「R」と一致するもの

井手健介と母船 - ele-king

 2015年のファースト・アルバムでサイケデリック・フォークの前線を書き換えた井手健介と母船が、じつに5年ぶりの新作を4月29日にリリースする。サウンド・プロデュースは、ゆらゆら帝国や OGRE YOU ASSHOLE などで知られる石原洋(最近23年ぶりのソロ作を発表したばかり)。『エクスネ・ケディと騒がしい幽霊たちからのコンタクト』というタイトルも謎めいているが、以下にアツく記されているように、とてつもないサウンドに仕上がっている模様。もしかしたら今年最大の問題作の登場かも?

井手健介と母船、石原洋のサウンド・プロデュースによる5年ぶりのセカンド・アルバム、4月29日リリース! デカダンスの香りを纏うグラマラスで摩訶不思議な傑作ロック・アルバム!

なにもかもが妖しい! ついに沈黙を破った井手健介と母船、5年ぶりとなるセカンド・アルバムは、石原洋によってサウンド・プロデュースされた畢生の問題作!
聴く者すべてが度肝を抜かれるだろうその革新的サウンドは、夢魔の狂気か桃源郷か! いや、それはまさしく “2020年の神秘” !!
あのファースト・アルバムはほんの予告にしかすぎなかった!

数多くのミュージシャンがその才能を賞賛してやまない、井手健介率いる不定形バンド、井手健介と母船。ファースト・アルバム『井手健介と母船』(2015年)発表以来、約5年ぶりとなる待望久しいセカンド・アルバムをリリース!
しかし、届けられたそれは、誰もが予想だにしなかった官能的でセンセーショナルなコンセプト・アルバムとして結実していた!

クラシック・ギターをベースに、幽玄極まるサイケデリック・サウンドを展開していたファースト・アルバムから一転。本作『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists (エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』は、サウンド・プロデューサーにゆらゆら帝国や OGRE YOU ASSHOLE 等を手がけ、自らも先月、23年ぶりのソロ・アルバム『formula』を発表したばかりの石原洋、レコーディング・エンジニアに中村宗一郎(PEACE MUSIC)を迎え、デカダンスの香りを纏うグラマラスで摩訶不思議なロック・アルバムとして登場した……!

“Exne Kedy And The Poltergeists (エクスネ・ケディ・アンド・ザ・ポルターガイスツ)” なる架空の人物をコンセプトに、井手健介と母船がいま、衝撃的変貌を遂げる。
謎のエクスネ・ケディとはいったい何ものなのか?! そして、本作録音参加者さえも一聴してにわかに信じ難かったという「まさか!」の連続!

ゑでゐ鼓雨磨(ゑでぃまぁこん)との共作 “ささやき女将” や、ファースト・アルバム所収の名曲 “ロシアの兵隊さん” の華麗なる再録ヴァージョン。映画『バンコクナイツ』のトリビュート12インチ「おてもやん・イサーン」としてすでにリリースされていた代表曲 “おてもやん” は、ダークサイドに落ちたアナキン・スカイウォーカーが突如ベルリンのクラブに現れたかのような邪悪なオリジナル・ヴァージョンで収録。
妖精たちの海、洞窟、鏡の中、宇宙の果て──全9曲、ここではない場所から届く、ここにはいない者たちからの陽気で哀しいコンタクト=接触。

母船の新たな乗組員として、北山ゆう子(ドラムス)と mmm (コーラス、フルート)が加入。さらに、ゲスト・ヴォーカル、コーラスに mei ehara、キーボードに大山亮(キイチビール&ザ・ホーリーティッツ)もゲスト参加。
新生・井手健介と母船による、超現実的にして想定外、まさに奇妙な大作というべき『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists(エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』がついにそのベールを脱ぐ!
2020年最大の問題作にして傑作が誕生!

[商品情報]
アーティスト:井手健介と母船
タイトル:Contact From Exne Kedy And The Poltergeists (エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)
レーベル:Pヴァイン
商品番号:PCD-26075
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,600+税
発売日:2020年4月29日(水)

収録曲
1. イエデン landline boogie
2. 妖精たち a place for fairies
3. ロシアの兵隊さん russian soldiers
4. ポルターガイスト poltergeist
5. 人間になりたい caveman’s elegy
6. ささやき女将 madam the whisper
7. おてもやん otemoyan
8. 蒸発 swinging lovers (story of joe)
9. ぼくの灯台 lighthouse keeper

参加ミュージシャン:墓場戯太郎、北山ゆう子、清岡秀哉、羽賀和貴、山本紗織、mmm、大山亮、石坂智子、mei ehara
プロデュース:石原洋
録音・ミックス・マスタリング:中村宗一郎(PEACE MUSIC)

井手健介
音楽家。東京・吉祥寺バウスシアターの館員として爆音映画祭等の運営に関わる傍ら、2012年より「井手健介と母船」のライヴ活動を開始。様々なミュージシャンと演奏を共にする。
バウスシアター解体後、アルバムレコーディングを開始。2015年夏、1st AL『井手健介と母船』をPヴァインより発表する。その後、2017年には、12インチ・EP『おてもやん・イサーン』(EMレコード)、1st ALヴァイナル・エディション(Pヴァイン)をリリース。
その他、映像作品の監督、楽曲提供、執筆など多岐に渡り活動を続ける中、2020年4月、石原洋サウンド・プロデュース、中村宗一郎レコーディング・エンジニアのタッグにより制作された、「Exne Kedy And The Poltergeists」という架空の人物をコンセプトとした2nd AL 『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists (エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』をリリース予定。
https://idekensuke.com

角銅真実 - ele-king

 遡ることおよそ三年前の2017年4月15日に、水道橋のCDショップ兼イベント・スペース「Ftarri」にて、英国のサウンド・アーティスト/即興演奏家デイヴィッド・トゥープの来日公演が開催された。トゥープ含め全三組のアーティストがライヴを繰り広げた同イベントで、一セットめに出演した角銅真実のソロ・パフォーマンスがいまだに忘れられない。スピーカーから音を出力することのないキーボードを叩きながらハミングを披露し、カタカタという乾いた打鍵の響きとなんらかの楽曲らしき歌のようなものが聴こえてくる。しばらくすると会場にばらまかれた無線ラジオにつながれたイヤホンから微かに伴奏が漏れ聴こえ、その後ピアノで演奏することで楽曲のサウンドの全体像が明らかになる。さらに、ポータブル・カセット・プレーヤーから同じ楽曲の録音が再生され、キーボードを介した音のない行為と録音された音だけのサウンド、さらに眼前でピアノを介して歌われる音楽という、少なくとも三種類の楽曲のありようが観ること/聴くことの経験のうちに相互に記憶のなかで関係し合い、パフォーマンスにおいてわたしたちがなにを音楽として受け取っているのかということについてあらためて考えさせられる機会となった。そしてこのようなある種コンセプチュアルな試みでありながら、概念が先行する硬直性とは無縁の、行為そのものの楽しさと悦びにあふれていたことがなによりも印象に残っている。

 cero のサポートやドラマー石若駿による Songbook Trio をはじめ、網守将平率いる「バクテリアコレクティヴ」のメンバーとして、あるいは台湾のアーティスト王虹凱(ワン・ホンカイ)による共同制作プロセスを作品化した「サザン・クレアオーディエンス」のリアライズや、坪口昌恭ら気鋭のジャズ・ミュージシャンとともにアンソニー・ブラクストンの楽曲を演奏するプロジェクト、さらにはアジアン・ミーティング・フェスティバル2019への参加まで、打楽器奏者/シンガーソングライターの角銅真実の活動は驚くほど多岐にわたっている。むろん彼女自身のソロ・パフォーマンスやインスタレーション作品、あるいはアンサンブル・ユニット「タコマンションオーケストラ」も見落とすことはできないものの、単にジャンル横断的というよりも、どんな領域でも違和感なく共存できてしまう柔軟性が彼女にはあるように感じられる。サウンド・アーティストの大城真によるレーベル〈Basic Function〉から2017年にファースト・アルバム『時間の上に夢が飛んでいる』を、翌2018年には〈Apollo Sounds〉からセカンド・アルバム『Ya Chaika』をリリースしてきた彼女が、このたびメジャー・デビュー作としてサード・アルバム『oar』を発表することとなった。

