「AY」と一致するもの

TINY POPというあらたな可能性 - ele-king

 2018年、私は新しいポップスの気配を感じながら過ごしていました。明確にポップス構造を持った、しかし小さくささやかな音楽が生まれつつあるようです。何年か前に“あたらしいシティポップ"などと言われた音楽は、どうしてもフォークやロック的な価値観がそこにありましたが、インターネット以降に音楽を始めた世代の人たちはギター・ミュージックに迂回することなく直接ポップスに接続し、それを手元のプラグインで再現しています。ポップスを獲得して手元に置いておくささやかな喜び。表面的な粗さ、ローファイさ、デモっぽさはありますが、それすら魅惑的に思える曲たちを、ここではTINY POPと呼んでいくつか紹介させていただきます。


1.mukuchi – 冷蔵庫


mukuchiは兵庫県北部の日本海側沿岸にある漁村で1人音楽を作っている女性宅録ミュージシャン。
Teenage Engineering POシリーズ、KORG VOLCA-KEYSなどのガジェット系シンセを駆使して作られたこのトラックの隙間から普遍的なポップスが立ち上がるのが見えませんか。毎回1小節だけ挿入される聞き慣れない転調にも驚かされる。


2.NNMIE – 風は吹いていた方がいい


NNMIEは山形出身のミュージシャン。2011年からインターネット上に曲をアップし始め、彼の影響で音楽を始めたと公言する人も多い。2017年に入ってから東京でもライブ活動を始めている。この男女のユニゾンで歌われるメロディは2018年耳にしたもので最も美しいものの1つだった。


3. ゆめであいましょう - odayakani hisoyakani


ゆめであいましょうは5人のバンド編成では日本のフォークやサイケの影響を感じさせる演奏をするが、この打ち込み80年代歌謡の路線は現世を生きている人とは思えない歌詞とメロディだ。完全に構造を把握して作曲しているのがうかがえる。中心人物の宮嶋さんはヤマハのポプコンに出場するのが目標と言っていたがやはり現世を生きているとは思えない。女性ボーカルのJ-POP的な上昇志向とは無縁の真っ直ぐな歌声(これもJ-POP的な声の評価で使い古されている表現だがまさに)も本当に素晴らしい。2019年はこの打ち込み80s路線の音源を作るらしいので期待です。


4. どろうみ - 花よ花よ


どろうみは日本のオルタナティブフォークの伝統を受け継ぐユニットで、現在はボーカル・ギター・チェロ・アコーディオンの4人で活動している。この曲は天童よしみに歌わせるつもりで作ったとコメント欄にあるように演歌の構造を手元にトレースすることに成功している。関係ないが先日浅草の宮田レコード(演歌の営業・インストアライブでも有名な老舗レコード屋)に久しぶりに立ち寄った際、店内を見回してもまだ新譜を7インチで出すという文化は演歌界には届いていないことがわかった。インディー演歌という理論上は存在するジャンルのこの曲をレコードにしてどろうみのポスターと一緒に店頭に並べることは可能だろうか?


5. onett - 干されてもいい


onettは埼玉の宅録ミュージシャン。この曲は彼の代表曲ではないかもしれないが筆者の心に刺さり2018年の前半によく家で口ずさんでいました。エルヴィスコステロ、そして"日本のエルヴィスコステロ"の構造を譜割りから音色まで抽出することによって明らかにし、そこに平易な歌詞が載る(いきなり拙者という言葉が飛び込んでくると驚いてしまいますね)。この曲から、ポップスの構造把握には移入とは別にまだまだ可能性があると気づかされました。


6. アフリカレーヨン – 上海で逢いましょう


アフリカレーヨンはボーカルを担当するmimippiiiと作曲を手がけるmikkatororoのユニット。現在は活動を休止している。
ボーカルのmimippiiiも80年代初期グループアイドルを彷彿とさせるような曲を作る優れたソングライターだが彼女の楽曲は現在全て非公開になっている。(ナイーブさを持った作家の人も多いので曲がアップされたらすぐ聴かないと!という気になってしまいます。) mikkatororoが作詞作曲を手がけたこの曲はアフリカレーヨンが残した全6曲の中の最高傑作で、このまま他のシンガーが歌ってヒットになってしまってもおかしくないくらいのクオリティだ。活動再開としかるべき形でのリリースを期待したい。


7. Maho Littlebear – リスボンの夏


シンガー・トラックメイカーのMaho Littlebearは現在は京都からドイツ・フランクフルトに拠点を移して活動中。硬質なビートに自身のボーカルが乗るトラックが多数soundcloudに公開されているが、3年前のこの曲は趣を異にしている。これはリスボンへの郷愁を歌ったもので、ここで発せられるカリプソのパルスからは80年代後半のワールドミュージックブーム(トレンディエスノ by anòuta)を取り入れた日本のポップス(早瀬優香子、ANNA
BANANA、戸川京子、岩本千春の91年コンピレーション”World Beat Beauty”が有名)が偶然か聴こえてこないだろうか。


8. にゃにゃんがプー - おねむのくに


モバイル版GarageBandで制作したオケにチャイルディッシュなボーカルを載せるスタイルで"ニュー餅太郎(2015)"という名曲とともに世に登場したにゃにゃんがプー。その音色から日本のニューウェーブやテクノポップの文脈で語られることが多いが、一昨年に出たこの曲のイントロや間奏への転調、音色を使い分け交わされるインタープレイなどを改めて聴くとlate 80s歌謡を現代にトレースした最良の曲の1つだという確信をもった。今年アルバムが出るらしいので期待したい。


9. mori_de_kurasu – MIMOCA


“森で暮らす”氏はジャズスタンダードを素材にしたサックスの多重録音やジャズクラブでの演奏にも取り組むアルトサックス奏者。この曲はシンセを使ったフュージョン調でここ数年のVaporwaveやフュージョン再評価の流れに沿ったものではあるがジャズプレイヤー側から出てきたのは悲願というかやっと来たか!と唸ってしまいました。ジャズ出身の人でこの価値観をsoundcloudでやる人が出て来てほしいと思っていた人も多いだろう。サックスの音色が素晴らしい!今後の活動にも注目です。


10.Utsuro Spark – シーサイド


 Utsuro SparkはPIPPI・コロッケ・土萠めざめの3人によるユニット。昨年各所で話題になったネットレーベルLocal Visionsから出たEPは私の2018年ベストチャート1位でした。声・作曲・編曲全て素晴らしい。どの曲もアイデアがありながらオーセンティックな響きを持っているがこの曲だけ一聴しても異様で、様々なポップスの記憶に引っ張られそうになりながらもそれを裏切り続けて進むコード進行が素晴らしい。PIPPI氏は "最近もう「明日からアマチュアの曲しか聴けない」という制約を受けても余裕だと思えるな。音楽が商業化して大資本が管理してた時代が一段落して個人個人のもとに戻ってきたように思える"とツイートしていたがそれこそTINY POPの思想そのものです。


11. wai wai music resort - 夜の思惑〜Last Bolero


waiwai music resort は作曲と演奏を担当するエブリデと歌のLisaによる兄妹ユニット。ここ数年、日本でも起きているキューバのフィーリン再評価によってボレロという言葉がポジティブに響く時代になっているが、その反射がTINY POPS界にも届いている。この曲はそのボレロのリズムに乗って螺旋状に上昇していくブラジル寄りのメロディが素晴らしい。


12. feather shuttles forever - 提案 to be continued edit (feat. Tenma Tenma, kyooo, 粟国智彦, 入江陽,SNJO, 西海マリ)


 feather shuttles forever はhikaru yamadaと西海マリによるユニット。この曲は関西を代表する90年代シティポップディガーのinudogmask
aka.台車によるmix(https://soundcloud.com/inudogmask/inudogmask) にインスパイアされて書きました。多数のゲストを迎えたTINY POPSのチャリティーソング。2人でメロディを書き分けているので一度もループしないのが特徴です。


