楽ファンとして時々の生活のシチュエーションやシーンと結びつけて提案するというスタイルこそが自分の立ち位置だと思ってやってきたんです。僕が選んだ音楽を聴いてもらうことによって、日々の暮らしの中である情景とかシチュエーションが素敵なものになったり、大切な瞬間が再生されるようになったら、すごく嬉しいですね。

音楽を愛し続けるのも、案外エネルギーがいることですよね。若い頃に熱烈な体験をしていたりすると、加齢とともに余計にそう思ってしまう気もします。

橋本:周りからも、レコード買うのをやめてしまったっていう声が聴こえてきたりするんですけど、そういう話を聞くと、前までは「え~」って思っていたけど、僕も50代になって結婚をして初めてその気持ちが理解できました(笑)。けど、せっかく大好きだった音楽から離れちゃうのはやっぱり残念じゃないですか。一回やめてしまった習慣をまたはじめるのは本当にエネルギーがいりますけど、だからこそ、サブスクでもコンピでもいいから、もっとみんな毎日のシチュエーションの中で気軽に音楽に触れて欲しいなと思いますね。

単純に心がウキウキしたり、リラックスしたり……って、あまりにも当たり前のことかもしれないですが、よくよく考えればめちゃくちゃスゴいことですよね。育児しながらBGMとして聴いてもいいし、家事や通勤の最中に聴いてもいいし。

橋本:そうそう。まさにFree Soulなんて、そういうときに輝いて聴こえたり、胸に沁みたりするエヴァーグリーンな音楽だと思いますしね。僕自身、あくまでカジュアルに手にとってもらいたいなと思ってやってきましたし、つねにイージーリスナーズに優しいっていう意識を大切に、クリエイティヴと向き合ってきましたから。Suburbiaの最初のフリーペーパーのサブキャッチからして、トット・テイラー主宰の〈コンパクト・オーガニゼーション〉に倣って、“Earbenders for Easy Listeners”だったくらいですし。

そして、あくまでパッケージで出すというのも改めて意義深いと思います。ストリーミングは間違いなく便利だしイージーリスナーズに優しいけれど、音楽という文化によりコミットしているという実感を促す装置という視点でいっても、なんだかんだ「物体を所有すること」の価値は減じてないと思うんです。

橋本:もしかすると、ライトなリスナーの方ほど、「モノ」に敏感かもしれないなと最近思うことがありますね。「なんかカッコいい」とか「お洒落だな」で全然いいと思うし、雰囲気で聴いていいと思うし、レコード会社もあきらめずに、そういう人たちへぜひ音楽を届けるべきですよね。

橋本徹(SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。『Free Soul』『Mellow Beats』『Cafe Apres-midi』『Jazz Supreme』『音楽のある風景』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは350枚を越え世界一。USENでは音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作、1990年代から日本の都市型音楽シーンに多大なる影響力を持つ。最近はメロウ・チルアウトをテーマにした『Good Mellows』シリーズや、香りと音楽のマリアージュをテーマにした『Incense Music』シリーズが国内・海外で大好評を博している。
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