「UR」と一致するもの

Arthur Russell - Picture Of Bunny Rabbit - ele-king

AU-1023-1

Speaker Music - ele-king

 2020年の『Black Nationalist Sonic Weaponry』で鮮烈なインパクトを与えたUSのプロデューサー、スピーカー・ミュージックことディフォレスト・ブラウン・ジュニア。その新作情報がアナウンスされている。「テクノを黒人に取り戻せ(Make Techno Black Again)」を掲げて活動している彼はライターでもあり、昨年初の著作『Assembling A Black Counter Culture』を刊行しているが、『Techxodus』と題されたスピーカー・ミュージック名義の新作はその本のエピローグであり、ドレクシア神話の延長でもあるという。アートワークを手がけるのはなんとアブカディム・ハック。ダブもフリー・ジャズも呑みこんだ新曲 “Jes Grew”(イシュメール・リードの代表作『マンボ・ジャンボ』に登場する「オーディオ・ウイルス」の名)が現在公開中だ。アルバム『Techxodus』はおなじみの〈Planet Mu〉から、9月8日にリリース。

https://speakermusic.bandcamp.com/album/techxodus

King Krule - ele-king

 親になることを主題とするシンガーソングライターの作品は多い。いや音楽に限らず小説にしろ映画にしろ、それが人生における大きな変化の契機であり続けている以上、テーマになるのは自然なことだ。しかし……、キング・クルールの4作目『Space Heavy』ほどメランコリックに父になることを表現したものを、僕はすぐに思いつかない。
 前作『Man Alive!』のリリースの際に自分が書いた文章(https://www.ele-king.net/columns/007475/)を読み返してみると、すでに僕はアーチー・マーシャルが父になったときの心理状態を心配している。余計なお世話かもしれないが、しかし、『Man Alive!』が現代の荒廃にドライで攻撃的な音を援用しながら対峙した作品だったことを踏まえた上で、彼の混乱は親になることでかえって深まるのではないかと想像したのである。個人的にもちょうど、友人や知人に子どもができて、彼らの将来への不安を聞いていたことも関係している。どうやら未来は明るいようには思えない、だとしたら、この子に何を伝えてやれるのか?

 マーシャルが父親になってからすぐにパンデミックがやって来て、『Space Heavy』はその時期の内省的な日々から生まれた。そういう意味ではここ数年多く作られたロックダウン・アルバムのひとつではあるのだが、マーシャルの場合はこれまで活動してきた南ロンドンと家族と暮らすリヴァプールを行き来する過程に強く影響されたとのことで、その地に足のつかない感覚を探ったようなところがある。サウンド的には相変わらず雑食的で、ブルージーな冒頭の “Filmsier” のイントロから、ポスト・パンクというかノーウェーヴ的にも聞こえる荒々しさを持った “Pink Shell”……と、序盤はキング・クルールを聴いてきたひとの意表を大きく突くものではないだろう。だが、続く “Seaforth” で少し違うぞ、と思わせる。これまで以上にメロディアスなギターが鳴るなかで、マーシャルが優しい歌声を聴かせる。なんてことのない弾き語りのギター・チューンのように……おそらく『Space Heavy』はこれまででもっともソングライティングにフォーカスしたアルバムで、これまでの投げやりにも感じられた彼のヴォーカルもかなり変化している。4歳の娘のマリナの名前がクレジットされているこの曲で、そして、マーシャルは父親として語りかけるように歌う。「僕たちは僕たちの間にある暗い日々を共有しているんだ」。
 それから “That Is My Life, That Is Yours”、“Tortoise Of Independency” とダウナーなギター・ナンバーが2曲。“Empty Stomach Space Cadet” ではイグナシオ・サルヴァドーレスのサックスとともにキング・クルールらしいジャジーな感覚がムードを高めつつ、断片的なストリングスが抽象的な響きを残すアンビエントの “Flimsy” 辺りから、アルバムはより曖昧な領域に踏みこんでいく。ダークで陰鬱なジャズ・ロック “Hamburgerphobia”、マーシャルの気力のないヴォーカルに対して存外に爽やかなギター・ロック・チューンにも聞こえる “From The Swamp”、気鋭のソウル・シンガーであるラヴェーナが参加するアンビエント・ポップ “Seagirl”。気分が定まらない様をそのまま捉えているような危うさがここにはあるし、世界に対する混乱も家族に対する愛情も明瞭な形を見つけられないまま過ぎ去っていく。たしかに存在するのは、解決することのない憂鬱だ。