この他にも自薦・他薦に関わらずこれこそtiny popだと思うものがあったら連絡ください。ぜひ紹介させてもらいたいしリリースの手伝いなどもやります。

FEBB - ele-king

 昨年2月15日、不慮の事故により亡くなったラッパー/プロデューサーのFEBB。STRUGGLE FOR PRIDE の『WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.』や Gottz の『SOUTHPARK』にもそのラップやプロダクションがフィーチャーされていたけれど、24歳の若さで逝去してしまった彼の一周忌となる今年2月15日に、追悼イベント《STILL SEASON》が開催されることが決定した。彼と同じく Fla$hBackS のメンバーだった KID FRESINO や JJJ をはじめ、B.D.、DMF、DOWN NORTH CAMP など、多くのアーティストが出演する。会場は渋谷 WWW X。詳しくは下記をご確認ください。

2018年2月15日に逝去したラッパー/プロデューサー/DJの FEBB AS YOUNG MASON (享年24歳)の一周忌に、追悼イベント《STILL SEASON》が渋谷WWW Xで開催される。

JJJ、KID FRESINO と共にFla$hBackSのメンバーとして活動、唯一のアルバム『FL$8KS』が高く評価され一躍シーンの重要人物となった。
ソロ・デビュー・アルバム『THE SEASON』の発表、SPERB とのユニット CRACKS BROTHERS、A-THUG、KNZZ らとの DAWG MAFIA FAMILY など精力的に活動をしてきた。2017年10月に GRADIS NICE & YOUNG MAS 名義によるアルバム『L.O.C -Talkin' About Money-』を発表。
《STILL SEASON》の出演者には、JJJ、KID FRESINO のほか、B.D.、DMF、DOWN NORTH CAMP、MIKI&KIKUMARU (KANDYTOWN)、SPERB によるライヴ、ETERNAL STRIFE、日本横町 (Marfa by Kazuhiko Fujita) のDJが決定している。
SPACE SHOWER TV Black File によるドキュメンタリー番組『look back to FEBB AS YOUNG MASON』の上映のほか、Banri Kobayashi (Diaspora skateboards)、Daiky As Tosatsuma、Goro Kosaka によるギャラリーも併設。ROCCO'S NEW YORK STYLE PIZZAの出店も予定している。
1月26日(土)午前10時より前売券が発売される。

タイトル:STILL SEASON
日付:2019/2/15(金)
OPEN / START:18:00
会場:WWW X
前売券 / 当日券:3,000円+1D

LIVE:
B.D.
DMF
DOWN NORTH CAMP
JJJ
KID FRESINO
MIKI&KIKUMARU (KANDYTOWN)
SPERB

DJ:
ETERNAL STRIFE
日本横町 (Marfa by Kazuhiko Fujita)

上映:
Black File : look back to FEBB AS YOUNG MASON

GALLERY:
Banri Kobayashi(Diaspora skateboards)
Daiky As Tosatsuma
Goro Kosaka

FOOD:
ROCCO'S NEW YORK STYLE PIZZA

前売券(発売日:1月26日(土)午前10時):
e+、ぴあ、ローソン、トラスムンド店頭

Phony Ppl - ele-king

 先週初の来日を果たし、熱気あふれるパフォーマンスを披露してくれたブルックリンの新世代5人組ソウル・バンド、フォニー・ピープル(Phony Ppl)。「西がジ・インターネットなら、東はフォニー・ピープルだ!」と、大きな注目を集めている彼らのニュー・アルバム『mō zā-ik.』が、本日ついにCDでリリースされる。マーヴィン・ゲイやスティーヴィーなど70年代黄金期のソウルを彷彿とさせるその新作は、古き良きブラック・ミュージックの魂が現代においてもしっかり息づいていることを教えてくれる。聴かないと単純に損しちゃいますよ。

現代最高のヒップホップ~ソウルを響かせるフォニー・ピープルによる最新作『mō zā-ik.』が遂に本日リリース! KANDYTOWN の MASATO、KIKUMARU からの推薦コメントも到着!

これが現代最高のヒップホップでありソウルだ! 歌姫エリカ・バドゥとの共演も果たすブルックリンのヒップホップ・ソウル・コレクティヴ=Phony PPL(フォニー・ピープル)による最新作『mō zā-ik.』が念願の世界初CD化! さらに KANDYTOWN の MASATO、KIKUMARU からアルバムへ対する推薦コメントも到着!

https://www.youtube.com/watch?v=ri_3z0l1HMI

■MASATO(KANDYTOWN)
ジャンルに縛られないメロディとドラミングが Phony Ppl のオリジナルさだと感じる。
曲の展開はいい意味で期待を裏切ってくる。特に、“Move Her Mind.”がHookに入る前の引き的な感じでずっと進んで、気持ちよく終わって行くのがいい。アルバム通して聴ける作品。

■KIKUMARU(KANDYTOWN)
Phony Ppl は何よりもライブが良い。New Yorkでドラマーのマヒューと出会い、Blue Noteでの公演を見たあの日から完全に彼等のファンになってしまった。
何処と無く感じるNYのGroove。“Way Too Far”から“on everytinG iii love”までのSmoothな流れに誰もが心を踊らされるだろう。
今後の Phony Ppl に期待せざる得ない。


◆これまでに届いた豪華推薦コメントの数々も必読!

■DJ JIN(RHYMESTER, breakthrough)
連綿と続くソウル・バンドの系譜を思い起こしながら、いまの極上グルーヴをシミジミと味わう。やっぱ音楽最高。個人的には、あのヒップホップ・レジェンド、DJジャジー・ジェイの息子=マフューがドラムを務めていることにグッとくる。

■小渕 晃(元bmr編集長、City Soul)
ロスアンジェルスの The Internet、ロンドンの Prep、それに Suchmos らと同時進行で、いまの世界的なソウル・バンド・ブームを牽引するニューヨークの注目株の、注目しないわけにはいかない新作。
ポップさと、コンシャス具合のバランスがオリジナルで、繰り返し聴きたくなる1枚です。

■末﨑裕之(bmr)
西がジ・インターネットなら、東はフォニー・ピープルだ!
ジ・インターネットが「仲間」だと認め、マック・ミラーやドモ・ジェネシス作品に関わるなど西海岸からも支持を得るだけでなく、チャンス・ザ・ラッパーとも共演したブルックリンの音楽集団がさらなる成長と深化を見せるマスターピース。
メンバー個々の才能が混ざり合い、R&B、ファンク、ジャズ、ラテン、ヒップホップが自在に組み合わさった、ひとつのユニークなモザイク画として完成した。
フォニー・ピープル。彼らは間違いなく、知っておくべき“ホンモノ”だ。

■OMSB(SIMI LAB)
あらゆるジャンルを飲み込みながらも、絶妙で軽やかなポップセンスで、どこかレアグルーヴ的な懐かしさも残す本当の意味での王道neo soul。
恐らくそんなジャンル分けにも固執せず、純粋に phony ppl 式の心地良い音楽を作ろうと言う気概を感じます。
信頼のド直球なフリをして程よく裏切るフレッシュなバランス感が最高!
全曲心地良いですが、一押しはビートレスのアコギ一本にハスキーな子供の声風ピッチチェンジが効いたM7 “Think You're Mine”! 兎に角楽しんで!

【アルバム詳細】
PHONY PPL 『mo'za-ik.』
フォニー・ピープル 『モザイク』
レーベル:Pヴァイン
発売日:2019年1月23日
価格:¥2,200+税
品番:PCD-22412
[★解説:末﨑裕之 ★世界初CD化]

【Track List】
01. Way Too Far.
02. Once You Say Hello.
03. somethinG about your love.
04. Cookie Crumble.
05. the Colours.
06. One Man Band.
07. Think You're Mine.
08. Move Her Mind.
09. Before You Get a Boyfriend.
10. Either Way.
11. on everythinG iii love.

