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Nav Katze - ele-king

 なんと、今年でメジャー・デビュー30周年だという。長らく活動休止状態にあるナーヴ・カッツェ、1984年に山口美和子、飯村直子、古舘詩乃により結成されたこの稀有な日本のバンドの全作品が配信開始、ストリーミングでも解禁されることになった。
 エイフェックス・ツイン、ウルトラマリン、ブラック・ドッグ、グローバル・コミュニケイション、オウテカ、シーフィール、サン・エレクトリック、ジェントル・ピープル、マイク・パラディナス……UKテクノの錚々たる面々とリアルタイムでリンクすることのできた彼女たちの音楽を、ひさしぶりのひとも、初めてのひとも、いま聴こう。発掘音源もあるそうです。

女性ロック・ユニットのオリジネーターともいえるNav Katze(ナーヴ・カッツェ)の全作品が4月21日(水)から、iTunes Store、レコチョクなど主要配信サイト、またLINE MUSIC、Apple Music、Spotifyなど定額制ストリーミングサービスにて配信が開始された。

SWITCHレーベルとビクターエンタテインメントに残した全音源に今回始めて発掘されたライブ音源やアウトテイクスなどのボーナス・トラック音源を加え、Nav Katzeのプロデューサー・エンジニアである杉山勇司がリマスタリングを施して配信される。

Nav Katzeは、山口美和子(ベース・ボーカル)、飯村直子(ギター・ボーカル)、 古舘詩乃(ドラム)の3人で結成され、1986年にSWITCHレーベルからミニ・アルバム(12インチシングル)『NAV KATZE』でデビューした。その後、1991年4月21日にビクターエンタテインメントからアルバム『歓喜』でメジャー・デビューし、以降、1997年に活動休止するまで、シングル3枚、アルバム7枚、リミックス・アルバム2枚の作品を残している。

彼女たちの音楽性は、英国のニューウェーブの影響を受けつつも自由にそのスタイルを変化させ、1994年の『OUT』以降テクノ・アンビエント(エレクトロニカ)の要素も取り入れ、後の先鋭的なロック・バンドが志向するボーダーレスな多様性をいち早く実現していたと言える。

1994年と1997年にはリミックス・アルバム『Never Mind The Distortion』『Never Mind The Distortion II』をリリースし、エイフェックス・ツイン、ジェントル・ピープル、オウテカなどのテクノ/エレクトロニカのリミキサーと共に自らの作品を再構築している。

彼女たちの作品には、個性的なミュージシャンが多数参加している。SWITCHレーベル時代の作品ではプロデューサーに岡田徹(ムーンライダーズ)を迎え、窪田晴男(パール兄弟)、福原まり。ビクターに移籍してからはASA-CHANG、楠均(Qujila、KIRINJI)、遊佐未森、寺谷誠一(URBAN DANCE)、LUNA SEA、藤井麻輝、遠藤遼一(ソフトバレエ)、フィル・マンザネラ、アンディ・マッケイ(ロキシー・ミュージック)、小林“Mimi”泉美など、正にジャンルを超えた多彩なミュージシャン達と共演している。

今年、Nav Katzeはメジャー・デビュー30周年を迎える。2004年に発売された「サウンド&レコーディング・マガジン」2月号付録CDに参加して以来活動を休止しているが、ファン及び関係者の間では彼女たちの活動再開を望む気運が高まっている。

[配信情報]
iTunes Store、レコチョク他、各配信サイト
またLINE MUSIC、Apple Music、Spotifyなど定額制ストリーミングサービスにて4月21日(水)より一斉配信開始。

https://jvcmusic.lnk.to/NavKatze

[各作品について](オリジナル発売日)

① Nav Katze (1986/12/5発売)
SWITCHレーベルからリリースされたデビュー・ミニアルバム。岡田徹プロデュース。福原まりがピアノで参加。
(収録曲)
(1)黒い瞳
(2)病んでるオレンジ
(3)駆け落ち
(4)パヴィリオン

② 夕なぎ (1987/8/21発売)
アルバム『Oyzac』に先行して発売された岡田徹プロデュースのシングル。「夕なぎ」のアレンジで窪田晴男が参加。
(収録曲)
(1)夕なぎ
(2)闇と遊ばないで

③ OyZaC+1 (1987/9/21発売)
シングル『夕なぎ』が収録された岡田徹プロデュースによる初のフルアルバム。ボーナス・トラックとして「金色のクリスマス」収録(1990年2月21日発売 オムニバス・アルバム『ADVENTURES in “Turn To The Pop”』収録)。
(収録曲)
(1)御七夜の夢
(2)夕なぎ
(3)ゆりかご
(4)入浴
(5)愛しあう夜
(6)水のまねき
(7)銀の羽の戦士
(8)螺旋階段
(9)赤い真夏
(10)闇と遊ばないで
【ボーナス・トラック】
(11)金色のクリスマス

④ 歓喜+4 (1991/4/21発売)
SWITCHレーベルからビクターへ移籍したメジャー・デビュー盤。透明かつ繊細なヴォーカル&ハーモニーと鮮烈なギター・サウンドに溢れる意欲作。ボーナス・トラックとして4曲のライブ・バージョンとデモ・トラック収録。
(収録曲)
(1)星のパレード
(2)こわれた世界
(3)瞳は D a i s y
(4)彼 方
(5)椅 子
(6)闇と遊ばないで
(7)P u r e D a y s
(8)V o i c e s - 声 -
(9)太陽の思い出
【ボーナス・トラック】
(10)歓喜SE(1990.12.20/原宿クエストホール)
(11)太陽の思い出(Live 1991.5.10/京都ミューズ)
(12)カーニバル(Live 1990.03.13/渋谷クラブクアトロ)
(13)椅子(デモ)

⑤ 新月 (セレクション) (1991/11/21発売)
  前作『歓喜』の作風を受け継ぎながら、アレンジ面での自由度が増し、民族楽器とともに打ち込みの手法も取り入れた作品。ボーナス・トラックとして3曲のライブ・バージョンを収録。
(収録曲)
(1)Green Eye
(2)ひとりぼっちの空
(3)プリティ・リトル・ゼラニウム
(4)虹のゆりかご
(5)ビルの中で遊んでたら日が暮れなかった
(6)真 夏
(7)草の記憶
(8)七つの夜,七つの夢
(9)海の百合
(10)水の中の月
【ボーナス・トラック】
(11)病んでるオレンジ(アコースティックバージョン)
(Live 1991.5.10/京都Muse Hall)
(12)彼方(Live1991.6.2/香林坊109)
(13)こわれた世界(Live 1991.6.2/香林坊109)
※CD収録曲「遙かなるCross」は配信不可につき未収録

⑥ Frozen Flower (1992/7/21発売)
少年ジャンプに連載されていた「電影少女」OVA挿入歌「メッセージ」「Frozen Flower」が収録されたシングル
(収録曲)
(1)Frozen Flower
(2)メッセージ
(3)メッセージ (インストルメンタル)
(4)Frozen Flower(オリジナル・カラオケ)

⑦ The Last Rose in Summer+3 (1992/9/23発売)
新たなるNav Katzeを感じさせるメジャー・サードアルバム。アコースティックサウンドとエレキサウンドが融合した彼女たちの集大成とも言える作品。ASA-CHANG、楠均、遊佐未森、寺谷誠一、福原まりが参加。3曲のライブ・ヴァージョン、デモ収録。
(収録曲)
(1)海
(2)Frozen Flower
(3)マリリン
(4)不機嫌
(5)アルカディア
(6)子供の名前
(7)光の輪
(8)きらきら
(9)蒼い闇
(10)名残りの薔薇
【ボーナス・トラック】
(11)入浴(ピアノバージョン)(Live 1990.12.20/原宿クエストホール)
(12)水のまねき(ピアノバージョン)(Live 1990.12.20/原宿クエストホール)
(13)光の輪(デモ)

⑧ OUT+2 (1994/3/24発売)
アルバム『うわのそら』と同時に制作され先行発表されたミニ・アルバム。LUNA SEAや藤井麻輝(ソフトバレエ)らが参加。フェミニンな繊細さと過激な音楽性を合わせ持つ作品。「DANCE 2 NOISE」に収録された2曲をボーナス・トラック収録。
(収録曲)
(1)CRAZY DREAM
(2)CRUSTY Song
(3)アラビアの夜
(4)Topaz
(5)Velvet
【ボーナス・トラック】
(6)無邪気な絆 (featuring Maki's Noises)
(7)TAKE ME HOME COUNTRY ROADS

⑨ うわのそら+4 (1994/5/21発売)
ロンドンでレコーディングおよびミックスを行う。Matrix Studioではロキシー・ミュージックのフィル・マンザネラとアンディ・マッケイ、小林“Mimi”泉美を迎え、日本ではソフトバレエの遠藤遼一、LUNA SEAのINORANなどがレコーディングに参加。ゲスト・プレイヤー達の個性とNav Katzeが紡ぐ、新たな世界が表現された秀作。未発表曲「Hundred Worlds」他、1989年渋谷クラブクアトロにて収録された
計4曲のボーナス・トラック収録。
(収録曲)
(1)TV惑星
(2)うわのそら -Nobody Home-
(3)Cherry
(4)Glitter Love
(5)More than a feeling
(6)Ziggy
(7)Wild Horse
(8)まばたき-blinking-
(9)Polyester
(10)Spy
(11)Never Not
(12)Change
【ボーナス・トラック】
(13)Hundred Worlds
(14)入浴(オリジナルバージョン) (Live 1989.05.31/渋谷クラブクアトロ)
(15)黒い瞳(オリジナルバージョン) (Live 1989.05.31/渋谷クラブクアトロ)
(16)駆け落ち(オリジナルバージョン) (Live 1989.05.31/渋谷クラブクアトロ)

⑩ Never Mind The Distortion (1994/9/21発売)
1994年発売された『OUT』と『うわのそら』の2枚のアルバムからのリミックス集。ウルトラマリン、エイフェックス・ツイン、リロード、ブラック・ドッグなどテクノの精鋭たちの手でナーヴ・カッツェを再構築している。
(収録曲)
(1)Nobody Home (Ultramarine Mix)
(2)Ziggy (Aphex Twin Mix #1)
(3)Never Not (Black Dog Mix #1)
(4)Crazy Dream (Retro 313 Future Memory Mix )
(5)Change (Aphex Twin Mix #2)
(6)More than a feeling (Black Dog Mix #2)
(7)Wild Horse (Global Mix Communication)

⑪ Gentle & Elegance+4 (1996/5/22発売)
テクノという手法を大胆に取り入れ制作されたアルバム。オリジナル楽曲と共にオウテカ、シーフィール、サン エレクトリックによる3曲のリミックスを1枚のアルバムとして成立させた。「Happy」「Border」の英語バージョンを含む4曲のボーナス・トラック収録。
(収録曲)
(1)レディ・トゥ・ゴー
(2)ライラック・ムーンライト
(3)タイニー・コグ
(4)ハッピー
(5)ハッピー?(Qunk Mix by Autechre)
(6)タイトロープ
(7)ヘブン・エレクトリック
(8)ヘブン-disjecta-エレクトリック(Seefeel Mix)
(9)ボーダー
(10)ボーダーレス(Sun Electric Mix)
(11)ジェントル&エレガンス
【ボーナス・トラック】
(12)Platinum
(13)Magenta
(14)Happy
(15)Border

⑫ Never Mind The Distortion II (1997/5/21発売)
『Gentle & Elegance』に収録された曲のリミックス集第二弾。 ジェントル・ピープル、シーフィール、ミュー・ジック、サン エレクトリックなど参加。
(収録曲)
(1)Ready to go(Remixed by The Gentle People)
(2)Lilac moon light(Remixed by Disjecta)
(3)Tightrope(Remixed by Disjecta)
(4)Borderless #2(Remixed by Sun Electric)
(5)Tiny cog(Remixed by Disjecta)
(6)Happier・・・(Remixed by Seefeel)
(7)Happy!(Remixed by u-Ziq)
(8)Happy?-qunk mix Dub(Remixed by Autechre)

[プロフィール]
日本のロック・バンド。山口美和子(ベース・ボーカル)、飯村直子(ギター・ボーカル)、 古舘詩乃(ドラム)によって結成。翌年より東京都内を中心に本格的なライブ活動開始。1986年12月、岡田徹(ムーンライダース)プロデュースによる『NAV KATZE』でデビュー。飯村と山口による透明かつ繊細なヴォーカル&ハーモニーと鮮烈なギター・サウンドで人気を博す。1991年にアルバム『歓喜』でビクターからメジャー・デビュー後、古舘が脱退。以降、二人組ユニットとしてロックをベースに、アコースティック、ノイズ、アンビエント、テクノなど、ジャンルの束縛を受けない多様な手法による独自の音楽性を確立。1996年の『Gentle&Elegance』以降、活動中止。女性ロック・ユニットの先駆的存在として、後年、再評価が著しい。

●Nav KatzeオフィシャルHP:https://navkatze.net
●Twitter : https://twitter.com/nav_katze2021

interview with Telex - ele-king

ベルギーはヨーロッパの中央に位置する国だし、だから誰もがベルギーを襲ってきた。ローマ人の昔から、ドイツ人、フランス人、スペイン人等々。それくらい行き来が盛んだと、ユーモアの感覚を持たずにはやっていられない。それがないと、死ぬか、裏切り者になるしかないから(苦笑)。


