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J-Jazz Vol. 3: Deep Modern Jazz from Japan

BBE / ウルトラ・ヴァイブ

小川充   Mar 12,2021 UP Old & New

 1960年代から1980年代半ばにリリースされた日本のジャズ。日本人プレイヤーによるこれらの録音は、現在は一般的に和ジャズとして認知される(広義では海外ミュージシャンの来日時の録音や日本盤オンリーの作品も含む)。こうした和ジャズは1990年代からDJによって発掘されており、2000年代に入るとジャイルス・ピーターソンやU.F.O.、キョウト・ジャズ・マッシヴらが選曲したコンピ・シリーズの『シブヤ・ジャズ・クラシックス』が出たりした。そうしたところから次第に和ジャズが注目されるようになり、2009年には『和ジャズ・ディスク・ガイド』が刊行され、また福居良や板橋文夫などのいわゆるレア盤がいろいろリイシューされるようになった。

 こうした和ジャズのブームが定着した現在だが、最近は日本だけでなくアメリカ、ヨーロッパ、中国などで和ジャズを探すリスナーが増えている(中古盤市場的には中国がいまいちばん勢いがあるそうだ)。そして近年は和モノ全般が海外でもウケていることもあり、その一環として海外レーベルから和ジャズのリイシューやコンピがリリースされている。その筆頭がイギリスの〈BBE〉で、これまでに相澤徹の『Tachibana』、森山威男の『イースト・プランツ』、松風鉱一の『アース・マザー』、寺下誠&ハロルド・ランドの『トポロジー』、佐々木秀人+関根敏行の『ストップ・オーバー』など、マニア垂涎のレア盤を続々とリイシューしてきた。
 これまでにCD化された音源もあるが、〈BBE〉はアナログでリイシューしていて(わざわざ2枚組にするなど音質の向上に努め、また帯をつけるなど装丁も拘っている)、特に『ストップ・オーバー』などオリジナルは10~20万円もの値が付く作品は、その筋ではかなりの話題を集めたのだった。《J-Jazzマスタークラス・シリーズ》と銘打たれたこれらリイシューは、トニー・ヒギンズとマイク・ペンデンという〈BBE〉のスタッフが手掛けており(彼らはかなりの和ジャズのハード・ディガー&コレクターのようだ)、もともと2018年にリリースされた『J-Jazz:ディープ・モダン・ジャズ・フロム・ジャパン1969-1984』というコンピが引き金となっている。このコンピはシリーズ化され、2019年に第2弾がリリースされ、そしてこのたび第3弾が発表された。

 原盤からのライセンスの取得などでなかなかスムーズに作業ができないこともあったようだが、今回は〈ジョニーズ・ディスク〉〈A.S.CAP〉〈レッド・ホライズン〉〈ALM〉など自主レーベルの音源を中心に、第1弾、第2弾からさらに深く踏み込んだ選曲となっている。この中では河野康弘の “ソング・オブ・アイランド”、寺川秀保の “ブラック・ナイル”、古澤良治郎の “バーニング・クラウド”、友寄隆生の “キリサメ”、峰厚介の “モーニング・タイド” あたりがレア音源として知られるところ。ピアニストの河野康弘がヴィブラフォン奏者の菅野正洋をフィーチャーしたモーダルでスピリチュアルな “ソング・オブ・アイランド” が聴けるのは個人的にも嬉しいところだが、こうしたハード・バップやモードなどモダン・ジャズの主流をきちんと押さえたコンピだ。
 寺川秀保の1978年度録音の “ブラック・ナイル” はウェイン・ショーターのカヴァーで、〈ブルー・ノート〉の新主流派ジャズを彼なりに咀嚼した演奏。1970年に録音された峰厚介の “モーニング・タイド” には、菊池雅章のほかにラリー・リドレーやレニー・マックブラウンら海外勢も参加していて、当時の日本ジャズ界と海外との関りが見えて面白い。中島政雄の1979年録音の “キモサベ” にもドナルド・ベイリーが参加しているのだが、古い音源を聴くということはこうした歴史や当時のジャズ界の状況にもフォーカスを当てることでもある。このコンピには “ソング・フォー・ホープ” が収録される高瀬アキは、国内よりもむしろ海外で高く評価され、ベルリンを拠点に活動を続けている。日本のジャズ界の慣習にとらわれることなく、世界に羽ばたいていったひとりだ。

 ひとくちにモダン・ジャズと言ってもさまざまなヴァリエーションがあり、白木秀雄によるジャズ・サンバの “グルーヴィー・サンバ”、中山英二のスパニッシュ・タッチの “カモラー” などラテン音楽とジャズの融合を見せてくれるパターンが多い。特にサンバはじめブラジル音楽とジャズの相性はよく、“グルーヴィー・サンバ” はじめ中村達也の “1/4・サンバ・II”、板倉克行の “ハニー・サンバ” など音源も豊富だ。ハードなジャズ・ロック調の “1/4・サンバ・II”、しっとりと落ち着いたピアノ・トリオの “ハニー・サンバ” とアプローチも正反対で、こうした自由度の高さがジャズの魅力でもあるし、ジャズにしてもブラジル音楽にしてももともと異国の音楽であるが、それを取り入れて結びつけるうまさが日本人ならではのものだろう。
 フュージョン系では向井滋春の “カムロニンバス”、村上寛の “フィーバス”、中村誠一の “ウルフのテーマ” が収録されるが、このあたりは現在の和モノ・ブームにおけるシティ・ポップなどと同じ1970年代後半~1980年代前半の音源で、和モノと地続きで聴くことができるだろう。一方、“キリサメ” の友寄隆生は沖縄出身で、本土のジャズとはまた異なる沖縄のテイストを感じることができる。ジャズは民謡を取り入れることもあるのだが、こうした地域性を感じることができるのもジャズの楽しみのひとつである。
 そして、松風鉱一と古澤良治郎による1975年の中央大学の白門祭でのライヴ録音となる “アコースティック・チキン” は、ジャズ・ロックとフリー・インプロヴィゼイションがスリリングに融合した20分超えの演奏。ポスト・バップ、モード、フュージョン、ジャズ・サンバ、フリーと、ジャズの多様性や振れ幅の広さを映し出したコンピである。

小川充