On-U Sound - ele-king

 いやー、嬉しいニュースですね。かなり久びさな気がします。〈On-U〉がそのときどきのレーベルのモードをコンパイルするショウケース・シリーズ、『Pay It All Back』の最新作が3月29日に発売されます。
 最初の『Vol. 1』のリリースは1984年で、その後1988年、1991年……と不定期に続けられてきた同シリーズですけれども、00年代以降は長らく休止状態にありました。今回のトラックリストを眺めてみると、ホレス・アンディリー・ペリーといった問答無用の巨匠から、まもなくファーストがリイシューされるマーク・ステュワートに、思想家のマーク・フィッシャーが『わが人生の幽霊たち』(こちらもまもなく刊行)で論じたリトル・アックスなど、〈On-U〉を代表する面々はもちろんのこと、ルーツ・マヌーヴァやコールドカットやLSK、さらに日本からはリクル・マイにせんねんもんだいも参加するなど、00年代以降の〈On-U〉を切りとった内容になっているようです。これはたかまりますね。詳細は下記をば。

Pay It All Back

〈On-U Sound〉より、《Pay It All Back》の最新作のリリースが3月29日に決定! リー・スクラッチ・ペリーやルーツ・マヌーヴァらの新録音源や未発表曲を含む全18曲入り! 日本からはリクル・マイ、にせんねんもんだいが参加!

ポストパンク、ダンス・ミュージックなど様々なスタイルの中でダブを体現するエイドリアン・シャーウッドが率いるUKの〈On-U Sound〉より、1984年に初めてリリースされた《Pay It All Back》シリーズの待望の最新作、『Pay It All Back Volume 7』のリリースがついに実現! リリースに先立ってトレイラーと先行解禁曲“Sherwood & Pinch (feat. Daddy Freddy & Dubiterian) - One Law For The Rich”が公開された。

Pay It All Back Volume 7 Trailer
https://youtu.be/Ro8QcLi5azg

Sherwood & Pinch (feat. Daddy Freddy & Dubiterian) - One Law For The Rich
iTunes: https://apple.co/2W5AA6l
Apple: https://apple.co/2R36YD1
Spotify: https://spoti.fi/2DmeqW0

今回の作品にはルーツ・マヌーヴァ、リー・スクラッチ・ペリー、コールドカット、ゲイリー・ルーカス(from キャプテン・ビーフハート)、マーク・スチュワート、ホレス・アンディといった錚々たるアーティスト達の新録音源、過去音源の別ヴァージョン、そして未発表曲などを収録した、まさにファン垂涎モノの内容となっている。また、日本からはリクル・マイ、にせんねんもんだいが参加している。

LPとCDには〈On-Sound〉のバックカタログが全て乗った28ページのブックレットが付属し、デジタル配信のない、フィジカル限定の音源も収録されている。また、アルバム・ジャケットにはクラフト紙が使用された、スペシャルな仕様となっている。

〈On-U Sound〉からのスペシャル・リリース『Pay It All Back Volume 7』は3月29日にLP、CD、デジタルでリリース。iTunes Storeでアルバムを予約すると、公開中の“Sherwood & Pinch (feat. Daddy Freddy & Dubiterian) - One Law For The Rich”がいち早くダウンロードできる。

label: On-U Sound / Beat Records
artist: VARIOUS ARTISTS
title: Pay It All Back Volume 7
cat no.: BRONU143
release date: 2019/03/29 FRI ON SALE

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10072

TRACKLISTING
01. Roots Manuva & Doug Wimbish - Spit Bits
02. Sherwood & Pinch (ft. Daddy Freddy & Dubiterian) - One Law For The Rich
03. Horace Andy - Mr Bassie (Play Rub A Dub)
04. Neyssatou & Likkle Mai - War
05. Lee “Scratch” Perry - African Starship
06. Denise Sherwood - Ghost Heart
07. Higher Authorities - Neptune Version*
08. Sherwood & Pinch ft. LSK - Fake Days
09. Congo Natty - UK All Stars In Dub
10. Mark Stewart - Favour
11. LSK and Adrian Sherwood - The Way Of The World
12. Gary Lucas with Arkell & Hargreaves - Toby’s Place
13. Nisennenmondai - A’ - Live in Dub (Edit)
14. African Head Charge - Flim
15. Los Gaiteros de San Jacinto - Fuego de Cumbia / Dub de Sangre Pura (Dub Mix)
16. Little Axe - Deep River (The Payback Mix)
17. Ghetto Priest ft. Junior Delgado & 2 Bad Card - Slave State
18. Coldcut ft. Roots Manuva - Beat Your Chest

interview with Gang Gang Dance - ele-king

 いまから振り返って、ゼロ年代に盛況を見せたブルックリン・シーンはブッシュ政権に代表されるような強くて横暴なアメリカに対する意識的/無意識的な違和感や抵抗感を放つ磁場として機能していたのではないだろうか。古きアメリカをサウンドや音響の更新でモダンに語り直そうとしたアメリカーナ勢が注目されるいっぽうで、ブルックリンのエクスペリメンタル・ポップ・アクトたちは「非アメリカ」を音にたっぷり注ぎこむというある種わかりやすくアーバンなやり方で旧来的な「アメリカ」に抗したと言える。だとすると、トライバルなリズムと異国の旋律や和声を生かしながら、それをミックスしグツグツと煮詰めてポップにしたギャング・ギャング・ダンスは、ブルックリン・シーンにおける「非アメリカ」を象徴する存在だった。ブルックリンの街の風景がそうであるように、「アメリカ以外」が当たり前に混ざっていることこそが現代の「アメリカ」なのだと。いまでこそ多様性という価値観でマルチ・カルチュラル性を標榜することは浸透したが、当時の内向きな情勢にあって、外の世界を積極的に見ようとした彼らの功績はいま振り返っても大きい。
 10年代に入るとブルックリン・シーンは次第に拡散し、ニューヨークの地価と物価は上がり続けた。金のないアーティストたちはブルックリンを離れ、そして、ギャング・ギャング・ダンスも11年の充実作『アイ・コンタクト』から沈黙した。それぞれソロや別名義の活動を続けつつ、中心メンバーのブライアン・デグロウは山に住居を移して瞑想をしていたという。ニューエイジを聴きながら……。

 ブルックリンという地域性はなくなったものの、当時そこで活躍したインディ・ロック・アクトが近年再び活躍を見せはじめているのは、アメリカの社会情勢の混乱と無関係だとは思わない。他国の音楽をその境界がわからなくなるまでリズムや和声に溶けこませたグリズリー・ベア。あるいは、(現在はブルックリンを離れているという)ダーティ・プロジェクターズの前向きな気持ちが詰まった新作『ランプ・リット・プローズ』も、現在を覆い尽くす恐怖や不安に対抗するものだったという。ブライアン・デグロウはニューヨークの街に戻り、そして、ギャング・ギャング・ダンスは2018年に7年ぶりの作品をついにリリースした。
 そのアルバム、『カズアシタ』はGGDらしいトライバルなリズムとエキゾチックな旋律を持ついっぽうで、ニューエイジ色を非常に強めたものとなっている。近年の都市部でのマインドフルネスの流行を一瞬連想するが、サウンドはもっと深いところで、アルバムを通して瞑想的な平安を希求する。リジー・ボウガツォスの湿り気のある歌が陶酔的な響きを持つ“J-Tree”や“Lotus”、“Young Boy”などには現行のオルタナティヴなR&Bとシンクロするようなポップさがあるが、それも全体の一部として溶けこませるようにサウンドの統一感が演出されている。いくつかのアンビエント・トラックを通して内的世界に潜りこみ、『カズアシタ』は“Slave on The Sorrow”の壮大なサウンドスケープに包まれて何やらエクスタティックに終わりを迎える。
 怒りと怒りがぶつかり合う時代にこそ、GGDはスピリチュアルな探求を選んだ。越境する音が混ざり合うことで得られるピースフルな精神。来る日も来る日も報じられ続ける狂ったニュースに我を失いそうになったら、テレビを消して、インターネットの画面を閉じて、『カズアシタ』の音の揺らぎに身を任せるといいだろう。

※ 以下のインタヴューは、昨年のアルバム発売時におこなわれたものです。

アーティストとか、あんまり金のないひとたちにとっては住みにくいところになったし、すごく金に動かされてる。居住空間が高くなったしね。生活が維持できなくなったんだ。これってニューヨークだけの話じゃなくて、あらゆる場所で起きてることだけど(笑)。

前作『アイ・コンタクト』から本作の間、ブライアンさんがソロを出すなどメンバーそれぞれで活動をされていましたが、あらためてギャング・ギャング・ダンスのアイデンティティについて考えることはありましたか? だとすると、それはどのようなものですか?