Telex
this is telex

Mute/トラフィック

Synthe-PopTechno

 テクノ四天王などとは言いたくはない。テレックスは仏教徒ではないのだから。しかしテレックスは、クラフトワーク、ジョルジオ・モロダー、YMOらと並ぶ、70年代テクノの始祖たちの重要な一角を占めていることは間違いない。それにしても、テクノにおいてドイツ、イタリア、日本、そしてベルギーというポップの主流たる英米以外の国において突出した個が出現したというのは、一考にあたいする興味ぶかい事実だ。

 とまれテレックスは、その70年代テクノ・ビッグ・フォーのなかでは、わりかしマニアックなポジションに甘んじていた感があった。つまり知る人ぞ知るというヤツだ。そこで、CANの再評価を促した〈ミュート〉の総帥ダニエル・ミラーが、2021年からはブリュッセル生まれの伝説のテクノ・ユニットのリイシューに着手した。で、まずは挨拶状として、『This Is Telex』が4月30日にリリースされる。テレックスの全カタログから選曲されたベスト盤的な内容で、未発表も2曲ある。

 テレックスは、すでに音楽家としてのキャリアのあった3人のベルギー人によって結成されている(そこはYMOと同じだ)。たとえば、その言い出しっぺであるマルク・ムーランなる人物は2008年に他界してしまったが、彼はテレックス以前にはプラシーボなるジャズ・バンドの中心メンバーで、エレクトリック・マイルスへのベルギーからのアンサーとしていまだに再評価が続いたりする。そんな事情もあって、じつはテレックスはレアグルーヴ方面からの注目もあったりするのだ。

 とにかく我々は、ユーモアと実験、ポップへのこだわりをもって挑んだブリュッセルのテクノの始祖たちに話を訊くことにした。ありがたいことに、取材はダン・ラックスマン&ミッシェル・ムアースの2人が同時に受けてくれた。長いインタヴューだが、これを読んだらあなたはますますテレックスが好きになってしまうだろう。若い世代もこれを機にぜひ、テレックスの愉快なエレクトロニック・ミュージックの世界に触れて欲しい。楽しいってことは素晴らしいことなのだから。

いかにしてテレックスは生まれたのか

我々はちょっとスペシャルなことをやりたかったし、単なる「ポップ・ミュージック」ではなく、そこに別の次元が加わった何かをやりたかったんだと思う。

ミッシェルさん、ダンさん、こんにちは。

ダン・ラックスマン&ミッシェル・ムアース:(それぞれ)こんにちは。

今日はお時間いただきありがとうございます。

ダン&ミッシェル:(共に笑いながら)どういたしまして。

まずは今回の〈ミュート〉との再発プロジェクトについて。どのようにこの企画ははじまり、そしてこれから進展していくのでしょうか?

ミッシェル:ああ、今回の『This is Telex』は予告篇に過ぎないんだ。6枚のアルバムからそれぞれ2曲ずつ選んであり、未発表曲を2曲加えてある。うまくいけば今年じゅう、もしくはその後に、(オリジナル・アルバム)全タイトルを再発する予定だ。それに続いて、たぶんリミックス・アルバムが出るよ。素敵な男の子&女の子たちによるリミックスが(苦笑)。

ダン:(苦笑)

ミッシェル:リミクシーズを出す予定だ。

わかりました。で、日本には昔ながらの熱心なテレックスのファンがたくさんいますが、この取材はあなたたちを知らない若い世代のための取材にしたいなと思います。

ダン&ミッシェル:(共にうなずいている)

まずはテレックスの歴史についてお訊きします。結成は、1978年、ジャズ・バンド、プラシーボ(Placebo)解散後に故マルク・ムーラン(Marc Moulin)さんがおふたりに声をかけてはじまったと聞きますが、大体それで合ってます?

ミッシェル:……っていうか、君はもうわかってるよ。質問しなくて大丈夫!(笑)

ダン:たしかに。アッハッハッハッハッ!

(笑)当初あったコンセプトについてお聞かせください。

ミッシェル:うん。彼は以前に、別のプロジェクトでダンと何度かセッションで仕事したことがあってね。わたしもそのプロジェクトに参加していて、そこでマルクが思いついたのは──ダンは、すでに電子楽器に関するスキルで知られていたし、マルクはポップ・ミュージックを作ってみてはどうだろう? と思いついたんだ。それまで彼はジャズ、わたしは地味なフォーク・ロック~ジャズ的な音楽をプレイしていたからね。大衆に受ける音楽をやっていたのはダンだけだった。

ダン:(笑)

ミッシェル:そんなわけで、マルクは何かポップなものを、欧州大陸発の、ギターを使わない音楽をやりたいと考えたんだ。当時電子音楽は盛り上がりつつあったし、そこで彼はまずダンに声をかけ、彼らふたりはわたしをシンガーとして参加させるのに同意してくれた、と。

ダン:(苦笑)

ミッシェル:(笑)彼らが望めば、他にもっといいシンガーはいただろう。

ダン:アッハッハッハッハッ!

ミッシェル:とはいえ、歌の上手い/下手だけではなく、わたしの物事の考え方や曲の書き方等々が新しかったから、それで参加することになった。

ダン:その通り! でも、もちろんシングル1枚だけ、とは思っていなかったよ。我々はちょっとスペシャルなことをやりたかったし、単なる「ポップ・ミュージック」ではなく、そこに別の次元が加わった何かをやりたかったんだと思う。テレックスをやる前からマルクと仕事したことがあったのは事実だよ、あれはたしか、プラセーボの最後のアルバムのひとつじゃなかったかな? ブリュッセルの大きなスタジオで、わたしはシンセサイザーで協力してね。で、スタジオでの休憩中にマルクから「我々で電子音楽のグループを結成するのはどう思う?」と尋ねられて、ものすごく驚いたし、即座に「もちろん!」と答えて。
 とはいえ、自分たちにはもうひとりのパートナー、兼シンガーにもなってくれる第三の人物が必要なのはわかっていたし、ミッシェル・ムアースはどうかな? という話になった。ミッシェルとは、我々の一緒にやっていたレコーディングのひとつで出会ったばかりだったし、わたしもそれはいい、オーケイ! 試しに彼とやってみようじゃないか、と。
 わたしはあの頃、まあ「ホーム・スタジオ」と呼んでいいくらいの設備を自宅に構えていて、セミプロ級の8トラック・マシンも持っていた。でも、まずはそれで充分だったんだよ、我々がやりたかったのはシンプルなことだったから。8トラック、そして非常にベーシックなエレクトロニック機材、ヴォーカルで事足りるだろう、と。
 というわけで改めて1日一緒に集まることにし、スタジオで「さて、試しに何をやってみよう?」と話し合った。そこで、とても有名なフランス産の大衆ポップ曲、“Twist a St. Tropez”(※Le Chats Sauvages/1961)を取り上げ、それを作り替えてみよう、ということになった。オリジナルの歌詞はキープしつつ……あの歌詞は、非常に、なんと言えばいいのか……

ミッシェル:シュールレアリスティックだった。

ダン:そう、シュールな内容だったし、原曲のテンポをできるだけスローなものに変えてみたところ──突如として曲のトーンも非常に単色で、ヴォーカルもフランジャーがかかったものになり、自分たちも完全に「これはいい」と思えるものになった。というわけで、その日のうちにラフ・ミックスをカセット・テープに録り、たしかその後、翌日か、その2日後くらいだったかな? マルクはたまたま、我々の共通の知り合いと話していたんだ。彼は当時新興の、我々も知っていた〈RKM/Roland Kluger Music〉というレコード会社で働いていた人で、マルクが彼にデモを聴かせたところ「いいね、気に入った。上司(ローラン・クルーガー)に聴かせる」と。それでデモを聴いてもらい、すぐにレコード契約に至った。ところが「やばい、1曲しかない」と気づいて(苦笑)、B面用にもう1回セッションをやることになった。そもそもデモだった“Twist a St. Tropez”にトラックをひとつ付け足しリミックスしたものを作ってB面に入れ、それがテレックスにとってのファースト・シングルになった、と。

ミッシェル:“Twist a St. Tropez”のいいところは、我々が最初に抱えた疑問が「オリジナルを聞き返すべきかどうか?」だった点だね。というのもあの曲、原曲はずいぶん古くて、あの20年くらい前に出たのかな?

ダン:60年代のヒット曲だ。

ミッシェル:10年か20年近く前の古い曲だし、聞き返さずにカヴァーすることにしたんだ。記憶に頼ってカヴァーした、みたいな。

ダン:うん。

ミッシェル:だからこそ原曲の「コピー」にならずに、ほぼ自分たちの言語で作り替えることができたという。

3人がグループをはじめた当初は、シリアスな思いよりも、むしろ実験してみよう、というのに近かったでしょうか? テレックスというグループのヴィジョンは最初からはっきりしていた? それとも続けていくうちにそれが見つかった感じですか?

ミッシェル:そもそもの発想は、自分たちも気に入る、と同時にラジオやクラブでもかかる音楽を作る、というものだったね。けれども、さっき話したようにポピュラー音楽を作っていたのはダンだけだったし、わたしとマルクの音楽はもうちょっと一般には知られないものだった。そうだね、人びとにもっと聴いてもらえるものを作ろう、というのがアイディアとしてあった。

ダン:ああ。それに、我々もスタジオで楽しんだんだよ。たとえば、ファースト・アルバム用のセッションの際も「よし、今日は何をやろう?」「こんな曲にトライしたらどうだ?」という具合で、機材のスウィッチを入れてね。“Twist a St. Tropez”だと、まずあの曲のシークエンスからスタートして、例の(同曲のリフ・メロを歌う)♪ダダダ・ディ・ダダダダ……と弾いてみた。非常にシンプルなメロディだし、では続いてテンポに取り組もう、と。もちろん当時コンピュータはなかったし、テンポにしてもボタンをマニュアルで操作してスピードを落とす/上げるしかなくてね。で、テンポをどんどん落としていき、いいじゃないか、これでよし、というところまで遅くしていった。1曲目はそんな具合で、メインのシンセ・メロに続いて他のトラックをひとつずつレコーディングし、ヴォーカルを録り、ミックス。次は何をやろう? じゃあ、パリからモスクワに向かう列車についての曲はどうかな、ディスコなパートのある曲を? と。いいアイディアだ、やろうということになったし、さて、列車か。じゃあ、それを蒸気機関車だと想像してみて、ハイハットを通常のサウンドではなく、♪チチチチチチッ……という響きにして蒸気に見立てよう、と(編註:テレックスの大ヒット曲“Moskow Diskow”のこと。曲の冒頭ではポッポーという機関車の音が入っている)。そんな具合で、我々は本当にひとつひとつ作っていったし、かつそれを楽しんでいた。それに尽きる。

ミッシェル:アルバムを作ったとき、マルクはいろいろ考えていたと思う。

ダン:ああ、もちろん。単にマシンでやっただけではない。

ミッシェル:わたしにしても、いくつかデモを作ってきたし、あの頃はギターで作ったね。

ダン:もちろん、うんうん。

ミッシェル:だから、何もロマンチックなおとぎ話のように、「マシンに電源を入れたら、すぐに何もかも出来上がり」なわけではなかった。歌詞にしても、ちゃんと書いたしね。

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シンセサイザーの発見

“Twist a St. Tropez”のいいところは、我々が最初に抱えた疑問が「オリジナルを聞き返すべきかどうか?」だった点だね。

ダンさんは、70年代の早い時期からモーグを演奏されていますよね。

ダン:その通り。

テレックスの前にも『Disco Machine』というアルバムをThe Electronic System名義で発表したりしていますが、そもそもどうして電子楽器、シンセサイザー等に興味をもたれたのですか?

