「Low」と一致するもの

梅雨のサウンドパトロール - ele-king

 オリンピック村で配布されるコンドームの数が尋常じゃないと話題になってるけれど、どうせ東京オリンピックを強行するなら、いっそのこと夜のオリンピックも「OnlyFans」(https://onlyfans.com)で強行配信すれば収益もガーンと上がって、電通ウハウハなんじゃないでしょうか。セクシーな行為や姿を見られたい人が自作映像をアップする「OnlyFans」はディズニー女優のベラ・ソーンが主演作のリサーチ目的でアカウントを開設しただけで1日で1億1000万円も売り上げたというから、運営側が夜のオリンピックもコントロール下に置けば赤字も秒で解消でしょう! ああ、オレはなんて国想いなんだろう……つーか、見せたいバカはきっといる(https://twitter.com/onlyfansjapan_)。そうしたことを踏まえて、梅雨のサウンドパトロールです。

1 Cam Deas & Jung An Tagen / That (yGrid/C#) / Diagonal


https://soundcloud.com/diagonal-records/diag059-3-cam-deas-jung-an


https://presentism.bandcamp.com/track/that-ygrid-c

ケンイシイ “Extra”……かと思った。ロンドンから実験音楽系のキャン・ディーズことキャメロン・ディーズがパウウェルのレーベルに移籍し、オーストリーのステファン・ジャスターと組んだビート・アルバムの3曲目。“Extra” のダンス・ビートをゴムのミリタリー・ドラムに置き換え、全体にソリッドな質感で押し切っている。偶然にも大坂なおみを襲った病気と同じ『プレゼンティズム(Presentisim)』と題されたアルバム全部が様々なアプローチで “Extra” をアップデートさせた集合体のようで、オープニングはFKAトウィッグスの最良の仕事のひとつといえる “Hide” に通じるメキシカン・テイスト。


2 Ghost Warrior / Meet At Infinity / Well Street


https://soundcloud.com/oneseventyldn/premiere-ghost-warrior-meet-at-infinity

ハーフタイムなどドラムンベースの刷新に取り組んできたピーター・イヴァニ(Peter Ivanyi)による7作目のEPからタイトル曲。空間的な音処理に長け、ダークな余韻を残すことにこだわってきた彼が作品の質を落とさず、緊張感をアップさせた感じ。快楽的なんだかストイックなんだか。同EPからは複数のリズム・パターンを駆使した3曲目の “They Live” もいい。ハンガリーから。


3 kincaid / Slow Stumble Home / Banoffee Pies


https://banoffeepiesrecords.bandcamp.com/track/slow-stumble-home


https://soundcloud.com/banoffee-pies/premiere-kincaid-slow-stumble-home

ブリストルのニュー・レーベルからキンケイドとシューティング・ゲームに由来するらしいゼンジゼンツ(Zenzizenz)が2曲ずつ持ち寄ったEP「Single Cell」のオープニング。ロンドンのキンケイドは長らくオーガニック・ハウスをやっているという印象しかなかったけれど、ロックダウン下で取り組んだEP「Pipe Up」でハーフタイムらしき “Thirds” を聴いてから急に興味が湧いたひとり。そして、フィールド・レコーディングを素材に用いた “Slow Stumble Home” でダウンテンポというジャンルに新風を吹き込んできた。素晴らしくてナイス・チルアウト。


4 どんぐりず / マインド魂 / Victor


https://dongurizu.com/news/detail/80

本誌でヒップホップ特集を組んだと聞き、僕がたまにユーチューブでチェックしている群馬の二人組をピックアップしてみました。何を伝えたいのかさっぱりわからないけど、なぜか何度も観て(聴いて)しまう。


5 Kamus / Kult / Céad


https://soundcloud.com/cead_cd/kamus-kult?in=yungkamus/sets/kult

グラスゴーからキャメロン・ギャラガーによるアラビック・テイストのトライバル・ダブステップ。延々と宙吊りにされる快楽。かつてのトラップ趣味や妙な情緒の揺れは消し飛び、カップリングの “Wallace” とともにストイックでヒプノティックなパーカッション・ワークがとにかく素晴らしい。