ブライアン・デグロウ(Brian Degraw、以下BD):ふむ。僕らは自分たちのサウンドがどんなものか、ある程度意識してると思う。僕らが集まると何をするのか、どういうことが可能なのか。つまり、僕ららしさはつねにあるものなんだ。でも、僕らがそれに頼ってるとは言えない。音楽を作るとき、そういう思考プロセスに頼っているとは思わないからね。より自然なもので、逆にそこに頼らないようにしてるんじゃないかな。たとえば、今回のアルバムはこれまでに比べて前もって考えた部分が大きかったんだけど、とくにこういうサウンドはキープしようとか、そういうのはまったくなかった。たしかに僕ららしいサウンドというのはあるんだろうけど、意図的なものじゃない。だからこそ、それが何か説明できないしね。ギャング・ギャング・ダンスのサウンドの定義なんて絶対できないよ(笑)。

ギャング・ギャング・ダンスとして7年ぶりのアルバムを制作するにあたって、はじめに設定したゴールのようなものはありましたか?

BD:これはきっとほかのどのレコードより、青写真的なものがあったレコードだろうな。普段はそういうものはまったくなしに、そのままスタジオに入って音を鳴らして、何が起こるか見てみようって感じだから。でも今回はそうしなかった。あらかじめどういうレコードにしたいか、よりクリアなアイデアを持っておきたかったんだ。もうちょっと空間があって拡張的なもの、ある意味、よりシンプルなレコードにしたかった。簡単な言い方になっちゃうけど、カオス的なサウンドというよりは、シンプルなレコードだね。そう……落ち着いた、平静なサウンドというか。

本作はリズムよりもサウンド・テクスチャーやメロディに重点があったということですが、逆に言うと、ギャング・ギャング・ダンスにとってリズムのボキャブラリーはすでに身についたという自信の表れでしょうか?

BD:BD:うん、だと思う。あと、いまの音楽のほとんどがリズムをベースにしてる、っていうのとも関係してる。ラジオで流れるようなポピュラー・ミュージックでさえ、多くがリズム中心、ビート・オリエンテッドの曲だったりするよね? ビートを起点にしたエレクトロニック・ミュージックとか。で、僕らには、そのときの流行りがなんであれ、その正反対に行こうとする傾向がある。だから、それも前もって決めたことにかなり関係してると思う。

“( infirma terrae )”や“( birth canal )”のようにインタールード的なアンビエント・トラックが入っている狙いは何でしょうか?

BD:このレコードは、全体をひとつの曲として聴くように作られてるんだ。だから、そういうトラックもレコードのほかの曲と同じくらい重要で。でも、いまの音楽やレーベルのあり方というか、音楽をどう提示するか、っていうところで、レーベルには「レコードとして出すなら、曲を分けてほしい」って言われてね。そうやって見ると、分けるのも可能ではあったし、いくつか独立した曲として出せるものもあった。ただ、君が挙げたようなアンビエントなトラックもあるし、僕にとってはそういう部分こそ、このレコードでいちばんエキサイティングなところなんだ。いつ聴いても僕自身興奮する。まあ、ある意味では曲と曲を繋ぐような役割とも言えるんだけど、僕としてはいちばん聴いてて楽しいんだよね。

アルバム全体で流れがあるいっぽうで、“J-TREE”、“Lotus”、“Young Boy”辺りは独立したポップ・ソングとして完結した強度があるトラックだと思います。ギャング・ギャング・ダンスならいくらでも長尺のジャム・ナンバーが作れると思うのですが、完結したポップ・ソングを作るというのは本作にとって重要でしたか?

BD:僕らはああいう曲、よりポップな曲を作るのも好きなんだ。2005年からはそういうこともやってきたと思う。その頃からはじめたんだけど、それ以前はまったくそういう曲を作ろうとしたこともなかった。純粋に即興で、サウンド・ベースの音楽をやってたから。曲を構築したり、作曲しようとしたりはしてなかったんだ。だから2005年くらいから徐々にはじまって、あるレコードのある部分ではかっちりとした曲を作ろうとしたり、でもほかの部分ではそんなアイデアは捨てて、そうならなくても構わない、って感じだったんじゃないかな。うん、僕らはずっと、いわゆる「ポップ・ソング」を作ることに興味はあった。それがいまのところ、どこまで達成できてるかはわからないけど、ずっとトライはすると思うよ。

そうしたことと関係しているかもしれませんが、“Lotus”や“Young Boy”からはこれまでよりR&Bの要素が聞きとれます。近年のR&Bから刺激を受けるようなことはありましたか?

BD:僕らはこれまでもずっとR&Bに影響されてきた。きっと……90年代あたりからかな。実際、僕ら全員に大きな影響を与えてきたんだ。多くの場合、ある音楽からの影響はメンバーの誰かにはあっても、ほかのメンバーにはなかったりするんだけど、R&Bとヒップホップは僕ら全員が影響としてシェアしてる。ずっと僕らの音楽に影響を与えてきたひとをひとり挙げるとしたら、ティンバランドかな。いっしょに音楽をはじめて以来ずっと彼について話してきたし、リファレンスになってる。ティンバランドと、J・ディラもそう。僕らの話題にずっとあがってきた、ふたりのプロデューサーだね。アリーヤの話もよくするよ。

いっぽうで、“Snake Dub”は本作でももっともエクスペリメンタルなトラックのひとつですが、とくにエディットの緻密さと大胆さに驚かされます。本作のトラックのエディットにおいてもっとも重要なポイントはどういったものでしたか?

BD:“Snake Dub”はかなり最後のほうでできたトラックで。実際、レコード全体の順番、流れを作ってるときだった。その時点で、ほかにもいくつか、レコードに入れるかどうか迷ってるトラックがあったんだ。で、結局、より曲らしい曲を2、3、削ることにした。僕からすると、その時点でレコードとしてのバランスが、ちょっと「曲」、ソングに偏りすぎてたから。もっとルースな抽象性が足りなかった。どんなレコードを作るにせよ、やっぱりそういう部分は欲しいんだよね。だから、レコードの曲順を作ってるとき、最後の段階であのトラックをまとめたんだ。それまでにやってたいろんなインプロヴィゼーションを繋いで、コンピュータでエディットした。それもやっぱり、レコード全体のバランスを考えてやったんだよ。だからエディットの重要性というより、全部をひとつのものとして考えることが第一だった。

よりフィジカルで、ほとんど血管のなかに入って、身体のなかを循環するような感じ。僕にとっては時折、ドローンやアンビエント・ミュージックは僕の体のなかに存在するような気がするんだ。

現在は山のなかで暮らしているということですが、山の暮らしからもっとも学んだことは何でしょう?

BD:いまはまたニューヨーク・シティに戻ってきてるんだ。どうかな、ほんとにいろんなことを学んだから。ひとつだけ挙げるのは難しいよ。僕はたくさんのことを学んだんだ(笑)。そのほとんどは……うまく言えないけど、いまの僕が生活に対してどうアプローチするようになったかに関わってる。いろんな点で前とは違うんだ。山で暮らすことで、自分の優先順位について考える余地ができたから。僕自身や自分のアートにおいて、何にフォーカスしたいのか。生き方そのものについても考え直したしね。振り返ると、そういうことを僕は一度も考えてこなかったんだよ。長く街中で暮らして、とにかく前に進むことばっかり考えて、立ち止まることがなかった。「何が自分を幸せにするのか」さえ考えてなかったんだ(笑)。ちゃんと自分のこともケアしなかったし、健康にも気をつけてなかったし。だから、音楽やアート以外のこと、それまでネグレクトしてたことを考えられる機会になった。料理やサステイナブルな家、サステイナブルな生活みたいな、ほかの興味にもゆっくり時間をかけられたし、ガーデニングにもかなり夢中になった。だから、いまの僕には音楽やアートの領域以外にも、大事なことがたくさんできたんだ。

いっぽうで、ニューヨークの街はどうでしょう? 前作『アイ・コンタクト』の頃からとくに変わったと感じられることはありますか?