 前作には社会に対する苛立ちや怒りがはっきりと入っていた。『Space Heavy』はそれを通過したあとで、あらたに家族を持つということとパンデミックという予想を超えた変化が自分の人生にやってきた心象をぼんやりと眺めているようなアルバムだ。湧き上がってくる娘に対する愛情と世界が壊れているという認識との間のどこかを彷徨い、自分の場所を見つけられない。これはいま、多くのひとが共有しうる感覚ではないだろうか。その言葉では捉えがたいタッチを追い求めるように、ギターは乱暴に鳴らされたり繊細に爪弾かれたりしながら、空間に溶けて消えていくようにはかない響きを残していく。
 恐るべき子どもとしてアイコニックな佇まいでシーンに現れた頃を思えば、マーシャルは自身の人生を作品にダイレクトに注入するタイプだったということだろうし、それが彼の作品により複雑なニュアンスを与えることになった。人びとが忘れ去ったものとしてのビートニクに憧憬していた少年は――それはどこか厭世的な逃避でもあっただろう――若い父親になり、自分の小ささになおも震えている。そしてアルバムは、アブストラクトな美を頼りなく求めるような “Wednesday Overcast” で「多くのことが変わって、いまは多くのことが僕に意味を持っている」との言葉で締めくくられる。不安と憂鬱に苛まれながらも、変化することをどうにか受容するような一枚だ。

Black Country, New Road - ele-king

 4月の来日公演からそろそろ3か月が経とうとしている。楽しいはずなのにそれだけではない、あのえもいわれぬフィーリングの正体はなんだったのだろう。徐々に記憶が薄れていくなか、彼ら初のライヴ盤『Live at Bush Hall』を何度も聴き返しながら、あの日の感慨の答えを探りつづけている。冒頭 “Up Song” で友だち同士であることを強調するバンド BCNR が、主要メンバーの脱退を経て送り出した音楽は、いったいなにを暗示していたのか──
 昨年12月のパフォーマンスを収録したこのライヴ盤が現時点での彼らの完成型であることは、O-EAST でのアレンジやセットリストが本作とおおむねおなじだったことからもうかがえる(当日初公開された新曲を除く)。すでに持っている手札を放棄し、新たにライヴで練り上げていった楽曲を収める『Live at Bush Hall』は、けして穏やかではなかっただろうここ1年の彼らの、試行錯誤の結晶だ。

 解散せずおなじグループ名を引き継いだのだから、当然これまでの BCNR を特徴づけていた要素もある程度は継承されている。通常の4ピース・バンドにはない多彩さをもたらすジョージア・エラリーのヴァイオリンに、ルイス・エヴァンズのフルート&サックス。“Turbines/Pigs” や “Dancers” の終盤で聴かれるミニマル風の短い反復。あるいは “Laughing Song” で顔をのぞかせるディストーション、もしくは静と動の対比。
 全体としてはしかし、だいぶ作風が変わった。全曲ヴォーカル入りなのが大きい。“The Boy” や “I Won't Always Love You” のように、ほとんどの曲が親しみやすい主旋律を搭載しているのはかつてない変化だ。どこか不穏でダークな気配が漂っていた1枚目とも、彼らなりにクラシック音楽を消化した2枚目ともまるで異なる世界がここに展開されている。端的にいえば、かなりキャッチーになった。
 もっとも多くマイクを握るのはタイラー・ハイド(ベース)。彼女がシンガーとしての技術をしっかり身につけていたことに驚く。その声の震わせ方に脱退したアイザック・ウッドの影をみとめてしまうのはさすがにうがちすぎかもしれないが、来日公演時みごと日本語でMCをこなしてみせたメイ・カーショウ(キーボード)も、男性で唯一ヴォーカルを務めるエヴァンズもやむをえず歌っている感は皆無で、あらためてメンバーたちの底知れぬマルチっぷりを確認させられる。BCNR はひとりひとりがフロントマンたりえる技術や才能を持った集団なのだ。