6 ディノサウロイドの真似 a.k.a Dinosawroid-mane / 210212 / Opal Tapes

松本太のソロ・プロジェクト。カセット・アルバム『AOB』から6曲目。アルバム全体はエキゾチックなトライバル・ドラムやフェイク・ファンクなど、いい意味で懐古的なオルタナティヴ・サウンドみたいですが、“210212” はちょっと毛色が変わっていて、伸びたり縮んだりするスライムを音楽に移し替えたような面白い展開。関西の人なのか、自己紹介がふざけていてよくわからない。ネーミングの由来は→https://twitter.com/dinosawroidmane


7 Poté / Young Lies (feat. Damon Albarn) / OUTLIER


https://potepotepote.bandcamp.com/track/young-lies-feat-damon-albarn

パリ在住のポテによるアフロ・シンセ・ポップのデビュー作から8曲目。アフリカ・イクスプレスやブラカ・ソン・システマのレーベルを経て、ボノボが〈ニンジャ・チューン〉傘下に設立したレーベルから。癖がなくて聞きやすい曲が並ぶなか、ジェイミーXXのソロを思わせる “Young Lies” は重そうな歌詞をしなやかに聞かせていく。


8 miida and The Department - Magic hour

元ネゴトのマスダ・ミズキによるニュー・プロジェクト。渋谷系リヴァイヴァルというのか、さわやかで微妙にアンニュイな感じは懐かしのクレプスキュール・サウンドを思わせる。そこはかとなくダンサブルで、ロッド・ステュワート “I’m Sexy” のベース・ラインを思い出すのはオレだけか。


9 Maara / WWW / UN/TUCK Collective

「孤独なインターネット・インフルエンサー」を自称するマジー・マン(Mazzy Mann)による過去2枚のEPを素材としたリミックス・アルバム『MAARA 2​.​5: X MIXES & REMIXES』の冒頭に置かれた3曲のオリジナルから3曲目。リミックス部分は全部いらなかったという感じで、オリジナル曲では嘆き悲しむようなメロディをゴージャスに歌い上げ、確実にスキル・アップが達成されている。カンザス・シティのクイアーやトランスジェンダー専門のレーベルから。


10 Marjolein Van Der Meer & Big Hands / Kitty Jackson / Blank Mind

アラン・ジョンソンやラックなど秀逸なトラックものを連発してきたダブステップのレーベルがロックダウンを機に製作したアンビエント・アルバム『Comme De Loin』の5曲目。レイジーなウイスパー・ヴォーカルを軸にふわふわと頼りなげに漂う薄明のダウンテンポ。はっきりいって、良かったのはこれ1曲。

New Order - ele-king

 ニュー・オーの昨年のシングル曲“”のリミックス集が8月27日にリリースされる。バーナード・サムナーとスティーヴン・モリス、アーサー・ベイカーによるリミックスやadidas SPEZIALとのコラボレーション曲など全13曲が収録。
 なお、現在アーサー・ベイカー(※エレクトロ・ヒップホップの始祖、NOが1983年の「Confusion」でフィーチャーしたことは有名)でによるリミックスがデジタル配信中。


New Order
Be a Rebel Remixed

Mute/トラフィック
発売日:2021年8月27日(金)

Tracklist
1. Be a Rebel
2. Be a Rebel (Bernard’s Renegade Mix)
3. Be a Rebel (Stephen’s T34 Mix)
4. Be a Rebel (Bernard’s Renegade Instrumental Mix)
5. Be A Rebel (Paul Woolford Remix New Order Edit)
6. Be A Rebel (JakoJako Remix)
7. Be A Rebel (Maceo Plex Remix)
8. Be A Rebel (Melawati Remix)
9. Be A Rebel (Bernard's Outlaw Mix)
10. Be A Rebel (Arthur Baker Remix)
11. Be A Rebel (Mark Reeder's Dirty Devil Remix)
12. Be a Rebel (Edit)
13. Be a Rebel (Renegade Spezial Edit)

[Listen & Pre-Order]
https://smarturl.it/BARremixed


 ちなみに昨年3月に予定されていたジャパン・ツアーは、コロナ禍の影響により延期となり、2022年1月に実施されることとなっている。

■ジャパン・ツアー日程
大阪 2022年 1月24日(月) ZEPP OSAKA BAYSIDE
東京 2022年 1月26日(水) ZEPP HANEDA
東京 2022年 1月28日(金) ZEPP HANEDA
制作・招聘:クリエイティブマン 協力:Traffic
https://www.creativeman.co.jp/event/neworder2020/