ダン:フム、それはたぶん、わたしは……音楽は多少勉強したけれども、キーボード奏者としてはあまり腕がよくなかったんだ。ミスも多かったし、楽譜もちゃんと読めなくて。で、マシンが登場したとき、わたしはまだ若いスタジオ技師だったけれども、新たなサウンドを出せるマシンに対して即座に興味が湧いてね。その点は自分にもすぐわかったし、実際、当時一般市場に出回った最初のシンセの一台をなんとか購入することもできた。モーグではなく、EMS VCS3というマシンだった。スタジオに置いてあったら、実物を君に見せてあげることもできるんだが……いまでも作動しているよ。でまあ、たまたまマシンを入手することができて、あれは1972年だったかな? 71年か72年のことだったと思う。ポピュラー音楽界にも突如として“Popcorn”(ホット・バター/1972)や“Switched on Bach”(ウェンディ・カーロス/1968)といったヒットが登場し出し、人びとも突然、シンセサイザーを発見しはじめた。
 で、そんな自分もスタジオにシンセサイザーを一台持っていたし、シンセをレコードで使いたがっている人びとのためにマシンをプログラムすることができるな、と思った。そんな風にして始まったんだ。みんなに「シンセを持っているから、エレクトロニック・サウンドを使いたかったら言ってくれ」と声をかけたし、おかげでそれがメインの仕事になっていった。
 フリーのエンジニアとしても働いていたものの、シンセサイザーのプログラマーとしての仕事の比重がどんどん大きくなっていって。そのうちにチャンスが訪れ、ソロとして最初のアルバムを作ることになった。“Coconut”というヒット曲を出してね。あれは世界各国で売れたし、日本でもヒットしたはずだ。スペインでは1位になったと記憶している。その成功で得た収入で、税金を払う代わりに、わたしは大型のモジュラー・シンセサイザーを買ったんだ。あのおかげで大きなモジュラー機材に投資することができた、と。あれがきっかけになって、ヴォコーダー等々、いろんな機材を買っていった。
 で、さっき君も言ったように、The Electronic Systemの最後のアルバムが『Disco Machine』で、あの作品でわたしはシーケンサーで実験していたんだ。まだ機材としてはプロトタイプの段階だったけれども、シーケンサーを使ってインスト・アルバムを作ろうと思った。だからたぶん、そうした何もかもがテレックスのはじまりを準備していたんだろうね。マルクにはそこがわかっていたんだと思う。彼とわたしは、我々がミッシェルと出会う以前に、わたしの狭いスタジオでアルバムを3枚レコーディングしたことがあったから。
というわけで、すべての要素はすでにあった、という。だからなんだよ、さっき「マシンに電源を入れたら、我々の準備はオッケー、レッツゴー」みたいに話したのは。というわけで……これが質問の答えになっているかどうかわからないけれども、うん、電子音楽機器には最初から興味があったよ。

ミッシェルさんは作曲家であり、デザイナーでもありますが、テレックスではどんな役目を負っていたのでしょうか? 作曲がメイン? それともヴィジュアルやコンセプト面を主に担当していたのでしょうか?

ミッシェル:いや、コンセプトは3人で考えたもの。でも、コンセプト面は主にマルクの範囲だったね。わたしはあの当時、建築家だったんだ。だから、音楽をやりつつ、建築仕事も掛け持ちしていた。ベルギーの都市計画等々のね。あの頃、ベルギーは新たな都市を作ろうとしていたんだよ。

■そうだったんですね。

ミッシェル:あれはたぶん、ベルギーで作られた唯一の「ニュー・シティ」だったんだろうな、というのも、この国はとても小さいし。

(笑)

ミッシェル:まあ、それはさておき──テレックスでのわたしの役割は作曲で、主に歌詞を担当した。それに、うん、レコード・スリーヴも何枚か手がけたな。写真家でもあるんだ。建築写真は結構撮ってきたし、音楽も作ったことがあるし、掃除も得意だ。

(笑)

ミッシェル:(笑)でも、テレックスでは主に、作曲面だったね。歌詞をメインで担当していたし、でも、何もかもをわたしひとりで書いたわけではない。

ヴィジュアル面やコンセプト的なところはいかがですか? すごく印象的ですし、たとえば『Neurovision』他で、エヴァ・ミューレン(Ever Meulen)のイラストを使っています。

ミッシェル:うん。

あなたたちにとって、ヴィジュアル面も、音楽と同じくらいに重要だったのでしょうか?

ミッシェル:というか、実は我々は、テレックスというグループとして、自分たちの顔を表に出したくなかったんだ。となったら一番いいのは、(本人たちの写真ではなく)ドローイングに代弁してもらう、ということで。実際、最初のうち、“Twist a St. Tropez”の頃はマスクをかぶっていた(※同曲のヴィデオでは、メンバーはゴーグルをかぶっていて顔が見えない)。でも、結局マスクは外さざるを得なくなってね、ドイツにテロリストがいたし、レコード会社から「テロリストのように、素性を出さずに顔を隠すのはまずい」と言われて。

(笑)

ミッシェル:(笑)だからなんだ、我々が正体を現すことになったのは。それにあの当時は、音楽業界側にもそういう思考を受け入れる準備が整っていなかった。いまだったら、ダフト・パンクがいるけれども。

たしかに。

ミッシェル:ただ、我々にとっては、音楽そのものの方が自分たち自身より重要だった。それに、ベルギーは国としてとても小さいから、常に副業を持っていないと音楽だけではやっていけなかった。ダンはエレクトロニック界でいろいろやっていたし、マルクもラジオの仕事をやっていた。

ベルギー人にユーモアは不可欠だ

たぶん……ユーモアはベルギー特有のものだろうけれども、それに加えて、我々がブリュッセルに住んでいるというのもあったと思う(苦笑)。というのも、典型的なブリュッセル人には、やや懐疑的なところがあってね。


Telex
this is telex

Mute/トラフィック

Synthe-PopTechno

クラフトワークやジョルジオ・モロダーからの影響があったのはわかるのですが、テレックスは彼らよりも遊び心とウィット、ユーモアがあったと思います。ユーモアについてのコンセプトもテレックス結成当初に話されていたと思うのですが、1997年にベスト盤『I Don't Like Remixes』を出したときも、2006年に『How Do You Dance?』で復活したときもテレックスは最後までユーモアを貫きましたよね。なぜそこまでユーモア、笑い、ギャグに強いこだわりを持っていたのでしょうか?

ミッシェル:思うに、それは……我々は、ここ(ベルギー)は、漫画に囲まれているわけでさ。エルジェの『タンタンの冒険』をはじめとしてね。それがどこから発しているかと言えば、ベルギーはヨーロッパの中央に位置する国だし、だから誰もがベルギーを襲ってきた。ローマ人の昔から、ドイツ人、フランス人、スペイン人等々。それくらい行き来が盛んだと、ユーモアの感覚を持たずにはやっていられない。それがないと、死ぬか、裏切り者になるしかないから(苦笑)。だから、我々のユーモア感覚はそこから来たんじゃないかとわたしは思う。それにもちろん、漫画文化もある。こっちでは“la ligne claire”と呼ぶんだけど……英語ではなんて言えばいいかな、『タンタン』がいい例だけれども。

ああ、「clean line」のことですね(※筆致の強弱がなく、陰影もつけない、平坦な画風のドローイング。日本大正時代のジャポニズム版画からも影響を受けたとされる簡潔な輪郭線と色彩の画法で、フランス/ベルギー圏のバンド・デシネに用いられた)。

ミッシェル:そう。で、我々の音楽も最初のうちはそんな感じだったんだ。それに──ユーモアの感覚もたまにある、っていうのはいいことなんだよ。音楽がおふざけになるのはよくあることだけれども、音楽でユーモアを醸すのは楽ではないから。

だと思います。たとえば映画にしても、真面目で重い映画だと誰もが「これは重要な作品だ」と言いますが、ユーモラスなコメディ映画だと、どんなによく作られた作品であっても軽んじられがちですし。

ミッシェル:そう。悲しいものを作るのがアートだ、と思われているからね。

ユーモアは、実はすごく難しいアートだと思います。

ダン:それもあったし、たぶん……ユーモアはベルギー特有のものだろうけれども、それに加えて、我々がブリュッセルに住んでいるというのもあったと思う(苦笑)。というのも、典型的なブリュッセル人には、やや懐疑的なところがあってね。たとえばブリュッセル人は、「ああ、もちろん!(yes, of course!)」と言いたい場面でも、ストレートにそう言わずに「いや、たぶんそうじゃないの?(no, maybe?)」と答えるんだよ。

(笑)

ダン:だから、いまミッシェルの言ったことに加えて、そこもあったんじゃないかと思うよ、我々がこう……やや「距離」を置いた音楽を作ったのは。音楽そのものは真面目に作っていたけれども、と同時に、そこに若干の距離も置いていた。要はロックンロールっぽいものだったわけで、そんなに「生真面目に」シリアスになることはないだろう、と。

(笑)。しかし、ただでさえ70年代末の当時は、まだエレクトロニック・ミュージックはシリアスに捉えられていなかった時代でしたよね。そんななかで、テレックスはさらにふざけていたように見えたから、ますますその作品がシリアスに評価されることはなかったというような話をムーランさんがされています。テレックスはリアルタイムではさほど評価されず、そこにフラストレーションを感じたことは?

ミッシェル:いいや……。

ダン:ノー、それはないなぁ。

ミッシェル:そこまで(評価は)悪くなかったし(苦笑)。もしかしたら唯一、ベルギーではそうだったかもしれないよ。というのも、我々のサクセスは国外発だったから。マルクはラジオでDJもやっていたけれど、彼は絶対に、自分のやっている音楽はラジオでかけなかった。だからあれは……

ダン:英語でどう言えばいいかわからないけれども、ベルギーではこういう意味のフレーズがあるんだよ、「生まれた国では誰も予言者になれない(Nobody's a prophet in his own country)」という。

ミッシェル:うん。

ダン:だから、ベルギー国内よりも国外でもっと成功を収めることになる、と。それに、ベルギー人というのはあんまり──フランス語では「chauvin(排外的な、熱狂的な愛国心)」と言うけれども、それほど強く自分自身を誇りに思っていないんだ。非常にchauvinなフランス人とは反対だよね、フランス人は(声色を強めて)「これはフランス産である、だからいいに決まっているではないか!」みたいな感じで。

(笑)

ダン:ところがベルギーでは、フランスのほぼ反対というのかな、(消極的な口調で)「我々はベルギー人です……」という感じだし。とは言っても、実は我々はいろんな面でクオリティは高いんだ。それは、さっきミッシェルも言っていたように、ベルギーはとても小さな国だからであって。たとえば、ベルギーのスタジオの人気が非常に高いのは、とてもいいスタジオだからであって。たぶん、小さな国だし、隣国と競い合う必要もあり、だからどんなスタイルの音楽にも対応できるいいスタジオになっていった結果じゃないかと。というか、それは世界じゅうどこでも同じだろうね。
 それに、ベルギー人というのは、たしかにユーモア感覚もあるけれども、他国と較べるととても自意識が強いところもあって。これはまあ……非常に大雑把な話だけれども、わたしはたまに、人びとが「自分はすごいことをやった!」と自慢して触れ回っているのを見て驚かされる。というのも、実際はそんなに大したことじゃないんだから。いやまあ、たしかにその人間はいい仕事をしたのかもしれないよ? けれども、別に奇跡的にすごい、というほどのことではないわけで──

ミッシェル:──我々は謙遜しがちなんだ。

ダン:そう、その通り。

ミッシェル:でも、ダンの言う通りだよ。我々が“Twist a St. Tropez”をリリースしたとき、ラジオでちょっと流れはじめてね。で、その頃行きつけだったカフェで、わたしが音楽をやっていると知っていた人に出くわして、その人は「聴いたかい? この曲(=“Twist a St. Tropez”)、最高じゃないか! でも、これがベルギー産のはずがない」と。

ダン:その通り。

ミッシェル:(苦笑)当時、我々はマスクをかぶっていたし、誰も正体を知らなかったんだよ。はじめのうちは自分たちが誰か明かさなかったし、それは我々3人にはそれぞれ異なるバックグランドがあったし、いろいろと悪口を言われそうだな、と。でも、リアクションは「いや、こりゃ絶対にベルギー産のはずがない!」だったっていう。

ダン:「ベルギー産だってぇ?」と。

(笑)。で、質問を作成した方は、ブリュッセルには90年代に2回(91年と98年)、2005年に1回行ったことがあるんです。古い街並みが美しくて印象に残っていて、91年に行ったときは、メインはアントワープのファッション・シーンの取材だったんですが、レコード店にはレイヴ音楽が溢れておりました。

ダン:うんうん(とうなずいている)。

で、テレックスが始動したころ、ブリュッセルにはあなたがた以外にも刺激的な音楽のシーンはあったのでしょうか?

ダン:……(困り顔で)ハッハッハッハァッ! ミッシェル、憶えてる?

ミッシェル:そうだねえ、ひとり、アルノー(おそらくArno Hintjensのこと)という男性アーティストがいたし──

ダン:たしかに、彼はもういたね。

ミッシェル:それに、わたしも好きだった、デウス(dEUS)というバンドもいて……

ダン:えっ? 彼らは70年代から活動していたっけ??

いやいや、90年代のベルギー・シーンではなく、70年代の話なんですが(※90年代のベルギーの話を枕にしたので、混乱させたようです)。

ミッシェル:ああ、そうか、オーケイ。70年代ね。

ダン:ぶっちゃけ、思い出せないなあ。憶えてる?

ミッシェル:いや、80年代に入ったら、一群のグループがいたよ。主に、イギリスから来た連中で。

ダン:ああ、そうだった。だから、ベルギーの「自国産」という意味では、ビッグなアクトはひとつもいなかったね。人気があったのは女性シンガー、あるいは北フランス出身のグループぐらいで。だからあの当時成功したものといったら、主にフランス発のヒットと、そしてイギリスから来たグループとに分かれていたね。

ミッシェル:でも、その後に〈クレプスキュール〉勢なんかも登場した。

ダン:そうだった。

ミッシェル:でも、彼らはそんなに人気が高かったわけではないし……

ダン:たぶん、我々がスタートした頃と言ったら、プラスティック・ベルトラン(Plastic Bertland)の“Ca Plane Pour Moi”(1977)が大きかったんじゃない?