 重要なのは、歌ごころ満載なはずの本作が、逆説的に、ヴォーカリストの地位を下げているところだろう。歌い手が男女3人に分散されたことは、バンドの声をひとりの人格に代表させないというアティテュードのあらわれにほかならない(O-EAST ではさらにエラリーがヴォーカルを務める新曲も披露されている)。かねてより彼らはだれかひとりのバンドではないことを主張してきたが、にもかかわらずウッドの脱退がニュースとして価値を持ったのは、歌詞を書きメインで歌う彼が中心として機能する(もしくはそう見える)側面が少なからずバンドに具わっていたからだ(でなければ大して話題になるはずがない)。今回のライヴ盤で BCNR は、ほんとうの意味で中心を持たないバンドになったのだと思う。同時期に浮上してきたスクイッドにもブラック・ミディにもない BCNR の魅力のひとつは、(ホモソーシャルではないという点もさることながら)このフロントマンの欠如にある。かつてイーノはオーケストラのピラミッド構造に社会の縮図を見出していたけれど(紙エレ19号)、それにならえば全員が同列で対等の BCNR はまさに民主主義の実践者だ。

 最良の瞬間は冒頭 “Up Song” に含まれている。「BCNR は永遠の友だち」という彼らの本質を要約する声明が叫ばれた直後──。静かに、ドシラソとシラソミが異なる楽器で反復されていく。カーショウのキーボード、マークのギター、エヴァンズのサックスはおなじ8分音符を奏でているにもかかわらず、絶妙にズレつづけ、けっしてぴったり重なることはない。「私はバラバラになり/半分になってしまった」と、ハイドがことばを添える。すれ違い、断片化が表現された途端、しかし今度はキーボード、ギター、サックスがおなじ河口に流れこみ、みごとユニゾンを成立させるのだ。「断片化されていること」と「一緒であること」がともに、友情を宣言するこの1曲で表現されている。
 多様性の時代、ぼくたちは互いに異なっていることを美化し、称揚する。分断の時代、ぼくたちは信じるにたる共通の物語が欠けていることを強調し、悲歎にくれる。それ自体は必要なプロセスなのかもしれない。でもさらに一歩進んで、「あのひとも “おなじ” なんじゃないか」と想像してみること。
 BCNR はとくに社会的なメッセージを発するバンドというわけではないけれど、自分たちのことを描いたとも解釈できるメタ的なこの曲で、時代の大いなる転換期を生きるぼくたちに小さくはない示唆を与えてくれている。互いにばらばらであると同時におなじ人間でもあること。それが彼らのいう「友だち」なのかもしれない。

Anthony Naples - ele-king

 アルバムごとにそのサウンドの表情を変え、より表現力を豊かに、そして幅を広げてきているアンソニー・ネイプルスですが、新作『Orbs』では、前作『Chameleon』(2021年)の方向性も踏襲しつつ、アンビエント・テクノ〜ダウンテンポの傑作アルバムを仕上げてきました。