BD:実際、また街に戻って適応するのがかなり大変だったんだよね。最初は時間がかかった。いまはだいじょうぶだけど。前といちばん違うのは、いまは自分のアート・スタジオがあること。長い間住んでたのに、ずっとアート・スタジオを持ってなかったんだ。でもいまはアート・スタジオも音楽スタジオも持ってる。そういう空間があると、僕はずっとクリアにものが考えられる。でも最初に都市を離れて田舎に住もうと決めたときは、そういう場所がなかったんだ。だから、心の平安を見つけるのが難しかった。いまは自分がそこに行って、ちょっとしたものを作れるような空間があれば、街でももっといい生活が送れるんだ、っていうのを発見してるところ。以前はそういう場所がなかったからね。前の僕は小さなアパートメントで暮らして、落ち着かなくなって外に出たら、街中はもっとクレイジーだったりした。でもいまはスタジオ用の部屋があって、そこで落ち着いて考えたり、何か作ったりできる。実際、静かだしね。

通訳:街のほうも変わりましたか?

BD:うん。前とは違うタイプのひとたちが住んでる。ニューヨークはアーティストとか、あんまり金のないひとたちにとっては住みにくいところになったし、すごく金に動かされてる。居住空間が高くなったしね。もちろん、よくなったところもある。ある意味クリーンになったし……まあ、僕はときどき、30年前のクリーンじゃないニューヨークが懐かしくなるけど。でもやっぱり、一番変わったのは物価やコストだろうな。それでアーティストが押し出されて、僕を含め大勢が北部や田舎のほうに引っ越していった。生活が維持できなくなったんだ。とはいえ、これってニューヨークだけの話じゃなくて、あらゆる場所で起きてることだけど(笑)。

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いまってものすごくクレイジーな時代だから、みんなネガティヴになりがちだし、すぐ「もう希望なんてない」って考えてしまうだろう? でも僕は、希望はあると思うんだ。

最近は瞑想に使われるアンビエントやニューエイジ、インド音楽などをよく聴いていたということですが、これらの音楽のどのようなところが面白く感じられたのでしょうか?

BD:まあ、僕としては瞑想するために聴いてたんだ。で、うまく言えないけど、僕にとっては音楽というより非音楽的なものになったっていうか、感覚に訴えるフリーケンシー、周波数になったんだよね。よりフィジカルで、ほとんど血管のなかに入って、身体のなかを循環するような感じ。僕がそれほどアンビエントじゃない音楽、たとえばポップ・ミュージック寄りの音楽を聴くときには、必ずしもそういうふうには消化しない。全然受け入れ方が違うんだよ。そういうタイプの音楽は、自分の外側にあるように思い描く。僕にとっては時折、ドローンやアンビエント・ミュージックは僕の体のなかに存在するような気がするんだ。

『カズアシタ』にはスピリチュアリティが入っていると言えますか?(通訳註:スピリチュアリズムは英語で心霊主義の意味になるので、こう訊きました)

BD:僕としては、聴くひとがそう解釈するなら嬉しいけどね(笑)。僕にとってはスピリチュアルなレコードだから。僕が聴く音楽のマジョリティは、ニューエイジ音楽と分類されるような音楽だったりもする。だから、そういうふうに聴いてもらえるのはポジティヴだと思う。スピリチュアルな効果があるといいよね。それは、さっき言った「自分の体のなかにある音楽」ってことでもあるし。あと、このレコードのナラティヴがそうなんだ。僕にはほかのレコードよりスピリチュアルっていうか……いや、違うな。いまのは言うべきじゃなかった。どのレコードも僕にとってはスピリチュアルなんだけど、今回はナラティヴがよりスピリチュアルな領域に入っていく。ほかのレコードよりね。とくにエンディングがそうなってると思う。

印象的なジャケットのアートワークについて教えてください。SF映画のヴィジュアルを連想させますが、これは本作とどのように関わっているのでしょうか?

BD:あの写真は友人のデヴィッド・シェリーのイメージなんだ。彼は素晴らしい風景写真家で、あれはアメリカの北西部、オレゴンの沿岸で撮った写真なんだよ。うん、僕があのイメージを好きなのは、SFというよりは、世界の終わりであり、世界のはじまりでもあるようなところ。あのイメージには二重性がある気がするんだ。世界の終わり、もしくは始まりであって、同時にその両方でもあるような。その意味で奇妙なフィーリングがある写真なんだよね、僕にとっては。うまく説明できないんだけど……自分でもそのどっちかがわからない。そこが好きなんだ。

サウンド的にもSF映画のスコアを連想させる部分があると感じましたが、『カズアシタ』にSF映画やSF小説からの影響はありますか?

BD:サイエンス・フィクションではないけど、このレコードを映画のスコアとしては考えてたよ。作ってるときには、僕自身ずっと「映画」として話してたんだ(笑)。僕には映画として見えるレコードだから。聴いてると、映画のなかにいるのが想像できる。実際、いまもこのレコードに合わせた長編映画のプロジェクトを手がけてるところなんだ。そういう意味でも、これはとても映画的なレコードだね。

『カズアシタ』というアルバム・タイトルは(元メンバーの)タカ・イマムラの子どもの名前にちなんでいるそうですが、曲単位では“Kazuashita”や“Young Boy”に子どもが登場します。子どもの存在はこのアルバムのテーマに関係していますか?

BD:それも、この映画のナラティヴに関係してる。いくつか理由はあると思うけど、ひとつは僕らの年齢だよね。僕らの友人がみんな親になった。子どもを持つようになったんだ(笑)。だから周りに子どもたちがいて、それがレコードに影響を与えてる。周りで次々赤ん坊が生まれて……僕ら自身には子どもがいないんだけど、ここ数年で周りの友人に子どもが生まれたんだよ。で、周りにいる小さい子たちのことを考えるようになった。レコードのナラティヴに関して言うと、曲の“Kazuashita”はタカの子どもがこの世界に生まれたことであり、最終的にはいまのクレイジーで混乱した世界を指し示してる。彼がはじめてその世界を旅してるんだ。だからこそあの曲は“Kazuashita”っていうタイトルだし、“birth canal”っていう曲は彼が生まれる直前、母親の胎内から産道(birth canal)を通ってるところを描いてる。カズアシタが外界に出てこようとしてるんだ。で、“Young Boy”はまた別の話で。あれはリズが書いた曲。ここ数年アメリカで、若者たちに沈黙が向けられてることについて彼女が書いたんだ。

みんなに落ち着いてほしかったんだよ(笑)。攻撃に対して、さらなる攻撃で返したくなかった。むしろ静かな感覚を作り出すことで、カオスに対抗したかったんだよね。聴くひとを助けるっていうか、激しさを鎮めて、混乱を少なくしたくて。

ラストの“Slave on The Sorrow”は非常にスケール感の大きなナンバーで、歌詞も希望を暗示するものになっていると思います。この曲を最後に置いたのはなぜでしょうか?

BD:それはやっぱり、希望があるからだよね。僕はこのレコードをネガティヴな感じで終わらせたくなかった。また別のレイヤーが次に開かれていくような感じにしたかったんだ。世界の次のフェイズにね。だから希望があるし、ポジティヴだし。というのも、いまってものすごくクレイジーな時代だから、みんなネガティヴになりがちだし、すぐ「もう希望なんてない」って考えてしまうだろう? でも僕は、希望はあると思うんだ。僕はこのレコードで、いま起こっていることのあらゆるネガティヴな側面に目を向けたかった。でも最後に希望のある形で締めくくるのは、僕らにとってすごく重要だったんだ。「このフェイズを乗り越えるんだ」って感じられるようにね。この政治的な混乱やドナルド・トランプを乗り越えて、最後には光が見えてくる──っていうフィーリングにしたかった。新しい考え方や、新しい空気が開けてくるんだよ。

ギャング・ギャング・ダンスの音楽はつねに、さまざまな地域の音楽性を越境し、ミックスするものでした。『カズアシタ』にも、そうした多様な音楽性が前提として共存しています。いっぽうで現在、トランプ政権に代表するように、世界が内向きになっている傾向がありますが、そんななか、越境的な音楽はそのような(内向きの)ムードに対抗する力を持てると考えますか?