プラスティック・ベルトランはパンク寄りなノヴェルティ・アクトで、エレクトロニック・ミュージックとはあんまり関係がない印象ですが。

ミッシェル:ああ、音楽的にはそうだね。

ダン:そうかな? でも……

あの頃だと、ボウリング・ボールズ(The Bowling Balls)なんかもいましたよね。

ダン&ミッシェル:ああ、イエス。

彼らも、ジョーク半分なグループだったようですが(※The Bowling Ballsは、漫画に登場する架空のバンドを具現化した、フェイクな企画ものグループ)。

ミッシェル:彼らは、もっと冗談寄りだったと思う。

ダン:たしかに、彼らは非常にジョークっぽかった。だけど、メンバーはいい連中でね。ミッシェルもわたしも知っているけれども、主要メンバーのひとりのフレデリック・ジャナー、彼もわたしの少し後にEMSシンセサイザーを買ったんだよ。彼もエレクトロニック・ミュージックを作りたがっていたからね。それに漫画家でもあったから、彼は常に「音楽をとるべきか、それとも漫画の道を進むべきか?」と悩んでいたね。でも、結局彼はどちらもやることにしたし、そんな彼の音楽作品のひとつがボウリング・ボールズだった。そう言っても、あれは友人仲間が集まってやったものに過ぎないし、実際、アルバムも1枚しか残していない。ただ、やっていて楽しかったし、あれは純粋に……英語だとどう言えばいいのかな、まあ、ジョークとして、お楽しみとしてやったことだったんだろうね。

ミッシェル:でも、彼らには、少なくともいい曲が2曲あったと思う。

ダン:ああたしかに、いい曲だった。それに、君にも見せてあげようか(と、立ち上がってアナログ盤を引っ張り出す)。フレデリック・ジャナー、彼は、わたしのレコードのスリーヴのイラストを描いてくれたんだ(見せてくれたのは、『The Electronic System Vol.2』のジャケット)。

素敵なジャケですね!

ダン:彼と出会ったきっかけは、彼から「VCS3を買うべきか、それともミニ・モーグを買うべきだろうか?」と相談を受けたことでね。で、わたしの答えは、「もしも君が、単にサウンド/音符を出したいだけではなく、ちゃんとエレクトロニック・ミュージックをやりたいのなら、VCS3の方がもっと可能性があるよ」と。で、彼も助言にしたがってVCS3を購入したし、「ありがとう」の意味を込めて、ある日、このイラストをわたしに残してくれてね。こちらとしても、ああ、これは完璧だ!と。ちょうど2枚目のアルバムを出そうとしていたし、これをジャケットに使わせてもらうよ、と。というわけで、この絵はボウリング・ボールズをやっていた、フレデリック・ジャナーの手によるものなんだ。


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『This Is Telex』と今後の展開

『This is Telex』の「これぞテレックス(This is Telex)」というタイトルは、テレックスの何たるかを示すと共に、おそらく、テレックスを知らない若いリスナーも「これがテレックスなんだ」と思ってくれるだろうし。


Telex
this is telex

Mute/トラフィック

Synthe-PopTechno

『This Is Telex』の選曲について教えてください。ダニエル・ミラーが選曲したんですか?

ミッシェル:〈ミュート〉が選曲してくれた。

ダン:うん、〈ミュート〉によるものだ。で、我々も「これはいいアイディアだ」と思ったんだよ、というのも、『This is Telex』は、さっきミッシェルも言ったように一種の予告編であり、いわゆる「ベスト盤」ではないからね。そうは言っても、割りと有名なヒット曲も含まれてはいる。ただ、アルバム6枚からそれぞれ2曲ずつ収録するというアイディア、これは素晴らしい。それに、このアルバムのタイトルだよね。「これぞテレックス(This is Telex)」というタイトルは、テレックスの何たるかを示すと共に、おそらく、テレックスを知らない若いリスナーも「これがテレックスなんだ」と思ってくれるだろうし、各アルバムから2曲、そして未発表曲も2曲含まれていて……

格好のテレックス入門編、イントロダクションだろう、と。

ダン:そうそう、イントロダクションだね。

“Rock Around The Clock”や“Dance To The Music”のカヴァーは当時としては画期的でした。テレックスにとって誰かの曲をカヴァーするというのはどんな意味があったんでしょうか?

ミッシェル:最初のうちは、我々自身のヴォキャブラリーを見つけるための手段としてやっていたんだ。

ダン:うん。

ミッシェル:ところが続けていくうちに、ポップ音楽のカタログみたいなものになっていった。たとえば、最初にやったカヴァーはロックンロール味のフレンチのイェ・イェ・ポップだったし、遂にはメキシコの“La Bamba”も取り上げた。だから、世界じゅうのポピュラー・ミュージックのカタログのようなものになったし、そこがポイントだった。ジャンルを越えて、それらを我々のものにする、という。かつ、どの曲もほぼ、原曲よりテンポを落としたものだったね。

ダン:ああ。

ミッシェル:誰にでもアピールするように(笑)

ダン:テンポがゆったりしていれば、誰でも踊れるからね!(笑)

“Moskow Diskow”はどのくらいヒットしたのでしょう? ベルギーよりも、むしろヨーロッパ全土でヒットした感じだったんでしょうか。

ミッシェル:というか、あの曲は世界的にヒットしたと思うよ。

ダン:そうだね。

ミッシェル:我々にとってのメイン曲というか、面白いもので、あの曲は我々の編集盤には大抵含まれる。だからおそらく、人びとがもっともよく知っている曲があれになるだろうね。もしかしたら彼らは、「テレックスの曲だ」とは気づかないまま聴いているのかもしれないが。

なにゆえテレックスはディスコないしはダンス・ミュージックであることは意識したのでしょう? ディスコというのは、初期のエレクトロニック・ミュージックにおいてもっとも自由に実験ができる場だったのですか?

ミッシェル:……自分たちとしては、「ダンス・ミュージックを作っている」という思いで音楽を作ったことはなかったんじゃないかと思うけどなぁ……?

ダン:まあ、“Moskow Diskow”は除いていいんじゃないかな。あれは、列車の中にディスコテークがある、というアイディアから生まれた曲だし。ただ、それ以外では、ミッシェルの言う通りだ。

ミッシェル:(フーッと嘆息)とにかく、テンポをああやって調整しただけだし。わたしは、たまにクラブ等に踊りに行ったことはあったよ。でも、他のふたりが踊っている姿を見かけたことは一度もないし──それより、ふたりが椅子に腰掛けている姿なら思い浮かべられるけどね!(苦笑)

ダン:ハッハッハッハッハッ!

ミッシェル:とにかく自分たちにとって気持ちがいい音楽を作っていたし、「ダンス・ミュージックを作ろう」という思いでやったことではなかったと思う。結果的にダンス・ミュージックになった、ということであって。

なるほど。“Rock Around The Clock”(1979)でリミックスを手掛けるPWL(ピート・ウォーターマン)とはどうやって知り合って、お互いどんな関係で仕事をしたのでしょう?

ダン:彼とは、〈RKM〉のローラン・クルーガー経由で知り合った。ローランだったんじゃないかな、彼にあのリミックスを依頼したのは? どう思う、ミッシェル?

ミッシェル:(考えながら)彼は、我々がBBCの『Top of the Pops』に出演した際について来てくれたんじゃなかった?

ダン:ああ、そうだ! 彼に会ったのは、あれがはじめてだった。

ミッシェル:で……そうして知り合ったし……

ダン:そうそう。

ミッシェル:でも、それ以外は──(苦笑)いや、可笑しかったのは、彼はリミックスをやってくれたけれども、あの曲にサックスを加えたんだよね。

(爆笑)

ダン:(笑)なんたる悲劇!

ミッシェル:(苦笑)でまあ、あれはちょっと、ヘンだった。

ダン:ハッハッハッハッ!

ミッシェル:(グフフッと吹き出しながら)あれは、我々のユーモア感覚の度すら越えていたよ。

(笑)サックスは、さすがにちょっとクサそうですね。

ミッシェル:どうだったんだろう? とにかく、あれは我々には理解できなかった。というか、リミックスを気に入ったことは滅多にない。だから、自分たち自身でいくつかリミックスをやったんだしね。でもまあ、時代的にも早かったんだと思う。リミックス自体、まだそんなに一般的ではなかったし。

ダン:そうだね。

ミッシェル:だからきっと、彼もいろいろ試していたってことだと思う。気に入らなくて、ごめんよ(笑)

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細野さんとの思い出

細野晴臣さんとコシミハルさんがスタジオを訪れたときのことは憶えていますよね? 

ダン:ああ、もちろん!

彼らの“L'Amour Toujours”もとても洒落ていましたが、当時どんな風にセッションがはじまったのか教えて下さい。細野さんがあなたたちにアプローチをかけたんでしょうか?

ダン:ああ、そうだよ。

ミッシェル:この話は、ダンに任せる。あのとき、わたしはヴァカンスに出かけていてスタジオにいなかったから(苦笑)

ダン:うん、彼(細野さん)が連絡をとってきて、ごく普通に、スタジオをブッキングしたんだ。わたしとしては「なんと!」と驚いたけれどもね、イエロー・マジック・オーケストラのメンバーが自分のスタジオに来るなんて、と思ったし、3日間のブッキングだったな。とてもシンプルなセッションだったよ。彼らがスタジオにやって来て、彼は英語を喋らなかったし、残念なことにわたしは日本語を喋らなかった。それで、とてもナイスなフランス人の通訳氏、たしか東京在住の人だったはずだが、彼が現場での通訳として付き添ってくれてね。ところが、彼にはほとんどやることがなかったんだ、というのも、音楽を通じてであれば、言葉を使って会話する必要はないから。それに、彼(細野さん)と自分のやっていることが非常に似ているのにも気づいた。わたしは非常に初期のシーケンサーのひとつ、とても複雑な、ローランドのMC-4という名前の機材を持っていてね。で、あれはMIDIやコンピュータ以前の時代のシーケンサーだったから、何もかも自分でプログラムを打ち込まなくてはならなかったんだ。あれでシークエンスを作るのは面倒で悪夢のようだったけれども、彼の打ち込みのスピードはあっという間、本当に早くてね! で、彼は「モーグ・モジュラーで曲をやろう」と言ってきて、我々は主にモーグのモジュラーを使い、一方で彼がシークエンスをプログラムしていき、それをレコーディングした、と。あれはファンタスティックな3日間だった。
 それに、さっきも言ったように、我々は言葉が通じなくても大丈夫だったんだ。それはグレイトだったし、思い出すよ、通訳氏が「僕は不要みたいなので、外に出かけるとします。あなたたちだけで放っておいて大丈夫でしょう」と言ったのは。そんなわけで我々はレコーディングを進め、ヴォーカルを録り、以上、と。そして彼はテープを……あの曲のミックスは、わたしがやったんだったかな? ミックスも、もしかしたらやったかもしれない。ともかく……ああ、たしか彼は、当時世界ツアーをしていたんだったと思う。で、レコーディングをやった何週間か後に、レコード会社から完成したアルバムが届いた、と。とてもシンプルで、とても素敵な、とてもいいお土産をもらったね。あれは素晴らしかった。

あの頃、もうイエロー・マジック・オーケストラのことはご存知だったんですね。

ダン&ミッシェル:うんうん、もちろん。

テレックスは、ときに「ベルギー版クラフトワーク」、あるいは「ベルギー版YMO」とも称されますよね。

ミッシェル:(苦笑)

もちろんそれぞれ異なる個性のグループとはいえ、そういった意味でYMOにはどこかしら親近感も抱いていましたか?

ミッシェル:ああ。

ダン:自分と彼(細野さん)の仕事の仕方がどれだけ近いかに気づいたときは、とても驚かされたんだ。それもあったし、彼がモーグを好きというのにも驚いたね。日本には自国産の素晴らしいシンセサイザーがたくさんあるのに、彼はポリ・モーグのサウンドが好きで、あれは珍しかった。実際、可笑しかったんだが──あの何年か後、90年代に、わたしの新しいスタジオで日本人プロデューサーと仕事する機会があったんだ。残念ながら、彼の名前は忘れてしまったけれども。で、彼は細野氏の友人だそうで、わたしのスタジオに来てびっくりしていた。「細野さんのスタジオと同じですよ!」と。

ミッシェル:(笑)

ダン:で、ふと思い出したのが、そう言えば細野氏は、スタジオにいたときやたら写真を撮っていたっけな、と。

(笑)

ダン:(笑)だから、もしかしたら彼は自分のスタジオを、わたしのスタジオに少し似せて編成したのかもね? それはまあ、笑える逸話、ということだけども。

ちなみに、ダンさんのSynsound Studioはレコーディング・スタジオとしていまでも続いているんですね。

ダン:ああ。

しかもシンセサイザー(アナログ&デジタル)やサンプラー、ドラムマシンなど、70年代~80年代の貴重な機材が揃っています。やはりこういった機材がそうとうお好きなんですね?