 ヴォイスを楽器の一部であるかのように音響素材の一つとして駆使したファーストから、実験的/即興的な感触を残しつつ歌の比重が増したセカンドを経て、サード・アルバムでは歌が全面的に披露されている。大幅なアレンジが施されているものの、浅川マキの “わたしの金曜日” やフィッシュマンズの “いかれたBaby” のカヴァーも収録されており、彼女のこれまでの作品のなかでもっとも「音楽」に近づいたアルバムだと言っていいだろう。洗練された都会的なコード進行や憂いを帯びながらも力強い歌声、あるいは流麗なストリングス・アレンジなどは、ポップ・ソングと呼んでもよい完成度を誇っているものの、そうしたなかでたとえば1曲め “December 13” の冒頭から聴こえてくるイルカの鳴き声と電子音響が混じり合った大和田俊によるサウンド、あるいは雨だれのように物音が乱れ飛ぶ7曲め “Slice of Time” など、節々に音楽というよりも音そのものに対する興味がうかがえるところが、単なるポップ・シンガーというくくりには収めることのできない彼女の広範なバックグラウンドを示しているようにも思う。

 角銅真実が出演するライヴに行くたびに、客層がガラリと変わることにいつも奇妙な違和感を覚えてきた。ノン・ジャンルを標榜するミュージシャンは無数に存在しており、いまの時代にジャンルを越境/横断することそれ自体に特別な価値があるとも思えない。だがたとえば、リスナーがある音楽をポップス/ジャズ/サウンド・アート/エクスペリメンタル/即興……等々に区分することで自らの耳を閉ざしているのに対して、作り手はそうした分断をよそに交流と制作を繰り返していく。もちろんリスナーはどんな音楽に対しても等しく共感する必要はない。しかし同時に、どんな音楽でもこの世界に存在することは認められなければならない。『oar』のオフィシャル・インタヴューで角銅が「本当の真実ってないし、本当に分かち合えることってない。でも、分かり合えない人たちが一緒にいる状況はおもしろい」と語っていたように、異なる人々が異なるままに共感とは別のあり方で共存すること。それはおそらく、彼女の活動を追い続けることで、実体験として感得できる「おもしろさ」であるとともに、音楽のみならず社会の蛸壺化が進行するなかで、他者とともに同時代を生きる術でもあるのではないだろうか。

Squarepusher 9 Essential Albums - ele-king

 もう25年ものキャリアがあって、メイン名義の〈Squarepusher〉のスタジオ作だけでも15枚というアルバムをリリースしているトム・ジェンキンソン。初来日した頃はまだ22歳とかだったので、よくぞここまでいろんな挑戦をしながら自分をアップデートし続けてきたものだと感心する。段々と自分ならではの表現を確立していったミュージシャンならともかく、彼の場合は特に最初のインパクトがものすごかったわけで、正直こんなに長い間最前線で活躍しつづけるとは、当時は予測できなかった。改めて古いものから彼の作品を並べ、順番に聴いてみると、想像以上にあっちゃこっちゃ行きまくって、それでも芯はぶれない彼のアーティストとしての強靱さ、発想のコアみたいなものが見えてくるようだ。
 ここでは、今年1月にリリースされた最新アルバム『Be Up A Hello』に到るまでの重要作9枚を振り返りつつ、スクエアプッシャーという稀代のアーティストのユニークさをいま一度噛みしめてみたい。


Feed Me Weird Things
Rephlex (1996)

 いまでも、〈Warp〉からの「Port Rhombus EP」がどかんと東京の街に紫の爆弾を落とした日のことはよく覚えている。CISCO とか WAVE の棚は全部それに占拠され、“Problem Child” の殺人的にファンキーな高速ブレークビーツと、うねりまくるフレットレス・ベースの奏でる自由奔放なベース・ラインがあまりに新鮮でずっと繰り返し店でも流されていた。そして、実は〈Rephlex〉からコイツのアルバムが出てるぞっていうことで皆がこのデビュー作に飛びついたのだった。当時はそんなに意識しなかったが、本作は〈Rephlex〉にしては随分とアダルトな雰囲気がある。冒頭の “Squarepusher Theme” にしても方法論としてはその後一気に知れ渡る彼の十八番ではあるものの、ギターのカッティングから始まり、ジャジーでどちらかというと生っぽくレイドバックした響きをもったこの曲は、既にトム・ジェンキンソンの幅広い趣味を示唆している。次に非常にメランコリックで、時折打ち鳴らされるブレークビーツ以外はチルウェイヴかというような “Tundra”、さらにレゲエ/ダブに倍速のブレークビーツを合体させたレイヴ・スタイルをジャズ的なリズム解釈で徹底的にこじらせたような “The Swifty” が続くという冒頭の展開がダントツにおもしろいが、内省的で墓場から響いてくるような “Goodnight Jade” “UFO's Over Leytonstone” といった後半の曲も魅力的。


Hard Normal Daddy
Warp (1997)

 そして〈Warp〉から満を持してリリースされたのが、この2作目。ダークな装いだった前作に比べると随分とメロディックになって、明るく飄々とした印象で、トム・ジェンキンソン自身のキャラクターがよりサウンドに解放されたのかなとも思う。勝手な印象論だけど、こういうジョーク混じりみたいなノリは〈Rephlex〉が得意で、むしろデビュー作のような叙情性と実験性をうまい具合に配合したようなのは〈Warp〉かなというイメージがあって、当時はちょっと意外に感じた。ただ、カマシ・ワシントンがこれだけ持て囃されるような現代ならともかく、90年代後半にファーストの路線をさらに深化させていくのは得策じゃなかったろう。で、これを出した直後くらいに来日も果たし、ステージでひとりベース弾きまくる、作品よりさらにはっちゃけた印象のトムは、より大きな人気を獲得していくのであった。


Big Loada
Warp (1997)

 レイヴにもよく遊びに行っていたし、〈Warp〉に所属することになったきっかけは(初期) LFO だというトムの享楽的側面やシンプルなダンス・ミュージックの悦びが溢れた初期の重要なミニ・アルバム。クリス・カニンガムが監督した近未来ホラー的なMVが有名なリード・トラック “Come On My Selector” が、チョップと変調を施しまくったサイバー・ジャングルちっくでいま聴いても奔放なかっこよさを誇るのはもちろん、ペリー&キングスレイ的なお花畑エレクトリカル・アンサンブル+ドリルン・ベースな “A Journey to Reedham” も素晴らしい。余談だが、トレント・レズナーの〈Nothing〉からリリースされたアメリカ盤では、「Port Rhombus EP」や「Vic Acid」から選ばれた曲も追加収録されているので、かなりお得な入門盤だった。