BD:持てればいいよね。そうあってほしい。これまで僕が話してきたいろんなひとたち、インタヴュアーやこのレコードについて書いてくれたライターのひとたちに関して言えば、そういう効果があったみたいだし。僕にはそう感じられる。それに、そこは僕らのゴールのひとつでもあったんだ。ある意味、落ち着いた感覚を作りだすことがね。このレコード全体がひとつの曲、ひとつのピースである理由もそこにある。アイデアとしては「我慢強くあること」っていうのかな。途中で気を逸らすことなく、最後まで見通すこと。少なくとも、そういうふうに聴いてほしいんだ。何かほかのことをしながら、次々早送りにしたりするんじゃなくて、ちょっとくつろげる場所を見つけて、最初から最後まで聴いてほしい。映画を観るようにね。映画観るときって、みんな途中で別のこと始めたり、バックグラウンドで映画を流したりすることってあんまりないだろう? だから、このレコードもみんなリラックスして聴いて、自分の中に取り込んで、ちょっとした旅に出るような気持ちになってほしい。そう、このあいだ別のインタヴューでも話したんだけど……ちょっと似たような質問が出て。そのときに言ったんだけど、いまみたいな政治的、社会的な状況下だと、音楽もそれと同じリアクションになってしまうことが多いよね。「これだけ社会が怒りに溢れてるんだから、こっちも怒りのある音楽、攻撃的な音楽を作るべきだ」みたいな。でも、僕はそうしたくなかった。そういうとき僕が聴きたかったのは、それとは正反対の音楽だったんだ。みんなに落ち着いてほしかったんだよ(笑)。攻撃に対して、さらなる攻撃で返したくなかった。むしろ静かな感覚を作り出すことで、カオスに対抗したかったんだよね。聴くひとを助けるっていうか、激しさを鎮めて、混乱を少なくしたくて。そういうふうにこのレコードが作用するといいなと思う。

通訳:毎日の生活でもそうですよね。私もニュースを見てものすごく怒ったりするんですけど、それがどんどんエスカレートするような感覚があります。

BD:そう、怒りって伝染するんだよ。怒ったひとたちはそのエナジーを君に投げつけて、怒りやすい環境を作りだす。それは、まさに君を怒らせるためだったりもするんだ。だからこそ、それを思い出して、まったく逆の方向に進まなきゃいけない。他人の攻撃に対抗するタイプの攻撃、アグレッションでは何も成し遂げられないからね。

BOOMBOX&TAPES - ele-king

 時代の速度は速い。20年前は可能性のかたまりみたいに賞揚されてきたデジタル・メディア、いまみなさんが見ているインターネットも、いまではフェイクだ宣伝だバイトニュース(アクセス数稼ぎの扇情的な見出し)だ、とか、眼精疲労にもなるし精神的にも中毒性が高いなどなど、むしろバッドな側面のほうが露呈している始末。そんななかでアナログに脚光が当たるのも無理もないというか。カセットテープ愛好家のための同人誌が刊行されました。同人誌といっても、『BOOMBOX&TAPES』(へのへのもへじPRESS刊)。はA4判型/40ページフルカラーのゴージャスな作り。カセット・テープおよびカセットデッキの紹介があり素敵な写真があり、愛好家たちのインタヴュー記事があります。文字も詰まっているし、ヴィジュアルも豊富で、読ませて見せますよ! 限定500部で、すでにけっこう売れているそうなので、うかうかしていると売り切れてしまうかも。
 ele-kingがカセットに着目したのはちょうどいまから10年ほどまえのUSのインディ・シーンがきっかでした。〈Not Not Fun〉のようなレーベルががしがしカセット作品を出してたし、で、しばらくするとヴェイパーウェイヴが出てきてカセット作品&フリー配信というリリース形態を確立しましたよね。まだまだカセットが衝撃だった時代だけど、いまじゃすっかり普及したというか、アナログ盤ほどじゃないにせよ、少なくともVHSビデオカセットや2HDフロッピーよりは(笑)、ほぼ選択肢のひとつとして定着している感はある。じつはあの当時、カセット作品を聴くためにTAEACのカセットデッキを中古で買ったんですけど、数年まえに壊れてしまったしまったんですよね。買い換えようと思っているうちに、中古のカセットデッキも値上がってしまったみたいで、ぼくはもう1台小さいのを持っているからいいんですけど、カセットの良さってやっぱ音質ですよね。あの音質は、ギガバイトの世界にはないので、音好きのひとはカセット聴いて下さい。新しい世界が広がりますよ~。

へのへのもへじ同人誌
猟奇偏愛同人誌(FUNZINE ABOUT SUPER STRANGE LOVE)
創刊号:BOOMBOX&TAPES
価格 : ¥1,500YEN+TAX(500部限定)


【Featuring】松崎 順一(Design Underground代表)/MAMMOTH(日本シンセサイザーノイズHOPグループ)/Geoff Johnson(ラジカセDr.)/五十嵐 慎太郎(MASTERED HISSNOISE代表)/角田 太郎(waltzオーナー)/赤石 悠(toosmell records代表)/糸矢 禅(LIBRARY RECORDS代表)/草野 象(ON SUNDAYSマネージャー)
【2018年11月12日発売/500部限定/日英バイリンガル原稿】
【体裁】A4オールカラー44ページ(オフセット印刷、無線綴じ)

西暦2018年XXX日本。
マーケティングビジネス、ファストファッション、コンビニ、巨大モールが疫病のように蔓延。かっての拘りのある個性ある店や、その良し悪しを教えてくれたちょっと怖い憧れの店員さんは絶滅し、当たり障りの無いお決まりの接客の顔なしのような店員が大量増殖。その結果、我々の審美眼、美意識、パッションは失われ、優秀な人材は海外に流出する始末...。
その一方で。
入手困難、高額、かさばる、不便、手間がかる無用の長物に価値を見出し、その魅力に憑かれてしまった偏愛家と呼ばれる方々がいる。
我々へのへのもへじPRESSは、
憂いを持って、
現状の日本に対するアンチテーゼとして、
御意見無用!の偏愛家たちのパッションとアティチュード、その物の価値体系を記録する同人誌を創刊する事にした。
記念すべき創刊号はカセットテープとラジカセの偏愛について。
カセットデッキにお気に入りのミックステープを突っ込んで、のんびりとご覧下さい。
その心意気はスペインの諺よろしく
「優雅な生活が最高の復讐である」
でどうぞ夜露死苦。

2018 A.D. XXX JAPAN.
Manual marketing business, fast fashion, convenience stores and giant shopping malls plague the landscape.
Shops with originality have all disappeared with knowledgeable enthusiastic sales staff. They are all replaced by faceless robots who just repeat their routine work.
With them, sense of beauty and passion for good taste are all lost. Gone are the talents who can tell what is good and beautiful.
On the other hand…we know there are ‘’maniacs’’ who cannot help seeing charm and beauty in useless, hard to find, rare and pricey, bulky and inconvenient stuff.
We are launching a fanzine titled HENOHENOMOHEJI-PRESS for those maniacs who don’t give a damn to the mainstream rubbish culture. It is an antithesis to the dominant depressing cultural landscape. Our zine is aimed to record the passion, attitudes and values of the fringe maniacs, just like you.
Our first issue features quirky love for cassette tapes and boom box. Play your favorite compilation tape on your boom box to get the max out of the zine!
As they say in Spain, our motto is ‘’an elegant life is the best revenge’’.
Enjoy your elegant life.