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Black Midi - ele-king

 SNS時代では、好きなことを好きなようにやることがますます難しくなっているのだろう。もはや自分が何を好きなのかさえもわからなくなっているのかもしれない。とにかく、不特定多数の誰かに自分がどう見られるのか、市場やメディアでの自分の見せ方ばかりを気にしているミュージシャンやライターを見るにつけ、本当につまらない連中だなと思う反面、大衆自らが監視装置になっている現在のディストピアにぞっとする。
 しかし、絶望的なこのがんじがらめから脱出するには、ひとつ方法がある。誰になんと思われようと知ったことではない、好きなことを好きなように情熱をもって徹底的にやり抜く。ブラック・ミディというロンドンの若き4人組のロック・バンドはまさにそれをやった。

 彼らの音楽にはトレンドらしきものなどない。ラップもダンスもドラッグも恋愛もない。パンク版キング・クリムゾン? XTC風のキャプテン・ビーフハート? ときにボアダムスっぽくもあり、そしてヴァンダーグラフ・ジェネレイターっぽくもあり……、いやまあなんにせよ、象徴的に言えば、少なくとも誰もが待ち望んでいるであろうことなど眼中にないサウンドをもって、だからこそ逆説的に誰もが待ちのぞんでいたことをやってのけたと。そう、この突然変異体は彼らのサウンドのパワーでもって、人びとを惹きつけたのである。最近出たばかりの『カヴァルケイド』はブラック・ミディにとってのセカンド・アルバムで、プログレ御仁をも泣かせたという前作『シュラゲンハイム』にはそれほどピンとこなかったぼくにも今回はガツンときた。
 先ほどぼくは、ぼくのいつもの怠惰さゆえに既存のバンド名などあげつらってブラック・ミディを説明しようとしているが、彼らの言うなれば“パンク・ジャズ・ロック”はもっと多様で(ボサノヴァまでやっている)、そして完璧に新鮮だ。10代という若さでダモ鈴木と共演している彼らだが、後ろ向きの郷愁など感じない。今年で22歳になる彼ら自身が若いように、この音楽にもはち切れんばかりの若さがある。それが『カヴァルケイド』における緻密さと勢いの両翼にわたって、ときに激しくリンクしている。ケオティックであるが凛としたサウンドで、この暗いご時世のなか物事に立ち向かっているような勇敢さを携えている。
 また、このアルバムには「別世界からの人物たち──苦境に陥ったカルト教団のリーダーからダイヤモンド鉱山で発見された古代の死体、伝説のキャバレー歌手マレーネ・ディートリッヒ──が、列を成して、彼らの前を誘惑的に通り過ぎていくようなイメージが描かれている」と資料には書いてある。それぞれの楽曲はそれぞれの人物のそれぞれのストーリーであり、そしてそれぞれのパレードだというが、ま、ぼくにひとつ言えるのは、ここで語られるそれぞれのストーリーやパレードはひどくエキサイティングだということである。
 アルバムはバランスも取れている。激しいリズムの“John L”や“Chondromalacia Patella”そして“Slow”の「動」に対してボッサ調の“Marlene Dietrich”、ゆったりしたアメリカーナ風の“Diamond Stuff”のような「静」もあり、スコット・ウォーカーめいた歌とアコースティックな圧倒的な美しさの“Ascending Forth”で締めている。サブスクの恩恵はあるにせよ、まあ、よくここまで折衷的なサウンドをうまくまとめ上げて、しっかりブラッシュアップさせたなと。
 
 過去がアーカイヴされた現代では、古いものも新しいものも等価であり、ときには古いものが新しいとも言われる。いや違う、新しいものが新しく、いまここに新しさがはじまろうとしている。ブラック・ミディを聴こう。お小遣いをためて高価な中古盤を買うのも悪くはないけれど、こんな苦難な時代においても前を向けるという意味で、少なくとも精神的には良いことがあると思います。