Music Is Rotted One Note
Warp (1998)

 そして意表を突くように生演奏をベースにした、ほぼフリー・ジャズなアルバムをリリースしたスクエアプッシャー。どうも初期のトレードマーク的スタイルは『Big Loada』でやり尽くしてしまったから、まったく違うことに挑戦したくなったという経緯らしい。それにしても、全楽器を自分で演奏し、しかもあらかじめ曲を作らずドラムから順に即興演奏して録音していくなんて、アイデアを思いついても実際にやろうとするだろうか。まぁそれを実現できる演奏力や曲のイメージが勝手に湧くという自信があったんだろうけど。デビュー作でちらちらと見せていたアダルトでエクスペリメンタルな側面が一気に爆発したこのアルバム、近寄りがたいところもあり、一番好きな作品だというスクエアプッシャー・ファンはほぼいないだろうが、本作があったからこそ、その後の彼の活動もさらに広がりや説得力を持ちえたのだ。ちなみに、ジャケを飾る妙なオブジェはトム手作りのリヴァーヴ・マシンで、ジャケのデザインも自分で発案したそう。


Selection Sixteen
Warp (1999)

 トムには Ceephax Acid Crew として活躍する弟アンディーがいる(本作にもボーナス曲のリミキサーとして参加)。その弟からの影響、もしくは彼らがレイヴァーだった時代から強く持っているアシッドへの憧憬をさまざまなカタチでアウトプットした意欲的な盤。前作からの流れを引きずっているようなジャズ風味の強いトラックや、“Mind Rubbers” のようにドリルン・ベースが復活したような曲もあるが、全体的にはビキビキと鳴るアナログ・シンセのベース音が主役を張っている。これ以前にも酸味を出したトラックはときたま作っていたものの、ジャコ・パストリアスばりの超技巧ベース奏者という売り文句で世に出たアーティストが、わざわざそれをかき消すようなアシッド・ベースだらけの作品を作ってしまうとは……。テクノのBPMでめっちゃファンキーなブレークビーツ・アシッドを響かせる “Dedicated Loop” が、Da Damn Phreak Noize Phunk 名義の Hardfloor を彷彿させるドープさ。


Go Plastic
Warp (2001)

 全編生演奏だった『Music Is Rotted One Note』に “Don’t Go Plastic” という曲があって、日本語でも「プラスチッキー」と言うと安物、(金属に見せかけたような)粗悪品的なものを指すが、この場合は作り物(シンセ音楽)からの離脱を意図していたと思う。それがここに来て宗旨変え、「作り物がいいじゃん!」という宣言だ。時は2001年、エレクトロニカが大きな潮流となっていく少し前。スタジオの機材を一新したスクエアプッシャーは、コンピュータで細かくエディットしてトラックを弄っていくDAW的な手法ではなく、データを緻密にシーケンサーに打ち込むことでこのマッドな高速ブレークビーツを生み出した。ジャズ/フュージョンやエレクトロニック・ミュージックに惹かれたのは、サウンドに存在する暴力性だと語っていたトムが、その本性を露わにしたアルバムだ。全体を貫くダークで偏執的なまでのミュータントDnBは踊ることはもちろん、アタマで考えることや感じることも拒否するような局面があり、激しい電気ショックを浴びる感覚に近いかも。ただ、最初と最後にレゲエ~ダブを解体した比較的とっつきやすい曲をもってくる辺りに、トムの優しさも垣間見える。


Ultravisitor
Warp (2003)

 Joy Division の “Love Will Tear Us Apart” のカヴァーと、フジロックでのライヴ(海賊盤かというくらい音が悪いのが残念)を収録したボーナス・ディスクが話題になった『Do You Know Squarepusher』を経て、03年にリリースされた傑作との呼び声高い心機一転作。極端に言うと、これまでのスクエアプッシャーが試みてきた様々な要素/手法をすべて注ぎ込んだような混沌としたアルバム。どういうわけか、歓声やMCまで入ったライヴ録音の曲も結構多い。アルバム後半を支配する激しくノイジーなエクスペリメンタル・ブレイクコアと対照的なインタールード的な小曲は、ほぼすべてアコースティックな楽器の演奏でまとめられていて、それもトム得意のフリー・ジャズ的なものではなく、むしろクラシックやクラウトロック等を感じさせる(特にラストの2曲が美しい)。さらに本作の間違いないハイライトである、ゆったりとしたテンポと生ドラムの生み出す心地よいグルーヴに被さる、メランコリックな重層的メロディーが印象的な “Iambic 9 Poetry”。これを中心とした冒頭5曲の完璧な構成と展開は、スクエアプッシャーの才がついに二度目の大輪を咲かせたと感じられた。


Ufabulum
Warp (2012)

 手練れのミュージシャンを従えたセルフ・カヴァーをするバンド、Shobaleader One としての活動を挟みつつ、スクエアプッシャーが新たな次元に突入したことを知らせてくれたアルバム。CDではなく YouTube で音楽を聴き、盤を買うよりライヴやフェスに繰り出す、という近年のリスナーの傾向を写したように全曲にトム自身が作成したLEDの明滅による演出が施された映像が存在する。Shobaleader One ではフランスの〈Ed Banger〉から(Mr. Oizo のリミックス入りで!)リリースするなど抜け目のないところを見せ、今作ではその影響もあってか、エレクトロ・ハウスやEDMに通じるような迫力満点の(だが、彼の前衛性やエクスペリメンタルな面を好むファンからしたら大仰な展開や音色はコマーシャルに感じられてがっかりと受け取られるかもしれない)トラック群を仕上げている。混沌度を増すアルバム後半、電子回路が暴走したように予想のつかない展開でリスナーに襲いかかる “Drax 2” や、ヴェイパーウェイヴ的な美学も感じるラストの “Ecstatic Shock” が白眉。


Be Up A Hello
Warp (2020)

 そして、5年ぶりにリリースされた、スクエアプッシャーの原点回帰とも言える最新アルバム。『Ufabulum』や続く『Damogen Furies』では自作のソフトウェアやテクノロジーを駆使して、いわゆるヴィジュアル・アートや最新の IoT にまで斬り込んでいくのではないかという意欲的な姿勢を見せていたトム・ジェンキンソンが、旧友の突然の死去をきっかけに、デビュー前に使っていたような古いアナログ機材や、コモドールの古い 8bit コンピュータまで動員してメモリアル的に作り上げた。近しいひとの死がテーマになっているアルバムだから当然かもしれないが、かつてのはっちゃけまくったスクエアプッシャーを想起させる音色や曲の構成は随所に感じられるものの、どこか悲しげで暗いトーンに覆われている。そして、常に以前の自分に一度ダメ出しして新たなことに挑戦してきた彼が、敢えて彼の音楽性や名声を確立するに到った初期の手法に立ち返ったのには、やはり大きな意義を感じる。特にUKでここ数年盛り上がっているレイヴやハードコア(初期ジャングル)を復興させようという試みは、おもしろいけれど懐古を完全に超越した新しいムーヴメントを生み出しているかというとそうでもなくて、では90年代初頭にそういう現場の雰囲気やサウンドに囲まれて、そこで多くを吸収してプロになったトムのようなひとが改めて当時と同じ道具を手にしたとき、何を表現するのかというのはとても示唆的だと思うからだ。

