ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Aphex Twin ──エイフェックス・ツインがブランド「Supreme」のためのプレイリストを公開
  2. Whatever the Weather - Whatever the Weather II | ホワットエヴァー・ザ・ウェザー
  3. interview with Roomies Roomiesなる東京のネオ・ソウル・バンドを紹介する | ルーミーズ
  4. 完成度の低い人生あるいは映画を観るヒマ 第二回 ボブ・ディランは苦悩しない
  5. Oklou - choke enough | オーケールー
  6. すべての門は開かれている――カンの物語
  7. new book ──牛尾憲輔の劇伴作曲家生活10周年を記念した1冊が刊行
  8. The Murder Capital - Blindness | ザ・マーダー・キャピタル
  9. R.I.P. Roy Ayers 追悼:ロイ・エアーズ
  10. Columns ♯12:ロバータ・フラックの歌  | Roberta Flack
  11. Lawrence English - Even The Horizon Knows Its Bounds | ローレンス・イングリッシュ
  12. Columns ♯11:パンダ・ベアの新作を聴きながら、彼の功績を振り返ってみよう
  13. interview with Acidclank (Yota Mori) トランス&モジュラー・シンセ ──アシッドクランク、インタヴュー
  14. Columns 2月のジャズ Jazz in February 2025
  15. story of CAN ——『すべての門は開かれている——カンの物語』刊行のお知らせ
  16. interview with DARKSIDE (Nicolás Jaar) ニコラス・ジャー、3人組になったダークサイドの現在を語る
  17. interview with Squid スクイッドの冒険心が爆発したサード・アルバム
  18. 別冊ele-king ゲーム音楽の最前線
  19. Columns 「ハウスは、ディスコの復讐なんだよ」 ──フランキー・ナックルズの功績、そしてハウス・ミュージックは文化をいかに変えたか  | R.I.P. Frankie Knuckles
  20. R.I.P. David Johansen Funky but Chic——デイヴィッド・ヨハンセン R.I.P.

Home >  Reviews >  Album Reviews > bEEdEEgEE- SUM/ONE

bEEdEEgEE

AmbientElectronicExperimental

bEEdEEgEE

SUM/ONE

4AD / Hostess

Tower HMV iTunes

斎藤辰也   Feb 12,2014 UP

 ギャング・ギャング・ダンスの音沙汰がなくてやきもきしていた人たちは少なくないだろう。2011年に予定されていた来日公演は3月に起きた震災の混乱のなかで中止となり、当時の新作『アイ・コンタクト』以降のライヴを日本にいたリスナーは現在まで観ないままだ。運よくリリース直前のライヴをロンドンで観ていた身としてライヴの感想を述べるとすれば、電子機材の多さから音響の調整が難しいからなのかもしれないが、ローやリズムが迫ってくることもないけど、ウワモノが迫ってくるということもなく、そしてリジーのシャーマニックな歌やほかの生楽器が強いわけですらなく、なんともノリどころが掴めないものだった。「(ギャング・ギャングは)ライヴ・バンドだよ」とホット・チップのアレクシスに言われたけども、僕はむしろ反対の意見で、なにが足りなかったんだろうなんてふたりで話したこともある。
 思うに、ギャング・ギャングにはちょっと整理が必要だった。丁寧なミックスで仕上げられたアルバムをライヴでそのまま再現するのは難しかったのだろうけども、再現以外の方法を図りかねてしまったというか。ブライアン・デグロウ(Brian DeGraw)によるシンセやエフェクトへの比重がおおきくなる一方で、生楽器とのバランスがとれないままライヴをしていた印象がある。ダンスのリズムを軸に置きはじめてから、それに絡めとられて動きづらくなっているんじゃないかとも。

 そんなわけで、ブライアンのイニシャル名義の本ソロ作『サム/ワン』は、彼自身がやりたいことをバンドから離れたところで整理するなかででき上がったものとして受けとることができる。
 内容はやっぱりブライアンお得意のシンセサイザー。エキゾチックな旋律の弦。エフェクトの効いたよくわからない楽器やヴォーカル。意味不明なサンプル。逆回転。相変わらず多用されるタムなどの打楽器。それらのチョップ、チョップ、チョップ。ループ、ループ、ループ。ディレイ、ィレイ、レイ……。リズムにはダブステップも感じさせつつ、ハウスやトラップを意識したような節もある。ギャング・ギャングの『セイント・ディンフナ』に入っていたインストを思いださせるし、そこから毒っぽい要素を抜いたら本作のサウンドになるのかもしれない。ブライアンが綺麗な水面に浮かぶ写真が象徴するように、やけにクリーンだ。初期からずいぶんと変化をしたが、本作を聴けば、バンドの変化とはつまりブライアンの変化だったのではないかと感じられる。
 ウワモノにはメディテーショナルな趣もあるけど、ダンスのリズムがリスナーを浸らせない。どうせならダンスから離れたほうにおもいっきり舵をきってみるのも面白かったかもしれない。ソロ作ということでバンドよりもさらに吹っ切れた自由奔放ストレンジなサウンドを聴けるんじゃないかと期待していたら肩透かしをくらってしまうけど、とはいえ、最後の“クオンタム・ポエト・リディム”(量子詩リディム)の無邪気で楽しいヴァイブスを聴けば、子どもといっしょになって踊りたくなる。にくめない。

 本作に参加しているゲスト・ヴォーカルは、ギャング・ギャングのリジー。そのレーベルメイトでもあったダグラス・アーマー。さらには、盟友のアレクシス・テイラー(ホット・チップ)とラヴフォックス(CSS)がおなじ曲で歌っている。同窓会っぽくて微笑ましいけど、さて、整理を終えて、次はどう動くのだろうか。

斎藤辰也