Brainstory - ele-king

 うん、これは素晴らしいバンドが登場しました。ロサンゼルスの郊外、インランド・エンパイア出身の3人組、ブレインストーリーなるバンド。極上のメロウ・グルーヴ、ジャズ+AOR+サイケ+グローバルによる恍惚、ファンクと甘美なまったり感、たまらないですな。まずはこのPVで腑抜けになって下さい。

 6月24日にブレインストーリーの7曲入りの「RIPE」が発売。初回限定先着80枚には、アーティスト・インタヴュー/歌詞対訳/写真など掲載の12頁ZINE付属。クルアンビンのファンはマストです。詳しくはレーベルのホームページをどうぞ。https://www.m-camp.net

5 さらばロサンゼルス - ele-king

 4月初旬、久しぶりに羽田からロサンゼルス行きのボーイングに乗った。去年、帰国した時と変わらず、羽田は閑散としていて手荷物検査場も10分掛からず通過できた。しかし手荷物検査場を出てすぐのところでパスポートに挟んでいたはずのフライトチケットが無いことに気付く。物をなくすというのはなんとも不思議な感覚である。数秒前まで大事に持っていたはずのものが跡形もなく消えているのだからちょっと笑ってしまった。搭乗まで時間もあったので再発行してもらいことなきを得たがなんとも幸先の悪い旅のはじまりである。

1. Vegyn - Like A Good Old Friend

本人主宰のレーベル〈PLZ Make It Ruins〉から、僕の最近の夜散歩のお供、ユルめなダンスEP。フランク・オーシャン等のアルバムに参加したりプロデューサーとしても名を馳せつつあるが自分の作品も感嘆の完成度。僕はエモいという言葉が本当に嫌いなのですが、これはなかなかエモいかもしれない。決して古くさい感じはしないけど、昔のことに思いを寄せたくなるような、寂しげなノスタルジーを感じる。余談だがVegyn(ヴィーガン)ことJoe Thornalleyの父親はPhill Thornalley (元ザ・キュアー)らしい!


 今回の旅の目的は留学先に残してきた荷物の片付けである。ちゃんと自分で書くのは初めてだが、僕はここ3年ほどの間ロサンゼルスに住んでいた(といっても2020年は半分以上日本にいたので実質2年半だが)。去年の7月はまだパンデミック真っ只中で、通っていたカレッジもオンラインに移行したので登校できるようになったら戻ろうと荷物もほとんど置いて帰ってきたのだが、とりあえず日本で腰を据えて頑張ろうという決心がついたので完全帰国を決めた。
 高校入学前に親から留学を勧められたときはなかなか勇気が出ず、流されるように日本の高校に入学し、2年生も半分終わるころやっと決心がつき突然ロサンゼルスの高校に編入し、卒業後もカレッジまで行かせてもらったのに途中でやめる中途半端さと天邪鬼な性格を両親と預かってくれていたゴッドマザーに詫びるとともに感謝したい。

2. Joseph Shabason - The Fellowship

 テキサス州オースティンのレーベル〈Western Vinyl〉から。去年リリースされたChris Harris, Nicholas Krgovichとの共作、''Philadelphia''も素晴らしいアルバムだったけど、今作も繊細で気持ちの良いがより実験的なアルバム。 ''Philadelphia''で多用されてた笛みたいな音はShabasonの仕業だったのか。今作でもよく笛を吹く。曲によってだいぶ曲調が違く、アンビエント・ポップ的な曲もあれば、打楽器が複雑に重なっていく曲やギターでノイズを出すのもある。1人で真面目に聴いても良いし、暗すぎないので部屋でかけても良さそう。


 LAX(ロサンゼルス国際空港)に着くと通常はイミグレーションで1、2時間は待たされるのだが空いていたので、ものの30分で出られた。入国の際のPCR検査や自主隔離の説明、体調の確認などもいっさい無く、入国してすぐにアメリカを感じさせられる。ゴッドマザーと幼馴染である彼女の娘が迎えにきてくれ、久しぶりの再会を喜び「フライトチケットなくしちゃってさ〜笑」などとお喋りしながら家へ向かう。このとき僕は空港のカートにパスポートを置き忘れているのに全く気づかず、アメリカの空はいつ見ても大きいな〜などとうつつを抜かしているのであった。パスポートをなくしたのに気付くのは2週間後のことである。