ダン:そう。いま、君がスタジオにいないのが残念だね、こっちにいたらあれこれと見せてあげられるんだけれども。でも、うん、モジュラー・シンセはいつでも使えるよう整備してあるし、しかもミニ・モーグも新たに買った。わたしがもっとも好きなシンセサイザーは、もちろんアナログだ。ちなみに、アナログ・シンセはまた人気が再燃しているんだよ。

ですよね。

ダン:どうしてそうなったかと言えば、音響制作機材の進化はあったものの、その基本であるアナログ・シンセサイザーに再び立ち返ったということじゃないかと思う。だから、自分自身のサウンドを作る必要があるんだよ。どれだけプリセット他のサウンドがあったとしても、サウンドを考え、それを自分で作り出さなくてはならない。ただ他から音を盗んできて、それを何かに作り替えることのできるサンプラーとはわけが違う。だから、アナログ・シンセにやれることは少ないかもしれないけれども、そのぶん逆にクリエイティヴになれると思うんだ。
 というのも、本当に自分で一からはじめなくてはならないし、電気からサウンドを作ることになるから。本当に興味深いのはそこだ。というわけで、うん、わたしはまだいろいろやっているし、この取材の後にスタジオに入り、新たに曲を作るつもりなんだ。ベーシックなアイディアが浮かんでいるし、それをマシンにフィードして新しい曲を作ろうかな、と。スタジオ・エンジニアとして働くのも好きだけれども、できれば自分がやりたいのは、サウンドをクリエイトし、そこから曲を作ることだから。電気からね。

80年代以降、エレクトロニック・ミュージックを更新したもっとも重要なアーティスト、あるいはあなたたちよりも下の世代の電子音楽家で好きな人/共感できる人は誰ですか?

ミッシェル:……ビョークかな。

ダン:ああ、彼女だね。

ミッシェル:彼女は常に探索を続けているし、わたしが音楽に関して好きな点もそこなんだ。そうは言っても、わたしもポップな音楽は好きだよ。ただ、何かをサーチしている人が好きだね、音楽として、必ずしも聴きやすくはないかもしれないけれども。

ダン:ビョークに……

ミッシェル:たとえばビョーク、それからFKAツィッグス等。そういう人たちだな。

ダン:そう。ビョークは、もちろんだ。彼女は常にイノヴェイティヴで新たなことをやろうとしているし、それに──まあ、この名前はちょっと一般的過ぎるかもしれないけれども、わたしはビリー・アイリッシュも好きだ。

ミッシェル:(先を越されてやや悔しそうにつぶやく)彼女の名前は、わたしも言おうとしていたところだよ。

(笑)そうなんですね!

ダン:(笑)ああ、彼女は大好きだ。

ミッシェル:まあ、音楽面は、彼女の兄がほとんどやっているらしいけれども。

ダン:ああ、そうだよ。だが、あのふたりは、どちらも非常に才能がある。

ミッシェル:彼女の音楽は悲しい感じだけれども──

ダン:うん。

ミッシェル:──(苦笑)でも、音楽はグレイトだ。

テレックスにはグルーヴがある


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Mute/トラフィック

Synthe-PopTechno

マルク・モーランがいまここにいないことは残念ですが、彼はどんな人だったのか教えていただけますか?

ミッシェル:彼はどうだったか……。彼は考える人だったと思う。かつ、ユーモアと才能にあふれていた。よき友だった。

ダン:そうだね。それに、彼は本当に優れたミュージシャンでもあった。そう思うのは、何年か前にテレックスの音源をデジタル化した際にマルチ・トラックを聴く機会があって、そこで彼がどれだけグルーヴにノって演奏していたかを発見したからでね。あの当時はテクノロジーも単純、ごく初歩的だったし、シークエンスに関してはあまりテクノロジーの活躍する可能性がなかった。だから、ドラムと非常に基本的なシークエンスを除き、ほとんどのトラックは手で、マニュアルに演奏されていたんだ。ベース・ラインの多くは手で演奏されていたし、それが実にグルーヴに富んでいてね。完璧ではなかったし、でも、それこそがグルーヴというものの概念であって。
 だからだろうな、自分たちがこう思ってきたのは……人びとは「エレクトロニック・ミュージックは冷たい音楽だ」と考えるけれども、そんなことはないんだよ。我々はそんな風に感じなかったし、スタジオにいた間、本当にグルーヴをエンジョイしていた。リズム・トラックがあり、ベーシックなドラムがあり、ベース・ラインがあり、そこに最初のキーボードが入ってくる云々、彼はそこに常にいた。それにもちろん、彼はアイディアが豊富だった。わたしは機材の背後でボタンetcを操る役まわりだったけれども、マルクとミッシェルが曲について話し合っている様は聞こえた。
 いまでもよく思い出すのは、3人一緒にサウンドを見つけようとしていた場面だね。わたしは機材のボタンを調整していて、そのうちに自分でも「これはいいな」と感じて、すると同時にミッシェルとマルクも「いいぞ!」と言ってくれて。「その位置のままで、いじらないで」と言われて、わたしも「わかった」と。そういった様々が組合わさった経験なんだ。

ミッシェル:それもあったし、たぶん……さっき、君は我々を「ベルギー版クラフトワーク」と呼んだけれども──いや、そう形容した人は君が最初ではないから、気にしなくてもいいんだよ(笑)

ダン:(苦笑)

ミッシェル:ただ、クラフトワークと我々の主なひとつの違いと言えば、それはおそらくグルーヴだろうね。

ダン:そう!

ミッシェル:というのも、マルクは黒人音楽に心酔していたし、彼はジャズ・マンでもあった。だから、思うにクラフトワークとの主要な違いは、テレックスにあったグルーヴではないか?と。さっきダンも話していたように、サウンドの多くは手で演奏したものだったからね。

ダン:そうだ。それにわたし自身、デジタルに変換していたとき、それに気づいて驚いたんだ。レコーディングの現場で、マルクがどれだけ楽々とあれらの演奏をしていたかは憶えているし、その場ではわたしも深く考えていなかった。ただサウンドを出し、プレイしていただけだし、そのテイクでオーケイ、それで決まりという感じで、実に楽だった。ところが、あれは一見楽そうに見えて、そうではなかったんだね。彼のプレイは本当に大したものだったな。タイミング感が、本当に、実によかった。そういえば、最後のアルバムを作る際に、マルクがキーボードを習い直しているんだ、と言っていたのは憶えているかい、ミッシェル? 彼は毎日数時間、もっと上手くなるためにキーボードを練習したんだ。そもそも非常に腕のいいキーボード奏者だったにも関わらず、それでもなおがんばった、という。

ミッシェル:間違いない、彼なしには、テレックスはあり得なかった。

ダン:それはもちろんだ。あり得ないよ、まったくそう。

ミッシェル:彼が決め手だった。

アルバムの最初と最後が未発表曲でしたね。2曲(“The Beat Goes On/Off”、“Dear Prudence”)ともカヴァー曲で、2曲ともとても面白いと思いましたが、どうしてこれがお蔵入りになっていたんでしょう?

ミッシェル:(苦笑)

秘密としてキープしてあった曲、とか?

ミッシェル:いやいや。あれは……我々が音楽作りをストップした後も、たまに顔を合わせて、何か一緒にやれることはないか?と探っていたんだよ。

ダン:アイディアをね。

ミッシェル:あれら2曲は、取り組みはじめてはみたものの、やった当時は興味深いとは思えなくてね。将来性を感じられなくて……。

ダン:アルバム1枚を作るに足るだけのアイディアが浮かばなかったんだよ。そこで、あの2曲はとっておくことにしたはずだ。で、やっと最後のアルバムができたとき、あれはマルクのアイディアをもとにしたんじゃなかったっけ、ミッシェル? この話は何日か前に思い出したんだけれども、そのアイディアは自分たち自身をサンプリングする、というものでね。だから、歌のパーツからはじめて、そこから新たなサウンドを作り出す、という。あのアイディアを、我々は実に──

ミッシェル:リサイクルする、ということだよね。

ダン:そう。興味深く、エキサイティングなアイディアだと思ったし、とても上手くいった。あのおかげで、最後のアルバムを完成させることができたんだ。

ミッシェル:とても上手くいったとはいえ、それほど成功には結びつかなかったな(苦笑)

(笑)

ダン:(苦笑)いや、それはなかった。

ミッシェル:でも、今回リミックスして、気がついたよ。あれは実にいいアルバムだ、うん。シンプルでいい作品。わたしも気に入っている。

ダン:わたしも同感。

日本には長きにわたってテレックスの熱狂的なファンがいますが、彼らに対してひと言お願いします。また、これからテレックスを聴くであろうリスナーにもひと言。

ミッシェル:んー……こう言おうかな。「我々を眺めるのではなく、音楽を聴いてください」

ダン:(笑)。そうだね、わたしも同じだ。「音楽を聴いてください」だ。

質問は以上です。今日はお時間いただき、ありがとうございました。

ダン&ミッシェル:ありがとう。

この再発を期に若いリスナーがテレックスを発見してくれると思うとワクワクしますし、今後の展開を楽しみにしています。もしかしたらあなたたちの新しい音楽を聴ける日が来るかも?と、期待していますので。

ミッシェル:……たぶん、それはない。

ダン:フフフフフッ!

ミッシェル:(苦笑)

そうですか。残念です……

ミッシェル:あ、ひとつだけいいかい? 君は通訳だよね? 音楽関係の仕事を主にやっているの? たとえば、いま君の言った最後のセンテンス、あれは質問者の言葉なのか、それとも君自身の言葉?

いちばん最後はアドリブです。でも、質問作成者も同じ思いを抱いているはずですので。今日は通訳として話させていただきましたが、わたし自身音楽ライターもやっていますので、音楽は少し知っています(苦笑)。

ミッシェル:ああ、そこはわたしも感じたよ。とてもいいインタヴューだった。どうもありがとう。

ありがとうございます。くれぐれも、お大事に。さようなら。

ダン&ミッシェル:ありがとう、君もね。

Squarepusher - ele-king

 90年代を思い返すようなアルバム『Be Up A Hello』から早一年。今度は、まさに90年代につくられたスクエアプッシャーの記念すべきファースト『Feed Me Weird Things』(96年)がリマスターされ、リイシューされる。サブスクでも初解禁。これは嬉しいぜ。
 ちなみに同作はもともと〈Rephlex〉からリリースされていたが、25年のときを経てついに、トム・ジェンキンソンの他のアルバム同様、〈Warp〉のラインナップに加わることとなった。

俺の最初のアルバムを出してくれた〈Rephlex〉はアーティスティックな意味ではすごくイイ。こだわったリリースをしてるしね。でもやっぱりカルトなものばかりで、多くのヒトに聴いてもらいたいものを出すのには向いていないだろ。俺は自分の音楽をあるカテゴリーにわけられたり、ものすごくコアなひとにしか聴いてもらえないものにはしたくないんだ。 ──97年のトム・ジェンキンソンの発言(『Warp 30』124頁)

 今回の復刻では、おなじく〈Rephlex〉から出ていたEP「Squarepusher Plays...」収録の2曲が追加される(つまり、旧日本盤の構成が本国へもフィードバックされたかたちですな)。細やかにプログラムされたドラムにフュージョンのベース、どこか憂いを帯びたせつないメロディ。スクエアプッシャーの原点が、いま蘇る。 

SQUAREPUSHER

デビュー作にして、ジャズとエレクトロニクスの革新的な融合を成し遂げた
不朽の大名盤『FEED ME WEIRD THINGS』の25周年を記念し、
待望のリマスター再発決定!
高音質CD紙ジャケ仕様の国内盤やTシャツセット含め、
6月4日世界同時リリース!
サブスク/デジタルも同時解禁!

鬼才スクエアプッシャーによる衝撃的デビュー・アルバムにして、その後の音楽シーンに多大なる影響を与えた大名盤『Feed Me Weird Things』。1996年にエイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェイムスによるレーベル〈Rephlex〉よりリリースされ、10年以上もの期間、CDやLPはもちろん、ストリーミングやダウンロード配信も行われていなかった本作が、リリースからちょうど25年目にあたる6月4日に待望の再発決定! サブスク/デジタルも同時解禁! 発表に合わせて “Theme From Ernest Borgnine” が公開!