 4月に行われることになったこちらも5年ぶりの単独ライヴは、『Be Up A Hello』の内容を考えると、ここしばらく注力してきたような、大型スクリーンと派手に明滅する映像をメインの要素に据えた未来的なプレゼンテーションとは違ったものになるのだろうか。ロンドンで行われたアルバムの発売記念ギグを映像で確認すると、機材の音が剥き出しでそれこそドラムマシンやシーケンサーが奏でるループがどこまでも続けばそれだけで幸せなんだ、というかつてDJ以外の演者が “ライヴPA” などと呼ばれた時代にあった雰囲気を感じるシンプルなものだった。もうほとんどレコードでDJをすることはないし、その感覚を思い出すのに少し時間がかかったとすら言っていたジェフ・ミルズの本当に久々のアナログと909でのセットを昨年11月に聴きにいった。ただの懐古に陥らないための演出や伝説の確認ではなくフレッシュな体験としてそれを受け止める若い聴衆とアーティストのインタラクトがおもしろく、今回も新たな発見がありそうだと期待している。
 かつて一世を風靡した “Come On My Selector” のMVは、日本を舞台にしてる風の配役や設定だったが、その実 “Superdry 極度乾燥しなさい” 的な細かな違和感がありまくりだった。最新のビデオ “Terminal Slam” ではやはり渋谷を中心にした東京の街を舞台にし、「また日本贔屓の海外のアーティストに東京を超COOLに描かれてしまった!」というのが大半の日本人の最初の反応で、実は監督したのが真鍋大度だったので、なるほど、さすが〈Warp〉とスクエアプッシャー、よくわかってる!と思ったものだ。今回の来日ステージでも、もしかしたら日本ならではのなにかを反映した演出を用意してくれるかもね。

5年ぶりとなる超待望の単独来日公演が大決定!!

2020年4月1日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
2020年4月2日(木) 梅田 CLUB QUATTRO
2020年4月3日(金) 新木場 STUDIO COAST

TICKETS : ADV. ¥7,000+1D
OPEN 18:00 / START 19:00
※未就学児童入場不可

MORE INFO: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10760

チケット情報
2月1日(土)より一般発売開始!

Dirty Projectors - ele-king

 一昨年『Lamp Lit Prose』で高らかに生を謳歌したNYインディ・シーンの希望の星、ダーティ・プロジェクターズが1年半ぶりとなる新曲 “Overlord” をリリースしている。耳に残る主旋律とDPらしいコーラスが印象的な1曲だけど、はてさて、これは次なるアルバムへの布石なのかしらん? なお、ヴィデオはデイヴ・ロングストレスみずからが監督を務めているとのこと。

[3月26日追記]
 新情報! 先日公開された新曲は、EPへの布石だったようです。明日3月27日、ダーティ・プロジェクターズの最新EP「Windows Open」がリリースされます。新たに “Search For Life” も公開。楽しみだー。

Dirty Projectors
デイヴ・ロングストレス率いるダーティー・プロジェクターズが
最新EP「Windows Open」を3月27日にリリース!
新曲 “Search For Life” のリリックビデオを公開!

デイヴ・ロングストレス率いるブルックリン出身のバンド、ダーティー・プロジェクターズ。先月1年半ぶりの新曲 “Overlord” を、デイヴ自身が監督として手掛けたミュージック・ビデオと共にリリースし、シーンに戻ってきた彼らが、3月27日に最新EP「Windows Open」をリリースすることを発表! 新章のスタートとなる本作には、『Lamp Lit Prose』ツアーで参加したメンバーが参加し、レイドバックで詩的な魅力に溢れる4曲を収録。その中から新たに “Search For Life” が解禁され、リリック・ビデオが公開された。オリヴァー・ヒルによるストリングスのアレンジが見事なバラードとなっており、今世界を巻き込んでいる危機的な状況の中、本楽曲はより深い響きを放っている。

Search For Life (Official Lyric Video)
https://youtu.be/Oi-iUpec_6M

「Windows Open」ではマイア・フリードマンが全曲でリード・ヴォーカルを務め、作曲、プロデュース、ミックスのすべてをデイヴ・ロングストレスが担当。歌詞はデイヴとマイアが共同で担当し、レコーディングはロサンゼルスで行われた。

label: DOMINO
artist: Dirty Projectors
title: Windows Open
release date: 2020/03/27 FRI ON SALE

TRACKLITSING
01. On The Breeze
02. Overlord
03. Search For Life
04. Guarding The Baby

Dirty Projectors
ブルックリン出身、独創的かつハート・ウォーミングなサウンドで
人気を集めるバンド、ダーティー・プロジェクターズが1年半ぶりとなる
新曲 “Overlord” をMVと共にリリース!

デイヴ・ロングストレス率いるブルックリン出身のバンド、ダーティー・プロジェクターズ。〈Domino〉移籍後、初めて発表した2009年の5作目『Bitte Orca』が、その年の年間チャートを総なめにし、本格的にブレイク。その後もビョークとのチャリティー・コラボ作品のリリース、朝霧ジャムのヘッドライナーとしての出演、そして前作『Lamp Lit Prose』を提げてフジロック・フェスティバルへの出演も果たすなど着実にステップアップを遂げてきた彼らが、前作より1年半ぶりの新曲 “Overlord” をリリース! 同時にデイヴ自身が監督として手掛けたミュージックビデオを公開!

Dirty Projectors - Overlord (Official Music Video)
https://youtu.be/LzHGYtIqLig

監視資本主義への皮肉? 混乱ばかりを生む世界のリーダーたちへの批判? テクノロジーへの盲目的な過信への警告? アンチ・ファシズムのマニフェスト? そんなことは誰も知る由もないが、“Overlord” はジョニ・ミッチェル “Both Sides Now” の現代版と言っても過言ではない。アコースティックギター、コントラバス、コンガ、ドラム、3部合唱によって紡ぎ出されるリラックスした暖かいサウンドは紛れもなく、アルバム『Swing Lo Magellan』以降のダーティー・プロジェクターズのサウンドとなっている。楽曲中、ギタリストのマイア・フリードマンがリードボーカルを担当し、プロデューサーであるデイヴと共に作詞を行った。他にもフェリシア・ダグラスとクリスティン・スリップがコーラス、ナット・ボールドウィンがコントラバス、マウロ・レフォスコがコンゴとして参加している。

label: BEAT RECORDS / DOMINO
artist: Dirty Projectors
title: Overlord
release date: NOW ON SALE

Pray for Nujabes - ele-king

 去る2月26日。その日はちょうど10周忌だった。ロウファイ・ヒップホップから舐達麻まで、いまなお多大な影響を与え続けている不世出のトラックメイカー、故 Nujabes に捧げる映像作品「Pray for Nujabes」が、渋谷の大型ヴィジョンに映し出されたのである。彼の作風をなぞるかのようにセンティメンタルに仕上げられた同映像は、現在 YouTube でも公開中。

Nujabes10周忌に
渋谷・スクランブル交差点で追悼映像放映!