■現在の全国販売協力店 14店舗
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Mike - ele-king

 クラインに対するブルックリンからのアンサー……といってしまおうか。19歳でニューヨークの新たな前衛とされているDJブラックパワーことマイケル・ジョーダン・ボニーマは昨年5月に『Black Soap』がリリースされた時はどうしてこんなに騒がれるのかと不思議だったのだけれど、基本的にはリリックに対する評価が大きかったようで音楽だけで判断できるものではなかった。マイクはクラウド・ラップとは「別種のインターネット・スター」とまで持て囃されていたものの、僕は1〜2回聴いて、それきりだった。しかし、その後に〈レックス〉からリリースされた『Renaissance Man』と年末に放たれた『War in My Pen』というミックステープで、今度は音楽的に耳が止まり、しばらくして、ああ、『Black Soap』の人かと気づいた次第である。改めて『Black Soap』のレビューを探してみると、彼の親はナイジェリア移民で、彼自身はニュージャージーで生まれ育ち、母親に連れられて5歳でロンドンに渡り、それまで聴いていたラップにはなんの興味もなかったものがロンドンでグライムと出会ったことから始めてラップに興味を持ったのだという。その時の「自分探し」の過程をそのままアルバムのテーマとしたものが『Black Soap』で、これがどうやら大きな共感を得たということらしい。ニール・ゲイマンの『アメリカン・ゴッズ』にアメリカ人は自分探しをせず、「わかったフリをしているだけ」というセリフがあったけれど、彼はむしろそれを大々的にやったということになる。そして彼の思いはナイジェリアヘと飛び、歌詞も一部はヨルバ語で歌われ、西アフリカで普通に見かける石鹸=ブラック・ソープのパッケージをジャケット・デザインに流用したことも「自分探し」のヴィジュアル展開だと。『Black Soap』に続く『Renaissance Man』ではあからさまに「Why I’m Here」「Rebirth」と言った曲名が並び、そして、後半で畳み掛けるように続くのがクラインを思わせるドローンじみたトラックの連打。これはどう考えてもロンドン滞在中に同じナイジェリア系のクラインと接触があったか、少なくとも音源に感化される機会があったとしか思えない。NHK「たぶんそうだったんじゃないか劇場」なら、そう結論づけるだろう。

 そして『Renaissance Man』ではまだ借り物という感じでしかなかったサウンド・プロダクションが『War in My Pen』では確実に自分のものとなっているプロセスを確認することができる。あからさまにクラインの影響がそのまま出ているトラックは姿を消し、冒頭の「Choco」や「Nothin’ to Me」ではドローンがループされ、シンプルに仕上げられているにもかかわらず、どこにも隙間のない濃密な音の洪水が耳に注ぎ込まれる。「なんでトリップしてるんだい 自分の楽しみを見つけなよ 賢いニガーはガキの言うことなんか聞かない」と歌い出しながら、「grabba」、「October Baby」とサイプレス・ヒルよりもむせ返えるスモーカーズ・トラックで攻め立て、「オレは肺がつぶれるほど吸ってる」とか「害を及ぼすことと吸うことは別なこと」などと続けていく。ずばり「smoke」と題された曲では「Listening to smoke」と感覚的な歌詞を繰り返し、ラップにありがちな虚勢よりも自分がどこにいるかと言うことを繰り返し言葉にしているのだろう。規模は小さいけれどノーネームに近い心象風景を題材にしているのかなと思ったり(そこまで英語やスラングのニュアンスは僕にはわからない。「We was」とかどう訳すねん?)。「NeverKnocked」や「Rottweiler」で使われている強烈なグリッチ・サウンドはおそらく2年前にグリッチ・シャンソンのネヴェー・ゲット・ユースド・トゥ・ピープルの影響で流行ったティック・トックのグリッチ・チャレンジをヒップホップ的に展開したものなのだろう。これらはあまりにもサイケデリック。そして、クラインよりもどこか陽気な感じがとてもいい。

 ロンドンでグライムに感化されたマイクは、アメリカに戻ってからスラム(sLUms)というポッシを結成している。ゼロ年代のヒップホップはグループが成り立たず、50セントやエミネムと行ったソロMCの時代だと言われていたけれど、この10年はそういったソロMCがゆるくつながっていたという印象があり、ロサンゼルスのオッド・フューチャー、ニューヨークのエイサップ・モブ、そして、エイサップ・モブとは抗争の相手と化してしまうフロリダのレイダー・クラン(スペースゴーストパープ)が個性的な若手を続々と送り出してきた。ヒップホップに興味を持ったマイクも10歳を過ぎた頃にはオッド・フューチャー(のとくにアール・スウェットシャツ)に強く影響を受けたと語っており、シックスプレスやキング・カーター、メイソン、ジャズ・ジョーディといった6人の迷子が一緒にいることで死が身近にある環境でも音楽によって自由をつくりだすことができるのだという。彼らは政治的な見解が一致し、初期には社会的な不安を、最近では希望をラップし始めている。そう、「Like My Mama」はドン、ドンというドラムの音だけで別世界に連れて行かれる。これに変調された声が蚊のようにクルクルと宙を舞い、「PRAYERS」ではスクリュードされたゴスペルのコーラス、「UCR」はまさにクラインへのアンサーとしか思えないドレムレスの展開に突入し、「Red Sox;babylon」に橋渡しされる流れは鳥肌もの。リル・Bとはかなり仲がいいという噂もなるほどという感じでしょうか。リー・ペリーやマッド・プロフェッサーのファンもこれは唸るんじゃないかな。峠を越えて後半4曲は少し落ち着いた展開に戻り、歌詞も真実だとか歴史といった社会派のニュアンスを醸し出すものに。最後にそして、人生に対して妙に弱気な「For You」ですべては閉じられていく。嫌な終わり方というほどではないけれど、それこそ煙がどこかにかき消えてしまうような感触が残り、夢でも見ていたような気分に。

vol.109:NYのたこ焼きパーティ - ele-king

 明けましておめでとうございます。NYはお正月もほとんどなく、私は1/1から普通に働いていましたが、ようやくホリディムードも終わり、平常に戻ってきました。
 私は、ブシュウィックのミードバー(ハニーズ)で、毎月たこ焼きイベントを開催しています。バンドやDJ、ダンサーなどのゲストを招待し、ドリンクやフードを提供し、ミードを飲みながら、たこ焼きを焼いています。場所が場所なのでバンドやアーティストが多く、元ラプチャー、アヴァルナ、ピルなどのメンバーもよく来ます。
 ツアーから戻ってきたばかりだったり、レコーディングの最中だったり、仕事の合間だったり、みんな忙しくしていますが、息抜きは必要。とくにこの辺りは音楽会場も多いし(エルスホエアなど)、サクッと一杯にちょうど良いみたいです。NYはたくさんのバーがあり過ぎますが、働いている人や誰とハングアウトするかによって行く場所が変わります。
 さて、ハニーズでは今回は、Data securityというユニットが登場。音と映像がシンクロするライヴを生でするという試み。あまりの機材の多さに卒倒しそうになりました。スーツケースふたつ分ぐらいの機材だったので。金曜の大会場でダフト・パンクを見ているような、ダンスフロアになりました(火曜日でしたが)。で、そこにNha Mihnというベトナムレストランを経営していた、Fredが来ていました。
https://www.insideelsewhere.com/new-blog-1/nha-minh-healthy-vietnamese-bowls-brooklyn




たこ焼きイベント(ハニーズチューズデー)!