Squarepusher - Theme From Ernest Borgnine
https://youtu.be/Mp0JLqc8oTQ

スクエアプッシャー本人が監修した今回のリイシュー盤の音源は、オリジナルのDATからリマスターされており、同時期にリリースされたEP作品「Squarepusher Plays...」のBサイドに収録された2曲 “Theme From Goodbye Renaldo” と “Deep Fried Pizza” も収録。16ページの拡大版ブックレットでは、制作当時を振り返るセルフライナーノーツや、使用機材の情報を含む本人による各曲解説、当時の貴重な写真やメモが掲載され、キャリア初期の背景を解き明かす内容となっている。紙ジャケ仕様の国内盤CDは、高音質UHQCD(全てのCDプレーヤーで再生可能)となり、ブックレット訳とリチャード・D・ジェイムスによる寄稿文の対訳、そして解説書を封入。また数量限定のTシャツセットも発売され、輸入盤LPには、ブラック・ヴァイナル仕様の通常盤に加えて、クリア・ヴァイナル仕様の限定盤も発売される。

2020年リリースの最新アルバム『Be Up A Hello』では、90年代の機材を多用したという点も注目を集めたが、若干19歳の時に作った楽曲も収録されている『Feed Me Weird Things』を聴けば、当時の初期衝動が今もなお彼を突き動かし、常に型破りな作品を生み出し続けていることが理解できるだろう。

様々なサブジャンルが誕生した当時のエレクトロニック・ミュージックにおいて、今作がこれだけ特別な輝きを放ち、他のアーティストによる同時代の良作と一線を画していた理由の一つには、ジャズの影響を強く受けたトム・ジェンキンソンが、ジャズとエレクトロニクスの革新的な融合を成し遂げ、その卓越したベースプレイを披露した最初の作品であることも挙げられる。複雑に構成され、時には超高速に展開するビートが刺激を与えてくれる一方で、すでに完成されていたベースプレイは、心地よく魅力的に響き渡り、先進的な音楽ファンのすべてを虜にした。

スクエアプッシャーは、フルートという楽器を使わずに、フルートに開いた穴だけでどんな音が鳴らせるかと考える人物だ。過去に一度も鳴ったことのない音を出すため、リチャード・ロジャーズとジュリー・アンドリュースは『サウンド・オブ・ミュージック』すなわち音楽の響きをもたらし、ジョン・ケージやサイモン&ガーファンクルは(「4分33秒」や「サウンド・オブ・サイレンス」で)静寂の響きをもたらし、そして今、スクエアプッシャーは “サウンド・オブ・サウンド” つまり “音による響き” を我々にもたらす。 ──PRichard.D.Jams ※
※ リチャード・D・ジェイムス(アートワークに掲載された原文まま)

リチャード・D・ジェイムスとグラント・ウィルソン・クラリッジが主宰した〈Rephlex〉にとっても最重要作品の一つである今作『Feed Me Weird Things』のトラックリストは、トムから渡されたテープをもとにリチャードが監修して組まれたという。アートワークには、リチャードが他のアーティストのために書いた唯一の寄稿文も記載されている(国内盤CDの解説書には対訳を封入)。

初期のEP作品や、96年にリリースされた『Feed Me Weird Things』をきっかけに〈Warp〉と契約したスクエアプッシャーは、同年末に「Port Rhombus EP」、翌97年には「Vic Acid EP」と『Hard Normal Daddy』を〈Warp〉からリリースし、以降レーベルを代表するアーティストとして今もなお第一線で活躍している。

label: Warp
artist: Squarepusher
title: FEED ME WEIRD THINGS
release: 2021/06/04

tracklist:
01 Squarepusher Theme
02 Tundra
03 The Swifty
04 Dimotane Co
05 Smedleys Melody
06 Windscale 2
07 North Circular
08 Goodnight Jade
09 Theme From Ernest Borgnine
10 U.F.O.'s Over Leytonstone
11 Kodack
12 Future Gibbon
13 Theme from Goodbye Renaldo
14 Deep Fried Pizza

Jun Togawa - ele-king

 ヤプーズといえば『ヤプーズ計画』と『大天使のように』はアナログでリリースされましたが、いきなり押し寄せたCD化の波によって『ダイヤルYを廻せ!』以降はCDしかリリースされませんでした。これが20年の時を経てアナログ化されます! 針を落として目をくるくる回してアナログの音を楽しみましょう~。♪いろいろあったわよね~ 覚えているわ~ 


ヤプーズ
ダイヤルYを廻せ!

8月18日(水)
品番:PLP-7171
価格:¥3,850 (税込)(税抜:¥3,500)
★初回生産限定
Pヴァイン盤もベストセラーを続ける言わずと知れたヤプーズの1991年の3作目、『赤い戦車』収録! 邦楽ロック史上最強の大傑作アルバムが初のアナログLP化!(オリジナル・リリース:東芝EMI 1991年)



ヤプーズ
ダダダイズム

発売日:8月18日(水)
品番:PLP-7172
価格:¥3,850 (税込)(税抜:¥3,500)
★初回生産限定
これまたPヴァイン盤もベストセラーを続ける4作目。平成が始まらんとする年1992年に発売した、ヤプーズの底力を思い知らされる1枚。ジム・オルークの愛情たっぷりな解説も。(オリジナル・リリース:東芝EMI 1992年)

※各定価¥3,850(税抜¥3,500)


4日間限定アーカイブ配信
そして、先日行われたバースデイ・ライヴの模様が4日間配信されます!

■JUN TOGAWA BIRTHDAY LIVE 2021
3/31にクラブチッタ川崎で行われたライヴを、ほぼノーカットで配信!
新曲「おしゃれババア」を初披露! ゲストに高木完!

5/7(金)19:00 → 5/10(月)23:59
*チケットの販売は5/10 21:00まで

視聴チケット¥3500 4/24から販売。
Streaming+、ZAIKO
*ZAIKOは海外からの視聴可能。

Otagiri - ele-king

 Otagiri(オタギリ)の『The Radiant』はリアルではない。痛快なほどシュールだ。このアルバムを聴いていると想像力がかき立てられ、思いも寄らぬイメージがつぎつぎと湧きあがってくる。非常にスリリングな音響体験だが、これは日本で生まれたヒップホップのアルバムである。
 文脈を異にするさまざまな音の断片が入り乱れ、予測のつかないかたちでコラージュされていく。ことばも、ラップというよりはポエトリー・リーディングや演説に近い。ひとつひとつのサウンドや単語は、なるほどたしかにドキッとさせる瞬間もあるにはあるが、決定的な人生の物語や内面を描写することはなく、ただ曲全体のなかへと埋没していく。サックスやら声明やら具体音やらが転げまわり、日本語は唐突に英語へと切り替わる。まずは “Music Related” を聴いてみてほしい。

 Otagiri なるこの才能は、すでに10年ほどまえから活動をはじめていたようだ。これまで Soccerboy や S̸ といった名義で音源を発表したりライヴをしたり、劇作家の岡田利規や ECD とコラボしたり、沖縄を拠点にしているらしいこと……しかしより詳しい情報は出てこない。むかしのバンドキャンプのページも削除されてしまっている(コンピ『REV TAPE VOL.2』は生存を確認。ほかにフィジカル盤では、コンピ『Fresh Evil Dead』や ECD のベスト盤にその名が見える)。『fnmnl』のインタヴューから読書好きだというのはうかがえるのだが、バイオ的なことはほぼ不明。直近では KID FRESINO の新作『20,Stop it.』に参加していた。

 本作のプロダクションを手がけるのは横浜のDJクルー LEF!!! CREW!!! の DJ MAYAKU と Otagiri 本人。まず、彼らの音づくりが卓越していることは疑いない。マスタリング担当は90年代から活躍するヴェテラン音職人のツッチー。シンガーソングライターの butaji も客演している。
 このアルバムを聴いていると、 そもそもヒップホップそれ自体が以前までのポップ・ミュージックに抗う、ある意味で実験的な音楽だったことを思い出す。Otagiri は、キャラに頼らずとも音とことばだけで闘えることを証明しようとしている。なにより、これほどまでにサウンドと向き合い、独自の音楽を創造することを諦めない彼自身は、きわめてリアルというほかない。

4 今月聴いた音楽と余談 - ele-king

1. My Bloody Valentine - Loveless

 マイブラが帰ってきた!
〈Domino〉との契約を発表し『Isn't Anything』、『Loveless』、『ep's 1988-1991 and rare tracks』、『 m b v』の再発、ストリーミング解禁。そして『ニューヨークタイムス』の記事でケヴィンが〈Domino〉から2作品のリリースの予定を発表。発売日はまだ未定だが年末までには完成させると言ってるそう。 やったー!
 この際シングルも再発してくれ。なかなか見ないのもあるしとにかく高い。当初の計画では今年に新作のリリースとツアーを予定してたようです。やる気があるならこちらは待ちましょういつまでも。
せっかくなので移動中にSpotifyで聴いていたら、ギターの轟音が電車の走行音と重なっちゃって「あれ? これギター? 電車?」って。そもそも少し音ちっちゃいから全然聞こえなくなってきちゃって。マイブラは都心の移動中に聴くもんじゃないようです。
 『ニューヨークタイムス』がケヴィンの最近の様子を書いてました。最近の趣味は料理と散歩、詠春拳(中国拳法)を習いはじめ、音楽はSpotifyで聴いててお気に入りはフランク・オーシャン。散歩で見つけたらしい鹿の生態をどこかのインタヴューで楽しそうに語っているという。だいぶ穏やかな生活送っているようです。詠春拳してるケヴィン・シールズ……見たい……そういうのが楽しくなってくる年齢なのもわかるけど、「最近好きなのはフランク・オーシャンです(真顔)」なんて言われたらちょっと不安になっちゃうよ……
 マイブラの曲は皆さんもう聴いていると思うのでケヴィンとジェイの謎セッションをどうぞ。

2. The Orielles - La Vita Olistica

 ロンドン、〈Heavenly Recordings〉からThe Oriellesのサード・アルバム!  Stereolabファンなのでこの手のバンドは大好物。ベース・ヴォーカルとドラムの姉妹とギターの3ピース・バンドだけど使う音もアイデアも多彩で聴いてて楽しい!  こういう手数の多さはそれまで触れてきた文化の多様さが出ますね。 本アルバムはセカンド・アルバムのセルフカヴァーの曲も多いのですがガラッと変わったわけではなくアップデートというよりは別解釈。前作も良かったので比べ合わせて聴くと間違い探し的に面白いです。

3. Floating Points, Pharoah Sanders, The London Symphony Orchestra - Promises

 NYCは〈Luaka Bop〉からFloating PointsとPharoah Sandersのコラボ・アルバム! ロンドン交響楽団も参加。版元の〈Luaka Bop〉はDavid Byrneのレーベルなんですね、ということはByrneも一枚噛んでるのか。
 9曲通して1曲に構成されていて、ファラオ・サンダースのサックスもFloating Pointsのシンセももちろんロンドン交響楽団の完璧な演奏もまったく土下座もので素晴らしいんですが、正直、少し地味かなと感じてしまう。高尚すぎて僕にはまだ早いんだな...

ファラオ・サンダースのデケデケデケドォ〜。

アルバムのプロローグの動画で担当楽器やらレコーディングの状況が中々細かく解説されてます。

4. black midi - John L / Despair

 〈Rough Trade〉からblack midiのニュー・シングル。セカンド・アルバムのリリースも決まっているようです
 それにしても〈Rough Trade〉はblack midi、〈Warp〉はSquid、〈Heavenly〉はWorking Men's Club、〈Domino〉はSorry と、ここ数年で頭角を現したポスト・パンク・バンドを老舗レーベルが取得。black midiとSquidは複雑なアンサンブルやシュプレヒゲザング(喋るような歌い方)がとくに似た印象で、どちらもポストロック要素が多い感じ。
 black midiはより禍々しく、曲の緩急がストーリー性を強く感じる。クラウトロックの影響も強そう。おそらくほぼ同世代のshameはツアーも多かったので一足先にアメリカでウケましたが、上記で挙げた様なバンドもコロナがなければもっと大きくなってたかも。


余談

 ここからは音楽関係なく『シン・エヴァンゲリオン』の話をしたいと思います。冒頭の小型潜水艦を改造した月着陸船、ピアノ線で吊られた8号機と戦艦の空中戦から始まり、レイアウト、ボタンの押し方に至るまで、すべてのキャラの一挙一動にオマージュが込められているであろう常軌を逸した作り方。到底追いきれない元ネタの数と特撮の知識。これは『ウルトラマンA』だ! とか『バロム・1』かな、あの漫画かな、この映画かな、などとやってるうちに映画は終盤に差し掛かりで気付いたらマスクは涙でビショビショ。碇ゲンドウは成仏した。綾波もアスカもカヲルも成仏した。シンジとマリは大人になった。あのシンジが。つい2時間前まで鬱で飯も食えなかったシンジが。日本一のオタクからの外に出よという全オタクへのメッセージ。これはTV版でも旧劇でも繰り返し言われてきたことだけど、これまでのエヴァンゲリオンより確実に大人になったキャラクターたちは、庵野秀明は僕らを傷つけて目を覚まさせるのではなく、手を差し伸べ、引っ張っていってくれる。でも僕はとりあえずウルトラマンと仮面ライダーを見直します。
 ひとつ気になって調べたのですが、第3村で綾波(仮)とおばちゃんたちが前進しながら田植えをします。通常手植えでは後進しながら植えますが、一部地域、とくに棚田のある地方は前進しながら田植えするそう。第3村の田んぼは棚田なので前進しながらするのが正解。細かすぎる! 一瞬でも浅知恵で見つけちゃったー! と喜んだのが恥ずかしい。感服です……

食品まつり a.k.a foodman が〈Hyperdub〉と契約!! - ele-king

 これはビッグ・ニュースだ。サン・アロウの〈Sun Ark〉から名作『Aru Otoko No Densetsu』がリリースされ、すでに2年半ほどが過ぎている。次のアルバムはいったいいつ……と期待を募らせていたリスナーも多いだろう。フットワークに触発されながらその後、文字どおり唯一無二のエレクトロニック・ダンス・ミュージックをつくりつづけてきた文字どおりの異才、食品まつり a.k.a foodman が、なんと、〈Hyperdub〉と契約。7月9日に新作『Yasuragi Land』をリリースする。これは、ビッグ・ニュースだ。
 現在、新曲 “星くず展望台” が公開中。曲名どおりロマンティックな要素を持ち合わせつつも、彼らしい独特のリズムが盛大に炸裂している。この夏の必聴盤、確定でしょう。

食品まつり a.k.a foodman

名古屋在住のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、
食品まつり a.k.a foodman
Pitchfork の年間ベストにも選出されるなど、
ワールドワイドな活動を続ける彼が、
レフトフィールド・ミュージックにおけるUKの最重要レーベル、
〈Hyperdub〉と契約!
最新作『Yasuragi Land』を7月9日にリリース決定!
新曲 “Hoshikuzu Tenboudai” がMVと共に解禁!