2020年2月26日19時30分、東京・渋谷のスクランブル交差点の大型ビジョン6面で、10周忌を迎えた今なお世界中で愛されてやまない日本を代表するトラックメイカー、Nujabes に捧ぐ映像作品「Pray for Nujabes」が音楽ストリーミングサービス Spotify の協力を得て、3分間にわたって同時放映されました。

心にしみるメロウ&スピリチュアルな Nujabes のビートが渋谷の街に響きわたり、突然の出来事に信号待ちの人々が、その音楽に身を委ねたり、スマートフォンをかざす姿も多く見られました。

また Spotify では同日、生前の Nujabes が師と仰いだ 橋本徹(SUBURBIA)の選曲による Nujabes 10周忌オフィシャル・プレイリスト「Pray for Nujabes」と、「This Is Nujabes」の2本のプレイリストも公開されました。

Nujabes の音楽は没後10年を経てなお、国内外の音楽ファンに愛されており、世界で2億4,800万人以上が利用する Spotify では、並みいる現役アーティストを抑えて2018年に「世界で最も再生された国内アーティスト」の第3位にランクされています。Nujabes のリスナーは、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、日本の順に多く、ブラジルやメキシコなどの中南米でも多く聴かれています。また10周忌に合わせ、Spotify から過去10年に最も聴かれた Nujabes の楽曲ランキングも発表されました。

[当日の模様]



[放映された映像]
「Pray for Nujabes」(Supported by Spotify)
映像URL:https://youtu.be/-_bx7O3cQD4
音楽:Nujabes「Luv (Sic.) Pt2」~「Luv (Sic.) Pt3」〜「Reflection Eternal」
映像制作:Hydeout Productions
映像協力:haruka nakamura「Lamp」
クリエイティブ・ディレクター:Toru Hashimoto (SUBURBIA)
プロデューサー:Daisuke Matsushita

[公開されたプレイリスト]
「Pray for Nujabes」 https://spoti.fi/PrayforNujabes
「This Is Nujabes」 https://spoti.fi/ThisIsNujabes

[過去10年にSpotifyで最も聴かれたNujabesの楽曲ランキング]
1. Akin, Cise Star, Nujabes - Feather (feat. Cise Starr & Akin from CYNE)
2. Nujabes, Shing02 - Luv(sic.) pt3 (feat. Shing02)
3. Cise Starr, Nujabes - Lady Brown (feat. Cise Starr from CYNE)
4. Nujabes - reflection eternal
5. Nujabes, Uyama Hiroto - Spiritual State (feat. Uyama Hiroto)

[Nujabesプロフィール]
今なお世界中で愛されてやまない日本を代表するトラックメイカー、音楽プロデューサーである瀬葉淳(1974 - 2010)のアーティスト名。〈Hydeout Productions〉を主宰して数多くの心にしみる人気作品を発表するとともに、コムデギャルソンのパリ・コレクションの音楽や渡辺信一郎監督のアニメ『サムライチャンプルー』のサウンドトラックなども手がけていた。2018年に Spotify が発表した「海外で最も再生された国内アーティスト」3位。名作の誉れ高い代表アルバム『Modal Soul』のアナログ盤も2月26日にリリースされたばかり。(公式サイト:www.hydeout.net

フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き - ele-king

 即興音楽とはなにか、との問いにジョン・コルベットは本書のまえがきで「即興演奏(improvisation)でつくられた音楽」と端的に答えている。おっしゃるとおり至極単純。それらをさしてひとは、あるいはメディアはフリー・インプロヴィゼーション、フリー・ミュージック、スポンタニアス・ミュージック、はたまたインスタント・コンポジションなどと呼びならわすが、本書のあつかう即興音楽は即興演奏だけでできた音楽、それのみをさす。すなわちまじりっけなし、純度100パーセントの即興でできた音楽──というときの「即興」というものは、ではなにかという疑問に、コルベットは事前のとりきめなく、曲を憶えることもなく、演奏の進行と同時にできていく音楽なのだという、その点では音楽の分野を問わず遍在する即興という行為の多様性からその核にあるものをうかびあがらせようとするデレク・ベイリーの主著にして、この分野の書物の古典中の古典である『インプロヴィゼーション──即興演奏の彼方へ』とは射程は異にするものの、コルベットはそもそもベイリーのむこうを張るかのごときだいそれたことは考えていないとも言明している。なんとなれば、この小ぶりな本は題名どおり『フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き』であるのだからして。
 そもそもなぜ即興音楽に「聴取の手引き」が必要なのか。そうおっしゃる読者はおそらく即興音楽になじみがうすい。というのも、即興音楽に真剣にむきあおうにも、どう聴いていいのかわからない事態に直面した音楽ファンもすくなくないであろうから。なぜならそこには通常の意味でのメロディがない、明晰なリズムもハーモニーもなければ楽曲の構造をほのめかす形式もなく、それに沿って展開する(ときに弁証法的な)物語性も、あたかも蒸発したかのようで言語化しがたい。このようなないないづくしは一見、即興音楽の制約であるかにみえる。ところが私たちがふだん耳にする音楽におぼえる美的興奮こそ、ルールの枠に則ったものにすぎず、即興とはその枠組みの外の新雪のような余白に(危険をかえりみず)踏みだしていく行為であり、演奏や作品は既存の文脈になじまないだけで、美学的かつ批評的な水準も存在する。すばらしいものとそんなにすばらしくはないものがあるが、そのちがいを理解するには時間と経験がいる。ちょっとの軍資金も必要かもしれない。思えば遠い道のりだった。そうひとりごち、私はレコード棚をふりかえると夥しい数の即興音楽の音盤の背が手招きする。私はいまにも頬ずりせんばかりにレコード棚ににじりよる。一枚一枚に思い出も思い入れもある。私はついさっき、即興音楽には(も)出来不出来があると述べた。棚の音盤を眺めるとたしかにそのとおりだと確信を深めもするが、しかしそうみなす理由はなんなのだろう。即興音楽を判断する基準みたいなものがあるのだろうか。その基準は私という個人に固有のものだろうか、それともプラトンのいうイデアみたいなものでもあるのか。じつは愛好家や評論家諸氏はフィギュアスケートのように即興に点数をつけているのだとして、はたしてなにをもって何点とするのか。そもそも原理的に無限といえるほど多種多様なあらわれ方をする即興音楽全体にあてはまる基準など存在するのか、またそれをだれが把握できるのか。とはいえ即興音楽も音楽であるからにはかならずや、演ること以上に聴く側にだって方法論がいる。
 ポップスやロック、ジャズやクラシックでも、形式が確立した分野の作品なら、数をこなせば自分なりの聴き方が身につけられる。おそらく多くの音楽リスナーはそのようにしてあらゆる音楽をふるいにかけながら聴き方を学んでいく、その一方で既存の音楽の枠組みの外を視野に入れる即興音楽にとって形式は土台というより制約にちかい。したがってリスナーも作品や演奏ごとに新たな聴き方をたちあげる──べきなのだが、聴くたびにふりだしに戻っていてはなかなか厄介である。記憶(の獲得ないし喪失)と即興のかねあいはこの分野をつきつめる課程でおりにふれて顔を出す重要な命題だが、『聴取の手引き』はそのような考える楽しみのちょっと手前で、まずは聴くことの楽しみの発見を手助けしようとする。
 全体は大きく基礎編と発展編にわかれ、音盤や人名リストが付録としてつく構成をとっている。コルベットがまえがきで即興音楽の定義を述べていることはすでに述べたが、それをもとに基礎編以降はじっさいに音楽を聴く段階にはいっていく。おもしろいのはふつうならここで、即興音楽の聴きどころをあげていくものなのにコルベットは聴くにあたってのハードルを列挙するところ。すなわち「リズム(がない)」「時間(が読めない)」「誰がなにをしているのか(わからない)」という、先述の即興音楽の「NAI-NAI 16」をクリアする手立てに紙幅を割く、その懇切丁寧な筆の運びをいささか乱暴に要約すると、私たちがふだんよく耳にする音楽では韻律的(メトリカル)なリズムが方眼(グリッド)の役目をはたし音楽を定量化するが、即興音楽ではドラムやベースなど、一般的な合奏形態内で時間(タイム)をキープし、ビートないしグルーヴを生み出す役割を担うパートも期待どおりに機能しない。機能していけないわけではないのだが、そうなったらなっただけ因習的な形態にちかづくから既知感もます。そもそもたえざる変化を旨とする即興音楽において反復は両立不能な命題ともいえる(むろん戦略的な反復ないし形態の模倣は選択肢として排除しないとして)のだが、演奏にじっくり耳を澄ませると周期性のないなかにも変化は感じられる(反復していないのだからむしろ変化しかないともいえる)。とはいえその変化はパターン化できるようなものではなく、終わりもみえない。この演奏はいったいいつまでつづくのだろうという疑問(不安)は下世話なようでいて、即興演奏にはじめてふれる聴き手には死活問題である。なにせひとの集中力はそんなにはつづかない。有限の集中力を適切にふりわけるには演奏の見取り図があると便利だが、即興音楽はクラシックみたくプログラムノートもない。とはいえ演奏者がラ・モンテ・ヤングでもなければ、即興演奏とてほとんど常識的な時間内に終了する。常識的というのは、1曲(セット)20~30分で、2セットやったとして1時間とちょっと。ときおりノンストップの長大な即興をくりひろげるライヴもあるが、すくなくとも1時間半のうちには親切なお店の方の出すビールにありつけるというコルベットの見立てには私もおおむね同意する。むろんそれ以前でも、あなたには自由に席を立つ権利がある。とはいえせっかくなので演奏は最後まで楽しみたい、そうすると音楽全体が体感できる。ただしそこで起こるすべてを理解する必要はない──そもそもそんなことは人間にはほとんど不可能かもしれない──が、演奏の空間で起こる出来事の残像みたいなものは認識できないともかぎらない。その輪郭を記憶にとどめたりメモをとったりすると、あなたの手のなかの地図は音楽を比較、検討するときに役立つかもしれない。すくなくとも理解の目安にはなりますよね。
「そうそう、出来事といえば、さっきのライヴではサックス奏者が牽かれていく牛のような嘶きを発したのに呼応するかのようにドラムスとベースがドナドナっぽくなったのは圧巻でした」
「とてもいい目のつけどころです、即興音楽の出来事とは演奏者どうしの『相互作用のダイナミクス』からできているのですから」
「相互作用のダイナミクス?」
 そうです。即興はいっさいのとりきめがないことはご存じですよね。とはいえ複数の演奏が参加する場合、演奏者どうしに関係性のようなものが生まれ、それらは(1)調和、(2)補足、(3)対比の3種で特徴づけられ、そのさいの音楽的エネルギ—は(1)集中、(2)拡散のどちらかをとるとコルベットは述べています。それらをパラメータにした演奏者どうしの関係性が「相互作用のダイナミックス」であり、著者は作中で代表的な7パターン(と派生的な数パターン)をとりあげていいます。この一連のながれはレーベルを運営する熟達の聴き手にして演奏家でもある著書の経験を多面的に動員した本書の読みどころのひとつ。詳細は読者諸兄ご自身の目でたしかめられたいが、一例だけあげると、「サポート/ステップアップ」と名づけた関係性では、ある演奏者があたかも即興(合奏)の前景に歩みでるかのように、それまでの演奏と異なる音楽的言明をおこない、状況が相対化(し場面が転換する)ことを意味するが、意見の一致/不一致などの単純に論争的なダイナミクスの外の思弁的な重層性を明記したのはみのがせない。このように、即時的な丁々発止 インタープレイ)におさまらない即興音楽特有の(非)協働性は音楽的時(空)間の屈曲を招き、変化をきたす時間の幅が狭まれば、やがてシュトックハウゼンいうところのモメント(瞬間)形式に漸近するという説など、コルベットの見立てにはこみいった概念や記述を端折ったがゆえの陥穽もある(それもまた本書の性格に由来するとも思うのだ)が、その真摯な語り口にのぼる即興の諸相に虚心にむきあえば、私たちは演奏家が事前の計画も予備的なスケッチもなくおこなった演奏を、「聴く」という全的行為と記憶をたよりに溯及的に構造化するまでになる。このとき、(宿命的に)音楽のいちぶである演奏家にはけっしてとどかない聴取者の特権、無数の解釈にひらかれた、音楽を聴くことの不意のゆたかさがあなたを撃つのである。
 入門者の好奇心をくすぐりながら中級者の共感を呼び、すれっからしの微笑をさそう──根幹となる基礎編をへて状況論にも目配せする後半部で本書はいよいよ発展編にはいっていく。とはいえ『手引き』たるもの、いたずらに小難しかったり高尚になっては立つ瀬がない。そこで著者は具体的な事例をまじえつつ、レコードリストも掲げながら、一貫する機知で即興音楽の原理を浮きぼりにする。
 なかでも「情熱点火」と題した作品リストは端的で趣意に富んでいる。あがっているのは20枚だが、ポール・ラザフォードの『The Gentle Harm Of The Bourgeoisie』にはじまるセレクトは即興の旨味を凝縮している。また同時に、コルベットの即興観の根底にはおそらく(というか当然)ジャズがあり、聴取のポイントとしては個々の音楽家の語法のたしかさと、それらの合奏における働き方を重視していることをうかがわせる。そう考えるのは作品の中身もさることながら、それらがソロからデュオ、トリオからオーケストラまでを網羅しているのでもわかる。即興にとって編成は喫緊の課題である。このことについて著者は数ページあとに「3の法則」として一節とって述べている。いわく、ソロとデュオ、トリオとそれ以上では即興の関係性(ダイナミクス)のあり方がちがう。その見立てに則って、さきのリストでもソロからオーケストラまで形態のちがう作品を、コルベットは選出していたのだが、これにより意図したのはオススメのフォーマットがあるとかではなく、異なる編成それぞれに特徴があり、おそらくコルベットはその階調の広がりに即興音楽の魅力をみている。そのことは、ハシ休め風の「極端な仮説に挟まれ踊る」にもあらわれている。この節で著者は以下の思考実験をもちだしてくる。すなわち(1)すべてが即興である、(2)なにも即興ではない。このふたつの命題は、たとえば譜面の再現を前提とするクラシックの演奏家にも解釈の自由があるようにあらゆる音楽には即興的な側面が存在し、他方で、ライプニッツではないが即興音楽の錦のミハタである自由なるものもじつはけっこう予定調和ちゃうん!? ということなのだが、結論からいえば、コルベット自身は両方を極論として退けている。つまるところすべての音楽は即興の面ではそのふたつを両端としてのその線分上のどこかにある、と述べて、それこそが「メッセージの明瞭さと整然たる解決ということ以外の(引用者注:即興音楽の)価値」といいたがっているかに私にはみえる。いうなれば「聴く人を宙吊りにしておくやもしれぬ音楽のプロセス」でありつづけることが即興音楽の即興音楽たるゆえんであるということである。むろんそれが原理主義に収斂しては元も子もないのであって、即興音楽の「道徳的優位性」をもちだす信奉者にしっかりクギをさす著者の即興観なるものを『手引き』の本文を借りて述べれば「フリー・インプロヴィゼーションは音楽をつくりだす一方法であって、独立した価値や特質ではありません」ということになるだろうか。むろんその「方法」がおそるべき深みをもっているのはそこかしこにほのめかしてあるし、巻末の人名リスト、さらに付録として掲載した細田成嗣作成によるブックガイドと録音作品リストは欧米が主軸の本書に、日本と近隣諸国から届けられた重要作を補い『フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き』の有用性を高めている。その一方で、細田が指摘する「魅力的な即興の世界が無数にある」という可能態は選ばれた演奏家や作品の記名性と抵触するおそれもある、というこの問いは『手引き』たる本書の圏域外だとしても、即興音楽の門のむこうにはそのようにきわめて人間的で思弁的な領野が広がっているのがわかる。みなさんはいままさにそのとば口に立っているというわけです。
 ようこそ即興音楽の世界へ。