 彼は、ベッドフォードでレストランを経営した後、しばらくケータリングをし、そしてNha Mihnをオープン。彼のNY1美味しいベトナム料理とアートショー、音楽ショー、フリーマーケットなど楽しいイベントをどんどん開催。その間にも彼は別の店でポップアップをしたり、イベントに出店したり、いろんな場所に出没。彼に出演をお願いするとすぐに「良いよ」と返事をもらい、話が決まりました。


Japanese new year bowl
(チキンとごぼうの肉巻き、サツマイモご飯、なます、野菜のゼリー寄せ、レンコン煮)

 NYではたくさんの場所が閉鎖し、たくさんの場所がオープンしています。失敗は当たり前、これがダメなら次はこれと直ぐに立ち直り、模索し、良いものだけが淘汰されていきます。あの会場と彼が手を組んで、こうなるのか、なるほどなど、フットワークが軽い人と話をすると、こんな人がブルックリンを作ってるんだなと感じます。最近ブルックリンでは、ファンドレイザーショーも盛んで、ミュージックショーをしたり、絵を描いたり、タロット占いをしたり、ジュエリーを売ったり、スタンダップ・コメディをしたり、自分ができるなにかで、参加し貢献しています。
 音楽だけのショーは少なくなり、マルチなショーが増えている、と思いますが、いろんなものが合わさって、たくさんのオーディエンスにも届くのが現在的なのでしょう。


Data security


DJ SIM Card

ZULI - ele-king

 エジプト・カイロを拠点に置くアーティスト、Zuli のデビュー・アルバム『Terminal』が、Lee Gamble が主宰するレーベル〈UIQ〉よりリリースされた。これまで3枚のEPを〈UIQ〉と〈Haunter Records〉からリリースしてきた。その内容はインストゥルメンタルで、グリッチやノイズ、グライムっぽいうねるようなベース音も顔を見せる変則的なダンス・ミュージック。2017年にはベルリンのCTMフェスティヴァルでは地元であるカイロをテーマとした360度ヴィデオのインスタレーションを発表。活躍の舞台を着実に広げ、特に〈UIQ〉からのリリースはレコード店で売り切れるほどの人気ぶりだ。

 Zuli、本名は Ahmed El Ghazoly という。10歳まではイギリスで暮らし、グランジやブリット・ポップ、ケミカル・ブラザーズやプロディジーを聞き、両親の都合でエジプトに戻ってきたという*。所謂エジプトの伝統音楽やポップスに関心が向かず、UKの音楽に影響を受けて制作をしてきたという。また、同志のアーティストと Kairo Is Koming というコレクティヴを作り、ふたつの拠点でラッパーやアーティストとコラボレーションしながら活動をしているという。

 そうした集団での制作も方向性に反映されているのだろうか。今作『Terminal』は、これまでのインストゥルメンタル、変則テクノ的な音楽性から、トラップ、ジューク、ラップとの混交、またラッパー、シンガーとのコラボレーションが際立つ。1曲目から 6. “Stacks & Arrays”までは808ベース、残響音のようなベースとノイズが不規則に鳴らされ、不穏なサウンドスケープが展開される。7曲目の“Kollu I - Joloud feat. MSYLMA”で歌唱が、8. “Akhtuboot feat. Abyusif”でラップが初めて耳に入る。しかしどちらも3~4分の商業的なレコードのフォーマットではなく、断片的に流れていく。9. “Mazen”でも Abyusif のラップが使われているが、切り刻まれ、引き伸ばされ、あるいはピッチを変えられて、声そのものが変態していく。ラップは、11. “Ana Ghayeb feat. Mado $am, Abanob, Abyusif”でようやく聞き取れるレヴェルのラップが一瞬姿を見せる。フリースタイルする(ような)彼らのラップは素晴らしく、ソロ作品を聴きたくなる。

 『Terminal』というアルバム・タイトルから思い起こされるのは空港である。〈NON〉の Chino Amobi が一見無国籍でクリーンな空港という空間に、人種・政治的な関係を見出したのと同じように、このアルバムの不穏さもローカルな状況につなげて考えることができる。Zuli の活動の中心であるエジプトは「アラブの春」に端を発する政治・経済的な混乱が続いていて、混乱の前後でカイロの貧困率は2倍近くに増加したというデータもある。

 切り刻まれ、グリッチされた歌詞の内容は理解不能であるが、音が生み出す不規則・不穏な空気感とカイロの社会的・政治的な状況が重なる。グリッチやノイズは予期せぬ第三者からの干渉の結果に聞こえる。なにかを告発するはずだった通信・録音が遮断され、干渉され、散り散りになったデータとなって再生されているような、または、デジタル情報の残骸のような質感。12. “In Your Head”のビートレスのアンビエント、冷たいピアノの一音がさらにアルバムの緊張感を持続させる。その曲での後ろで響くのは、男の会話ともヒソヒソ声とも取れる音。密告のようにも、心の中の「勘ぐり」にも聴こえてくる。緊張や不安はアルバムの全編を通じて漂い続けている。

 このアルバムを聴くことは、生成されたデジタル情報が捻じ曲げられたり、隠されたりする痕跡を辿っていく行為かもしれない。しかしもう一方では、そうしたデジタル情報が不完全に捻じ曲げられたり、隠されきれなかったりする。そうした人間味を感じさせるサウンドでもある。音が不規則でありながら緊張感が持続する、エレクトロニックながらどこか「生っぽく」感じられる。そういった多面性を持ったアルバムだ。

 * TIGHT Magazine のインタヴューより。

Drone, Bengal Sound, Rocks FOE - ele-king

 ロンドンに「Keep Hush」という YouTube のライヴ配信チャンネルがある。UKガラージやグライムからハウス、テクノ、ディスコまで幅広いDJ、トラックメイカーがプレイする不定期番組で、Boiler Room や Dommune といった番組を思い浮かべてもらえればいいと思う。そういったライヴ配信チャンネルと異なるのは、彼らが「ロンドンの若手アーティスト」に焦点を当てている点と、毎回開催場所を変えて、秘密のロケーションでおこなわれる点だ。場所は開催直前に登録制のメールマガジンに配信される仕組みで、小さめの会場でおこなわれることもあいまってアットホームな空気が伝わってくる。また、配信時のザラついた質感は90年代のレイヴを意識しているのでは、と邪推したりした。

 そんな Keep Hush にて、〈Coyote Records〉が主催する夜には新鮮さと勢いを感じた。下の動画でプレイしているのは気鋭の若手アーティスト Drone だ。

Drone DJ Set | Keep Hush London: Coyote Records Presents

 Drone は自主作品のUSBに続き、2018年は〈Sector 7 Records〉から「Sapphire」をリリース、続いて〈Coyote Records〉から「Light Speed」をリリースした。

Drone - Light Speed
https://bit.ly/2P6ZlKx

 Keep Hush のプレイでもリワインドされた Drone の“East Coast”はサンプリングの声ネタ・金物が印象的で、組み合わせられるUKドリルを感じさせる、うねるようなキック・ベースにハイブリッドなセンスを感じる。

 さらに紹介したいのは、上にあげた Drone が何曲かプレイしている Bengal Sound。2018年にコンセプト作品『Culture Clash』をカセットでリリースしている。

Bengal Sound - Culture Clash

 全ての曲でボリウッド映画のサウンドトラックからサンプリングしており、ハイエナジーなベースラインにサンプリングされたローファイなホーンやパーカッションがとても自然にマッチしている。手法に関して言えば、Mala が『Mala in Cuba』でキューバ音楽を用いたのと比べることもできるが、こちらはよりローファイなカットアップ、ループ感はインストのヒップホップを思わせる。

 サンプリングという観点で最後に紹介したいのは、ラッパーでありトラックメイカーである Rocks FOE。ラッパーとしてもアルバムをリリースする傍ら、日本でも人気を集めるレーベル〈Black Acre〉から 140 bpm のインストゥルメンタル作品もリリースする。多くの作品でサンプリングを用いており(寡聞にしてそれぞれのサンプリング・ネタがわからないのだが……)、ホーンやディストーションされたシンバル、そして低く震えるラップは独自の怪しげな世界観を築いている。

2018年6月にリリースされた Rocks FOE のアルバム『Legion Lacuna』
https://rocksfoe.bandcamp.com/album/legion-lacuna

 こうしたザラザラとしたサンプリングをおこなったダブステップについては、2016年の Kahn, Gantz, Commodo による名盤『Vol.1』が思い起こされるが、その後のシーンについてはどうだろうか。〈Sector 7 Records〉を主催する Boofy はインタヴューでこのように述べている。「ダブステップには、(シーンを語る上で)欠かせない歴史もあるけど、いまお気に入りのアーティストはもうそういう「レイヴ・バンガーの公式」の教科書は気にしないでやりたいようにやっているよ」(Mixmag, Jan, 2019)

 近年のダブステップはサンプリングのセンス、音の組み合わせ方が新鮮さに満ちていて、常にインスピレーションを与えてくれる。

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