名古屋在住のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、食品まつり a.k.a foodman。これまでに Pitchfork、FACT Magazine、Tiny Mix Tapes などの海外メディアで年間ベストに選出され、Unsound、Boiler Room、Low End Theory といったシーンの重要パーティーへの出演も果たしワールドワイドな活動を広げる彼が、レフトフィールド・ミュージックにおける最重要レーベル の一つ、〈Hyperdub〉と契約、最新作『Yasuragi Land』を7月9日にリリースすることが発表された。併せて新曲 “Hoshikuzu Tenboudai” のMVが現在公開中となっている。

Foodman, Hoshikuzu Tenboudai
https://youtu.be/5qUCYUI1IqA

食品まつり a.k.a foodman こと樋口貴英(ひぐちたかひで)は、名古屋市出身で、現在も名古屋を拠点に活動をしている。アーティストとしては2010年代初頭に台頭したジュークやフットワークに大きな衝撃を受け、その後の自身の音楽形成に影響を与えたという。彼が伝えているのは、ジュークやフットワークの精神と感覚であり、彼の型破りなスタイルはそれに由来するとも言える。また、他のアーティストのプロデュースも行っており、アルバムにゲスト参加している Bo Ningen の Taigen Kawabe とタッグを組んで Kiseki というデュオでの活動も行なっている。

十代の頃から人前でのパフォーマンスを続ける彼は、人と集まってジャム・セッションしていたことがこのアルバムのインスピレーションになったという。それは一人で行う制作からは得られないものであり、そこから着想を得たサウンドとフィーリングをつなげて完成したのが本作『Yasuragi Land』の核心である。

また、アーティスト名やアルバムのアートワークから想像できるように、彼は食への大きな関心を持っており、アルバムに収録したトラックタイトルにもそれが反映されている。さらに、サウナ好きでも知られる彼が定期的に通う地元の銭湯や、道の駅、パーキングエリアの食堂でのささやかな楽しみにインスパイアされた楽曲も収録されている。

ああいう所に行ったら、その場の雰囲気を楽しむことができます。自分が作りたいと思ったのは、ギターとパーカッションのサウンドを、先が見えないながらも今感じられる穏やかな社会の感覚と組み合わせた真摯なアルバム。『Yasuragi Land』はそんな ‘平穏’ な場所なんです。 ──食品まつり a.k.a foodman

今回のアルバムは〈Hyperdub〉としては珍しくベースが使用されておらず、それによって『Yasuragi Land』は爽やかで洗練された印象を与える。このハイパー・リズミック・ミュージックとも形容できる作品は、2、3のシンプルなツールを用いて制作され、リスナーに脳内でのダンス体験をもたらす。“Yasuragi” や “Parking Area” は、まるで丁寧に分解されたアコースティック・ジャズのようで、“Ari Ari” はマンガに登場するしゃっくりが飛び散ったようなディープ・ハウスだ。“Hoshikuzu Tenboudai” と “Shiboritate” はライヒのようなミニマル・ミュージックのトランス的な要素がアップデートされポリリズム化した楽曲とも表現できる。“Food Court” には機械的なリズムと素朴なメロディが入り組み、“Galley Café” ではキュートな木笛のメロディとマイクロエディットされた木製ドラムが対になっている。ヴォーカル・トラック2曲のうち、Taigen の “Michi No Eki” では、Magma の楽曲のような複雑なロックをカジュアルでデジタルに描き、“Sanbashi ft. Cotto Center” は80年代のR&Bを彷彿とさせる。アルバムを締めくくる “Minsyuku” には、ダフトパンクのトラックから拝借したようなギターが聞こえ、隙間なくもつれ合ったドラムに織り込まれている。

彼の鬼才ぶりが発揮された待望の最新作『Yasuragi Land』は〈Hyperdub〉より7月9日にリリース! 国内盤CDにはボーナストラック “Super Real Sentou” が収録され解説が付属する他、輸入盤CD、デジタルと各種フォーマットで発売される。また、輸入盤LPは8月中旬に発売される予定となっている。

label: BEAT RECORDS / Hyperdub
artist: 食品まつり a.k.a foodman
title: Yasuragi Land
release date: 2021/07/09 ON SALE
* 輸入盤LPは8月中旬発売

国内盤特典:ボーナストラック追加収録 / 解説書封入
CD予約: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11814
LP予約: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11815

tracklist:
01. Omiyage
02. Yasuragi
03. Michi No Eki ft Taigen Kawabe
04. Ari Ari
05. Shiboritate
06. Hoshikuzu Tenboudai
07. Shikaku No Sekai
08. Food Court
09. Gallery Cafe
10. Numachi
11. Parking Area
12. Iriguchi
13. Aji Fly
14. Sanbashi ft Cotto Center
15. Minsyuku
16. Super Real Sentou (Bonus Track) [国内盤CDにのみ収録]

Aaron Cupples - ele-king

 本年2021年初頭に、ベルリンを拠点とするエクスペリメンタル・ミュージック・レーベル〈PAN〉からリリースされたアルバムを紹介したい。ロンドンのプロデューサー/映画音楽作曲家アーロン・カップルズによる『Island of the Hungry Ghosts (OST)』という作品である。
 このアルバムはその名のとおり同名映画作品のサウンドトラックだが、いわゆる「映画音楽を収録したアルバム」とは趣が異なっている作品に仕上がっている。いわばドローン、環境音、そしてノイズなどが混然一体となった「映画音響作品」とでもいうべき作品なのである。「音による映画」とでもいうべきか。
 とはいえ映画の「音響そのものをサウンドトラックとしたアルバム」というものはこれまでもいくつかの作品がリリースされていた。音楽だけではなく環境音、俳優の声、ノイズなどを収めている、文字通り映画のサウンドのトラックである。この『Island of the Hungry Ghosts (OST)』はその系譜に連なる作品といえる。

 例えばデレク・ジャーマン監督の遺作である青画面だけの映画『BLUE』のサウンドトラック・アルバムを思い出しておきたい。この映画はスクリーンにイヴ・クラインの青のような色だけが映し出され、そこにサイモン・フィッシャー・ターナーによる多層的な音響が重ねられていく。イメージを欠いた映画は、その音響の豊穣さによって、観客の聴覚を通して無のイメージを生成する。1994年にリリースされた同作のCD版にはサイモン・フィッシャー・ターナーが手掛けた音響が丸ごと収録されていたのだ。「青画面に覆われたイメージを欠いた映画」を、さらに音だけで聴取することによって研ぎ澄まされた音響体験が可能になる。ちなみにブライアン・イーノやモーマスも参加していたことも記しておきたい。
 そして1997年に〈ECM〉からリリースされたジャン=リュック・ゴダール監督、アラン・ドロン主演の映画『ヌーベルヴァーグ』(1990)のサウンドトラックもそのような「音響映画」とでもいうべきアルバムである。音業技師フランソワ・ミュジーが手掛けた『ヌーベルヴァーグ』の音響トラックすべてをCD2枚に収録し、ゴダールとミュジーの「ソニマージュ」を音だけで鑑賞できるアルバムである。同じくECMから2000年にリリースされたゴダール『映画史』のサウンドトラックCDもゴダール自身が手掛けた全8章に及ぶ『映画史』の音響トラックすべてをCD5枚に収録した豪華なボックスセットだった。
 近年では(映画全編ではないが)、〈Sub Rosa〉からリリースされたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督のサウンドトラック『Metaphors』もアピチャッポンの映画に用いられた音響と音楽が収録され、さながら映画の音を用いたアピチャッポンのインスタレーション作品のようなアルバムに仕上がっていた。ありがたいことに日本盤が〈HEADZ〉からリリースされている。

 ここで紹介するアーロン・カップルズによる『Island of the Hungry Ghosts (OST)』もまたこれら映画音響作品と同様にガブリエル・ブレイディー監督による同名ドキュメンタリー映画作品の音響的サウンドトラック・アルバムである。環境音と音楽の境界線を無化させるようなトラックを収録しているのだ。このアルバムを聴くことで「イメージを持たない映画」が、われわれ聴き手のなかに生成されていくことになる。
 映画『Island of the Hungry Ghosts』はオーストラリアのクリスマス島のセラピスト、ポーリンリーが、島にある亡命者収容所に収容されている亡命希望者たちと会話し、その活動を支援していくさまに加えて、島の自然や儀式も同時に写し取っていくというドキュメンタリー映画である。レーベルは同作を「自然界、人間界、精神界の間を移動するハイブリッド・ドキュメンタリー」と表現している。
 映画『Island of the Hungry Ghosts』は、2018年にトライベッカ映画祭で初公開され、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞するなどの高評価を得た。アーロンによるサウンドトラックも「超自然的なオーラ」「異世界的で実験的な」と高く評価され、英国のインディペンデント映画賞で「ベスト・ミュージック」にノミネートされた。

 映画『Island of the Hungry Ghosts』のサウンドトラックはガブリエル監督とアーロンによって「島」自体を主人公として音響化していくコンセプトで設計された。まずアーロンたちは13フィートに及ぶ自作の弦楽器を自作し、それが発するワイヤー・ドローンと、フィールド・レコーディングされた環境音によって、音とノイズの境界線を溶かすようなサウンドを生み出した。
 ちなみにフィールド・レコーディングを手掛けているのはサウンド・デザイナーのレオ・ドルガンだ(彼は本作におけるアーロンの共作者に近い存在である)。レオ・ドルガンの仕事は完璧に近く、島の自然が発する音を見事に捉え、さながら森林の交響楽のような音を実現している。あのフランシスコ・ロペス的なフィールド・レコーディングのハードコアとでもいうべき録音だ。
 環境音とドローンの豊穣かつ深遠な交錯。『Island of the Hungry Ghosts (OST)』のサウンドにはそのようなミュージック/ノイズの領域が越境していくような感覚が横溢している。その意味では坂本龍一の名作『async』(2017)に近い作品かもしれない。『async』はサウンドトラックではないが、音(ノイズ)と音楽が交錯し、存在しない「映画」の「音響」のようなアルバムであった。

 『Island of the Hungry Ghosts (OST)』のノイズや環境音もまた同様である。ここでは環境音が音楽の中に融解し、音楽が環境音の中に溶け合っている。アルバム冒頭の1曲目 “Night” では島の自然が奏でる(発する)環境音のシンフォニーのような音響が、まるでオーケストラのアダージョのようにしっとりと鳴り響く。続く2曲目 “The Understorey” でやわらかいワイヤー・ドローンがレイヤーされ、環境音と持続が互いにゆっくりと浸透する。私見ではこの1曲目と2曲目に「間」に起きる変化こそが、『Island of the Hungry Ghosts』特有の「音の霊性」のようなものを象徴する瞬間ではないかと思う。
 3曲目 “Blowholes” では雨や波の音のような音が鳴り、対して4曲目 “The Long Walk” では世界から不意に解離した人の心の中のようなワイヤー・ドローンが鳴る。静謐な持続音がまるでオーケストレーションされるように音量を増していくだろう。このコンポジションはアーロンの作曲家としての力量を示しているように感じられた。音が浮遊するような緊張感に満ちている。
 5曲目 “Trapped Air” では儀式の始まりを告げるような鐘の音を収録している。その背後には透明な音の霧のように鳴っていることにも注意したい。6曲目 “The Hungry Ghost” では微細な鐘と響くような鐘の音が折り重なり、儀式それじたいの音響のように音響空間を支配する。アルバムのクライマックスのひとつともいえよう(アナログ盤ではここでA面が終わる)。
 7曲目 “Fire & Jungle” では文字通り火を燃やす音から始まり、島の森林に鳴る大自然の音(虫の音の大合唱!)へと変化を遂げていく。8曲目 “The Protester” ではその森林の音響が次第に消え、再びやわらかな絹のようなドローンが生成する。
 9曲目 “Ocean & Prayers” では海の音(波)が鳴り、やがて人の声(祈りか朗読のような)へと変化する。そしてアルバム最終曲10曲目 “Sand Return” ではドローンの折り重なりからオーケストラの序曲のような音の積み重ねを聴かせることで、アルバムは終わりを告げる。

 『Island of the Hungry Ghosts (OST)』の全10曲を通して聴くと、ノイズとドローンの反復によって、映画の重要なテーマである「セラピー」と「儀式」の問題を音から浮かび上がらせてくれるかのようだ。まるで心身に浸透する「儀式的音響」のようにも聴こえてくるのである。
 映像から音響へ。音響から環境へ。環境から身体へ。そして身体から心理へ。心身に「効く」音の織物がここにある。そう、『Island of the Hungry Ghosts (OST)』は、稀有な音響設計を誇るサウンドトラックであり、繊細にして豊穣な音響空間を誇る見事な音響作品なのである。

My Bloody Valentine - ele-king

 先日、ストリーミングの解禁とLP&CDのリイシューで大いに話題を集めたマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。彼らは今度、NTS Radio のキュレイターを務めることになった。同ラジオの10周年を祝う企画で、放送は4月19日。アルカやドップラーエフェクト、ミカ・レヴィやセオ・パリッシュに混じってのキュレイトというのは興味深い。聴き逃し厳禁案件です。


マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン
待望のサブスク解禁が話題沸騰中!
4月19日には NTS Radio にて
特別放送をキュレーション!
5月21日には新装盤CDとLPが再発!