Jaga Jazzist - ele-king

 こいつは電撃的なニュースだ。これまで〈Smalltown Supersound〉や〈Ninja Tune〉からリリースを重ねてきたジャズもロックも呑みこむノルウェーの野心的音楽集団=ジャガ・ジャジストが、なんと〈Brainfeeder〉に移籍! そして、じつに5年ぶりの新作を4月24日にリリースする!! トンスベリの異能とLAの異端との邂逅……これはバンドとレーベル、双方にとって転機になる出来事だろう。なお、きたるニュー・アルバムには冨田勲やフェラ・クティへのトリビュートも含まれているらしい。昨年のアムガラ・テンプルの来日公演も良かったし、今回はいったいどんな演奏を聞かせてくれるのか。アルバムめっちゃ楽しみや~。


ノルウェーを代表する異能音楽集団、ジャガ・ジャジストが
フライング・ロータス率いる〈Brainfeeder〉に電撃移籍!
冨田勲に敬意を表し、フェラ・クティに想いを馳せた
初のセルフプロデュース・アルバム『Pyramid』が4月24日にリリース決定!
新曲 “Spiral Era” 本日公開!

1994年に結成され、現代音楽からプログレッシヴ・ロック、ジャズ、エレクトロニカまで様々なスタイルを取り入れながら活動をしているノルウェーが誇る異能音楽集団、ジャガ・ジャジストが、2015年の前作『Starfire』以来となる最新アルバム『Pyramid』を、フライング・ロータス主宰レーベル〈Brainfeeder〉より4月24日(金)にリリース決定! 同時に新曲 “Spiral Era” を公開した。

Jaga Jazzist - Spiral Era
https://www.youtube.com/watch?v=HnLUe4MMraY


バンドの核であり、すべての作曲を手がけるラーシュ・ホーントヴェット率いるジャガ・ジャジストは、本作『Pyramid』で、また新しいコズミック・サウンドを手に入れた。電子音を駆使した80年代のジャズ・バンドや、ノルウェーにおけるシンセ・ミュージックの第一人者ストーレ・ストールロッケンから、現代のテーム・インパラ、トッド・テリエ、ジョン・ホプキンスといったアーティストに敬意を表している。アルバムは4曲の長尺トラックで構成されており、丁寧に練られた楽章に沿って進行し、鮮やかな色彩の糸を紡ぎ出している。

ジャガ・ジャジストにとって初めてのセルフプロデュース・アルバムとなる『Pyramid』。彼らの制作工程は、これまでの環境から大きく変化した。多くのアイデアを自由に出すことができた一方で、どのアイデアを採用するかを、自分たち自身で決断することが必要だった。ドラマーのマーティン・ホーントヴェットは「大変だったけれど、自分たちで作業するのが自然だと感じた。メンバーのうち5人はプロデューサーだし、生業としてレコードを作っているわけだから」と語る。その結果、今までにないほどメンバーの団結力を感じられる作品が誕生した。

彼らは『Pyramid』をコンセプト・アルバムとは形容しないが、各楽曲のタイトルをコンセプチュアルなスタート地点と位置付けており、聴き手は楽曲からどんな物語も描きだすことができる。“Tomita” は、日本人の作曲家でシンセ奏者の冨田勲に捧げられており、“The Shrine” は、フェラ・クティが活動拠点としたライヴ・ハウスに由来する。

このアルバムは、これ自体が一つの交響曲だと思っていて、それぞれのパートに余白を持たせ、自由に広がっていくようにしているんだ。 - Lars Horntveth

ジャガ・ジャジスト待望の最新作は4月24日(金)にリリース! 国内盤CDにはボーナストラックが収録され、解説が封入される。また、輸入盤LPはクリスタル・クリア・ヴァイナル仕様となっている。

label: BRAINFEEDER/BEAT RECORDS
artist: JAGA JAZZIST
title: Pyramid
release date: 2020/04/24 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-636 ¥2,200+税
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書封入

BEATINK: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10879
Apple Music: https://apple.co/380lgwr
iTunes Store: https://apple.co/2VooeIu

Trinitron - ele-king

 東京にこんな音楽があったなんて! トリニトロンは2010年から2012年にかけて活動していた〈Call And Response〉の4人組バンドである。今回リマスターされた限定CD-Rには、高円寺のベッドルームでつくられたというニューウェイヴ、ポストパンク、シンセポップの数々がめいっぱい詰め込まれている。ブラック・サバスやキャンディーズ、パフュームなどのカヴァーも収録されているが、“Liquidi Liquids” や “One Great Year in Tsukuba” あたりはテクノ耳で聴いてもかっこいいし、“My Boring Feelings” のドキッとさせられるリリックは音楽好きなら必聴かも。レーベルによればブライアン・イーノやDAF、デペッシュ・モードやトーキング・ヘッズ、ステレオラブが好きなひとはぜひ、とのこと。チェック。

artisit: Trinitron
title: make.believe - All of Trinitron
label: Call And Response
catalog #: CAR-51
release date: February 25th, 2020

tracklist:

01. Music to Watch Boys By
02. Heart no Ace ga Detekonai (Candies cover)
03. 10,000 Euros
04. Monday Club
05. Comment is Free
06. Democracy
07. Paranoid (Black Sabbath cover)
08. Liquidi Liquids
09. My Boring Feelings
10. Edge (Perfume cover)
11. The Pure Light of True Love
12. Match no Hono (Mir cover)
13. Namida wo Misenaide (Moulin Rouge/Wink cover)
14. One Great Year in Tsukuba
15. Killer Wave
16. Aus with the Ausgang
17. Polo Shirts Girl
18. Sweet Blue Flowers
19. Kids and Girls

https://callandresponse.jimdofree.com/releases/trinitron-make-believe-all-of-trinitron/

Jeff Parker & The New Breed - ele-king

 トータス、アイソトープ217、シカゴ・アンダーグラウンドなどで活躍し、そもそもはシカゴ音響派~ポスト・ロックの文脈から登場してきたギタリストのジェフ・パーカー。先日もトータスのメンバーとして来日公演をおこなっていたが、そんなジェフにとって2016年の『ザ・ニュー・ブリード』はヒップホップとジャズの関係を探ったアルバムだった。彼にとってヒップホップとはプロデューサーが作る音楽、ポスト・プロダクションによって再構築された音楽であり、『ザ・ニュー・ブリード』はたとえばJ・ディラあたりから影響を受けたヒップホップ的なビートとジャズ・ギターのインプロヴィゼイションを融合し、トータルなバンド・サウンドとして展開していた。ニューヨーク・タイムズやロサンゼルス・タイムズなど、さまざまなメディアで2016年の年間ベストに選出されたこのアルバムによって、ジェフ・パーカーはソロ・アーティストとしての確固たる地位を築いたが、それから4年ぶりのニュー・アルバムが『スイート・フォー・マックス・ブラウン』である。