 2010年代の幕開けとともにニューヨークのアンダーグラウンドではじまった彼のキャリアと言えば、そのDJプレイも含めてローファイなハウス・サウンドの要といった印象で、〈Mister Saturday Night〉〈The Trilogy Tapes〉、もしくは自身の〈Proibito〉でのそうしたハウス路線のシングル群で注目を集め、2018年にはフォー・テットの主宰レーベル〈TEXT〉からファースト・アルバム『Body Pill』をリリースし、その評価を確かなものにしたというのが初期のイメージです。
 本作へと通じる転機と言えそうなのが、その後にフランスの〈Good Mornign Tapes〉と自身の〈ANS〉からリリースしたアルバム『Take Me With You』(2018年)。すでに『Body Pill』でも片鱗を見せていたアンビエント・テクノ〜ダウンテンポ方面へのアプローチをさらに深めたアルバム・サイズの作品で、それ以前のシングルとはまた違った側面をみせはじめました。続く2019年のアルバム『Fog FM』も、いやこれも傑作でありまして、初期のハウス路線とその後のリスニング路線のバランスの良い配合のアルバムで、「ダンスもの」のアルバムとして非常にクオリティの高い作品を出してきたなという印象でした。このあたりでサウンド的にも初期のローファイな音質から、クリアでカラフルなサウンド・イメージへの変化も感じるられるものでした。
 そしてコロナ禍を挟んでリリースした2021年の『Chameleon』。多くのDJ出身のクリエイターたちがロックダウンな凡庸なアンビエントに埋没してしまった印象にあったあの時期に、キャリアのなかでも初めてとなるドラムやギター、生楽器のサウンドを取り入れたある種のポスト・ロック的な手法でダウンテンポ・アルバムを作り上げ、その色鮮やかな色彩のサウンドも相まってシーンに鮮烈な印象を与えました。同時期には「Club Pez」、2022年にはドイツの老舗重要ハウス・レーベル〈Running Back〉からもシングル「Swerve」をリリースし、こちらでは相変わらず高品質のハウス・トラックもリリースしています。
 こうした自身の活動とも併走しながら、〈Proibito〉を閉じた後に写真家でDJでもあるジェニー・スラッタリーと共同で設立した〈Incienso〉の運営においても、たびたびこの欄で作品を紹介していますが、ゴリゴリのクラブ・トラックから、DJパイソンを世に送り出したり、朋友フエアコ・Sのアルバムなどリスニングに主眼を置いた作品まで幅広くリリース、シーンの枠を広げるような多彩かつエポック・メイキングな作品をリリースし続けています。

 で、前段が長くなりましたがこうした動きを俯瞰し、これを補助線とすると、全く納得の音楽性を獲得したとも言えるのが本作ではないでしょうか。ボーズ・オブ・カナダを彷彿とさせるチルアウトなブレイクビーツ・ダウンテンポ “Moto Verse” でスタートするわけですが、こうしたダウンテンポ感覚や、例えば “Orb Two” “Gem” “Tito” などでつま弾かれるギターとエレクトロニクスの融合を果たしたサウンドは前作『Chameleon』での成果を感じさせる音楽性です。ただし、クリアな解像度の『Chameleon』に比べて、全体的な音質はわりと今回はローファイですね。そしてわりとフィーリング的に、「ニューエイジ〜バリアリック過ぎない」というのも本作の絶妙なムードを決定している要素で、そのあたりはグローバル・コミュニケーションなど1994年あたりのアンビエント・テクノを参照したようなメランコリックなムードを携えた『Take Me With You』を踏襲する感覚ではないでしょうか。
 またアルバムの中盤を締めるマイルドでスローなイーヴン・キック・トラック “Ackee”、“Scars”、そしてアルバムのハイライトとも言える “Strobe” あたりは、絶妙なダブ・ミックス具合も含めて、初期のローファイなハウス感を思い出したかのようなトラックでもあります。アルバム全体に対して、ここにはめ込まれた抑制されたハウス・グルーヴの見事な流れにとにかくハッとさせられるわけです。このセンスの良さ。これまでの作品、そして〈Incienso〉の作品群にも言えることですが、ある種のリスニング向けの作品で実験性の獲得や音楽性の拡張をしながらも、どこかダンス・ミュージック的な快楽性があるというのは彼の重要な立ち位置ではないでしょうか。こうした流れにDJ的な感覚が働いているのはもちろん間違いないでしょう。穏やかなサウンドながら昨年のフエアコ・S『Plonk』と同様に、リスニング・テクノを新たな地平線へと押し出すそんな確かな力強い意志を、その高いクオリティから感じさせる作品です。

Autechre - ele-king

 去る6月20日、突如オウテカによる最新ミックス音源が公開されている。彼らのルーツであるエレクトロやヒップホップからノイズ、アンビエントまでを横断する2時間強のこの旅は、フランスはレンヌのネット・レーベル、〈Neuvoids〉(neuvoids.bandcamp.com)のためにショーン・ブースがこしらえたものだそうだ。仙台の a0n0、ヒューマノイドピンチ、ESG、DJスティングレイオト・ヒアックス、〈CPU〉からも出している Cygnus、KMRU、故ピタ、盟友ラッセル・ハズウェル、BJ・ニルセンといったアンダーグラウンドな面々に交じって、ラッパーのウィリー・ザ・キッドや大御所ボブ・ジェイムズ、まさかのストラングラーズまでがプレイされている。下記サウンドクラウドから聴けます。