3月31日に、突如『Isn’t Anything』『loveless』『m b v』のアルバム3作、そして4枚のEP作品とレアトラックをまとめた『ep’s 1988-1991 and rare tracks』のストリーミング配信およびダウンロード販売を一挙に解禁したマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。世界中の音楽ファンが熱狂する中、日本でも Spotify の「バイラルトップ50」の1位となるなど、大きな話題となった。

ストリーミング、CD/LP予約リンク
https://fanlink.to/mbv2021

5月21日には新装盤CDとLPの発売も控える中、英ロンドンの人気ネットラジオ局 NTS Radio の10周年を記念し、スペシャルゲストがキュレーターを務める特別企画『NTS 10』にマイ・ブラッディ・ヴァレンタインが登場することが発表された。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインは、初日となる4月19日(月)の放送でキュレーターを務める。なお、この企画は、世界の食糧資源の統合と分配の改善、食品の浪費の減少、食糧不足に悩む国と地域への協力を目的として創立されたグローバル・フードバンキング・ネットワーク(Global Foodbanking Network)への寄付を募るチャリティ放送となっている。キュレーターにはその他、アルカやミカ・レヴィ、ローリー・アンダーソン、セオ・パリッシュらが名を連ねている。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの新装盤CDとLPは5月21日に世界同時リリース!
各作品の発売形態は以下の通り。

Isn't Anything
・国内盤CD(高音質UHQCD仕様/解説書付/リマスター音源)輸入盤CD
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/解説書付/オリジナル1/4インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/オリジナル1/4インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・スタンダード・エディションLP
・国内盤CD+TシャツセットのTシャツ・デザインには『Feed Me With Your Kiss』EPのアートワークを採用(『m b v』のTシャツセットのデザインとは異なります)

loveless
・国内盤2枚組CD(高音質UHQCD仕様/解説書付/CD1にリマスター音源、CD2には1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録)
・輸入盤2枚組CD
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/解説書付/1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・スタンダード・エディションLP
・国内盤CD+TシャツセットのTシャツ・デザインには、アルバムのアートワークを採用

m b v
・国内盤CD(高音質UHQCD仕様/解説書付)
・輸入盤CD
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/解説書付/オリジナル1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・デラックス・エディションLP(高品質チップオン・ジャケット式ゲートフォールド・スリーヴ仕様/オリジナル1/2インチ・アナログ・テープからマスタリングされた音源を収録/180g重量盤)
・スタンダード・エディションLP
・国内盤CD+Tシャツセット用のTシャツ・デザインには『Feed Me With Your Kiss』EPのアートワークを採用(『Isn't Anything』のTシャツセットのデザインとは異なります)
・日本語帯付盤デラックス・エディションLP+Tシャツセット用のTシャツ・デザインには『Glider』EPのアートワークを採用

ep’s 1988-1991 and rare tracks
・国内盤2枚組CD(高音質UHQCD仕様/解説書付/リマスター音源)
・輸入盤2枚組CD
・国内盤CD+TシャツセットのTシャツ・デザインには『You Made Me Realise』EPのアートワークを採用

UHQCD (Ultimate High Quality CD):
CD規格に準拠しており、既存のプレーヤーで再生可能。
新しく開発された製法により、従来の高音質ディスクよりさらに原盤に忠実な音を再現。


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: Isn't Anything
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-666 ¥2,300+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-666T ¥6,800+税

帯付き盤デラックスエディションLP (解説書付き)
BRDWGLP158X
帯付き盤デラックスエディションLP+Tシャツセット
BRDWGLP158XT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11779


Tシャツセット


帯付きデラックスエディションLP

[CD TRACKLISTING]
01. Soft As Snow (But Warm Inside)
02. Lose My Breath
03. Cupid Come
04. (When You Wake) You’re Still In A Dream
05. No More Sorry
06. All I Need
07. Feed Me With Your Kiss
08. Sueisfine
09. Several Girls Galore
10. You Never Should
11. Nothing Much To Lose
12. I Can See It (But I Can’t Feel It)

[LP TRACKLISTING]
SIDE ONE
01. Soft As Snow (But Warm Inside)
02. Lose My Breath
03. Cupid Come
04. (When You Wake) You’re Still In A Dream
05. No More Sorry
06. All I Need
SIDE TWO
01. Feed Me With Your Kiss
02. Sueisfine
03. Several Girls Galore
04. You Never Should
05. Nothing Much To Lose
06. I Can See It (But I Can’t Feel It)


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: Loveless
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤2CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-667 ¥2,500+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-667T ¥7,000+税

帯付き盤デラックスエディションLP (解説書付き)
BRDWGLP159X
帯付き盤デラックスエディションLP+Tシャツセット
BRDWGLP159XT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11780


Tシャツセット


帯付きデラックスエディションLP

[CD TRACKLISTING]
CD 1: remastered from original 1630 tape
01. Only Shallow
02. Loomer
03. Touched
04. To Here Knows When
05. When You Sleep
06. I Only Said
07. Come in Alone
08. Sometimes
09. Blown a Wish
10. What You Want
11. Soon
CD 2: mastered from original 1/2 inch analogue tapes
01. Only Shallow
02. Loomer
03. Touched
04. To Here Knows When
05. When You Sleep
06. I Only Said
07. Come in Alone
08. Sometimes
09. Blown a Wish
10. What You Want
11. Soon

[LP TRACKLISTING]
A Side
01. Only Shallow
02. Loomer
03. Touched
04. To Here Knows When
05. When You Sleep
06. I Only Said
B side
01. Come in Alone
02. Sometimes
03. Blown a Wish
04. What You Want
05. Soon


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: m b v
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-668 ¥2,300+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-668T ¥6,800+税

帯付き盤デラックスエディションLP (解説書付き)
BRDWGLP160X
帯付き盤デラックスエディションLP+Tシャツセット
BRDWGLP160XT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11781


CD Tシャツセット


LP Tシャツセット


帯付きデラックスエディションLP

[CD TRACKLISTING]
01. she found now
02. only tomorrow
03. who sees you
04. is this and yes
05. if i am
06. new you
07. in another way
08. nothing is
09. wonder 2

[LP TRACKLISTING]
side a
01. she found now
02. only tomorrow
03. who sees you
04. is this and yes
side b
01. if i am
02. new you
03. in another way
04. nothing is
05. wonder 2


label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: My Bloody Valentine
title: ep's 1988-1991 and rare tracks
release date: 2021/05/21 FRI ON SALE

国内盤2CD (高音質UHQ仕様 / 帯解説書付き / リマスター音源)
BRC-669 ¥2,500+税
国内盤CD+Tシャツセット:BRC-669T ¥7,000+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11782


Tシャツセット

[CD TRACKLISTING]
CD 1
01. you made me realise
02. slow
03. thorn
04. cigarette in your bed
05. drive it all over me
06. feed me with your kiss
07. i believe
08. emptiness inside
09. i need no trust
10. soon
11. glider
12. don’t ask why
13. off your face

CD 2
01. to here knows when
02. swallow
03. honey power
04. moon song
05. instrumental no. 2
06. instrumental no. 1
07. glider (full length version)
08. sugar
09. angel
10. good for you
11. how do you do it

Meemo Comma - ele-king

 オトナになれ。そういう話だそうだ。ググってネタバレは調査済みだが、映画自体はまだ観ていない。列島が『シン・エヴァ』一色に染まってしまったかのように見えなくもなかったこの3月、遠く海を隔てたUKから「いや、やっぱTV版でしょ」と言わんばかりの挑発的なタイトルを持つアルバムが届けられた。送り主はミーモ・カンマ、本名ラーラ・リックス=マーティン。マイク・パラディナスのパートナーである。これまでに3枚のアルバムをリリース、パラディナスと組んだヘテロティックとしても2枚のアルバムを残している。
 じつは、彼女の影響力は大きい。紙エレ年末号をお持ちの方は、いま一度パラディナスのインタヴューを読み直してみてほしい。黒人たちのメンタル・ヘルスを支援するためのチャリティ・コンピ『Music In Support Of Black Mental Health』は彼女の発案によるものだ。「妻は僕の物事に対する考え方の多くを変えてくれた」「彼女が僕のポリティクスを変えた」と彼は述べている。ふたりの信頼関係は『ワイアー』の「目隠しジュークボックス」や『クワイータス』の相互インタヴュー記事からもうかがい知ることができよう。そんな彼女が日本のアニメ・ファンでもあったことは興味深い。

 タイトル・シークエンスの “Neon Genesis” ではジャングルのリズムが用いられているが、なるほど、その神秘的なヴォーカルの響かせ方は “残酷な天使のテーゼ” (の間奏)を想起させなくもない。この手法は、やはりジャングルの断片がねじこまれた “Tif’eret” やビートレスの “Ein Sof”、“Tzimtzum” といった多くの曲で導入されており、アルバム全体のムードを決定づけている。
 だが、じっさい『エヴァ』からインスパイアされたのはヴィジュアルのほうで、サウンドのレファランスは『攻殻』のサントラだそうだ。たしかに、これは鷺巣詩郎ではない。14歳のリックス=マーティンは初号機ではなく、殻を着たゴーストと出会ったのだ。レーベルの紹介文では「GHOST IN THE SHELL」と「S.A.C.」の両方が言及されている。つまり、親は川井憲次と菅野よう子のふたり、ということになる。ファースト・アルバムのタイトルも『Ghost On The Stairs』だった。そうとう好きなんだろう。
 架空のアニメ・サントラと謳われているとおり、ビートのある曲は戦闘や疾走のシーンを想起させる。“Unit Chai” で戯れる電子音なんかは、タチコマ的なメカがなにかをサーチしているかのようだ。逆にビートのない曲はグライム以降のウェイトレス感を漂わせ、廃墟や心理描写の場面を想像させる。もっともよくできたトラックは “Merkabah” だろう。くぐもったドラムの鳴りとフットワークばりに切り刻まれたヴォーカルの応酬が、生命力あふれるリズムを紡ぎだしている。

 本作のより大きなテーマはずばり、ユダヤ教だ。アダムとイヴ、使徒(天使)、生命の樹……『エヴァ』や『攻殻』、『ハガレン』などのアニメを享受する過程で彼女は、そこにみずからのルーツたるユダヤ教的・旧約聖書的なモティーフが登場することに惹きつけられる。アニメに限らず、多くのSFにはカバラ──ユダヤ教にもとづく神秘主義思想──が影を落としていると、リックス=マーティンは指摘する。たしかに終末論は定番ではあるが、「カバラにも美しくて、希望に満ちた考えがあってね」と彼女は補足する。たとえば、最初の人間には性別がなかった。本作はそのセックスレス/ジェンダレスな発想をSFと結びつけることで、「サイボーグ宣言」への回路を開いている──そんな深読みも可能かもしれない。
 ともあれ彼女がユダヤの思想やモティーフを強く意識するようになったきっかけは、子どもができたことだったという。リックス=マーティン自身はずっとユダヤ人として生きてきたわけだが、パートナーとのあいだに生まれた子たちはそうではない。だから彼らに、自分たちが深い文化的背景を持っていることを知ってほしかった。そのような話を彼女は上述のインタヴューで語っている。親の、心だ。このポジティヴな動機が一見ダークな本作に、ある種の陽気さをもたらしているのだろう。

 たしかにこのアルバムは暗い。けれども悲愴感をまき散らしてはいない。重苦しさとも無縁で、ユーモラスで、ときにコミカルでさえある。そもそも「Neon Genesis」と題したアルバムを『シン・エヴァ』公開のタイミングで発表すること自体、ちょっとしたいたずらのようなものだ(まあ、映画は何度も公開延期の憂き目を見ているので、意図したことではないんだろうけど)。対象との距離が、ここにはある。滅びゆく世界の主人公と同化し、おのれを憐れみながらカタルシスを調達する視聴者の姿は、ここにはない。ラーラ・リックス=マーティンは子を持つ親なのだ。オトナにならざるをえない。
 ならばこれはTV版よりむしろ、『シン・エヴァ』に接近した作品ではないか。いやいや、「オトナになれ」というメッセージはTV版のころからずっと変わっていない、そんな意見も耳に入ってきてはいる。TV版や旧劇が描いていたのは「オトナになる」ことではなく、「他者と出会う」ことだとぼくは解釈しているので、さて新劇がほんとうはどのような結末を迎えたのか、この目でたしかめたくなってきた。

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