3. Shame - Live in the Fresh

 前々回すでにアルバムのことは書いたのでバンドの説明は省きます。パンデミック中なので無観客ライヴのライブ盤。1曲目“Born in Luton”の冒頭のシーケンスでもうがっちり掴まれる。Youtubeにミニコント付きの映像も上がっています。なぜかYoutubeのほうが音が良いし映像あったほうが上がるのでYoutube推奨。 コントちょっと面白いけどコメントを見るとあんまりウケてないところも良い。


 2週間隔離を終え街に出た。ワクチンの接種もはじまっていて徐々に人出も増えてきている。移転した〈Amoeba Music Hollywood〉も人数制限のせいもあるがレコードストアデイでもないのに入店待ちの行列。
 以前より敷地面積は狭いがやっぱりデカイ。レコードコーナーが縮小してCD、DVDコーナーと半分ずつくらい。僕の好きだったグローバル・ミュージック・コーナーにいたっては棚四つくらいしかなく残念。

4.Tex Crick - Live In... New York City

 マック・デ・マルコのレーベル、〈Mac's Record Label〉(そのまま)からTex Crickのセカンド・アルバム。 タイムスリップしてきたのかってくらいの、もろ70'sソフトロック。むしろ若いリスナーには新鮮であろう、70年代とはもう半世紀前だし、シティ・ポップのリヴァイヴァルがあるし、ちょっと前Tik Tokでフリートウッド・マックが流行ったりしてたし。力の抜けた歌も心地良いし、シンプルで嫌味のないピュアさがグッとくる良アルバム。


 片付けとパスポートの再発行をすませ、パンデミック中に長居する理由もないので東京へ帰る。正直ロサンゼルスという街に飽きていたので未練はないが、少し名残惜しいのはタコス・アル・パストールくらいだ。アル・パストールはスパイスに漬けた豚肉を回転式グリル機でカリカリに焼いてパイナップルと一緒にいただく屋台タコスで僕の大好物。LAの渇いた空気と炭酸飲料とタコスのタッグの破壊力は凄まじい、本場メキシコにもぜひ行ってみたい。残念ながら東京には美味しいアル・パストールを出す店は無い。あの味を求めていつかまたロサンゼルスに行かなければならないだろう。

MAN ON MAN - ele-king

 マン・オン・マンのデビュー・シングル“Daddy”のミュージック・ヴィデオには笑った。それは年の差ゲイ・ベア・カップル(「ベア」はゲイ・コミュニティにおいて肉づきがよくて毛深い男性のセクシーさを表現する意味で使われます)が半裸でイチャイチャしているだけのもので、イケてるダディ(「ダディ」はゲイ・コミュニティにおいて中高年男性のセクシーさを表現する意味で使われます)との性的な体験の期待がパンデミックによって邪魔されることの不安を歌った歌詞といい、いま世のなかは大変だけど、こんなに朗らかに過ごしているゲイ・カップルもいるんだな……とちょっと励まされたのだった。
 しかし微笑ましく思っていた数日後、このヴィデオが「過度に性的である」という理由でYoutubeから消されてしまう。え!? いや、ヘテロセクシュアルのものでもっと過激にエロティックなものはいくらでもあるし、ゲイものでも(いわゆる)美青年のものだったらそう簡単に消されないでしょう。「ホモフォビアだ」とゲイのリスナーから抗議が出てしばらくするとヴィデオは復活したが、ダイヴァーシティ・マーケティングが当たり前になった現在、Youtube側にも悪気があったわけではないだろう。ただ、ゲイ度が濃すぎたのだ。ゲイを含め性的マイノリティの表現の受容において世界はこの10年で本当に進んだけれど、世のなかはまだ、ブリーフ姿のおじさんふたりがイチャイチャしているのは見たくないのかもしれないな。だけど僕は子どもの頃から、それがずっと見たかった。本当に。