 『スイート・フォー・マックス・ブラウン』は『ザ・ニュー・ブリード』の姉妹作というような位置づけで、『ザ・ニュー・ブリード』がジェフの亡き父親に捧げられていたのに対し、存命の母親に捧げたものとなっている(マックス・ブラウンは母親の旧姓で、アルバムのジャケットは若いときの彼女の写真である)。制作メンバーも『ザ・ニュー・ブリード』を引き継ぐ形となり、ジェフとポール・ブライアン(ベース)の共同プロデュースのもと、ジョシュ・ジョンソン(サックス、ピアノ)、ジャマイア・ウィリアムズ(ドラムス)というザ・ニュー・ブリード・バンドが演奏の核となる。ジェフはギターのほかにピアノ、シンセ、ドラムなどをマルチに操り、ヴォーカルやサンプラーも担当している。『ザ・ニュー・ブリード』にはトータスのジョン・マッケンタイアがゲスト参加していたが、今回はシカゴ・アンダーグラウンドやアイソトープ217での盟友のロブ・マズレク(ピッコロ・トランペット)、〈インターナショナル・アンセム〉のレーベル・メイトであるマカヤ・マクレイヴン(ドラムス、サンプラー)、『ザ・ニュー・ブリード』にも参加していたジェイ・ベルローズ(ドラムス)のほか、ネイト・ウォルコット(トランペット)、カティンカ・クレイン(チェロ)が参加している。『ザ・ニュー・ブリード』に続いて、ジェフの娘であるルビー・パーカーも “ビルド・ア・ネスト” という曲でヴォーカルを披露している。

 前回はボビー・ハッチャーソンの “ヴィジョンズ” をカヴァーしていたが、今回はジョン・コルトレーンの “アフター・ザ・レイン” (1963年の『インプレッションズ』収録曲)を演奏するほか、ジョー・ヘンダーソンの “ブラック・ナルキッソス” (1969年の『パワー・トゥ・ザ・ピープル』収録で、1976年の同名アルバムでも再演)をもとにした “グナルシス” を作るなど、往年のジャズの巨星たちの作品を取り上げている。その “アフター・ザ・レイン” はレイドバックした雰囲気の漂う演奏で、バレアリックなスピリチュアル・ジャズとでも言おうか。現在はロサンゼルスを拠点としているジェフだが、同じ地域のミゲル・アットウッド・ファーガソンやカルロス・ニーニョあたりの空気に通じるものを感じさせる。“グナルシス” はループ感のあるヒップホップ・ビートに乗せて、演奏そのものもエディットやサンプリングを交えて再構築し、『ザ・ニュー・ブリード』での方法論をそのまま推し進めたものとなっている。ここでのドラムはマカヤ・マクレイヴンだが、同じくマカヤがドラムを叩く “ゴー・アウェイ” はシカゴやデトロイト的なゲットー・フィーリング溢れるもので、言うなればセオ・パリッシュやムーディーマンのジャズ版とでも言えるだろうか。全体的にミニマルな演奏で、ハンド・クラップを交えたビートもハウスとジャズ・ファンクを混ぜたような感じだ。“フュージョン・スワール” の前半部はこの別ヴァージョン的なトラックで、ドラム・ビートとベースのループにハンド・クラップや掛け声を混ぜ込み、初期シカゴ・ハウスからデトロイト・テクノ的なニュアンスを感じさせる。この曲はジェフがひとりでギターやベース、パーカッションからサンプラー、ヴォーカルを駆使して作っているが、カール・クレイグのインナーゾーン・オーケストラによる “バグズ・イン・ザ・ベースビン” とか、今田勝をサンプリングしたパトリック・パルシンガーの “シティライツ” を連想させる。この “ゴー・アウェイ” や “フュージョン・スワール” を聴く限り、『スイート・フォー・マックス・ブラウン』ではヒップホップからさらに発展した幅広いビートの探求をおこなっていることがわかる。

 『ザ・ニュー・ブリード』のリリース後のインタヴューでは、影響を受けたジャズ・ギタリストの中にジム・ホールやケニー・バレルなどトラディッショナルなプレイヤーの名前も挙げていて意外だなと思ったのだが、“3・フォー・L” はそんな大御所たちから受け継いだブルージーな味わいが光るナンバー。“ビルド・ア・ネスト” もノスタルジックな味わいで、ブルースやゴスペルなど古き良き時代の黒人音楽が持つムードを感じさせる。ちょうどアルバム・ジャケットのマックス・ブラウンのセピア色の写真にピッタリのナンバーで、この曲をジェフの娘のルビー・パーカーが歌っているというのも親子孫3代に渡る絆や歴史を感じさせる。母の名前をタイトルにした “マックス・ブラウン” は10分を超える大作で、ミニマルでシンプルなクラップ・ビートに始まって、ジェフやジョシュ・ジョンソン、ネイト・ウォルコットらがじっくりとそれぞれのソロを展開するという構成。比較的淡々と演奏が進んでいくが、後半にいくにつれてジャマイア・ウィリアムズのドラムが次第にインパクトを広げ、終盤はジェフのギターのフィードバックがループしていくという、トータスあたりの演奏に繋がる曲だ。こうした楽曲の間をさまざまな小曲やインタールード風ナンバーが埋めていくのだが、その中の “カモン・ナウ” や “メタモルフォーシズ” はまったくギターを用いずにサンプラーやシーケンサーなどで作り上げたもの。曲間やスペースをビートのループやアンビントなレイヤーで埋めていき、ジェフのサウンド・プロデューサーぶりにますます拍車が掛かっている。

Darkstar - ele-king

 去る2月19日、ダークスターが新曲 “Wolf” をデジタル・オンリーでリリースしている。細やかな音響、相変わらず哀愁を帯びた旋律……いやおうなく感情が揺さぶられます。「不吉なものの接近」がテーマになっているらしいので、なるほど最近のホラー映画あたりが念頭に置かれているのかな、なんて想像をめぐらせてみたけれど、彼ら自身が例としてあげているのはなんと、請求書! た、たしかにそれは不吉だわ。

Darkstar
UKアンダーグラウンド・シーンが産んだ唯一無二のエレクトロニック・ポップ・ミュージックを作り出すユニット、ダークスターが新曲 “Wolf” をリリース!

2010年のデビュー以来、唯一無二な音楽性を有したエレクトロニック・ポップ・ミュージックを作り上げてきたダークスター。アクトレス、ワイルド・ビースツ、ゾンビーらとのコラボレーションを行い、ジョン・ホプキンスやフォー・テットとも交友のある彼らが、新曲 “Wolf” をリリース!

Darkstar – Wolf (Official Audio)
https://youtu.be/V0kzgU0eQTk

“Wolf” は何か不吉なものが迫ってくることに関する曲なんだ。請求書だったり、悪者だったりするね。図々しい感じのリリックとソウルフルなトラックの対比で遊びたかったんだ。 ──Darkstar

UKのトレンドとプログレ、アンビエント、テクノ、ヒップホップ、グライムといったUK音楽史の普遍的なコンテンツを融合することで新しい音楽を提案してきたダークスターは2015年にリリースしたアルバム『Foam Island』以来、スクエアプッシャーことトム・ジェンキンソンとの共作でも話題となった世界屈指のオルガン奏者ジェイムズ・マクヴィニーやエンプレス・オブ、そしてガイカといった面々とのコラボレーションを行い、常にフレッシュな環境で音楽を作り出してきた。また、セントポール室内管弦楽団との共演や移民のコミュニティと一緒にインスタレーションやパフォーマンスを行い、アート寄りな活動も行うなど幅広い活躍を見せている。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Darkstar
title: Wolf
release: NOW ON SALE

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