Ed Motta - ele-king

 80年代から活躍するシンガー・ソングライター、エジ・モッタはブラジリアンAOR~ジャズのヴェテランだ。4ヒーローのマーク・マックとコラボしたり、クラブ・ミュージックとも接点のあるアーティストだが、ここ10年のあいだも、タイトルどおりの内容の『AOR』(13)や、AORとジャズの両方を試みた『Perpetual Gateways』(16)など話題作を送り出しつづけてきた。前作から5年のときを経て放たれる新作『Behind The Tea Chronicles』は、なんともメロウでグルーヴィンな1枚に仕上がっている模様。発売は10月20日。先行シングル “Safely Far” が公開中です。

Meitei - ele-king

 日本文化をテーマにする広島のプロデューサー、冥丁の国内ツアーが開催されることになった。7月21日にリイシューされるファースト・アルバム『怪談』(オリジナルは2018年)をベースにしたライヴ・セットとのことで、これは貴重な機会だ。東京、豊田、和歌山、熊本、福岡、うきは、京都の7都市を巡回。会場もユニークなところが多そうで、土地全体、空間全体で音楽を楽しめるかもしれない。詳しくは下記より。

Nondi_ - ele-king

 ジューン・タイソン。彼女はいまの私の母と同じくらいの年齢だが、私が母にジューンの話をしたとしても、きっと誰のことなのかわからないだろう。ジューンはいわば盗賊団のなかの女神で、サン・ラーのもっとも有名な曲の数々を歌った偉大な声だった。また、彼女は私が初めて出会った、実験的な音楽に取り組む黒人女性でもある。

 2023年の現在、さて、どれだけの黒人女性が冒険的な音楽活動を成し遂げているのか、数えるのは難しい。ダンスやR&B、ラップなど主流の音楽では、慣習の外に踏み出す人はほとんどおらず、いま、私の頭に浮かぶのはわずか3人だ。NkisiMoor Mother、そしてLazara Rosell Albear。みんなそれぞれ素晴らしい、が、金メダルに値するのは間違いなくNondiだろう。 彼女の『Flood City Trax』はすでに、ジャンル分けなど許さないエクレクティックな音世界を持っている。

 アルバムには、ジュークにインスパイアされたという彼女の言葉通りハードコアなトラック、“01-25-2022 ” がある。この曲は刺激的な故障であり、説明するのが困難なほど背徳的だ。女王の鞭よりも鋭い殺人的な魅惑をもって、クラブでリピートされもしたら胴体は疲労困憊してもなお回旋し続けるだろう。しかし、それは1曲だけ。このアルバムの真のリズムは、1曲目の "Floaty Cloud "からはじまる。ヴェイパーなメロディ、DIYベッドルーム・プロダクション、そして決して途絶えることのないビート。これはフロア専用のダンス・ミュージックではないし、そうなるように作られたものでもない。Nondiが駄菓子屋の子供のように自分の正直な気持ちに従ったことは明らかで、私たちは、彼女のこの知恵によってますます祝福される。夢見心地は早い段階からはじまり、最後のトラックまで止まらない。が、ジューク・ミュージックが安定を保つための地面に杭を打っているとしたら、彼女のオーラル・ヴィジョンの焦点はそこではないのだ。

 ジューン・タイソンのことを考えると、彼女の声は同時にラーの声でもあった。ジムクロウ時代を生き抜いた彼女らの世代は、貧しい隔離されたコミュニティで育ち、白人の差別主義者が所有する農園(プランテーション)の近くに住むか時給自足の暮らしをしていた。私はジューン・タイソンの美しさに、斧を持ったカントリー・ウェアの女性が佇むこの反抗的なジャケットと同じ感覚を覚える。他方でそれは、『カラーパープル』の記憶をよみがえらせもする。あの、貧しくても反抗的な姿勢を。これこそFAFO*ってヤツだ。