 ともあれ、当人たちは激しく抗議することもなく、自己隔離のなかでクリエイティヴィティを保つために作ったという音楽をたんたんと発表していく。セカンド・シングルのタイトルは“Baby, You're My Everything(ベイビー、きみはぼくのすべて)”だ。ヴィデオはやっぱり、ゲイ・ベア・カップルが半裸でイチャイチャしているだけのものだった。
 マン・オン・マンはフェイス・ノー・モアのキーボーディストであるロディ・ボッタムが彼氏のジョーイ・ホルマンと組んだユニットで、これがデビュー作だ。ボッタムはハード・ロックやメタル・シーンのなかでは珍しくかなり早くからカミングアウトしており、『アダム&スティーヴ』とのタイトルのゲイ・ラブコメ映画のサウンドトラックを担当するなど、長年飄々とゲイ・コミュニティに貢献してきた人物だ。ただ、ロックのなかでもとくにマッチョなシーンに身を置いてきたために、ホモフォビックな言動は数多く目にしてきたし、実際、カミングアウトは多くのひとに止められたという……ファンを失うことになるぞ、と。それでもボッタムは堂々と「ゲイであり続けた」。元ハスカー・ドゥのボブ・モールドといい、いま60歳前後のゲイ・ロッカーたちが元気に活動していることには、いちゲイとして素直に尊敬の念を抱かずにはいられない。
 アルバムはもっとシンセ・ポップ寄りになるのかと思っていたら、オープニング・ナンバー“Stohner”がもろに90年代オルタナ・ロック調なのを皮切りにして、かなりギター・ロック然とした1枚である。ホルマンは何でもクリスチャン・ロック・バンドのメンバーだったそうで、彼もまた同性愛嫌悪が強いシーンに身を置いていた人物なのだが、彼の音楽的嗜好が反映されたものなのだろう。エレクトロニックなダンス・ポップはゲイ・ポップスとしてはいまやクリシェになっている側面もあるので、ゲイネスをたっぷり表現したロック・ミュージック──1980年代からクィアコアと呼ばれてきた──はいま、かえって新鮮だ。いや音としては新しいものではないが、クィア性があまり目につかなかった90年代のハード・ロックやオルタナティヴ・ロックを新しい価値観から再訪しているようにも見える。そこにはボッタムをはじめとして、少なくないセクシュアル・マイノリティが存在したのだと。

 だから、基本的にボッタムが年下の彼氏のことが好きで好きで仕方ないということが伝わってくるだけの本作は、他愛もないと言えばそうだが、その他愛のなさによってこそセクシュアル・マイノリティの生を祝福する。フワフワとした曲調で素朴に歌われる“It's So Fun (To Be Gay)(ゲイでいることはすごく楽しい)”はそして、21世紀の“Glad to Be Gay”だ。トム・ロビンソン・バンドによるアンセムのように闘争的な姿勢はこの曲にはないが、とにかく楽しく生きることで、マン・オン・マンはセクシュアル・マイノリティの現在と未来をエンパワーメントしているのだ。
 同性愛を「不道徳」だとかトンチキなことを言う人間は残念ながらいつでもいるし、ゲイ度を濃くすると消去されることもまだまだあるだろう。だからこそ、僕たちは自分たちの性と生を謳歌しよう。彼氏のことが大好きなら、人前でイチャイチャしたってかまわない。ゲイ・シーンのパイオニアはかく語りき──It's so fun to be gay!

Eli Keszler - ele-king

 今日における最重要パーカッショニストと呼んでも過言ではないイーライ・ケスラー。ヘルム『Olympic Mess』からローレル・ヘイロー『Dust』『Raw Silk Uncut Wood』、OPN『Age Of』やダニエル・ロパティン『Uncut Gems』まで、数々の話題作に関わってきた異才──彼の新作がなんと、グラスゴーの〈LuckyMe〉からリリースされる。
 日本でもコロナ禍によって街の音が変わったけれど、ケスラーの新作『Icons』ではロックダウン中のニューヨークでかき集めたさまざまな音がコラージュされているようだ。現在アルバムより “The Accident” のMVが公開中です。これは楽しみ。

Eli Keszler

盟友OPNとのコラボレーションでも知られる
唯一無二の鬼才パーカッショニスト、イーライ・ケスラーが
最新作『Icons』を〈LuckyMe〉より6/25にリリース!
新曲 “The Accident” のMVが公開

