Home > Regulars > What's in My Playlist > 5 さらばロサンゼルス
4月初旬、久しぶりに羽田からロサンゼルス行きのボーイングに乗った。去年、帰国した時と変わらず、羽田は閑散としていて手荷物検査場も10分掛からず通過できた。しかし手荷物検査場を出てすぐのところでパスポートに挟んでいたはずのフライトチケットが無いことに気付く。物をなくすというのはなんとも不思議な感覚である。数秒前まで大事に持っていたはずのものが跡形もなく消えているのだからちょっと笑ってしまった。搭乗まで時間もあったので再発行してもらいことなきを得たがなんとも幸先の悪い旅のはじまりである。
本人主宰のレーベル〈PLZ Make It Ruins〉から、僕の最近の夜散歩のお供、ユルめなダンスEP。フランク・オーシャン等のアルバムに参加したりプロデューサーとしても名を馳せつつあるが自分の作品も感嘆の完成度。僕はエモいという言葉が本当に嫌いなのですが、これはなかなかエモいかもしれない。決して古くさい感じはしないけど、昔のことに思いを寄せたくなるような、寂しげなノスタルジーを感じる。余談だがVegyn(ヴィーガン)ことJoe Thornalleyの父親はPhill Thornalley (元ザ・キュアー)らしい!
今回の旅の目的は留学先に残してきた荷物の片付けである。ちゃんと自分で書くのは初めてだが、僕はここ3年ほどの間ロサンゼルスに住んでいた(といっても2020年は半分以上日本にいたので実質2年半だが)。去年の7月はまだパンデミック真っ只中で、通っていたカレッジもオンラインに移行したので登校できるようになったら戻ろうと荷物もほとんど置いて帰ってきたのだが、とりあえず日本で腰を据えて頑張ろうという決心がついたので完全帰国を決めた。
高校入学前に親から留学を勧められたときはなかなか勇気が出ず、流されるように日本の高校に入学し、2年生も半分終わるころやっと決心がつき突然ロサンゼルスの高校に編入し、卒業後もカレッジまで行かせてもらったのに途中でやめる中途半端さと天邪鬼な性格を両親と預かってくれていたゴッドマザーに詫びるとともに感謝したい。
テキサス州オースティンのレーベル〈Western Vinyl〉から。去年リリースされたChris Harris, Nicholas Krgovichとの共作、''Philadelphia''も素晴らしいアルバムだったけど、今作も繊細で気持ちの良いがより実験的なアルバム。 ''Philadelphia''で多用されてた笛みたいな音はShabasonの仕業だったのか。今作でもよく笛を吹く。曲によってだいぶ曲調が違く、アンビエント・ポップ的な曲もあれば、打楽器が複雑に重なっていく曲やギターでノイズを出すのもある。1人で真面目に聴いても良いし、暗すぎないので部屋でかけても良さそう。
LAX(ロサンゼルス国際空港)に着くと通常はイミグレーションで1、2時間は待たされるのだが空いていたので、ものの30分で出られた。入国の際のPCR検査や自主隔離の説明、体調の確認などもいっさい無く、入国してすぐにアメリカを感じさせられる。ゴッドマザーと幼馴染である彼女の娘が迎えにきてくれ、久しぶりの再会を喜び「フライトチケットなくしちゃってさ〜笑」などとお喋りしながら家へ向かう。このとき僕は空港のカートにパスポートを置き忘れているのに全く気づかず、アメリカの空はいつ見ても大きいな〜などとうつつを抜かしているのであった。パスポートをなくしたのに気付くのは2週間後のことである。
前々回すでにアルバムのことは書いたのでバンドの説明は省きます。パンデミック中なので無観客ライヴのライブ盤。1曲目“Born in Luton”の冒頭のシーケンスでもうがっちり掴まれる。Youtubeにミニコント付きの映像も上がっています。なぜかYoutubeのほうが音が良いし映像あったほうが上がるのでYoutube推奨。 コントちょっと面白いけどコメントを見るとあんまりウケてないところも良い。
2週間隔離を終え街に出た。ワクチンの接種もはじまっていて徐々に人出も増えてきている。移転した〈Amoeba Music Hollywood〉も人数制限のせいもあるがレコードストアデイでもないのに入店待ちの行列。
以前より敷地面積は狭いがやっぱりデカイ。レコードコーナーが縮小してCD、DVDコーナーと半分ずつくらい。僕の好きだったグローバル・ミュージック・コーナーにいたっては棚四つくらいしかなく残念。
マック・デ・マルコのレーベル、〈Mac's Record Label〉(そのまま)からTex Crickのセカンド・アルバム。 タイムスリップしてきたのかってくらいの、もろ70'sソフトロック。むしろ若いリスナーには新鮮であろう、70年代とはもう半世紀前だし、シティ・ポップのリヴァイヴァルがあるし、ちょっと前Tik Tokでフリートウッド・マックが流行ったりしてたし。力の抜けた歌も心地良いし、シンプルで嫌味のないピュアさがグッとくる良アルバム。
片付けとパスポートの再発行をすませ、パンデミック中に長居する理由もないので東京へ帰る。正直ロサンゼルスという街に飽きていたので未練はないが、少し名残惜しいのはタコス・アル・パストールくらいだ。アル・パストールはスパイスに漬けた豚肉を回転式グリル機でカリカリに焼いてパイナップルと一緒にいただく屋台タコスで僕の大好物。LAの渇いた空気と炭酸飲料とタコスのタッグの破壊力は凄まじい、本場メキシコにもぜひ行ってみたい。残念ながら東京には美味しいアル・パストールを出す店は無い。あの味を求めていつかまたロサンゼルスに行かなければならないだろう。