 また、このジャケットは、多くの黒人がよく知っている状況を明確に示してもいる。何百万人もの人びとの命を剥奪した1970年代以前の南部の生活を思い出しながら、この女性は斧を持って復讐に燃えているのだ。

 そして、新しいシンセサイザーの宝庫を切り開く準備ができている。ジャケットに描かれた小作人のイメージと、各トラックから発せられる鮮やかな色のコントラストは、Nondiのトラックスとその意図の奥に染み込んだフューチャリズムの深さを示している。これは、黒人としての生活の重圧に苦しむ魂を癒す温かいサウンドだ。Nondiは、私の飢えた心に語りかけてくる。K-POPやフェイクDJに疲れ、私はひとつの様式などには留まらないミュージシャンを渇望している。ようこそ、Nondi。


*「FAFO」はもともとブラック・イングリッシュ。2022年に米ポップ・カルチャーの文脈でも流行り、同年の流行語大賞に選ばれた。「火遊びをすると火傷するかもしれない」、あるいは「もう火傷してしまった」ということを伝える生意気な表現だったが、いっぽうでは「斬新な挑戦に遭遇したときの」仲間の「気概」を表現しているとし、Urban Dictionaryではこのフレーズに「自信の表明」の意味も含めている。


Nondi_ / Flood City Trax / Planet Mu

June Tyson. About my mother`s age now but if I mentioned June to her, I’m sure she’d have no idea who she was. But June was a goddess among thieves, she was the grand voice of many of Sun Ra`s most famous songs. She was also the first Black woman I ever encountered doing experimental music. And to be sure even in 2023, it is damn hard to count how many Black women embrace eclectic music outright. Sure dance, Rnb, rap etc, they dominate but outside of convention few tread. I can only count 3 off hand. Nkisi, Moor Mother, and Lazara Rosell Albear. All amazing in their own right but Nondi is definitely going for the gold medal. With “Flood City Trax”, she already has an eclectic sound world that mentions genres and promptly ignores them. By her own words, she was inspired by Juke and indeed there is a hardcore Juke track, “01-25-2022”. To say that the track smacks fails to illustrate how vicious it is. A killer headturner sharper than lashes from a dominatrix. If on repeat at a club, torsos would gyrate into exhaustion. But that is only one track. The true rhythm of the album starts from 1st track “Floaty Cloud Dream”. Vapor melodies, DIY bedroom production, and a beat that never truly snaps. This is not foot to the floor dance music nor was it made to be. It’s clear that Nondi follows her voice like a kid in a candy shop. We are all the more blessed by this wisdom. The dreaminess starts early and doesn’t stop til the very last track. While Juke music is a stake in the ground for stability, it isn’t the focus of her aural visions.

In thinking of June Tyson, she was the voice of Ra just as much as he himself was. Their generation straight out of the Jim Crow era, grew up in poor, segregated communities, DIY living near or on plantations owned by white racists. When I think of the beauty of June Tyson, I get the same feeling with the defiant cover of the woman in country clothes carrying an axe. It immediately conjures memories for me of the Color Purple. Poor but defiant. A real FAFO attitude.

The cover is a clear nod to conditions that many Black people know all too well. Recalling pre1970`s southern life that greatly disenfranchised the lives of millions, the woman is instead vengeful holding an axe ready to defend my people and cut open a treasure trove of new synth sounds too. The extreme contrast between the share cropper imagery from the cover and the vibrant colors emanating each track shows the depth of futurism seeping deep in the trax and intention of Nondi. Warm sounds that soothe souls suffering from the weight of Black life. Nondi is a musician that speaks to my starving heart. With K-pop and fake dj fatigue, I am famished for a musician that doesn’t give a fuck about clear genres. Welcome Nondi.