ニューヨークを拠点とするパーカッショニスト/作曲家/サウンド・アーティストのイーライ・ケスラー。これまでに、〈Empty Editions〉、〈ESP Disk〉、〈PAN〉、〈Shelter Press〉といった先鋭的なエレクトロニック・ミュージックのレーベルからリリースを重ね、前作『Stadium』では Boomkat のアルバム・オブ・ザ・イヤーに選出された。また、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティンが手がけたサフディ兄弟の傑作『Uncut Gems』のスコアへの参加や、ローレル・ヘイローとのコラボレーション、Dasha Nekrasova 監督の長編映画『The Scary of Sixty First』のオリジナル・スコアの作曲など活動の幅を広げ続ける彼が、最新作『Icons』を〈LuckyMe〉より6月25日にリリースすることを発表した。現在先行配信曲 “The Accident” のMVが公開されている。

Eli Keszler - The Accident
https://youtu.be/elWW-QQx8IQ

アルバム中、ドラム、パーカッション、ヴァイブラフォン、マリンバ、フェンダーローズ、その他多数の楽器がイーライ自身によって演奏されている。ゲストには往年のコラボレーターでもあるヴィジュアル・アーティストのネイト・ボイスがギターシンセで参加、更に中国やクロアチア、その他世界中のさまざまな場所で録音されたサウンドが使用されており、中には渋谷の富ヶ谷公園のサウンドも含まれているという。また、本作はアメリカの抽象主義、夢のような古代のメロディズム、インダストリアルなパーカッション、アメリカの1920年代ジャズエイジのフィルムノワール、帝国の衰退などの様々な要素の断片が散りばめられたコンセプチュアルな作品となっている。

『Icons』は、旅行や輸出入といったことが事実上停止していた時に作った音楽だ。僕は夜な夜なマンハッタンを歩き回って、車のアラームが数ブロック先まで聞こえるような、誰もいない静かな街の録音を集めた。そこでは、電気の音や自転車のギアの音といったものが大半を占めていた。昨年はずっとマンハッタンに滞在していたけど、1つの場所にあんなに長く滞在したのはここ10年の中でも初めてだった。マンハッタンは基本的に閉鎖されて、不規則なペースで動いていた。救急車、抗議活動、ヘリコプターなどの激しい状態から、美しくて奇妙な、穏やかな静寂のような状態まで、街が揺れ動いているように見えた。僕はそこで、何か奇妙で美しいことが起こっていると思ったんだ。権力が崩壊し、人々が変化していた。『Icons』では、僕たちの目の前で劣化して朽ち果てていく神話的な表現を用いて、僕らの壊れやすくて不安定な現実の中に美を見出すような音楽を作ったんだ。 ──Eli Keszler

イーライ・ケスラーの最新作『Icons』は6月25日リリース! 国内流通仕様盤CDには解説が封入され、他にも輸入盤CD、輸入盤LP(ブラック・ヴァイナル)、インディー限定盤LP(クリア・ヴァイナル)、デジタルと各種フォーマットでリリースされる。

label: LuckyMe
artist: Eli Keszler
title: Icons
release date: 2021/06/25 ON SALE

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11877

tracklisting:
01. the Mornings in the World
02. God Over Money
03. The Accident
04. Daily Life
05. Rot Summer Smoothes
06. Dawn
07. Static Doesn’t Exist
08. Late Archaic
09. Civil Sunset
10. Evenfall
11. We sang a dirge, and you did not mourn

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Oneohtrix Point Never & Rosalía - ele-king

 最新作『Magic Oneohtrix Point Never』が好評のワンオートリックス・ポイント・ネヴァーから、新曲 “Nothing’s Special” の到着です。どこまでも広がる交遊録、今回のコラボ相手は近年ポップ・シーンでぐいぐい名を上げている、バルセロナ出身の歌手ロザリア(ジェイムス・ブレイク『Assume Form』やアルカ『KiCk i』での客演が印象的でしたね)。同曲は『mOPN』最終曲 “Nothing’s Special” の更新されたヴァージョンで、また違った角度からアルバムの魅力を引き出してくれるような仕上がり。チェックしておきましょう。

 モーリッツ・フォン・オズヴァルトを中心に、これまでマックス・ローダーバウアーサス・リパッティ、故トニー・アレンと、錚々たる顔ぶれが集ってきた MvO トリオ。きたる8月6日に〈BMG〉傘下の〈Modern Recordings〉から6年ぶりのニュー・アルバム『Dissent』がリリースされる……のだが、そこでメンバーが刷新されていることが明らかになった。
 ひとりは、ドイツのジャズ・ドラマーのハインリヒ・ケベルリング。彼は、〈ECM〉から作品を発表している同国のピアニスト、ジュリア・ハルスマンのクァルテットの一員であり、大阪出身のピアニスト、高瀬アキの作品に参加したこともある。
 そしてもうひとりはなんと、ローレル・ヘイロー。2010年代のエレクトロニック・ミュージックを代表する彼女とモーリッツとの出会い、これはビッグ・ニュースだ。
 新作は2020年の11月と12月にベルリンで録音されたそう。現在アルバムより “Chapter 4” が公開中。音、ヤバいです。これは期待大。

[5月20日追記]
 MVも完成していたようです。クール!


METAFIVE - ele-king

 病から恢復した高橋幸宏、どうやら本格的に動き出すようだ。彼と小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井という目のくらむ面々から成る METAFIVE が5年振りのセカンド・アルバムをリリースする。タイトルは『METAATEM』で、8月11日発売。
 それに先がけ、7月26日には KT Zepp Yokohama にてライヴも開催されるとのこと。稀代のスーパーグループの新たな一歩に期待しよう。

METAFIVE
5年振りのセカンド・アルバム「METAATEM」発売!そして一夜限りの自主ライヴ開催決定!!
本日より先行チケット受付スタート!!

METAFIVE(高橋幸宏×小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井)が5年振りとなる待望のセカンド・アルバムを8月11日に発売する。タイトルは「METAATEM」。2016年に発売されたアルバム「META」に続くオリジナル・アルバムであり、まさに待望のアルバム発売となる。

METAFIVEは、高橋幸宏、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井という、国内外の音楽シーンでそれぞれが特別な立ち位置を築いてきた6人によるスーパーバンド。2014年1月に行われたコンサート「GO LIVE VOL.1 高橋幸宏 with 小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井」をきっかけに集結し、2016年1月に1st ALBUM「META」、同年11月にMINI ALBUM「META HALF」をリリースし、初の全国ツアー “WINTER LIVE 2016”を開催した。その後休止状態に入っていたが2020年に再始動の表明をし、7月に「環境と心理」をデジタルリリース。同シングルは、iTunesのオルタナティブチャートで1位を獲得するなど根強い人気を誇る。今作は「環境と心理」を含むフル・アルバムとなる。

またMETAFIVEは、アルバム発売に先駆け、7月26日に一夜限りの自主ライヴを開催。本日よりオフィシャル先行チケット受付をスタート。彼らにとって2016年12月以来のステージであり、期待が高まる。

【METAFIVE 2nd ALBUM「METAATEM」】
タイトル:METAATEM(読み:メタアーテム)
発売日 2021年8月11日
CD品番・価格:CD:WPCL-13260 / 価格¥3,080(税込)
VINYL品番・価格:WPJL-10136/7(アナログ2枚組)/¥4,950(税込)
予約購入URL:https://metafive.lnk.to/metaatem

【METAFIVE “METALIVE 2021”】
日程:2021年7月26日(月)
会場:KT Zepp Yokohama
開場:17:30-
開演:18:30-
チケット代金(全席指定 / Taxi in / 1drink別):
2F SS席 ¥13,500(オリジナル限定アクリルキーホルダー+B2サイズポスター付)
 *SS席は2階の前2列のスペシャルシート
2F S席 ¥11,000(オリジナル限定アクリルキーホルダー付)
2F A席 ¥7,500
1F S席 ¥11,000(オリジナル限定アクリルキーホルダー付)
1F A席 ¥7,500

・〈オフィシャル先行受付〉 5/17(月)17:00〜5/26(水)23:59
ぴあ オフィシャル先行URL : https://w.pia.jp/t/metafive-y/
・一般発売 6/26(土)
・問合せ:HOTSTUFF PROMOTION 03-7520-9999(平日12:00〜15:00) https://www.red-hot.ne.jp

【「環境と心理」MUSIC VIDEO】
https://youtu.be/A3auu-E3srs

【METAFIVE OFFICIAL SNS】
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「ロゴキーホルダーの色は透明ブルーの予定ですが、変更の可能性があります」

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