Aphex Twin - ele-king

 諸君、歓喜のときだ。エイフェックス・ツインが帰ってくる。
 6月からヨーロッパ各地のフェスに出演しひさびさに存在感を高めていた彼だけれど、会場には謎のインスタレーションが出現していたとかで、さまざまな憶測が飛び交っていた。昨日はここ日本、渋谷のレコード店にロゴをあしらったQRコードが登場したばかり(アクセスするとARが展開され、アンビエントが流れだす)。そういえば先日も、彼の音楽にかんする本の刊行が報じられたり、突如アルカがリチャード・D・ジェイムズとの2ショット写真を公開するなんてサプライズもあった。急に増える話題……ファンならよくご存じだろう、これはなにかのサインである。
 答えあわせ。7月28日にEP「Blackbox Life Recorder 21f / In a Room7 F760」がリリースされる。フォーマットはCD、LP、デジタル/ストリーミングの3形態。現時点での最新作は(ライヴ音源を除けば)2018年の「Collapse EP」だから、5年ぶりの新作だ。問答無用、公開された新曲 “Blackbox Life Recorder 21f” を聴きながら発売日にそなえるべし。

エイフェックス・ツイン
『Blackbox Life Recorder 21f / In a Room7 F760』
5年ぶりとなる最新作を突如発表!
高音質UHQCD仕様/特殊パッケージの限定盤や
Tシャツ・セット、各種特典も一挙公開&予約受付開始!

エイフェックス・ツインによる待望の最新作『Blackbox Life Recorder 21f / In a Room7 F760』が7月28日にリリース決定! 5年ぶりとなる新曲「Blackbox Life Recorder 21f」が合わせて解禁された。

Aphex Twin - Blackbox Life Recorder 21f
https://youtu.be/mEkZbWYUego

6月9日にコペンハーゲンの音楽フェスティバル〈Syd For Solen〉に出演したのを皮切りに、ストックホルムの〈Rosendal Garden Party〉、オランダの〈Best Kept Secret〉、バルセロナの〈Sonar〉で最新のライブセットを披露し、話題沸騰中のエイフェックス・ツイン。今後もイタリアの〈Castello Scaligero〉、ベルギーの〈Dour Festival〉、ロンドンの〈Field Day〉、ポルトガルの〈Kalorama Festival〉、ブリストルの〈Forwards Festival〉でのヘッドライナー出演が予定されている。

新作発表に先立って、各フェス会場では謎めいたインスタレーションが登場し、Redditなどの掲示板サイト上でファンが様々な妄想を繰り広げていた。そして現在では全世界のレコードショップにロゴが隠されたポスターが貼り出され、QRコードをカメラで読み取ることでエイフェックス・ツインの拡張現実世界に入り込むことができる。

エイフェックス・ツイン最新作『Blackbox Life Recorder 21f / In a Room7 F760』は、7月28日にCD、LP、デジタル/ストリーミング配信でリリース! 高音質UHQCD仕様(全てのCDプレーヤーで再生可能)の国内盤CDは、312mm×312mmサイズの特殊パッケージとなる限定盤と通常盤、LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、Beatink.com限定盤(クリア・ヴァイナル)が発売される。国内盤CDと日本語帯付き仕様のLPには解説書を封入。また国内盤CD、Beatink.com限定盤LP、通常盤LPは、数量限定のTシャツ付きセットの発売も決定!

なおタワーレコードでは新作のロゴ缶バッジ2種セット、HMVでは、ツアーポスターのロゴ・マグネット、diskunionでは、ツアーポスター・デザインのアートカード、amazonでは、新作のロゴ・マグネット、Beatink.comでは新作のロゴ・ステッカー2種セット、その他の対象店舗では、ジャケットデザインのステッカーを購入者に先着でプレゼント。


TOWER RECORDS
ロゴ缶バッジ2種セット


HMV
ロゴ・マグネット


diskunion
アートカード


amazon
ロゴ・マグネット


Beatink.com
ロゴ・ステッカー2種セット


その他の対象店舗
ジャケ・ステッカー

label: Warp Records
artist: APHEX TWIN
title: Blackbox Life Recorder 21f / in a room7 F760 (ブラックボックス・ライフ・レコーダー 21f / イン・ア・ルーム7 F760)
release: 2023.7.28 FRI ON SALE

Beatink.com
Tower Records
HMV
diskunion
Digital

Tracklist:
1. Blackbox Life Recorder 21f
2. zin2 test5
3. In a Room7 F760
4. Blackbox Life Recorder 21f [Parallax Mix]

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